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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】タイヤ加硫金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20231026BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20231026BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20231026BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019209810
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021079648
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】祝迫 貞夫
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-172360(JP,A)
【文献】特開2014-133402(JP,A)
【文献】特開2005-186299(JP,A)
【文献】特開2017-154281(JP,A)
【文献】特開2017-154282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを成型するタイヤ成型面と、前記タイヤ成型面に対して凹状に形成された取付凹部と、前記取付凹部に配置されタイヤ外面に標識を形成するステンシルプレートとを備えるタイヤ加硫金型において、
前記ステンシルプレートは、細幅の板状体からなり、平板状の平坦部と、前記平坦部の周縁部の少なくとも一部に設けられ湾曲部とを備え、
前記平坦部は、タイヤ外面に標識を形成する標識形成部を備え、
前記湾曲部は、前記ステンシルプレートの周縁に行くに従って前記取付凹部の底面に近づくように湾曲するタイヤ加硫金型であって、
前記湾曲部は、前記ステンシルプレートの長手方向中央部に設けられた第1湾曲部と、前記ステンシルプレートの長手方向端部に設けられた第2湾曲部とを備え、
前記第1湾曲部が、前記第2湾曲部より前記取付凹部の底面に近づくように大きく湾曲しているタイヤ加硫金型。
【請求項2】
前記取付凹部に前記ステンシルプレートを固定する固定部を備え、
前記固定部は、前記平坦部において前記ステンシルプレートに当接する請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫金型に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのサイド部の外面には、タイヤの製造者や品種、サイズ、製造年や週などの識別を容易にするために、文字、記号又は図形などの標識が設けられている。かかる標識を形成するために、アルミや鉄などの金属板からなるステンシルプレートを、タイヤ加硫金型のサイド形成面にネジによって交換可能に取り付けることが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-154282号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、空気入りタイヤのサイド部の標識は頻繁に変更されるため、ステンシルプレートは頻繁に交換される。ステンシルプレートの交換が繰り返されるうちに、ステンシルプレートが変形することがある。ステンシルプレートが変形すると、タイヤ加硫金型とステンシルプレートとの間に隙間が生じやすくなり、加硫時に未加硫ゴムが当該隙間に進入して製品タイヤの外観不良を起こしやすくなる。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、ステンシルプレートの変形を抑え、製品タイヤの外観不良の発生を抑えることができるタイヤ加硫金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るタイヤ加硫金型は、タイヤを成型するタイヤ成型面と、前記タイヤ成型面に対して凹状に形成された取付凹部と、前記取付凹部に配置されタイヤ外面に標識を形成するステンシルプレートとを備えるタイヤ加硫金型において、前記ステンシルプレートは、細幅の板状体からなり、平板状の平坦部と、前記平坦部の周縁部の少なくとも一部に設けられ湾曲部とを備え、前記平坦部は、タイヤ外面に標識を形成する標識形成部を備え、前記湾曲部は、前記ステンシルプレートの周縁に行くに従って前記取付凹部の底面に近づくように湾曲するタイヤ加硫金型であって、前記湾曲部は、前記ステンシルプレートの長手方向中央部に設けられた第1湾曲部と、前記ステンシルプレートの長手方向端部に設けられた第2湾曲部とを備え、前記第1湾曲部が、前記第2湾曲部より前記取付凹部の底面に近づくように大きく湾曲しているものである。
【発明の効果】
【0007】
上記空気入りタイヤ加硫金型では、ステンシルプレートの変形を抑え、製品タイヤの外観不良の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のタイヤ加硫金型の断面図
図2】実施形態のサイドプレートを金型内側から見た図
図3】取付凹部、スペーサ及びステンシルプレートを分解して示した斜視図
図4図2のA-A断面図
図5図3の取付凹部、スペーサ及びステンシルプレートを分解して示した図
図6図2のB-B断面図
図7図2のCーC断面図
図8】実施形態のタイヤ加硫金型で成型された空気入りタイヤの部分側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、一実施形態に係るタイヤ加硫金型(以下、単に加硫金型という)10を示した図である。この加硫金型10は、空気入りタイヤTを加硫成型するために用いられるものである。
【0010】
ここで、空気入りタイヤTは、接地面をなすトレッド部T1と、トレッド部T1の幅方向両端からタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール部T2,T2及びビード部T3,T3とを備えて構成されており、サイドウォール部T2に設けられた標識を除いて一般的なタイヤ構造を採用することができる。
【0011】
加硫金型10は、未加硫のグリーンタイヤをセットして加硫成型する金型であり、内部にタイヤTの成型空間であるキャビティを形成する。この加硫金型10は、トレッドモールド12と、上下一対のサイドウォールモールド14,14と、上下一対のビードモールド16,16を備える。トレッドモールド12は、トレッド部T1の外面を成型するタイヤ成型面(トレッド成型面)12Aを有する。上下一対のサイドウォールモールド14,14は、サイドウォール部T2の外面を成型するタイヤ成型面(サイドウォール成型面)14A,14Aを有する。上下一対のビードモールド16,16は、ビード部T3の外面を成型するタイヤ成型面(ビード成型面)16Aを有する。
【0012】
図1図7に示すように、サイドウォールモールド14には、サイドウォール成型面14Aに対して凹状に陥没する取付凹部20が設けられている。取付凹部20には、標識形成用のステンシルプレート30とスペーサ40が設けられている。
【0013】
取付凹部20は、タイヤ周方向の長さがタイヤ径方向の幅よりも大きいタイヤ周方向に沿って湾曲しながら延びる細幅の凹部からなり、ステンシルプレート30を受け入れ可能なようにステンシルプレート30よりごく僅かに大きく設けられている。取付凹部20の長手方向(タイヤ周方向)両端部の底面21には、固定部23が螺合するネジ孔22が設けられている。
【0014】
固定部23は、取付凹部20に設けられたネジ孔22と螺合する雄ねじ部を備えるネジからなる。具体的には、固定部23は、図3図5に示すように、座面23aがテーパ状(即ち、円錐台状)の頭部23bと、外周面に雄ネジが設けられた軸部23cとを備える。
【0015】
ステンシルプレート30は、図2に示すようにタイヤ周方向の長さがタイヤ径方向の幅よりも大きいタイヤ周方向に沿って湾曲しながら延びる細幅の板状体である。ステンシルプレート30の材質は、限定されないが、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金である。ステンシルプレート30の厚みt1(図5参照)は、特に限定されず、例えば0.4~0.6mmである。
【0016】
ステンシルプレート30は、平板状の平坦部33と、平坦部33の周縁部に設けられた湾曲部34と、平坦部33の長手方向の両端部に設けられた挿通孔35とを備える。
【0017】
平坦部33は、タイヤの表面を成型する表面33aと、取付凹部20の底面に21に対向する裏面33bとを備える。平坦部33の表面33aには、標識形成部31が並べて形成されている。標識形成部31は、表面33a側から見て凹状に設けられており、図8に示すようにタイヤTのサイド部に凸状の標識Mを形成する。標識Mは、文字、記号、図形等が並べられて形成されたもので、全体でメーカー名、製造工場、サイズ、製造週、製造年等の一部又は全部を表すものである。標識形成部31は、ステンシルプレート30を表面側から見ると全体として標識Mが反転した形となっている。
【0018】
標識形成部31はプレス加工によって平坦部33を表面33aから裏面33bへ陥没させて形成されている。そのため、平坦部33の裏面33b側には、標識形成部31に対応する膨出部32が現れている。標識形成部31の深さt2(図5参照)は例えば0.2~0.8mmであり、膨出部32の膨出量(平坦部33の裏面から膨出部32までの上下方向の長さ)Sは標識形成部31の深さと同等である(図6及び図7参照)。
【0019】
平坦部33の長手方向の両端部には、固定部23の頭部23bを受け入れる受け部36が設けられている。受け部36は、裏面側(スペーサ40側)に近づくに従って漸次小径となるテーパ状(円錐台状)をなしている。この受け部36の先端(下端)に、固定部23の軸部23cを挿通する円形の挿通孔35が設けられている。
【0020】
湾曲部34は、図4図7に示すように、ステンシルプレート30の周縁に近づくに従って取付凹部20の底面に近づくように湾曲する。
【0021】
湾曲部34は、平坦部33の周方向全周に設けられており、長手方向中央部に設けられた第1湾曲部34aと、長手方向両端部に設けられた第2湾曲部34bとを備える。第1湾曲部34aは、第2湾曲部34bより取付凹部20の底面21に近づくように大きく湾曲している。つまり、第1湾曲部34aの曲げ量(平坦部33の裏面から第1湾曲部34aの先端までの上下方向の長さ)B1が、第2湾曲部34bの曲げ量(平坦部33の裏面から第2湾曲部34bの先端までの上下方向の長さ)B2より大きくなるように、湾曲部34a、34bが湾曲している
なお、第1湾曲部34a及び第2湾曲部34bの曲げ量B1、B2は、特に限定されず、例えば、ステンシルプレート30の厚みt1より小さく設定することができ、好ましくは厚みt1の50%以下である。また、第1湾曲部34a及び第2湾曲部34bの曲げ量B1,B2が、膨出部32の膨出量Sより小さいことが好ましい。
【0022】
スペーサ40は、ステンシルプレート30側から見て、ステンシルプレート30の外形より若干小さい略同一形状の枠状の部材である。スペーサ40の長手方向の両端部には、ネジ23の軸部23cを挿通する挿通孔42が設けられている。
【0023】
スペーサ40は、図4に示すように、ステンシルプレート30の裏面側に重ねて取付凹部20に収納され、標識形成部31に対応する膨出部32と平坦部33の周縁部に設けられた湾曲部34を避けて平坦部33の裏面側に当接する。これにより、スペーサ40は、平坦部33の表面33aとサイドウォール成型面14Aとが段差なく繋がるようにステンシルプレート30を支持する。
【0024】
ステンシルプレート30及びスペーサ40を重ねて取付凹部20に収納すると、挿通孔35及び挿通孔42が、取付凹部20の底面21に設けられたネジ孔22と同軸状に配置される。この状態で固定部23の軸部23cを挿通孔35及び挿通孔42に挿通してネジ孔22と螺合することで、固定部23の頭部23bと取付凹部20の底面21との間でステンシルプレート30及びスペーサ40を挟持する。
【0025】
以上の実施形態によれば、標識形成部31が形成された平坦部33の周縁部に周縁に行くに従って取付凹部20の底面21に近づくように湾曲する湾曲部34を備えるため、ステンシルプレート30の曲げ剛性を向上することができる。そのため、ステンシルプレート30の変形を抑えることができ、製品タイヤの外観不良の発生を抑えることができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、湾曲部34の先端が取付凹部20内に位置するため、湾曲部34の先端に対応してタイヤTの外面に鋭角に凹んだ凹部が形成されることがなく、当該凹部のエッジを起点とする亀裂を抑えることができる。
【0027】
また、本実施形態において、第1湾曲部34a及び第2湾曲部34bの曲げ量B1,B2が膨出部32の膨出量Sより小さい場合、第1湾曲部34a及び第2湾曲部34bに対応する突起がタイヤTの外面に形成されにくくなる。
【0028】
また、本実施形態において、固定部23が湾曲部34を避けて平坦部33と当接して取付凹部20にステンシルプレート30を固定する場合、固定部23からの締付圧力を受けてもステンシルプレート30が変形しにくくなり、確実にステンシルプレート30を固定することができる。
【0029】
また、本実施形態において、平坦部33の長手方向中央部に湾曲部34を設ける場合、ステンシルプレート30の変形しやすい長手方向中央部を補強することができ、ステンシルプレート30の変形に起因して生じる製品タイヤの外観不良を抑えることができる。
【0030】
また、本実施形態において、平坦部33の長手方向中央部に設けられた第1湾曲部34aの曲げ量B1が、平坦部33の長手方向端部に設けられた第2湾曲部34bの曲げ量B2より大きい場合、ステンシルプレート30において曲げ剛性の均一化を図りステンシルプレート30の応力集中を抑えることができる。その結果、ステンシルプレート30の変形を抑えることができ、製品タイヤの外観不良の発生を抑えることができる。
【0031】
(変更例)
上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0032】
例えば、上記の実施形態は、湾曲部34の断面形状を円弧形状に設けたが、平坦部33から折れ曲がる直線形状等であってもよい。
【0033】
また、上記の実施形態では、平坦部33の周方向全周に湾曲部34を設ける場合について説明したが、平坦部33の長手方向の中央部のみに設けたり、平坦部33の長手方向の両端部のみに設けたり、受け部36の外側に設けたり、平坦部33の周方向に断続的に設けたりするなど、平坦部33の周方向の任意の位置に湾曲部34を設けてもよい。
【0034】
また、上記の実施形態では、曲げ量の異なる湾曲部34a,34bを平坦部33の周縁部に設ける場合について説明したが、すべて同一の曲げ量に設定したり、平坦部33の長手方向両端部から中央に行くに従って漸次大きくなるように、あるいは漸次小さくなるように曲げ量を変化させてもよい。
また、上記した実施形態では、ステンシルプレート30及び取付凹部20は、サイドウォール成型面14Aに設けられているが、ビード成型面16Aに設けられてもよく、サイドウォール成型面14Aとビード成型面16Aの双方にそれぞれ設けられてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…タイヤ加硫金型、12…トレッドモールド、14…サイドウォールモールド、16…ビードモールド、18…サイドモールド、20…取付凹部、21…底面、22…ボルト、23…固定部、30…ステンシルプレート、31…標識形成部、32…膨出部、33…平坦部、33a…表面、33b…裏面、34…湾曲部、35…挿通孔、40…スペーサ、42…挿通孔
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8