(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】還元剤供給装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/36 20060101AFI20231026BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20231026BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F01N3/36 B
F01N3/08 B
B01D53/94 222
B01D53/94 400
(21)【出願番号】P 2019218088
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】グルサミ,ラマリンガ シワム
(72)【発明者】
【氏名】ゾマン,スジツ
(72)【発明者】
【氏名】戸田 敬介
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-173460(JP,A)
【文献】特開2016-14387(JP,A)
【文献】特開2012-219655(JP,A)
【文献】特表2013-531170(JP,A)
【文献】特開2019-27364(JP,A)
【文献】特開2019-132256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/36
F01N 3/08
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管(11)に取り付けられた還元触媒(13)の上流側に還元剤を噴射する還元剤噴射弁(25)と、
貯蔵タンク(21)から前記還元剤を汲み出して前記還元剤噴射弁(25)に圧送するポンプ(31)と、
圧送される前記還元剤を前記還元剤噴射弁(25)に導く供給通路(52)と、
前記還元剤噴射弁(25)への供給圧力(Pu)の推定値である第1圧力値(Ppmp)を前記ポンプ(31)に流れる電流(Ipmp)に基づいて取得する第1圧力値推定部(107)と、
前記第1圧力値推定部(107)が前記第1圧力値(Ppmp)を取得できない、または、前記第1圧力値(Ppmp)が所定の範囲にない場合に、前記還元剤噴射弁(25)への供給圧力(Pu)の推定値である第2圧力値(Pdv)を前記還元剤噴射弁(25)に流れる電流(Idv)に基づいて取得する第2圧力値推定部(111)と、
前記第2圧力値(Pdv)が所定の範囲にあるか否かを判断する第2圧力値判断部(113)と、
前記第2圧力値(Pdv)が所定の範囲にある場合に、前記ポンプ(31)の加圧室に混入した空気を排出するように作動する還流再充填制御を実行する還流再充填部(115)と、を備え
、
前記還流再充填制御の実行後に、前記第1圧力値(Ppmp)を取得できないまたは前記第1圧力値(Ppmp)が所定の範囲になく、かつ 前記第2圧力値(Pdv)が所定の範囲にある場合に、前記ポンプ(31)に故障が発生しているおそれがあると判断する還元剤供給装置。
【請求項2】
前記第2圧力値(Pdv)が所定の範囲にない場合に、還元剤の漏れが発生しているおそれがあると判断する請求項
1記載の還元剤供給装置。
【請求項3】
排気管(11)に取り付けられた還元触媒(13)の上流側に還元剤を噴射する還元剤噴射弁(25)と、
貯蔵タンク(21)から前記還元剤を汲み出して前記還元剤噴射弁(25)に圧送するポンプ(31)と、
圧送される前記還元剤を前記還元剤噴射弁(25)に導く供給通路(52)と、を備えた還元剤供給装置の制御方法であって、
前記還元剤噴射弁(25)への供給圧力(Pu)の推定値である第1圧力値(Ppmp)を前記ポンプ(31)に流れる電流(Ipmp)に基づいて取得するステップと、
前記第1圧力値(Ppmp)を取得できない、または、前記第1圧力値(Ppmp)が所定の範囲にない場合に、前記還元剤噴射弁(25)への供給圧力(Pu)の推定値である第2圧力値(Pdv)を前記還元剤噴射弁(25)に流れる電流(Idv)に基づいて取得するステップと、
前記第2圧力値(Pdv)が所定の範囲にあるか否かを判断するステップと、
前記第2圧力値(Pdv)が所定の範囲にある場合に、前記ポンプ(31)の加圧室に混入した空気を排出するように作動する還流再充填制御を実行するステップと、
を備え
、
前記還流再充填制御の実行後に、前記第1圧力値(Ppmp)を取得できないまたは前記第1圧力値(Ppmp)が所定の範囲になく、かつ 前記第2圧力値(Pdv)が所定の範囲にある場合に、前記ポンプに故障が発生しているおそれがあると判断する還元剤供給装置の制御方法。
【請求項4】
前記第2圧力値(Pdv)が所定の範囲にない場合に、還元剤の漏れが発生しているおそれがあると判断する請求項
3記載の還元剤供給装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気管に還元剤を供給するための還元剤供給装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガス中には、環境に影響を与えるおそれのある窒素酸化物(以下、「NOx」と称する。)が含まれている。このNOxを浄化するために用いられる排気浄化装置として、排気管に配設された触媒の上流側に尿素水溶液等の還元剤を噴射供給し、触媒中で排気ガス中のNOxを還元反応させる排気浄化装置が知られている。
【0003】
このような排気浄化装置に用いられる還元剤供給装置の一態様として、ポンプ及び還元剤噴射弁を備え、貯蔵タンク内の還元剤をポンプによって圧送するとともに、排気管に固定された還元剤噴射弁を介して還元剤を排気管内に供給する直接噴射式の還元剤供給装置がある。(特許文献1参照)。
【0004】
このような還元剤供給装置では、液体還元剤を過不足なく噴射できるように、還元剤噴射弁に供給される液体還元剤の供給圧力を圧力センサによって検出するとともに、この検出圧力が所定の値に維持されるようにポンプの出力を制御し、排気中のNOx量等に基づいて算出される目標噴射量に応じて還元剤噴射弁の開弁時間を制御することが行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような還元剤供給装置では、圧力センサが故障した場合に、液体還元剤の供給圧力を制御することができなくなり、その結果、適切な噴射量を維持することができないおそれがあった。また、圧力センサは高価であることから、還元剤供給装置のコスト増の要因となっていた。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、圧力センサを使わずに、信頼性の高い供給圧力の検出を可能とする還元剤供給装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る還元剤供給装置は、排気管に取り付けられた還元触媒の上流側に還元剤を噴射する還元剤噴射弁と、貯蔵タンクから前記還元剤を汲み出して前記還元剤噴射弁に圧送するポンプと、圧送される前記還元剤を前記還元剤噴射弁に導く供給通路と、前記還元剤噴射弁への供給圧力の推定値である第1圧力値を前記ポンプに流れる電流に基づいて取得する第1圧力値推定部と、前記第1圧力値推定部が前記第1圧力値を取得できない、または、前記第1圧力値が所定の範囲にない場合に、前記還元剤噴射弁への供給圧力の推定値である第2圧力値を前記還元剤噴射弁に流れる電流に基づいて取得する第2圧力値推定部と、を備える還元剤供給装置である。
【0009】
本発明に係る還元剤供給装置の制御方法は、排気管に取り付けられた還元触媒の上流側に還元剤を噴射する還元剤噴射弁と、貯蔵タンクから前記還元剤を汲み出して前記還元剤噴射弁に圧送するポンプと、圧送される前記還元剤を前記還元剤噴射弁に導く供給通路と、を備えた還元剤供給装置の制御方法であって、前記還元剤噴射弁への供給圧力の推定値である第1圧力値を前記ポンプに流れる電流に基づいて取得するステップと、前記第1圧力値を取得できない、または、前記第1圧力値が所定の範囲にない場合に、前記還元剤噴射弁への供給圧力の推定値である第2圧力値を前記還元剤噴射弁に流れる電流に基づいて取得するステップと、を備える還元剤供給装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧力センサを使わずに、信頼性の高い供給圧力の検出を可能とする還元剤供給装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る還元剤供給装置を備えた排気浄化装置の構成例を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る還元剤供給装置が有する還元剤噴射弁の模式図である。
【
図3】同実施形態に係る還元剤供給装置が有する電子制御装置に備えられた構成のうち、本発明の制御に関連する部分を機能的なブロックで表した構成例を示している。
【
図4】同実施形態に係る還元剤供給装置が有する第1ポンプに流れる第1ポンプ電流の例を示している。
【
図5】同実施形態に係る還元剤供給装置における第1ポンプのプランジャ始動時間と供給圧力とバッテリー電圧との関係の例を示している。
【
図6】同実施形態に係る還元剤供給装置が有する還元剤噴射弁に流れる噴射弁電流の例を示している。
【
図7】同実施形態に係る還元剤供給装置における還元剤噴射弁の最大リフト到達時間と供給圧力とバッテリー電圧との関係の例を示している。
【
図8】本発明の実施形態に係る還元剤供給装置の制御方法を表すフローチャートの例である。
【
図9】本発明の実施形態に係る還元剤供給装置を備えた排気浄化装置の変形例を示す模式図である。
【
図10】変形例に係る還元剤供給装置が有する電子制御装置に備えられた構成のうち、本発明の制御に関連する部分を機能的なブロックで表した構成例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照して、本発明の還元剤供給装置及びその制御方法に関する実施の形態について具体的に説明する。尚、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては、特に説明がない限り同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る還元剤供給装置及び還元剤供給装置の制御方法について説明する。
【0014】
1.排気浄化装置の全体構成
図1は、還元剤供給装置20を備える排気浄化装置10の全体構成の一例を説明するために示す模式図である。
この排気浄化装置10は、排気中のNOxを浄化するための装置であり、ディーゼルエンジン等の内燃機関1の排気管11に設けられている。排気浄化装置10は、排気管11の途中に介装された還元触媒13と、還元触媒13よりも上流側の排気管11内に還元剤を供給するための還元剤供給装置20とを備えている。
【0015】
還元触媒13は、排気中のNOxの還元反応を促進する機能を有する触媒であり、還元剤から生成される還元成分を吸着するとともに、触媒に流れ込む排気中のNOxを還元成分によって選択的に還元するものとなっている。還元剤供給装置20は、還元剤として尿素水溶液が用いられるものであり、尿素水溶液が排気管11中で分解されることにより還元成分としてのアンモニアが生成されるようになっている。
【0016】
2.還元剤供給装置
図1に示すように、還元剤供給装置20は、還元剤が収容される貯蔵部としての貯蔵タンク21と、還元剤を排気管11内に噴射するための還元剤噴射弁25と、貯蔵タンク21内の還元剤を還元剤噴射弁25に圧送する第1ポンプ31と、貯蔵タンク21内に還元剤を回収する第2ポンプ41と、還元剤噴射弁25や各ポンプ31、41と電気的に接続されておりこれらを電子制御する電子制御装置100とを主な構成要素として備えている。
【0017】
貯蔵タンク21と第1ポンプ31とは第1通路51によって連通している。第1通路51の途中には、貯蔵タンク21側から順に第1フィルタ71と第1逆止弁61とが設けられている。第1逆止弁61は還元剤が貯蔵タンク21から第1ポンプ31の方向にのみ流れるように機能する。
【0018】
第1ポンプ31と還元剤噴射弁25とは第2通路52によって連通している。第2通路52の途中には、第1ポンプ31側から順に第2逆止弁62とダンパ73と後述する第3通路53との分岐点72とが設けられている。第2逆止弁62は還元剤が第1ポンプ31から分岐点72の方向にのみ流れるように機能する。尚、本願において第2通路52が第1ポンプ31から圧送される還元剤を還元剤噴射弁25に導く供給通路である。
【0019】
第3通路53は第2通路52の途中に設けられた分岐点72から分岐し、第2ポンプ41と連通している。第3通路53の途中には、第3逆止弁63が設けられている。第3逆止弁63は還元剤が分岐点72から第2ポンプ41の方向にのみ流れるように機能する。
【0020】
第2ポンプ41と貯蔵タンク21とは第4通路54によって連通している。第4通路54の途中には、第2ポンプ41側から順に第4逆止弁64と第2フィルタ75とが設けられている。第4逆止弁64は還元剤が第2ポンプ41から貯蔵タンク21の方向にのみ流れるように機能する。尚、各種逆止弁、フィルタ、ダンパの配置位置は、上記の例に限られない。
【0021】
第1ポンプ31は、ダイヤフラムタイプのポンプである。第1ポンプ31は、第1通路51および第2通路52と連通する第1加圧室32と、第1加圧室32を画成する第1ダイヤフラム33と、第1ダイヤフラム33に取り付けられた第1プランジャ34と、第1プランジャ34と連結する第1ソレノイド35と、第1スプリング36とを主な構成要素として有する。第1ソレノイド35は電子制御装置100と電気的に接続されており、電子制御装置100によって通電または非通電状態となるよう制御される。第1ソレノイド35が通電状態になると、第1ソレノイド35は第1プランジャ34を矢印Aの方向に移動させ、第1ソレノイド35が非通電状態になると、第1スプリング36の弾性力により第1プランジャ34は矢印Bの方向に移動するように構成されている。
【0022】
第1ポンプ31において、第1ソレノイド35が通電状態から非通電状態に切り替わると、第1プランジャ34が矢印B方向に移動し、貯蔵タンク内の還元剤が第1通路51を介して第1加圧室32内に流入する。次に第1ソレノイド35が非通電状態から通電状態に切り替わると、第1プランジャ34が矢印A方向に移動し、第1プランジャ34は第1ダイヤフラム33を介して第1加圧室32内の還元剤を圧縮し、第1加圧室32内の還元剤は第2通路52を通って還元剤噴射弁25に圧送される。
【0023】
第2ポンプ41も、ダイヤフラムタイプのポンプである。第2ポンプ41は、第3通路53および第4通路54と連通する第2加圧室42と、第2加圧室42を画成する第2ダイヤフラム43と、第2ダイヤフラム43に取り付けられた第2プランジャ44と、第2プランジャ44と連結する第2ソレノイド45と、第2スプリング46とを主な構成要素として有する。第2ソレノイド45は電子制御装置100と電気的に接続されており、電子制御装置100によって通電または非通電状態となるよう制御される。第2ソレノイド45が通電状態になると、第2ソレノイド45の力は第2プランジャ44を矢印Cの方向に移動させ、第2ソレノイド45が非通電状態になると、第2スプリング46の弾性力により第2プランジャ44は矢印Dの方向に移動するように構成されている。
【0024】
第2ポンプ41において、第2ソレノイド45が非通電状態から通電状態に切り替わると、第2プランジャ44は矢印C方向に移動し、第2ポンプ41は第3通路53内の還元剤を第2加圧室42内に吸引する。次に第2ソレノイド45が通電状態から非通電状態に切り替わると、第2プランジャ44は矢印D方向に移動し、第2加圧室42内の還元剤は貯蔵タンク21に戻される。
【0025】
還元剤噴射弁25は、内燃機関1の運転状態に応じて、電子制御装置100による通電制御によって開閉制御が行われ、所定量の還元剤を排気管11内に噴射する。還元剤噴射弁25はいわゆる電磁式のオンオフ弁である。
【0026】
図2は還元剤噴射弁25の一例について模式図で表したものである。
図2に示す還元剤噴射弁25は、接続口25a、弁スプリング25b、弁コイル25c、弁体25d、噴射孔25eおよびストッパ25f等を備えている。接続口25aは第2通路52と接続しており、還元剤は接続口25aを介して還元剤噴射弁25内に供給される。弁スプリング25bは弁体25dを噴射孔25eの方向に付勢する圧縮スプリングである。弁コイル25cは電子制御装置100が有する駆動回路と電気的に接続しており、弁コイル25cが通電状態の時に発生する電磁力は弁体25dを接続口25aの方向に吸引する。尚、吸引され接続口25a側に移動した弁体25dが当接するストッパ25fが弁体25dと接続口25aの間に設けられている。
【0027】
弁コイル25cが非通電状態の時、弁スプリング25bおよび還元剤の供給圧力Puによって、弁体25dは噴射孔25eの方向に押され噴射孔25eを閉鎖する(閉弁)。一方弁コイル25cが非通電状態から通電状態に切り替わると、弁コイル25cに発生する電磁力が弁スプリング25bの付勢力および還元剤の供給圧力Puに抗して弁体25dを接続口25aの方向に吸引し、還元剤噴射弁25は開弁する。還元剤噴射弁25が開弁することにより、還元剤が排気管11内に噴射される。
【0028】
第1フィルタ71は、第1通路51の途中に設けられ、貯蔵タンク21から第1ポンプ31に移動する還元剤中のゴミ等の異物を捕集するフィルタである。
【0029】
ダンパ73は、第2通路52の途中に設けられ、第1ポンプ31から還元剤噴射弁25に圧送される還元剤の脈動を減衰させる。
【0030】
第2フィルタ75は、第4通路54の途中に設けられ、貯蔵タンク21に戻される還元剤中のゴミ等の異物を捕集するフィルタである。
【0031】
バッテリー77は、いわゆる電源であり、電子制御装置100と電気的に接続されている。第1ソレノイド35、第2ソレノイド45、還元剤噴射弁25が通電状態となった際には、バッテリー電圧VBが電子制御装置100に設けられた駆動回路(
図3参照)を通して第1ソレノイド35、第2ソレノイド45、還元剤噴射弁25に印加される。バッテリー電圧VBは、バッテリー電圧センサ78(
図1参照)によって計測されてもよいし、電子制御装置100内の公知の電子回路によって計測されてもよい。
【0032】
還元剤温度センサ22は、還元剤の温度Tureaを計測するセンサであり、
図1においては貯蔵タンク21内に配置されているが、貯蔵タンク21内に限定されるものではない。
【0033】
3.電子制御装置
図3は、電子制御装置100のうち、本発明の制御に関連する部分を機能的なブロックで表した構成例を示している。この電子制御装置100は、公知のマイクロコンピュータを中心に構成されたものであり、ポンプ制御部101と、目標噴射量演算部103と、還元剤噴射弁制御部105と、第1圧力値推定部107と、第1圧力値判断部109と、第2圧力値推定部111と、第2圧力値判断部113と、還流再充填部115と、エラー設定部117と、運転者通知部119とを有している。具体的に、これらの各部はマイクロコンピュータによるプログラムの実行によって実現されるものとなっている。
【0034】
この他、電子制御装置100には、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の図示しない記憶素子やタイマカウンタ、さらにポンプ23又は還元剤噴射弁25への通電制御を行うための駆動回路等が備えられている。ここで駆動回路は例えばトランジスタである(
図3参照)。また、電子制御装置100には、還元剤温度センサ22やバッテリー電圧センサ78等の各種センサ信号が入力されるようになっている。
【0035】
このうち、ポンプ制御部101は、基本的に、内燃機関1の運転中において、後述する還元剤噴射弁25への供給圧力Puの推定値である第1圧力値Ppmpが所定の目標圧力Pu_tgtとなるように、第1ポンプ31を制御する。
【0036】
目標噴射量演算部103は、内燃機関1の運転中において、還元触媒13におけるアンモニアの吸着可能量や、排気中のNOx濃度Nuなどに基づいて、還元剤の目標噴射量Qu_tgtを算出する。本実施の形態の還元剤供給装置20の場合、排気中のNOx濃度Nu及び排気流量に基づいて算出されるアンモニア量(正の値)と、そのときの還元触媒13のアンモニアの最大吸着量に対する実際の吸着量の割合を目標吸着割合にするために必要なアンモニア量(正又は負の値)とを加算したアンモニア量を生成可能な液体還元剤の量が算出されるようになっている。
【0037】
還元剤噴射弁制御部105は、基本的に、内燃機関1の運転中において、還元剤の目標噴射量Qu_tgtに応じて還元剤噴射弁25の通電時間を制御する。具体的には、還元剤噴射弁25への供給圧力Puが目標圧力Pu_tgtとなっていることを前提として、目標噴射量Qu_tgtに応じて還元剤噴射弁25の駆動デューティ比を求めて、還元剤噴射弁25の通電制御を行う。
【0038】
第1圧力値推定部107は、第1ポンプ31が有する第1ソレノイド35に流れる第1ポンプ電流Ipmpを測定することにより、第1ポンプ31から還元剤噴射弁25へ供給される供給圧力Puの推定値である第1圧力値Ppmpを取得する。例えば、第1圧力値推定部107は第1ポンプ電流Ipmpをポンプ制御部101から取得することができる。
【0039】
さらに第1圧力値推定部107は、第1ポンプ電流Ipmpからポンプ電流極小点BMPを取得するよう作動する。
図4は、第1ポンプ電流Ipmpの例である。時刻tp0にて通電が開始され、時刻tp1でポンプ電流極小点BMPが現れている。このポンプ電流極小点BMPは、第1プランジャ34が動き始めたために現れたものである。第1プランジャ34と連結する第1ダイヤフラム33は還元剤噴射弁への供給圧力Puを受けているので、当該供給圧力Puが高いほど、第1プランジャ34の動き出しは遅くなる。すなわち、供給圧力Puが高いほど、ポンプ電流極小点BMPの発現は遅くなり、時刻tp0から時刻tp1までのプランジャ始動時間Tpは長くなる。第1圧力値推定部107はプランジャ始動時間Tpを計測する。
【0040】
さらに、第1ポンプ31の駆動に際して、バッテリー電圧VBが第1ソレノイド35の駆動回路に印加される(
図3参照)。したがって、バッテリー電圧VBが高ければ、第1ソレノイド35はより高い電磁力を発生するので、第1プランジャ34の動き出しは早くなる。すなわち、バッテリー電圧VBが高いほど、ポンプ電流極小点BMPの発現は早くなり、時刻tp0から時刻tp1までのプランジャ始動時間Tpは短くなる。プランジャ始動時間Tpと供給圧力Puおよびバッテリー電圧VBの関係の一例を
図5に示す。
図5中の各線は、バッテリー電圧VBを10V、13.5V、16Vとしたそれぞれの場合におけるプランジャ始動時間Tpと供給圧力Puの関係を示している。
【0041】
例えば、
図5に示すようなプランジャ始動時間Tpと供給圧力Puおよびバッテリー電圧VBの関係をマップとして電子制御装置100に記憶しておくことができる。第1圧力値推定部107は、計測したプランジャ始動時間Tpおよびバッテリー電圧VBを当該マップに入力することにより、還元剤噴射弁25への供給圧力Puの推定値である第1圧力値Ppmpを取得する。例えば、
図5中に示すように、バッテリー電圧VBが13.5Vの時にプランジャ始動時間TpとしてTp1を計測した場合には、第1圧力値推定部107は、第1圧力値PpmpとしてPpmp1を取得する。当該マップには、還元剤の温度Turea等のファクタも追加することができる。これらのファクタを追加することのより、第1圧力値推定部107は、より正確な供給圧力Puの推定値である第1圧力値Ppmpを取得することができる。
【0042】
第1圧力値判断部109は、ポンプ電流極小点BMPの取得の有無を判断する。例えば第1ポンプ31の第1加圧室32に空気が混入している場合等には、第1プランジャ34の動き出しが想定よりも早くなり、第1圧力値推定部107がポンプ電流極小点BMPが捉えられない場合がある。第1圧力値判断部109は、ポンプ電流極小点BMPの取得が無く、第1圧力値Ppmpを取得できないと判断した場合には、第1圧力値判断部109は、第2圧力値Pdvを取得するよう第2圧力値推定部111を作動させる。一方、第1圧力値判断部109はポンプ電流極小点BMPの取得有りと判断した場合には、第1圧力値Ppmpを取得するよう第1圧力値推定部107をさらに作動させる。
【0043】
加えて、第1圧力値判断部109は取得された第1圧力値Ppmpが所定の範囲内にあるか否かを判断する。例えば第1ポンプ31の第1加圧室32に空気が混入している場合には、第1圧力値Ppmpは取得されたものの、第1圧力値Ppmpが所定の範囲外となる場合がある。また、第2通路52や還元剤噴射弁25等に損傷があり、還元剤の漏れが発生している場合には、供給圧力Puが上昇せず、第1圧力値Ppmpが所定の範囲外となる場合もある。
【0044】
第1圧力値Ppmpが所定の範囲内にあると判断された場合には、第1圧力値判断部109は第1圧力値推定部107による第1圧力値Ppmpの取得が継続されるように指示する。一方、第1圧力値Ppmpが所定の範囲外にあると判断された場合には、第1圧力値判断部109は、第2圧力値Pdvを取得するよう第2圧力値推定部111を作動させる。
【0045】
第2圧力値推定部111は、還元剤噴射弁25に通電するよう還元剤噴射弁制御部105に指示する。第2圧力値推定部111は還元剤噴射弁25に流れる噴射弁電流Idvを取得する。
【0046】
さらに第2圧力値推定部111は、噴射弁電流Idvから噴射弁電流極小点BIPを取得するよう作動する。
図6は、還元剤噴射弁25に流れる噴射弁電流Idvの例である。時刻tv0にて通電が開始され、時刻tv1で噴射弁電流極小点BIPが現れている。この噴射弁電流Idvの極小点は、還元剤噴射弁25の弁体25dが最大リフト(ストッパ25f)に到達したために現れたものである。前述のように、弁体25dは還元剤の供給圧力Puによって噴射孔25e方向に押されているので、当該供給圧力Puが高いほど、開弁するまでの時間が遅くなり、弁体25dが最大リフトに到達する時間も遅くなる。すなわち、供給圧力Puが高いほど、噴射弁電流極小点BIPの発現は遅くなり、時刻tv0から時刻tv1までの最大リフト到達時間Tvは長くなる。第2圧力値推定部111は最大リフト到達時間Tvを計測する。
【0047】
さらに、還元剤噴射弁25の駆動に際して、バッテリー電圧VBが還元剤噴射弁25の駆動回路に印加される(
図3参照)。したがって、バッテリー電圧VBが高ければ、電磁式のオンオフ弁である還元剤噴射弁25はより高い電磁力を発生するので、還元剤噴射弁25の弁体25dの動きは速くなる。すなわち、バッテリー電圧VBが高いほど、噴射弁電流極小点BIPの発現は早くなり、時刻tv0から時刻tv1までの最大リフト到達時間Tvは短くなる。最大リフト到達時間Tvと供給圧力Puおよびバッテリー電圧VBの関係の一例を
図7に示す。
図7中の各線は、バッテリー電圧VBを10V、13.5V、16Vとしたそれぞれの場合における最大リフト到達時間Tvと供給圧力Puの関係を示している。
【0048】
例えば、
図7に示すような最大リフト到達時間Tvと供給圧力Puおよびバッテリー電圧VBの関係をマップとして電子制御装置100に記憶しておくことができる。第2圧力値推定部111は、計測した最大リフト到達時間Tvおよびバッテリー電圧VBを当該マップに入力することにより、供給圧力Puの推定値である第2圧力値Pdvを取得することができる。例えば、
図7中に示すように、バッテリー電圧VBが13.5Vの時に最大リフト到達時間TvとしてTv1を計測した場合には、第2圧力値推定部111は第2圧力値PdvとしてPdv1を取得する。当該マップには、還元剤の温度Turea等のファクタも追加することができる。これらのファクタを追加することのより、第2圧力値推定部111はより正確な供給圧力Puの推定値である第2圧力値Pdvを取得することができる。尚、第1圧力値Ppmpが所定の範囲内にあると判断された場合にも、第1圧力値推定部107による第1圧力値Ppmpの取得と並行して第2圧力値Pdvを取得するよう第2圧力値推定部111を作動させてもよい。第2圧力値Pdvは第1圧力値Ppmpに比べ精度が低くなる可能性があるので、第1圧力値Ppmpが正常な場合に、第2圧力値Pdvと第1圧力値Ppmpとの差分を取得し記憶しておき、第1圧力値Ppmpが異常となった場合に取得された第2圧力値Pdvを当該差分で補正することにより、第2圧力値Pdvの精度を高めることができる。
【0049】
第2圧力値判断部113は、第2圧力値推定部111によって取得された第2圧力値Pdvが所定の範囲にあるか否かを判断する。
【0050】
第2圧力値Pdvが所定の範囲内にある場合には、第2圧力値判断部113は第1ポンプ31の第1加圧室32に空気が混入していると判断し、混入空気を排出するために、還流再充填部115に対して作動するよう指示する。一方、第2圧力値Pdvが所定の範囲外にある場合には、第2圧力値判断部113は第2通路52や還元剤噴射弁25等に損傷があり還元剤の漏れが発生しているおそれがあると判断しエラー設定部117に送り、エラー設定部117はその旨を記憶する。また、運転者通知部119がその旨を運転者に通知するように構成されていてもよい。運転者に通知することにより、運転者が早期に点検、修理等を行うことができるからである。
【0051】
還流再充填部115は、まず、既に還流再充填制御が行われ第1の所定回数(N1)を超えているか否かを判断する。第1の所定回数(N1)は例えば3~5回である。第1の所定回数(N1)を超えている場合には第1ポンプ31が故障しているおそれがあり、空気の混入が原因ではない可能性が高いため、これ以上還流再充填制御をおこなっても異常は解消しないと判断し、エラー設定部117に送り、エラー設定部117はその旨を記憶する。また、運転者通知部119がその旨を運転者に通知するように構成されていてもよい。運転者に通知することにより、運転者が早期に点検、修理等を行うことができるからである。
【0052】
一方、還流再充填制御の回数が第1の所定回数(N1)を超えていない場合には、還流再充填部115は還流再充填制御を行う。具体的には、還流再充填部115はまず還元剤噴射弁制御部105に還元剤噴射弁25を非通電状態とするよう指示し、還元剤噴射弁25を閉弁する。続いて、還流再充填部115は、還元剤が貯蔵タンク21から第1通路51、第1ポンプ31、第2通路52、分岐点72、第3通路53、第2ポンプ41および第4通路54を経て貯蔵タンク21に還流するように、第1ポンプ31および第2ポンプ41を制御する。このように還元剤を還流させることにより、第1加圧室32に混入した空気を還元剤の還流とともに貯蔵タンク21に排出することができる。
【0053】
還元剤の還流を所定時間行った後、還流再充填部115は、還元剤噴射弁25を閉弁状態としたまま、第2ポンプ41を非作動とするとともに、第1ポンプ31に対しては還元剤の吸引と圧送を継続するよう指示することによって、供給圧力Puを上昇させるように制御し、還流再充填制御を終了する。
【0054】
以上のように、本願発明の還元剤供給装置によれば、供給圧力Puの推定値である第1圧力値Ppmpに基づいて圧力制御を行い、かつ、第1圧力値Ppmpに異常のおそれがある場合には、第2圧力値Pdvによってさらに判断を行い、必要な措置を行うことができるので、圧力センサを使わずに、信頼性の高い供給圧力Puの推定を可能とする還元剤供給装置を提供することができる。
【0055】
4.還元剤供給装置の制御方法
次に、上述した電子制御装置100によって実行される還元剤供給装置の制御方法について
図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0056】
まずステップS10で、第1圧力値推定部107は、第1ポンプ電流Ipmpを取得するとともに、ポンプ電流極小点BMPを取得するよう作動する。
【0057】
次にステップS20で、第1圧力値判断部109は、ポンプ電流極小点BMPの取得ができたか否かを判断する。ポンプ電流極小点BMPの取得ができた場合(YES)にはステップS30に進み、ポンプ電流極小点BMPの取得ができない場合(NO)には、これに基づく第1圧力値Ppmpを取得できないと判断ステップS60に進む。
【0058】
次にステップS30で、第1圧力値推定部107は、第1ポンプ電流Ipmpに基づいてプランジャ始動時間Tpを取得する。
【0059】
次にステップS40で、第1圧力値推定部107は、プランジャ始動時間Tpに基づいて第1圧力値Ppmpを取得する。
【0060】
次にステップS50で、第1圧力値判断部109は、第1圧力値Ppmpが所定の範囲にあるか否かを判断する。第1圧力値Ppmpが所定の範囲にある場合(YES)にはステップS10に戻り、第1圧力値Ppmpが所定の範囲にない場合(NO)にはステップ60に進む。
【0061】
次にステップS60で、第2圧力値推定部111は、還元剤噴射弁25に通電し、噴射弁電流Idvを取得する。
【0062】
次にステップS70で、第2圧力値推定部111は噴射弁電流Idvに基づいて噴射弁電流極小点BIPを取得する。
【0063】
次にステップS80で、第2圧力値推定部111は最大リフト到達時間Tvを取得する。
【0064】
次にステップS90で、第2圧力値推定部111は最大リフト到達時間Tvに基づいて第2圧力値Pdvを取得する。
【0065】
次にステップS100で、第2圧力値判断部113は、第2圧力値Pdvが所定の範囲にあるか否かを判断する。第2圧力値Pdvが所定の範囲にある場合(YES)にはステップS110に進む。一方、第2圧力値Pdvが所定の範囲にない場合(NO)には、第2圧力値判断部113は第2通路52や還元剤噴射弁25等に損傷があり還元剤の漏れが発生しているおそれがあると判断し、ステップS150に進む。ステップS150では、エラー設定部117はその旨を記憶する。次いで、ステップS160に進み、運転者通知部119は運転者にその旨を通知し、本フローを終了する。運転者に通知することにより、運転者が早期に点検、修理等を行うことができるからである。
【0066】
次にステップS110で、還流再充填部115は、既に還流再充填制御が行われ第1の所定回数(N1)を超えているか判断する。第1の所定回数(N1)を超えていない場合(NO)にはステップS120に進み、第1の所定回数(N1)を超えている場合(YES)には第1ポンプ31が故障しているおそれがあり、空気の混入が原因ではない可能性が高いため、これ以上還流再充填制御をおこなっても異常は解消しないと判断し、ステップS130に進む。ステップS130では、エラー設定部117は第1ポンプ31に故障のおそれがある旨を記憶し、ステップS140に進む。ステップS140では、運転者通知部119は運転者にその旨を通知し、本フローを終了する。運転者に通知することにより、運転者が早期に点検、修理等を行うことができるからである。
【0067】
尚、ステップS100で第2圧力値Pdvが所定の範囲にない場合(NO)に、ステップS150に進まず、再循環充填制御を行い、再びステップS10に戻るように構成してもよい。例えば、還元剤噴射弁25の近傍に空気が溜まっており、これにより、第2圧力値Pdvが所定の範囲にない場合が考えられるからである。この場合も再循環充填制御を第2の所定回数(N2)まで繰り返すことができるように構成してもよい。前述のように例えば第1の所定回数(N1)が3~5回である場合には、第2の所定回数(N2)は第1の所定回数(N1)よりも少ない回数に設定するのが良い。例えば第2の所定回数(N2)を1~2回と設定することができる。第2通路52や還元剤噴射弁25等に損傷があり還元剤の漏れが発生しているおそれがある場合には、より早期にエラーを設定し、運転者に通知し、点検、修理等を促すことが必要だからである。
【0068】
ステップS120では、還流再充填部115は還流再充填制御を行う。具体的には、還流再充填部115はまず還元剤噴射弁25を閉弁する。続いて、還流再充填部115は、還元剤が貯蔵タンク21から第1通路51、第1ポンプ31、第2通路52、分岐点72、第3通路53、第2ポンプ41および第4通路54を経て貯蔵タンク21に還流するように、第1ポンプ31および第2ポンプ41を制御する。このように還元剤を還流させることにより、第1加圧室32に混入した空気を還元剤の還流とともに貯蔵タンク21に排出することができる。還元剤の還流を所定時間行った後、還流再充填部115は、還元剤噴射弁25を閉弁状態としたまま、第2ポンプ41を非作動とするとともに、第1ポンプ31に対しては還元剤の吸引と圧送を継続するよう指示することによって、供給圧力Puを上昇させるように制御し、その後還流再充填制御を終了し、ステップS10に戻る。
【0069】
以上のように、本願発明の還元剤供給装置の制御方法によれば、供給圧力Puの推定値である第1圧力値Ppmpに基づいて圧力制御を行い、かつ、第1圧力値Ppmpに異常のおそれがある場合には、第2圧力値Pdvによってさらに判断を行い、必要な措置を行うことができるので、圧力センサを使わずに、信頼性の高い供給圧力Puの推定を可能とする還元剤供給装置の制御方法を提供することができる。
【0070】
5.変形例
図9は、本発明の実施形態に係る還元剤供給装置を備えた排気浄化装置の変形例を示す模式図である。
図9の排気浄化装置は、還元触媒13、還元剤噴射弁25に加え、第2の還元触媒14、第2の還元剤噴射弁26を有している点で、
図1の排気浄化装置と異なっている。
図10は、変形例に係る還元剤供給装置が有する電子制御装置に備えられた構成のうち、本発明の制御に関連する部分を機能的なブロックで表した構成例を示しており、第2の還元剤噴射弁26への通電制御を行うための駆動回路等が備えられている点で
図3の電子制御装置と異なっている。
【0071】
変形例において、たとえば、第2圧力値推定部111は還元剤噴射弁25と第2の還元剤噴射弁26のいずれか一つについて第2圧力値Pdvを取得して第2圧力判断部113に送るように構成されていてもよい。また、第2圧力値推定部111は、還元剤噴射弁25と第2の還元剤噴射弁26の両方についてそれぞれ第2圧力値Pdvを取得し、その平均値を第2圧力値Pdvとして第2圧力判断部113に送るように構成されていてもよい。この場合、還元剤噴射弁25から取得された第2圧力値Pdvと第2の還元剤噴射弁26から取得された第2圧力値Pdvとを比較し、これらの差または比等で表される違いが所定の範囲内の場合にのみ、その平均値を第2圧力値Pdvとして第2圧力判断部113に送るように構成されていてもよい。当該違いが所定の範囲を超えている場合には、どちらかの還元剤噴射弁の近傍に空気が混入している可能性があるので、還流再充填部115が還流再充填制御を行うように構成してもよい。尚、還元触媒および還元剤噴射弁の数が3個以上の場合であっても、同様の考えに基づいて第2圧力値Pdvを取得することができるように第2圧力値推定部111を構成することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 内燃機関、10 排気浄化装置、11 排気管、13 還元触媒、14 第2の還元触媒、20 還元剤供給装置、21 貯蔵タンク、22 還元剤温度センサ、25 還元剤噴射弁、26 第2の還元剤噴射弁、25a 接続口、25b 弁スプリング、25c 弁コイル、25d 弁体、25e 噴射孔、25f ストッパ、31 第1ポンプ、32 第1加圧室、33 第1ダイヤフラム、34 第1プランジャ、35 第1ソレノイド、36 第1スプリング、41 第2ポンプ、42 第2加圧室、43 第2ダイヤフラム、44 第2プランジャ、45 第2ソレノイド、46 第2スプリング、51 第1通路、52 第2通路、53 第3通路、54 第4通路、61 第1逆止弁、62 第2逆止弁、63 第3逆止弁、64 第4逆止弁、71 第1フィルタ、72 分岐点、73 ダンパ、75 第2フィルタ、77 バッテリー、78 バッテリーセンサ、100 電子制御装置、101 ポンプ制御部101、103 目標噴射量演算部、105 還元剤噴射弁制御部、107 第1圧力値推定部、109 第1圧力値判断部、111 第2圧力値推定部、113 第2圧力値判断部、115 還流再充填部、117 エラー設定部、119 運転者通知部