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  • 特許-粘着テープ 図1
  • 特許-粘着テープ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231026BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20231026BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231026BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20231026BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
C09J11/06
C09J7/29
B32B27/00 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019171160
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2020066735
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018200141
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】由藤 拓三
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-066295(JP,A)
【文献】特開2004-214069(JP,A)
【文献】特開2014-113705(JP,A)
【文献】特開2017-152372(JP,A)
【文献】国際公開第2008/065982(WO,A1)
【文献】特開2018-2892(JP,A)
【文献】特開2006-133606(JP,A)
【文献】特開2019-98748(JP,A)
【文献】特許第6147458(JP,B1)
【文献】特開平6-336583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の少なくとも一方の面に配置された粘着剤層とを備える、粘着テープであって、
該粘着テープは、環境温度50℃の雰囲気下で、接触面積12.5mmの端子により該粘着剤層の表面を荷重0.04MPaで10分間加圧し続けた際の押し込み深さの変位の変化量が3.5μm以下であり、
該粘着テープの、23℃におけるSUS板に対する粘着力は、5N/40mm以上であり、
該粘着剤層が、粘着剤を含み、
該粘着剤が、ガラス転移温度(Tg)が-40℃~-10℃の、(メタ)アクリル系ポリマーと、ガラス転移温度(Tg)が25℃以上58℃以下の樹脂とを含む、
粘着テープ。
【請求項2】
環境温度50℃の雰囲気下で、接触面積12.5mmの端子により前記粘着剤層の表面を荷重0.04MPaで加圧した際の押し込み深さの初期変位量が、7μm以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層が、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤から構成される、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層が、押し込み硬さが13MPa以上である高弾性率相と、押し込み硬さが13MPa未満の低弾性率相とから構成される、請求項1からのいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記高弾性率相の押しこみ硬さが、13MPa~50MPaである、請求項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層表面における前記高弾性率相の面積割合が、粘着剤層の表面の面積に対して、10%~50%である、請求項またはに記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着剤層が、エポキシ系架橋剤またはイソシアネート系架橋剤を含む粘着剤から構成される、請求項1からのいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記粘着剤層が、可塑剤を含む粘着剤から構成される、請求項1からのいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記可塑剤が、テレフタル酸エステル系可塑剤である、請求項に記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記基材の片方の面に前記粘着剤層を備え、該基材の該粘着剤層と反対の面に非粘着層を備える、請求項1からのいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項11】
前記非粘着層が、シリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合層である、請求項10に記載の粘着テープ。
【請求項12】
前記ガラス転移温度(Tg)が25℃以上の樹脂のSP値が、8.0(cal/cm0.5~10.0(cal/cm0.5である、請求項1から11のいずれかに記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、LEDパッケージは、出荷用粘着テープ上に搭載されたLEDチップを採取(ピックアップ)して製造される。一般に、LEDチップはLEDチップのメーカーからLEDパッケージのメーカーへ出荷用粘着テープに搭載された状態で出荷されるため、当該LEDチップがLEDパッケージの製造工程で使用に供されるまでの間、当該粘着テープ上で所定期間(数週間~数か月間)保管されることとなる。このとき、LEDチップは、粘着テープ上に配置された状態で積層されることが多い。このように積層状態でLEDチップを保管すると、当該LEDチップが粘着テープの粘着剤層に埋まりこむという現象が多発し、ピックアップ時にLEDチップを粘着テープから良好に剥離できないという問題が生じている。
【0003】
剥離性向上の手段としては、粘着剤層が硬くするという手段が一般的であり、この手段によればLEDチップの埋まり込みを防止することができる。しかしながら、粘着剤層を硬くすると、粘着力が低下して、LEDチップの保持が不十分となったり、粘着テープからのLEDチップのピックアップが不安定になるといった問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-019607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、被着体(例えば、LEDチップ)の埋まり込みを防止し得、かつ、十分な被着体保持力を有する粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粘着テープは、基材と、該基材の少なくとも一方の面に配置された粘着剤層とを備え、環境温度50℃の雰囲気下で、接触面積12.5mmの端子により粘着剤層の表面を荷重0.04MPaで10分間加圧し続けた際の押し込み深さの変位の変化量が3.5μm以下であり、23℃におけるSUS板に対する粘着力は、5N/40mm以上である。
1つの実施形態においては、上記粘着テープは、環境温度50℃の雰囲気下で、接触面積12.5mmの端子により上記粘着剤層の表面を荷重0.04MPaで加圧した際の押し込み深さの初期変位量が、7μm以下である。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層が、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤から構成される。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層が、ガラス転移温度が-40℃~-10℃であるベースポリマーを含む粘着剤から構成される。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層が、押し込み硬さが13MPa以上である高弾性率相と、押し込み硬さが13MPa未満の低弾性率相とから構成される。
1つの実施形態においては、上記高弾性率相の押しこみ硬さが、13MPa~50MPaである。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層表面における上記高弾性率相の面積割合が、粘着剤層の表面の面積に対して、10%~50%である。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層が、エポキシ系架橋剤またはイソシアネート系架橋剤を含む粘着剤から構成される。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層が、可塑剤を含む粘着剤から構成される。
1つの実施形態においては、上記可塑剤が、テレフタル酸エステル系可塑剤である。
1つの実施形態においては、上記粘着テープは、上記基材の片方の面に上記粘着剤層を備え、該基材の該粘着剤層と反対の面に非粘着層を備える。
1つの実施形態においては、上記非粘着層が、シリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合層である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被着体(例えば、LEDチップ)の埋まり込みを防止し得、かつ、十分な被着体保持力を有する粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の粘着テープの1つの実施形態の概略断面図である。
図2】本発明の粘着テープの別の実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.粘着テープの全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による粘着テープの概略断面図である。粘着テープ100は、基材10と、基材10の少なくとも一方の面(図示例では片側)に配置された粘着剤層20とを備える。図示していないが、本発明の粘着シートは、使用に供するまでの間、粘着面を保護する目的で、粘着剤層の外側に剥離ライナーが設けられていてもよい。
【0010】
図2は、本発明の別の実施形態による粘着テープの概略断面図である。粘着テープ200は、基材10と、基材10の一方の面に配置された粘着剤層20と、基材10の粘着剤層20とは反対側の面に配置された非粘着層30とを備える。
【0011】
本発明の粘着テープは、環境温度50℃の雰囲気下で、接触面積12.5mmの端子により粘着剤層の表面を荷重0.04MPaで10分間加圧し続けた際の押し込み深さの変位の変化量が3.5μm以下である。ここで、押し込み深さの変位の変化量とは、環境温度50℃の雰囲気下で、接触面積12.5mmの端子により粘着剤層の表面を荷重0.04MPaで加圧した状態(初期状態)の押し込み深さの初期変位と、初期状態から荷重0.04MPaでの加圧を維持したまま10分間経過した後の押し込み深さの変位との差を意味する。すなわち、上記押し込み深さの変位の変化量が小さいということは、粘着テープ(実質的には粘着剤層)の加圧下における経時の形状変化が少ないことを意味する。本発明の粘着テープにおいては、上記押し込み深さの変位の変化量が小さいことにより、被着体の埋まり込みが抑制される。本発明の粘着テープは、特に、経時において被着体が粘着剤層に埋まり込んでいくような状況下において、有用に用いられ得る。本発明の粘着テープは、例えば、LEDチップ等の小片化された被着体の保管用粘着テープとして好適であり、当該粘着テープにLEDチップを長時間載置して保管する場合、また、荷重がかかる状況下で保管する場合においても、本発明の粘着テープを用いれば、保管後のLEDチップのピックアップ不良が防止される。本発明の粘着テープに載置される被着体(例えば、LEDチップ)の形状は、例えば、1辺の長さが0.1mm~2.5mmの正方形状または長方形状である。当該被着体の厚みは、例えば、0.05mm~2.0mmである。
【0012】
環境温度50℃の雰囲気下で、接触面積12.5mmの端子により粘着剤層の表面を荷重0.04MPaで10分間加圧し続けた際の押し込み深さの変位の変化量は、好ましくは3μm以下であり、より好ましくは2.5μm以下であり、さらに好ましくは2μm以下であり、特に好ましくは1.5μm以下である。当該押し込み深さの変位の変化量の下限は、小さいほど好ましいが、例えば、0.5μm(好ましくは0.1μm、より好ましくは0.05μm)である。
【0013】
環境温度50℃の雰囲気下で、接触面積12.5mmの端子により粘着剤層の表面を荷重0.04MPaで加圧した際の押し込み深さの変位量(初期変位量)は、好ましくは7μm以下であり、より好ましくは6.5μm以下である。初期変位量の下限は、例えば、2μmである。
【0014】
本発明の粘着テープの23℃におけるSUS板に対する粘着力は、5N/40mm以上である。このような範囲であれば、被着体を良好に保持し得る粘着テープを得ることができる。本発明の粘着テープは、上記のように被着体の埋まり込みを防ぎつつも、十分な被着体保持性を有し、例えば、複数のLEDチップ等を固定して保管する際に好適に用いられ得る。
【0015】
本発明の粘着テープの23℃におけるSUS板に対する粘着力は、好ましくは7N/40mm以上であり、より好ましくは10N/40mm以上であり、さらに好ましくは15N/40mm以上である。本発明の粘着テープの23℃におけるSUS板に対する粘着力の上限は、例えば、50N/40mmであり、好ましくは40N/40mmである。本明細書において、粘着力は、JIS Z 0237:2000に準じた方法で測定される粘着力であり、5kgローラー1往復で圧着して粘着テープとSUS板を積層し、粘着テープを引張速度10m/min、剥離角度20°で剥離して、測定した粘着力をいう。
【0016】
本発明の粘着テープの厚みは、好ましくは20μm~120μmであり、より好ましくは30μm~120μmであり、さらに好ましくは40μm~120μmである。
【0017】
B.粘着剤層
上記粘着剤層は、任意の適切な粘着剤を含む。粘着剤を構成するベースポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー;天然ゴム;メタクリル酸メチルなどのモノマーをグラフトした特殊天然ゴム;SBS、SBR、SEPS、SIS、SEBS、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリイソブチレン、ブチルゴムなどの合成ゴム;などが挙げられる。これらの中でも、剥離後の被着体への糊残りが少なく、高凝集性を有し、透明性に優れる点で、(メタ)アクリル系ポリマーが好ましい。ベースポリマーは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0018】
粘着剤を構成するベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは25℃未満であり、より好ましくは10℃以下であり、さらに好ましくは-40℃~-10℃である。このような範囲であれば、粘着力に優れる粘着剤層を形成することができる。本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、下記の式による計算Tgである。
ガラス転移温度(Tg)=(m1×M1tg)+(m2×M2tg)・・・+(mn×Mntg)
m1:モノマー成分1のモル分率
M1tg:モノマー成分1のホモポリマーTg
m2:モノマー成分2のモル分率
M2tg:モノマー成分2のホモポリマーTg
mn:モノマー成分nのモル分率
Mntg:モノマー成分nのホモポリマーTg
【0019】
1つの実施形態においては、粘着剤を構成するベースポリマーとして、(メタ)アクリル系ポリマーが用いられ、粘着剤層は(メタ)アクリル系ポリマーを含む。粘着剤層が(メタ)アクリル系ポリマーを含む場合、粘着剤層中の(メタ)アクリル系ポリマーの含有割合は、目的に応じて適宜設定し得る。
【0020】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルを主モノマーとして含むモノマー成分から構成され得る。(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有割合は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは50重量部以上であり、より好ましくは70重量部~100重量部であり、さらに好ましくは80重量部~90重量部である。上記モノマー成分中のモノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数が1~30のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0022】
炭素数が1~30のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の、炭素数が1~30のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルの中でも、好ましくは、炭素数が2~20のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、より好ましくは炭素数が4~18のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0023】
上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なその他のモノマーをさらに含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。より好ましくは、カルボキシル基含有モノマーである。
【0024】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アリルアルコールなどが挙げられる。水酸基含有モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0025】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0026】
また、上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、上記以外のその他のモノマーをさらに含み得る。その他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;、スチレン等のスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン(ACMO)、N-ビニルピロリドン(NVP)等のアミド基含有モノマー;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、メチルビニルピロリドン等の環状窒素含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシ基含有モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の官能性モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;塩化ビニル等のハロゲン原子含有モノマー;N-ビニルカルボン酸アミド類等が挙げられる。なかでも好ましくは、シアノ基含有モノマー(より好ましくはアクリロニトリル)、アミド基含有モノマー(より好ましくは、アクリロイルモルホリン(ACMO)、N-ビニルピロリドン(NVP)である。
【0027】
上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分が水酸基含有モノマーを含む場合、水酸基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~20重量部であり、より好ましくは0.1重量部~10重量部である。上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分がカルボキシル基含有モノマーを含む場合、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~20重量部であり、より好ましくは0.1重量部~10重量部である。このように、上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分が、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種を含むことにより、架橋剤を用いた場合に、該架橋剤との架橋反応を効率的に生じさせることが可能となり、粘着剤としての効果を十分に発現させることができる。さらに、水酸基含有モノマーの含有割合および/またはカルボキシル基含有モノマーの含有割合を、上記範囲内とすることによって、粘着剤層(低弾性率相)の弾性率と粘着力を好ましい範囲に調整することができ、ピックアップ性に特に優れる粘着テープを得ることができる。
【0028】
1つの実施形態においては、粘着剤層は、高弾性率相を形成する添加剤を含む。このような粘着剤層は当該添加剤を含む粘着剤により形成され得る。高弾性率相とは、粘着剤層表面において、ベースポリマーにより形成された部分と弾性率により区別される部分であり、ベースポリマーにより形成された箇所よりも弾性率が高い部分を意味する(詳細は後述)。高弾性率相を形成する添加剤としては、ガラス転移温度(Tg)が高い樹脂(例えば、Tgが25℃以上の樹脂)、無機粒子、金属粒子等が挙げられる。
【0029】
1つの実施形態においては、粘着剤層は、ガラス転移温度(Tg)が25℃以上(好ましくは25℃~150℃、より好ましくは30℃~120℃、さらに好ましくは30℃~100℃)の樹脂を含む。ガラス転移温度(Tg)が25℃以上の樹脂としては、本発明の効果が得られる限り、任意の適切な樹脂が用いられ得る。当該樹脂としては、例えば、アクリロニトリルエチレンプロピレン(ジエン)スチレン共重合体、アクリロニトリルメタクリル酸共重合体、アクリロニトリルメタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル塩化ポリエチレンスチレン共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリロニトリルエチレンプロピレンスチレン共重合体、芳香族ポリエステル、アクリロニトリルスチレンアクリロエステル共重合体、ブタジエンスチレン共重合体、セルロースアセテート、セルロースアセトブチレート、セルロースアセトプロピオネート、水和セルロース、カルボキシメチルセルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、エチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメタクリレート共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンブテン共重合体、エチルセルロース、ポリスチレン、ポリフルオロエチレンプロピレン、メタクリル酸メチルアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、メタクリル酸メチルブタジエンスチレン共重合体、メチルセルロース、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド6-3-t、ポリアミド6-テレフタル酸共重合体、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6i、ポリアミドmxd6、ポリアミドpda-t、ポリアミド、ポリアリールエーテル、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアリールアミド、ポリアミノ-ビス-メレイミド、ポリアリーレート、ポリブテン-1、ポリブチルアクリレート、ポリベンズイミダゾール、ポリ-ビス-マレイミド、ポリオキサジアゾベンズイミダゾール、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリエステルカーボネート、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエチレンオキシド、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリイソブチレン、ポリイソシアヌレート、ポリイミドスルホン、ポリメタクリルイミド、ポリメタクリレート、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエン共重合体、スチレンイソプレン共重合体、スチレン無水マレイン酸共重合体、スチレン無水マレイン酸ブタジエン共重合体、スチレンメタクリル酸メチル共重合体、スチレンメチルスチレン共重合体、スチレンアクリロニトリル共重合体、塩化ビニルエチレン共重合体、塩化ビニルメタクリレート共重合体、塩化ビニル無水マレイン酸共重合体、塩化ビニルマレイミド共重合体、塩化ビニルメタクリル酸メチル共重合体、塩化ビニルオクチルアクリレート共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル塩化ビニリデン共重合体および塩化ビニル塩化ビニリデンアクリロニトリル共重合体等が挙げられる。
【0030】
ガラス転移温度(Tg)が25℃以上の樹脂のSP値は、好ましくは8.0(cal/cm0.5~10.0(cal/cm0.5であり、より好ましくは8.5(cal/cm0.5~10.0(cal/cm0.5である。SP値がこのような範囲の上記樹脂は、粘着剤を構成するベースポリマーとの親和性に優れる。SP値がこのような範囲の上記樹脂を粘着剤層に添加すれば、本発明の効果はより顕著となる。SP値は、Smallの式によって算出される溶解度パラメータである。SP値の計算は、公知の文献(例えば、Journal of Applied Chemistry,3,71,1953.など)に記載された方法で行うことができる。
【0031】
高弾性率相を形成する添加剤の含有割合は、粘着剤層100重量部に対して、好ましくは5重量部~50重量部であり、より好ましくは10重量部~40重量部である。このような範囲であれば、応力変形しがたく、かつ、十分な粘着性を有する粘着剤層を形成することができる。
【0032】
上記粘着剤は、好ましくは、架橋剤を含む。架橋剤の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~20重量部であり、より好ましくは0.3重量部~10重量部であり、さらに好ましくは0.5重量部~8重量部であり、特に好ましくは0.5重量部~5重量部である。
【0033】
架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。架橋剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0034】
好ましくは、架橋剤として、エポキシ系架橋剤またはイソシアネート系架橋剤が用いられる。これらの架橋剤を用いれば、小片化された被着体を容易に剥離することができ、かつ、被着体への糊残りが少ない粘着テープを得ることができる。エポキシ系架橋剤を含む粘着剤から構成された粘着剤層は、エポキシ系架橋剤由来の構成単位を有するベースポリマーを含む。また、イソシアネート系架橋剤を含む粘着剤から構成された粘着剤層は、イソシアネート系架橋剤由来の構成単位を有するベースポリマーを含む。
【0035】
エポキシ系架橋剤の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~20重量部であり、より好ましくは0.3重量部~10重量部であり、さらに好ましくは0.5重量部~8重量部であり、特に好ましくは0.5重量部~5重量部である。このような範囲であれば、ピックアップ性に優れる粘着テープを得ることができる。
【0036】
イソシアネート系架橋剤の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~20重量部であり、より好ましくは0.3重量部~10重量部であり、さらに好ましくは0.5重量部~8重量部であり、特に好ましくは0.5重量部~5重量部である。このような範囲であれば、ピックアップ性に優れる粘着テープを得ることができる。
【0037】
粘着剤層(粘着剤)は、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~100重量部であり、より好ましくは25重量部~90重量部である。
【0038】
上記可塑剤としては、例えば、テレフタル酸エステル系、イソフタル酸エステル系、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系(大日本インキ社製、W-700、トリメリット酸トリオクチル等)、アジピン酸エステル系(ジェイプラス社製、D620、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等)、リン酸エステル系(リン酸トリクレシル等)、アジピン酸系エステル、クエン酸エステル(アセチルクエン酸トリブチル等)、セバシン酸エステル、アセライン酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、ポリエーテル系ポリエステル、エポキシ系ポリエステル(エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等)、ポリエステル(カルボン酸とグリコールからなる低分子ポリエステル等)などが挙げられる。可塑剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0039】
1つの実施形態においては、粘着剤層は、基材に含まれる可塑剤と同系の可塑剤が用いられる。このような可塑剤としては、例えば、テレフタル酸エステル系可塑剤が挙げられる。基材に含まれる可塑剤と同系の可塑剤を粘着剤層に含有させれば、基材から粘着剤層へ可塑剤が移行した場合にも、基材および粘着剤層の経時による変質を抑制することができる。
【0040】
テレフタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、テレフタル酸ジブチル(DBTP)、テレフタル酸ジイソブチル(DIBTP)、テレフタル酸ジノルマルヘキシル(DHTP)、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOTP)、テレフタル酸ジノルマルオクチル(DnOTP)、テレフタル酸ジイソノニル(DINTP)、テレフタル酸ジノニル(DNTP)、テレフタル酸ジイソデシル(DIDTP)、テレフタル酸ビスブチルベンジル(BBTP)等が挙げられる。なかでも好ましくはDOTPである。
【0041】
可塑剤としてテレフタル酸エステル系可塑剤を用いる場合、該テレフタル酸エステル系可塑剤の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは10重量部~40重量部であり、より好ましくは20重量部~30重量部である。このような範囲であれば、柔軟性に優れて被着体への追従性が優れる粘着テープを得ることができる。含有割合が40重量部を超えると、可塑剤の不要な溶出が生じるおそれがある。
【0042】
粘着剤層は、任意の適切な触媒を含んでいてもよい。触媒を含有させることにより、架橋反応等を促進させることができる。触媒の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.01重量部~20重量部である。
【0043】
触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート等の有機金属化合物;ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、t-ブチルアミン、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、イミダゾール、水酸化リチウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート等の塩基性化合物;p-トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸、燐酸、モノアルキル燐酸、ジアルキル燐酸、β-ヒドロキシエチルアクリレートの燐酸エステル、モノアルキル亜燐酸、ジアルキル亜燐酸等の酸性化合物;などが挙げられる。触媒は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0044】
粘着剤層には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれていても良い。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、充填剤、老化防止剤、粘着付与剤、顔料、染料、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0045】
1つの実施形態において、上記粘着剤層は、その表面において、弾性率により区別されて高弾性率相と低弾性率相とから構成される相分離構造を有する。1つの実施形態においては、上記粘着剤層は、押し込み硬さが13MPa以上である高弾性率相と、押し込み硬さが13MPa未満の低弾性率相とから構成される。高弾性率相を有する粘着剤層を備える粘着テープは、経時の形状変化が特に少なく、被着体の埋まり込みを有効に防止し得る。上記のように相分離構造を有する粘着剤層は、例えば、上記の高弾性率相を形成する添加剤を添加することにより形成させることができる。この場合、低弾性率相の弾性率(押しこみ硬さ)は、粘着剤を構成するベースポリマーの種類、架橋度、分子量等により調整することができる。また、高弾性率相の弾性率(押し込み硬さ)は、高弾性率相を形成する添加剤、その添加量等により調整することができる。例えば、高弾性率相を形成する添加剤として、ガラス転移温度が高い樹脂を用いる場合、当該樹脂のガラス転移温度により、高弾性率相の弾性率を調整することができる。
【0046】
粘着剤層の上記低弾性率相の押しこみ硬さは、好ましくは13MPa未満であり、より好ましくは2MPa以上13MPa未満であり、さらに好ましくは4MPa以上13MPa未満、特に好ましくは6MPa~12MPaである。このような範囲であれば、良好な被着体保持力を有し、かつ、被着体のピックアップ性にも優れる粘着テープを得ることができる。本明細書において、押し込み硬さは、25℃の環境温度下でのAFM弾性率である。押し込み硬さの測定方法は、後述する。
【0047】
粘着剤層の上記高弾性率相の押しこみ硬さは、好ましくは13MPa以上であり、より好ましくは15MPa~50MPaであり、さらに好ましくは20MPa~50MPaであり、とくに好ましくは25MPa~40MPaである。このような範囲であれば、加圧下における経時の形状変化が特に少なく、被着体の埋まり込みを有効に防止し得る粘着テープを得ることができる。
【0048】
粘着剤層表面(片面)において、高弾性率相の面積割合は、粘着剤層の表面の面積に対して、好ましくは10%~50%であり、より好ましくは10%~40%であり、さらに好ましくは10%~30%である。このような範囲であれば、被着体保持力および被着体の埋まり込み特性が高度に両立された粘着テープを得ることができる。なお、高弾性率相/低弾性率相の識別は、例えば、TEM等を用いた表面観察により行うことができ、各相の面積は、凍結ミクロトーム切断にて作製した粘着剤層断面のAFMによるフォースカーブマッピングにてマッピングして、測定することができる。また、「粘着剤層の表面」とは、粘着剤層の基材とは反対側の面を意味する。
【0049】
粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm~30μmであり、より好ましくは1μm~20μmであり、さらに好ましくは3μm~15μmである。このような範囲であれば、良好な粘着性を有し、かつ、被着体の埋まり込みを防止し得る粘着テープを得ることができる。
【0050】
粘着剤層を基材上に設ける方法としては、任意の適切な手段を採用し得る。例えば、粘着剤層を形成する塗工液を基材上に塗工することによって、粘着剤層を形成することができる。
【0051】
塗工方式としては、任意の適切な塗工方式を採用し得る。塗工方式としては、例えば、リバース方式、ダイレクト方式、メタリングロールを組み合わせた各種方式などが挙げられる。
【0052】
本発明の粘着テープは、粘着剤層の表面に剥離ライナーを備えていてもよい。
【0053】
剥離ライナーとしては、任意の適切なセパレータを採用し得る。このような剥離ライナーとしては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等の剥離層を有する基材;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系ポリマーからなる低接着性基材;オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等の無極性ポリマーからなる低接着性基材;などが挙げられる。
【0054】
剥離ライナーを用いる場合、塗工液を剥離ライナー上に塗工し、基材上に貼り合わせして粘着剤層を転写させることで、基材上に粘着剤層を設けてもよい。
【0055】
C.基材
基材の厚みは、好ましくは20μm~120μmであり、より好ましくは30μm~120μmであり、さらに好ましくは40μm~120μmである。基材の厚みが薄すぎる場合、取扱性が悪くなるおそれがある。基材の厚みが厚すぎる場合、延伸等の変形に対する追随性が悪くなり、ニードル突き上げによるピックアップ性が低下するおそれがある。
【0056】
基材は、JIS-K-7127(1999年)に従って測定される最大伸びが、好ましくは100%以上であり、より好ましくは200%~1000%である。このような最大伸びを示す基材を使用することにより、本発明の粘着テープに適度な伸び性を付与することができ、例えば、被着体への追従性が向上し得る。伸び性を有する粘着テープは、ニードル突き上げにより被着体をピックアップするような場合に、有用である。最大伸びは23℃の環境下で測定され得る。
【0057】
基材を構成する材料としては、任意の適切な材料が用いられ得る。好ましくは、基材としては、プラスチックフィルムが用いられる。
【0058】
プラスチックフィルムは、任意の適切な樹脂材料を含み得る。このような樹脂材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドなどが挙げられる。なかでも好ましくは、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンまたはエチレン-酢酸ビニル共重合体であり、より好ましくは、ポリ塩化ビニルである。ポリ塩化ビニルは応力緩和性に優れるため、ニードル突き上げ時の衝撃を適度に緩和し、小片化された被着体(例えば、LEDチップ)の位置ずれや脱落を抑制できる。このようなポリ塩化ビニルを用いれば小片化された被着体(例えば、LEDチップ)の出荷用粘着テープとして好適な粘着テープを得ることができる。
【0059】
プラスチックフィルム中の上記樹脂材料の含有割合としては、プラスチックフィルム100重量部に対して、例えば、50重量部~100重量部であり、好ましくは60重量部~100重量部であり、さらに好ましくは70重量部~100重量部である。
【0060】
プラスチックフィルム中には、可塑剤が含まれていても良い。プラスチックフィルム中の可塑剤の含有割合は、該プラスチックフィルム中の上記樹脂材料100重量部に対して、好ましくは0.5重量部~50重量部であり、より好ましくは1.0重量部~40重量部である。プラスチックフィルム中に上記含有割合にて可塑剤を含ませることによって、延伸等の変形に対する追随性に優れ、ピックアップ性が良好な粘着テープを得ることができる。
【0061】
プラスチックフィルムに含まれる可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系、イソフタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系(大日本インキ(株)製、W-700、トリメリット酸トリオクチル等)、アジピン酸エステル系((株)ジェイプラス製、D620、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等)、リン酸エステル系(リン酸トリクレシル等)、アジピン酸系エステル、クエン酸エステル(アセチルクエン酸トリブチル等)、セバシン酸エステル、アセライン酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、ポリエーテル系ポリエステル、エポキシ系ポリエステル(エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等)、ポリエステル(カルボン酸とグリコールからなる低分子ポリエステル等)などが挙げられる。本発明においては、エステル系可塑剤を用いることが好ましい。可塑剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0062】
1つの実施形態においては、プラスチックフィルムに含まれる上記可塑剤として、テレフタル酸エステル系可塑剤が用いられる。テレフタル酸エステル系可塑剤を用いれば、本発明の効果はより顕著となる。より詳細には、比較的サイズの大きいLEDチップを貼着した際にも、ピックアップ性が低下せずに、良好に該LEDチップをピックアップすることができる。また、LEDチップを貼着した状態で長期間保管した際にも、ピックアップ性の低下が抑制される。
【0063】
テレフタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOTP)、テレフタル酸ジブチル(DBTP)、テレフタル酸ジイソブチル(DIBTP)、テレフタル酸ジノルマルヘキシル(DHTP)、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOTP)、テレフタル酸ジノルマルオクチル(DnOTP)、テレフタル酸ジイソノニル(DINTP)、テレフタル酸ジノニル(DNTP)、テレフタル酸ジイソデシル(DIDTP)、テレフタル酸ビスブチルベンジル(BBTP)等が挙げられる。なかでも好ましくはDOTPである。
【0064】
プラスチックフィルム中には、本発明の効果を損なわない範囲において、任意の適切なその他の成分を含んでいても良い。
【0065】
基材は、任意の適切な製造方法によって製造し得る。例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、カレンダー成形、ブロー成形等の成形方法により、基材を得ることができる。
【0066】
D.非粘着層
1つの実施形態においては、本発明の粘着テープは、基材の片方の面に粘着剤層を備え、該基材の該粘着剤層と反対の面に非粘着層を備える。なお、非粘着層とは、23℃においてSUS板に圧着しても密着状態を維持できず、容易に位置ずれ、もしくは、自然剥離が発生する層のことをいう。
【0067】
このような非粘着層の組成等は特に限定されるものではなく、その一例としては、シリコーン層、(メタ)アクリル系ポリマー層、シリコーン層と(メタ)アクリル系ポリマー層の混合層、(メタ)アクリル系ポリマーがグラフト重合されたシリコーン層などが挙げられる。これらの中でも、シリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合層が好ましい。非粘着層をシリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合層とすることにより、非粘着層と基材(特に、プラスチックフィルム)との馴染みが良くなり、本発明の粘着テープは、延伸等の変形に対する追随性が良好なものとなる。
【0068】
非粘着層の表面は凹凸構造を有することが好ましい。非粘着層の表面が凹凸構造を有することにより、取り扱い性に優れる粘着テープを得ることができる。この凹凸構造は、具体的には、非粘着層の算術平均表面粗さRaが、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.1μm~3.0μmであり、さらに好ましくは0.2μm~2.0μmであり、特に好ましくは0.3μm~2.0μmであり、最も好ましくは0.5μm~2.0μmである。このような範囲であれば、ブロッキングが抑制された粘着テープを得ることができる。表面粗さRaは、JIS B 0601:1994に準じて測定することができる。
【0069】
非粘着層は、示差走査熱量測定(DSC測定)によるガラス転移温度Tgが、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上であり、特に好ましくは55℃以上である。非粘着層の示差走査熱量測定によるガラス転移温度Tgの上限は、特に限定されないが、取扱性等の観点から、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは170℃以下であり、さらに好ましくは150℃以下であり、特に好ましくは130℃以下であり、最も好ましくは100℃以下である。このような範囲であれば、非粘着層が適度な硬さを有し、搬送工程中での擦れなどによる非粘着層の脱落を防止することができる。
【0070】
非粘着層が(メタ)アクリル系ポリマーを含む場合、非粘着層中の(メタ)アクリル系ポリマーは、そのSP値が、好ましくは9.0(cal/cm0.5~12.0(cal/cm0.5であり、より好ましくは9.5(cal/cm0.5~11.5(cal/cm0.5であり、さらに好ましくは9.5(cal/cm0.5~11.0(cal/cm0.5である。
【0071】
非粘着層は、好ましくは、相分離構造を有する。非粘着層が相分離構造を有することにより、該非粘着層の表面に微小な凹凸構造が効率的に形成され得る。例えば、非粘着層がシリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合層である場合、相分離構造生成時のシリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーとの物質移動性の差異によって凹凸が生成するものと推測される。このようにして凹凸構造が形成されていれば、取り扱い性に優れ、かつ、ロール形態にした際のブロッキングが抑制された粘着テープが得られ得る。
【0072】
非粘着層は、好ましくは、シリコーンが(メタ)アクリル系ポリマーよりも多く含まれるシリコーンリッチ相と(メタ)アクリル系ポリマーがシリコーンよりも多く含まれる(メタ)アクリル系ポリマーリッチ相を含む。非粘着層は、より具体的には、好ましくは、上記シリコーンリッチ相と上記(メタ)アクリル系ポリマーリッチ相とが互いに独立した相分離構造で含み、より好ましくは、上記シリコーンリッチ相が空気界面側(基材の反対側)に存在し、上記(メタ)アクリル系ポリマーリッチ相が基材側に存在する。このような相分離構造を有することにより、空気界面側に存在するシリコーンリッチ相によってブロッキングが効果的に抑制され、基材側に存在する(メタ)アクリル系ポリマーリッチ相によって非粘着層と基材との馴染みが良くなって変形追随性が良好になる。例えば、非粘着層中のシリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合比を下記のように調整することによって、このような相分離構造を形成し得る。
【0073】
非粘着層が、相分離構造を有することや、上記のような、シリコーンが(メタ)アクリル系ポリマーよりも多く含まれるシリコーンリッチ相と(メタ)アクリル系ポリマーがシリコーンよりも多く含まれる(メタ)アクリル系ポリマーリッチ相を含むことは、任意の適切な方法によって観察し得る。このような観察方法としては、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、電解放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)などの電子顕微鏡を用いて非粘着層断面を形態観察する方法が挙げられる。2層分離構造は、形態観察像の濃淡により判読することが可能である。また、全反射法による赤外吸収分光によって、非粘着層空気界面側から内部へとプローブ光深度を変えながら、組成中に含まれるケイ素や炭素などの含有量の変化を観測することによって観察する方法も挙げられる。この他、X線マイクロアナライザーやX線光電子分光によって観察する方法も挙げられる。また、適宜これらの方法を組み合わせて観察しても良い。
【0074】
非粘着層がシリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合層である場合、非粘着層中のシリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合比は、重量比で、好ましくは、シリコーン:(メタ)アクリル系ポリマー=1:50~50:1であり、より好ましくは、シリコーン:(メタ)アクリル系ポリマー=1:30~30:1であり、さらに好ましくは、シリコーン:(メタ)アクリル系ポリマー=1:10~10:1であり、特に好ましくは、シリコーン:(メタ)アクリル系ポリマー=1:5~5:1であり、最も好ましくは、シリコーン:(メタ)アクリル系ポリマー=1:3~5:1である。非粘着層中のシリコーンの含有割合が大きすぎると、基材(特に、プラスチックフィルム)背面との化学的親和性が低くなり、基材(特に、プラスチックフィルム)背面に馴染みにくいおそれがある。また、非粘着層中のシリコーンの含有割合が大きすぎると、粘着テープとした場合、延伸等の変形に対する追随性が悪くなるおそれがある。非粘着層中の(メタ)アクリル系ポリマーの含有割合が大きすぎると、非粘着層がアクリル系粘着剤として作用してしまうおそれがあり、ブロッキングが生じやすいおそれがある。
【0075】
シリコーンとしては、任意の適切なシリコーンを採用し得る。このようなシリコーンとしては、例えば、白金系化合物を触媒としてアルケニル基含有ポリジアルキルシロキサンとポリジアルキルハイドロジェンポリシロキサンを付加反応により硬化させて剥離性皮膜を形成して得られる付加型シリコーン、スズ系触媒を用いたメチロール基含有ポリジアルキルシロキサンとポリジアルキルハイドロジェンポリシロキサンを反応させて得られる縮合型シリコーンなどが挙げられる。付加型シリコーンの例としては、例えば、信越シリコーン製の「KS-776A」、「KS-839L」などが挙げられる。縮合型シリコーンの例としては、例えば、信越シリコーン製の「KS723A/B」などが挙げられる。なお、シリコーンを製造する際には、白金系触媒やスズ系触媒の他に、適宜、その他の架橋剤、架橋促進剤などを使用しても良い。また、シリコーンの性状としては、トルエン等の有機溶剤に溶解したタイプ、これらをエマルジョン化したエマルジョンタイプ、シリコーンのみからなる無溶剤タイプなどに分類される。また、付加型シリコーンや縮合型シリコーンの他に、シリコーン/アクリルグラフトポリマー、シリコーン/アクリルブロックポリマーなどを使用することができる。シリコーン/アクリルグラフトポリマーとしては、例えば、サイマックGS-30、GS101、US-270、US-350、US-380(以上、東亞合成(株)製)などが挙げられる。シリコーン/アクリルブロックポリマーとしては、例えば、モディパーFS700、FS710、FS720、FS730、FS770(以上、日油(株)製)などが挙げられる。
【0076】
非粘着層に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系モノマーを主モノマーとして含むモノマー成分から構成されるポリマーである。また、上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー等のその他のモノマーを含んでいてもよい。
【0077】
非粘着層に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位の含有割合は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは50重量部以上であり、より好ましくは70重量部~100重量部であり、さらに好ましくは90重量部~100重量部であり、特に好ましくは95重量部~100重量部である。上記モノマー成分中のモノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0078】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0079】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数が1~30のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0080】
炭素数が1~30のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の、炭素数が1~30のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルの中でも、好ましくは、炭素数が2~20のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、より好ましくは炭素数が4~18のアルキル基(シクロアルキル基も含む)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0081】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0082】
上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、本発明の効果を十分に発現させるために、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種を含んでいても良い。
【0083】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、アリルアルコールなどが挙げられる。水酸基含有モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0084】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0085】
非粘着層が(メタ)アクリル系ポリマーを含む場合、非粘着層中の(メタ)アクリル系ポリマーは、好ましくは、それを構成するモノマー成分中の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの含有割合が、該水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマー成分の総量に対して、好ましくは2重量%~30重量%であり、より好ましくは3重量%~25重量%であり、特に好ましくは5重量%~20重量%である。非粘着層が(メタ)アクリル系ポリマーを含む場合、非粘着層中の(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分中の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの含有割合が、該水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマー成分の総量に対して、上記範囲内に収まれば、非粘着層の表面に微小な凹凸構造が一層効率的に形成され、この凹凸構造の形成によって、本発明の粘着テープにおいて、ロール状の形態におけるブロッキングが一層効果的に抑制でき、ロール状の形態から巻き戻す際に裂けたり破れたりすることを一層抑制し得る。
【0086】
非粘着層が(メタ)アクリル系ポリマーを含む場合、非粘着層中の(メタ)アクリル系ポリマーは、好ましくは、それを構成するモノマー成分における水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマー成分中に、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルを含むことができる。この場合、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの含有割合は、重量比で、(メタ)アクリル酸:(メタ)アクリル酸エステルが、好ましくは0:100~20:80であり、より好ましくは0:100~10:90であり、さらに好ましくは0:100~5:95である。
【0087】
(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの含有割合が上記範囲内に収まれば、非粘着層の表面に微小な凹凸構造が一層効率的に形成され、この凹凸構造の形成によって、本発明の粘着テープにおいて、ロール状の形態におけるブロッキングが一層効果的に抑制でき、ロール状の形態から巻き戻す際に裂けたり破れたりすることを一層抑制し得る。
【0088】
(メタ)アクリル系ポリマーは、任意の適切な重合方法によって製造し得る。
【0089】
非粘着層には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれていても良い。このような添加剤としては、例えば、触媒、紫外線吸収剤、充填剤、老化防止剤、粘着付与剤、顔料、染料、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0090】
非粘着層の厚みは、好ましくは0.01μm~10μmであり、より好ましくは0.1μm~5μmであり、さらに好ましくは0.1μm~2μmである。非粘着層の厚みが0.01μm未満の場合、ブロッキングが生じやすくなる。非粘着層の厚みが10μmより大きいと、延伸等の変形に対する追随性が悪くなるおそれがある。
【0091】
基材の片方の面に非粘着層を形成する方法としては、例えば、基材の片方の面に非粘着層の材料を塗布して乾燥することによって非粘着層を形成する方法が挙げられる。上記塗布の方法としては、例えば、バーコーター、グラビアコーター、スピンコーター、ロールコーター、ナイフコーター、アプリケーター等を用いる方法が挙げられる。
【実施例
【0092】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。特に断りがない限り、部は重量部を意味し、%は重量%を意味する。また、溶液で供給されている試薬の量は、溶液を揮発させて残る固形分の量(固形分換算量)によって表される。
【0093】
(1)高弾性率相のAFM弾性率(押しこみ硬さ)
(測定装置及び測定条件)
装置:オックスフォード・インストゥルメンツ製 MFP-3D-SA
測定モード:フォースカーブマッピング、コンタクトモード
探針:SN-FF01(バネ定数0.7N/m相当品)
測定温度:25℃
測定面積:2μm□
(測定方法)
試料を凍結ミクロトームにて切断した。上記の装置を使用し、作成した断面の2μm角の観察を行った。次にフォースカーブモードにて2μm角視野中の縦64点×横64点のフォースカーブを測定した。得られたそれぞれの点のフォースカーブ(除荷曲線)から、装置ソフトの解析機能のJKR法を用いて弾性率を算出し、弾性率の値をマップ化した。13MPa以上を高弾性率相とした。
【0094】
(2)高弾性率相の面積割合
上記(1)にて得られたフォースカーブマッピングで得られた画像を、画像解析ソフト(ImageJ (ver. 1.52a))を用いて、弾性率13MPa以上の高弾性率個所を黒色、13MPa未満の低弾性率箇所を白色となるように画像を二値化した。二値化した画像の全体のピクセル数に対する黒色箇所のピクセル数の割合を、当該解析ソフトを用いて算出し、これを高弾性率領域の面積割合とした。
【0095】
(3)押し込み深さの変位量、および変位量の変化量
各サンプルの粘着剤層表面からSAICASを用いて押し込み試験を行い、「変位の変化量」を算出した。「変位の変化量」は、下記式にて算出した。
「変位の変化量」=「10min保持後の変位」-「保持開始時の変位」
(測定装置及び測定条件)
装置:ダイプラウィンテス製 SAICAS DN-20型
測定方法:単一押し込み測定
測定温度:50℃
押込速度設定:5μm/S
押込荷重設定:0.5N(0.04MPa)
保持時間:10min
端子接触面積:12.5mm
(測定方法)
上記の装置を使用し、SUS製フラット圧子4mmφを粘着剤層の表面から押し込荷重が0.5Nになる深さまで押し込み、そこから押し込み荷重が0.5Nを維持させた状態で10min間圧子を保持し、その際の押し込み深さの変位量を測定した。得られた荷重-変位曲線から、解析ソフト「Saicas Ver 3.03B 表面・界面解析システム」を用いて、0.5N維持開始直後から10minまでの変位の変化量を読み取った。
【0096】
(4)粘着力
40mm幅×120mm長さに粘着テープサンプルをカットし、そのテープサンプルをトルエン内にて超音波洗浄したSUS430BA板に5kgローラー1往復、速度0.3m/minの条件で貼り合せた。
貼り合せた後、23℃50%RH環境下にて1分間静置した後、23℃50%RH雰囲気下で、高速剥離試験機(KOKEN製)を使用して引張角度20°、引張速度10m/minの条件で粘着力の最大値を測定した。
【0097】
(5)チップ埋り込み評価
20mm幅×50mm長さにテープサンプルをカットし、そのテープサンプルの中心部(幅方向,長さ方向の中心)に1mm□にカットしたSiウエハチップを10mm□の面積でSiウエハチップをダイシングした後のテープサンプルから転写させた。Siウエハチップを貼り合せた後、23℃50%RH環境下にて30分間静置した後、ガラス板でSiウエハチップ貼付テープを挟み込み、その状態で50℃環雰囲気下で荷重40g/cmを加えた状態で5日間保存した。
5日間保存した後、Siウエハチップ貼付テープを23℃50%RH環境下にて2時間静置し、ガラス板からSiウエハチップ貼付テープを剥離し、その糊面に貼付してあるSiウエハチップをNo.31B粘着テープにて転写除去する。Siウエハチップ除去した後、Siウエハチップ貼付されていた粘着剤面のSiウエハチップ貼付端部の共焦点画像を共焦点レーザー顕微鏡OLS-4000(OLYMPUS製)倍率20倍にて取得した。この得られた画像のSiウエハチップの端部の変形量(段差)を任意で10点計測し、チップの埋まりこんでいた深さの平均値を確認した。
○:チップ埋り込み深さ0.8μm以下
×:チップ埋り込み深さ0.8μm以上
【0098】
〔製造例1〕:プラスチックフィルム(1)の製造
重合度P=1050のポリ塩化ビニル100重量部に対してDOTP可塑剤(テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、「アデカサイザーD-810」ADEKA製)30重量部を含んだ軟質ポリ塩化ビニルフィルムをカレンダー法によって製造した。この軟質ポリ塩化ビニルフィルムの厚みは70μmであり、JIS-K-7127に従って測定される弾性率(MD)が250MPa、JIS-K-7127に従って測定される最大伸び(MD)が400%であった。また、製造直後の表面粗さ(算術平均表面粗さRa)は0.1μmであった。
【0099】
〔実施例1〕
ブチルアクリレート(BA)/N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)/アクリル酸(AA)=85/15/5/0.25(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(重量平均分子量=1500000)100重量部、イソシアネート系架橋剤(「コロネートHX」、東ソー社製)1.5重量部、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(「VINNOL H40/43」、Wacker Chemie AG社製、ガラス転移温度(Tg):58℃)20重量部、DOTP可塑剤(テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、「アデカサイザーD-810」、ADEKA社製)60重量部からなる粘着剤の酢酸エチル溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、製造例1で得られたプラスチックフィルム(1)の片方の表面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み7μmの粘着剤層を形成した。
このようにして、粘着テープ(1)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0100】
〔実施例2〕
イソシアネート系架橋剤の配合量を0.65重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして粘着テープ(2)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0101】
〔実施例3〕
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体の配合量を30重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして粘着テープ(3)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0102】
〔実施例4〕
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体の配合量を10重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして粘着テープ(4)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0103】
〔実施例5〕
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(重量平均分子量=800000)100重量部、エポキシ系架橋剤(「TETRAD-C」、三菱瓦斯化学社製)0.5重量部、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(Wacker Chemie AG社製、商品名「VINNOL H40/43」、ガラス転移温度(Tg):58℃)20重量部、DOTP可塑剤(テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、「アデカサイザーD-810」、ADEKA製)60重量部からなる粘着剤の酢酸エチル溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、製造例1で得られたプラスチックフィルム(1)の片方の表面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み7μmの粘着剤層を形成した。
このようにして、粘着テープ(5)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0104】
〔実施例6〕
ブチルアクリレート(BA)/アクリロイルモルホリン(ACMO)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)/アクリル酸(AA)=85/15/5/0.25(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(重量平均分子量=1300000)100重量部、イソシアネート系架橋剤(「コロネートHX」、東ソー社製)3重量部、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(「VINNOL H40/43」、Wacker Chemie AG社製、ガラス転移温度(Tg):58℃)20重量部、DOTP可塑剤(テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、「アデカサイザーD-810」、ADEKA社製)60重量部からなる粘着剤の酢酸エチル溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、製造例1で得られたプラスチックフィルム(1)の片方の表面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み7μmの粘着剤層を形成した。
このようにして、粘着テープ(6)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0105】
〔実施例7〕
粘着剤層の厚みを10μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして粘着テープ(7)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0106】
〔実施例8〕
粘着剤層の厚みを13μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして粘着テープ(8)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0107】
〔実施例9〕
粘着剤層の厚みを5μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして粘着テープ(9)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0108】
〔実施例10〕
イソシアネート系架橋剤の配合量を5重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして粘着テープ(10)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0109】
〔実施例11〕
粘着剤層の厚みを15μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして粘着テープ(11)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0110】
〔実施例12〕
ブチルアクリレート(BA)/N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)/アクリル酸(AA)=85/15/5/0.25(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(重量平均分子量=1500000)100重量部、イソシアネート系架橋剤(「コロネートHX」、東ソー社製)1.5重量部、ポリスチレン(「トーヨースチロールH700」、東洋スチレン社製、ガラス転移温度(Tg):100℃)20重量部、DOTP可塑剤(テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、「アデカサイザーD-810」、ADEKA社製)60重量部からなる粘着剤の酢酸エチル溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、製造例1で得られたプラスチックフィルム(1)の片方の表面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み7μmの粘着剤層を形成した。
このようにして、粘着テープ(1)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0111】
〔比較例1〕
ブチルアクリレート(BA)/アクリルニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー100重量部、メラミン系架橋剤(「アミディアJ-820-60N」、DIC社製)10.0重量部、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(「VINNOL H40/43」、Wacker Chemie AG社製、ガラス転移温度(Tg):58℃)20重量部、DOTP可塑剤(「アデカサイザーD-810」、ADEKA社製)60重量部、パラトルエンスルホン酸(キシダ化学製)0.7重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、製造例1で得られたプラスチックフィルム(1)の片方の表面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み7μmの粘着剤層を形成した。
このようにして、粘着テープ(12)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0112】
〔比較例2〕
ブチルアクリレート(BA)/メチルアクリレート(MA)/N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)/アクリル酸(AA)=70/15/15/5/0.25(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(重量平均分子量=1500000)100重量部、イソシアネート系架橋剤(「コロネートHX」、東ソー社製)0.65重量部、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体「VINNOL H40/43」20重量部、DOTP可塑剤(テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、「アデカサイザーD-810」ADEKA製)60重量部からなる粘着剤の酢酸エチル溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、製造例1で得られたプラスチックフィルム(1)の片方の表面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み7μmの粘着剤層を形成した。
このようにして、粘着テープ(13)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0113】
〔比較例3〕
ブチルアクリレート(BA)/エチルアクリレート(EA)/2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)/アクリロニトリル(AN)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=35/32/20/10/2(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(重量平均分子量=1000000)100重量部、イソシアネート系架橋剤(「コロネートL」、東ソー社製)1.00重量部、DOP可塑剤(フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、「DOP」シージーエスター製)60重量部からなる粘着剤の酢酸エチル溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、製造例1で得られたプラスチックフィルム(1)の片方の表面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み7μmの粘着剤層を形成した。
このようにして、粘着テープ(14)を得た。得られた粘着テープを、上記評価(1)~(5)に供した。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【符号の説明】
【0116】
10 基材
20 粘着剤層
30 非粘着層
100、200 粘着テープ

図1
図2