(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】電力需要予測システムおよび電力需要予測プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20231026BHJP
【FI】
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2019139761
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂野 貴裕
【審査官】加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-121133(JP,A)
【文献】特開2018-007370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電設備を有する複数の需要家を含む電力供給エリアにおける必要な電力供給量の予測値を、少なくとも前記電力供給エリアにおける気象情報により算出される前記電力供給エリア内における消費電力量の予測値に基づいて算出する電力需要予測システムにおいて、
前記複数の需要家は、前記太陽光発電設備による自家発電量を計測するスマートメータと、前記スマートメータと通信可能な通信端末と、を有する需要家の集団を含んでいること、
前記通信端末を介してネットワーク上に送信された前記スマートメータにより計測された自家発電量の情報を、前記ネットワーク上から取得する通信部と、
前記通信部により取得された前記自家発電量に基づき、前記集団における自家発電量の平均値である平均自家発電量を算出し、前記平均自家発電量に基づき、前記複数の需要家の全体の自家発電量である全体自家発電量を算出し、前記消費電力量の予測値から、前記全体自家発電量を減じることで、前記電力供給量の予測値を算出する算出部と、
を備えること、
前記全体自家発電量として、前記平均自家発電量に、前記複数の需要家の件数を乗じることで算出される値を用いること、
を特徴とする電力需要予測システム。
【請求項2】
太陽光発電設備を有する複数の需要家を含む電力供給エリアにおける必要な電力供給量の予測値を、少なくとも前記電力供給エリアにおける気象情報により算出される前記電力供給エリア内における消費電力量の予測値に基づいて算出する電力需要予測システムにおいて、
前記複数の需要家は、前記太陽光発電設備による自家発電量を計測するスマートメータと、前記スマートメータと通信可能な通信端末と、を有する需要家の集団を含んでいること、
前記通信端末を介してネットワーク上に送信された前記スマートメータにより計測された自家発電量の情報を、前記ネットワーク上から取得する通信部と、
前記通信部により取得された前記自家発電量に基づき、前記集団における自家発電量の平均値である平均自家発電量を算出し、前記平均自家発電量に基づき、前記複数の需要家の全体の自家発電量である全体自家発電量を算出し、前記消費電力量の予測値から、前記全体自家発電量を減じることで、前記電力供給量の予測値を算出する算出部と、
を備えること、
前記全体自家発電量として、前記複数の需要家の全体の前記太陽光発電設備の発電出力の合計値に、前記平均自家発電量を前記集団における前記太陽光発電設備の発電出力の平均値により除した値である変換効率を乗じることで算出される値を用いること、
を特徴とする電力需要予測システム。
【請求項3】
電力需要予測システムに、太陽光発電設備を有する複数の需要家を含む電力供給エリアにおける必要な電力供給量の予測値を、少なくとも前記電力供給エリアにおける気象情報により算出される前記電力供給エリア内における消費電力量の予測値に基づいて算出
させる電力需要予測プログラムにおいて、
前記複数の需要家は、前記太陽光発電設備による自家発電量を計測するスマートメータと、前記スマートメータと通信可能な通信端末と、を有する需要家の集団を含んでいること、
前記通信端末を介してネットワーク上に送信された前記スマートメータにより計測された自家発電量の情報を、前記ネットワーク上から取得し、
取得された前記自家発電量に基づき、前記集団における自家発電量の平均値である平均自家発電量を算出し、
前記平均自家発電量に基づき、前記複数の需要家の全体の自家発電量である全体自家発電量を算出し、
前記消費電力量の予測値から、前記全体自家発電量を減じることで、前記電力供給量の予測値を算出すること、
前記全体自家発電量として、前記平均自家発電量に、前記複数の需要家の件数を乗じることで算出される値を用いること、
を特徴とする電力需要予測プログラム。
【請求項4】
電力需要予測システムに、太陽光発電設備を有する複数の需要家を含む電力供給エリアにおける必要な電力供給量の予測値を、少なくとも前記電力供給エリアにおける気象情報により算出される前記電力供給エリア内における消費電力量の予測値に基づいて算出
させる電力需要予測プログラムにおいて、
前記複数の需要家は、前記太陽光発電設備による自家発電量を計測するスマートメータと、前記スマートメータと通信可能な通信端末と、を有する需要家の集団を含んでいること、
前記通信端末を介してネットワーク上に送信された前記スマートメータにより計測された自家発電量の情報を、前記ネットワーク上から取得し、
取得された前記自家発電量に基づき、前記集団における自家発電量の平均値である平均自家発電量を算出し、
前記平均自家発電量に基づき、前記複数の需要家の全体の自家発電量である全体自家発電量を算出し、
前記消費電力量の予測値から、前記全体自家発電量を減じることで、前記電力供給量の予測値を算出すること、
前記全体自家発電量として、前記複数の需要家の全体の前記太陽光発電設備の発電出力の合計値に、前記平均自家発電量を前記集団における前記太陽光発電設備の発電出力の平均値により除した値である変換効率を乗じることで算出される値を用いること、
を特徴とする電力需要予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電設備を有する複数の需要家を含む電力供給エリアにおける必要な電力供給量の予測値を、少なくとも電力供給エリアにおける気象情報により算出される電力供給エリア内における消費電力量の予測値に基づいて算出する電力需要予測システムおよび電力需要予測プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
2016年に行われた電力小売の全面自由化により、需要家は、電力の小売事業者を自由に選ぶことが可能となった。小売事業者は、一般送配電事業者の維持する電力系統を介して、発電事業者から電力を調達し、電力供給エリア(例えば地方単位のエリア)において、需要家に電力の供給を行っている。
【0003】
小売事業者は、気象情報等に基づき、電力供給エリアにおける消費電力量を予測した上、予測された消費電力量に基づいて電力供給エリアに対して必要な電力供給量を予測する。そして、予測された電力供給量に基づいて、一日を30分毎に分割し、30分毎の電力供給量の計画を立てている。しかし、電力供給エリアにおける消費電力は、天候等により左右されるため、小売事業者の電力供給量の計画は、消費電力の増減に合わせて修正しなければならない場合がある。
【0004】
電力供給量の計画を修正する場合とは、例えば、気象情報で予報されていた気温よりも気温が高くなった場合が考えられる。この場合、需要家が空調設備を稼働させることで、電力供給エリアにおける消費電力が計画を上回ってしまうため、小売事業者は、当初計画していた電力供給量よりも多くの電力を供給しなければならなくなる。すると、小売事業者は、電力供給量の予測をしなおして、新たな計画を立てるのである。そして、新たな計画と当初の計画との差分の電力量を、卸電力取引市場から調達することが行われる。
【0005】
以上のように、小売事業者が、時々刻々と変化する消費電力に合わせて、電力供給量計画の修正を行っているのは、小売事業者に、電力供給量の計画と、実際に供給した電力の実績とを一致させなければならないという需給義務が課されていることによる。もし、計画と実績に乖離が生じてしまった場合、小売事業者は、一般送配電事業者に対し、ペナルティを支払わなければならない。したがって、小売事業者は、ペナルティの支払いを可能な限り抑えるため、精度良く電力供給量を予測し、計画を立てる必要がある。
【0006】
ここで、実際に需要家が消費する消費電力の予測は、例えば、非特許文献1に開示されるように、気温、湿度、不快指数、日射量等の気象情報や、曜日データ等を説明変数とした重回帰式に基づいて従来から行われており、精度が高いものとなっている。しかし、電力小売事業者は、その予測された消費電力をそのまま電力供給量の計画に当てはめることができない。なぜならば、太陽光発電設備の普及により、自家発電を行う需要家が増加しており、小売事業者が供給すべき電力は、自家発電が行われる分だけ消費電力よりも少なくなるためである。よって、ペナルティを出来る限り抑えるためには、電力供給エリアにおける消費電力を予測することに加え、電力供給エリアにおける太陽光発電設備を有する複数の需要家の全体の自家発電量(全体自家発電量)の予測を精度良く行うことが重要となっている。ここで、全体自家発電量の予測を行う方法としては、特許文献1や特許文献2に開示されるような、太陽光発電の発電出力の推定方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-43853号公報
【文献】特開2016-152644号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】福田健著 技術開発ニュースNo.159「電力需要予測システムの導入」中部電力 2018年8月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
特許文献1および特許文献2に開示される太陽光発電の発電出力の推定方法は、日射量データにより全体自家発電量を予測するものである。しかし、全体自家発電量は、太陽光発電設備の劣化度合いや、ソーラーパネルを設置する向きにも左右されるため、日射量データのみ考慮したとしても、全体自家発電量の予測精度の低下が懸念される。全体自家発電量の予測精度が低下すると、精度良く電力供給量を予測することができなくなる。精度良く電力供給量を予測することができなくなると、電力供給量の計画と、実際に供給した電力の実績との間に乖離が生じ、小売事業者は、一般送配電事業者に対して多大なペナルティを支払わなければならなくなる。
【0010】
また、上記で説明した電力供給量計画の修正は、電力供給量の計画と実際に供給した電力の実績とに乖離が生じた場合に行われるが、現在は、小売事業者が、乖離が生じ始めてから、乖離が生じていることを実際に把握できるまでに30分かかる。近年、売電量と買電量を計測するスマートメータが普及しており、当該スマートメータは計測値を小売事業者に送信(いわゆるAルートによる送信)しているが、この送信は30分おきに行われるためである。そのため、電力供給量計画の修正が行われるまでに支払うペナルティがかさむおそれがある。この点について、
図5を用いて詳しく説明する。
図5は、横軸を時間としており、目盛りは30分間隔となっている。そして、縦軸は、電力供給量であり、時間経過に伴う、計画された電力供給量(計画電力供給量ep21)と、実際に供給した電力の実績(実績電力供給量er21)の変動を表している。計画電力供給量ep21と、実績電力供給量er21との乖離が始まり、実績電力供給量er21が、計画電力供給量ep21を下回り始めるのが時点t1である。そして、この乖離が始まったことを、小売事業者が把握できるのが、時点t1の30分後である時点t2である。この時点t2から新たな計画を立てるための作業が始まり、実際に新たな計画を立てることができるのは、時点t1から2時間後の時点t4となる。新たな計画が立てられたことにより、時点t4から、計画電力供給量ep21が、実績電力供給量er21とほぼ同一の推移で変動していることが分かる。以上のように、計画の修正が行われるのは、計画と実績の乖離が始まった時点t1から2時間後であり、当該2時間における、計画と実績の乖離についてはペナルティを支払わなければならないおそれがある。よって、計画と実績の乖離が始まってから、計画の修正が行われるまでの時間の短縮化が望まれる。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、全体自家発電量の予測を精度良く行うとともに、電力供給量の予測を精度良く行うことが可能な電力需要予測システムおよび電力需要予測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の電力需要予測システムおよび電力需要予測プログラムは、次のような構成を有している。
(1)太陽光発電設備を有する複数の需要家を含む電力供給エリアにおける必要な電力供給量の予測値を、少なくとも電力供給エリアにおける気象情報により算出される電力供給エリア内における消費電力量の予測値に基づいて算出する電力需要予測システムにおいて、複数の需要家は、太陽光発電設備による自家発電量を計測するスマートメータと、スマートメータと通信可能な通信端末と、を有する需要家の集団を含んでいること、通信端末を介してネットワーク上に送信されたスマートメータにより計測された自家発電量の情報を、ネットワーク上から取得する通信部と、通信部により取得された自家発電量に基づき、集団における自家発電量の平均値である平均自家発電量を算出し、平均自家発電量に基づき、複数の需要家の全体の自家発電量である全体自家発電量を算出し、消費電力量の予測値から、全体自家発電量を減じることで、電力供給量の予測値を算出する算出部と、を備えること、全体自家発電量として、平均自家発電量に、複数の需要家の件数を乗じることで算出される値を用いること、を特徴とする。
【0014】
(3)太陽光発電設備を有する複数の需要家を含む電力供給エリアにおける必要な電力供給量の予測値を、少なくとも電力供給エリアにおける気象情報により算出される電力供給エリア内における消費電力量の予測値に基づいて算出する電力需要予測システムにおいて、複数の需要家は、太陽光発電設備による自家発電量を計測するスマートメータと、スマートメータと通信可能な通信端末と、を有する需要家の集団を含んでいること、通信端末を介してネットワーク上に送信されたスマートメータにより計測された自家発電量の情報を、ネットワーク上から取得する通信部と、通信部により取得された自家発電量に基づき、集団における自家発電量の平均値である平均自家発電量を算出し、平均自家発電量に基づき、複数の需要家の全体の自家発電量である全体自家発電量を算出し、消費電力量の予測値から、全体自家発電量を減じることで、電力供給量の予測値を算出する算出部と、を備えること、全体自家発電量として、複数の需要家の全体の太陽光発電設備の発電出力の合計値に、平均自家発電量を集団における太陽光発電設備の発電出力の平均値により除した値である変換効率を乗じることで算出される値を用いること、を特徴とする。
【0015】
(4)電力需要予測システムに、太陽光発電設備を有する複数の需要家を含む電力供給エリアにおける必要な電力供給量の予測値を、少なくとも電力供給エリアにおける気象情報により算出される電力供給エリア内における消費電力量の予測値に基づいて算出させる電力需要予測プログラムにおいて、複数の需要家は、太陽光発電設備による自家発電量を計測するスマートメータと、スマートメータと通信可能な通信端末と、を有する需要家の集団を含んでいること、通信端末を介してネットワーク上に送信されたスマートメータにより計測された自家発電量の情報を、ネットワーク上から取得し、取得された自家発電量に基づき、集団における自家発電量の平均値である平均自家発電量を算出し、平均自家発電量に基づき、複数の需要家の全体の自家発電量である全体自家発電量を算出し、消費電力量の予測値から、全体自家発電量を減じることで、電力供給量の予測値を算出すること、全体自家発電量として、平均自家発電量に、複数の需要家の件数を乗じることで算出される値を用いること、を特徴とする。
【0017】
(6)電力需要予測システムに、太陽光発電設備を有する複数の需要家を含む電力供給エリアにおける必要な電力供給量の予測値を、少なくとも電力供給エリアにおける気象情報により算出される電力供給エリア内における消費電力量の予測値に基づいて算出させる電力需要予測プログラムにおいて、複数の需要家は、太陽光発電設備による自家発電量を計測するスマートメータと、スマートメータと通信可能な通信端末と、を有する需要家の集団を含んでいること、通信端末を介してネットワーク上に送信されたスマートメータにより計測された自家発電量の情報を、ネットワーク上から取得し、取得された自家発電量に基づき、集団における自家発電量の平均値である平均自家発電量を算出し、平均自家発電量に基づき、複数の需要家の全体の自家発電量である全体自家発電量を算出し、消費電力量の予測値から、全体自家発電量を減じることで、電力供給量の予測値を算出すること、全体自家発電量として、複数の需要家の全体の太陽光発電設備の発電出力の合計値に、平均自家発電量を集団における太陽光発電設備の発電出力の平均値により除した値である変換効率を乗じることで算出される値を用いること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
(1)に記載の電力需要予測システムおよび(4)に記載の電力需要予測プログラムによれば、全体自家発電量の予測を精度良く行うとともに、電力供給量の予測を精度良く行うことが可能となり、一般送配電事業者に対するペナルティを抑えることができる。
【0019】
通信部により、太陽光発電設備による自家発電量を計測するスマートメータを有する需要家の集団から、自家発電量の実測値を得ることができる。そして、算出部は、実測値である自家発電量に基づいて、平均自家発電量を算出し、全体自家発電量を算出する。当該全体自家発電量は、実測値に基づく算出であるため、太陽光発電設備の劣化度合いや、ソーラーパネルを設置する向きが反映されており、従来のように日射量データのみを考慮して全体自家発電量を予測するのに比して、予測精度が向上される。
【0020】
また、電力供給エリアにおける必要な電力供給量の予測値は、少なくとも電力供給エリアにおける気象情報により予測される電力供給エリア内における消費電力量の予測値から、全体自家発電量を減じることで算出される。消費電力量の予測値は、先述したように、気温、湿度、不快指数、日射量等の気象情報や、曜日データ等を説明変数とした重回帰式に基づいて算出される。これは、従来から行われているものであり、精度が高い。精度良く算出される消費電力量の予測値から、精度良く予測される全体自家発電量を減じることで、電力供給量が算出されるため、当該算出された電力供給量の予測値は精度良いものであると言える。なお、電力供給エリアとは、例えば東海3県(愛知県、岐阜県、三重県)のような地方単位のエリアである。
【0021】
また、従来から行われているAルートによる情報の取得は、上述の通り30分おきに行われているが、スマートメータと通信端末(例えばデジタルグリッドコントローラ(登録商標))の通信(いわゆるBルートによる通信)は、最短1秒間隔で行うことが可能であるため、小売事業者は、通信端末を介して送信される自家発電量の実測値をほぼリアルタイムに得ることができる。したがって、リアルタイムに電力供給エリアにおける必要な電力供給量の予測値を算出することが可能である。従来のように計画電力供給量と実績電力供給量の比較により、乖離があるかどうか監視をしていると、上述のように、乖離の発生から乖離を把握するまでに30分もの時間を要していたが、本発明によれば、計画電力供給量と、リアルタイムに精度良く算出される電力供給量の予測値との比較により、乖離があるかどうかをリアルタイムに監視することが可能となる。リアルタイムに監視することが可能であれば、乖離の発生を瞬時に把握することができ、計画の修正が行われるまでの時間の短縮化を図ることが可能である。
【0022】
さらに、(1)に記載の電力需要予測システムおよび(4)に記載の電力需要予測プログラムによれば、当該電力需要予測システムや電力需要予測プログラムを導入するに当たり、設備投資コストを抑えることができる。
【0023】
特許文献1および特許文献2に開示される太陽光発電の発電出力の推定方法は、日射量データの計測点を増やすことで、精度の向上を図ることが可能とも考えられる。しかし、計測点を増やすためには、計測設備を設置するためのコストが増大することが懸念される。
【0024】
ところで、太陽光発電の自家消費分を、環境価値とみなして、自家発電を行っている需要家から買い取るサービス(環境価値買取サービス)が、小売事業者等により実証実験されている。
環境価値買取サービスの提供先である需要家は、売電量および買電量の計測するスマートメータと、太陽光発電設備による自家発電量を計測するスマートメータとを有している。これらのスマートメータは、通信端末(例えばデジタルグリッドコントローラ(登録商標))にBルートにより接続されており、通信端末は、スマートメータのデータを取得しながら、売電量と買電量と自家発電量に基づいて算出される電力の自家消費分を環境価値としてクラウド上で取引している(参考文献:「ブロックチェーン技術を活用した再エネCO2排出削減価値創出モデル事業」資料4-1(http://www.env.go.jp/earth/blockchain.html))。
【0025】
つまり、環境価値買取サービスの提供先である需要家は、太陽光発電設備による自家発電量を計測するスマートメータを既に有しており、当該スマートメータにより計測される自家発電量に関する情報を、通信端末を介してクラウド上に送信しているのであるから、小売事業者は、環境価値買取サービスの提供先から自家発電量の情報を入手することとすれば、電力需要予測システムおよび電力需要予測プログラムの導入に当たって、計測設備を新規に設置する必要がなく、設備投資コストを抑えることができるのである。
【0026】
(1)に記載の電力需要予測システムおよび(4)に記載の電力需要予測プログラムによれば、平均自家発電量は、実測値である自家発電量に基づいて算出されるものであり、実測値に基づいて算出される平均自家発電量に、太陽光発電設備を有する複数の需要家の実際の件数を乗じることで、全体自家発電量が算出されるため、全体自家発電量の予測を精度良く行うとともに、電力供給量の予測を精度良く行うことが可能となる。
【0027】
(3)に記載の電力需要予測システムおよび(6)に記載の電力需要予測プログラムによれば、全体自家発電量の予測を精度良く行うとともに、電力供給量の予測を精度良く行うことが可能となる。
【0028】
発電量は、太陽光発電設備の発電出力と、日射量と、損失係数により定まる(発電量(kWh)=発電出力(kW)×日射量×損失係数)。この中でも、太陽光発電設備の発電出力は、ソーラーパネルの設置面積で定まるものであるため、需要者の間でバラツキが大きい要素となる(例えば、一般家庭用の太陽光発電設備であれば3~4kW、業務用の太陽光発電設備であれば10kW以上)。したがって、全体自家発電量の算出にあたり、バラツキの大きい発電出力を考慮することで、より精度高く全体自家発電量の予測を行うことができ、ひいては、より精度高く電力供給量の予測を行うことが可能となる。
【0029】
なお、太陽光発電設備を有する複数の需要家の全体の太陽光発電設備の発電出力は、小売事業者が需要家との間で売電契約を結ぶことにより入手することができ、太陽光発電設備による自家発電量を計測するスマートメータを有する需要家の集団における太陽光発電設備の発電出力は、先述の環境価値買取サービスの提供先から入手可能である。よって、発電出力に関する情報を収集するために、新規に設備投資を行う必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】電力需要予測システムの構成を表すブロック図である。
【
図2】電力供給エリアに含まれる需要家の集団を示す図である。
【
図4】電力供給量と時間の関係を表すグラフである。
【
図5】従来技術における電力供給量と時間の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1の実施形態>
本発明の電力需要予測システムおよび電力需要予測プログラムの第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
本実施形態に係る電力需要予測システム1は、例えば、電力の小売業者の有するシステムであり、複数の需要家を含む電力供給エリア5(
図2参照)における必要な電力供給量を予測するためのシステムである。
【0033】
電力供給エリア5は、例えば東海3県(愛知県、岐阜県、三重県)のような地方単位のエリアを想定しており、
図2に示すように複数の需要家を含んでいる。電力供給エリア5は、太陽光発電設備を有する複数の需要家(第1の需要家61A,61B,61C、第2の需要家71A,71B,71C)により構成される集団6と、太陽光発電設備を有しない複数の需要家(第3の需要家51A,51B,51C)と、により構成されている。
【0034】
さらに、集団6は、太陽光発電設備による自家発電量を計測する第1スマートメータ713(
図3参照のこと。詳細は後述)を有する需要家(第2の需要家71A,71B,71C)により構成される集団7を含んでいる。なお、当該集団7は、小売事業者が環境価値買取サービスを提供する先である。環境価値買取サービスについての詳細は後述する。
【0035】
そして、集団6から、集団7を除いた残りは、太陽光発電設備を有しているが、環境価値買取サービスの提供は受けておらず、第1スマートメータ713を有さない需要家(第1の需要家61A,61B,61C)の集まりである。
【0036】
なお、
図2においては、第1の需要家61A,61B,61C、第2の需要家71A,71B,71C、第3の需要家51A,51B,51Cのそれぞれを3つずつ表示しているが、あくまで例示であり、上記の通り電力供給エリア5は地方単位を想定しているため、実際にはさらに多数となる。また、第1の需要家61A,61B,61C、第2の需要家71A,71B,71C、第3の需要家51A,51B,51Cのそれぞれは、以下の説明においては、単に第1の需要家61、第2の需要家71、第3の需要家51と記載する。
【0037】
図1は、本実施形態に係る電力需要予測システム1の構成を表すブロック図である。電力需要予測システム1は、通信部11,15と、登録部12,16と、データベース13,17,19と、算出部14と、表示装置18と、からなる。
【0038】
通信部11は、クラウド2とインターネット等の通信回線8(ネットワークの一例)を介して接続されており、クラウド2から、第2の需要家71の各々の、太陽光発電設備による自家発電量に関する情報を取得する。そして、登録部12は、通信部11が取得した情報をデータベース13に記憶させる。
【0039】
第2の需要家71の各々の自家発電量に関する情報は、第2の需要家71により、3G回線またはLTE回線によりクラウド2へ送信されている。
図3を用いて詳しく説明する。
【0040】
第2の需要家71の各々は、太陽光発電設備を構成するソーラーパネル711およびパワーコンディショナ(PCS)712と、第1スマートメータ713と、第2スマートメータ714と、通信端末715(例えば、デジタルグリッドコントローラ(登録商標))と、を備えている。
【0041】
第2の需要家71の各々は、ソーラーパネル711で自家発電を行い、ソーラーパネル711に接続されているPCS712により、発電した電力を直流から交流に変換して出力する。交流に変換された電力は、家庭内負荷716(例えば冷蔵庫やエアコン等の家電)に供給され、消費される。また、PCS712により交流に変換された電力であって、家庭内負荷716で消費されずに残った余剰電力は、電力系統9を通じて売電される。
【0042】
家庭内負荷716および電力系統9と、PCS712との間には、第1スマートメータ713が配置されており、第1スマートメータ713は、PCS712から出力され、家庭内負荷716で消費される電力と、電力系統9を通じて売電される電力との合計(すなわち太陽光発電設備による自家発電量)を計測している。計測間隔は、例えば1秒間隔であり、ほぼリアルタイムに計測が可能である。さらに、電力系統9と第1スマートメータ713との間には、第2スマートメータ714が配置されており、第2スマートメータ714は、PCS712から出力された電力のうち、電力系統9を通じて売電される売電量を計測している。
【0043】
また、第2の需要家71は、太陽光発電設備により自家発電ができない時間帯(夜間など)においては、小売事業者から、電力系統9を通じて供給される電力によって、家庭内負荷716を稼働させる。電力系統9を通じて供給される電力(すなわち買電量)は、第2スマートメータ714によって、第1スマートメータ713同様に、ほぼリアルタイムに計測される。
【0044】
通信端末715は、第1スマートメータ713および第2スマートメータ714と接続されており(例えば、家庭用はWi-SUN規格による無線接続、業務用は有線接続されており、いわゆるBルートと呼ばれる)、第1スマートメータ713および第2スマートメータ714の計測値をリアルタイムに読み取る。そして、例えば3G回線またはLTE回線により、クラウド2へ読み取った計測値をリアルタイムに送信している。これにより、電力需要予測システム1は、通信部11により、クラウド2から、第2の需要家71の各々の自家発電量に関する情報を取得することができるのである。
【0045】
通信端末715が、第1スマートメータ713および第2スマートメータ714の計測値をクラウド2へ送信しているのは、第2の需要家71は、小売事業者により環境価値買取サービスの提供を受けているからであり、いわゆる環境価値をクラウド2上で取引するためである。
【0046】
環境価値買取サービスとは、太陽光発電の自家消費分を、環境価値とみなして買い取るサービスのことである。
【0047】
売電量と買電量と自家発電量に基づいて算出される電力の自家消費分に基づいて環境価値が算出されるため、環境価値買取サービスの提供先である第2の需要家71は、売電量および買電量の計測する第2スマートメータ714と、太陽光発電設備による自家発電量を計測する第1スマートメータ713とを必ず有していることになる。そして、環境価値の取引のために、第1スマートメータ713と第2スマートメータ714とにより計測される自家発電量に関する情報を、通信端末715を介してクラウド2上に送信しているのであるから、小売事業者は、環境価値買取サービスの提供先から自家発電量の情報を入手することが容易であり、電力需要予測システム1の導入に当たって、計測設備を新規に設置する必要がなく、設備投資コストを抑えることができる。
【0048】
なお、第1の需要家61A,61B,61C、第3の需要家51A,51B,51Cも、第2スマートメータ714を有している場合があり、計測値を小売事業者に30分おきに送信している(いわゆるAルートによる送信)。ただし、太陽光発電設備を有さない第3の需要家51A,51B,51Cが第2スマートメータ714を有する場合は、第2スマートメータ714は買電量のみ計測し、小売事業者に送信する。これは、自動検針や電力需要予測のために従来から行われていることである。
【0049】
図1の説明に戻ると、通信部15は、気象情報サーバ3とインターネット等の通信回線8を介して接続されており、気象情報サーバ3から気温、湿度、不快指数、日射量等の気象情報を取得する。気象情報サーバ3は、例えば気象台等に置かれているものであり、小売業者の外部に置かれている。そして、登録部16は、通信部15が取得した情報をデータベース17に記憶させる。
【0050】
データベース13,17に登録された情報は、適宜、算出部14により読み出され、算出部14で行われる電力供給量の予測に用いられる。
【0051】
算出部14は、消費電力量予測プログラム141と、電力需要予測プログラム142と、監視プログラム143と、を記憶している。
【0052】
消費電力量予測プログラム141は、電力供給エリア5における消費電力量を予測するプログラムであり、気温、湿度、不快指数、日射量等の気象情報や、曜日データ等を説明変数とした重回帰式に基づいて、電力供給エリア5の消費電力量の予測値を算出する(非特許文献1参照)。この算出に当たっては、気象情報サーバ3から入手され、データベース17に記憶された気象情報が、用いられる。そして、消費電力量予測プログラム141が算出した消費電力量の予測値は、電力需要予測プログラム142において、電力供給エリア5における必要な電力供給量の予測値の算出が行われる際に用いられる。
【0053】
電力需要予測プログラム142は、電力供給エリア5に対して必要な電力供給量の予測値を算出するプログラムである。電力供給エリア5に対して必要な電力供給量とは、電力供給エリア5における消費電力量から、集団6が太陽光発電設備により行う自家発電量を除いた値であると言える。したがって、電力供給量の予測値は、以下のように算出される。
【0054】
まず、データベース13に記憶された第2の需要家71の各々の自家発電量に基づき、集団7における自家発電量の平均値である平均自家発電量を算出する。具体的には、第2の需要家71の各々の各々の単位時間当たりの自家発電量を合計し、第2の需要家71の件数で除算を行うことで算出する。
【0055】
次に、平均自家発電量に基づき、第1の需要家61と第2の需要家71とにより構成される集団6全体の自家発電量である全体自家発電量を算出する。具体的には、平均自家発電量に、第1の需要家61と第2の需要家71の合計件数を乗じることで算出する。
【0056】
そして、電力需要予測プログラム142によって算出された電力供給エリア5における消費電力量の予測値から、全体自家発電量を減じることで、電力供給エリア5に対して必要な電力供給量の予測値を算出する。
【0057】
第1スマートメータ713は、太陽光発電設備による自家発電量をリアルタイムに計測し、通信端末715はリアルタイムに自家発電量に関する情報を、例えば3G回線またはLTE回線によりクラウド2に送信しているため、電力需要予測システム1は、リアルタイムに自家発電量に関する情報を取得することができる。したがって、電力需要予測プログラム142は、電力供給エリア5に対して必要な電力供給量の予測値をリアルタイムに算出可能である。
【0058】
監視プログラム143は、小売事業者の電力供給エリア5に対する電力供給量の電力供給量の計画(計画電力供給量)と、電力需要予測プログラム142によってリアルタイムに算出される電力供給量の予測値との間に乖離があるかどうかを常に監視している。計画電力供給量とは、予め計画されているものであり、小売事業者は、1日を30分毎に分割し、30分毎の電力供給量の計画を立てている。なお、計画電力供給量は、電力需要予測プログラム142の算出結果を蓄積してビッグデータ化することで、当該ビッグデータを基に機械学習を用いることで、精度高く計画することが可能になる。
【0059】
従来は、計画電力供給量と実際に供給した電力の実績(実績電力供給量)の比較により、乖離があるかどうか監視をしていたが、乖離が発生してから、小売事業者が乖離を把握するまでには30分もの時間を要していた。すると、計画を修正するまでに時間がかかり、計画が修正されるまでの間に生じていた計画と実績の乖離について支払うペナルティがかさんでいた。
【0060】
例えば、
図5に示すように、計画電力供給量ep21と、実績電力供給量er21との乖離が始まり、実績電力供給量er21が、計画電力供給量ep21を下回り始めるのが時点t1である。そして、この乖離が始まったことを、小売事業者が把握できるのが、時点t1の30分後である時点t2である。この時点t2から新たな計画を立てるための作業が始まり、実際に新たな計画を立てることができるのは、時点t1から2時間後の時点t4となる。新たな計画が立てられたことにより、時点t4から、計画電力供給量ep21が、実績電力供給量er21とほぼ同一の推移で変動していることが分かる。以上のように、計画の修正が行われるのは、計画と実績の乖離が始まった時点t1から2時間後であり、当該2時間における、計画と実績の乖離についてはペナルティを支払わなければならなかった。
【0061】
一方、本実施形態に係る電力需要予測システム1によれば、計画電力供給量と、リアルタイムに算出される電力供給量の予測値との比較により、乖離があるかどうかをリアルタイムに監視することが可能となる。リアルタイムに監視することが可能であれば、乖離の発生を瞬時に把握することができ、計画の修正が行われるまでの時間の短縮化を図ることが可能である。
【0062】
図4を用いて詳しく説明する。
図4は、横軸を時間としており、目盛りは30分間隔となっている。そして、縦軸は、電力供給量であり、時間経過に伴う、計画電力供給量ep11と、電力供給量の予測値er11の変動を表している。
【0063】
計画電力供給量ep11と、予測値er11との乖離が始まり、予測値er11が、計画電力供給量ep11を下回り始めるのが時点t1である。上述の通り、監視プログラム143がリアルタイムに乖離があるかどうかを監視しているため、時点t1で乖離が始まった直後に、小売事業者は乖離を把握することができる。
【0064】
従来は乖離の把握に30分の時間を要していたが、本実施形態においては、瞬時に乖離を把握することができるため、新たな計画を立てることができるのは、時点t1から、従来よりも30分速い1時間半後の時点t3となる。このことは、時点t3から、計画電力供給量ep11が修正されたことで、予測値er11とほぼ同一の推移で変動していることが分かる。以上のように、計画の修正が行われるまでの時間が従来よりも短縮化されるため、計画と実績の乖離により支払うペナルティを抑えることができる。
【0065】
図1の説明に戻ると、電力需要予測システム1は表示装置18を備えており、表示装置18には、消費電力量予測プログラム141および電力需要予測プログラム142により算出される予測値を表示させることができる。これにより小売事業者は、計画の修正を行うことができる。
【0066】
また、表示装置18には、監視プログラム143により、電力供給エリア5に対する電力供給量の電力供給量の計画と、電力供給エリア5に対して実際に供給した電力の実績との間に乖離が生じたことを検知した場合に、警告表示をすることができる。この警告表示を受け、小売事業者は消費電力量予測プログラム141および電力需要予測プログラム142の算出結果に基づいて、計画電力供給量ep11の修正作業を行うことができる。
【0067】
さらにまた、電力需要予測システム1はデータベース19を備えており、算出部14が算出した予測値を記憶しておくことができる。これにより、算出部14が算出した予測値をビッグデータとして用いることが可能となる。
【0068】
なお、本実施形態において、電力需要予測システム1は、2つの通信部11,15を備えるが、1つの通信部を備えるものとし、当該通信部がクラウド2と、気象情報サーバ3と通信するものとしても良い。また、3つのデータベース13,17,19を備えるが、3つである必要はなく、1つのデータベースで、クラウド2や気象情報サーバ3から取得された情報を記憶するものとしても良い。登録部12,16の個数も、2つである必要はなく、データベースの個数に合わせたものとすれば良い。
【0069】
以上説明したように、第1の実施形態の電力需要予測システム1および電力需要予測プログラム142によれば、
(1)太陽光発電設備を有する複数の需要家(第1の需要家61、第2の需要家71により構成される集団6)を含む電力供給エリア5における必要な電力供給量の予測値を、少なくとも電力供給エリア5における気象情報により算出される電力供給エリア5内における消費電力量の予測値に基づいて算出する電力需要予測システム1において、複数の需要家(集団6)は、太陽光発電設備による自家発電量を計測する第1スマートメータ713と、第1スマートメータ713と通信可能な通信端末715と、を有する第2の需要家71の集団7を含んでいること、通信端末715を介してネットワーク上に送信された第1スマートメータ713により計測された自家発電量の情報を、ネットワーク上から取得する通信部11と、通信部11により取得された自家発電量に基づき、集団7における自家発電量の平均値である平均自家発電量を算出し、平均自家発電量に基づき、複数の需要家(集団6)の全体の自家発電量である全体自家発電量を算出し、消費電力量の予測値から、全体自家発電量を減じることで、電力供給量の予測値を算出する算出部14と、を備えること、を特徴とし、また、(4)太陽光発電設備を有する複数の需要家(第1の需要家61、第2の需要家71により構成される集団6)を含む電力供給エリア5における必要な電力供給量の予測値を、少なくとも電力供給エリア5における気象情報により算出される電力供給エリア5内における消費電力量の予測値に基づいて算出する電力需要予測プログラム142において、複数の需要家(集団6)は、太陽光発電設備による自家発電量を計測する第1スマートメータ713と、第1スマートメータ713と通信可能な通信端末715と、を有する第2の需要家71の集団7を含んでいること、通信端末715を介してネットワーク上に送信された第1スマートメータ713により計測された自家発電量の情報を、ネットワーク上から取得し、取得された自家発電量に基づき、集団7における自家発電量の平均値である平均自家発電量を算出し、平均自家発電量に基づき、複数の需要家(集団6)の全体の自家発電量である全体自家発電量を算出し、消費電力量の予測値から、全体自家発電量を減じることで、電力供給量の予測値を算出すること、を特徴とするので、全体自家発電量の予測を精度良く行うとともに、電力供給量の予測を精度良く行うことが可能となり、一般送配電事業者に対するペナルティを抑えることができる。
【0070】
通信部11により、太陽光発電設備による自家発電量を計測する第1スマートメータ713を有する需要家の集団から、自家発電量の実測値を得ることができる。そして、算出部14は、実測値である自家発電量に基づいて、平均自家発電量を算出し、全体自家発電量を算出する。当該全体自家発電量は、実測値に基づく算出であるため、太陽光発電設備の劣化度合いや、ソーラーパネル711を設置する向きが反映されており、従来のように日射量データのみを考慮して全体自家発電量を予測するのに比して、予測精度が向上される。
【0071】
また、電力供給エリア5における必要な電力供給量の予測値は、少なくとも電力供給エリア5における気象情報により予測される電力供給エリア5内における消費電力量の予測値から、全体自家発電量を減じることで算出される。
消費電力量の予測値は、先述したように、気温、湿度、不快指数、日射量等の気象情報や、曜日データ等を説明変数とした重回帰式に基づいて算出される。これは、従来から行われているものであり、精度が高い。精度良く算出される消費電力量の予測値から、精度良く予測される全体自家発電量を減じることで、電力供給量が算出されるため、当該算出された電力供給量の予測値は精度良いものであると言える。なお、電力供給エリア5とは、例えば東海3県(愛知県、岐阜県、三重県)のような地方単位のエリアである。
【0072】
また、従来から行われているAルートによる情報の取得は、上述の通り30分おきに行われているが、第1スマートメータ713と通信端末715の通信(いわゆるBルートによる通信)は、最短1秒間隔で行うことが可能であるため、小売事業者は、通信端末を介して送信される自家発電量の実測値をほぼリアルタイムに得ることができる。したがって、リアルタイムに電力供給エリア5における必要な電力供給量の予測値を算出することが可能である。従来のように計画電力供給量と実績電力供給量の比較により、乖離があるかどうか監視をしていると、上述のように、乖離の発生から乖離を把握するまでに30分もの時間を要していたが、本発明によれば、計画電力供給量と、リアルタイムに精度良く算出される電力供給量の予測値との比較により、乖離があるかどうかをリアルタイムに監視することが可能となる。リアルタイムに監視することが可能であれば、乖離の発生を瞬時に把握することができ、計画の修正が行われるまでの時間の短縮化を図ることが可能である。
【0073】
さらに、(1)に記載の電力需要予測システム1および(4)に記載の電力需要予測プログラム142によれば、当該電力需要予測システム1や電力需要予測プログラム142を導入するに当たり、設備投資コストを抑えることができる。
【0074】
特許文献1および特許文献2に開示される太陽光発電の発電出力の推定方法は、日射量データの計測点を増やすことで、精度の向上を図ることが可能とも考えられる。しかし、計測点を増やすためには、計測設備を設置するためのコストが増大することが懸念される。
【0075】
ところで、太陽光発電の自家消費分を、環境価値とみなして、需要家から買い取るサービス(環境価値買取サービス)が、小売事業者等により、実証実験されている。
環境価値買取サービスの提供先である第2の需要家71は、売電量および買電量の計測する第2スマートメータ714と、太陽光発電設備による自家発電量を計測する第1スマートメータ713とを有している。これらのスマートメータは、通信端末715に接続されており、通信端末715は、第1スマートメータ713および第2スマートメータ714のデータを取得しながら、売電量と買電量と自家発電量に基づいて算出される電力の自家消費分を環境価値としてクラウド2上で取引している。
【0076】
つまり、環境価値買取サービスの提供先である第2の需要家71は、太陽光発電設備による自家発電量を計測する第1スマートメータ713を既に有しており、第1スマートメータ713により計測される自家発電量に関する情報を、通信端末715を介してクラウド2上に送信しているのであるから、小売事業者は、環境価値買取サービスの提供先から自家発電量の情報を入手することとすれば、電力需要予測システム1および電力需要予測プログラム142の導入に当たって、計測設備を新規に設置する必要がなく、設備投資コストを抑えることができるのである。
【0077】
(2)(1)に記載の電力需要予測システム1において、全体自家発電量は、平均自家発電量に、複数の需要家(集団6)の件数を乗じることで算出されること、を特徴とし、また、(5)(4)に記載の電力需要予測プログラム142において、全体自家発電量は、平均自家発電量に、複数の需要家(集団6)の件数を乗じることで算出されること、を特徴とするので、平均自家発電量は、実測値である自家発電量に基づいて算出されるものであり、実測値に基づいて算出される平均自家発電量に、太陽光発電設備を有する複数の需要家(集団6)の実際の件数を乗じることで、全体自家発電量が算出されるため、全体自家発電量の予測を精度良く行うとともに、電力供給量の予測を精度良く行うことが可能となる。
【0078】
<第2の実施形態>
次に、本発明の電力需要予測システムおよび電力需要予測プログラムの第2の実施形態について、説明する。
【0079】
第1の実施形態に係る電力需要予測システム1における電力需要予測プログラム142では、全体自家発電量を、集団7における自家発電量の平均値である平均自家発電量に、第1の需要家61と第2の需要家71の合計件数を乗じることで算出していたが、第2の実施形態に係る電力需要予測システム1における電力需要予測プログラム142では、全体自家発電量を、集団6の全体の太陽光発電設備の発電出力の合計値に、太陽光発電設備の変換効率を乗じることで算出される。ここで、変換効率とは、平均自家発電量を集団7における太陽光発電設備の発電出力の平均値により除した値である。
【0080】
第2の実施形態に係る電力需要予測プログラム142は、電力供給エリア5に対して必要な電力供給量の予測値を、以下のように算出する。
まず、データベース13に記憶された第2の需要家71の各々の自家発電量に基づき、集団7における自家発電量の平均値である平均自家発電量を算出する。具体的には、第2の需要家71の各々の各々の単位時間当たりの自家発電量を合計し、第2の需要家71の件数で除算を行うことで算出する。
【0081】
次に、平均自家発電量に基づき、第1の需要家61と第2の需要家71とにより構成される集団6の全体の自家発電量である全体自家発電量を算出する。具体的には、集団6の全体の太陽光発電設備の発電出力の合計値に、上記の変換効率を乗じることで算出される。
【0082】
そして、電力需要予測プログラム142によって算出された電力供給エリア5における消費電力量の予測値から、全体自家発電量を減じることで、電力供給エリア5に対して必要な電力供給量の予測値を算出する。
【0083】
発電量は、太陽光発電設備の発電出力と、日射量と、損失係数により定まる(発電量(kWh)=発電出力(kW)×日射量×損失係数)。この中でも、太陽光発電設備の発電出力は、ソーラーパネル711の設置面積で定まるものであるため、需要家の間でバラツキが大きい要素となる(例えば、一般家庭用の太陽光発電設備であれば3~4kW、業務用の太陽光発電設備であれば10kW以上)。したがって、全体自家発電量の算出にあたり、バラツキの大きい発電出力を考慮することで、より精度高く全体自家発電量の予測を行うことができ、ひいては、より精度高く電力供給量の予測を行うことが可能となる。
【0084】
なお、集団6の全体の太陽光発電設備の発電出力と、集団7における太陽光発電設備の発電出力とは、既知の情報である。なぜなら、集団6の全体の太陽光発電設備の発電出力は、小売事業者が集団6を構成する各需要家との間で売電契約を結ぶことにより入手することができるからである。また、集団7における太陽光発電設備の発電出力は、集団7を構成する第2の需要家が先述の環境価値買取サービス受けているため、当該サービスの契約時に入手することができる。よって、情報を取得するために、新規に設備投資を行う必要はない。
【0085】
第2の実施形態に係る電力需要予測システムの、その他の構成は、第1の実施形態に係る電力需要予測システム1と同様である。
【0086】
以上説明したように、第2の実施形態の電力需要予測システム1および電力需要予測プログラム142によれば、
(3)(1)に記載の電力需要予測システム1において、全体自家発電量は、複数の需要家(集団6)の全体の太陽光発電設備の発電出力の合計値に、平均自家発電量を集団7における太陽光発電設備の発電出力の平均値により除した値である変換効率を乗じることで算出されること、を特徴とし、また、(6)(4)に記載の電力需要予測プログラム142において、全体自家発電量は、複数の需要家(集団6)の全体の太陽光発電設備の発電出力の合計値に、平均自家発電量を集団7における太陽光発電設備の発電出力の平均値により除した値である変換効率を乗じることで算出されること、を特徴とするので、全体自家発電量の予測を精度良く行うとともに、電力供給量の予測を精度良く行うことが可能となる。
【0087】
発電量は、太陽光発電設備の発電出力と、日射量と、損失係数により定まる(発電量(kWh)=発電出力(kW)×日射量×損失係数)。この中でも、太陽光発電設備の発電出力は、ソーラーパネル711の設置面積で定まるものであるため、需要者の間でバラツキが大きい要素となる(例えば、一般家庭用の太陽光発電設備であれば3~4kW、業務用の太陽光発電設備であれば10kW以上)。したがって、全体自家発電量の算出にあたり、バラツキの大きい発電出力を考慮することで、より精度高く全体自家発電量の予測を行うことができ、ひいては、より精度高く電力供給量の予測を行うことが可能となる。
【0088】
なお、太陽光発電設備を有する複数の需要家(集団6)の全体の太陽光発電設備の発電出力は、小売事業者が需要家との間で売電契約を結ぶことにより入手することができ、太陽光発電設備による自家発電量を計測する第1スマートメータ713を有する第2の需要家71の集団7における太陽光発電設備の発電出力は、先述の環境価値買取サービスの提供先から入手可能である。よって、発電出力に関する情報を収集するために、新規に設備投資を行う必要はない。
【0089】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 電力需要予測システム
5 電力供給エリア
6 集団(太陽光発電設備を有する複数の需要家の一例)
7 集団
8 通信回線(ネットワークの一例)
14 算出部
61 第1の需要家
71 第2の需要家
713 第1スマートメータ
715 通信端末