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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】制御装置および変速システム
(51)【国際特許分類】
   B62M 9/123 20100101AFI20231026BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20231026BHJP
   F16H 61/18 20060101ALI20231026BHJP
   F16H 61/68 20060101ALI20231026BHJP
   B62M 6/15 20100101ALI20231026BHJP
【FI】
B62M9/123
F16H61/02
F16H61/18
F16H61/68
B62M6/15
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019236230
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021011251
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2019126978
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 充彦
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007644(JP,A)
【文献】特開2017-007610(JP,A)
【文献】特開2015-110402(JP,A)
【文献】特開平10-194185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0009771(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0055145(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 9/123
F16H 61/02
F16H 61/18
F16H 61/68
B62M 6/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1参照値に基づいて規定される第1変速条件に応じて、人力駆動車の変速比が変化するように変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、第2参照値に基づいて規定される第2変速条件が成立する場合、前記第1変速条件に関わらず前記人力駆動車の変速比の変化を抑制するように前記変速装置を制御し、
前記第2参照値は、前記人力駆動車の減速傾向を表す参照値を含む、制御装置。
【請求項2】
第1参照値に基づいて規定される第1変速条件に応じて、人力駆動車の変速比が変化するように変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、第2参照値に基づいて規定される第2変速条件が成立する場合、前記第1変速条件に関わらず前記人力駆動車の変速比の変化を抑制するように前記変速装置を制御する変速抑制条件に対応する変速抑制要求を設定し
前記第2参照値は、前記人力駆動車の加速傾向を表す参照値および前記人力駆動車の減速傾向を表す参照値の少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記変速抑制要求が設定されると、現在の変速比を最終の目標の変速比に指定する、制御装置。
【請求項3】
第1参照値に基づいて規定される第1変速条件に応じて、人力駆動車の変速比が変化するように変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、第2参照値に基づいて規定される第2変速条件が成立する場合、前記第1変速条件に関わらず前記人力駆動車の変速比の変化を抑制するように前記変速装置を制御する変速抑制条件に対応する変速抑制要求を設定し
前記第2参照値は、前記人力駆動車の加速傾向を表す参照値および前記人力駆動車の減速傾向を表す参照値の少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記変速抑制要求が設定されると、最終の目標の変速比と現在の変速比との差の絶対値が、暫定の目標の変速比と現在の変速比との差よりも小さくなるように、最終の目標の変速比を指定する、制御装置。
【請求項4】
前記第1変速条件は、第1閾値および前記第1閾値よりも小さい第2閾値を含み、
前記制御部は、前記第1参照値が前記第1閾値以上である場合に、前記人力駆動車の変速比が大きくなる第2変速を実行し、前記第1参照値が前記第2閾値以下である場合に、前記人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を実行する、請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
第1参照値に基づいて規定される第1変速条件に応じて、人力駆動車の変速比が変化するように変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、第2参照値に基づいて規定される第2変速条件が成立する場合、前記第1変速条件に関わらず前記人力駆動車の変速比の変化を抑制するように前記変速装置を制御する変速抑制条件に対応する変速抑制要求を設定し
前記第1変速条件は、第1閾値および前記第1閾値よりも小さい第2閾値を含み、
前記制御部は、前記第1参照値が前記第1閾値以上である場合に、前記人力駆動車の変速比が大きくなる第2変速を実行し、前記第1参照値が前記第2閾値以下である場合に、前記人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を実行し、
前記第2参照値は、前記人力駆動車の加速傾向を表す参照値および前記人力駆動車の減速傾向を表す参照値の少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記変速抑制要求が設定されると、前記第1閾値および前記第2閾値によって規定される所定の幅を広げる、制御装置。
【請求項6】
前記第2参照値は、前記人力駆動車の加速度を含み、
前記制御部は、前記人力駆動車の加速度が第1所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立したと判定し、前記人力駆動車の変速比の変化を抑制する、請求項2、3、および、5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記人力駆動車の加速度が前記第1所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立したと判定し、前記人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を抑制する、請求項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記第2参照値は、前記人力駆動車の加速度を含み、
前記制御部は、所定間隔ごとに演算した複数の前記人力駆動車の加速度に基づいて前記第2変速条件が成立したか否かを判定する、請求項2、3、および、5から7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、連続する複数の前記人力駆動車の加速度のうち少なくとも1つが第1所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立したと判定し、前記人力駆動車の変速比の変化を抑制する、請求項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記第2参照値は、前記人力駆動車の減速度を含み、
前記制御部は、前記人力駆動車の減速度が第2所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立したと判定し、前記人力駆動車の変速比の変化を抑制する、請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記人力駆動車の減速度が前記第2所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立したと判定し、前記人力駆動車の変速比が大きくなる第2変速を抑制する、請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記第2参照値は、前記第1参照値とは異なる、請求項1から11のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記第1参照値は、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、パワー、および、前記人力駆動車の車速の少なくとも1つを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項14】
前記第1参照値は、前記ケイデンスを含み、
前記制御部は、前記ケイデンスが第1閾値よりも大きい第3閾値以上である場合に、前記人力駆動車の変速比が大きくなる第2変速を抑制する、請求項13に記載の制御装置。
【請求項15】
前記第1参照値は、前記車速を含み、
前記制御部は、前記車速から前記人力駆動車の推定ケイデンスを演算する、請求項13または14に記載の制御装置。
【請求項16】
前記第1参照値は、ケイデンスおよび前記人力駆動車のクランクに作用するトルクをさらに含み、
前記制御部は、前記トルクが第3所定値以下の場合に、前記推定ケイデンスに基づいて第1変速条件が成立しているか否かを判定する、請求項15に記載の制御装置。
【請求項17】
前記制御部は、所定期間ごとに前記第1変速条件が成立したか否かを判定し、前記第1変速条件が所定回数成立した場合に、前記人力駆動車の変速比を変更する、請求項1から16のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項18】
前記所定期間は、前記人力駆動車のクランクの回転により規定される、請求項17に記載の制御装置。
【請求項19】
前記所定回数は、3回である、請求項17または18に記載の制御装置。
【請求項20】
前記第2参照値は、前記人力駆動車の減速度を含み、
前記制御部は、所定間隔ごとに演算した複数の前記人力駆動車の減速度に基づいて前記第2変速条件が成立したか否かを判定する、請求項1から19のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項21】
前記制御部は、連続する複数の前記人力駆動車の減速度のうち少なくとも1つが第2所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立したと判定し、前記人力駆動車の変速比の変化を抑制する、請求項20に記載の制御装置。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記変速装置と、を備える変速システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および変速システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の人力駆動車の走行状態の検出結果に基づいて、変速装置を制御する変速制御装置が知られている。特許文献1に記載の変速制御装置は、複数の走行状態の検出結果のすべてがしきい値を超えた場合に、人力駆動車の変速比を変更する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-96537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、人力駆動車の快適な走行に貢献できる制御装置および変速システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う制御装置は、第1参照値に基づいて規定される第1変速条件に応じて、人力駆動車の変速比が変化するように変速装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、第2参照値に基づいて規定される第2変速条件が成立する場合、前記第1変速条件に関わらず前記人力駆動車の変速比の変化を抑制するように前記変速装置を制御し、前記第2参照値は、前記人力駆動車の加速傾向を表す参照値および前記人力駆動車の減速傾向を表す参照値の少なくとも1つを含む。
上記第1側面の制御装置によれば、加速傾向を表す参照値および減速傾向を表す参照値の少なくとも1つに基づいて、変速装置の制御が実行される。このため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記第2参照値は、前記人力駆動車の加速度を含み、前記制御部は、前記人力駆動車の加速度が第1所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立したと判定し、前記人力駆動車の変速比の変化を抑制する。
上記第2側面の制御装置によれば、人力駆動車が第1所定値以上の加速度で加速している場合、変速比の変化が抑制される。このため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0007】
前記第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の加速度が前記第1所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立したと判定し、前記人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を抑制する。
上記第3側面の制御装置によれば、人力駆動車が第1所定値以上の加速度で加速している場合、変速比が小さくなることが抑制される。このため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0008】
前記第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面の制御装置において、前記第2参照値は、前記人力駆動車の減速度を含み、前記制御部は、前記人力駆動車の減速度が第2所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立したと判定し、前記人力駆動車の変速比の変化を抑制する。
上記第4側面の制御装置によれば、人力駆動車が第2所定値以上の減速度で減速している場合、変速比が変化することが抑制される。このため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0009】
前記第4側面に従う第5側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の減速度が前記第2所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立したと判定し、前記人力駆動車の変速比が大きくなる第2変速を抑制する。
上記第5側面の制御装置によれば、人力駆動車が第2所定値以上の減速度で減速している場合、変速比が大きくなることが抑制される。このため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0010】
前記第1から第5側面のいずれか1つに従う第6側面の制御装置において、前記第1変速条件は、第1閾値および前記第1閾値よりも小さい第2閾値を含み、前記制御部は、前記第1参照値が第1閾値以上である場合に、前記人力駆動車の変速比が大きくなる第2変速を実行し、前記第1参照値が第2閾値以下である場合に、前記人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を実行する。
上記第6側面の制御装置によれば、第1参照値と第1閾値との関係および第1参照値と第2閾値との関係に基づいて、変速比が変更される、このため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0011】
前記第1から第6側面のいずれか1つに従う第7側面の制御装置において、前記第2参照値は、前記第1参照値とは異なる。
上記第7側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比を適切に変化させることができる。
【0012】
前記第1から第7側面のいずれか1つに従う第8側面の制御装置において、前記第1参照値は、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、パワー、および、前記人力駆動車の車速の少なくとも1つを含む。
上記第8側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比を適切に変化させることができる。
【0013】
前記第8側面に従う第9側面の制御装置において、前記第1参照値は、前記ケイデンスを含み、前記制御部は、前記ケイデンスが第1閾値よりも大きい第3閾値以上である場合に、前記人力駆動車の変速比が大きくなる第2変速を抑制する。
上記第9側面の制御装置によれば、前記ケイデンスが偶発的に大きくなった場合に第2変速が行われることが抑制される。このため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0014】
前記第8または第9側面に従う第10側面の制御装置において、前記第1参照値は、前記車速を含み、前記制御部は、前記車速から前記人力駆動車の推定ケイデンスを演算する。
上記第10側面の制御装置によれば、ケイデンスを計測するセンサが人力駆動車に設けられない場合でも、ケイデンスを参照して変速装置を制御できる。
【0015】
前記第10側面に従う第11側面の制御装置において、前記第1参照値は、ケイデンスおよび前記人力駆動車のクランクに作用するトルクをさらに含み、前記制御部は、前記トルクが第3所定値以下の場合に、前記推定ケイデンスに基づいて第1変速条件が成立しているか否かを判定する。
上記第11側面の制御装置によれば、実ケイデンスの代わりに推定ケイデンスを第1参照値として選択することで、第1変速条件が成立したか否かをより好適に判定できる。
【0016】
前記第1から第11側面のいずれか1つに従う第12側面の制御装置において、前記制御部は、所定期間ごとに前記第1変速条件が成立したか否かを判定し、前記第1変速条件が所定回数成立した場合に、前記人力駆動車の変速比を変更する。
上記第12側面の制御装置によれば、第1変速条件が所定回数成立したことにより人力駆動車の変速比を変更する。このため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0017】
前記第12側面に従う第13側面の制御装置において、前記所定期間は、前記人力駆動車のクランクの回転により規定される。
上記第13側面の制御装置によれば、所定回数成立したことを適切に判断できる。
【0018】
前記第12または第13側面に従う第14側面の制御装置において、前記所定回数は、3回である。
上記第14側面の制御装置によれば、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0019】
前記第1から第14側面のいずれか1つに従う第15側面の制御装置において、前記第2参照値は、前記人力駆動車の加速度を含み、前記制御部は、所定間隔ごとに演算した複数の前記人力駆動車の加速度に基づいて第2変速条件が成立したか否かを判定する。
上記第15側面の制御装置によれば、第2変速条件が成立したか否かがより精度良く判定される。このため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0020】
前記第15側面に従う第16側面の制御装置において、前記制御部は、連続する複数の前記人力駆動車の加速度のうち少なくとも1つが第1所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立したと判定し、前記人力駆動車の変速比の変化を抑制する。
上記第16側面の制御装置によれば、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0021】
前記第1から第16側面のいずれか1つに従う第17側面の制御装置において、前記第2参照値は、前記人力駆動車の減速度を含み、前記制御部は、所定間隔ごとに演算した複数の前記人力駆動車の減速度に基づいて第2変速条件が成立したか否かを判定する。
上記第17側面の制御装置によれば、第2変速条件が成立したか否かがより精度良く判定される。このため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0022】
前記第17側面に従う第18側面の制御装置において、前記制御部は、連続する複数の前記人力駆動車の減速度のうち少なくとも1つが第2所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立したと判定し、前記人力駆動車の変速比の変化を抑制する。
上記第18側面の制御装置によれば、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0023】
本発明の第19側面に従う変速システムは、前記制御装置と、前記変速装置と、を備える。
上記第19側面の変速システムによれば、第2参照値に基づいて規定される第2変速条件が成立する場合に変速比の変化抑制が抑制される。このため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の制御装置および変速システムによれば、人力駆動車の快適な走行に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態の変速システムを含む人力駆動車の側面図。
図2】第1実施形態の制御装置と各種の要素との電気的な接続関係を示すブロック図。
図3】第1実施形態の制御装置が実行する変速装置の制御に用いられる第1変速条件の一例を示すマップ。
図4】第1実施形態の制御装置が実行する第1変速制御の一例を示すフローチャート。
図5】第1実施形態の制御装置が実行する第1変速抑制制御の一例を示すフローチャート。
図6】第2実施形態の制御装置が実行する第2変速抑制制御の一例を示すフローチャート。
図7】第3実施形態の制御装置が実行する第2変速制御の一例を示すフローチャート。
図8】第3実施形態の制御装置が実行する第2変速制御の一例を示すフローチャート。
図9】第4実施形態の制御装置が実行する第3変速抑制制御の一例を示すフローチャート。
図10】第5実施形態の制御装置が実行する第4変速抑制制御の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
図1を参照して、変速システム10を含む人力駆動車Aについて説明する。
ここで、人力駆動車は、走行のための原動力に関して、少なくとも部分的に人力を用いる車両を意味し、電動で人力を補助する車両を含む。人力以外の原動力のみを用いる車両は、人力駆動車には含まれない。特に、内燃機関のみを原動力に用いる車両は、人力駆動車には含まれない。通常、人力駆動車には、小型軽車両が想定され、公道での運転に免許を要しない車両が想定される。図示される人力駆動車Aは、電気エネルギを用いて人力駆動力を補助する電動補助ユニットEを有する。具体的には、図示される人力駆動車Aは、トレッキングバイクである。人力駆動車Aは、フレームA1、フロントフォークA2、車輪W、ハンドルH、および、ドライブトレインBをさらに含む。車輪Wは、前輪WFおよび後輪WRを含む。
【0027】
ドライブトレインBは、例えばチェーンドライブタイプである。ドライブトレインBは、クランクC、フロントスプロケットD1、リアスプロケットD2、および、チェーンD3を含む。クランクCは、フレームA1に回転可能に支持されるクランク軸C1、および、クランク軸C1の両端部のそれぞれに設けられる一対のクランクアームC2を含む。各クランクアームC2の先端には、ペダルPDが回転可能に取り付けられる。ドライブトレインBは、任意のタイプから選択でき、ベルトドライブタイプ、または、シャフトドライブタイプであってもよい。
【0028】
フロントスプロケットD1は、クランク軸C1と一体に回転するようにクランクCに設けられる。リアスプロケットD2は、後輪WRのハブHRに設けられる。チェーンD3は、フロントスプロケットD1およびリアスプロケットD2に巻き掛けられる。人力駆動車Aに搭乗する搭乗者によってペダルPDに加えられる人力駆動力は、フロントスプロケットD1、チェーンD3、および、リアスプロケットD2を介して後輪WRに伝達される。
【0029】
電動補助ユニットEは、人力駆動車Aの推進をアシストするように動作する。電動補助ユニットEは、例えばペダルPDに加えられる人力駆動力に応じて動作する。電動補助ユニットEは、モータE1を含む。電動補助ユニットEは、人力駆動車Aに搭載されるバッテリBTから供給される電力によって動作する。
【0030】
変速システム10は、制御装置12と、変速装置20とを備える。制御装置12は、例えば電動補助ユニットEのハウジングE2内に収容される。制御装置12は、バッテリBTから供給される電力によって動作する。
【0031】
変速装置20は、外装変速機を含む。一例では、変速装置20は、フロントディレーラ22およびリアディレーラ24の少なくとも1つを含む。フロントディレーラ22は、フロントスプロケットD1付近に設けられる。フロントディレーラ22の駆動に伴って、チェーンD3が巻き掛けられるフロントスプロケットD1が変更され、人力駆動車Aの変速比が変更される。人力駆動車Aの変速比は、フロントスプロケットD1の歯数とリアスプロケットD2の歯数との関係に基づいて規定される。一例では、人力駆動車Aの変速比は、フロントスプロケットD1の回転速度に対するリアスプロケットD2の回転速度の割合で定義される。すなわち、人力駆動車Aの変速比は、リアスプロケットD2の歯数に対するフロントスプロケットD1の歯数の割合で定義される。リアディレーラ24は、フレームA1のリアエンドA3に設けられる。リアディレーラ24の駆動に伴って、チェーンD3が巻き掛けられるリアスプロケットD2が変更され、人力駆動車Aの変速比が変更される。フロントスプロケットD1およびリアスプロケットD2の構成は、任意に選択される。フロントスプロケットD1の枚数は、例えば1枚である。一例では、フロントスプロケットD1は、歯数が34TのフロントスプロケットD1を含む。この場合、フロントディレーラ22の構成を省略してもよい。リアスプロケットD2の枚数は、例えば11枚である。一例では、リアスプロケットD2は、歯数が46T、37T、32T、28T、24T、21T、19T、17T、15T、13T、および、11TのリアスプロケットD2を含む。別の例では、フロントスプロケットD1の枚数は、2枚である。フロントスプロケットD1は、歯数が34Tおよび24TのフロントスプロケットD1を含む。リアスプロケットD2の枚数は、例えば12枚である。リアスプロケットD2は、歯数が51T、45T、39T、33T、28T、24T、21T、18T、16T、14T、12T、および、10TのリアスプロケットD2を含む。変速装置20は、外装変速機に代えて内装変速機を含んでいてもよい。この場合、内装変速機は、例えば後輪WRのハブHRに設けられる。変速装置20は、外装変速機に代えて無段変速機を含んでいてもよい。この場合、無段変速機は、例えば後輪WRのハブHRに設けられる。変速装置20は、変速操作装置SLからの操作信号に応じて、人力駆動車Aの変速比を変更する。
【0032】
図2を参照して、変速システム10の具体的な構成について説明する。
制御装置12は、人力駆動車Aに搭載されるコンポーネントを制御する制御部14を備える。人力駆動車Aのコンポーネントには、少なくとも変速装置20が含まれる。一例では、制御部14は、人力駆動車Aの走行情報に応じて、人力駆動車Aの変速比が変化するように変速装置20を制御する。一例では、制御部14は、人力駆動車Aの走行情報を含む所定の変速条件に応じて、変速装置20を制御する。一例では、所定の変速条件は、第1変速条件および第2変速条件の少なくとも1つを含む。一例では、第1変速条件は、人力駆動車Aの変速比を変化させるか否かを決める。第2変速条件は、人力駆動車Aの変速比の変化を抑制するか否かを決める。変速比の変化の抑制とは、第1変速条件により決められる変速比の変化の抑制、および、第1変速条件により決められる変速段の変化の抑制の少なくとも1つを含む。一例では、第1変速条件は、第1参照値に基づいて規定される。第2変速条件は、第2参照値に基づいて規定される。第2参照値は、第1参照値とは異なる。
【0033】
制御装置12は、第1参照値に基づいて規定される第1変速条件に応じて、人力駆動車Aの変速比が変化するように変速装置20を制御する制御部14を備える。制御部14は、CPU(Central Processing Unit)およびMPU(Micro Processing Unit)の少なくとも1つを含む。制御部14は、変速操作装置SLの操作に応じて変速装置20を制御することもできる。制御装置12は、各種の情報を記憶する記憶部16をさらに備える。記憶部16は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。記憶部16は、例えば制御のための各種プログラム、および、予め設定される情報等を記憶する。
【0034】
人力駆動車Aは、外部からの入力を受け付ける操作装置ODを含む。操作装置ODは、変速操作装置SLを少なくとも含む。変速装置20は、例えば変速操作装置SLの操作に応じて機械的または電気的に駆動されるように構成される。変速装置20が電気的に駆動される場合、変速装置20は、バッテリBTから供給される電力、または、変速装置20に搭載される専用の電源から供給される電力によって動作する。変速操作装置SLは、変速段を変更できるように構成される。変速段は、変速比に対応するように設定される。変速操作装置SLが操作されると、人力駆動車Aの変速段および変速比が変化するように変速装置20が動作する。一例では、変速操作装置SLが操作されると、人力駆動車Aの変速比が小さくなるように変速装置20が動作する。別の例では、変速操作装置SLが操作されると、人力駆動車Aの変速比が大きくなるように変速装置20が動作する。変速操作装置SLは、制御部14と有線または無線通信可能に構成される。以下、変速装置20が人力駆動車Aの変速比を小さくする変速を第1変速と称し、変速装置20が人力駆動車Aの変速比を大きくする変速を第2変速と称する場合がある。第1変速は、変速段が小さくなるシフトダウン変速と同義である。第2変速は、変速段が大きくなるシフトアップ変速と同義である。
【0035】
人力駆動車Aは、各種の情報を検出するための検出装置DDをさらに含む。一例では、検出装置DDは、人力駆動車Aの走行情報を検出する。人力駆動車Aの走行情報は、第1参照値および第2参照値の少なくとも1つを含む。第1参照値は、ケイデンス、人力駆動車AのクランクCに作用するトルク、パワー、および、人力駆動車Aの車速の少なくとも1つを含む。ケイデンスは、クランクCの回転数と同義である。パワーは、ケイデンスとトルクの積である。第2参照値は、人力駆動車Aの加速傾向を表す参照値および人力駆動車Aの減速傾向を表す参照値の少なくとも1つを含む。一例では、人力駆動車Aの加速傾向を表す参照値は、人力駆動車Aの加速度を含む。一例では、人力駆動車Aの減速傾向を表す参照値は、人力駆動車Aの減速度を含む。人力駆動車Aの加速度、および、人力駆動車Aの減速度は、単位時間あたりの車速の変化量、および、車速の2乗の関数である運動エネルギの変化量の少なくとも1つを含む。検出装置DDは、クランクCの回転数を検出し、ケイデンスを検出するためのセンサ、人力駆動車AのクランクCに作用するトルクを検出するためのセンサ、パワーを検出するためのセンサ、人力駆動車Aの車速を検出するためのセンサ、人力駆動車Aの加速度、および、人力駆動車Aの減速度を検出するためのセンサの少なくとも1つを含む。検出装置DDは、人力駆動車Aの現在の変速比を検出するように構成されていてもよい。検出装置DDは、人力駆動車Aが走行する環境に関する走行環境情報および人力駆動車Aの搭乗者に関する搭乗者情報の少なくとも1つを検出可能に構成されていてもよい。一例では、検出装置DDは、走行環境情報および搭乗者情報の少なくとも1つが検出可能なセンサを含む。別の例では、検出装置DDは、走行環境情報および搭乗者情報の少なくとも1つを外部から入手可能な通信部を含む。制御部14は、検出装置DDが検出した各種の情報を有線または無線通信で取得する。走行環境情報は、路面の状態に関する路面情報、空気抵抗に関する空気抵抗情報、天候に関する天候情報、および、気温に関する気温情報の少なくとも1つを含む。路面の状態に関する路面情報は、路面の傾斜角度に関する情報を含む。搭乗者情報は、搭乗者の心拍数、筋電位、発汗量、および、体温の少なくとも1つを含む。
【0036】
制御部14は、第1変速条件が成立する場合、人力駆動車Aの変速比に関する目標の変速比を変更する。制御部14は、人力駆動車Aの変速比が変更後の目標の変速比に一致するように変速装置20を制御する変速制御を実行する。目標の変速比が変更される場合、変更前の目標の変速比に対応する変速段と、変更後の目標の変速比に対応する変速段との差は、1段または2段以上のいずれかである。第1変速条件は、第1閾値TH1および第1閾値TH1よりも小さい第2閾値TH2を含む。制御部14は、第1参照値が第1閾値TH1以上である場合に、人力駆動車Aの変速比が大きくなる第2変速を実行する。制御部14は、第1参照値が第2閾値TH2以下である場合に、人力駆動車Aの変速比が小さくなる第1変速を実行する。
【0037】
図3は、第1参照値と第1閾値TH1との関係および第1参照値と第2閾値TH2との関係を示す。制御部14は、人力駆動車Aに搭載される検出装置DDから第1参照値を取得する。第1参照値の一例は、ケイデンスである。制御部14は、第1参照値と第1閾値TH1との関係に応じて、第2変速を実行するように変速装置20を制御する。制御部14は、第1参照値と第2閾値TH2との関係に応じて、第1変速を実行するように変速装置20を制御する。第1閾値TH1および第2閾値TH2は、第1参照値に関する所定の範囲を規定する。第1閾値TH1は、所定の範囲の上限を規定する。第2閾値TH2は、所定の範囲の下限を規定する。所定の範囲は、第2閾値TH2超かつ第1閾値TH1未満の範囲である。一例では、第1参照値が所定の範囲に含まれる場合、第1変速および第2変速が実行されない。制御部14は、第1参照値が第1閾値TH1以上になると第2変速を実行するように変速装置20を制御する。制御部14は、第1参照値が第2閾値TH2以下になると第1変速を実行するように変速装置20を制御する。制御部14は、第1参照値が第1閾値TH1以上、かつ、現在の人力駆動車Aの変速比が最大変速比の場合、人力駆動車Aの変速比を維持するように変速装置20を制御する。人力駆動車Aの最大変速比は、フロントスプロケットD1とリアスプロケットD2との関係に基づく最大の変速比である。制御部14は、第1参照値が第2閾値TH2以下、かつ、現在の人力駆動車Aの変速比が最小変速比の場合、人力駆動車Aの変速比を維持するように変速装置20を制御する。人力駆動車Aの最小変速比は、フロントスプロケットD1とリアスプロケットD2との関係に基づく最小の変速比である。第1閾値TH1、および、第2閾値TH2は、任意に設定される。第1例では、第1閾値TH1は、80rpmである。第2閾値TH2は、60rpmである。所定の範囲は、20rpmである。第2例では、第1閾値TH1は、85rpmである。第2閾値TH2は、55rpmである。所定の範囲は、30rpmである。
【0038】
制御部14は、第2参照値に基づいて規定される第2変速条件が成立する場合、第1変速条件に関わらず人力駆動車Aの変速比の変化を抑制するように変速装置20を制御する。第1変速条件に関わらず人力駆動車Aの変速比の変化を抑制するとは、第1変速条件が成立しているか否かを参照しないで変速比の変化を抑制すること、および、第1変速条件が成立していても変速比の変化を抑制することの少なくとも1つを含む。制御部14は、人力駆動車Aの変速比の変化が抑制されるように変速装置20を制御する変速抑制制御を実行する。制御部14は、人力駆動車Aの走行情報に応じて、変速抑制制御を実行する。変速抑制制御では、人力駆動車Aの変速比が、所定の時点の変速比から変化しないように、所定の時点の変速比が目標の変速に近づかないように、または、所定の時点の変速比が目標の変速比に一致しないように、変速装置20を制御する。一例では、所定の時点は、第2変速条件が成立していると判定された時点である。
【0039】
変速制御では、制御部14は、人力駆動車Aに関する第1情報に応じて、人力駆動車Aの変速比が変化するように変速装置20を制御する。変速抑制制御では、人力駆動車Aに関する第2情報に応じて、人力駆動車Aの変速比の変化が抑制されるように変速装置20を制御する。第2情報は、第1情報とは異なる。
【0040】
第1情報は、例えば変速操作装置SLの操作に関する操作情報、および、人力駆動車Aの走行に関する第1走行情報の少なくとも1つを含む。第1走行情報は、例えば第1参照値および搭乗者情報の少なくとも1つを含む。第1参照値は、例えばケイデンスを含む。第2情報は、例えば人力駆動車Aの走行に関する第2走行情報を含む。第2走行情報は、例えば第2参照値および走行環境情報の少なくとも1つを含む。第2参照値は、例えば人力駆動車Aの加速度および人力駆動車Aの減速度の少なくとも1つを含む。第1参照値には、例えば第2参照値と比較して、搭乗者の負荷が相対的に強く反映されるという特徴が含まれる場合がある。第2参照値には、例えば第1参照値と比較して、搭乗者の意図しない人力駆動車Aの挙動が相対的に強く反映されるという特徴が含まれる場合がある。
【0041】
制御部14は、変速制御では、操作情報および第1走行情報の少なくとも1つに応じて変速装置20を制御する。操作情報は、変速段を指定する指定情報を含む。指定情報は変速段を変化させる段数(以下「変化段数」という)および変速段を変化させる方向(以下「変化方向」という)に関する情報を含む。変化段数は、1段または2段以上のいずれかである。変化方向はアップまたはダウンである。変化段数および変化方向は、目標の変速段を決める。
【0042】
操作情報に基づいた変速制御について説明する。制御部14は、変速操作装置SLから操作情報を取得する。制御部14は、操作情報によって決められる目標の変速段と実際の変速段とが異なる場合、実際の変速段が目標の変速段に一致するように変速装置20を制御する。制御部14は、目標の変速段と実際の変速段とが一致する場合、変速段が維持されるように変速装置20を制御する。
【0043】
操作情報に代えてまたは加えて第1情報に基づいた変速制御について説明する。制御部14は、検出装置DDから第1走行情報を取得する。制御部14は、第1走行情報に含まれる第1参照値に基づいて第1変速条件が成立するか否かを判定する。第1変速条件が成立した場合、制御部14は、変速実行条件に基づいて変速装置20を制御する。変速実行条件は、複数の変速実行条件を含む。一例では、複数の変速実行条件は、第1から第4変速実行条件を含む。第1変速実行条件は、変化段数が1段かつ変化方向がアップとなるよう目標の変速段を決める。第2変速実行条件は、変化段数が1段かつ変化方向がダウンとなるよう目標の変速段を決める。第3変速実行条件は、変化段数が2段以上のいずれか、かつ、変化方向がアップとなるよう目標の変速段を決める。第4変速実行条件は、変化段数が2段以上のいずれか、かつ、変化方向がダウンとなるよう目標の変速段を決める。一例では、第1変速実行条件は、第1参照値が第1閾値以上である場合に成立する。第2変速実行条件は、第1参照値が第2閾値以下である場合に成立する。第3変速実行条件は、第1参照値が第1閾値以上であり、かつ、変速操作装置SLから操作情報を取得した場合に成立する。第4変速実行条件は、第1参照値が第2閾値以下であり、かつ、変速操作装置SLから操作情報を取得した場合に成立する。制御部14は、第2変速実行条件および第4変速実行条件により第1変速を実行する。制御部14は、第1変速実行条件および第3変速実行条件により第2変速を実行する。
【0044】
制御部14は、各変速実行条件のいずれか1つが成立する場合、その変速実行条件によって決められる目標の変速段を暫定の目標の変速段に設定する。制御部14は、変速制御によって設定する暫定の目標の変速段と、変速抑制制御によって設定する変速抑制要求との関係に応じて最終の目標の変速段を設定する。制御部14は、変速抑制要求が設定されない場合、暫定の目標の変速段を最終の目標の変速段に設定する。制御部14は、最終の目標の変速段と実際の変速段とが異なる場合、実際の変速段が最終の目標の変速段に一致するように変速装置20を制御する。制御部14は、最終の目標の変速段と実際の変速段とが一致する場合、実際の変速段が維持されるように変速装置20を制御する。
【0045】
走行情報に基づいた変速抑制制御について説明する。制御部14は、走行情報として第2参照値を参照する。第2参照値は第1参照値と異なる。一例では、第2参照値は、人力駆動車Aの減速度を含む。制御部14は、人力駆動車Aの減速度が第2所定値以上の場合、第2変速条件が成立したと判定し、人力駆動車Aの変速比の変化を抑制する。具体的には、制御部14は、人力駆動車Aの減速度が第2所定値以上の場合、第2変速条件が成立したと判定し、人力駆動車Aの変速比が大きくなる第2変速を抑制する。別の例では、第2参照値は、人力駆動車Aの加速度を含む。制御部14は、人力駆動車Aの加速度が第1所定値以上の場合、第2変速条件が成立したと判定し、人力駆動車Aの変速比の変化を抑制する。具体的には、制御部14は、人力駆動車Aの加速度が第1所定値以上の場合、第2変速条件が成立したと判定し、人力駆動車Aの変速比が小さくなる第1変速を抑制する。第1所定値および第2所定値は、任意の値が設定される。一例では、第1所定値は、0m/sより大きい値である。第2所定値は、0m/sより大きい値である。
【0046】
制御部14は、第2変速条件が成立した場合、抑制実行条件に基づいて変速装置20を制御する。抑制実行条件は、複数の抑制実行条件を含む。一例では、複数の抑制実行条件は、第1から第6抑制実行条件を含む。第1抑制実行条件は、変速段の変更を禁止する変速抑制要求を設定する。第2抑制実行条件は、現在の変速段を最終の目標の変速段に指定する変速抑制要求を設定する。第3抑制実行条件は、最終の目標の変速段と現在の変速段との差の絶対値が、暫定の目標の変速段と現在の変速段との差よりも小さくなるように、最終の目標の変速段を指定する変速抑制要求を設定する。第4抑制実行条件は、変速制御における第1変速条件の成否を判定する処理をスキップさせる変速抑制要求を設定する。第5抑制実行条件は、変速制御における第1変速条件の成否に関する判定結果を無効にする変速抑制要求を設定する。第6抑制実行条件は、第1閾値および第2閾値によって規定される所定の幅を広げる変速抑制要求を設定する。所定の幅は、第1閾値を増加させる処理、および、第2閾値を減少させる処理の少なくとも1つによって広げられる。
【0047】
制御部14は、第2変速条件が成立する場合、第1から第6抑制実行条件の少なくとも1つに対応する変速抑制要求を設定する。制御部14は、変速制御において第1変速条件が成立している場合、第1から第6抑制実行条件の1つまたは複数に対応する変速抑制要求を設定する。制御部14は、変速制御において第1変速条件が成立していない場合、第1から第6抑制実行条件の1つまたは複数に対応する変速抑制要求を設定する。
【0048】
制御部14は、第1変速条件が成立、かつ、変速抑制要求を設定する場合、変速抑制要求に応じて最終の目標の変速段を設定する。暫定の目標の変速段は最終の目標の変速段には設定されず、クリアされる。
【0049】
制御部14は、第1変速条件が不成立、かつ、変速抑制要求を設定する場合、解除条件が成立するまでの間、変速抑制要求に応じて最終の目標の変速段を設定する。解除条件は、時間、第1走行情報、および、第2走行情報の1つまたは複数に応じて決められる。第1例では、解除条件は、第2変速条件が成立してから所定時間が経過したことである。第2例では、解除条件は、第2変速条件が成立してからクランクCの回転角度が所定回転角度を超えたことである。第3例では、解除条件は、第2変速条件が成立してから人力駆動車Aの走行距離が所定走行距離を超えたことである。第4例では、解除条件は、第2参照値に含まれる加速度の減少量が一定量を超えたことである。第5例では、解除条件は第2参照値に含まれる減速度の減少量が一定量を超えたことである。制御部14は、第2変速条件が成立し、変速抑制要求を設定し、解除条件が不成立の状態において、第1変速条件が成立した場合、変速段を変更しない。制御部14は、解除条件が成立した場合、変速抑制要求を消去する。
【0050】
図4を参照して、制御装置12が実行する変速制御の一例について説明する。以下、第1実施形態における変速制御を第1変速制御と称する場合がある。第1変速制御は、制御部14が操作情報および第1走行情報である第1参照値に基づいて、第1変速および第2変速を実行する制御である。
【0051】
制御部14は、例えば以下の処理に従って第1変速制御を実行する。制御部14は、ステップS11において、第1参照値を取得する。具体的には、制御部14は、検出装置DDから第1参照値を取得する。
【0052】
制御部14は、ステップS12において、第1参照値が第1閾値TH1以上であるか否かを判定する。第1参照値が第1閾値TH1以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS13の処理を実行する。第1参照値が第1閾値TH1以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS15の処理を実行する。
【0053】
制御部14は、ステップS13において、現在の人力駆動車Aの変速比が最大変速比であるか否かを判定する。現在の人力駆動車Aの変速比が最大変速比であると判定した場合、制御部14は、ステップS11の処理を実行する。現在の人力駆動車Aの変速比が最大変速比ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS14の処理を実行する。
【0054】
制御部14は、ステップS14において、変速実行条件に基づいて人力駆動車Aの変速比が大きくなる第2変速を実行する。ステップS14の終了後、制御部14は、制御を終了する。
制御部14は、ステップS15において、第1参照値が第2閾値TH2以下か否かを判定する。第1参照値が第2閾値TH2以下であると判定した場合、制御部14は、ステップS16の処理を実行する。第1参照値が第2閾値TH2以下ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS11の処理を実行する。
【0055】
制御部14は、ステップS16において、現在の人力駆動車Aの変速比が最小変速比であるか否かを判定する。現在の人力駆動車Aの変速比が最小変速比であると判定した場合、制御部14は、ステップS11の処理を実行する。現在の人力駆動車Aの変速比が最小変速比ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS17の処理を実行する。
【0056】
制御部14は、ステップS17において、変速実行条件に基づいて人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を実行する。ステップS17の終了後、制御部14は、制御を終了する。制御部14は、例えば人力駆動車Aの走行中において、ステップS11からステップS17の処理を含む第1変速制御を繰り返し実行する。
【0057】
図5を参照して、制御部14が実行する第2変速条件に基づいた変速抑制制御の一例について説明する。以下、第1実施形態における変速抑制制御を第1変速抑制制御と称する場合がある。第1変速抑制制御は、制御部14が第2参照値である人力駆動車Aの減速度に基づいて、第2変速の抑制および第2変速の抑制の解除を行う制御である。制御部14は、第1変速制御と並行して、第1変速抑制制御を実行する。
【0058】
制御部14は、例えば以下の処理に基づいて第1変速抑制制御を実行する。
制御部14は、ステップS21において、人力駆動車Aの減速度を取得する。制御部14は、ステップS22において、減速度は、第2所定値以上であるか否かを判定する。減速度が第2所定値以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS23の処理を実行する。減速度が第2所定値以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS21の処理を実行する。
【0059】
制御部14は、ステップS23において、第2変速条件が成立したと判定し、人力駆動車Aの変速比を大きくする第2変速を抑制する。具体的には、制御部14は、抑制実行条件を少なくとも1つ設定する。制御部14は、ステップS24において、解除条件が成立したか否かを判定する。解除条件が成立したと判定した場合、制御部14は、ステップS25の処理を実行する。解除条件が成立していないと判定した場合、制御部14は、ステップS24の処理を再度実行する。
【0060】
制御部14は、ステップS25において、抑制実行条件をすべて消去する。制御部14は、第1変速条件が成立したか否かに応じて、第2変速を実行する。制御部14は、例えば人力駆動車Aの走行中において、ステップS21からS25の処理を含む第1変速抑制制御を繰り返し実行する。制御部14は、第1変速抑制制御により、抑制実行条件が設定されている場合、第1変速制御において第2変速を実行しない。
【0061】
<第2実施形態>
図6を参照して、第2実施形態の変速システム10について説明する。第2実施形態の変速システム10では、制御部14が第2参照値として人力駆動車Aの加速度と第1所定値に基づいて、変速抑制制御を実行する。なお、第2実施形態における変速抑制制御を第2変速抑制制御と称する場合がある。第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0062】
制御装置12は、第1変速抑制制御に代えてまたは加えて第2変速抑制制御を実行する。第2変速抑制制御は、制御部14が第2参照値に基づいて、第1変速の抑制および第1変速の抑制の解除を行う制御である。
【0063】
制御部14は、ステップS31において、人力駆動車Aの加速度を取得する。制御部14は、ステップS32において、加速度は、第1所定値以上であるか否かを判定する。加速度が第1所定値以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS33の処理を実行する。加速度が第1所定値以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS31の処理を実行する。
【0064】
制御部14は、ステップS33において、第2変速条件が成立したと判定し、人力駆動車Aの変速比を小さくする第1変速を抑制する。具体的には、制御部14は、抑制実行条件を少なくとも1つ設定する。制御部14は、ステップS34において、解除条件が成立したか否かを判定する。解除条件が成立したと判定した場合、制御部14は、ステップS35の処理を実行する。解除条件が成立していないと判定した場合、制御部14は、ステップS34の処理を再度実行する。
【0065】
制御部14は、ステップS35において、抑制実行条件をすべて消去する。制御部14は、第1変速条件が成立したか否かに応じて、第1変速を実行する。制御部14は、例えば人力駆動車Aの走行中において、ステップS31からS35の処理を含む第2変速抑制制御を繰り返し実行する。制御部14は、第2変速抑制制御により、抑制実行条件が設定されている場合、第1変速制御において第1変速を実行しない。
【0066】
<第3実施形態>
図7および図8を参照して、第3実施形態の変速システム10について説明する。第3実施形態の変速システム10は、第1参照値として、トルクおよび車速をさらに参照し、第1閾値よりも大きい第3閾値を参照する変速制御を実行する点が、第1実施形態および第2実施形態の変速システム10と相違する。なお、第3実施形態における変速制御を第2変速制御と称する場合がある。第1実施形態および第2実施形態の変速システム10と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0067】
制御装置12は、第1変速制御に代えてまたは加えて第2変速制御を実行する。第2変速制御は、制御部14が第1参照値に基づいて、第1変速および第2変速の少なくとも1つを実行する制御である。
【0068】
第2変速制御において、第1参照値は、ケイデンスを含む。制御部14は、ケイデンスが第1閾値TH1よりも大きい第3閾値以上である場合に、人力駆動車Aの変速比が大きくなる第2変速を抑制する。第3閾値は、搭乗者が通常出力するケイデンスの値よりも大きい値が設定される。第3閾値は、第1閾値TH1よりも所定値分大きい値が設定される。一例では、所定値は30rpmより大きい値である。一例では、所定値は120rpmである。第3閾値は、200rpmである。
【0069】
第2変速制御において、第1参照値は、車速を含む。制御部14は、車速から人力駆動車Aの推定ケイデンスを演算する。制御部14は、現在の人力駆動車Aの車速と現在の人力駆動車Aの変速比との関係から、推定ケイデンスを演算する。なお、以下では、クランクCの回転数を直接的に検出したケイデンスを実ケイデンスと称する場合がある。第1参照値は、ケイデンスおよび人力駆動車AのクランクCに作用するトルクをさらに含む。制御部14は、トルクが第3所定値以下の場合に、推定ケイデンスに基づいて第1変速条件が成立しているか否かを判定する。第3所定値は、搭乗者が人力駆動車AのペダルPDを積極的に踏む意図がないと推定される値が設定される。一例では、第3所定値は、15Nmより小さい値である。トルクが第3所定値よりも大きい場合、制御部14は、実ケイデンスに基づいて第1変速条件が成立しているか否かを判定する。
【0070】
第2変速制御において、制御部14は、所定期間ごとに第1変速条件が成立したか否かを判定し、第1変速条件が所定回数成立した場合に、人力駆動車Aの変速比を変更する。一例では、第1変速を実行するための第1変速条件が成立したか否かを所定期間ごとに判定し、第1変速条件が所定回数成立した場合に、第1変速を実行する。別の例では、第2変速を実行するための第1変速条件が成立したか否かを所定時間ごとに判定し、第1変速条件が所定回数成立した場合に、第2変速を実行する。所定期間は、任意の期間が設定される。一例では、所定期間は、人力駆動車AのクランクCの回転により規定される。一例では、所定期間は、人力駆動車AのクランクCの回転角度により規定される。一例では、所定期間は、0度超かつ360度未満である。一例では、所定期間は、180度である。具体的には、所定期間は人力駆動車AのクランクCが所定角度分回転する期間として規定される。所定角度の一例は、180度である。所定回数は、2回以上の任意の回数が設定される。一例では、所定回数は、3回である。
【0071】
制御部14は、例えば以下の処理に従って第2変速制御を実行する。
制御部14は、ステップS41において、第1参照値を取得する。第1参照値は、実ケイデンス、トルク、および、人力駆動車Aの車速を含む。制御部14は、ステップS42において、トルクおよび人力駆動車Aの車速から、推定ケイデンスを演算する。
【0072】
制御部14は、ステップS43において、トルクは、第3所定値以下か否かを判定する。トルクが第3所定値以下であると判定した場合、制御部14は、ステップS44の処理を実行する。トルクが第3所定値以下ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS45の処理を実行する。
【0073】
制御部14は、ステップS44において、第1変速条件が成立したか否かを判定するための第1参照値として、推定ケイデンスを選択する。制御部14は、ステップS45において、第1変速条件が成立したか否かを判定するための第1参照値として、実ケイデンスを選択する。なお、ステップS46以降の処理において、実ケイデンスと推定ケイデンスとを区別せず、単にケイデンスと記載する。
【0074】
制御部14は、ステップS46において、ケイデンスは、第1閾値TH1以上であるか否かを判定する。第1閾値TH1以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS47の処理を実行する。第1閾値TH1以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS52の処理を実行する。
【0075】
制御部14は、ステップS47において、ケイデンスは、第3閾値以上であるか否かを判定する。第3閾値以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS51の処理を実行する。第3閾値以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS48の処理を実行する。
【0076】
制御部14は、ステップS48において、現在の人力駆動車Aの変速比が最大変速比であるか否かを判定する。現在の人力駆動車Aの変速比が最大変速比であると判定した場合、制御部14は、ステップS51の処理を実行する。現在の人力駆動車Aの変速比が最大変速比ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS49の処理を実行する。
【0077】
制御部14は、ステップS49において、第2変速を実行するための第1変速条件が成立したことを所定回数判断したか否かを判定する。所定回数判断したと判定した場合、制御部14は、ステップS50の処理を実行する。所定回数判断していないと判定した場合、制御部14は、ステップS51の処理を実行する。
【0078】
制御部14は、ステップS50において、変速実行条件に基づいて第2変速を実行する。ステップS50の終了後、制御部14は、制御を終了する。
制御部14は、ステップS51において、前回第1所定条件が成立しているか否かを判断してから、所定期間が経過したか否かを判定する。具体的には、前回第1参照値を取得してから、所定期間が経過したかを判定する。所定期間が経過したと判定した場合、制御部14は、ステップS41の処理を実行する。所定期間が経過していないと判定した場合、制御部14は、ステップS51の処理を再度実行する。
【0079】
制御部14は、ステップS52において、ケイデンスは、第2閾値以下か否かを判定する。ケイデンスが第2閾値TH2以下であると判定した場合、制御部14は、ステップS53の処理を実行する。ケイデンスが第2閾値TH2以下ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS56の処理を実行する。
【0080】
制御部14は、ステップS53において、現在の人力駆動車Aの変速比が最小変速比であるか否かを判定する。現在の人力駆動車Aの変速比が最小変速比であると判定した場合、制御部14は、ステップS56の処理を実行する。現在の人力駆動車Aの変速比が最小変速比ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS54の処理を実行する。
【0081】
制御部14は、ステップS54において、第1変速を実行するための第1変速条件が成立したことを所定回数判断したか否かを判定する。所定回数判断したと判定した場合、制御部14は、ステップS55の処理を実行する。所定回数判断していないと判定した場合、制御部14は、ステップS56の処理を実行する。
制御部14は、ステップS55において、変速実行条件に基づいて第1変速を実行する。ステップS55の終了後、制御部14は、制御を終了する。
【0082】
制御部14は、ステップS56において、前回第1所定条件が成立しているか否かを判定してから、所定期間が経過したか否かを判定する。所定期間が経過したと判定した場合、制御部14は、ステップS41の処理を実行する。所定期間が経過していないと判定した場合、制御部14は、ステップS56の処理を再度実行する。制御部14は、例えば人力駆動車Aの走行中において、ステップS41からS56の処理を含む第2変速制御を繰り返し実行する。
【0083】
<第4実施形態>
図9を参照して、第4実施形態の変速システム10について説明する。第4実施形態の変速システム10では、制御部14が減速傾向を表す複数の第2参照値に基づいて、変速抑制制御を実行する。なお、第4実施形態における変速抑制制御を第3変速抑制制御と称する場合がある。第1実施形態から第3実施形態の変速システム10と共通する構成については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0084】
制御部14は、第1変速抑制制御に代えて第3変速抑制制御を実行する。第3変速抑制制御は、制御部14が複数の第2参照値に基づいて、第2変速の抑制および第2変速の抑制の解除を行う制御である。
【0085】
第2参照値は、人力駆動車Aの減速度を含む。制御部14は、所定間隔ごとに演算した複数の人力駆動車Aの減速度に基づいて第2変速条件が成立したか否かを判定する。第1例では、制御部14は、連続する複数の人力駆動車Aの減速度のうち少なくとも1つが第2所定値以上の場合、第2変速条件が成立したと判定し、人力駆動車Aの変速比の変化を抑制する。具体的には、制御部14は、連続する複数の人力駆動車Aの減速度のうち、少なくとも1つの値が0m/sよりも大きい第2所定値以上である場合、第2変速条件が成立したと判定し、人力駆動車Aの変速比の変化を抑制する。人力駆動車Aの変速比の変化の抑制は、人力駆動車の変速比が大きくなる第2変速を含む。制御部14は、連続する複数の人力駆動車Aの減速度の両方が0m/s以下である場合、第2変速条件が成立していないと判定し、人力駆動車Aの変速比の変化を抑制しない。制御部14は、複数の異なる第2所定値と連続する複数の人力駆動車Aの減速度とに基づいて第2変速条件が成立したか否かを判定してもよい。複数の異なる第2所定値は、0m/s、および、0m/sより大きい値を含む。第1例では、制御部14は、連続する複数の人力駆動車Aの減速度のうち、少なくとも1つの値が0m/s以上、または、0m/sよりも大きい第2所定値以上である場合に、第2変速条件が成立したと判定し人力駆動車Aの変速比の変化を抑制する。第2例では、制御部14は、複数の人力駆動車Aの減速度の値の過半数が第2所定値以上の場合、第2変速条件が成立したと判定し、人力駆動車Aの変速比の変化を抑制する。本実施形態では、第1例により、第2変速条件が成立したか否かを判定する。
【0086】
所定間隔は、所定時間間隔および所定距離間隔の少なくとも1つを含む。所定時間間隔の一例は、減速傾向を示す複数の第2参照値をそれぞれ取得する時間間隔である。一例では所定時間間隔は、50ミリ秒である。所定距離間隔の一例は、減速傾向を示す複数の第2参照値をそれぞれ取得する間の人力駆動車Aの走行距離である。一例では所定距離間隔は、2メートルである。
【0087】
制御部14は、例えば以下の処理に従って第3変速抑制制御を実行する。
制御部14は、ステップS61において、人力駆動車Aの減速度を取得する。制御部14は、ステップS62において所定間隔が経過したか否かを判定する。所定間隔が経過したと判定した場合、制御部14は、ステップS63の処理を実行する。所定間隔が経過していないと判定した場合、制御部14は、ステップS62の処理を再度実行する。
【0088】
制御部14は、ステップS63において、人力駆動車Aの減速度を再度取得する。制御部14は、ステップS64において、第2変速条件が成立したか否かを判定する。制御部14は、ステップS61およびステップS63で取得した連続する人力駆動車Aの減速度のうち少なくとも1つが第2所定値以上であるか否かを判定する。第2変速条件が成立したと判定した場合、制御部14は、ステップS65の処理を実行する。第2変速条件が成立していないと判定した場合、制御部14は、第3変速抑制制御を終了する。
【0089】
制御部14は、ステップS65において、抑制実行条件を少なくとも1つ設定し、抑制実行条件に基づいて人力駆動車Aの変速比を大きくする第2変速を抑制する。制御部14は、ステップS66において、解除条件が成立したか否かを判定する。解除条件が成立したと判定した場合、制御部14は、ステップS67の制御を実行する。解除条件が成立していないと判定した場合、制御部14は、ステップS66の処理を再度実行する。
【0090】
制御部14は、ステップS67において、抑制実行条件をすべて消去する。制御部14は、第1変速条件が成立したか否かに応じて、第2変速を実行する。制御部14は、例えば人力駆動車Aの走行中において、ステップS61からステップS67の処理を含む第3変速抑制制御を繰り返し実行する。制御部14は、第3変速抑制制御により抑制実行条件が設定されている場合、第1変速制御において第2変速を実行しない。
【0091】
<第5実施形態>
図10を参照して、第5実施形態の変速システム10について説明する。第5実施形態の変速システム10では、制御部14が加速傾向を表す複数の第2参照値に基づいて、変速抑制制御を実行する。なお、第5実施形態における変速抑制制御を第4変速抑制制御と称する場合がある。第1実施形態から第4実施形態の変速システム10と共通する構成については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0092】
制御部14は、第2変速抑制制御に代えて第4変速抑制制御を実行する。第4変速抑制制御は、制御部14が複数の第2参照値に基づいて、第1変速の抑制および第1変速の抑制の解除を行う制御である。
【0093】
第2参照値は、人力駆動車Aの加速度を含む。制御部14は、所定間隔ごとに演算した複数の人力駆動車Aの加速度に基づいて第2変速条件が成立したか否かを判定する。第1例では、制御部14は、連続する複数の人力駆動車Aの加速度の少なくとも1つが第1所定値以上の場合、第2変速条件が成立したと判定し、人力駆動車Aの変速比の変化を抑制する。具体的には、制御部14は、連続する複数の人力駆動車Aの加速度のうち、少なくとも1つの値が0m/sよりも大きい第1所定値以上である場合、第2変速条件が成立したと判定し、人力駆動車Aの変速比の変化を抑制する。人力駆動車Aの変速比の変化の抑制は、人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を含む。制御部14は、連続する複数の人力駆動車Aの加速度の両方が0m/s以下である場合、第2変速条件が成立していないと判定し、人力駆動車Aの変速比の変化を抑制しない。制御部14は、複数の異なる第1所定値と連続する複数の人力駆動車Aの加速度とに基づいて第2変速条件が成立したか否かを判定してもよい。複数の異なる第1所定値は、0m/s、および、0m/sより大きい値を含む。第1例では、制御部14は、連続する複数の人力駆動車Aの加速度のうち、少なくとも1つの値が0m/s以上、または、0m/sよりも大きい第1所定値以上である場合に、第2変速条件が成立したと判定し、人力駆動車Aの変速比の変化を抑制する。第2例では、制御部14は、複数の人力駆動車の加速度の値の過半数が第1所定値以上の場合、第2変速条件が成立したと判定し、人力駆動車Aの変速比の変化を抑制する。本実施形態では、第1例により、第2変速条件が成立したか否かを判定する。
【0094】
制御部14は、例えば以下の処理に従って第4変速抑制制御を実行する。
制御部14は、ステップS71において、人力駆動車Aの加速度を取得する。制御部14は、ステップS72において所定間隔が経過したか否かを判定する。所定間隔が経過したと判定した場合、制御部14は、ステップS73の処理を実行する。所定期間が経過していないと判定した場合、制御部14は、ステップS72の処理を再度実行する。
【0095】
制御部14は、ステップS73において、人力駆動車Aの加速度を再度取得する。制御部14は、ステップS74において、第2変速条件が成立したか否かを判定する。制御部14は、ステップS71およびステップS73で取得した連続する人力駆動車Aの加速度のうち少なくとも1つが第1所定値以上であるか否かを判定する。第2変速条件が成立したと判定した場合、制御部14は、ステップS75の処理を実行する。第2変速条件が成立していないと判定した場合、制御部14は、第4変速抑制制御を終了する。
【0096】
制御部14は、ステップS75において、抑制実行条件を少なくとも1つ設定し、抑制実行条件に基づいて人力駆動車Aの変速比を小さくする第1変速を抑制する。制御部14は、ステップS76において、解除条件が成立したか否かを判定する。解除条件が成立したと判定した場合、制御部14は、ステップS77の制御を実行する。解除条件が成立していないと判定した場合、制御部14は、ステップS76の処理を再度実行する。
【0097】
制御部14は、ステップS77において、抑制実行条件をすべて消去する。制御部14は、第1変速条件が成立したか否かに応じて、第1変速を実行する。制御部14は、例えば人力駆動車Aの走行中において、ステップS71からステップS77の処理を含む第4変速抑制制御を繰り返し実行する。制御部14は、第4変速抑制制御により抑制実行条件が設定されている場合、第1変速制御において第1変速を実行しない。
【0098】
<変形例>
各実施形態に関する説明は、本発明に従う制御装置および変速システムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う制御装置および変速システムは、例えば以下に示される各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0099】
・第1変速抑制制御から第4変速抑制制御の少なくとも1つを実行する第1制御モードと第1変速抑制制御から第4変速抑制制御を実行しない第2制御モードとを備え、制御部14が、第1制御モードおよび第2制御モードの少なくとも1つに基づいて、変速装置20を制御するように構成されてもよい。制御部14は、操作装置ODの操作情報により第1制御モードおよび第2制御モードの一方から他方に制御モードを変更可能に構成されていてもよい。
【0100】
・人力駆動車Aの加速傾向を表す参照値として人力駆動車Aの加速度を使用したが、ケイデンスの変化、トルクの変化および車速の変化の少なくとも1つから加速傾向を取得するように構成されてもよい。人力駆動車Aの減速傾向を表す参照値として人力駆動車Aの減速度を使用したが、ケイデンスの変化、トルクの変化および車速の変化の少なくとも1つから減速傾向を取得するように構成されてもよい。
・車速が所定車速以下の場合には、制御部14は、変速抑制制御を実行しないように構成されていてもよい。所定車速の一例は、10km/hである。
【0101】
・制御部14は、実ケイデンスと推定ケイデンスとで、値の大きいほうを第1参照値として採用する構成としてもよい。この場合、トルクを検出する工程を省略することができる。
【0102】
第4実施形態および第5実施形態における複数の第2参照値は、ケイデンスの変化、トルクの変化および車速の変化の少なくとも1つから取得されてもよい。複数の第2参照値は、人力駆動車Aの加速度、減速度、ケイデンスの変化、トルクの変化および車速の変化の少なくとも2つによる組み合わせであってもよい。
【0103】
・人力駆動車Aの種類は、任意に変更可能である。人力駆動車Aは、ロードバイク、マウンテンバイク、クロスバイク、シティサイクル、カーゴバイク、リカンベント、および、キックスケータの少なくとも1つに変更可能である。
【0104】
・本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、その選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、その選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0105】
10…変速システム、12…制御装置、14…制御部、20…変速装置、A…人力駆動車、C…クランク、TH1…第1閾値、TH2…第2閾値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10