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特許7373374防振ゴム組成物、防振ゴム部材、および防振ゴム用シランカップリング剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】防振ゴム組成物、防振ゴム部材、および防振ゴム用シランカップリング剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20231026BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20231026BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231026BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20231026BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20231026BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20231026BHJP
   C08G 77/28 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/36
C08L83/08
F16F15/08 D
F16F1/36 C
C08G77/28
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019216289
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021084991
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】高松 成亮
(72)【発明者】
【氏名】松下 祐子
(72)【発明者】
【氏名】松野 亮介
(72)【発明者】
【氏名】高原 淳
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-527628(JP,A)
【文献】特開2017-179043(JP,A)
【文献】特開2006-199899(JP,A)
【文献】特開2006-052280(JP,A)
【文献】特開2006-131871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 77/00-77/62
C07F 7/02-7/21
F16F 15/08
F16F 1/36
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分からなるポリマーとともに、下記の(B)~(D)成分を含有することを特徴とする防振ゴム組成物。
(A)ジエン系ゴム。
(B)シリカ。
(C)下記の一般式(1)に示す共重合体である、シランカップリング剤。
【化1】
(D)架橋剤。
【請求項2】
上記シランカップリング剤(C)が、液状のシランカップリング剤である、請求項1記載の防振ゴム組成物。
【請求項3】
上記シランカップリング剤(C)における、上記一般式(1)に示すmとnとの比率が、m:n=10:90~90:10である、請求項1または2記載の防振ゴム組成物。
【請求項4】
上記シリカ(B)の含有割合が、上記ジエン系ゴム(A)100重量部に対して5~100重量部の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物。
【請求項5】
上記シランカップリング剤(C)の含有割合が、上記ジエン系ゴム(A)100重量部に対して0.5~20重量部の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物の加硫体からなることを特徴とする防振ゴム部材。
【請求項7】
下記の一般式(1)に示す共重合体であることを特徴とする防振ゴム用シランカップリング剤。
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車,電車等の車両等における防振用途に用いられる防振ゴム組成物、防振ゴム部材、および防振ゴム用シランカップリング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防振ゴムの技術分野においては、高耐久性、低動倍率化(動倍率〔動的ばね定数(Kd)/静的ばね定数(Ks)〕の値を小さくすること)等が要求される。これらの要求を実現するために、防振ゴム組成物中に、カーボンブラック、シリカといったフィラーを含有させたものや、さらに、シリカの分散性向上のためにシランカップリング剤を併用させた配合系のものが確立されている(例えば、特許文献1~3参照)。
また、さらなる低動倍率化に向けては、シリカの高分散化とともに、ポリマーゴムの架橋構造や、シランカップリング剤によるシリカとポリマーゴムの結合性が、重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3838154号公報
【文献】特開2017-8161号公報
【文献】国際公開2016/204012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先に述べたような、さらなる低動倍率化の実現のため、例えば、本出願人により、ポリマーゴム、シリカ、シランカップリング剤の混練りを、通常1回であるところを複数回繰り返し実施したところ、低動倍率化の向上が確認されている。
上記のような結果となる理由は、混練りを複数回繰り返すことで、シリカの高分散化が達成するとともに、シランカップリング剤の高反応性骨格がシリカと加水分解反応し、理想的なシリカ/カップリング剤の界面結合が生成され、低動倍率化を実現したと考えられる。
【0005】
しかしながら、現状の設備設計では、上記のように混練りを複数回繰り返すことは生産性の観点で支障となる。
さらに、既存のシランカップリング剤における高反応性骨格(シリカと加水分解反応を行う骨格)の反応性は低いため、混練り1回では充分な加水分解反応が進行しないと考えられる。ここで、既存のシランカップリング剤では、上記高反応性骨格が分岐状の炭化水素基であることから、シリカとの反応性が悪く、防振ゴムに要求される低動倍率化が充分に得られない懸念がある。また、メルカプト系シランカップリング剤は、シリカとの反応性は良好であるが、ポリマーゴムとの反応性が高過ぎ、スコーチが進みやすいといった課題が残る。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、スコーチ等の問題を生じることなく、混練り1回で、複数回の混練りを行ったのに相当する低動倍率化を達成することが可能な防振ゴム組成物、防振ゴム部材、および防振ゴム用シランカップリング剤の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、本発明者らは、防振ゴム組成物のポリマーであるジエン系ゴムに、シリカとともにシランカップリング剤を併用するに際し、スコーチ等の問題を生じることなく、混練り1回で、複数回の混練りを行ったのに相当する低動倍率化を達成することが可能な防振ゴム組成物となるよう、シランカップリング剤の化学構造の検討を行った。その結果、下記の一般式(1)に示す化学構造となるよう合成した新規のシランカップリング剤(C)を開発した。
既存のシランカップリング剤では、分岐状の炭化水素基を介してシリカと反応するようなシランカップリング剤の分子構造となっているため、シリカとシランカップリング剤の反応性が悪く、防振ゴム組成物を混練り1回で調製した場合、動倍率が悪化する課題が残る。また、従来のメルカプト系シランカップリング剤は、ジエン系ゴムとの反応性が高いことから、その使用によりスコーチが進みやすく、さらに、ジエン系ゴムとの反応性を抑えた化学構造のものであっても、熱により化学構造が変化しやすいものが殆どであったため、充分なスコーチの解消に至らないという課題があった。
しかしながら、今回開発したシランカップリング剤は、スコーチ等の問題を生じることなく、シリカとの反応性と加硫の反応性とが適切となり、所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
しかるに、本発明は、以下の[1]~[7]を、その要旨とする。
[1]下記の(A)成分からなるポリマーとともに、下記の(B)~(D)成分を含有することを特徴とする防振ゴム組成物。
(A)ジエン系ゴム。
(B)シリカ。
(C)下記の一般式(1)に示す共重合体である、シランカップリング剤。
【化1】
(D)架橋剤。
[2]上記シランカップリング剤(C)が、液状のシランカップリング剤である、[1]に記載の防振ゴム組成物。
[3]上記シランカップリング剤(C)における、上記一般式(1)に示すmとnとの比率が、m:n=10:90~90:10である、[1]または[2]に記載の防振ゴム組成物。
[4]上記シリカ(B)の含有割合が、上記ジエン系ゴム(A)100重量部に対して5~100重量部の範囲である、[1]~[3]のいずれかに記載の防振ゴム組成物。
[5]上記シランカップリング剤(C)の含有割合が、上記ジエン系ゴム(A)100重量部に対して0.5~20重量部の範囲である、[1]~[4]のいずれかに記載の防振ゴム組成物。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載の防振ゴム組成物の加硫体からなることを特徴とする防振ゴム部材。
[7]下記の一般式(1)に示す共重合体であることを特徴とする防振ゴム用シランカップリング剤。
【化2】
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明の防振ゴム組成物は、ジエン系ゴム(A)からなるポリマーとともに、シリカ(B)、前記一般式(1)に示すシランカップリング剤(C)、架橋剤(D)を含有する。そのため、スコーチ等の問題を生じることなく、混練り1回で、複数回の混練りを行ったのに相当する低動倍率化を達成することができる。これにより、混練りおよび成形時の加工性が良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0011】
本発明の防振ゴム組成物は、先に述べたように、下記の(A)成分からなるポリマーとともに、下記の(B)~(D)成分を含有する。
(A)ジエン系ゴム。
(B)シリカ。
(C)下記の一般式(1)に示す共重合体である、シランカップリング剤。
【化3】
(D)架橋剤。
【0012】
なお、上記一般式(1)に示すシランカップリング剤(C)は、新規に開発されたシランカップリング剤であり、上記のように防振ゴム用途に使用することにより、スコーチ等の問題を生じることなく、混練り1回で、複数回の混練りを行ったのに相当する低動倍率化を達成することができる。その結果、混練りおよび成形時の加工性が良好となる。
【0013】
以下、本発明の防振ゴム組成物の構成材料について詳しく説明する。
【0014】
〔ジエン系ゴム(A)〕
上記のように、本発明の防振ゴム組成物は、ジエン系ゴム(A)からなるポリマーを用いており、ジエン系ゴム(A)以外のポリマーは、使用しないことが望ましい。上記ジエン系ゴム(A)としては、好ましくは、天然ゴム(NR)を主成分とするジエン系ゴムが用いられる。ここで、「主成分」とは、上記ジエン系ゴム(A)の50重量%以上が天然ゴムであるものを示し、上記ジエン系ゴム(A)が天然ゴムのみからなるものも含める趣旨である。このように、天然ゴムを主成分とすることにより、強度や低動倍率化の点で優れるようになる。
また、天然ゴム以外のジエン系ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なお、これらのジエン系ゴムは、天然ゴムと併用することが望ましい。
【0015】
〔シリカ(B)〕
つぎに、上記シリカ(B)としては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ等が用いられる。そして、これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0016】
そして、より一層、高耐久性、低動倍率化を達成する観点から、上記シリカ(B)のBET比表面積は、30~320m2/gであることが好ましく、より好ましくはBET比表面積が50~230m2/gのシリカである。
なお、上記シリカ(B)のBET比表面積は、例えば、試料を200℃で15分間脱気した後、吸着気体として混合ガス(N2:70%、He:30%)を用いて、BET比表面積測定装置(マイクロデータ社製、4232-II)により測定することができる。
【0017】
また、上記シリカ(B)の含有量は、ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、通常5~110重量部であるが、より一層、高耐久性、低動倍率化を達成する観点から、ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、上記シリカ(B)の含有量は、5~100重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは20~80重量部、さらに好ましくは30~50重量部の範囲である。
【0018】
〔シランカップリング剤(C)〕
本発明の防振ゴム組成物は、先に述べたように、下記の一般式(1)に示すシランカップリング剤(C)を含有することから、スコーチ等の問題を生じることなく、混練り1回で、複数回の混練りを行ったのに相当する低動倍率化を達成することができる。
【0019】
【化4】
【0020】
上記一般式(1)において、R1およびR5は、炭素数1~10の直鎖の炭化水素基の末端に水酸基を有する官能基であることが好ましく、より好ましくは、炭素数2~4の直鎖の炭化水素基の末端に水酸基を有する官能基である。なお、R1およびR5は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
2およびR6は、炭素数1~10の直鎖の炭化水素鎖であることが好ましく、より好ましくは、炭素数2~4の直鎖の炭化水素鎖である。なお、R2およびR6は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
3およびR7は、炭化水素鎖であり、直鎖であっても分岐していてもよい。R3およびR7は、好ましくは、炭素数1~10の直鎖の炭化水素鎖であり、より好ましくは、炭素数2~4の直鎖の炭化水素鎖である。なお、R3およびR7は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
8は、炭化水素鎖であり、直鎖であっても分岐していてもよい。R8は、好ましくは、炭素数1~10の直鎖の炭化水素鎖であり、より好ましくは、炭素数1~3の直鎖の炭化水素鎖である。
4は炭化水素基であり、直鎖であっても分岐していてもよい。R4は、好ましくは、炭素数1~18の直鎖の炭化水素基であり、より好ましくは、炭素数6~12の直鎖の炭化水素基である。
上記のような範囲に規定することにより、本発明の課題をより一層解決することができる。なお、R1~R8は、1H-NMRにより確認することができる。
【0021】
また、上記一般式(1)に示すシランカップリング剤(C)は、上記一般式(1)に示すm個の構造単位(単量体)と、n個の構造単位(単量体)との共重合体であり、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合により得ることができる。
そして、上記一般式(1)において、mは2~1000の整数、nは2~1000の整数であることが好ましい。
上記一般式(1)に示すmとnとの比率は、m:n=10:90~90:10であることが好ましく、より好ましくは、m:n=20:80~80:20、さらに好ましくは、m:n=40:60~60:40である。
上記のような範囲に規定することにより、本発明の課題をより一層解決することができる。なお、mおよびnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。また、m:nは、1H-NMRにより測定される。
【0022】
上記シランカップリング剤(C)としては、固体のものも使用可能であるが、ゴム組成物への分散性、取り扱い性等の観点から、液状のシランカップリング剤であることが望ましい。
ここで、上記シランカップリング剤(C)が、「液状」のシランカップリング剤であるとは、常温(23℃)で6000Pa・s以下の粘度を示すシランカップリング剤であることを意味する。上記粘度は、例えば、B型粘度計を用いて測定することができる。
【0023】
なお、上記シランカップリング剤(C)は、各種の手法により合成することができるが、例えば、後記の実施例におけるシランカップリング剤(i)~(x)を合成する際に適用した手法により、合成することができる。
【0024】
本発明の防振ゴム組成物における、上記シランカップリング剤(C)の含有量は、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、通常0.1~25重量部であるが、低動倍率、耐スコーチ性等の観点から、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、上記シランカップリング剤(C)の含有量は、0.5~20重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1~15重量部、さらに好ましくは2~10重量部の範囲である。
【0025】
〔架橋剤(D)〕
上記架橋剤(D)としては、例えば、硫黄(粉末硫黄,沈降硫黄,不溶性硫黄)、アルキルフェノールジスルフィド、塩化硫黄等の硫黄系架橋剤や、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジベンゾイルペルオキシヘキサン、n-ブチル-4,4’-ジ-t-ブチルペルオキシバレレート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルペルオキシ-ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキシン-3、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシ-イソプロピル)ベンゼン等の有機過酸化物があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0026】
上記架橋剤(D)が硫黄系架橋剤の場合、上記架橋剤(D)の含有量は、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、0.5~10重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1~5重量部の範囲である。
上記架橋剤(D)が有機過酸化物(過酸化物架橋剤)の場合、上記架橋剤(D)の含有量は、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、0.5~10重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは2~5重量部の範囲である。
このような割合で含有することにより、スコーチを伴うことなく、良好な架橋がなされるようになる。
【0027】
なお、本発明の防振ゴム組成物においては、必須成分である前記(A)~(D)成分とともに、カーボンブラック、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、プロセスオイル、共架橋剤等を、必要に応じて適宜に含有させることも可能である。
【0028】
上記カーボンブラックとしては、耐候性向上の観点から、例えば、SAF級,ISAF級,HAF級,MAF級,FEF級,GPF級,SRF級,FT級,MT級等の種々のグレードのカーボンブラックが用いられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0029】
そして、耐久性と低動倍率化の観点から、上記カーボンブラックは、ヨウ素吸着量10~100mg/g、DBP吸油量30~180ml/100gのカーボンブラックが好ましい。
なお、上記カーボンブラックのヨウ素吸着量は、JIS K 6217-1(A法)に準拠して測定された値である。また、上記カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K 6217-4に準拠して測定された値である。
【0030】
上記カーボンブラックの含有量は、より一層、耐久性と耐候性を両立させる観点から、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、0.1~100重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1~50重量部、さらに好ましくは1~10重量部の範囲である。
【0031】
上記加硫促進剤としては、例えば、チウラム系,スルフェンアミド系,グアニジン系,チアゾール系,アルデヒドアンモニア系,アルデヒドアミン系,チオウレア系等の加硫促進剤があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、圧縮永久歪みに優れるようになることから、チウラム系加硫促進剤と、スルフェンアミド系,グアニジン系,チアゾール系から選択される少なくとも一つの加硫促進剤とを組み合わせたものが好ましい。
【0032】
また、上記加硫促進剤の含有量は、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、0.1~10重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.3~5重量部の範囲である。
【0033】
上記チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等があげられる。
【0034】
上記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NOBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(BBS)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0035】
上記グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、N,N'-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N'-ジエチルチオ尿素、N,N'-ジブチルチオ尿素等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0036】
上記チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2-メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩(NaMBT)、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZnMBT)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、特に加硫反応性に優れる点で、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)が好適に用いられる。
【0037】
上記加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、ステアリン酸、酸化マグネシウム等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0038】
また、上記加硫助剤の含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、0.1~10重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.3~7重量部の範囲である。
【0039】
上記老化防止剤としては、例えば、カルバメート系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、ワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0040】
また、上記老化防止剤の含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、0.5~15重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは1~10重量部の範囲である。
【0041】
上記プロセスオイルとしては、例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0042】
また、上記プロセスオイルの含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、1~35重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは3~30重量部の範囲である。
【0043】
上記共架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好適に用いられ、これらとともに、トリアリルシアヌレート、ダイアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、p-キノンジオキシム、p,p-ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニルマレイミド、アリルメタクリレート、N,N-m-フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、1,2-ポリブタジエン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0044】
また、上記共架橋剤の含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100重量部に対して、0.1~10重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5~7重量部の範囲である。
【0045】
〔防振ゴム組成物の調製方法〕
ここで、本発明の防振ゴム組成物は、その必須成分である(A)~(D)成分、および必要に応じて上記列記したその他の材料を用いて、これらをニーダー,バンバリーミキサー,オープンロール,二軸スクリュー式撹拌機等の混練機を用いて混練りすることにより、調製することができる。
なお、上記混練りに際し、シリカ(B)とシランカップリング剤(C)とを予め混合したものを、上記混練り時に加えてもよい。また、上記各材料を一度に加えると、工程を少なくすることができる。
そして、上記混練りに際し、従来のシランカップリング剤を用いた場合における複数回の混練りを行ったのに相当する低動倍率化を、本発明の防振ゴム組成物では、混練り1回により達成することができる。
なお、上記混練りに際し、架橋剤(D)と加硫促進剤以外の材料を、バンバリーミキサーを用いて100~170℃で3~30分間混練りし、ついで、架橋剤(D)と加硫促進剤を配合し、オープンロールを用いて30~100℃で0.5~30分間混練りすることが好ましい。
【0046】
このようにして得られた本発明の防振ゴム組成物は、高温(150~170℃)で5~30分間、加硫することにより防振ゴム部材(加硫体)となる。
【0047】
そして、本発明の防振ゴム組成物の加硫体からなる防振ゴム部材は、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ、モーターマウント、サブフレームマウント等の構成部材として好ましく用いられる。なかでも、低動倍率であるとともに耐久性にも優れることから、電動モーターを動力源とする電気自動車(電気自動車(EV)の他、燃料電池自動車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)等も含む)用の、モーターマウント、サスペンションブッシュ、サブフレームマウント等の構成部材(電気自動車用防振ゴム部材)の用途に、有利に用いることができる。
また、上記用途以外にも、コンピューターのハードディスクの制振ダンパー、洗濯機等の一般家電製品の制振ダンパー、建築・住宅分野における建築用制震壁,制震(制振)ダンパー等の制震(制振)装置および免震装置の用途にも用いることができる。
【実施例
【0048】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0049】
まず、実施例および比較例に先立ち、以下に示す各種化合物(OA-MPTE、EA-MPTE、DA-MPTE、およびSA-MPTE)を調製した。
【0050】
[OA-MPTE]
オクチルアクリレート(東京化成工業社製、型番O0478、以下「OA」と略す)17gをエタノール(超脱水)(富士フイルム和光純薬社製、型番050-08425)200mLに溶解した。ついで、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(東京化成工業社製、型番M1505、以下「MPTE」と略す)23.3mLと、触媒であるジイソプロピルアミン(東京化成工業社製、型番D0925、以下「DIPA」と略す)0.68mLを加えて、6時間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、化合物(「OA-MPTE」と略す)を得た。
【0051】
[EA-MPTE]
エチルアクリレート(東京化成工業社製、型番A0143、以下「EA」と略す)17gをエタノール(超脱水)200mLに溶解した。ついで、MPTEを42.9mLと、触媒であるDIPA1.25mLを加えて、一晩撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、化合物(「EA-MPTE」と略す)を得た。
【0052】
[DA-MPTE]
ドデシルアクリレート(東京化成工業社製、型番D4129、以下「DA」と略す)17gをエタノール(超脱水)200mLに溶解した。ついで、MPTE17.9mLと、触媒であるDIPA0.52mLを加えて、一晩撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、化合物(「DA-MPTE」と略す)を得た。
【0053】
[SA-MPTE]
ステアリルアクリレート(東京化成工業社製、型番A1011、以下「SA」と略す)30gをエタノール(超脱水)200mLに溶解した。ついで、MPTE23.4mLと、触媒であるDIPA0.68mLを加えて、一晩撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、化合物(「SA-MPTE」と略す)を得た。
【0054】
つぎに、上記調製した各種化合物等を材料として、以下に示す各種シランカップリング剤を調製した。
【0055】
[シランカップリング剤(i)]
MPTE17.0gとOA-MPTE36.8gを500mL二口フラフコに加えた。ついで、触媒である硫酸0.218mLを加えて50℃に昇温した。つぎに、減圧にしながらエチレングリコール(東京化成工業社製、型番E0105、以下「EG」と略す)19.7gをゆっくり滴下し、そのまま3時間撹拌した。その後さらに、クロロホルム100mLと珪藻土(セライト、Celite社製)3.0gを加えて室温で撹拌した。そして、珪藻土、不溶物を除去し、ろ液を減圧留去し、シランカップリング剤(i)を得た。
【0056】
[シランカップリング剤(ii)]
MPTE17.0g、OA-MPTE3.34gを500mL二口フラフコに加えた。ついで、触媒である硫酸0.109mLを加えて50℃に昇温した。つぎに、減圧にしながらEG9.83gをゆっくり滴下し、そのまま3時間撹拌した。その後さらに、クロロホルム100mLと珪藻土(セライト、Celite社製)3.0gを加えて室温で撹拌した。そして、珪藻土、不溶物を除去し、ろ液を減圧留去し、シランカップリング剤(ii)を得た。
【0057】
[シランカップリング剤(iii)]
MPTE17.0g、OA-MPTE271.1gを500mL二口フラフコに加えた。ついで、触媒である硫酸0.983mLを加えて50℃に昇温した。つぎに、減圧にしながらEGを88.5gをゆっくり滴下し、そのまま3時間撹拌した。その後さらに、クロロホルム100mLと珪藻土(セライト、Celite社製)3.0gを加えて室温で撹拌した。そして、珪藻土、不溶物を除去し、ろ液を減圧留去し、シランカップリング剤(iii)を得た。
【0058】
[シランカップリング剤(iv)]
MPTE20.0g、EA-MPTE34.7gを500mL二口フラフコに加えた。ついで、触媒である硫酸0.257mLを加えて50℃に昇温した。つぎに、減圧にしながらEG23.1gをゆっくり滴下し、そのまま3時間撹拌した。その後さらに、クロロホルム100mLと珪藻土(セライト、Celite社製)3.0gを加えて室温で撹拌した。そして、珪藻土、不溶物を除去し、ろ液を減圧留去し、シランカップリング剤(iv)を得た。
【0059】
[シランカップリング剤(v)]
MPTE13.5g、DA-MPTE33.1gを500mL二口フラフコに加えた。ついで、触媒である硫酸0.173mLを加えて50℃に昇温した。つぎに、減圧にしながらEG15.6gをゆっくり滴下し、そのまま3時間撹拌した。その後さらに、クロロホルム100mLと珪藻土(セライト、Celite社製)3.0gを加えて室温で撹拌した。そして、珪藻土、不溶物を除去し、ろ液を減圧留去し、シランカップリング剤(v)を得た。
【0060】
[シランカップリング剤(vi)]
MPTE17.0g、OA-MPTE36.8gを500mL二口フラフコに加えた。ついで、触媒である硫酸0.218mLを加えて50℃に昇温した。つぎに、減圧にしながら1,3-プロパンジオール(東京化成工業社製、型番P0486)24.1gをゆっくり滴下し、そのまま3時間撹拌した。その後さらに、クロロホルム100mLと珪藻土(セライト、Celite社製)3.0gを加えて室温で撹拌した。そして、珪藻土、不溶物を除去し、ろ液を減圧留去し、シランカップリング剤(vi)を得た。
【0061】
[シランカップリング剤(vii)]
MPTE17.0g、OA-MPTE36.8gを500mL二口フラフコに加えた。ついで、触媒である硫酸0.218mLを加えて50℃に昇温した。つぎに、減圧にしながら1,4-ブタンジオール(東京化成工業社製、型番B0680)28.5gをゆっくり滴下し、そのまま3時間撹拌した。その後さらに、クロロホルム100mLと珪藻土(セライト、Celite社製)3.0gを加えて室温で撹拌した。そして、珪藻土、不溶物を除去し、ろ液を減圧留去し、シランカップリング剤(vii)を得た。
【0062】
[シランカップリング剤(viii)]
MPTE17.0g、OA-MPTE24.6gを500mL二口フラフコに加えた。ついで、触媒である硫酸0.894mLを加えて50℃に昇温した。つぎに、減圧にしながらEG24.1gをゆっくり滴下し、そのまま3時間撹拌した。その後さらに、クロロホルム100mLと珪藻土(セライト、Celite社製)3.0gを加えて室温で撹拌した。そして、珪藻土、不溶物を除去し、ろ液を減圧留去し、シランカップリング剤(viii)を得た。
【0063】
[シランカップリング剤(ix)]
MPTE17.0g、SA-MPTE49.0gを500mL二口フラフコに加えた。ついで、触媒である硫酸0.218mLを加えて50℃に昇温した。つぎに、減圧にしながらEG19.7gをゆっくり滴下し、そのまま3時間撹拌した。その後さらに、クロロホルム100mLと珪藻土(セライト、Celite社製)3.0gを加えて室温で撹拌した。そして、珪藻土、不溶物を除去し、ろ液を減圧留去し、シランカップリング剤(ix)を得た。
【0064】
[シランカップリング剤(x)]
MPTE17.0g、OA-MPTE36.8gを500mL二口フラフコに加えた。ついで、触媒である硫酸0.218mLを加えて50℃に昇温した。つぎに、減圧にしながら1,10-デカンジオール(東京化成工業社製、型番D0014)55.2gをゆっくり滴下し、そのまま3時間撹拌した。その後さらに、クロロホルム100mLと珪藻土(セライト、Celite社製)3.0gを加えて室温で撹拌した。そして、珪藻土、不溶物を除去し、ろ液を減圧留去し、シランカップリング剤(x)を得た。
【0065】
[シランカップリング剤(xi)]
下記の一般式(2)に示す、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(A-189、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
【0066】
【化5】
【0067】
[シランカップリング剤(xii)]
OA-MPTE30gを500mL二口フラフコに加えた。ついで、触媒である硫酸0.098mLを加えて50℃に昇温した。つぎに、減圧にしながらEG8.81gをゆっくり滴下し、そのまま3時間撹拌した。その後さらに、クロロホルム100mLと珪藻土(セライト、Celite社製)3.0gを加えて室温で撹拌した。そして、珪藻土、不溶物を除去し、ろ液を減圧留去し、シランカップリング剤(xii)を得た。
【0068】
[シランカップリング剤(xiii)]
下記の一般式(3)に示す、NXT Z 45、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社製
【0069】
【化6】
【0070】
[シランカップリング剤(xiv)]
下記の一般式(4)に示す、ビス-3-トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド(TESPT)、エボニックデグッサ社製
【0071】
【化7】
【0072】
このようにして得られたシランカップリング剤(i)~(x),(xii)を、下記の一般式(1)で表したときの、R1~R8、m:nを、以下の表1に示した。また、上記シランカップリング剤(i)~(xiv)の状態(25℃で、液体であるか固体であるか)も、以下の表1に併せて示した。
なお、上記シランカップリング剤における、R1~R8、m:nは、1H-NMRにより確認した。また、GPCにより、上記シランカップリング剤(i)~(x),(xii)におけるmおよびnは、いずれも、2~1000の範囲であることが確認された。さらに、上記シランカップリング剤の状態は、B型粘度計を用いて測定し、23℃で6000Pa・s以下であるものを「液体」、6000Pa・sを超えるものを「固体」とした。
【0073】
【化8】
【0074】
【表1】
【0075】
つぎに、シランカップリング剤以外の防振ゴム組成物の材料として、下記に示す各材料を準備した。
【0076】
〔天然ゴム(NR)〕
【0077】
〔酸化亜鉛〕
堺化学工業社製、酸化亜鉛二種
【0078】
〔ステアリン酸〕
日油社製、ビーズステアリン酸さくら
【0079】
〔老化防止剤〕
精工化学社製、オゾノン6C
【0080】
〔シリカ〕
東ソーシリカ社製、ニプシールVN3
【0081】
〔カーボンブラック〕
キャボットジャパン社製、ショウブラックN330
【0082】
〔プロセスオイル〕
日本サン石油社製、サンセン410
【0083】
〔加硫促進剤〕
三新化学社製、サンセラーCZ-G
【0084】
〔硫黄系架橋剤〕
サルファックスT10、鶴見化学工業社製
【0085】
〔過酸化物架橋剤〕
パークミルD40、日油社製
【0086】
〔共架橋剤〕
TAIC、日本化成社製
【0087】
[実施例1~18、比較例1~6]
上記各材料を、後記の表2および表3に示す割合で配合して混練りすることにより、防振ゴム組成物を調製した。なお、上記混練りは、まず、架橋剤と加硫促進剤以外の材料を、バンバリーミキサーを用いて150℃で5分間混練りし、ついで、架橋剤と加硫促進剤を配合し、オープンロールを用いて60℃で5分間混練りすることにより行った。
【0088】
このようにして得られた実施例および比較例の防振ゴム組成物を用い、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表2および表3に併せて示した。
【0089】
<耐スコーチ性>
各防振ゴム組成物に対し、東洋精機社製ロータレスレオメータを用い、成形温度(150℃)での最大トルクが90%に達するまでの時間を、t90として測定した。
後記の表2および表3には、比較例1におけるt90の測定値を100としたときの、各実施例および比較例におけるt90の測定値を指数換算したものを表記した。
そして、そのt90の値が、比較例1のt90の値の80%未満であるものを「×」と評価し、比較例1のt90の値の80%以上100%未満であるものを「△」と評価し、比較例1のt90の値の100%以上であるものを「○」と評価した。
【0090】
<動倍率>
各防振ゴム組成物を150℃で30分間プレス成形(加硫)し、テストピースを作製した。そして、上記テストピースの静ばね定数(Ks)および周波数100Hzでの動ばね定数(Kd100)を、それぞれJIS K 6394に準じて測定した。その値をもとに、動倍率(Kd100/Ks)を算出した。
後記の表2および表3には、実施例7における動倍率(Kd100/Ks)の測定値を100としたときの、各実施例および比較例における動倍率の測定値を指数換算したものを表記した。
そして、その動倍率の値が、実施例7の動倍率の値の100%以下であるものを「○」と評価し、実施例7の動倍率の値の100%を上回り110%未満であるものを「△」と評価し、実施例7の動倍率の値の110%以上であるものを「×」と評価した。
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
上記表2および表3の結果から、本発明に規定のシランカップリング剤を使用した実施例の防振ゴム組成物の加硫体は、低動倍率であり、かつ耐スコーチ性に優れる結果となった。
これに対し、比較例1の防振ゴム組成物の加硫体は、従来のシランカップリング剤(3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン)を使用しており、実施例の防振ゴム組成物の加硫体にみられるような、低動倍率化の達成が認められない結果となった。
また、比較例2の防振ゴム組成物の加硫体は、シランカップリング剤を含んでおらず、比較例3の防振ゴム組成物の加硫体は、シリカを含んでおらず、双方とも、実施例の防振ゴム組成物の加硫体にみられるような、低動倍率化の達成が認められない結果となった。
また、比較例4~6の防振ゴム組成物の加硫体は、本発明に規定のシランカップリング剤とは異なるシランカップリング剤を使用しており、実施例の防振ゴム組成物の加硫体にみられるような、低動倍率化の達成と耐スコーチ性との両立が認められない結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の防振ゴム組成物は、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ、モーターマウント、サブフレームマウント等の構成部材(防振ゴム部材)の材料として好ましく用いられるが、それ以外にも、コンピューターのハードディスクの制振ダンパー、洗濯機等の一般家電製品の制振ダンパー、建築・住宅分野における建築用制震壁,制震(制振)ダンパー等の制震(制振)装置および免震装置の構成部材(防振ゴム部材)の材料にも用いることができる。