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特許7373380湿度センサ診断装置及び湿度センサ診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】湿度センサ診断装置及び湿度センサ診断方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/49 20160101AFI20231026BHJP
   F02M 26/45 20160101ALI20231026BHJP
   F02M 26/05 20160101ALI20231026BHJP
   F02M 26/06 20160101ALI20231026BHJP
【FI】
F02M26/49 321
F02M26/45
F02M26/05
F02M26/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019220068
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021088965
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田辺 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 成慶
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0316676(US,A1)
【文献】特開2003-172192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0227719(US,A1)
【文献】特開2008-216209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
G01N 27/00
F02M 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧排気再循環通路と、
低圧排気再循環通路と、
エンジンへ空気を導入するための吸気管に備えられ、吸気管内の空気の湿度を測定する湿度センサと、
前記高圧排気再循環通路及び前記低圧排気再循環通路それぞれの排気再循環量を制御可能に構成された電子制御ユニットと、を備え、
前記電子制御ユニットは、
前記湿度センサの出力値を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記湿度センサの出力値を保存する出力値保存部と、
所定時間内における前記湿度センサの出力値の最大値と最小値との差分が所定のしきい値を超える時に前記湿度センサが正常であると判定する診断部と、
前記エンジンの、前回停止時から今回始動時までの停止時間を計測するタイマ部と
前記タイマ部により計測された前記停止時間に基づき前記所定時間を算出する計測時間算出部と、
を含み、
前記診断部による判定は、前記エンジンの始動時に実行され、
前記所定時間は、前記停止時間が長い程短く、前記停止時間が予め定められた時間を超えると一定値とされる、湿度センサ診断装置。
【請求項2】
前記電子制御ユニットは、
前記湿度センサの診断可否を判定するための条件を取得する診断条件取得部と、
前記診断条件取得部が取得した条件に基づき前記湿度センサの診断可否を判定する診断可否判定部と、を含み、
前記診断可否判定部は、少なくとも外気温度及び大気圧に基づき前記湿度センサの診断可否を判定する、請求項1に記載の湿度センサ診断装置。
【請求項3】
前記診断可否判定部は、外気温度及び大気圧が、それぞれに設定されたしきい値を超える時に、前記湿度センサの診断を許可する、請求項2に記載の湿度センサ診断装置。
【請求項4】
高圧排気再循環通路と、
低圧排気再循環通路と、
エンジンへ空気を導入するための吸気管に備えられ、吸気管内の空気の湿度を測定する湿度センサと、
前記高圧排気再循環通路及び前記低圧排気再循環通路それぞれの排気再循環量を制御可能に構成された電子制御ユニットと、を備えたエンジン制御装置における湿度センサ診断方法であって、
前記電子制御ユニットは、
タイマ部が、前記エンジンの、前回停止時から今回始動時までの停止時間を計測する計測ステップと、
計測時間算出部が、前記タイマ部により計測された前記停止時間に基づき前記湿度センサの診断に使用される所定時間を算出する計測時間算出ステップと、
受信部が前記湿度センサの出力値を受信する受信ステップと、
出力値保存部が、前記受信部が受信した前記湿度センサの出力値を保存する出力値保存ステップと、
診断部が、前記所定時間内における前記湿度センサの出力値の最大値と最小値との差が所定のしきい値を超えるときに前記湿度センサが正常であると判定する診断ステップと、
を含み、
前記診断ステップは、前記エンジンの始動時に実行され、
前記所定時間は、前記停止時間が長い程短く、前記停止時間が予め定められた時間を超えると一定値とされる、湿度センサ診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気再循環装置(EGR)を備えるエンジン制御装置に備えられた湿度センサの異常を診断するための装置及び診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排気に含まれる窒素酸化物(NOx)を低減するために、排気管と吸気管とを連通させ、排気の一部を吸気に取り入れる排気再循環装置が知られている。また、過給機付き内燃機関において、高圧排気再循環装置と低圧排気再循環装置とを備える構成も知られている。具体的には、高圧排気再循環装置は、排気管におけるタービンよりも上流側と、吸気管におけるコンプレッサよりも下流側とを連通させ、排気を吸気側へ還流させる。また低圧排気再循環装置は、排気管におけるタービンよりも下流側と吸気管におけるコンプレッサよりも上流側とを連通させ、排気を吸気側へ還流させる。高圧排気再循環装置及び低圧排気再循環装置それぞれには、還流量を調節するためのバルブ(EGRバルブ)が備えられ、それぞれのバルブは電子制御ユニットにより制御される。(例えば、特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-196871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低圧排気再循環装置においては、排気温度が高圧排気再循環装置付近に比べ低下するため、凝縮水が発生し易い。凝縮水が発生すると、低圧排気再循環装置の配管や、低圧排気再循環装置を還流する排気流量を調節するためのバルブが腐食する虞がある。そのため、低圧排気再循環装置においては、凝縮水が発生しない様に、排気温度や還流量が電子制御ユニットにより制御される。当該制御において、吸気管に湿度センサを配置し、その出力値を使用することがある。
【0005】
電子制御ユニットは、各種の故障診断を実行する。電子制御ユニットは、電気的な断線やショートなどにより湿度センサの出力値を得ることができない場合、湿度センサの故障と判定する。一方、電子制御ユニットが湿度センサの出力値を得ている場合においても、当該出力値から湿度センサの異常の有無を精度良く診断する技術が望まれていた。
【0006】
本発明はこの様な状況に鑑みなされたもので、湿度センサの異常の有無に関する診断精度を向上させた、湿度センサ診断装置及び湿度センサ診断方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するため、本発明に係る湿度センサ診断装置は、
高圧排気再循環通路と、
低圧排気再循環通路と、
エンジンへ空気を導入するための吸気管に備えられ、吸気管内の空気の湿度を測定する湿度センサと、
前記高圧排気再循環通路及び前記低圧排気再循環通路それぞれの排気再循環量を制御可能に構成された電子制御ユニットと、を備え、
前記電子制御ユニットは、
前記湿度センサの出力値を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記湿度センサの出力値を保存する出力値保存部と、
所定時間内における前記湿度センサの出力値の最大値と最小値との差分が所定のしきい値を超える時に前記湿度センサが正常であると判定する診断部と、
を含むよう構成されてなるものである。
【0008】
また、本発明の目的を達成するため、本発明に係る湿度センサ診断方法は、
高圧排気再循環通路と、
低圧排気再循環通路と、
エンジンへ空気を導入するための吸気管に備えられ、吸気管内の空気の湿度を測定する湿度センサと、
前記高圧排気再循環通路及び前記低圧排気再循環通路それぞれの排気再循環量を制御可能に構成された電子制御ユニットと、を備えたエンジン制御装置における湿度センサ診断方法であって、
前記電子制御ユニットは、
受信部が前記湿度センサの出力値を受信する受信ステップと、
出力値保存部が、前記受信部が受信した前記湿度センサの出力値を保存する出力値保存ステップと、
診断部が、所定時間内における前記湿度センサの出力値の最大値と最小値との差が所定のしきい値を超えるときに前記湿度センサが正常であると判定する診断ステップと、
を含むよう構成されてなるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排気再循環装置を備えたエンジン制御装置において、湿度センサの異常の有無に関する診断精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態におけるエンジン制御装置の構成例を示す構成図である。
図2】本発明におけるエンジン制御装置を構成する電子制御ユニットのうち、本発明の第1の実施の形態に係る部分の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1の実施の形態における、電子制御ユニットの動作例を示すサブルーチンフローチャートである。
図4】本発明におけるエンジン制御装置を構成する電子制御ユニットのうち、本発明の第2の実施の形態に係る部分の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第2の実施の形態における、電子制御ユニットの動作例を示すサブルーチンフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について、適宜図面を参照しつつ説明する。尚、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。また、それぞれの図中、同じ符号が付されているものは同一の要素を示しており、適宜説明が省略されている。
【0012】
最初に、本発明の実施の形態における、排気再循環装置(以下、「EGR」ともいう)を備えたエンジン制御装置100の構成例について、図1を参照しつつ説明する。
【0013】
本発明の実施の形態における排気再循環装置は、高圧排気再循環通路5と、低圧排気再循環通路6の2つ排気再循環通路が設けられた構成を有しており、かかる構成自体は従来から知られているものである。本発明の実施の形態におけるエンジン制御装置100において、内燃機関としてのエンジン1は、例えば、ディーゼルエンジンである。
【0014】
エンジン1のインテークマニホールド4aには、燃料の燃焼のために必要な空気を取り入れる吸気管2が、また、エキゾーストマニホールド4bには、排気のための排気管3が、それぞれ接続されている。
【0015】
そして、吸気管2のインテークマニホールド4a近傍の適宜な部位と、排気管3のエキゾーストマニホールド4b近傍の適宜な部位の間には、双方を連通する高圧排気再循環通路5が設けられている。この高圧排気再循環通路5には、吸気管2側から、高圧排気再循環通路5の連通状態、換言すれば、排気の還流量を調整するための高圧EGRバルブ7と、通過する排気の冷却を行うための高圧EGRクーラ8が順に配設されている。
【0016】
さらに、高圧EGRクーラ8の両端近傍の高圧排気再循環通路5には、高圧EGRクーラ8の両端近傍を連通するバイパス通路9が設けられている。このバイパス通路9の上流側、すなわち、エキゾーストマニホールド4b側の端部には、バイパスバルブ10が設けられており、バイパス量の調整が可能となっている。
【0017】
また、吸気管2に設けられた圧縮機13と、排気管3に設けられた可変タービン12とを主たる構成要素としてなる公知・周知の構成を有する可変ターボ11が設けられている。すなわち、圧縮機13は、高圧排気再循環通路5より上流側の吸気管2の適宜な位置に、また、可変タービン12は、高圧排気再循環通路5より下流側の排気管3の適宜な位置に、それぞれ設けられたものとなっている。可変ターボ11は、可変タービン12により得られた回転力により圧縮機13が回転せしめられて、圧縮された空気を吸入空気としてインテークマニホールド4aへ送出可能となっている。
【0018】
さらに、吸気管2には、先に述べた高圧排気再循環通路5と可変ターボ11の間の適宜な位置において、吸入空気の冷却を行う水冷インタークーラ14が設けられている。また、水冷インタークーラ14と高圧排気再循環通路5との間には、吸入空気の量を調整するためのインテークスロットルバルブ16が設けられている。
【0019】
さらに、圧縮機13の上流側の吸気管2と可変タービン12の下流側の排気管3の適宜な部位には、双方を連通する低圧排気再循環通路6が設けられている。この低圧排気再循環通路6には、排気管3側から低圧EGRクーラ19、低圧EGRバルブ20が順に設けられている。
【0020】
また、この低圧排気再循環通路6と可変タービン12との間の排気管3には、可変タービン12側から、下流方向に向かって排気浄化のための窒素酸化物吸蔵還元触媒(NOx Storage Catalyst)17、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(Diesel Particulate Filter)18が順に設けられている。
【0021】
一方、吸気管2において低圧排気再循環通路6との連通部分よりも上流側には、上流側から下流側に向かって、エアフィルタ21、吸入空気量を計測するエアマスセンサ22、低圧用スロットルバルブ23が順に設けられている。なお、エアマスセンサ22には、温度センサが内蔵されており、吸気温度が計測可能となっている。
【0022】
また、本発明の実施の形態におけるエンジン制御装置100においては、次述する各種のセンサが設けられている。まず、吸気管2のエアフィルタ21とエアマスセンサ22との間には湿度センサ31が設けられている。湿度センサ31は、吸気管2に吸入される吸気の相対湿度を検出する。
【0023】
さらに、吸気管2の高圧排気再循環通路5との接続部分とインテークスロットルバルブ16との間には、吸気圧センサ32とインタークーラ下流側温度センサ33が設けられている。吸気圧センサ32によりエンジン1の吸気圧が、インタークーラ下流側温度センサ33により水冷インタークーラ14の下流側温度が、それぞれ検出可能となっている。
【0024】
またさらに、排気管3においては、可変タービン12と窒素酸化物吸蔵還元触媒(以下、「NSC」と称する)17との間に、上流側から第1の排気温度センサ34、第1のラムダセンサ36が順に設けられている。また、NSC17とディーゼル微粒子捕集フィルタ(以下、「DPF」と称する)18の間には、第2の排気温度センサ35が設けられる一方、排気管3の低圧排気再循環通路6との接続部分とDPF18との間には、第2のラムダセンサ37が設けられている。
【0025】
さらに、DPF18が設けられた箇所には、排気用差圧センサ38が設けられており、DPF18前後の圧力差が検出可能となっている。また、低圧排気再循環通路6の低圧EGRバルブ20の位置には、低圧用差圧センサ39が設けられており、低圧EGRバルブ20の前後の圧力差が検出可能となっている。
【0026】
上述の高圧EGRバルブ7、バイパスバルブ10、インテークスロットルバルブ16、低圧EGRバルブ20、低圧用スロットルバルブ23などは、その動作が電子制御ユニット50により制御されるようになっている。また、先に述べた可変タービン12などの動作も電子制御ユニット50により制御されるようになっている。
【0027】
かかる電子制御ユニット50は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータを中心に、RAMやROM等の記憶素子(図示せず)を備えると共に、入出力インターフェイス回路(図示せず)を主たる構成要素として構成されてなるものである。
【0028】
この電子制御ユニット50には、エアマスセンサ22、湿度センサ31、吸気圧センサ32、インタークーラ下流側温度センサ33、第1の排気温度センサ34、第1のラムダセンサ36、第2の排気温度センサ35、第2のラムダセンサ37、排気用差圧センサ38、低圧用差圧センサ39の各検出信号と共に、図示されないセンサ等により検出された車両の動作制御に必要な各種の信号、例えば、大気圧、外気温度、エンジン回転数、アクセル開度等が入力されるようになっている。
【0029】
上述のように電子制御ユニット50に入力された各種の検出信号は、エンジン1の動作制御や、後述する本発明の実施の形態における湿度センサの診断等に供されるようになっている。
【0030】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る電子制御ユニット50の構成例について、図2を参照しつつ説明する。図2は、電子制御ユニット50のうち、本実施形態に係る部分の構成を示すブロック図である。
【0031】
電子制御ユニット50は、診断条件取得部502と、診断可否判定部504と、受信部506と、出力値保存部508と、診断部510とを備える。
【0032】
診断条件取得部502は、環境条件として、外気温度及び大気圧を取得し、診断可否判定部504へ通知する。外気温度及び大気圧は、図示されないセンサにより計測された値であり、本発明とは別個に実行されているエンジン制御処理に用いられているものを流用することができる。あるいは、本発明を実施するに当たり、新規にセンサを備えてもよい。
【0033】
診断可否判定部504は、環境条件、及び、断線やショートの有無により、湿度センサ31の診断可否を判定する。具体的には、診断可否判定部504は、外気温度が所定の基準値を超え、かつ、大気圧が所定の基準値を超える時に、環境条件が満たされたと判定する。また、診断可否判定部504は、電子制御ユニット50が湿度センサ31の信号を受信している時に、断線やショートが起きていないと判定する。すなわち、診断可否判定部504は、上述した環境条件が満たされ、かつ、断線やショートが起きていない時に、湿度センサ31の診断を許可する。
【0034】
診断可否判定部504が、湿度センサ31の診断を許可する条件として、上記環境条件を利用する理由は以下である。本発明における湿度センサ31の診断は、所定時間における、湿度センサ31の出力値の最大値と最小値との差を利用する(詳細は後述)。外気温度が低い環境下、又は、気圧の低い高地においては、外気の飽和水蒸気圧が低下するため、吸気の相対湿度の変化量が小さく、診断の精度が低下する。そのため、診断可否判定部504は、湿度センサ31の診断を許可するための条件として、上記環境条件を利用する。
【0035】
尚、診断可否判定部504が、湿度センサ31の診断を許可するための、外気温度及び大気圧に対する所定の基準値は、試験やシミュレーション等により予め設定しておく。
【0036】
受信部506は、診断可否判定部504において診断が許可された場合に、湿度センサ31の出力値を取得する。
【0037】
出力値保存部508は、受信部506において取得された湿度センサ31の出力値を保存する。受信部506における湿度センサ31の出力値の取得は、取得開始から所定時間が経過するまで続けられる。出力値保存部508は、所定時間にわたり湿度センサ31の出力値を保存し、また、保存した出力値の中から最大値と最小値の抽出を行う。
【0038】
尚、受信部506が湿度センサ31の出力値の取得を繰り返す上記所定時間は、試験やシミュレーション等により予め設定しておく。
【0039】
診断部510は、上記所定時間経過後、出力値保存部508に保存されている湿度センサ31の出力値の最大値と最小値との差分を算出する。また、診断部510は、当該差分と所定のしきい値とを比較することにより、湿度センサ31の診断を行う。診断において、当該差分と比較される所定のしきい値は、試験やシミュレーション等により、予め設定しておく。
【0040】
次に、図3に示されたサブルーチンフローチャートを参照しつつ、電子制御ユニット50により実行される、湿度センサ31の診断の手順について説明する。図3に示されるサブルーチンフローチャートは、エンジン1の運転中、所定の周期で繰り返し実行される。
【0041】
湿度センサ31の診断処理が開始されると、まずステップS102において、診断条件取得部502が、診断条件の取得を行う。具体的には、上述した様に、外気温度及び大気圧を取得する。
【0042】
続くステップS104においては、診断可否判定部504が、ステップS102において取得された環境条件が、湿度センサ31の診断のための条件を満たすか否かを判定する。具体的には、診断可否判定部504は、外気温度が所定の基準値を超え、かつ、大気圧が所定の基準値を超えている時に、湿度センサ31の診断のための条件が満たされたと判定する。ステップS102において取得された診断条件が湿度センサ31の診断のための条件を満たすと判定された場合(YESの場合)、ステップS106の処理へ進む。一方、ステップS102において取得された環境条件が湿度センサ31の診断のための条件を満たさないと判定された場合、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0043】
ステップS106においては、診断可否判定部504が、電子制御ユニット50が湿度センサ31の出力信号を受信しているか否かを判定する。電子制御ユニット50が湿度センサ31の信号を受信していると判定された場合(YESの場合)、ステップS108の処理へ進む。一方、電子制御ユニット50が湿度センサ31の信号を受信していないと判定された場合(NOの場合)、ステップS120の処理へ進む。
【0044】
ステップS108においては、受信部506が湿度センサ31の出力値を取得し、ステップS110の処理へ進む。ステップS110においては、出力値保存部508が、ステップS108において受信部506が取得した湿度センサ31の出力値を保存し、ステップS112の処理へ進む。
【0045】
ステップS112においては、出力値保存部508が、ステップS108による湿度センサ31の出力値の取得が始まってから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過したと判定された場合(YESの場合)、ステップS114の処理へ進む。一方、所定時間が経過していないと判定された場合(NOの場合)、ステップS108からステップS112の処理が繰り返される。
【0046】
また、ステップS110においては、ステップS108及びステップS110の処理が所定時間繰り返される間、保存しているデータの中から、最大値と最小値の抽出も行う。
【0047】
ステップS114においては、診断部510が、ステップS110において抽出された、湿度センサ31の出力値の最大値と最小値との差分を算出し、ステップS116の処理へ進む。
【0048】
ステップS116においては、診断部510が、ステップS114で算出された差分と、予め定められた所定のしきい値とを比較する。ステップS114で算出された差分が所定のしきい値よりも大きい場合(YESの場合)、ステップS118の処理へ進み、湿度センサ31は正常であると判定される。
【0049】
これは、以下の観点によるものである。すなわち、吸気の湿度は、外気の温度や気圧、あるいは、エンジン制御装置100の運転条件により変化する。よって、所定時間にわたり取得した湿度センサ31の出力値の、最大値と最小値との差分が所定のしきい値よりも大きい場合、湿度センサ31が正常であると判定される。
【0050】
一方、ステップS116において、ステップS114で算出された差分が、予め定められた所定のしきい値以下であると判定された場合(NOの場合)、あるいは、ステップS106において、電子制御ユニット50が湿度センサ31の信号を受信していないと判定された場合(NOの場合)、ステップS120へ進み、湿度センサ31が異常であると判定され、ドライバへの警告等、所定の処理が行われる。
【0051】
また、ステップS120においては、直ちに湿度センサ31が異常であると判定するのではなく、フローが所定回数以上、ステップS120へ到達した場合に、湿度センサ31の異常と判定する様にしてもよい。
【0052】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態においては、湿度センサ31の診断にあたり、エンジン1の前回の停止から今回の始動までの時間(以下、「エンジン停止時間」と称する)を考慮する。
【0053】
本発明の第2の実施の形態について、図4及び図5を参照しつつ説明する。尚、第1の実施の形態と重複する部分については、適宜説明を省略する。
【0054】
図4は、電子制御ユニット50のうち、本発明の第2の実施の形態に係る部分の構成を示すブロック図である。第2の実施の形態においては、第1の実施の形態に対し、タイマ部500と、計測時間算出部505と、を更に備える。
【0055】
タイマ部500は、エンジン1の前回の停止から今回の始動までの時間である、エンジン停止時間を、エンジン1の停止中に計測する。また、計測時間算出部505は、出力値保存部508において保存される湿度センサ31の出力値の保存時間を、タイマ部500により計測されたエンジン停止時間に基づき算出する。
【0056】
次に、図5に示されるサブルーチンフローチャートを参照しつつ、電子制御ユニット50により実行される、本発明の第2の実施の形態について説明する。尚、第2の実施の形態においては、湿度センサ31の診断は、エンジン1の始動時に1回だけ実行される。
【0057】
湿度センサ31の診断処理が開始されると、まずステップS102において、診断条件取得部502が、診断条件の取得を行う。第1の実施の形態においては、診断条件取得部502は、環境条件としての、外気温度および大気圧を取得したが、第2の実施の形態においては、これに加え、エンジン1の前回の停止から今回の始動までの時間である、エンジン停止時間を取得する。エンジン停止時間は、タイマ部500において計測された値である。
【0058】
ステップS104及びステップS106においては、診断可否判定部504により、第1の実施の形態と同一の処理が行われる。すなわち、ステップS104においては、環境条件が、湿度センサの診断のための条件を満たすか否かが判定される。また、ステップS106においては、電子制御ユニット50が湿度センサ31の信号を受信しているか否かが判定される。ステップS104及びステップS106において、共にYESと判定された場合、ステップS107の処理へ進む。
【0059】
ステップS107においては、計測時間算出部505が、ステップS108における湿度センサ31の出力値の取得と、ステップS110における出力値の保存とを繰り返す時間を、計測時間として算出する。当該計測時間は、ステップS112における所定時間として使用される。計測時間は、タイマ部500により計測されたエンジン停止時間に基づき、予め定められた所定の演算式やマップ検索等により算出される。
【0060】
ステップS107において算出される計測時間は、エンジン停止時間が長い程短く設定され、エンジン停止時間がある時間を超えると一定値とされる。これは以下の理由によるものである。
【0061】
エンジン停止後、エンジンルーム内の温度は徐々に低下する。エンジンルーム内の温度が低下した状態でエンジン1を始動すると、エンジンルーム内の温度は比較的急に上昇する。このため、湿度センサ31により計測される吸気の湿度も比較的短時間で変化する。よって、長いエンジン停止時間を経た後にエンジン1を始動した場合、ステップS108およびステップS110の処理を繰り返す時間を短くすることができる。
【0062】
一方、エンジン1が停止した後、比較的短い時間の経過後にエンジン1を再始動した場合、再始動時のエンジンルーム内の温度低下が小さいため、再始動後のエンジンルーム内の温度変化が小さい。この場合、湿度センサ31の出力値の変化も小さいため、長いエンジン停止時間を経た後の始動に比べ、ステップS108およびステップS110の処理を繰り返す時間を長くする。
【0063】
エンジン停止後、ある程度の時間が経過すると、エンジンルーム内の温度はほぼ外気温度に等しくなるため、ステップS107において算出される計測時間は一定値とされる。ステップS107において算出される計測時間が一定値となるエンジン停止時間は、車両やエンジンの仕様等にもよるが、概ね6時間から8時間とすることができる。
【0064】
ステップS112において、所定時間が経過したと判定された場合(YESの場合)、ステップS114の処理へ進む。ステップS114からステップS120の処理は、上述した第1の実施の形態と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0065】
尚、本実施形態においては、湿度センサ31の診断は、エンジン1の始動時に1回だけ実行される旨説明した。これは、エンジン1の始動時は、エンジンルーム内の温度が低いため、湿度センサ31の出力値の変化が表れやすく、精度の高い診断が可能であるからである。
【0066】
しかしながら、本実施形態においても、ステップS120において、直ちに湿度センサ31が異常であると判定するのではなく、フローが所定回数以上、ステップS120へ到達した場合に、湿度センサ31の異常と判定することもできる。すなわち、ステップS120へ到達した場合に限り、本フローを繰り返し、所定回数以上ステップS120へ到達した場合、湿度センサ31の異常と判定し、ドライバへの警告等、所定の処理が行われる様にすることもできる。
【0067】
また、本実施形態では、ステップS107において、計測時間算出部505は、エンジン停止時間に基づき計測時間を算出する旨説明した。しかしながら、ステップS107において、計測時間算出部505は、エンジン停止時間と、前回のエンジン1の運転時間とに基づき、予め定められた所定の演算式やマップ検索等により計測時間を算出してもよい。
【0068】
前回のエンジン1の運転時間が短かった場合、エンジン1の運転時間が長かった場合に比べ、エンジン1の停止時におけるエンジンルーム内の温度が低い。この様な場合、エンジン停止時間が短くても、エンジン停止時間が長い場合の条件に近づくため、計測時間を短くすることが可能となる。
【0069】
以上、説明した様に、本発明によれば、湿度センサ31の診断を、精度良く行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
1:エンジン、2:吸気管、5:高圧排気再循環通路、6:低圧排気再循環通路、31:湿度センサ、50:電子制御ユニット、500:タイマ部、502:診断条件取得部、504:診断可否判定部、505:計測時間算出部、506:受信部、508:出力値保存部、510:診断部
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図5