(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】通信装置および通信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 27/02 20060101AFI20231026BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H04L27/02
H04L27/26 110
(21)【出願番号】P 2019559855
(86)(22)【出願日】2018-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2018019004
(87)【国際公開番号】W WO2019008915
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2017133120
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チトラカール ロジャン
(72)【発明者】
【氏名】ホァン レイ
(72)【発明者】
【氏名】浦部 嘉夫
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】KIM Jeongki et al.,AP re-discovery by WUR STA,IEEE 802.11-17/0657r1,2017年05月08日,Slides 1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/02
H04L 27/26
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作中に、802.11ビーコンフレームおよびWURビーコンフレームをスケジューリングする回路であって、前記回路が、前記802.11ビーコンフレーム
と前記WURビーコンフレームの送信をスケジューリングするとき、先に前記802.11ビーコンフレームを送信し、続いて前記WURビーコンフレームを送信するようにスケジューリングし、前記802.11ビーコンフレームの送信と前記WURビーコンフレームの送信との間に他のフレームの送信をスケジューリングしない、回路と、
動作中に、前記802.11ビーコンフレームおよび前記WURビーコンフレームを送信する送信機と、
を備え、
前記WURビーコンフレームは時間同期機能(TSF:Time Synchronization Function)の選択されたビットを運ぶ部分TSF(P-TSF:partial-TSF)フィールドを含み、また、前記WURビーコンフレームは定期的な間隔で送信され、
前記送信機は、前記定期的な間隔でのWURビーコンフレームの送信に加えて、前記部分TSFフィールドを含む別のWURパケットを前記定期的な間隔でのWURビーコンフレームの送信タイミングとは別のタイミングで送信する、
通信装置。
【請求項2】
動作中に、802.11ビーコンフレームおよびWURビーコンフレームをスケジューリングする回路であって、前記回路が、前記802.11ビーコンフレームと前記WURビーコンフレームの送信をスケジューリングするとき、先に前記802.11ビーコンフレームを送信し、続いて前記WURビーコンフレームを送信するようにスケジューリングし、前記802.11ビーコンフレームの送信と前記WURビーコンフレームの送信との間に他のフレームの送信をスケジューリングしない、回路と、
動作中に、前記802.11ビーコンフレームおよび前記WURビーコンフレームを送信する送信機と、
を備え、
前記WURビーコンフレームが、期間を示す期間フィールドを含んでおり、前記期間のネットワーク割り当てベクトル(NAV)を設定する、
通信装置。
【請求項3】
動作中に、802.11ビーコンフレームおよびWURビーコンフレームをスケジューリングする回路であって、前記回路が、前記802.11ビーコンフレームと前記WURビーコンフレームの送信をスケジューリングするとき、先に前記802.11ビーコンフレームを送信し、続いて前記WURビーコンフレームを送信するようにスケジューリングし、前記802.11ビーコンフレームの送信と前記WURビーコンフレームの送信との間に他のフレームの送信をスケジューリングしない、回路と、
動作中に、前記802.11ビーコンフレームおよび前記WURビーコンフレームを送信する送信機と、
を備え、
前記802.11ビーコンフレームの前記送信後の決定された時間に、前記回路が前記WURビーコンフレームの前記送信をスケジューリングし、
前記決定された時間が短フレーム間間隔(SIFS)である、
通信装置。
【請求項4】
動作中に、802.11ビーコンフレームおよびWURビーコンフレームをスケジューリングする回路であって、前記回路が、前記802.11ビーコンフレームと前記WURビーコンフレームの送信をスケジューリングするとき、先に前記802.11ビーコンフレームを送信し、続いて前記WURビーコンフレームを送信するようにスケジューリングし、前記802.11ビーコンフレームの送信と前記WURビーコンフレームの送信との間に他のフレームの送信をスケジューリングしない、回路と、
動作中に、前記802.11ビーコンフレームおよび前記WURビーコンフレームを送信する送信機と、
を備え、
前記802.11ビーコンフレームの前記送信後の決定された時間に、前記回路が前記WURビーコンフレームの前記送信をスケジューリングし、
前記決定された時間が短フレーム間間隔(SIFS)未満である、
通信装置。
【請求項5】
前記別のWURパケットは、前記WURビーコンフレームのサブタイプであり、前記通信装置とアソシエーションされた無線局が前記通信装置とのアソシエーションを維持するためのキープアライブWUR信号である、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記送信機は、前記別のWURパケットを周期的に送信する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
送信機は、
802.11ビーコンフレームおよびWURビーコンフレームを、前記802.11ビーコンフレームと前記WURビーコンフレームの送信が続くようにスケジューリングするとき、先に前記802.11ビーコンフレームを送信し、続いて前記WURビーコンフレームを送信するようにスケジューリングし、前記802.11ビーコンフレームの送信と前記WURビーコンフレームの送信との間に他のフレームの送信をスケジューリングせず、
前記802.11ビーコンフレームおよび前記WURビーコンフレームを送信
し、
前記WURビーコンフレームは時間同期機能(TSF:Time Synchronization Function)の選択されたビットを運ぶ部分TSF(P-TSF:partial-TSF)フィールドを含み、また、前記WURビーコンフレームは定期的な間隔で送信され、
前記送信機は、前記定期的な間隔でのWURビーコンフレームの送信に加えて、前記部分TSFフィールドを含む別のWURパケットを前記定期的な間隔でのWURビーコンフレームの送信タイミングとは別のタイミングで送信する、
通信方法。
【請求項8】
送信機は、
802.11ビーコンフレームおよびWURビーコンフレームを、前記802.11ビーコンフレームと前記WURビーコンフレームの送信が続くようにスケジューリングするとき、先に前記802.11ビーコンフレームを送信し、続いて前記WURビーコンフレームを送信するようにスケジューリングし、前記802.11ビーコンフレームの送信と前記WURビーコンフレームの送信との間に他のフレームの送信をスケジューリングせず、
前記802.11ビーコンフレームおよび前記WURビーコンフレームを送信
し、
前記WURビーコンフレームが、期間を示す期間フィールドを含んでおり、前記期間のネットワーク割り当てベクトル(NAV)を設定する、
通信方法。
【請求項9】
送信機は、
802.11ビーコンフレームおよびWURビーコンフレームを、前記802.11ビーコンフレームと前記WURビーコンフレームの送信が続くようにスケジューリングするとき、先に前記802.11ビーコンフレームを送信し、続いて前記WURビーコンフレームを送信するようにスケジューリングし、前記802.11ビーコンフレームの送信と前記WURビーコンフレームの送信との間に他のフレームの送信をスケジューリングせず、
前記802.11ビーコンフレームおよび前記WURビーコンフレームを送信
し、
前記802.11ビーコンフレームの前記送信後の決定された時間に、前記WURビーコンフレームの前記送信がスケジューリングされ、
前記決定された時間が短フレーム間間隔(SIFS)である、
通信方法。
【請求項10】
送信機は、
802.11ビーコンフレームおよびWURビーコンフレームを、前記802.11ビーコンフレームと前記WURビーコンフレームの送信が続くようにスケジューリングするとき、先に前記802.11ビーコンフレームを送信し、続いて前記WURビーコンフレームを送信するようにスケジューリングし、前記802.11ビーコンフレームの送信と前記WURビーコンフレームの送信との間に他のフレームの送信をスケジューリングせず、
前記802.11ビーコンフレームおよび前記WURビーコンフレームを送信
し、
前記802.11ビーコンフレームの前記送信後の決定された時間に、前記WURビーコンフレームの前記送信がスケジューリングされ、
前記決定された時間が短フレーム間間隔(SIFS)未満である、
通信方法。
【請求項11】
前記別のWURパケットは、前記WURビーコンフレームのサブタイプであり、通信装置とアソシエーションされた無線局が前記通信装置とのアソシエーションを維持するためのキープアライブWUR信号である、
請求項7に記載の通信方法。
【請求項12】
前記別のWURパケットは周期的に送信される、
請求項7に記載の通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、通信装置および通信方法に関連している。
【背景技術】
【0002】
IEEE(電気電子技術者協会:Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11baタスクグループは、現在、ウェイクアップ無線(WUR:wake-up radio)装置の動作に関連する無線通信技術を標準化する過程にある。WUR装置は、主接続無線(PCR:primary connectivity radio)装置と対になる無線装置であり、同じ周波数帯域でレガシーIEEE802.11デバイスと共存する。PCRは、既存の主流のIEEE802.11の修正(802.11a、802.11g、802.11n、または802.11ac)のいずれかであってよく、またはその他の適用可能な将来の修正(例えば、802.11ax)であってもよい。WUR装置の目的は、PCRが主無線通信として使用されているときに、有効なウェイクアップパケットの受信時にPCR装置のスリープからの移行をトリガーすることである。PCR装置は、アクティブ通信中にのみオンになり、アイドルリスニングの期間中には、PCR装置がオフになり、WUR装置のみが動作している。WUR装置は、1ミリワット未満の動作中の受信機消費電力を有することが期待されており、この消費電力は、PCR装置の動作中の受信機消費電力と比較して、はるかに少ない。WUR装置を備えるデバイスは、WURデバイスと呼ばれることがあり、WURモードは、PCRがオフになっておりWURのみが動作している動作モードを指すことがある。
【0003】
IEEE802.11baの修正は、通信デバイスが通常はバッテリによって駆動される用途やモノのインターネット(IOT:Internet-of-Things)の使用事例を対象にしており、相応な低遅延を維持しながら、バッテリ寿命を延ばすことが非常に望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】IEEE Std 802.11-2016
【文献】IEEE 802.11-17/0575r1, Specification Framework for TGba, May 2017
【文献】IEEE 802.11-16/0722r1, "Proposal for Wake-Up Receiver (WUR) Study Group"
【文献】IEEE 802.11-17/0343r3, "WUR Beacon"
【文献】IEEE 802.11-17/0342r4, "WUR Negotiation and Acknowledgment Procedure Follow Up"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
WURパケットの送信に関連するオーバーヘッドを減らす方法は、完全には研究されていない。
【0006】
本開示の非限定的な一実施形態例は、WURパケットの送信に関連するオーバーヘッドを減らすことを容易にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの一般的な態様では、本明細書で開示される技術は、第1の信号タイプのパケットのペイロードを生成するように構成された第1のペイロード生成器と、第2の信号タイプのパケットのペイロードを生成するように構成された第2のペイロード生成器と、第1および第2のパケットの送信タイミングを制御するパケットスケジューラと、動作中に、パケットスケジューラのタイミング制御下で、第1の信号タイプのパケットを送信し、それに続いて第2の信号タイプのパケットを送信する、送信機とを特徴とする。
【0008】
これらの一般的な態様および特定の態様は、デバイス、システム、方法、およびコンピュータプログラム、ならびにデバイス、システム、方法、およびコンピュータプログラムの任意の組み合わせを使用して実装されてよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示において説明される通信装置および通信方法は、無線信号が2つ以上の変調方式で変調される混合無線環境(mixed radio environment)内のウェイクアップ信号の送信に関連するオーバーヘッドを減らすのを容易にすることができる。
【0010】
開示される実施形態のその他の利益および優位性が、本明細書および図面から明らかになるであろう。それらの利益および/または優位性は、本明細書および図面のさまざまな実施形態および特徴によって個別に得られてよく、それらの実施形態および特徴は、そのような利益および/または優位性のうちの1つまたは複数を得るために、すべて提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】レガシー802.11デバイスおよびWUR対応デバイスが混在する、例示的な異機種環境の802.11無線ネットワークを示す図である。
【
図2】802.11baタスクグループにおいて検討されているWURパケットのフォーマットを示す図である。
【
図3】802.11フレームとWURパケットが混在する送信を含むフレーム送信シーケンスを示す図である。
【
図4】第1の実施形態による送信方式を示す図である。
【
図5】第1の実施形態による送信フォーマットの特定の例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態による送信方式の特定の例のフレーム送信シーケンスを示す図である。
【
図7】WURアクションフレームおよびWURケイパビリティエレメントのフォーマットを示す図である。
【
図8】第1の実施形態による多段受信機の動作を示す図である。
【
図9】多段受信機の動作のフローチャートを示す図である。
【
図10】WURパケットの送信に使用されるPHY SAPプリミティブの表を示す図である。
【
図11】WURパケットの送信に使用されるPHY SAPプリミティブにおいて使用されるベクトルのパラメータの表を示す図である。
【
図12】第1の実施形態による送信方式でのPHY SAPプリミティブの使用を示す図である。
【
図13】第2の実施形態による送信方式を示す図である。
【
図14】第2の実施形態による多段受信機の動作を示す図である。
【
図15】第3の実施形態による送信方式を示す図である。
【
図16】第3の実施形態による送信方式でのPHY SAPプリミティブの使用を示す図である。
【
図17】開示された送信方式を実装する例示的なAPの簡略化されたブロック図である。
【
図18】開示された送信方式を実装する例示的なAPの詳細なブロック図である。
【
図19】開示された送信方式を実装する例示的なWUR STAの簡略化されたブロック図である。
【
図20】開示された送信方式を実装する例示的なWUR STAの詳細なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、以下の図および実施形態を用いてより良く理解され得る。本明細書に記載された実施形態は、本質的に単なる例であり、本開示の可能性のある適用および使用の一部を説明するために使用されており、本明細書において明示的に説明されていない代替の実施形態に関して本開示を制限していると受け取られるべきではない。
【0013】
本開示は、無線信号が2つ以上の変調方式で変調される混合無線環境内のウェイクアップ信号の送信に関連するオーバーヘッドを減らすことを目標にしている。一例として、次のような状況が考えられる。バッテリ寿命を最大化するために、WURデバイスが長期間、WURモードで動作することが期待されている。WURモードの間、WURデバイスは、802.11フレームを受信できず、そのため、アソシエートされているアクセスポイント(AP:Access Point)とのクロック同期を徐々に失うことがある。そのようなクロック変動を軽減するために、何らかのタイミング情報を含むWURパケットを定期的な時間間隔でAPに送信させることは、有益である。しかし、そのようなパケットの頻繁な送信は、WURパケットの送信に関連するオーバーヘッドのため、ネットワークの混雑の悪化につながる。
【0014】
図1は、本開示が適用されてよい無線通信ネットワーク100の例を示している。無線通信は、IEEE802.11などの一般的な無線規格に基づいてよい。無線通信ネットワーク100は、1つのアクセスポイント(AP)110およびAP110にアソシエートされた3つの無線局(STA:stations)120、130、および140で構成されてよい。AP110は、802.11波形(例えば、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing))で無線信号を送信および受信することができ、ウェイクアップ無線(WUR)の波形(例えば、オンオフキーイング(OOK:On-Off Keying))で無線信号を送信することができる主接続無線(PCR)112を備える。STA120は、802.11信号を送信および受信できるPCR122のみを備えるレガシー802.11デバイスであり、一方、STA130および140は、両方ともWUR対応STAであり、PCR132および142をそれぞれ備えており、さらにウェイクアップ無線受信機(WURx:Wake-up radio receivers)134および144をそれぞれ備える。STA130および140は、802.11信号を送信および受信することができ、WUR信号を受信することもできる。PCR132および142は、アクティブ通信中にのみオンになってよく(PCRモード)、アイドルリスニングの期間中には、PCRがオフになってよく、WURx134および144のみが動作していてよい(WURモード)。AP110は、WURモードで動作しているSTAと通信する必要がある場合、各PCRをオンにしてWURxをオフにすることによってPCRモードに移行するようにSTAに指示するために、ウェイクアップ信号を最初に送信してよい。その後、APおよびSTAは、PCRを経由して通信を実行してよい。通信が終了した後に、STAは、PCRをオフにしてWURxをオンにすることによって、WURモードに再び切り替わってよい。
【0015】
図2は、IEEE802.11baタスクグループにおいて検討されているウェイクアップ信号送信方式を示している。ウェイクアップ信号は、ウェイクアップパケット(WURパケット)200として表されてよい。WURパケット200は、2つの個別の部分で構成される。第1の部分は、20MHzレガシー(non-high-throughput(HT)とも呼ばれる)802.11プリアンブル210およびダミーのOFDMシンボル218であり、これらは、20MHzのチャネル全体で、802.11OFDM波形で送信される。第2の部分は、ウェイクアップパケット(WUP:wake-up packet)ペイロード220であり、20MHzのチャネル内のより狭いサブチャネル(例えば、4MHzのサブチャネル)内をWUR OOK波形で送信される。
図2では単一のWUPペイロード220のみが示されているが、2つ以上(例えば、3つ)のWUPペイロードが、20MHzのチャネル内の異なる重複しないサブチャネル上を送信されることも可能である。
【0016】
レガシー802.11プリアンブル210は、WUR信号を理解しないレガシー802.11のSTAとの共存を可能にする。プリアンブル210は、non-HTショートトレーニングフィールド(L-STF)212、non-HTロングトレーニングフィールド(L-LTF)214、およびnon-HTシグナルフィールド(L-SIG)216をさらに含む。L-SIG216は、WUPペイロード220の長さに関する情報を含み、レガシー802.11デバイスが、正しい期間の間、送信を延期できるようにする。二値位相偏移変調(BPSK:Binary Phase Shift Keying)で変調された4マイクロ秒の期間のダミーの20MHzOFDMシンボル218が、L-SIG216の直後に送信され、802.11nのデバイスがWURパケット200を802.11nのパケットであるとして誤ってデコードするのを防ぐ。
【0017】
WUPペイロード220は、実際のウェイクアップ信号を運び、ウェイクアッププリアンブル(wake-up preamble)222およびWURペイロード224を含む。ウェイクアッププリアンブル222は、自動利得制御(AGC:automatic gain control)、タイミング同期、パケット検出などに使用され、WURペイロード224は、制御情報を運ぶ。WURペイロード224は、WURフレームと呼ばれることもあり、フレームタイプ、ネットワーク識別番号、送信機識別番号、受信機識別番号、フレームチェックシーケンス(FCS:Frame check sequence)、およびフレームタイプに応じたその他の制御情報などの、さまざまなサブフィールドでさらに構成されてよい。
【0018】
前述したように、WURモードで動作しているSTAのクロック変動を最小限に抑えるために、何らかのタイミング情報を含むWURパケットを定期的な時間間隔でAPに送信させることは、有益である。そのような特殊なWURパケットは、WURビーコンと呼ばれることがある。加えて、WURビーコンは、すべてのWUR STAに役立つ追加のフィールドを含んでよく、または、APの検出用や、WUR STAがAPとのアソシエーションを維持するためのキープアライブWUR信号、などとして使用されてもよい。
【0019】
図3は、AP110による、802.11ビーコンフレームおよびWURビーコンフレームの定期的な送信を示すフレーム送信シーケンス300を示している。802.11ビーコンフレーム320は、ビーコン間隔330と呼ばれる定期的な間隔で送信され、無線ネットワーク100に関する極めて重要な情報を含む。WURビーコン340も、WURビーコン間隔350と呼ばれる定期的な間隔で送信される。802.11チャネルアクセスルールに従って、802.11ビーコン320およびWURビーコン340の送信の前に、ネットワークトラフィックの増加と共に通常は増加する期間を含む、時間的に変化する競合期間310が先行する。競合期間310は、フレーム間間隔(IFS:Interframe Space)と呼ばれる確定的な部分およびバックオフスロットと呼ばれるランダムな部分で構成される。また、
図2に示されているように、WURビーコンがWURパケットフォーマット200で送信される場合、レガシー802.11プリアンブル210およびD-SIG218で構成されているOFDM送信に起因する、合計で24マイクロ秒になる追加のオーバーヘッドが存在する。WUR STAがWURビーコンを頻繁に受信するのは有益であるが、競合期間およびOFDM送信のオーバーヘッドは、ビーコン間隔330と比較して非常に長い間隔でAPがWURビーコンを送信する原因となり得る。WURビーコンは単なる例であり、送信オーバーヘッドの縮小が他のWURパケットにとっても有益であるということに留意されたい。
【0020】
上記の知識に基づいて、本出願の発明者は本開示に至った。本開示は、無線信号が2つ以上の変調方式で変調される混合無線環境内のウェイクアップ信号の送信に関連するオーバーヘッドを減らすのを容易にすることができる通信装置および通信方法を開示する。
【0021】
後のセクションでは、本開示を詳細に説明するために、複数の実施形態例が詳細に説明される。以下のセクションでは、本開示に従って送信オーバーヘッドを縮小するためのさまざまな実施形態が詳細に説明される。
【0022】
<第1の実施形態>
前述したように、
図2の提案されたフォーマット200でのWURパケットの送信に関連するオーバーヘッドの主要な発生源が2つある。1つは、
図3の競合期間310に対応するチャネル競合のオーバーヘッドであり、もう1つは、
図2に示されているレガシー802.11プリアンブル210およびD-SIG218で構成されているOFDM送信に起因するオーバーヘッドである。チャネル競合の手順は802.11チャネルアクセスメカニズムの不可欠な部分であるが、進行中のトラフィックが極めて大量に存在する厳しい状況では、WURパケットの送信が、長い遅延を被るか、またはチャネル競合が生じている間に媒体にアクセスできなくなることさえある。また、前述したように、
図2のレガシー802.11プリアンブル210をWURパケットの第1の部分として送信する主な目的は、WUR信号を理解しないレガシー802.11STAとの共存を可能にすることである。同様に、他の第三者の802.11デバイスを騙すために、D-SIGフィールド218がOFDMで送信される。これらのフィールドは、どちらも、WUR STAの情報を何も含まない。
【0023】
図4を参照すると、送信方式400に示されているようにWUPペイロードが送信された場合、前述したオーバーヘッドを両方とも除去できる。
図2に示されているように独立したWURパケット200としてWUPペイロード420を送信する代わりに、WUPペイロード420が、別の802.11PHYプロトコルデータユニット(PPDU:PHY protocol data unit)410にピギーバックされる。802.11PPDU410は、WUPペイロード420の送信時間に近接して送信されるようにスケジューリングされた任意の802.11パケットであることができる。一例として、802.11PPDU410は、non-high-throughput(non-HT)PPDUであってよく、レガシー802.11プリアンブル412および802.11PHYサービスデータユニット(PSDU:PHY Service Data Unit)414を含む。
図4に示されていないが、802.11PPDU410は、802.11PSDU414の直後に、テールビット、フィルビットなどを含んでもよい。代替として、802.11デバイスタイプに応じて、802.11PPDU410は、high-throughput(HT)PPDU、またはvery high throughput(VHT)PPDU、またはhigh efficiency(HE)PPDUであってもよい。802.11PPDU410は、non-HTフォーマットでない場合、レガシー802.11プリアンブル412と802.11PSDU414の間に追加のプリアンブル(例えば、HT PPDU内のHTプリアンブル、またはVHT PPDU内のVHTプリアンブル、またはHE PPDU内のHEプリアンブルそれぞれ)を含んでよい。開示された送信方式によれば、802.11PPDU410の送信終了時に直ちに、WUPペイロード420がWUR波形(例えば、OOK)で送信される。WUPペイロード420は、
図2のWUPペイロード220と同じであり、ウェイクアッププリアンブル422およびWURペイロード424を含む。
【0024】
図5は、提案された送信方式の特定の例500を示している。
図3において前述したように、WUR対応APは、WURビーコンと呼ばれる特殊なタイプのWURパケットを定期的な間隔で送信し、WUR STAがAPとの緊密な時間同期を維持できるようにしてよい。オーバーヘッドを縮小するために、WURビーコンは、やはりAPによって定期的に送信される選択された802.11ビーコンにピギーバックされ得る。
【0025】
代替として、WURビーコンのサブタイプと見なされてよい、WUR SYNCと呼ばれる新しいタイプのWURパケットが定義され得る。
図5のWUR SYNCパケット520は、長期間、WURモードで動作することのあるWUR STAが直面するクロック変動問題を軽減する目的のために構築された。WUR SYNC520は、時間同期に必要なフィールドのみを含んでよい。そのようなフィールドは、WURパケットの検出に使用されるウェイクアッププリアンブル522、WURパケットのタイプを示すためのタイプフィールド524、WURパケットの送信機を識別するためのTIDフィールド526、APによって維持される時間同期機能(TSF:Time Synchronization Function)の選択されたビットを運ぶ部分TSF(P-TSF:partial-TSF)フィールド528、およびWURペイロード内のビットのエラー検出/補正用のフレームチェックシーケンス(FCS:Frame Check Sequence)フィールド530を含む。これらのフィールドの一部が存在しなくてもよく、例えば、ウェイクアッププリアンブル522がAPの識別番号または基本サービスセット(BSS:Basic Service Set)カラーをシグネチャシーケンスフィールドとして使用する場合、TIDフィールド526は存在する必要がない。WUR SYNCが非常に小さく、802.11ビーコンフレーム510にピギーバックされる場合、そのWUR SYNCは非常に頻繁に送信され得る。
【0026】
802.11無線ネットワークでは、通常は、802.11ビーコンフレーム510がnon-HT PPDUフォーマットで送信される。non-HT PPDUでは、レガシー802.11プリアンブル512のL-SIGフィールドが、ビーコンフレームを含むPPDU510のペイロード部分の長さを示すために使用される。この情報が、MACヘッダ514およびペイロード518を含むビーコンフレームを正しく受信するために、802.11STAによって使用される。しかし、レガシープリアンブル512は、ピギーバックされたWURパケット(この例では、WUR SYNC)をレガシー802.11STAから保護することができない。これは、それらのSTAが、PPDU510の終了後に送信が継続されることを認識できないためである。
【0027】
WUR SYNCパケット520を保護する1つの方法は、WUR SYNCパケットの推定送信時間を、MACヘッダ514のDurationフィールド516に含めることである。802.11STAは、802.11ビーコンを含むPPDU510を受信したときに、そのネットワーク割り当てベクトル(NAV:Network Allocation Vector)カウンタを、802.11仮想チャネルセンシングルールに従って、Durationフィールド516の値で更新する。このルールに従って、STAは、NAVカウンタが0以外である限り、何かを送信することを許可されない。WURパケットがピギーバックされるホストPPDU(すなわち、802.11PPDU)がHT PPDUフォーマットで送信される場合、PPDUペイロードの実際の長さは、HTプリアンブルのHT-SIG1フィールドで示される。そのような場合、ピギーバックされたWURパケットは、レガシープリアンブル512のL-SIGフィールドを、ピギーバックされたWUR SYNCパケットの終了までの時間を示す値に設定することによって、保護され得る。ホストPPDUがVHT PPDUフォーマットまたはHE PPDUフォーマットで送信される場合、non-HT PPDUと同様に、MACヘッダ514のDurationフィールド516が、ピギーバックされたWURパケットを保護するために使用され得る。ピギーバックされたWURパケットのサイズが固定されており、無線ネットワーク100内のすべての802.11STAによって事前に知られていると仮定すると、さらに別の保護方法は、MACヘッダ514内の1ビット(ピギーバックビット)を使用して、ピギーバックされたWURパケットの存在を示すことである。ホストPPDU510を受信する802.11準拠のSTAは、ピギーバックビットによって、ピギーバックされたWURパケット520の存在を認識し、WURパケット520の終了まで送信を延期する。
【0028】
図6は、本開示をピギーバックされたWUR SYNCパケットの送信に使用する方法の例として、フレーム送信のシーケンスを示している。競合遅延が、610として表されており、すべての独立した送信に先行している。WUR対応AP110は、802.11ビーコンフレーム620を、ビーコン間隔630と呼ばれる定期的な間隔で送信し、ビーコン間隔630は、標準的な実施状況では、通常、100ミリ秒に設定される。ビーコンフレーム620の期待される送信時刻は、目標ビーコン送信時刻(TBTT:Target Beacon Transmission Time)と呼ばれ、APにアソシエートされたすべてのSTAに知られている。802.11ビーコンフレームは、PCRモードで動作しているSTAを対象にする。また、AP110は、WURビーコンパケット640を、WURビーコン間隔634と呼ばれる間隔で送信し、WURビーコン間隔634は、ビーコン間隔630よりはるかに大きくてよい(例えば、10秒であってよい)。APは、ビーコンフレームなどの共用のフレーム内でWURビーコン間隔634を通知してよく、またはWURモードのネゴシエーション中に、WURビーコン間隔634がWUR STAに知らされてよい。WURビーコンパケットは、WURモードで動作しているSTAを対象にする。
【0029】
TBTTの一部で、APは、802.11ビーコンフレームを、ピギーバックされたWUR SYNCパケット650と共に送信することを決定してもよい。そのようなピギーバックされたWUR SYNCパケットは、必要な頻度で送信されてよく、またはSYNC間隔632と呼ばれる定期的な間隔で送信されてもよい。ピギーバックされたWUR SYNCパケットの送信ではオーバーヘッドがより少ないため、SYNC間隔632は、WURビーコン間隔634よりはるかに小さくてよく、例えば、1秒または200ミリ秒(200ミリ秒の場合は、1つおきの802.11ビーコンフレームが、ピギーバックされたWUR SYNCパケット650を運ぶ)であってよい。時にはAPがピギーバックされたWUR SYNCパケット650をうまく送信することができないこともあり得るが、そのときは、代わりに、チャネルアクセス競合の後にWURビーコンパケット640を送信してもよい。
【0030】
AP110は、
図17に示されているようなパケットスケジューラ1770を実装してよく、パケットスケジューラ1770は、
図2の送信方式200を使用してWURパケットを送信するか、または
図4のピギーバックされた送信方式400を使用して送信するかの決定を行う。パケットスケジューラ1770がWURパケットをピギーバックするタイミングをどのように決定するかは、APとの頻繁な時間同期を必要とするアソシエートされたWUR STAの数、BSSの合計負荷、ホスト802.11パケットの頻度およびパケット長などの、多くの要因によって決まってよい。
図6の例の場合、パケットスケジューラ1770は、WURパケットをピギーバックするタイミングを、次に基づいて決定してよい。
【0031】
1.ホスト802.11パケットの長さ。例えば、802.11ビーコンフレーム620が特定のしきい値(例えば、800μS)より短い場合、APは、ピギーバックされたWUR SYNCパケット650を、ビーコンフレームと共に送信する。
【0032】
2.ピギーバックされたパケットの全長。例えば、802.11ビーコンパケット620にピギーバックされたWUR SYNCパケット650を加えたものの合計送信時間が特定のしきい値(例えば、1000μS)より短い場合、APは、ピギーバックされたWUR SYNCパケット650を、ビーコンフレームと共に送信する。
【0033】
3.BSSの負荷が高く、WUR SYNCパケットを頻繁に(例えば、1つおきのビーコン間隔で)送信する必要がある場合、APは、競合のオーバーヘッドを省くために、1つおきのビーコンフレームと共に、ピギーバックされたWUR SYNCパケットを送信する。
【0034】
4.STAのWUR動作モード。パケットスケジューラは、WUR STAの動作モード(例えば、デューティサイクルモードで動作しているWUR STAは、頻繁なWUR SYNCパケットを必要としないことがある)、またはWUR動作パラメータ(例えば、TSFの精度が非常に低いWUR STAは、非常に頻繁なWUR SYNCパケットを必要とすることがある)などの要因を考慮してもよい。
【0035】
パケットスケジューラ1770のピギーバックされたWURパケットを送信する決定は、WUR STAの対応機能によって決まってもよい。
図7は、PCRを使用するAP110とWUR対応STAの間でWURモードをネゴシエートするために使用されてよいWURアクションフレーム700のフレーム本体のフォーマットを示している。アクションフレームは、802.11管理フレームのサブカテゴリであり、通常はネゴシエーション(例えば、ADDBA、WNMなど)に使用される。WUR STAがAPとのWURネゴシエーションを開始するために、「WUR要求フレーム」と呼ばれるWURアクションフレームが定義されてよい。同様に、APがそのような要求に応答するために、「WUR応答フレーム」と呼ばれるWURアクションフレームが定義されてよい。
【0036】
カテゴリフィールド、WURアクションフィールド、およびダイアログトークンフィールドの他に、WURアクションフレームは、WURモードエレメント710、WURケイパビリティエレメント712、およびその他のエレメントを含んでよい。WURモードエレメントフィールド710は、STAのウェイクアップ遅延(ウェイクアップパケットの受信時に、STAがPCRモードに切り替わるために必要な時間として定義される)、またはデューティサイクルモードに関連するパラメータなどの、WURモードのネゴシエーションに関連するWUR情報を運ぶために使用されてよい。WURケイパビリティエレメント712は、WURの対応機能を示すために、STAおよびAPによって使用されてよい。WURケイパビリティフィールド720の「ピギーバックされたWURパケットの受信/送信」ビット730は、ピギーバックされたWURパケットを送信するAPの能力またはピギーバックされたWURパケットを受信するSTAの能力を示すために使用されてよい。
【0037】
STAが、ピギーバックされたWURパケットを受信できることを示している場合、STAが多段ウェイクアップ受信機アーキテクチャ(multi-stage wakeup receiver architecture)を実装していれば、WURケイパビリティフィールド720は、「WURプリアンブル検出期間」フィールド740を含んでもよい。「WURプリアンブル検出期間」とは、多段ウェイクアップ受信機アーキテクチャを実装しているWUR STAが、WURモードで動作しているときに、十分なエネルギーの無線信号の受信時に、有効なWURプリアンブルの探索を試みる期間のことを指している。代替として、WURケイパビリティエレメント712は、802.11ビーコンフレーム、802.11関連性フレームなどに含まれてもよい。APは、STAがピギーバックされたWURパケットを受信できることがWURケイパビリティフィールド720で示された場合にのみ、ピギーバックされたWURパケットをSTAに送信してよい。
【0038】
多段ウェイクアップ受信機アーキテクチャの一例が、
図19で開示されている。WUR STA1900は、802.11OFDM信号を送信および受信するためのPCR装置(以下では、単に「PCR」と呼ばれる)1960と、WUR信号を受信するためのWUR装置(以下では、単に「WUR」と呼ばれる)1910という、2つの個別の無線機を備える。WUR1910は、3段階のウェイクアップアーキテクチャを実装し、RF/アナログフロントエンド1912、エネルギー検出モジュール1914、WURプリアンブル検出モジュール1916、WURパケットデコーディング/処理モジュール1918、および電力制御モジュール1920などの、複数のサブコンポーネントで構成されている。
【0039】
RF/アナログフロントエンド1912は、アナログ無線信号をアンテナ1902から受信する責任を負う。エネルギー検出モジュール1914は、受信された信号の信号強度を監視する責任を負う。WURプリアンブル検出モジュール1916は、ウェイクアップ信号のプリアンブル部分を検出してデコードする責任を負う。WURパケットデコーディング/処理モジュール1918は、ウェイクアップ信号のペイロード部分をデコードして処理する責任を負う。最後に、電力制御モジュール1920は、他のモジュールの電力状態を管理する責任を負う。エネルギー検出モジュール1914は、OOK復調器として使用されてもよい。これらのサブコンポーネントのうち、WURパケットデコーディング/処理モジュール1918のみが、中央処理装置(CPU:central processing unit)を使用する必要があることがあり、他のサブコンポーネントは、電力を節約するためにハードウェアで実装されてよい。
【0040】
WUR STA1900がWURモードで動作している場合、電力消費レベルに従って、3つの異なる動作段階が定義されてよい。
【0041】
WURエネルギー検出段階と呼ばれる第1の段階では、RF/アナログフロントエンド1912、エネルギー検出モジュール1914、電力制御モジュール1920、および最も重要なコンポーネント(クロック発振器など)のみが、アクティブな状態で動作しており、一方、WURプリアンブル検出モジュール1916およびWURパケットデコーディング/処理モジュール1918がオフになっている。このモードでは、WUR STAは最も少ない電力量を消費する。
【0042】
WURプリアンブル検出段階と呼ばれる第2の段階では、WURプリアンブル検出モジュール1916がアクティブな状態であり、一方、WURパケットデコーディング/処理モジュール1918がオフになっている。
【0043】
WURパケットデコーディング/処理段階と呼ばれる第3の段階では、WURパケットデコーディング/処理モジュール1918がアクティブな状態であり、一方、エネルギー検出モジュール1914およびWURプリアンブル検出モジュール1916がオフになっていてよい。WURパケットデコーディング/処理モジュール1918がCPUを使用することがあるため、この段階は、3つの段階のうちで最も電力を消費する。
【0044】
図8のフローチャート800を使用して、開示された多段ウェイクアップ受信機の動作をさらに適切に説明することができる。第1の段階(WURエネルギー検出段階)では、WUR STAがWURアイドルリスニングモードで動作しているときに、さらに電力を節約するために、RF/アナログフロントエンド1912、エネルギー検出モジュール1914、電力制御モジュール1920、およびその他の重要なコンポーネントのみがアクティブな状態であり、一方、他のモジュールは、極めて少ない電力を消費する待機モードになっている。ステップ810で、エネルギー検出モジュール1914が、RFフロントエンドから受信された信号のエネルギーレベルを継続的に監視し、エネルギーレベルにおける急激な変化が検出されたときに、電力制御モジュール1920が警告され、プロセスが第2の段階に移行して、ステップ820に進む。
【0045】
第2の段階(WURプリアンブル検出段階)のステップ820で、電力制御モジュール1920がエネルギー検出モジュール1914をオフにして、WURプリアンブル検出モジュール1916をアクティブにし、プロセスがステップ822に進む。ステップ822で、タイマ値がSTAの「WURプリアンブル検出期間」の値に設定されて、WURプリアンブル検出期間タイマが開始され、プロセスがステップ824に進む。ステップ824で、WURプリアンブル検出モジュール1916が、「WURプリアンブル検出期間」内に受信されたWUR信号が有効なWURプリアンブルを含むことを検出した場合、プロセスが第3の段階に移行してステップ830に進み、そうでない場合、プロセスがステップ826に進む。ステップ826で、電力制御モジュール1920がWURプリアンブル検出モジュール1916をオフにし、プロセスがステップ828に進む。有効なWURプリアンブルとは、自BSSまたは自WUR STAに割り当てられたシグネチャシーケンスに一致するシグネチャシーケンスフィールドなどのフィールドを含むプリアンブルのことを指している。
【0046】
第3の段階(WURパケットデコーディング/処理段階)のステップ830で、電力制御モジュール1920が、WURプリアンブル検出期間タイマを停止し、WURプリアンブル検出モジュール1916をオフにして、WURパケットデコーディング/処理モジュール1918をアクティブにし、プロセスがステップ832に進む。ステップ832で、WURパケットデコーディング/処理モジュール1918が、WURパケットのペイロード部分をデコードし、FCSが有効であることを確認すること、パケットが対応APによって送信されたかどうかを判定すること、および自STAがWURパケットの受信者のうちの1つとして含まれているかどうかをさらに判定することなどの、チェックを実行してよい。WURパケットが有効であり、その宛先が自STAであるということが決定された場合、WURパケットデコーディング/処理モジュール1918は、WURパケットに含まれるP-TSFフィールドがもしあれば、そのフィールドに基づいてローカルのクロックを更新してもよい。最後に、WURパケットが、PCRモードに変更するようにSTAに対して要求しているということが決定された場合、プロセスがステップ840に進み、そうでない場合、プロセスがステップ834に進む。ステップ834で、電力制御モジュール1920がWURパケットデコーディング/処理モジュール1918をオフにし、プロセスがステップ828に進む。ステップ828で、電力制御モジュール1920がエネルギー検出モジュール1914をアクティブにし、WURが第1の段階に戻り、受信された信号のエネルギーレベルを監視する。
【0047】
ステップ840で、WUR1910がアクティブ化信号をPCR1960に送信し、それ自身をオフにし、プロセスが終了する。電力制御モジュール1920は、PCR動作期間中、またはデューティサイクルモードの動作でのスリープ期間中に、RF/アナログフロントエンド1912、エネルギー検出モジュール1914、WURプリアンブル検出モジュール1916、およびWURパケットデコーディング/処理モジュール1918をさらにオフにしてよい。
【0048】
図9は、多段ウェイクアップ受信機アーキテクチャ1910の動作を示し、WURモードで動作するWUR対応APおよび2つのSTAを含む、例示的な送信/受信シーケンス900を示している。横軸は時間領域を表しており、縦軸は、さまざまな段階でWUR STAによって消費される電力を表している。最初に、STA1およびSTA2の両方が第1の段階(WURエネルギー検出段階)で動作しており、
図9の960によって示されている媒体のエネルギーレベルを継続的に監視している。
【0049】
時刻t0(
図9では940としても示されている)で、APが、宛先がWUR STA1であるピギーバックされたWUPペイロード920を含む802.11PPDU910の送信を開始する。STA1およびSTA2の両方のエネルギー検出モジュール1914が、エネルギーレベルにおける急激な変化を検出し、962によって示されている第2の段階(WURプリアンブル検出段階)に移行する。この段階で、STAのWURプリアンブル検出モジュール1916が、有効なWURプリアンブルの検出を試みる。
図9に示されているように、STA2は、STA1のWURプリアンブル検出期間970より比較的短いWURプリアンブル検出期間972を有している。
【0050】
時刻t1 944で、STA2のWURプリアンブル検出期間2072が終了し、STA2が、時刻t2(
図9では946として示されている)までWURエネルギー検出段階に戻り、時刻t2で、APが802.11PPDU910の送信を終了し、WUR波形でのWUPペイロード920の送信を開始する。STA2が、これをエネルギーレベルにおける急激な変化として検出し、そのWURプリアンブル検出モジュール1916を再開する。一方、STA1は、受信された信号からのWURプリアンブルの検出を継続的に試みる。
【0051】
時刻t3(
図9では948として示されている)で、STA1およびSTA2の両方のWURプリアンブル検出モジュール1916が、ウェイクアッププリアンブル922を検出して、有効であることを検証し、964によって示されている第3の段階(WURパケットデコーディング/処理段階)に移行する。この段階で、両方のSTAのWURパケットデコーディング/処理モジュールが、WURペイロード924をデコードし、時刻t4(STA1の950として示されている)で、STA1は、WUPペイロード920の宛先がそれ自身であることを決定し、そのためPCRをアクティブにしてWURをオフにし、一方、STA2は、それ自身がWUPペイロード920の受信者でないということを決定して、WURエネルギー検出段階に戻る。STA1は、PCRモード966にある間、802.11PPDU930をAPから受信し、要求された場合、確認応答フレームを送信し、その後、PCRをオフにしてWURモードに戻ってよい。
【0052】
この例で見られるように、STAは、3段階の受信機アーキテクチャを実装することによって、アイドルリスニング中に電力をさらに節約することができる。また、STAがWURプリアンブル検出期間として選択する値は、WURプリアンブル検出段階の間に消費される電力に影響を与える。WURプリアンブル検出期間の値が短いほど、電力消費に関しては好ましいが、WURプリアンブル検出期間は、少なくとも、レガシー802.11プリアンブルおよびウェイクアッププリアンブルの合計より長い必要がある。しかし、この値が短いと、STAが、802.11PPDUの終了とWUPペイロードの開始の間でのエネルギーレベルの差を検出できない場合に、ピギーバックされたWUPペイロードを失う危険が増すことがある。例えば、時刻t2 946で、STA2がWUPペイロード920の開始を検出できないことがあるという危険が存在する。
【0053】
WUR対応機能の交換中にSTAによって示される「WURプリアンブル検出期間」は、ピギーバックされたWURパケットをSTAに送信するというAPの決定に影響を与えることもある。例えば、「WURプリアンブル検出期間」がホスト802.11フレームの送信時間より長い場合、APは、802.11フレームにピギーバックされたWURパケットをSTAが受信できるということを、合理的に確認できる。しかし、「WURプリアンブル検出期間」がホスト802.11フレームの送信時間より短い場合、STAは、WURプリアンブル検出モジュール1916をオフにし、受信された信号のエネルギーレベルの監視に戻ることがあり、STAが802.11PPDUの終了とWUPペイロードの開始の間でのエネルギーレベルの差を検出できない場合、ピギーバックされたWUPペイロードを失う危険がある。したがって、STAによってWURケイパビリティ720で示される「WURプリアンブル検出期間」は、どの802.11フレームを、WURパケットをピギーバックするためのホストフレームとして使用するかの決定において、APにとって有用であることがある。
【0054】
図10を参照すると、表1000は、APのMACレイヤとPHYレイヤの間でWURパケットまたはWURペイロードの送信に使用される、物理レイヤ(PHY:Physical layer)サービスアクセスポイント(SAP:Service Access Points)を示している。PHY-WUR-DATA.requestプリミティブは、DATAをパラメータとして受け取り、MACサブレイヤからのWUPペイロードデータのオクテットをローカルのPHYエンティティに転送するために使用される。PHY-WUR-DATA.confirmプリミティブは、MACエンティティからPHYへのWURデータのオクテットの転送を確認するために、PHYによってローカルのMACエンティティに発行される。PHY-WUR-TXSTART.requestプリミティブは、WUR-TXVECTORをパラメータとして受け取り、WURパケットの送信を要求するために、MACサブレイヤによってPHYエンティティに発行される。WUR-TXVECTORは、WURパケットを送信するためにPHYエンティティに提供されるパラメータのセットを表す。ピギーバックされたWUPペイロードの場合、PHY-WUR-TXSTARTパラメータが省略されてよく、代わりに、ピギーバックされたWUPペイロードの送信に関連するパラメータが、ホスト802.11PPDUの送信を要求するために使用されるPHY-TXSTART.requestプリミティブのTXVECTORパラメータで、PHYに転送されてよい。PHY-WUR-TXSTART.confirmプリミティブは、WURパケットまたはWUPペイロードの送信の開始を確認するために、PHYによってローカルのMACエンティティに発行される。このプリミティブは、PHYが
図4のWUPペイロード420のウェイクアッププリアンブル422を送信した後に、発行される。PHY-WUR-TXEND.requestは、WURパケットの送信の終了を要求するために、MACサブレイヤによってPHYエンティティに発行される。PHY-WUR-TXEND.confirmは、WURパケットの送信の完了を確認するために、PHYによってローカルのMACエンティティに発行される。
【0055】
図11の表1100は、WURパケットまたはWUPペイロードの送信に使用されるパラメータを示している。第1の列はパラメータを示しており、第2の列には、それらのパラメータを含むことができる関連するパラメータベクトルが示されている。ADD-WURを除くすべてのパラメータはTXVECTORまたはWUR-TXVECTORのいずれに含まれてもよく、ADD-WURは、TXVECTORのみに含まれることができる。ADD-WURは、WURパケットまたはWUPペイロードが、PHY-TXSTART.requestプリミティブによって送信を要求されているPPDUにピギーバックされるかどうかをPHYに示すために、PHY-TXSTART.requestプリミティブで使用される。以下で説明されるように、ADD-WURに対して3つの列挙型が定義されている。
【0056】
・ADD-WUR-NOGAPは、このPPDUの直後に、どのフレーム間間隔(IFS)もレガシープリアンブルも伴わずに、ウェイクアップパケットのペイロード部分が続くことを示す。
【0057】
・ADD-WUR-GAPは、このPPDUの後に、一定数のOFDMシンボルのギャップに続いて、レガシープリアンブルを伴わずに、ウェイクアップパケットのペイロード部分が続くことを示す。
【0058】
・NO-ADD-WURは、このPPDUの後にWURパケットが続かないことを示す。
WURパケットの複数のフォーマットがサポートされる場合、WUR_FORMATパラメータがTXVECTORまたはWUR-TXVECTORに含まれてよい。WUR_FORMATは、WURパケットのフォーマットを示し、次の列挙型のうちの1つの値を取ってよい。
【0059】
・WUR_SUは、単一のWUPペイロードを含むWURパケットを示す。
【0060】
・WUR_MUは、複数のWUPペイロードを含むWURパケットを示し、各WUPペイロードの宛先が、異なるWUR STAである。
【0061】
・WUR_OFDMAは、OFDMAを使用して送信されるWURパケットを示す。
WUR_L_PREAMBLEパラメータは、802.11レガシープリアンブルがWUPペイロードの送信の直前に送信されるかどうかを、PHYに示す。WUR_L_PREAMBLEは、次の列挙型のうちの1つの値を取ってよい。
【0062】
・PRESENTは、802.11レガシープリアンブルがWUPペイロードの直前に存在することを示す。
【0063】
・NOT_PRESENTは、802.11レガシープリアンブルがWUPペイロードの直前に存在しないことを示す。
WUR_L_LENGTHパラメータは、802.11レガシープリアンブルの後に続くWUPペイロードの長さを示す。この値は、802.11レガシープリアンブルのL-SIGのLENGTHフィールドを設定するために使用される。802.11レガシープリアンブルのRATEフィールドは、6Mb/sに固定される。LENGTHフィールドおよびRATEフィールドが、組み合わさって、WUPペイロードの送信時間を示す。WUR_L_LENGTHパラメータは、WUR_L_PREAMBLEがPRESENTに設定された場合にのみ、パラメータベクトル内に存在する。
WUR_MODULATIONパラメータは、WUPペイロードのペイロード部分に使用される変調を示し、次の列挙型のうちの1つの値を取ってよい。
【0064】
・WUR_OOKは、OOK変調を示す。
【0065】
・WUR_BIPOLAR_OOKは、バイポーラ変調を示す。
WUR_LENGTHパラメータは、
図4のWURペイロード424(WUPペイロードのペイロード部分)の長さを示し、
図4のウェイクアッププリアンブル422内で伝えられる。
WUR_DATARATEパラメータは、
図4のWURペイロード424のデータ速度を示し、やはり
図4のウェイクアッププリアンブル422内で伝えられる。
【0066】
図12を参照すると、1200は、例示的なピギーバックされたWUPペイロードの送信でのPHY SAPプリミティブの使用を示している。MACエンティティは、パラメータベクトルTXVECTOR1204を含むPHY-TXSTART.requestプリミティブ1202を発行することによって、ホスト802.11PPDUの送信を開始するようにPHYに対して指示し、パラメータベクトルTXVECTOR1204は、PSDU1220の送信に必要なパラメータの他に、ピギーバックされたWUPペイロードの送信に関連する
図11の表1100に示されたパラメータを含む。この例では、各パラメータが次のように設定される。
【0067】
・ADD-WUR:ADD-WUR-NOGAPに設定される
・WUR_FORMAT:WUR_SUに設定される
・WUR_L_PREAMBLE:NOT_PRESENTに設定される
・WUR_L_LENGTH:存在しない
・WUR_MODULATION:WUR_OOKに設定される
・WUR_LENGTH:WUPペイロード1240のWURペイロード部分の長さに設定される。
【0068】
・WUR_DATARATE:WURペイロードに使用されるデータ速度に設定される。
【0069】
PPDUフォーマットに応じて、MACは、ピギーバックされたWUPペイロード1240の長さを考慮するように、A-MPDU1230のMACヘッダ内のDurationフィールド、またはTXVECTOR1204のL_LENGTHパラメータも設定する。PHYは、準備ができた後に、PPDUフォーマットに応じて、適切なPHYヘッダ1210を送信し、その後に、MACによって伝えられたA-MDPU1230を含むPSDU1220が続き、必要な場合、その後に、フィルビットおよびテールビットが続く。PHYは、802.11PPDUの送信の終了を伝えるために、PHY-TXEND.confirmプリミティブ1206を発行する。ADD-WURパラメータがADD-WUR-NOGAPに設定されているため、PHYがWUR送信モードに直ちに切り替わり、WUPペイロード1240のウェイクアッププリアンブル部分の送信を開始する。ウェイクアッププリアンブルの送信が完了したときに、PHYがPHY-WUR-TXSTART.confirmプリミティブ1260を発行する。
【0070】
PHY-WUR-TXSTART.confirmプリミティブ1260を受信すると、MACが、PHY-WUR-DATA.requestプリミティブ1262を発行することによって、一度に1オクテットずつのPHYへのWURペイロード1250の転送を開始し、一方、PHYが、データの転送を確認応答するために、PHY-WUR-DATA.confirmプリミティブ1264を発行する。MACは、PHYへのWURペイロード1250の転送を完了した後に、ピギーバックされたWUPペイロード1240の送信の終了を要求するために、PHY-WUR-TXEND.requestプリミティブ1266を発行する。PHYは、WUPペイロード1240の送信の終了を確認応答するために、PHY-WUR-TXEND.confirmプリミティブ1268を発行する。
【0071】
<第2の実施形態>
図13を参照すると、本開示を実装するための別の例示的な送信方式1300が示されている。
図9において前述したように、時刻t1(944として示されている)で、WURプリアンブル検出期間の終了時に、STA2がWURエネルギー検出段階に戻った場合、STA2が、時刻t2(946として示されている)で、802.11PPDU910の送信とWUPペイロード920の送信の間のエネルギーレベルの変化を検出できないことがあるという危険が存在する。この例では、802.11PPDU1310の送信の終了の直後にピギーバックされたWUPペイロード1320を送信する代わりに、PHYは、WUPペイロード1320を送信する前に、1330によって示されているような極めて短い期間、待機する。一例として、期間1330は、2つの802.11OFDMシンボルであることができ、これは8マイクロ秒になる。期間1330は、本明細書で定義された固定期間であってよく、またはAP110とWUR STAの間のWURネゴシエーション中に決定されてよい。
【0072】
このギャップが送信中に存在するため、WURエネルギー検出段階の間に、受信された信号のエネルギーレベルにおける急激な上昇の検出時に、WURプリアンブル検出段階への移行をトリガーするように、WUR受信機(WURx)を構成できる。これを、
図14の例示的な送信シーケンス1400を使用して、適切に説明できる。この例では、期間1330が2つのOFDMシンボル(8マイクロ秒)としてネゴシエートされている。STA1は、前述した3段階のウェイクアップ受信機アーキテクチャを実装しており、WURモードのアイドルリスニングの期間中にWURエネルギー検出段階に留まる。時刻t0(1440として示されている)で、APが、ホスト802.11PPDU1410の送信を開始し、これが、エネルギーレベルにおける急激な上昇のためにSTA1によって検出され、STA1はWURプリアンブル検出段階に移行する。しかし、STA1は、WURプリアンブル検出期間内に有効なウェイクアッププリアンブルを検出することができず、時刻t1(1442として示されている)で、STA1がWURエネルギー検出段階に戻る。その後、時刻t2(1444として示されている)で、802.11PPDU1410の送信が終了し、APのPHYが1412によって示されている2つのOFDMシンボル(8マイクロ秒)の間待機し、その後、時刻t3(1446として示されている)で、WUR波形でのWUPペイロード1420の送信を開始する。
【0073】
この送信が、STA2のWURxによって容易に検出できる、エネルギーレベルの急激な増加をもたらし、したがって、WURプリアンブル検出段階へのスムーズな移行を容易にする。このようにして、STAは、有効なウェイクアッププリアンブル1422の探索を開始することができ、その後、WURペイロードのデコードを開始してから、PCRモードに移行する。
【0074】
<第3の実施形態>
図15を参照すると、本開示を実装するためのさらに別の例示的な送信方式1500が示されている。この方式では、ホスト802.11PPDU1510が、802.11チャネルアクセスメカニズムに従って、独立して送信される。
【0075】
APは、ホスト802.11PPDUの送信の完了後に、短フレーム間間隔(SIFS:Short Interframe Space)1520の固定期間、待機してから、WURパケットのレガシー802.11プリアンブル部分1530を送信する。レガシー802.11プリアンブルの後に、二値位相偏移変調(BPSK)で変調された4マイクロ秒の期間のダミーの20MHzOFDMシンボルD-SIG1540の送信が続き、802.11nのデバイスがこのパケットを802.11nのパケットであるとして誤ってデコードするのを防ぐ。レガシー802.11プリアンブルは、D-SIGシンボルと共に、差し迫っているWUPペイロードの送信を、他の第三者のSTAに知らせ、意図されない送信の衝突を防ぐのに役立つ。
【0076】
最後に、WUPペイロード1550が、D-SIGシンボル1540の直後にWUR波形で送信される。ホスト802.11PPDUの後に、高々SIFS経過した後でWURパケットが送信されるため、他のSTAが無線チャネルにアクセスするのが防がれ、それと同時に、WURパケットの送信のためのチャネルアクセスのオーバーヘッドが回避される。
【0077】
図16を参照すると、1600は、送信方式1500でのPHY SAPプリミティブの使用を示している。MACエンティティは、PHYに対して、既存のPHY SAPプリミティブを使用してホスト802.11PPDU1610の送信を開始するよう指示する。PHYは、PPDU1610の送信の完了時に、PHY-TXEND.confirmプリミティブ1620を発行する。次に、MACは、パラメータベクトルWUR-TXVECTORを含むPHY-WUR-TXSTART.requestプリミティブ1630を発行することによって、WURパケットの送信を要求し、パラメータベクトルWUR-TXVECTORは、WUPペイロードの送信に関連する
図11の表1100に示されたパラメータを含む。この例では、各パラメータが次のように設定される。
【0078】
・WUR_FORMAT:WUR_SUに設定される
・WUR_L_PREAMBLE:PRESENTに設定される
・WUR_L_LENGTH:WUPペイロード1650の長さに設定される。
【0079】
・WUR_MODULATION:WUR_OOKに設定される
・WUR_LENGTH:WUPペイロード1650のWURペイロード部分の長さに設定される。
【0080】
・WUR_DATARATE:WURペイロードに使用されるデータ速度に設定される。
【0081】
PPDU1610の終了からSIFSが経過した時点で、PHYがレガシー802.11プリアンブル1640の送信を開始し、その後に、WUPペイロード1650のウェイクアッププリアンブル部分が続く。ウェイクアッププリアンブルの送信が完了したときに、PHYがPHY-WUR-TXSTART.confirmプリミティブ1660を発行する。PHY-WUR-TXSTART.confirmプリミティブ1660の受信時に、MACが、PHY-WUR-DATA.requestプリミティブ1662を発行することによって、一度に1オクテットずつのPHYへのWURペイロード1652の転送を開始し、一方、PHYが、データの転送を確認応答するために、PHY-WUR-DATA.confirmプリミティブ1664を発行する。MACは、PHYへのWURペイロード1652の転送を完了した後に、WUPペイロード1650の送信の終了を要求するために、PHY-WUR-TXEND.requestプリミティブ1666を発行する。PHYは、WUPペイロード1650の送信の終了を確認応答するために、PHY-WUR-TXEND.confirmプリミティブ1668を発行する。
【0082】
<アクセスポイントの構成>
図17は、本開示において説明されたピギーバックされた送信方式を実装する例示的なAPのPCR1700のブロック図である。APは、
図1のAP110であってよい。PCR1700はアンテナ1702に接続され、802.11信号の送信および受信に使用され、ウェイクアップ信号の送信にも使用される。PCR1700は、RF/アナログフロントエンド1710、PHY処理ユニット1720、MAC処理ユニット1750、WURペイロード生成器1740、PCRペイロード生成器1760、およびパケットスケジューラ1770を備える。
【0083】
RF/アナログフロントエンド1710は、アンテナ1702との間でのアナログ信号の伝達の責任を負い、自動利得制御(AGC)、ローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)、アナログ/デジタルコンバータ(ADC:Analog-to-Digital Converter)などのサブコンポーネントを含んでよい。
【0084】
PHY処理ユニット1720は、PHYレイヤ信号の処理の責任を負い、重要なサブモジュールであるOFDM変調器/復調器ユニット1730を含む。OFDM変調器/復調器1730は、送信信号の変調または受信されたOFDM信号の復調の責任を負う。
【0085】
送信側では、OFDM変調を802.11PPDUに適用することに加えて、選択されたOFDMサブキャリアにデータを投入することによって、OFDM変調器/復調器1720が、WUR信号(例えば、OOK)の生成にも使用される。同じモジュールを使用して802.11OFDM信号およびWUR波形の両方を生成することには、本開示において提示される送信方式にとって、さらに利点がある。一般に、異なる変調方式によって変調された2つの異なるパケットで構成される連続する連結された信号を生成することは、簡単ではない。しかし、APは、802.11信号およびWUR信号の両方を生成するように構成されたOFDM変調器/復調器1720を使用して、特殊な処理を伴わずに、連続する、連結されピギーバックされたパケットを生成することができ、それによって、変調された各信号の終了での波形の形成、変調された信号ごとの変調器の切り替え、信号の連結に関する厳しいタイミング制御などの、追加プロセスを省く。
【0086】
MAC処理ユニット1750は、再送、フラグメンテーション、集約などの、さまざまなMAC関連の処理の責任を負う。WURペイロード生成器1740およびPCRペイロード生成器1760は、WUR信号および802.11信号の生成の責任をそれぞれ負い、それらの動作は、802.11信号およびWUR信号を生成するタイミングを決定するパケットスケジューラ1770によって制御される。
【0087】
図18は、例示的なAP1800のより詳細なブロック図であり、AP1800は、
図1のAP110であってよい。AP1800は、メモリ1820に結合された中央処理装置(CPU)1830、二次ストレージ1840、1つまたは複数の無線通信インタフェース1850、およびその他の有線通信インタフェース1880を含む。二次ストレージ1840は、関連する命令コード、データなどを永続的に格納するために使用される不揮発性コンピュータ可読記憶媒体であってよい。
【0088】
CPU1830は、起動の時点で、命令コードおよび関連するデータを、実行のために揮発性メモリ1820にコピーしてよい。命令コードは、AP1800の動作に必要な、オペレーティングシステム、ユーザアプリケーション、デバイスドライバ、実行コードなどであってよい。命令コードのサイズ、したがって二次ストレージ1840およびのメモリ1820の両方の記憶容量は、STA2000の記憶容量より大幅に大きくてよい。
【0089】
AP1800は、電源1810を備えてもよく、電源1810は、ほとんどの場合、商用電源であってよいが、場合によっては、ある種の大容量バッテリ(例えば自動車用バッテリ)であってもよい。有線通信インタフェース1870は、イーサネット(登録商標)インタフェース、または電力線インタフェース、または電話線インタフェースなどであってよい。
【0090】
無線通信インタフェース1850は、セルラー通信用のインタフェース、またはZigbee(登録商標)などの短距離通信プロトコル用のインタフェースを含んでよく、あるいはWLANインタフェースであってよい。無線インタフェース1850は、MACモジュール1852およびPHYモジュール1860をさらに備えてよい。APのMACモジュール1852は、STA2000のMACモジュールより大幅に複雑であることがあり、多くのサブモジュールを備えることがある。サブモジュールの中でも特に、MACモジュール1852は、WURペイロード生成器1858、PCRペイロード生成器1854、およびパケットスケジューラ1856を含んでよい。PHYモジュール1860は、送信/受信信号との間でのMACモジュールのデータの変換の責任を負い、802.11OFDM信号の変調/復調およびWUR信号の変調に使用されるOFDM変調器/復調器1862を含む。無線インタフェースは、PHYモジュールを介して1つまたは複数のアンテナ1802に結合されてもよく、アンテナ1802は、無線媒体との間での無線通信信号の実際の送信/受信の責任を負う。
【0091】
APは、本開示に従って、明確にするために
図17および
図18に示されていない多くのその他のコンポーネントを備えてよい。本開示に最も関連するコンポーネントのみが、示されている。
【0092】
<STAの構成>
図19は、2つの別々の無線機(802.11OFDM信号を送信および受信するためのPCR1960、ならびにWUR信号を受信するためのWUR1910)を備える、WUR STA1900を示している。
【0093】
WUR1910は、アナログ無線信号をアンテナ1902から受信する責任を負うRF/アナログフロントエンド1912、受信されたウェイクアップ信号の信号強度を監視する責任を負うエネルギー検出モジュール1914、ウェイクアップ信号のプリアンブル部分を検出してデコードする責任を負うWURプリアンブル検出モジュール1916、ウェイクアップ信号のペイロード部分をデコードして処理する責任を負うWURパケットデコーディング/処理モジュール1918、および他のモジュールの電力状態をスケジューリングする責任を負う電力制御モジュール1920などの複数のサブコンポーネントを、さらに含む。
【0094】
PCR1960は、RF/アナログフロントエンド1962と、PHY処理ユニット1964と、MAC処理ユニット1968とを含む。RF/アナログフロントエンド1962は、アンテナ1902との間でのアナログ信号の伝達の責任を負い、自動利得制御(AGC)、ローパスフィルタ(LPF)、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)などのサブコンポーネントを含んでよい。PHY処理ユニット1964は、PHYレイヤ信号の処理の責任を負い、送信OFDM信号の変調または受信されたOFDM信号の復調の責任を負う重要なサブモジュールであるOFDM変調器/復調器1966を含む。
【0095】
図20は、本開示において説明された3段階のウェイクアップ受信機アーキテクチャを実装する例示的なSTA2000の詳細なブロック図であり、STA2000は
図1のSTAのうちの任意の1つであってよい。STA2000は、メモリ2020に結合された中央処理装置(CPU)2030、二次ストレージ2040、1つまたは複数のPCRインタフェース2050、およびWURインタフェース2060を含む。PCRインタフェース2050およびWURインタフェース2060の両方が、同じ無線アンテナ2002に接続されている。二次ストレージ2040は、関連する命令コード、データなどを永続的に格納するために使用される不揮発性コンピュータ可読記憶媒体であってよい。
【0096】
CPU2030は、起動の時点で、命令コードおよび関連するデータを、実行のために揮発性メモリ2020にコピーしてよい。命令コードは、STA2000の動作に必要な、オペレーティングシステム、ユーザアプリケーション、デバイスドライバ、実行コードなどであってよい。STA2000は、電源2010(例えば、リチウムイオンバッテリまたはコイン電池バッテリなど、または商用電源であってもよい)を備えてもよい。PCRインタフェース2050は、セルラー通信用のインタフェース、またはZigbeeなどの短距離通信プロトコル用のインタフェースを含んでよく、あるいはWLANインタフェースであってよい。
【0097】
PCRインタフェース2050は、MACモジュール2052およびPHYモジュール2054をさらに備えてよい。WURインタフェース2060は、アナログ無線信号をアンテナ20002から受信する責任を負うRF/アナログフロントエンド2062、受信されたウェイクアップ信号の信号強度を監視する責任を負うエネルギー検出モジュール2064、ウェイクアップ信号のプリアンブル部分を検出してデコードする責任を負うWURプリアンブル検出モジュール2068、ウェイクアップ信号のペイロード部分をデコードして処理する責任を負うWURパケットデコーディング/処理モジュール2070、およびWURインタフェース2060の他のサブモジュールの電力状態をスケジューリングする責任を負う電力制御モジュール2066などの複数のサブコンポーネントを、さらに含む。加えて、WURインタフェース2060は、WUR STAがWURプリアンブル検出段階にある時間を追跡するためのWURプリアンブル検出期間タイマ2072も保持し、WURパケットデコーディング/処理モジュール2070を駆動するために使用される低電力CPU2080も保持する。どの時点でも、無線インタフェースのうちの1つのみ(PCRインタフェース2050またはWURインタフェース2060のいずれか)が動作中であることが期待される。
【0098】
STAは、本開示に従って、明確にするために
図19または
図20に示されていない多くのその他のコンポーネントを備えてよい。本開示に最も関連するコンポーネントのみが、示されている。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本開示は、WURパケットの送信に関連するオーバーヘッドを縮小するために、無線装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
110、1800 AP
120 STA
130、140 WUR STA
122、132、142、1700、1960、2050 PCR
134、144、1910、2060 WUR
1702、1802、1902、2002 アンテナ
1710、1912、1962 RF/アナログフロントエンド
1720、1860、1964、2054 PHY処理回路
1730、1860、1966 OFDM変調器/復調器
1740、1858 WURペイロード生成器
1750、1850、1968、2062 MAC処理回路
1760、1854 PCRペイロード生成器
1770、1856 パケットスケジューラ
1810 電源
1820、2020 メモリ
1830、2030 CPU
1840、2040 二次ストレージ
1850 無線I/F
1870 有線通信I/F
1914、2064 エネルギー検出モジュール
1916、2068 WURプリアンブル検出
1918、2070 WURパケットデコーディング/処理モジュール
2010 電源
2066 電力制御モジュール
2072 WURプリアンブル検出期間タイマ