(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】高精細度で電磁波を解析するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01J 9/02 20060101AFI20231026BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
G01J9/02
G02B5/18
(21)【出願番号】P 2019538717
(86)(22)【出願日】2017-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2017074674
(87)【国際公開番号】W WO2018060359
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-09
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519113815
【氏名又は名称】ファシック
【氏名又は名称原語表記】PHASICS
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ワトリエ,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】サントヤン,アナイス
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-142279(JP,A)
【文献】特開2000-105168(JP,A)
【文献】特開2013-214637(JP,A)
【文献】特表2012-511728(JP,A)
【文献】特表2005-522871(JP,A)
【文献】特開2016-163072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 9/00 - G01J 9/04
G01B 9/02 - G01B 9/029
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01M 11/00 - G01M 11/02
G02B 5/18
G03F 7/20
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を解析するための方法であって、
回折素子(2)による入射電磁波(9)の受信、および前記回折素子(2)によるこの入射電磁波(9)の回折電磁波(10)への変換と、ここで、前記回折電磁波は、少なくとも3つの回折次数を含んでおり、そして、前記入射電磁波(9)が、回折素子(2)上でコリメート又は擬似コリメートされており、
マトリックス配列イメージセンサ(4)による、前記回折素子と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の伝搬後に前記回折電磁波の前記少なくとも3つの回折次数の干渉によって形成される二次元干渉縞の受信と、ここで、前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)は、画素の2つの整列軸(13、14)に沿って整列した画素のマトリックス配列を有し、そして、前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)は、前記回折電磁波の前記受信に応答してインターフェログラムを生成するものとする
を含み、前記方法が、前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)による、複数回の取得の実行を含み、そして、取得の各々が、受信されたそれぞれの回折電磁波に応答してそれぞれのインターフェログラムを生成し、前記複数回の取得は、それぞれ、前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の複数の相対位置に対応し
前記方法が、前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の前記複数の相対位置にそれぞれ対応する前記複数回の取得から生成されるインターフェログラムに基づいた、前記入射電磁波(9)の位相画像を生成するために使用される前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)の各々の位置での位相勾配および/または位相の値の処理手段による計算を含み、前記位相画像は、前記
マトリックス配列イメージセンサ
(4)と同じ分解能を有し、そして前記処理手段は、アナログおよび/もしくはデジタル電子回路、ならびに/またはコンピュータの中央処理装置、ならびに/またはマイクロプロセッサを含むものである、方法。
【請求項2】
前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間に光学マスクおよび/または他の回折素子が存在しないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間に光学素子が存在しないことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記回折素子(2)が、前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)までの前記入射電磁波(9)の少なくとも4つの回折次数を含む回折光を生成することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)によって受信され、位相勾配および/または位相の値を計算する際に考慮に入れられる前記二次元干渉縞が、少なくとも9つの高調波を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記回折素子(2)のみによる前記入射電磁波(9)の回折次数の生成を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記回折素子が、少なくとも1つまたは2つの周期軸に沿って空間的周期性を有する周期パターンであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数の周期軸(11、12)と、
前記画素の1つもしくは複数の整列軸(13、14)の、かつ/または前記回折素子と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の前記相対位置の前記1つもしくは複数の変位軸の前記回折素子の平面上の投影と
の間に傾斜角(15)があることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記傾斜角(15)の最適値を計算するステップを含み、
位相勾配および/または位相の値を計算する前記ステップが、前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の前記複数の相対位置の数と同数の方程式を含む連立方程式を解くステップを含み、
前記傾斜角(15)の前記最適値が、前記連立方程式の未知数の計算の誤差を最小化するように構成されており、
前記方法が、前記計算された最適値に合わせたこの傾斜角(15)の調整を含む、
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記傾斜角(15)の最適値を計算する前記ステップが、前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の前記複数の相対位置の前記数と同数の方程式を含むこの連立方程式に対応する行列の行列式または条件数の最大化を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の各相対位置が、その他の相対位置の少なくとも1つと、
第1の変位軸(16)に沿った第1のピッチ(dx
C)に従って、かつ/または
第2の変位軸(17)に沿った第2のピッチ(dy
C)に従って、
異なることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のピッチの最適値および/または前記第2のピッチの最適値の計算を含み、
位相勾配および/または位相の値を計算する前記ステップが、前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の前記複数の相対位置の前記数と同数の方程式を含む連立方程式を解くステップを含み、
前記第1のピッチの前記最適値および/または前記第2のピッチの前記最適値が、前記連立方程式の未知数の計算の誤差を最小化するように構成されていることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のピッチの最適値および/または前記第2のピッチの最適値を計算するステップが、前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の前記複数の相対位置の前記数と同数の方程式を含むこの連立方程式に対応する行列の行列式または条件数の最大化を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
位相勾配および/または位相の値を計算するステップが、前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の前記複数の相対位置の前記数と同数の方程式を含む連立方程式を解くステップを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記連立方程式が擬似逆行列を使用して解かれることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記連立方程式の未知数の全部または一部が前記入射電磁波(9)の位相勾配の関数として表されることを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の相対位置が、前記入射電磁波(9)の固定位置についての前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の複数の相対位置に対応することを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の相対位置が、前記入射電磁波(9)の固定位置と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)の固定位置とについての前記回折素子(2)の複数の位置に対応することを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の相対位置が、前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)に対する回折素子(2)の2つの変位軸(16、17)に沿った前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の複数の相対位置に対応することを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記2つの変位軸(16、17)のうちの少なくとも1つが、前記回折素子(2)上の前記入射電磁波(9)の伝搬方向(29)と直交することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の相対位置が少なくとも3つの異なる位置に対応することを特徴とする、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の相対位置が少なくとも9つの異なる位置に対応することを特徴とする、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記回折素子が、前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)に対して可動な回折素子(2)であることを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記回折素子(2)が、ハルトマンマスク、シャック・ハルトマンマスク、回折格子、および/または強度格子と位相格子との組み合わせを含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記回折素子が、前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)に対して固定された光学部品によって支持されており、前記光学部品が、前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)に対して前記回折素子を変位させるように構成されていることを特徴とする、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記複数の相対位置が、互いに直交する2つの変位軸(16、17)に沿った前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の複数の相対位置に対応することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記2つの変位軸のうちの各々が、前記回折素子(2)上の前記入射電磁波(9)の伝搬方向(29)と直交することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の各相対位置が、その他の相対位置の少なくとも1つと、
すべての前記相対位置について一定である、第1の変位軸(16)に沿った第1のピッチ(dx
C)に従って、かつ/または
すべての前記相対位置について一定である、第2の変位軸(17)に沿った第2のピッチ(dy
C)に従って、
異なることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項29】
前記光学部品が、空間光変調器である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
電磁波を解析するための装置(1)であって、
入射電磁波(9)を受信し、この入射電磁波を回折電磁波(10)に変換するように構成された回折素子(2)と、ここで、前記回折電磁波は、少なくとも3つの回折次数を含んでおり、そして、前記装置は、前記入射電磁波(9)が、回折素子(2)上でコリメート又は擬似コリメートされるように配置されており、
画素の2つの整列軸(13、14)に沿って整列した画素のマトリックス配列を有するマトリックス配列イメージセンサ(4)と、ここで、前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)は、前記回折素子と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の伝搬後に前記回折電磁波の前記少なくとも3つの回折次数の干渉によって形成される二次元干渉縞を受信するように構成されており、そして、前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)は、前記回折電磁波の受信に応答してインターフェログラムを生成するものとする
を含み、前記装置(1)が、前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の相対位置を変更するように構成された電動式ステージ(3)を含み、
前記装置が、前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)による複数回の取得を実行するように構成されており、そして、取得の各々が、受信されたそれぞれの回折電磁波に応答してそれぞれのインターフェログラムを生成し、前記複数回の取得は、それぞれ、前記回折素子(2)と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の複数の相対位置に対応し、
前記装置が、前記回折素子と前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)との間の前記複数の相対位置にそれぞれ対応する前記複数回の取得から生成されるインターフェログラムに基づいて、前記入射電磁波の位相画像を生成するために使用される前記マトリックス配列
イメージセンサ(4)の各々の位置での位相勾配および/または位相の値を計算するように構成および/またはプログラムされた、処理手段(6)を含み、前記位相画像は、前記
マトリックス配列イメージセンサ
(4)と同じ分解能を有し、
そして、前記処理手段は、アナログおよび/もしくはデジタル電子回路、ならびに/またはコンピュータの中央処理装置、ならびに/またはマイクロプロセッサを含むものである、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細度で電磁波を解析する(典型的には複素場を測定する)ための方法に関する。本発明はまた、本発明による方法を実施する装置にも関する。
【0002】
本発明は、ユーザが波面解析装置の分解能および精細度に関しての性能を向上させることを可能にする。本発明の分野は、より詳細には、電磁波または「波面」の位相解析装置の分野である。
【背景技術】
【0003】
位相画像の分解能は重大な問題を提起する。
【0004】
シャック・ハルトマン技術に基づく、最新技術による波面解析装置が知られている。この技術では、マトリックス配列センサの前に配置されたマイクロレンズのマトリックス配列を使用する。このマイクロレンズのマトリックス配列は、入射波面を空間的にサンプリングすることを可能にする。各マイクロレンズはセンサ上に波面の異なるサンプルの各々を集束させる。センサ上のこれらの異なるスポットの位置を測定することにより、入射波面の位相勾配を計算することが可能になる。しかしながら、各スポットの重心を計算できるようにするためには、その広がりをセンサの複数の画素にわたって分散させる必要がある。よって各スポットは細分され、各細分部分は複数の画素、典型的には16×16画素に対応する。これらの細分部分の各々が単相測定点の取得を可能にする。よって位相画像の空間分解能はセンサの分解能と比べて低下する。
【0005】
空間分解能を向上させるために、2009年にOptics Express誌に発表された「Quadriwave lateral shearing interferometry for quantitative phase microscopy of living cells」という論文(17巻、15号)で使用されているように、最新技術による波面解析装置、例えば、センサに面した格子を含む、Phasicsが販売する距離が参照されるSID4が知られている。これらの解析装置は、四角波横シヤリング干渉法(quadriwave lateral shearing interferometry)として知られる技術によって入射波面を特徴付けることを可能にする。記録されたインターフェログラムが準正弦曲線であると仮定すると、少数の画素、好ましくは4×4でその変形をサンプリングすることができ、入射波面の位相勾配を計算することが可能になり、よって、シャック・ハルトマン技術と比べて測定の分解能が向上する。しかしながら、位相画像の空間分解能はセンサの分解能よりも低いままであることに留意されたい。
【0006】
2012年にOptics Express誌に発表された論文「Spatial carrier phase-shifting algorithm based on principal component analysis method」(20巻、15号)に記載されているような位相解析法も知られている。この方法によれば、単一のインターフェログラムが記録され、次いで、ある特定の数の近隣の画素分だけ空間的にオフセットされた他のインターフェログラムが、ある特定のデータ、特に位相データがこの数の画素にわたって一定であると仮定して、コンピュータによって生成される。この方法は位相画像を迅速に得ることを可能にする。しかしながら、得られる位相画像の分解能は、位相が複数の画素にわたって一定であると仮定した場合、依然として使用されるセンサの分解能ではない。よって位相測定の分解能はセンサの分解能と比べて低下する。最新技術によるこの方法の目的は、高分解能の位相画像を得ることではなく、若干低い分解能で位相画像を迅速に得ることである。
【0007】
本発明の目的は、より速く、かつ/もしくはよりコンパクトであり、かつ/または最新技術と比べて向上した精細度もしくは分解能を有する電磁波を解析するための方法および/または装置を提案することである。
【発明の開示】
【0008】
この目的は、電磁波を解析するための方法を用いて達成され、本方法は、
回折素子による入射電磁波の受信、および回折素子による、典型的には回折素子による透過または反射によるこの入射電磁波の回折電磁波への変換、
画素の1つまたは2つの整列軸に沿って整列した画素のマトリックス配列を有するマトリックス配列センサによる、回折電磁波の干渉縞の受信、
を含み、本方法は、マトリックス配列センサによる、回折素子とマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置に対応する回折電磁波の信号の複数回の取得を含み、
本方法は、回折素子とマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置に対応する複数回の取得からの、入射電磁波の異なる関心点についての強度および/または位相勾配および/または位相の値の計算を含む。
【0009】
好ましくは、回折素子とセンサとの間に光学マスクおよび/または他の回折素子は存在しない。好ましくは、回折素子とセンサとの間に光学素子は存在しない。
【0010】
回折素子は、センサまでの入射電磁波の回折次数、好ましくは以下を生成することができる。
特に1つの次元を有する場合(例えば、回折素子が周期軸に沿って空間的周期性を有する周期パターンである場合)、センサまでの入射電磁波の少なくとも2つの回折次数。
特に2つの次元を有する場合(例えば、回折素子が2つ以上の周期軸に沿って空間的周期性を有する周期パターンである場合)、センサまでの入射電磁波の少なくとも3つの回折次数(好ましくは、少なくとも4つの次数)。
【0011】
マトリックス配列センサによって受信され、強度および/または位相勾配および/または位相の値を計算する際に考慮に入れられる干渉縞は、少なくとも9つの高調波を、または少なくとも13の高調波さえも含むことができ、典型的には、
例えば、規則的なデカルト格子上の完全な正弦波格子の4つの回折次数の場合、9つの高調波、
例えば、光(または鏡面)軸に沿って次数0を有する上述した4つの次数に対応する5つの回折次数の場合、13の高調波
を含む。
【0012】
複数の相対位置の数は、マトリックス配列センサによって受信され、強度および/または位相勾配および/または位相の値を計算する際に処理手段によって考慮に入れられる干渉縞の高調波の数と等しくすることができる。
【0013】
本発明による方法は、回折素子のみによって入射電磁波の回折次数を生成することを含むことができる。
【0014】
回折素子は、好ましくは、少なくとも1つもしくは2つの周期軸に沿って空間的周期性(および/または好ましくはそれぞれ少なくとも1対もしくは2対の空間的回折方向の回折特性)を有する周期パターンである。
【0015】
好ましくは、
周期パターンの1つもしくは複数の周期軸と、
センサの画素の1つもしくは複数の整列軸の、かつ/または回折素子とマトリックス配列センサとの間の相対位置の1つもしくは複数の変位軸の周期パターンの平面上の投影との
間に傾斜角がある。
【0016】
周期パターンの周期軸と画素の整列軸との間の角度は、画素の整列軸と変位軸との間の別の角度とは異なる値を有し得る。
【0017】
本発明による方法は、傾斜角の最適値を計算することを含むことができる。傾斜角の最適値を計算することは、好ましくは、回折素子とマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置の数と同数の方程式を含む連立方程式に対応する行列の行列式または条件数の最大化を含むことができる。
【0018】
本発明による方法は、好ましくはその最適値に合わせたこの角度の調整も含むことができる。
【0019】
複数の位置は、好ましくは、入射電磁波の固定位置についての回折素子とマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置に対応する。複数の位置は、好ましくは、入射電磁波の固定位置とマトリックス配列センサの固定位置とについての回折素子の複数の位置に対応する。
【0020】
複数の位置は、1つの変位軸に沿った、または好ましくは相互に直交する2つ以上の変位軸に沿った、回折素子とマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置に対応することが好ましい。
【0021】
各変位軸または変位軸のうちの少なくとも1つは、回折素子上の入射電磁波の伝搬方向に対して直交し得る。
【0022】
回折素子とマトリックス配列センサとの間の各相対位置は、その他の相対位置のうちの少なくとも1つと、
好ましくはすべての相対位置について一定である、第1の変位軸に沿った第1のピッチに従って、かつ/または
好ましくはすべての相対位置について一定である、第2の変位軸に沿った第2のピッチに従って、
異なり得る。
【0023】
本発明による方法は、((1つまたは複数の)ピッチが一定でない場合を含む)第1のピッチの最適値および/または第2のピッチの最適値の計算を含むことができる。第1のピッチの最適値および/または第2のピッチの最適値を計算することは、好ましくは、回折素子とマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置の数と同数の方程式を含む連立方程式に対応する行列の行列式または条件数の最大化を含むことができる。
【0024】
複数の位置は少なくとも3つの異なる位置に対応し得る。複数の位置は、少なくとも9つの異なる位置に、または少なくとも13の異なる位置にさえも対応し得る。
【0025】
回折素子は、好ましくは、少なくとも2つの周期軸に沿って空間的周期性を有する。
【0026】
一変形形態では、回折素子は、マトリックス配列センサに対して可動な回折素子であり得る。回折素子は、ハルトマンマスク、シャック・ハルトマンマスク、回折格子、および/または強度格子と位相格子との組み合わせを含むことができる。
【0027】
別の変形形態では、回折素子を、マトリックス配列センサに対して固定された光学部品によって支持または表示させることができ、前記光学部品は、マトリックス配列センサに対して回折素子(またはこの回折素子のディスプレイ)を変位させるように構成されており、前記光学部品は、好ましくは、例えば液晶を有する空間光変調器である。
【0028】
強度および/または位相勾配および/または位相の値を計算することは、好ましくは、回折素子とマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置の数と同数の方程式を含む連立方程式を解くことを含むことができる。連立方程式は、(好ましくは実空間で、または直接)擬似逆行列を使用して解くことができる。
【0029】
方程式系の未知数の全部または一部(好ましくは1つを除く全部)は、好ましくは、入射電磁波の位相勾配の関数として表される。
【0030】
本発明のさらに別の態様によれば、電磁波を解析するための装置が提案され、本装置は、
入射電磁波を受信し、典型的には回折素子による透過または反射によって、この入射電磁波を回折電磁波に変換するように構成された回折素子と、
回折素子から発する回折電磁波の干渉縞を受信するように構成された、画素の1つまたは2つの整列軸に沿って整列した画素のマトリックス配列を有するマトリックス配列センサと、
を含み、本装置は、回折素子とマトリックス配列センサとの間の相対位置を変更するように構成された変位手段を含み、前記装置は、回折素子とマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置に対応する回折電磁波の信号の、マトリックス配列センサによる複数回の取得を実行するように構成されており、
本装置は、回折素子とマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置に対応する複数回の取得から、入射電磁波の異なる関心点についての強度および/または位相勾配および/または位相の値を計算するように構成および/またはプログラムされた、処理手段を含む。
【0031】
好ましくは、回折素子とセンサとの間に光学マスクおよび/または他の回折素子は存在しない。好ましくは、回折素子とセンサとの間に光学素子は存在しない。
【0032】
回折素子は、センサまでの入射電磁波の回折次数、好ましくは以下を生成するように構成することができる。
特に1つの次元を有する場合(例えば、回折素子が周期軸に沿って空間的周期性を有する周期パターンである場合)、センサまでの入射電磁波の少なくとも2つの回折次数、
特に2つの次元を有する場合(例えば、回折素子が2つ以上の周期軸に沿って空間的周期性を有する周期パターンである場合)、センサまでの入射電磁波の少なくとも3つの回折次数(好ましくは、少なくとも4つの次数)。
【0033】
処理手段は、強度および/または位相勾配および/または位相の値を計算するために、マトリックス配列センサによって受信された干渉縞の少なくとも9つの高調波を、または少なくとも13の高調波さえも考慮に入れ、典型的には、
例えば、規則的なデカルト格子上の完全な正弦波格子の4つの回折次数の場合、9つの高調波、
例えば、光(または鏡面)軸に沿って次数0を有する上述した4つの次数に対応する5つの回折次数の場合、13の高調波
を考慮に入れるように構成および/またはプログラムすることができる。
【0034】
処理手段は、強度および/または位相勾配および/または位相の値を計算する際に処理手段によって考慮に入れられる干渉縞の高調波の数と等しい数の複数の相対位置について変位手段を制御するように構成および/またはプログラムすることができる。
【0035】
回折素子は、入射電磁波の回折次数をそれ自体で生成するように構成することができる。
【0036】
回折素子は、好ましくは、少なくとも1つもしくは2つの周期軸に沿った空間的周期性(および/または好ましくはそれぞれ少なくとも1対もしくは2対の空間的回折方向に沿った回折特性)を有する周期パターンである。
【0037】
好ましくは、
周期パターンの1つもしくは複数の周期軸と、
センサの画素の1つもしくは複数の整列軸の、かつ/または回折素子とマトリックス配列センサとの間の相対位置の1つもしくは複数の変位軸の周期パターンの平面上の投影と
間に傾斜角がある。
【0038】
処理手段は、好ましくは、傾斜角の最適値を計算するように構成および/またはプログラムされる。これらの処理手段は、好ましくは、回折素子とマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置の数と同数の方程式を含む連立方程式に対応する行列の行列式または条件数の最大化によって傾斜角の最適値を計算するように構成および/またはプログラムすることができる。
【0039】
本発明による装置は、好ましくはその最適値に合わせてこの角度を調整するための手段も含むことができる。
【0040】
複数の位置は、入射電磁波の固定位置についての回折素子とマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置に対応し得る。複数の位置は、入射電磁波の固定位置とマトリックス配列センサの固定位置とについての回折素子の複数の位置に対応することができ、変位手段は、入射電磁波の固定位置とマトリックス配列センサの固定位置とについて回折素子を変位させるように構成される。
【0041】
複数の位置は、1つの変位軸に沿った、または好ましくは相互に直交する2つ以上の変位軸に沿った、回折素子とマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置に対応し得る。
【0042】
各変位軸または変位軸のうちの少なくとも1つは、回折素子が入射電磁波を受信するために配置されている伝搬方向と直交し得る。
【0043】
変位手段は、回折素子とマトリックス配列センサとの間の各相対位置がその他の相対位置のうちの少なくとも1つと、
好ましくはすべての相対位置について一定である、第1の変位軸に沿った第1のピッチに従って、かつ/または
好ましくはすべての相対位置について一定である、第2の変位軸に沿った第2のピッチに従って、
異なるように構成することができる。
【0044】
処理手段は、好ましくは、((1つまたは複数の)ピッチが一定でない場合を含む)第1のピッチの最適値および/または第2のピッチの最適値を計算するように構成および/またはプログラムされる。これらの処理手段は、好ましくは、回折素子とマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置の数と同数の方程式を含む連立方程式に対応する行列の行列式または条件数の最大化によって、第1のピッチの最適値および/または第2のピッチの最適値を計算するように構成および/またはプログラムすることができる。
【0045】
複数の位置は少なくとも3つの異なる位置に対応し得る。
【0046】
複数の位置は、少なくとも9つの異なる位置に、または少なくとも13の異なる位置にさえも対応し得る。
【0047】
回折素子は、好ましくは、少なくとも2つの周期軸に沿って空間的周期性を有する。
【0048】
一変形形態では、回折素子は、マトリックス配列センサに対して可動な回折素子であり得る。回折素子は、ハルトマンマスク、シャック・ハルトマンマスク、回折格子、および/または強度格子と位相格子との組み合わせを含むことができる。
【0049】
別の変形形態では、回折素子を、マトリックス配列センサに対して固定された光学部品によって支持または表示させることができ、前記光学部品は、マトリックス配列センサに対して回折素子(またはこの回折素子のディスプレイ)を変位させるように構成されており、前記光学部品は、好ましくは、例えば液晶を有する空間光変調器である。
【0050】
処理手段は、好ましくは、回折素子とマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置の数と同数の方程式を含む連立方程式を解くことによって強度および/または位相勾配および/または位相の値を計算するように構成および/またはプログラムすることができる。処理手段は、(好ましくは実空間で)擬似逆行列を使用して連立方程式を解くように構成および/またはプログラムすることができる。
【0051】
方程式系の未知数の全部または一部(好ましくは1つを除く全部)は、好ましくは、入射電磁波の位相勾配の関数として表される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
本発明の他の利点および特徴は、いかなる点でも限定的ではない実施態様および実施形態の詳細な説明を読み、添付の図面を参照すれば明らかになるであろう。
図1は、周期パターン2とセンサ4とを含む、本発明による方法の好ましい実施形態を実施する、本発明による装置の好ましい実施形態の概略図である。
図2は、一定で等しいピッチdx
Cおよびdy
Cを有する特定の実施形態についての、周期パターン2とマトリックス配列センサ4との間のP=9つの異なる相対位置に対応する、センサ4に関する周期パターン2の点19の9つの位置を示す図である。
図3~
図7は、本発明によるこの実施形態を説明する方程式である。
図8は、回折波10の干渉縞(またはインターフェログラム)のフーリエ変換を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
これらの実施形態はいかなる点でも限定的ではないので、以下で説明または例示される特徴のうちの選択された特徴が最新の先行技術に対して技術的優位性をもたらすかまたは本発明を差別化するのに十分である場合には、この特徴のうちの選択された特徴だけを説明または例示されるその他の特徴から切り離して(たとえこの選択がこれら他の特徴を含む句内で分離されているとしても)特に含む本発明の変形形態も考えら得る。この選択された特徴は、この部分のみで先行技術に対して技術的優位性をもたらすかまたは本発明を差別化するのに十分である場合には、構造的詳細なしで、かつ/または構造的詳細の一部だけと共に少なくとも1つの、好ましくは機能的な特徴を含む。
【0054】
まず、
図1~
図7を参照して、本発明による方法の好ましい実施形態を実施する本発明による解析装置1の好ましい実施形態について説明する。
【0055】
装置1は回折素子2を含む。この実施形態では、回折素子2は、変位手段3に取り付けられているので、可動回折素子2である。
【0056】
この実施形態では、回折素子2は、少なくとも1つもしくは2つの周期軸に沿った空間的周期性(および/または好ましくはそれぞれ少なくとも1対もしくは2対の空間的回折方向に沿った回折特性)を有する周期パターンである。
【0057】
この周期パターン2は、入射波9の(図示のような)透過または反射の周期パターンであり得る。
【0058】
装置1はセンサ4、好ましくはCCD、CMOS、sCMOSまたはマイクロボロメトリック・イメージ・センサ(microbolometric image sensor)、例えばBobcat IGV-B2020カメラを含む。
【0059】
変位手段3は、回折素子2とマトリックス配列センサ4との間の相対位置を変更するように構成されている。
【0060】
変位手段3は、この相対位置を変更するように、または回折素子2の平面内に位置し、好ましくは互いに直交する少なくとも2つの変位軸16、17に沿って(また任意選択で、調整のために、軸16、17と直交する第3の変位軸18にも沿って)回折素子2を変位させるように構成されている。
【0061】
変位手段3は電動式ステージ(圧電または電磁ステージ)を含み、周期パターン2のピッチpの2/1000、通常は40nmの典型的な変位精度を有する。ステージ3は、例えばNewport NPXY200SG基準ステージである。
【0062】
変位手段3は制御手段5に接続されており、好ましくは電子式であり、かつ/またはコンピュータ処理される。
【0063】
手段5は、例えば、アナログおよび/もしくはデジタル電子回路、ならびに/またはコンピュータの中央処理装置、ならびに/またはマイクロプロセッサ、ならびに/またはソフトウェア手段を含む。
【0064】
センサ4は、画素の2つの整列軸13、14に沿って整列した画素の二次元マトリックス配列を含む。
【0065】
画素は、典型的には正方形の形状であり、例えば7.4μmに等しい周期で2つの軸13、14に沿って整列している。一変形形態では、周期は、2つの軸13と、14の間で変動し得る。
【0066】
この実施形態では、画素整列の2つの軸13、14は互いに直交している。
【0067】
センサ4は、センサ4によって取得された信号を受信し処理するための手段6(好ましくは電子式であり、かつ/またはコンピュータ処理される)に接続されている。
【0068】
手段6は、例えば、アナログおよび/もしくはデジタル電子回路、ならびに/またはコンピュータの中央処理装置、ならびに/またはマイクロプロセッサ、ならびに/またはソフトウェア手段を含む。
【0069】
手段6は、本発明による方法の実施形態について後述する計算ステップの各々を実施するように構成および/またはプログラムされる。
【0070】
回折素子2、変位手段3、センサ4、制御手段5、および処理手段6は、
図1の符号7として図示されているケースの内部に配置されている。
【0071】
装置1は、1つまたは複数のコネクタ8(例えば、USB、micro USB、RS232、BNCタイプなど)を含む。
【0072】
各コネクタ8には、特にセンサ4によって取得された信号の手段6による処理結果を装置1の外に送るために、かつ/または装置1の外部からの命令を、制御手段5および/または処理手段6に送るために、ケース7の外部からアクセスすることができる。
【0073】
回折素子2は、伝搬方向29に伝搬する入射電磁波9を受信するように構成されている。
【0074】
回折素子2は、入射ビーム9の複製が伝搬によって相互に干渉するようにこれらの複製を生成するように構成されている。
【0075】
変位手段3は、入射電磁波9の固定位置とマトリックス配列センサ4の固定位置とについて回折素子2を変位させるように構成されている。
【0076】
周期パターン2は平面状である。
【0077】
周期パターン2は、少なくとも1つまたは2つの周期軸11、12に沿った空間的周期性を有する(空間的周期性はある周期軸11から別の周期軸12まで変化することができる)。
【0078】
周期パターン2は、それぞれ少なくとも1対または2対の空間的回折方向(32、34)および/または(31、33)に沿った回折特性を有する。
【0079】
よって回折素子2は、この入射電磁波9を回折電磁波10に変換するように構成されている。
【0080】
回折素子2とセンサ4とは(回折波の平均伝搬軸に沿って)非ゼロの距離だけ離間している。
【0081】
回折波10は、周期パターン2による入射波9の回折によって生成された異なる回折次数を含む(また好ましくはそれらの回折次数からなる)。
【0082】
これらの回折次数は2つずつ干渉し、干渉縞の系を生成することになる。フーリエ空間内では、これらの干渉縞の系が各々、本明細書で「高調波」と呼ぶ特定の周波数の周りに情報を生成する。
【0083】
よって、生成された回折次数は、マトリックス配列センサ4のレベルで干渉する。やはり周期軸を含む干渉縞が得られる。センサ4によって得られた信号のフーリエ変換は、各回折次数対間の干渉に対応する異なる高調波を含む。この信号の形成を記述するために使用されるモデルに応じて、有用とみなされる高調波の数は異なる。
【0084】
伝搬方向29は、回折素子2の平面(入射波9の回折波10への変換が行われる、軸11、12および/もしくは16、17に平行な平面)に対して、かつ/またはセンサ4の平面(センサ4の画素を含む、軸13、14に平行な平面)に対して垂直である。
【0085】
第3の変位軸18は、回折素子2の平面および/またはセンサ4の平面に対して垂直である。
【0086】
この実施形態では、軸11、12は互いに直交する。
【0087】
より簡単にするために、センサ4の平面において投影された2つの変位軸16、17のうちの少なくとも1つ、より正確にはこの実施形態では、2つの変位軸16、17の各々が整列軸13、14のうちの1つと平行である。
【0088】
回折素子2は、入射電磁波9の特定の回折次数のみをそれ自体で生成または選択する(すなわち、センサ4まで通過させる)ように構成されている。回折素子2は、回折素子2に固定されていない回折特性を有する別のマスクまたは格子または素子と組み合わさることなくこの生成または選択を実行するように構成されている。
【0089】
本実施形態は「二次元」である。
【0090】
回折素子2は、センサ4までの入射電磁波9の少なくとも3つの回折次数を生成するように構成されている。
【0091】
より具体的には、本実施形態では、回折素子2は、センサ4までの入射電磁波9の少なくとも(もしくは厳密に)4つの回折次数を生成するように構成されており、処理手段は、強度および/もしくは位相勾配および/もしくは位相の値を計算するために、マトリックス配列センサによって受信された干渉縞の少なくとも9つの高調波を考慮に入れるように構成および/もしくはプログラムされており、または回折素子2は、センサ4までの入射電磁波9の少なくとも(もしくは厳密に)5つの回折次数を生成するように構成されており、処理手段は、強度および/もしくは位相勾配および/もしくは位相の値を計算するために、マトリックス配列センサによって受信された干渉縞の少なくとも13の高調波を考慮に入れるように構成および/もしくはプログラムされている。
【0092】
回折素子2は通常、任意の種類の周期的なレンズ系を含む。
【0093】
回折素子2は、例えば、仏国特許出願公開第2795175(A1)号明細書に参照GRとして記載されているハルトマンマスクまたは修正ハルトマンマスク(「MHM」)(典型的には、29.6μmのピッチのシリカから作られた格子)やシャック・ハルトマンマスクまたは回折格子や、強度格子と位相格子の組み合わせを含む。
【0094】
MHMの使用に対応する値を以下に示す。
【0095】
周期パターン2の平面上の投影において、
周期軸11および/または12と
画素の1つもしくは複数の整列軸13および/もしくは14、ならびに/または1つもしくは複数の変位軸16、17と
の間に、傾斜角15(0°より大きく90°より小さく、典型的には30°±3°である)がある。
【0096】
好ましくは、周期パターン2の平面内の画素の整列軸13、14の投影は、1つまたは複数の軸11、12に平行ではない。
【0097】
素子2は、センサ4に対する素子2の角度位置15の調整を可能にするように構成された調整手段20または回転支持体20に取り付けられている。
【0098】
センサ4は、回折電磁波10の干渉縞を受信するように構成されている。
【0099】
装置1は、回折素子2とマトリックス配列センサ4との間の複数の相対位置(好ましくは、少なくとも3つの異なる位置、好ましくは少なくとも9つの異なる位置)に対応する回折電磁波信号10の、マトリックス配列センサ4による複数回の取得を実行するように構成されている。よって、これらの信号は各々、回折電磁波10の受信に応答してセンサ4によって生成される、センサ4の画素ごとのデータを含む電子信号(アナログおよび/またはデジタル)である。
【0100】
これら複数の相対位置は、入射電磁波9の固定位置とマトリックス配列センサ4の固定位置とについての回折素子2の複数の位置に対応する。
【0101】
変位手段3は、回折素子2とマトリックス配列センサ4との間の各相対位置がその他の相対位置の少なくとも1つと、
好ましくはすべての相対位置について一定である、第1の変位軸16に沿った第1のピッチに従って、かつ/または
好ましくはすべての相対位置について一定である、第2の変位軸17に沿った第2のピッチに従って、
異なるように構成されている。
【0102】
これらの複数の相対位置は、(ステージ3によって)回折素子2を変位させることによって得られる。
【0103】
この実施形態では、2つの変位軸16、17は互いに直交している。
【0104】
この実施形態では、2つの変位軸16、17は、回折素子2が入射波9を受信するためにそれに沿って配置されている伝搬方向29と直交している。
【0105】
この伝搬方向29と第3の変位軸18とが合流することにも留意されたい。
【0106】
装置1は、回折素子2に固定されていない回折特性を有する任意の他の要素(格子など)を含まないことに留意されたい。言い換えると、装置1は、回折素子2が(ステージ3の作用の下で)移動するときに移動しない回折特性を有する他の要素(格子など)を含まない。
【0107】
回折素子2とセンサ4との間には光学マスクおよび/または他の回折素子または回折格子は存在しないことに留意されたい。回折素子とセンサとの間には光学素子が存在しない(そのような光学素子は存在し得るが、本発明のコンパクトさを低める)ことにも留意されたい。
【0108】
次に、装置1によって実施される、電磁波を解析するための本発明による方法の好ましい実施形態について説明する。
【0109】
装置1への入射時の受信
この方法は、回折素子2による入射電磁波9の受信を含む。
【0110】
この波は、例えば、顕微鏡から出てくる白色光の擬似コリメートビームである。
【0111】
入射電磁波9は回折素子2に集束しない。入射電磁波9は回折素子2の任意の点に集束する。
【0112】
波9は、回折素子2の平面および/またはセンサ4の平面に対して垂直な伝搬方向29に伝搬する。
【0113】
波9は、軸11および12に対して垂直な伝搬方向29に伝搬する。
【0114】
装置1への入射時の回折、およびセンサ4による受信
本発明による方法の実施形態は、回折素子2によるこの入射電磁波9の回折電磁波10への変換を含む。
【0115】
波10は平均伝搬方向30に伝搬し、各次数はそのそれぞれの伝搬方向31、32、33または34に伝搬する(4つの次数の場合)。
【0116】
方向30は、回折素子2の平面および/またはセンサ4の平面に対して垂直である。
【0117】
伝搬方向30は軸13および14に対して垂直である。
【0118】
伝搬方向29と30とは同一である。
【0119】
回折素子2は、(特に、回折素子2に固定されていない回折特性を有する別のマスクまたは格子または素子と組み合わさることなく)入射電磁波9の特定の回折次数だけをそれ自体で生成または選択する。
【0120】
回折素子2は少なくとも3つの回折次数を生成し、好ましくは、
少なくとも4つの回折次数(もしくは、
図1に示すように、例えば、90°の角度で次数の各々を分離する光軸10、30の周りに分散された厳密に4つの回折次数であり、これらの次数がそのそれぞれの方向31、32、33または34に伝搬する、または
マトリックス配列センサ4によって受信された干渉縞の少なくとも(または厳密に)9つまたは13の高調波にそれぞれ対応する、少なくとも5つの回折次数(もしくは、前述の4つの次数および光軸10、30に沿って伝搬する次数0も含む、厳密に5つの回折次数)
を生成する。
【0121】
図8に、4つの回折次数を含む回折波10の場合の干渉縞(またはインターフェログラム)のフーリエ変換を示す。
図8には、破線で区切られた9つの正方形領域に対応する9つの高調波が示されている。
【0122】
典型的には、マトリックス配列センサによって受信され、強度および/または位相勾配および/または位相の値を計算する際に考慮に入れられる干渉縞の高調波の数は、少なくとも9つの高調波、または少なくとも13の高調波さえも含むことができ、典型的には、
以下の9つの高調波:0(センサ4の平面上に投影された軸11と12との交点);センサ4の平面上に投影された軸11に沿って+/-1;センサ4の平面上に投影された軸12に沿って+/-1;センサ4の平面上に投影された軸11と12との間の2つの対角線に沿って+/-1、または
以下の13の高調波:0(センサ4の平面上に投影された軸11と12との交点);センサ4の平面上に投影された軸11に沿って+/-1;センサ4の平面上に投影された軸12に沿って+/-1;センサ4の平面上に投影された軸11と軸12との間の2つの対角線に沿って+/-1;センサ4の平面上に投影された軸11と軸12との間の2つの対角線に沿って+/-0.5
である。
【0123】
本発明による方法の実施形態は、マトリックス配列センサ4による回折電磁波10の干渉縞の受信を含む。
【0124】
回折素子2の変位
本発明による方法の実施形態は、回折素子2とマトリックス配列センサ4との間の複数の相対位置に対応する回折電磁波信号10の、マトリックス配列センサ4による複数回の取得を含む。言い換えると、回折電磁波信号10のマトリックス配列センサ4による各取得は、
回折素子2とマトリックス配列センサ4との間の所与の相対位置、
すなわち、センサ4上に結像された所与のインターフェログラム
に対応する。
【0125】
複数の位置は、入射電磁波9の固定位置に対する回折素子2とマトリックス配列センサ4との間の複数の相対位置に、より具体的には、入射電磁波9の固定位置とマトリックス配列センサ4の固定位置とについての回折素子2の複数の位置に対応する。
【0126】
複数の位置は、2つの変位軸16、17に沿った回折素子2とマトリックス配列センサ4との間の複数の相対位置に対応する。
【0127】
変位軸16、17は互いに直交する。
【0128】
2つの変位軸16、17のうちの少なくとも1つ、より具体的には本実施形態では、2つの変位軸16、17の各々が、回折素子2上の入射電磁波9の平均伝搬方向29と直交する。
【0129】
複数の位置は少なくとも3つ、好ましくは少なくとも9つの異なる位置に対応する。
【0130】
回折素子2とマトリックス配列センサ4との間の各相対位置は、その他の相対位置の少なくとも1つと、
好ましくはすべての相対位置について一定である、第1の変位軸16に沿った第1のピッチdxCに従って、かつ/または
好ましくはすべての相対位置について一定である、第2の変位軸17に沿った第2のピッチdyCに従って、
異なる。
【0131】
グリッド、S、スパイラルなど、任意の形式のスキャンを使用することができる。
【0132】
ピッチdxCまたはdyCは10μmから30μmの間に含まれる典型的な値を有し、少なくとも0.04μmの精度を有する(やはりMHMの場合)。
【0133】
計算および処理
「高精細度の」位相画像を得るために、回折素子2とセンサ4との間の伝搬後に異なる回折次数の干渉によって形成されたセンサ4の画像が基礎として取り込まれる。本発明による高精細度の方法のこの実施形態では、回折素子2は、インターフェログラムのスペクトルを構成する各高調波を位相シフトさせるように変位される。
【0134】
本発明による方法の実施形態は、(処理手段6による)回折素子2とマトリックス配列センサ4との間の複数の相対位置に対応する複数回の取得からの、マトリックス配列センサ4の各点における入射電磁波9の強度および/または位相勾配および/または位相の値の計算を含む。
【0135】
この計算は、入射電磁波9の関心点ごとに、回折素子2とマトリックス配列センサ4との間の複数の相対位置の数と同数の方程式を含む連立方程式を解くことを含む。
【0136】
連立方程式は、例えば、実空間またはフーリエ空間において、擬似逆行列を使用して解かれる。擬似逆行列は、例えば、行列を特異値に分解することを可能にする特異値分解線形代数アルゴリズムから計算される。特異値が小さすぎる場合には、擬似逆行列の計算のために考慮されない。擬似逆行列は、最小二乗の意味での連立一次方程式の解を見つけることを可能にする。
【0137】
未知数の全部または一部(以下、b、c、d、e、f、g、h、i、すなわち方程式系の1つ、未知数a)を除くすべて)が、入射電磁波9の位相勾配W(x座標および/またはy座標による勾配)の関数として表される。
【0138】
よって、本発明による方法のこの実施形態では一般に、
少なくともN個の高調波または厳密にN個の高調波が使用される場合(Nは、好ましくは2以上の整数、好ましくは9以上の整数)には、
入射電磁波9の位相勾配の関数として表される、N-1を含むN個の未知数を有する連立方程式が解かれ、
P個の方程式(Pは、好ましくは2以上、好ましくは9以上の整数)を含む連立方程式を解くために、回折素子2とマトリックス配列センサ4との間でP個の異なる相対位置が使用され、
オーバーサンプリングの場合にはP>Nであり、これは信号対雑音比を上げることを可能にし、
最も単純な場合にはP=Nであり、
情報の冗長性または連立方程式の未知数間の関係が使用される場合にはP<Nであり、これはより少ない変位の使用、従ってより迅速な処理を可能にする。
【0139】
処理の例
次に以下についての処理の一例を説明する。
P=9
N=9
P=N。
【0140】
回折素子2は、仏国特許出願公開第2795175(A1)号明細書の参照GRに記載されているように、強度格子と位相格子との組み合わせを含み、4つの回折次数のみを選択するように構成されている。したがって、高調波の数は次の9つになる:0(センサ4の平面上に投影された軸11と12との交点);センサ4の平面上に投影された軸11に沿って+/-1;センサ4の平面上に投影された軸12に沿って+/-1;センサ4の平面上に投影されたこれら2つの軸11と12との間の2つの対角線に沿って+/-1。
【0141】
この例で考察される回折素子2は、29.6μmの周期を有する、シリカから作られた修正ハルトマンマスク(仏国特許出願公開第2795175(A1)号明細書参照)である。
【0142】
図2に、回折素子2とマトリックス配列センサ4との間のP=9つの異なる相対位置に対応する、センサ4上の回折素子2の全く同一の点19の9つの位置を示す。
【0143】
これらの位置は、一定のピッチdxCおよび一定のピッチdyCで一様に分布していることに留意されたい。
【0144】
ここで使用される手法は、フーリエ空間での計算に基づくものである。それらの計算は、縞の正弦波の側面を扱うことを可能にし、したがって、正弦波適合によって最大値間の画素に含まれる情報を活用することを可能にする。
【0145】
次に格子2を参照すると、センサ4上に生成された、格子2の(軸11に沿った)座標xに沿ったdxおよび(軸12に沿った)座標yに沿ったdyのシフトについて得られたインターフェログラムは、
図3に示すように、次式として記述される。
【数1】
式中:
I
0は、入射波の強度に対応する定数。
pは、格子2のピッチ(周期とも呼ばれる)(好ましくは軸11および12に沿って同一である)、典型的にはp=29.6μm。
zは、素子2の平面とセンサ4の平面との間の(均一であると仮定される)距離(センサ4の平面と素子2の平面とに対して垂直、かつ/または回折波10の伝搬方向30に、かつ/または変位軸18に沿って測定される)。この距離zは、位相変動に対する感度を向上させるために、典型的には1mm未満である。
Wは、
【数2】
によって波の位相に関連する光路差(OPD)。
は、入射波の「位相勾配」とも呼ばれる、xおよびyに沿ったOPDの偏導関数。
または同時に:
【数3】
式中、a、b、c、d、e(指数なし)、f、g、h、iは、解かれるべき連立方程式の以下の9つの未知数(指数ありの「e」は指数関数を表し、jは複素数を表す)。
【数4】
【0146】
格子2のみが固定されたままであるCCDセンサ4の前で変位されると仮定すると、入射波面9は不変であり、データa、b、c、d、e、f、g、h、iは定数である。これら9つの定数はフーリエ変換の9つの高調波に対応する。
【0147】
したがって、9つの未知数が求められるべきである。このために、9つのインターフェログラム、または場合によってはより多いかまたは少ないインターフェログラムが使用されなければならない。
【0148】
行列法では、
図4に示すように、問題は次のように記述される。
【数5】
よって、擬似逆行列を用いて系を解くことにより、未知数a、b、c、d、e、f、g、h、iを見つけることが可能である。
【0149】
この事例によれば、以下の通りである。
P>N:使用されるインターフェログラムの数が多いほど、信号対雑音比が高い。
P<N:例えばピーク間の情報の冗長性などの特定の条件を課すことによって、9未満のシフトされたインターフェログラムを用いて係数の値を得ることが可能である。未知数a、b、c、d、e、f、g、h、iを調べれば、情報の冗長性があることが分かる。例えば、未知数「c」は未知数「b」の複素共役である。よって、9未満のインターフェログラムを使用してこれらの未知数の値を見つけることが可能である。
最も単純な場合にはP=N。
【0150】
次にP=Nの最も単純な場合を参照すると、系を解くために9つのシフトされたインターフェログラムが使用される。これらの9つの未知数はその場合、9つのインターフェログラムの取得を行うことによって見つけられる。
【0151】
行列法では、
図5に示すように、問題は次のように記述される。
【数6】
【0152】
未知数a、b、c、d、e、f、g、h、iを求めると、次いで「高精細度」で以下を見つけることが可能になる。
強度値I(係数a)、および/または
方向y(係数d/e)の方向x(係数b/c)の位相勾配および/または
勾配の数値積分による位相。
【0153】
振動項のコサインおよびサインを使用して実空間でこの計算を実行することも可能であることに留意されたい。これにより、計算速度を向上させることが可能になる。よって、
図6に示すように、以下の方程式が使用される。
【数7】
式中:
【数8】
比b/cおよびd/eの逆タンジェントを行うことによって、位相勾配に達することができる。
【0154】
最新技術と比べた本発明による分解能の向上
「測定分解能」とは、センサによって分解される位相もしくは強度または位相勾配の測定の最小寸法を意味する。
【0155】
「センサ分解能」とは、センサによって検出される最小寸法を意味する。これは通常、このセンサの画素サイズである。
【0156】
「精細度」とは、測定に使用される「センサ分解能」と「測定分解能」との間の比を意味する。
【0157】
前述した状況(4つの回折次数、9つの高調波)を次に最新技術の場合と本発明の場合とで比較する。
【0158】
4つの回折次数(4つの波数ベクトルk
1、k
2、k
3およびk
4によって担われる4つの波における干渉)への近似の文脈内で、センサによって記録される強度を次のように記述することができる。
【数9】
電磁場の振幅を回復するために求められる情報は、項
に含まれている。したがって、検出器の各点rに、測定値I(r)と16の未知数
がある(m、nは1から4まで変化する整数である)。信号I(r)に対してフーリエ変換が実行される場合、対称性のために、情報は実際には係数a、b、cなどに対応する9つの高調波の周りにグループ化される。
【0159】
最新技術の場合、例えば、2009年にOptics Express誌に発表された「Quadriwave lateral shearing interferometry for quantitative phase microscopy of living cells」という論文(17巻、15号)では、所望の情報を回復し、この方程式を解くために仮説を立てることが必要である。よって、これらの高調波の周波数サポートが異なると仮定すると、異なる高調波をウィンドウ処理することによって問題を解くことが可能である。よってこの仮定は、高調波の周波数サポートが制限されているので、得られる画像の分解能がCCDセンサの分解能より低いことを意味する。市販品SID4の場合、分解能の損失は値4を有する。
【0160】
したがって「精細度」は1/4である。
【0161】
本発明の場合、高調波の周りのウィンドウ処理はもはや実行されない。実際、各取得間の周期パターン2の変位により、各高調波によって含まれる情報の全体を得ることが可能になる。
【数10】
という項は、実際には、異なる対(m,n)を分離できるように変調されることになる。
【0162】
上述したように複数の未知数を用いて線形方程式を解くことによって、求められる項
が見つかる。したがって、センサによってサンプリングされたすべての周波数について情報の全体を抽出することができるので、センサ4と同じ分解能を有する位相画像、強度、および/または位相勾配を再構築することが可能である。
【0163】
測定分解能が向上するので、「精細度」は1になる。
【0164】
周期パターン2の本発明による変形形態
本明細書に記載されているすべてが有効なままで、格子2または回折素子2または周期パターン2を、マトリックス配列センサ4に対して固定された光学部品に固定された、またはその光学部品によって支持された光学部品によって表示または支持された回折素子2または周期パターン2で置き換え、前記光学部品は、マトリックス配列センサ4に対して回折素子2または周期パターン2を変位させるように構成されている。
【0165】
この光学部品は、好ましくは、回折素子2または周期パターン2を表示し、その表示を変更することによって回折素子2または周期パターン2を変位させる液晶変調器などの空間光変調器である。
【0166】
この解決法には、
潜在的により安価であること、および/または
回折格子の吸収による光の損失なしに蛍光の強度測定を直接行うことを可能にすること
という利点があるが、入射波は直線的に偏光されると仮定できるので、潜在的にあまり一般的ではない。
【0167】
本発明による角度15ならびにピッチdxおよびdyの最適化
本発明による方法またはその変形の実施形態の各々は、
ピッチdx(もしくはdxC)の最適値および/もしくはピッチdy(もしくはdyC)の最適値の(処理手段6による)計算、ならびに/または
傾斜角15の最適値の(処理手段6による)計算、任意選択で続いて(支持体20を介して)この角度15を調整するステップ
も含む。
【0168】
ピッチdx(もしくはdxC)の最適値および/もしくはピッチdy(もしくはdyC)の最適値を計算することは、周期パターンとマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置の数と同数の方程式を含む連立方程式に対応する行列の行列式または条件数の最大化を含むことができる。
【0169】
傾斜角の最適値を計算することは、周期パターンとマトリックス配列センサとの間の複数の相対位置の数と同数の方程式を含む連立方程式に対応する行列の行列式または条件数の最大化を含む。
【0170】
P=Nの場合、方程式系は正方行列に対応し、その行列式が基底になる。
【0171】
P≠Nの場合、方程式系は正方行列ではない行列に対応し、その条件数が基底になる。Aが行列である場合、その条件数K(A)は、その最大の固有値と最小の固有値との比である。
【0172】
9つの未知数a、b、c、d、e、f、g、h、およびiを有する前述の例を再考すると、「高精細度の」位相画像を計算するためには、(インターフェログラムの9つの高調波に対応する)9つの未知数を有する系が解かれることが示されている。この系を解くために、回折格子2のグリッドは各高調波を位相シフトするように少なくとも9回変位される。よって、これら9つの取得されたインターフェログラムは系を解くことを可能にする。
【0173】
系を解くために、行列が反転される。この行列の要素は、
図7に示すように、次式で示される。
【数11】
式中:
1)dx
iおよびdy
i(iは1とPとの間に含まれる整数)は、インターフェログラム番号iについて実行される変位。これらの変位は、軸11および12に沿って格子2の基準フレーム内で実行される変位である。したがって、それらは以下のように記述される:
dx
i=dx
C cos(θ)+dy
C sin(θ)、および
dy
i=-dy
C sin(θ)+dy
C cos(θ)
2)dx
Cおよびdy
Cは、(ステージ3と同じ基準フレームである)軸13および14に沿ったカメラ4の基準フレーム内での実変位、θは、格子2の傾斜角15。
3)pは、格子2の周期。
【0174】
系を解くためには、行列が反転されなければならないことに留意されたい。したがって、9つの未知数a、b、c、d、e、f、g、h、iの解決の間に導入される誤差を可能な最小量にするためには、この行列の行列式(または条件数)を最大化することが必要である。
【0175】
行列の行列式または条件数は、ステージ3の変位dxCとdyCの両方に依存するが、格子2の傾斜角15にも依存する。
【0176】
よって、係数a、b、c、d、e、f、g、h、iを計算する際に生成される誤差を可能な最小量にするためには、行列の行列式または条件数を最大化することが求められる。
【0177】
よって、傾斜角15の最適値および/または第1のピッチの最適値および/または第2のピッチの最適値は、連立方程式の未知数(係数a、b、c、d、e、f、g、h、i)の計算の誤差を最小化するように構成される。
【0178】
したがって、行列式または条件数は、異なるトリプレット(dxC,dyC,θ)に対して計算される。行列式または条件数の値が高いトリプレットは、「高精細度の」位相画像を生成するための最適点を決定することを可能にする。
【0179】
ピッチおよび/もしくは角度15の最適値のこの計算は、波9の測定の前に装置1によって実行することができ、または装置1の構築または設計もしくは較正中に実施することができる。
【0180】
有利には、ピッチdxC、dyCおよび/または角度15の最適値のこの計算は、
装置1によって、
波9の測定の前に、かつ/または
(回折素子2の手動交換による、もしくは光学部品もしくは空間光変調器上の周期パターン2の表示の変更による)周期パターン2の変更、例えばそのピッチPの変更の後に、かつ/または
例えば測定雑音を減らすために行われた変位の数の変更の後に
実行することができ、
角度15の計算の場合には、続いて、波9の測定の前に(すなわち、入射電磁波9の回折電磁波10への変換および本発明による計算に使用される回折電磁波10の干渉縞のマトリックス配列センサ4による受信の前に)、調整手段20によって、その最適な計算された値へのこの角度15の調整を行うことができる。
【0181】
当然ながら、本発明は上述した例だけに限定されず、本発明の範囲を超えることなくこれらの例に対して多くの調整を加えることができる。よって、前述した各実施形態の変形形態では:
周期パターン2を変位させる代わりに、センサ4が変位される。よって、複数の相対位置は、入射電磁波9の固定位置と周期パターン2の固定位置とについてのマトリックス配列センサ4の複数の位置に対応する。しかしながら、この変形形態は、各インターフェログラムの各画素(x,y)が入射ビームの同じ点に対応するようにインターフェログラムをリセットする必要があるのであまり有利ではない;かつ/または
複数の相対位置は、1つの変位軸16に沿った周期パターン2とマトリックス配列センサ4との間の複数の相対位置に対応する(この1つの変位軸16は、その場合好ましくは、周期パターン2上の入射電磁波9の伝搬方向29と直交する)。これは以下の場合に該当し得る:
「高分解能」が軸13に沿ってのみ必要とされる場合。この場合には、2つの回折次数で十分である。例えば3つの高調波0およびセンサ4の平面上に投影された軸11に沿った+/-1に対応する、周期パターン2とセンサ4との間の3つの相対位置で十分である。この場合には、周期パターン2は周期軸11に沿った回折特性を含むだけで十分である、または
「高分解能」が2つの軸13、14に沿って必要とされるが、周期パターン2またはセンサ4の変位を変位軸16に沿って制限する場合、および/または
周期パターン2は、3つ以上の周期軸に沿って空間的周期性を有する(よって6つ以上の回折次数を生成する)。これは、例えば六角形の周期パターンを有する格子を含む回折素子2の場合である;かつ/または
ピッチdxもしくはdxC、および/もしくはdyもしくはdyCは、異なる相対位置間で必ずしも一定ではない;かつ/または
周期パターン2とセンサ4との間に光学素子、特に波10のサイズをセンサ4に適合させるためのレンズ、および/もしくは波10をセンサ4に送るためのミラーがある。しかしながら、この変形形態は、装置1の容積および空間要件を増大させるので、さほど有利ではない;かつ/または
計算方法は必ずしも行列を使用しない。P個の連立方程式を解くことを可能にする任意の方法が本発明に適合する;かつ/または
計算方法は必ずしも実空間またはフーリエ空間内ではない。計算が線形結合に基づくものであると仮定すると、実際には開始空間に戻ることを可能にする逆関数を有する任意の関数を使用することが可能である;かつ/または
前述のすべての説明を、周期パターン2もしくは格子2を回折素子2で置き換えることによって、もしくはその逆によって、一般化することができる;かつ/または
前述のすべての説明を、入射波9の反射および/もしくは透過によって回折波10を生成する回折素子2を用いて一般化することができる。
【0182】
当然ながら、本発明の様々な特性、形態、変形形態および実施形態は、それらが相容れないか、または相互に排他的でない限り、様々な組み合わせとして互いに組み合わせることもできる。特に、上述したすべての変形形態および実施形態は互いに組み合わせることができる。