(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】隙間段差低減システム
(51)【国際特許分類】
B61B 1/02 20060101AFI20231026BHJP
E01F 1/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B61B1/02
E01F1/00
(21)【出願番号】P 2019165296
(22)【出願日】2019-09-11
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509335144
【氏名又は名称】株式会社JR西日本テクシア
(73)【特許権者】
【識別番号】394003162
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 恭介
(72)【発明者】
【氏名】井上 正文
(72)【発明者】
【氏名】高城 進司
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 潤
(72)【発明者】
【氏名】田村 速人
(72)【発明者】
【氏名】中村 高虎
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-108925(JP,A)
【文献】特表2010-508190(JP,A)
【文献】特開2005-225310(JP,A)
【文献】特開2011-178297(JP,A)
【文献】特開2013-100008(JP,A)
【文献】特開2006-298068(JP,A)
【文献】特開2005-001616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
E01F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅のホーム縁端と車両乗降口との間の
水平方向の隙間及び
高さ方向の段差を低減するための隙間段差低減システムであって、
ホーム縁端と車両乗降口との間の隙間量及び段差量を検知するための検知部と、
駅に停車する車両の扉位置に対応してホーム縁端部に設けられるスライド昇降部と、
前記スライド昇降部を駆動する駆動部と、
前記駆動部を介して前記スライド昇降部の動きを制御する制御部とを備え、
前記スライド昇降部は、車両側に張り出すとともに先端側が上昇した張出状態と、張り出していない収納状態とを有し、
前記収納状態において上面が水平であり、前記張出状態における張出量及び先端側の上昇量が調整可能であり、
前記駆動部は、前記スライド昇降部を水平にスライドして張出量を調整する機構、及び前記スライド昇降部の先端側の上昇量を調整する機構を有し、
前記制御部は、検知された前記隙間量及び段差量に基づいて、前記張出状態における前記張出量及び上昇量を調整することを特徴とする隙間段差低減システム。
【請求項2】
車種ごとの車両の肩部の形状データとその車種に対応した前記隙間量及び段差量が記憶された記憶部をさらに備え、
前記検知部は、車両の肩部の形状を検知し、
前記制御部は、検知された肩部の前記形状に対応する前記隙間量及び段差量に基づいて、前記張出量及び上昇量を調整することを特徴とする請求項1に記載の隙間段差低減システム。
【請求項3】
前記検知部は、測距のためのレーザ光を出射し、前記レーザ光をホーム長手方向に直交する走査面上で走査することによって、車両の肩部の形状を検知することを特徴とする請求項2に記載の隙間段差低減システム。
【請求項4】
前記検知部は、車両乗降口の床面縁端の位置を検知し、
前記制御部は、検知された床面縁端の前記位置から導かれる隙間量及び段差量に基づいて、前記張出量及び上昇量を調整することを特徴とする請求項1に記載の隙間段差低減システム。
【請求項5】
前記検知部は、測距のためのレーザ光を出射し、出射するレーザ光を上下方向に走査することによって、前記床面縁端の位置を検知することを特徴とする請求項4に記載の隙間段差低減システム。
【請求項6】
前記制御部は、車両が駅に在線停止していることを検知する列車検知システムからの情報が入力され、車両が駅に停車している情報が入力されたとき、前記スライド昇降部の前記収納状態から張出状態への遷移を可能とし、車両が駅に停車している情報が入力されていないとき、前記収納状態から張出状態への遷移を禁止することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の隙間段差低減システム。
【請求項7】
前記制御部は、車両が駅に在線停止していること及びその車両の停止位置を検知する列車検知システムからの情報が入力され、車両が駅に停車しており、かつ、その車両の停止位置が所定の範囲内である情報が入力されたとき、前記スライド昇降部の前記収納状態から張出状態への遷移を可能とし、それ以外のとき、前記収納状態から張出状態への遷移を禁止することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の隙間段差低減システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅のホーム縁端と車両乗降口との間の隙間及び段差を低減するための隙間段差低減システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、駅のホーム2(プラットホーム)と車両3の間、詳しくはホーム縁端211と車両乗降口31との間には、水平方向の隙間DXと高さ方向の段差DYがあり、車椅子利用者が単独で乗降することが困難である。駅にはホーム縁端部21と車両乗降口31の間をつなぐ渡し板が備え付けられており、車椅子利用者が乗降する際、駅係員がその都度渡し板を仮設し、乗降を支援している。車椅子利用者は、駅係員の支援を要する際、乗車駅、降車駅、利用する時間を予め駅に申告する必要がある。駅係員は、申告を受けた場合、当該ホームでの準備や待ち時間、対応等、通常の作業ダイヤ以外の業務を行うことになる。また、申告内容の聞き誤りや、乗車駅と降車駅間での連絡の行き違い等により、車椅子利用者に不便や迷惑を掛ける可能性もある。このため、隙間DXと段差DYを解消して、車椅子利用者が単独で乗降できるようにする利用環境改善が強く望まれている。
【0003】
なお、ホーム縁端211とは、ホーム2の線路側の縁端である。ホーム2におけるホーム縁端211の近傍は、ホーム縁端部21であり、ホーム長手方向に移動することが安全上好ましくない領域である。ホーム2には、ホーム縁端部21を注意喚起するために、例えば、点状ブロック212(非特許文献1参照)を敷設することが推奨されている。点状ブロック212は、線路に並行して連続的に敷設される。ホーム2に点状ブロック212が敷設されている場合、点状ブロック212とホーム縁端211との間がホーム縁端部21である。
【0004】
従来から、ホームに常設され、ホーム縁端と車両乗降口との間の隙間及び段差を低減するための可動ステップ装置(特許文献1参照)や乗降補助装置(特許文献2参照)が知られている。このような装置では、ステップが車両方向にスライドして隙間を低減し、ステップの先端側が上昇して段差を低減する。
【0005】
ところで、車両3の形状や床面の高さは、車両形式によって異なる。例えば、車両3の床面のレールからの高さについては、1200mmの車両(「103系」電車)や1120mmの車両(「225系」電車、「321系」電車)等があり、その差は80mmである。さらに、車両3は、車輪摩耗や台車の空気ばねの満空差によって高さ方向に+10mm、-20mmの範囲で変位が生じる。また、軌道は、保守基準によれば、軌道は高さ方向及びまくらぎ長さ方向(横方向)にそれぞれプラスマイナス20mmの範囲の変位があり得る。したがって、ホーム縁端211と車両乗降口31との間の隙間DX及び段差DYは、主に車両形式の違いによって、数十mm程度のばらつきがある。このため、前述した可動ステップ装置や乗降補助装置を用いても、ばらつきのある隙間DXや段差DYを適切に低減することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-210555号公報
【文献】特開2002-37055号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】JIS T 9251:2014「高齢者・障害配慮設計指針-視覚障害者誘導用ブロック等の突起の形状・寸法及びその配列」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決するものであり、駅のホーム縁端と車両乗降口との間の隙間及び段差にばらつきがあっても、その隙間及び段差を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の隙間段差低減システムは、駅のホーム縁端と車両乗降口との間の隙間及び段差を低減するためのシステムであって、ホーム縁端と車両乗降口との間の隙間量及び段差量を検知するための検知部と、駅に停車する車両の扉位置に対応してホーム縁端部に設けられるスライド昇降部と、前記スライド昇降部の動きを制御する制御部とを備え、前記スライド昇降部は、車両側に張り出すとともに先端側が上昇した張出状態と、張り出していない収納状態とを有し、前記張出状態における張出量及び先端側の上昇量が調整可能であり、前記制御部は、検知された前記隙間量及び段差量に基づいて、前記張出状態における前記張出量及び上昇量を調整することを特徴とする。
【0010】
この隙間段差低減システムにおいて、車種ごとの車両の肩部の形状データとその車種に対応した前記隙間量及び段差量が記憶された記憶部をさらに備え、前記検知部は、車両の肩部の形状を検知し、前記制御部は、検知された肩部の前記形状に対応する前記隙間量及び段差量に基づいて、前記張出量及び上昇量を調整することが好ましい。
【0011】
この隙間段差低減システムにおいて、前記検知部は、測距のためのレーザ光を出射し、前記レーザ光をホーム長手方向に直交する走査面上で走査することによって、車両の肩部の形状を検知することが好ましい。
【0012】
この隙間段差低減システムにおいて、前記検知部は、車両乗降口の床面縁端の位置を検知し、前記制御部は、検知された床面縁端の前記位置から導かれる隙間量及び段差量に基づいて、前記張出量及び上昇量を調整してもよい。
【0013】
この隙間段差低減システムにおいて、前記検知部は、測距のためのレーザ光を出射し、出射するレーザ光を上下方向に走査することによって、前記床面縁端の位置を検知することが好ましい。
【0014】
この隙間段差低減システムにおいて、前記制御部は、車両が駅に在線停止していることを検知する列車検知システムからの情報が入力され、車両が駅に停車している情報が入力されたとき、前記スライド昇降部の前記収納状態から張出状態への遷移を可能とし、車両が駅に停車している情報が入力されていないとき、前記収納状態から張出状態への遷移を禁止することが好ましい。
【0015】
この隙間段差低減システムにおいて、前記制御部は、車両が駅に在線停止していること及びその車両の停止位置を検知する列車検知システムからの情報が入力され、車両が駅に停車しており、かつ、その車両の停止位置が所定の範囲内である情報が入力されたとき、前記スライド昇降部の前記収納状態から張出状態への遷移を可能とし、それ以外のとき、前記収納状態から張出状態への遷移を禁止することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の隙間段差低減システムによれば、制御部は、検知部を用いて検知された隙間量及び段差量に基づいて、スライド昇降部の張出状態における張出量及び上昇量を調整するので、駅のホーム縁端と車両乗降口との間の隙間及び段差にばらつきがあっても、その隙間及び段差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る隙間段差低減システムにおけるスライド昇降部の平面配置図。
【
図3】同隙間段差低減システムにおけるスライド昇降部の張出状態を示す縦断面図。
【
図4】同隙間段差低減システムにおけるスライド昇降部の収納状態を示す縦断面図。
【
図5】同隙間段差低減システムにおける検知部の配置を示す立面図。
【
図6】同隙間段差低減システムにおける検知部の配置の変形例を示す立面図。
【
図7】同隙間段差低減システムにおける検知部の配置の別の変形例を示す立面図。
【
図8】ホーム縁端と車両乗降口との間の隙間及び段差を示す立面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る隙間段差低減システムを
図1乃至
図7を参照して説明する。
図1に示すように、隙間段差低減システム1は、駅のホーム2のホーム縁端211と車両3の車両乗降口31との間の隙間及び段差を低減するためのシステムである。
図2に示すように、隙間段差低減システム1は、検知部4と、隙間段差低減機5と、制御部6とを備える。隙間段差低減機5は、スライド昇降部51及び駆動部52を有し、駅に停車する車両3の扉位置に対応してホーム縁端部21に設けられる。すなわち、スライド昇降部51は、駆動部52とともに、駅に停車する車両3の扉位置に対応してホーム縁端部21に設けられる。
【0019】
隙間段差低減機5のスライド昇降部51は、ホーム縁端211と車両乗降口31の間の隙間及び段差を低減する板状部材である。駆動部52は、スライド昇降部51を駆動する装置である。制御部6は、駆動部52を介して、スライド昇降部51の動きを制御する。制御部6は、例えば、コンピュータ又はプログラマブルコントローラであり、CPU、メモリ、インターフェース等を有し、メモリに保存されたプログラムをCPUで実行することによって動作する。
【0020】
スライド昇降部51は、
図3に示すように、車両3側に張り出す(スライドする)とともに先端側が上昇した張出状態と、
図4に示すように、張り出していない収納状態とを有する。本実施形態では、張出状態において、スライド昇降部51は、建築限界22を超え、車両限界34に侵入しないように張り出す(
図3参照)。駅を通過する車両に対してスライド昇降部51が張出状態にならなければ、スライド昇降部51が車両限界34の内側まで張り出すように構成してもよい。収納状態において、スライド昇降部51は、建築限界22内に収納される(
図4参照)。建築限界22は、車両3の運転の安全を確保するために、車両限界34の外側に最小限必要な余裕空間の量(寸法)を定めたものである(JIS E 1001:2001 「鉄道-線路用語」参照)。車両限界34は、車両3が軌道上に停止しているとき、車両3のどの部分も超えてはならない左右・上下の限界である。
【0021】
スライド昇降部51は、張出状態における張出量及び先端側の上昇量が調整可能である。検知部4は、ホーム縁端211と車両乗降口31との間の隙間量及び段差量を検知するための装置である(
図2参照)。制御部6は、検知された隙間量及び段差量に基づいて、スライド昇降部51の張出状態における張出量及び上昇量を調整する。
【0022】
駆動部52は、スライド昇降部51の張出量を調整するボールねじ式直動機構、及び先端側の上昇量を調整するXリンク式昇降機構を有する(
図3及び
図4参照)。駆動部52は、筐体内にボールねじ521を有し、ボールねじ521を回転駆動することによって、スライド昇降部51をスライドして張出量を調整する。また、駆動部52は、スライド昇降部51を支持するX字形のリンク522、523と、そのリンク522、523の下端の間隔を変えるボールねじ524を有する。駆動部52は、ボールねじ524を回転駆動することによって、リンク522、523を上下方向に伸縮させ、スライド昇降部51の先端側の上昇量を調整する。
【0023】
隙間段差低減システム1は、記憶部7をさらに備える(
図2参照)。記憶部7は、車種ごとの車両の肩部の形状データとその車種に対応した隙間量及び段差量が記憶されている。
【0024】
記憶部7は、例えば、制御部6が内蔵するメモリ又は制御部6に外付けされるメモリ若しくは記憶装置である。
【0025】
図5に示すように、検知部4は、車両3の肩部33の形状を検知する。本実施形態では、検知部4は、測距のためのレーザ光Lを出射し、レーザ光Lをホーム長手方向に直交する走査面上で走査することによって、車両3の肩部33の形状(断面形状)を検知する。制御部6は、記憶部7を参照し、検知された肩部33の形状に対応する隙間量及び段差量に基づいて、スライド昇降部51の張出量及び上昇量を調整する。
【0026】
検知部4は、例えば、2次元走査型光距離センサ(2次元センサ)である。2次元走査型光距離センサは、レーザ光を平面上に走査し、その平面上での対象物までの距離を測定し、その平面上にある物体の断面形状を検知する。2次元走査型光距離センサが出射する光は、赤外線のレーザ光である。距離の測定は、光の飛行時間に基づく光飛行時間測距法によって行われる。
【0027】
本実施形態の変形例として、検知部4によって車両乗降口31を検知してもよい。
図6に示すように、検知部4は、車両乗降口31の床面縁端311(車両ドア側面のステップ部)の位置を検知する。制御部6は、検知された床面縁端311の位置から導かれる隙間量及び段差量に基づいて、スライド昇降部51の張出状態における張出量及び上昇量を調整する。本変形例では、検知部4は、ホーム縁端部21の下面に検知部4が設けられる。記憶部7には、検知部4から見た床面縁端311を含む車体側面の形状データが記憶されている。検知部4は、例えば2次元走査型光距離センサであり、測距のためのレーザ光Lを出射し、レーザ光Lをホーム長手方向に直交する走査面上で走査することによって、車両乗降口31の床面縁端311の位置を検知する。ホーム縁端211の位置は不動であるので、床面縁端311の位置を用いて隙間量及び段差量が算出される。
【0028】
別の変形例として、検知部4をホーム柵に取り付けてもよい。
図7に示すように、検知部4は、ホーム柵23の不動部分の線路側に設けられる。記憶部7には、検知部4から見た床面縁端311を含む車体側面の形状データが記憶されている。検知部4は、測距のためのレーザ光Lを出射し、レーザ光Lをホーム長手方向に直交する走査面上で走査することによって、車両乗降口31の床面縁端311の位置を検知する。なお、検知部4は、隙間段差低減機5に設けてもよく、近接センサ、リミットスイッチ、又は単軸レーザセンサ等であってもよい。
【0029】
隙間段差低減システム1において、隙間段差低減機5は、通常、車掌が用いる乗務員用扉32に近い車両乗降口31の位置に対応するホーム縁端部21に設けられる(
図1参照)。隙間段差低減システム1は、上述した構成に加えて、車掌用操作盤・表示灯11及び運転士用表示灯12を有する(
図2参照)。車掌用操作盤・表示灯11は、車掌が用いる乗務員用扉32の近くのホーム縁端部21に設けられ(
図1参照)、制御部6への動作指令の操作入力を操作盤で受けるとともに、制御部6からの状態信号を表示灯に表示する(
図2参照)。動作指令は、スライド昇降部51を張り出させる指令及び収納させる指令である。制御部6は、駆動部52に設けられたセンサによってスライド昇降部51の張出状態と収納状態を検知して状態信号を出力する。状態信号は、スライド昇降部51の張出状態と収納状態を示す。運転士用表示灯12は、運転士に視認される位置に設けられ(
図1参照)、制御部6からの状態信号を表示する(
図2参照)。
【0030】
上記のように構成された隙間段差低減システム1の動作を説明する。列車として運転される車両3が駅に停車すると、列車の車掌は、乗務員用扉32を開け、車掌用操作盤・表示灯11を操作してスライド昇降部51を張り出させる(
図1参照)。スライド昇降部51が張出状態であることは、車掌用操作盤・表示灯11及び運転士用表示灯12に表示される。車掌は、車椅子利用者等の乗降が済んだことを確認し、車掌用操作盤・表示灯11を操作してスライド昇降部51を収納させる。スライド昇降部51が収納状態であることは、車掌用操作盤・表示灯11及び運転士用表示灯12に表示される。このように、車椅子利用者の乗降に駅係員の支援が不要となる。
【0031】
本実施形態では、列車検知システム8が出力する情報を利用して安全性を高めている(
図2参照)。列車検知システム8は、車両3が駅に在線停止していることを検知するシステムである。ホーム2にホームドアが設置されている場合、ホームドアの制御システムは、列車検知システム8を有する。隙間段差低減システム1は、このような既設の列車検知システム8を利用する。なお、隙間段差低減システム1のために列車検知システム8を新設してもよい。
【0032】
制御部6は、列車検知システム8からの情報が入力される。制御部6は、車両3が駅に停車している情報(在線・停止信号)が列車検知システム8から入力されたとき、スライド昇降部51の収納状態から張出状態への遷移を可能とする。制御部6は、車両3が駅に停車している情報が入力されていないとき、スライド昇降部51の収納状態から張出状態への遷移を禁止する。これにより、車両3が駅に停車していない時、車掌用操作盤・表示灯11を操作してスライド昇降部51を張り出させようとしても、スライド昇降部51は、張出状態にならない。
【0033】
ホーム2にホームドアが設置されている場合、列車検知システム8は、在線・停止信号に加えて、停止位置信号を出力する。停止位置信号は、駅に在線停止している車両の停止位置の情報を有する。隙間段差低減システム1のために列車検知システム8を新設した場合、その列車検知システム8が停止位置信号を出力する機能を有してもよい。隙間段差低減システム1は、在線・停止信号及び停止位置信号を利用することにより、安全性をいっそう高めてもよい。
【0034】
制御部6は、車両3が駅に在線停止していること及びその車両3の停止位置を検知する列車検知システム8からの情報が入力される。制御部6は、車両3が駅に停車しており、かつ、その車両3の停止位置が所定の範囲内である情報が入力されたとき、スライド昇降部51の収納状態から張出状態への遷移を可能とする。制御部6は、それ以外のとき、収納状態から張出状態への遷移を禁止する。これにより、スライド昇降部51の前方に車両乗降口31が無い場合、車掌用操作盤・表示灯11を操作してスライド昇降部51を張り出させようとしても、スライド昇降部51は、張出状態にならない。
【0035】
以上、本実施形態に係る隙間段差低減システム1によれば、制御部6は、検知部4を用いて検知された隙間量及び段差量に基づいて、スライド昇降部51の張出状態における張出量及び上昇量を調整するので、駅のホーム縁端211と車両乗降口31との間の隙間及び段差にばらつきがあっても、その隙間及び段差を低減することができる。
【0036】
車両3の肩部33の形状を検知して、その形状に対応する隙間量及び段差量に基づいて、張出量及び上昇量を調整することにより、車両3の車種の違いによるホーム縁端211と車両乗降口31との間の隙間及び段差のばらつきに対応することができる。
【0037】
検知部4が測距のためのレーザ光を出射し、レーザ光をホーム長手方向に直交する走査面上で走査して車両3の肩部33の形状を検知することにより、車両3の車種を判別することができる。
【0038】
車両乗降口31の床面縁端311の位置を検知し、その位置から導かれる隙間量及び段差量に基づいて、張出量及び上昇量を調整することにより、ホーム縁端211と車両乗降口31との間の隙間及び段差のばらつきに対応することができる。
【0039】
検知部4が測距のためのレーザ光を出射し、レーザ光をホーム長手方向に直交する走査面上で走査して床面縁端の位置を検知することにより、ホーム縁端211と車両乗降口31との間の隙間及び段差をより直接的に把握することができる。
【0040】
制御部6が、車両3が駅に停車している情報が入力されていないとき、スライド昇降部51の収納状態から張出状態への遷移を禁止することにより、車両3が停車していないときにスライド昇降部51が張り出すことが防がれる。
【0041】
制御部6が、車両3が駅に停車しており、かつ、その車両3の停止位置が所定の範囲内である情報が入力されたとき、スライド昇降部51の収納状態から張出状態への遷移を可能とし、それ以外のとき、収納状態から張出状態への遷移を禁止することにより、スライド昇降部51の前方に車両乗降口31が無い場合にスライド昇降部51が張り出すことが防がれる。
【0042】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、隙間段差低減システム1は、スライド昇降部51の張出量及び上昇量の調整により、ホーム縁端211と車両乗降口31との間の隙間及び段差をほぼ完全に低減、すなわち隙間及び段差を解消してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 隙間段差低減システム
4 検知部
5 隙間段差低減機
51 スライド昇降部
6 制御部
7 記憶部