IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルケマ フランスの特許一覧 ▶ コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴの特許一覧

<>
  • 特許-電子機器保護用の吸収性材料 図1
  • 特許-電子機器保護用の吸収性材料 図2a
  • 特許-電子機器保護用の吸収性材料 図2b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】電子機器保護用の吸収性材料
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20231026BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231026BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231026BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231026BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20231026BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231026BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C09D133/14
B32B27/20 Z
B32B27/30 A
C09D7/61
C09D5/02
H01L23/30 R
H01L23/30 F
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019571463
(86)(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 FR2018051637
(87)【国際公開番号】W WO2019008259
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】1756307
(32)【優先日】2017-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン テシエ
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル イダルゴ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン クロ
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2002/057385(WO,A1)
【文献】特表2016-522106(JP,A)
【文献】特開2013-087259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 133/14
B32B 27/20
B32B 27/30
C09D 7/61
C09D 5/02
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の不飽和カチオン性モノマーから誘導された繰り返し単位を有するポリマーPを含む組成物の、電子機器の保護のための使用であって、ここで
-該電子機器は少なくとも1種の電子部品、および封入構造体を含み、上記組成物は該封入構造体中で層の形態にあり;
-該不飽和カチオン性モノマーが、下記式(II):
【化1】
(式中、Rは少なくとも1つの負の対イオンと結合した、カチオン性機能を有する基である)の(メタ)アクリル酸から誘導され;そして
-ポリマーP中の該不飽和カチオン性モノマーから誘導された繰り返し単位の重量比率が50~100%である、使用。
【請求項2】
上記不飽和カチオン性モノマーが、下記式(I):
【化2】
(上記式中、RはC1~C6、好ましくはC2~C4の2価炭化水素基であり、各R基は、それぞれ独立してC1~C6、好ましくはC1~C3のアルキル基であり、そしてXは1価アニオン、好ましくはハロゲンアニオン、そして更に好ましくは臭素又は塩素アニオンであり;該不飽和カチオン性モノマーは更に特に、塩化アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム及び塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムから選ばれ;そして該不飽和カチオン性モノマーは更に好ましくは塩化アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムである)
のモノマーである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ポリマーPが架橋され、そして好ましくはポリマーPはトリメチロールプロパントリアクリレート、N,N-メチレン-ビス(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド及び/又は(ポリ)エチレングリコール-ジメタクリレートから誘導される繰り返し単位を含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
ポリマーP中の不飽和カチオン性モノマーから誘導された繰り返し単位の重量比率が70~90%である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
ポリマーPが少なくとも1種の不飽和非イオン性モノマー、好ましくは(メタ)アクリルモノマー、更に好ましくは(メタ)アクリルエステル、例えばメタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチル、から選ばれた少なくとも1種の不飽和非イオン性モノマーから誘導された繰り返し単位を含むコポリマーである、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
上記組成物がまた、非水溶性ポリマーP’の粒子をも含み、該ポリマーP’は好ましくは(メタ)アクリルモノマー、特に(メタ)アクリルエステル、例えばメタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチル、スチレン及びその誘導体、酢酸ビニル、アクリロニトリル及びそれらの組み合わせから選ばれた1種又はそれ以上のモノマーから誘導された繰り返し単位を含み、ポリマーPとポリマーP’との合計に対するポリマーP’の相対的重量比率が好ましくは10~60%、更に好ましくは20~40%である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
上記組成物が、無機充填剤、好ましくは炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、ベーマイト、ポリシリケートおよびそれらの混合物から選ばれる無機充填剤を含み、該組成物中の該無機充填剤の重量含有量が好ましくは1~50%、更に好ましくは2~20%である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
上記組成物が液体担体、好ましくは水および/又はアルコールを、好ましくは2~50%の重量含有量、更に好ましくは5~35%の重量含有量で含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
電子機器を、水又は二酸化炭素による溶解、腐食および酸化に対して保護するための、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
上記電子機器がトランジスター、チップ、バッテリー、光電池、発光ダイオード、有機発光ダイオード、センサー、作動器、変換器及び光検出器から選ばれ;好ましくは光電子機器、更に好ましくは有機発光ダイオード又は有機光電池である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
上記電子機器が少なくとも1つの電子部品、上に該電子部品が配置される基板、および封入構造体を含み、上記組成物は該封入構造体中に層の形態にある、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
少なくとも1つの電子部品、場合によってはその上に該電子部品が配置される基板、および請求項1ないし8のいずれか1項に記載の組成物の少なくとも1層を含む封入構造体を含む、電子機器。
【請求項13】
上記組成物の層が、上記電子部品および/又は任意の基板の上および/又は下に、該電子部品および/又は該基板と直接接触して、又は好ましくは平坦化層および/又は接着剤層である中間層上に配置される、請求項12に記載の電子機器。
【請求項14】
上記封入構造が、上記電子部品および/又は基板から距離をおいて且つ周りに、しかし該電子部品および/又は基板の上又は下にではなく配置された、請求項12又は13に記載の電子機器。
【請求項15】
上記封入構造体が、電子部品および任意の基板のいずれかの側の面上の少なくとも1つのガスバリアフィルム、好ましくは2つのガスバリアフィルムと、該2つのガスバリアフィルムの間に配置された上記組成物の少なくとも1層とを含む、請求項12ないし14のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項16】
上記電子機器が、トランジスター、チップ、バッテリー、光電池、発光ダイオード、有機発光ダイオード、センサー、作動器、変換器及び光検出器から選ばれ;そして好ましくは光電子機器であり、そして更に好ましくは有機発光ダイオード又は有機光電池である、請求項12ないし15のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項17】
請求項12ないし16のいずれか1項に記載の電子機器、好ましくはテレビジョンセット、携帯電話、硬質スクリーン、可撓性スクリーン、光電池モジュール、照明源、センサーおよびエネルギー変換器から選ばれた該電子機器の1つ又はそれ以上を含む装置。
【請求項18】
請求項12ないし16のいずれか1項に記載の電子機器の製造法であって、場合によっては基板上に配置された電子部品の提供と、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の組成物の層を付着させるための少なくとも1つのステップを含む封入構造体の形成とを含む製造法。
【請求項19】
上記組成物の層を電子部品および/又は基板の上に直接付着させることを含み;そして/又は好ましくは平坦化層および/又は接着剤層である少なくとも1つの中間層を該電子部品および/又は基板上に付着させ、次にこの中間層上に該組成物の層を付着させることを含む、請求項18に記載の製造法。
【請求項20】
-ガスバリアフィルムを提供し、該フィルム上に電子部品および任意の基板の組立品を取り付けるか;又は
-好ましくは、2つのガスバリアフィルムを提供し、そしてその間に該電子部品および任意の該基板の組立品を取り付ける
ことを含む、請求項18又は19に記載の製造法。
【請求項21】
-上記組成物の層を電子部品および/又は取り付け前の基板の全部又は一部の上に付着させ;そして/又は
-上記組成物の層を取り付け前のガスバリアフィルムの全部又は一部の上に付着させ、該組成物のこの層は、好ましくは、電子機器および/又は基板と接触するように意図されていない該ガスバリアフィルムの一つ又はそれ以上の区域に付着させる
ことを含む、請求項20に記載の製造法。
【請求項22】
上記組成物が液体担体、好ましくは水および/又はアルコール、を含み、そして上記方法が、該液体担体を該組成物の層を付着させた後に蒸発させるステップを含み、蒸発後、上記組成物中の液体担体の含有重量が好ましくは2~50%、更に好ましくは5~35%である、請求項18ないし21のいずれか1項に記載の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、特に光電子機器の保護、特に物理化学起源の潜在的攻撃に対する保護、に使用できる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器とは、場合により基板上に配置された、単一の電子部品又は電子部品の組立品であって、電子回路中で1つ又はそれ以上の機能を果たすことができるものを意味する。
【0003】
好ましくは本発明で、電子機器は更に特定的には光電子機器、即ち電磁波放射線を発生、検出又は制御できる光電子機器である。
【0004】
本発明が関係する電子機器又は光電子機器の例は、トランジスター、チップ、バッテリー、光電池、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、センサー、作動器、変換器及び検出器である。
【0005】
電子機器及び光電子機器は電子装置、設備又は部分組立品の数多くの品目に、及び数多くの目的及び応用、例えばテレビジョンセット、携帯電話、硬質の又は可撓性のスクリーン、薄層光電池モジュール、照明源、センサー及びエネルギー変換器等、に使用されそして組み込まれている。
【0006】
電子機器及び光電子機器は、それらの閉鎖された環境、例えば液体又は気体、例えば水蒸気及び二酸化炭素、の侵入、により引き起こされるか、又は衝撃、熱機械的ストレス、特に温度変化に関係する熱機械的ストレス、摩擦並びに粒子及びその他の異物との接触等により引き起こされる物理化学的攻撃の後に、非常にしばしば劣化し、損傷し、それらの効能を失うか、又は機能しなくなり易い。
【0007】
これらの問題を防止するために、電子機器を、しばしば多層積層体の形態に関連した固体保護層で被覆又は封入することが知られており、ここで組立品(アセンブリー)の各層は、該機器を特に水又は二酸素のような大気中の酸化剤に対して保護するための特定の機能を有する。
【0008】
特に、電子機器に接着剤によりガスバリア(障壁)フィルムを積層することが知られている。ガスバリアフィルムは一般に、ガスバリア構造が上に付着したポリマー基板から構成される。該ガスバリア構造は種々のタイプであることができるが、一般には、有機層が交互にあってもよい1つ又はそれ以上の高密度の無機層(典型的には金属酸化物から成る)を含む。
【0009】
しかしながら、該ガスバリアフィルムは、気体の(バリアフィルムを通る)直角方向の透過に対して効率的な保護を確保するが、接着剤層への及び/又は接着剤とガスバリアフィルムとの間の界面での横方向のガス透過も存在する。この現象を以下に、更に詳細に記載する図1に例示する。
【0010】
従って、電子機器の保護の改良、特に保護構造体への横方向のガスの透過を減少又は除去することにより改良する必要性がある。
【0011】
特許文献1は、水崩壊性感圧性接着剤及びその製造法を記載するが、電子機器の保護の問題に向けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第02/057385号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は第1に、電子機器の保護のために、少なくとも1種の不飽和カチオン性モノマーから誘導された繰り返し単位を有するポリマーPを含む組成物の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
いくつかの態様において、上記不飽和カチオン性モノマーは、下記式(I)のモノマーである:
【0015】
【化1】
【0016】
式中、RはC1~C6、好ましくはC2~C4の2価炭化水素基であり、各R基は、それぞれ独立してC1~C6、好ましくはC1~C3のアルキル基であり、そしてXは1価アニオン、好ましくはハロゲンアニオン、そして更に好ましくは臭素又は塩素アニオンであり、該不飽和カチオン性モノマーは更に特に、塩化アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム及び塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムから選ばれ;そして該不飽和カチオン性モノマーは更に好ましくは塩化アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムである。
【0017】
いくつかの態様において、ポリマーPは架橋され、そして好ましくはポリマーPはトリメチロールプロパントリアクリレート、N,N-メチレン-ビス(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド及び/又は(ポリ)エチレングリコール-ジメタクリレートから誘導される繰り返し単位を含む。
【0018】
いくつかの態様において、ポリマーP中の不飽和カチオン性モノマーから誘導された繰り返し単位の重量比率は50~100%、好ましくは70~90%である。
【0019】
いくつかの態様において、ポリマーPは少なくとも1種の不飽和非イオン性モノマー、好ましくは(メタ)アクリルモノマー、更に好ましくは(メタ)アクリルエステル、例えばメタクリル酸メチル(メチルメタクリレート)及びアクリル酸ブチル(ブチルアクリレート)、から選ばれた少なくとも1種の不飽和非イオン性モノマーから誘導された繰り返し単位を含むコポリマーである。
【0020】
いくつかの態様において、上記組成物はまた、非水溶性ポリマーP’の粒子をも含み、該ポリマーP’は好ましくは(メタ)アクリルモノマー、特に(メタ)アクリルエステル、例えばメタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチル、スチレン及びその誘導体、酢酸ビニル、アクリロニトリル及びそれらの組み合わせから選ばれた1種又はそれ以上のモノマーから誘導された繰り返し単位を含み、ポリマーPとポリマーP’との合計に対するポリマーP’の相対的重量比率は好ましくは10~60%、更に好ましくは20~40%である。
【0021】
いくつかの態様において、上記組成物は、無機充填剤(フィラー)、好ましくは炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、ベーマイト、ポリシリケートおよびそれらの混合物から選ばれる無機充填剤を含み、該組成物中の該無機充填剤の重量含有量は好ましくは1~50%、更に好ましくは2~20%である。
【0022】
いくつかの態様において、上記組成物は液体担体(キャリアー)、好ましくは水および/又はアルコールを含み、好ましくは2~50%の重量含有量、更に好ましくは5~35%の重量含有量で含む。
【0023】
いくつかの態様において、上記の使用は電子機器を物理化学的起源の攻撃、そして好ましくは、特に水又は二酸素による溶解、腐食および酸化、に対して保護するためである。
【0024】
いくつかの態様において、上記電子機器はトランジスター、チップ、バッテリー、光電池、発光ダイオード、有機発光ダイオード、センサー、作動器、変換器及び光検出器から選ばれ;そして好ましくはそれは光電子機器、更に好ましくは有機発光機器又は有機光電池である。
【0025】
いくつかの態様において、上記電子機器は少なくとも1つの電子部品および場合によっては上に電子部品が配置される基板、および封入構造体を含み、上記組成物は該封入構造体中に層の形態で存在する。
【0026】
本発明はまた、少なくとも1つの電子部品、場合によってはその上に電子部品が配置される基板、および上記組成物の少なくとも1層を含む封入構造体を含む電子機器に関する。
【0027】
いくつかの態様において、上記組成物の層は、電子部品および/又は任意の基板の上および/又は下に、該電子部品および/又は該基板と直接接触して、又は好ましくは平坦化層および/又は接着剤層である中間層上に配置される。
【0028】
いくつかの態様において、上記封入層は、電子部品および/又は基板から距離をおいて且つ基板の周りに、しかし該電子部品および/又は基板の上又は下にではなく配置された上記組成物の1つ又はそれ以上の層を含む。
【0029】
いくつかの態様において、上記封入構造体は、電子部品および任意の基板のいずれかの側の面上に、少なくとも1つのガスバリアフィルム、好ましくは2つのガスバリアフィルム、及びこの2つのガスバリアフィルムの間に配置された上記組成物の少なくとも1層とを含む。
【0030】
いくつかの態様において、上記電子機器は、トランジスター、チップ、バッテリー、光電池、発光ダイオード、有機発光ダイオード、センサー、作動器、変換器及び光検出器から選ばれ;そして好ましくは光電子機器であり、そして更に好ましくは有機発光ダイオード又は有機光電池である。
【0031】
本発明はまた、上記のような電子機器の1つ又はそれ以上を含む装置、好ましくはテレビジョンセット、携帯電話、硬質スクリーン、可撓性スクリーン、光電池モジュール、照明源、センサーおよびエネルギー変換器に関する。
【0032】
本発明はまた、上記のような電子機器の製造法であって、任意に基板上に配置された電子部品の提供と、上記の組成物の層を付着させる(deposit)ための少なくとも1つのステップを含む封入構造体の形成とを含む製造法に関する。
【0033】
いくつかの態様において、上記方法は、上記組成物の層を電子部品および/又は基板の上に直接付着させることを含み;そして/又は好ましくは平坦化層および/又は接着剤層である少なくとも1つの中間層を該電子部品および/又は基板上に付着させ、次にこの中間層上に該組成物の層を付着させることを含む。
【0034】
いくつかの態様において、上記方法は下記を含む:
-ガスバリアフィルムを提供し、該フィルム上に電子部品および任意の基板の組立品を取り付けるか;又は
-好ましくは、2つのガスバリアフィルムを提供し、そしてその間に電子部品および任意の基板の組立品を取り付ける。
【0035】
いくつかの態様においては、
-上記組成物の層を電子部品および/又は取り付け前の基板の全部又は一部の上に付着させ;そして/又は
-上記組成物の層を取り付け前のガスバリアフィルムの全部又は一部の上に付着させ、該組成物のこの層は、好ましくは、電子機器および/又は基板と接触するように意図されていないガスバリアフィルムの一つ又はそれ以上の区域(ゾーン)に付着させる。
【0036】
いくつかの態様において、上記組成物は液体担体、好ましくは水および/又はアルコールを含み、そして上記方法は、該液体担体を該組成物の層を付着させた後に蒸発させるステップを含み、蒸発後、上記組成物中の液体担体の含有重量は好ましくは2~50%、更に好ましくは5~35%である。
【0037】
本発明を用いて、従来技術の欠点を克服することが可能である。本発明は、気体の特に横方向の透過が低減又は除去される保護構造体を設置可能にすることにより、電子機器を効率的に保護する。
【0038】
これは、少なくとも1種の不飽和カチオン性モノマー、例えば塩化アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、から誘導される繰り返し単位を含む、Pと記されるポリマーを含む組成物の使用により達成される。いかなる理論によっても拘束されることを望まないが、本発明者等は、ポリマーPは、その吸水容量により、水蒸気が電子機器に入るのを遅らせ、そして停止さえすることができるという意見である。更に、驚くべきことに、二酸素のような他の気体の透過に対する限定的効果を見いだした。この効果は、本発明の組成物がより多く水を吸収すると、時間と共にこれらの気体の透過性が徐々に遅延されることに更に注目できる。
【0039】
更に、ポリマーPは経年劣化(エージング)、特に光で誘導される経年劣化に対して良好な耐性を有する。
【0040】
本発明の組成物はペースト又は液体の形態で容易に塗布することもでき、そして次に乾燥され、単純な低コスト法となる。ポリマーPの合成自体は水性媒体中でそして/又は中程度の温度で行うことができ、従ってまた単純且つ低コストである。
【0041】
本発明の組成物を電子機器の電子部品の上に直接又はそこからある距離で塗布すると、該機器を周囲の気体による物理化学的攻撃に対して効率よく保護する。
【0042】
有利なことに、本発明の組成物は高い透明性を有し、光電子機器に特に有用である。
【0043】
有利なことに、本発明の組成物は高い可撓性、そして特にガスバリアフィルムの最も効率的な従来の接着剤よりも高い可撓性を有し、このことは特に可撓性電子機器に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の封入された電子機器の模式的断面図である。
図2a】本発明の封入された電子機器の模式的断面図である。
図2b】上記機器の別の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明を下記の非限定的記述で更に詳しく記載する。
【0046】
ポリマーPおよびP’
本発明はポリマーPの使用に基づく。ポリマーPはホモポリマー又はコポリマーであることができる。
【0047】
ポリマーPは少なくとも1つの不飽和カチオン性モノマーから誘導される(即ち、該モノマーの重合により得られる)構造単位(繰り返し単位)を含む。
【0048】
《カチオン性モノマー》とは、正味の正電荷を有するモノマーを意味する。該カチオン性モノマーは少なくとも1つの負の対イオンと結合する。
【0049】
好ましくは、該不飽和カチオン性モノマーは水溶性である。
【0050】
また、好ましくはポリマーPはそれ自体、水溶性である。
【0051】
《水溶性》とは、水中、25℃で少なくとも100g/Lの濃度で溶ける化合物を意味する。
【0052】
ポリマーPは単一の又はいくつかの、好ましくは単一の、不飽和カチオン性モノマーから誘導される繰り返し単位を含むことができる。
【0053】
ポリマーPは、1つ又はいくつかの不飽和カチオン性モノマーの繰り返し単位のみから構成されることができる。或いは、ポリマーPは、不飽和カチオン性モノマーでない追加のモノマーから誘導された他の繰り返し単位を含むことができる。この後者の変形は、本発明の組成物の層の改良された機械的性質を可能にすることができ、特にクリープの問題を減少させ、接着性を改良し、そして透過を減少させることができる。
【0054】
ポリマーP中の不飽和カチオン性モノマーから誘導された繰り返し単位の重量比率は、例えば少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%である。
【0055】
50~100%、好ましくは70~90%の範囲の割合が特に好ましい。
【0056】
一般に、ポリマーP(又は以下に記載するポリマーP’)の合成は、高い転換収率で、好ましくは95%、又は98%、又は99%を越える収率で行われる。その結果、ポリマーP(又はポリマーP’)の単位組成は、合成に使用したモノマー混合物の組成と同じであると考えられる。
【0057】
しかしながら、ポリマー自体の重合された単位の比率を測定する必要があれば、分析は、未反応モノマーを除去した後、核磁気共鳴(NMR)および/又は上記のカチオン性モノマーから誘導された繰り返し単位と結合された対イオンの分析(例えば塩素イオン又は臭素イオンの分析)により行うことができる。
【0058】
いくつかの態様において、不飽和カチオン性モノマーは(メタ)アクリルモノマー、即ち、(メタ)アクリル酸から誘導された下記式(II)の(メタ)アクリルモノマーである:
【0059】
【化2】
式中、Rは少なくとも1つの負の対イオンと結合した、カチオン性機能を有する基である。
【0060】
特に、不飽和カチオン性モノマーは、下記式(I)であることができる:
【0061】
【化3】
式中、RはC1~C6の二価炭化水素基であり、各Rは独立してC1~C6のアルキル基であり、そしてXは一価アニオンである。
【0062】
およびRは直鎖又は分岐した基であることができ、好ましくは直鎖の基である。それらは置換されているか又は非置換、好ましくは非置換である。
【0063】
好ましくは:
-RはC1~C5の二価炭化水素基、更に好ましくはC2~C4、又はC2~C3、更に好ましくはC2であり;そして/又は
-各R基は独立してC1~C5アルキル基、更に好ましくはC1~C4、又はC1~C3、又はC1~C2、更に好ましくはC1であり;そして/又は
-Xはハロゲンアニオン、好ましくは塩素イオン又は臭素イオン、そして更に好ましくは塩素イオンである。
【0064】
塩化アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムおよび塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムは該モノマーの好ましい例であり、そして最も好ましいのは塩化アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムである。
【0065】
いくつかの態様において、ポリマーPは、少なくとも1つの不飽和非イオン性モノマーから誘導された繰り返し単位をもまた含むポリマーである。特に、該不飽和非イオン性モノマーは(メタ)アクリルモノマー、即ち、アクリル酸又はメタクリル酸又はそれらの誘導体のモノマーであることができ、そして特にアルキルアクリレートおよびメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸から誘導されたアミド、アクリロニトリル、グリシジルアクリレートおよびメタクリレートであることができる。
【0066】
いくつかの態様において、ポリマーPは、少なくとも1つの水溶性不飽和非イオン性モノマーから誘導された繰り返し単位を含む。好ましい例は、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、それらの水溶性金属塩、およびそれらの混合物である。これらのモノマーはポリマーPの全イオン強度に対して制御を与えることができ、従って、これらを含む組成物の水分摂取および接着性に対して制御を与えることができる。これらのモノマーは一般に製造が複雑でなく、従って上記のカチオン性モノマーよりも費用がかからない。
【0067】
いくつかの態様において、ポリマーPは少なくとも1つの非水溶性の不飽和非イオン性モノマーから誘導された繰り返し単位を含む。好ましい例は、アルキルアクリレートおよびメタクリレートであって、ここで該アルキル基はC1~C20の基、好ましくはC1~C10、更に好ましくはC1~C4の基(そして特にメチル基)、スチレンおよびその誘導体、酢酸ビニル、及びそれらの混合物である。これらの繰り返し単位はポリマーPの水分散性の調節を可能にし、そしてその機械的性質を改良する。特に、該ポリマーPは両親媒性を示すことができ、それは、ポリマーPに混ぜられた充填剤の分散を特に容易にする。
【0068】
いくつかの態様において、ポリマーPは1つ又はそれ以上の(メタ)アクリル酸エステル、例えばメタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチル、から誘導された繰り返し単位を含む。
【0069】
ポリマーPは架橋されていても架橋されてなくてもよい。架橋は本発明の組成物の改良された凝集性、改良された接着性、及び透過及びあらゆるクリープの問題の低減を可能にする。
【0070】
架橋は、重合時に架橋剤を、好ましくは(他の)モノマーの重量に対して0.01~1重量%の含有量で添加することにより行うことができる。
【0071】
適した架橋剤は、少なくとも2つの二重結合又は反応性機能基と二重結合とを含むモノマーである。これらの中で、トリメチロールプロパントリアクリレート、N,N-メチレン-ビス(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド及び(ポリ)エチレングリコール-ジメタクリレートを述べることができる。
【0072】
更に、ポリマーPの合成に使用されるモノマー単位の化学的官能基と反応することができる少なくとも2つの反応基を含む非重合性架橋剤を使用することができる。これらの中で、(ポリ)エチレングリコール-ジグリシジルエーテルは、例えばポリマーPに含まれるアクリル酸から誘導された繰り返し単位と反応できるものとして引用することができる。
【0073】
ポリマーPの好ましい例は、塩化アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチルメタクリレート及び場合によっては架橋性モノマー、例えばN,N-メチレン-ビス(メタ)アクリルアミド、のコポリマーである。それでポリマーPは、塩化アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムから誘導された繰り返し単位を、好ましくは50~99.99%、更に好ましくは60~95%、更に好ましくは70~90%の含有重量で有し;架橋性モノマーから誘導された繰り返し単位を好ましくは0.01~1%の含有重量で有し、残りは(適用可能な場合)メタクリル酸メチルから誘導された繰り返し単位で構成される。
【0074】
いくつかの態様において、ポリマーPは非水溶性ポリマーP’と組み合わせて提供することができる。ポリマーP’はホモポリマー又はコポリマーであることができる。
【0075】
好ましくは、ポリマーP’は少なくとも1つの非水溶性の不飽和非イオン性モノマー、例えば上記のもの、から誘導された繰り返し単位を含む。
【0076】
好ましくは、ポリマーP’は(メタ)アクリルモノマー、特に(メタ)アクリル酸エステル、例えばメタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチル、スチレン及びそれらの誘導体、酢酸ビニル、アクリロニトリル及びそれらの組み合わせから選ばれた1つ又はそれ以上のモノマーから誘導された繰り返し単位を含む。
【0077】
ポリマーP’はまた、官能化された非水溶性不飽和モノマー、特にヒドロキシル官能基又はシラン官能基を有するもの、から誘導された繰り返し単位を含む。好ましくはこれらの単位はポリマーP’の全重量に対して0.1~10重量%の量で含まれる。該繰り返し単位はポリマーPとポリマーP’との接着性を改良することができる。例えば、適したモノマーはグリシジルメタクリレート、ガンマ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン又はビニルトリイソプロポキシシランである。
【0078】
ポリマーP’は上記組成物中で充填剤として作用することができ、その機械的性質を改良する。
【0079】
特に、ポリマーP’は30℃より高く、更に好ましくは40℃又は50℃より高く、更に好ましくは60℃より高いガラス転移温度Tgを有するのが好ましく、それは周囲温度で硬い形態にあることを保証する。
【0080】
従って、ポリマーP’はモノマーから誘導された繰り返し単位を含み、該繰り返し単位に対応するホモポリマーは30℃より高く、更に好ましくは40℃又は50℃より高く、又は更に特に好ましい態様では60℃より高いTgを有する。場合によっては、ポリマーP’は、ポリマーP’自体が充分高いTgを有すれば、対応するホモポリマーがもっと低いTgを有するようなモノマーから誘導された繰り返し単位をもまた含んでもよい。
【0081】
例えばポリマーP’は、ポリスチレン(Tg:約100℃)、又はポリメタクリル酸メチル(メチルポリメタクリレート)(Tg:約105℃)だけでなく、ポリアクリル酸ブチル(ブチルポリアクリレート)のホモポリマーのTgは約-54℃であるが、ポリ(メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル)コポリマーであることができ、2種のそれぞれのモノマーから誘導される繰り返し単位の割合を調整すると、該コポリマーは十分高いTgが得られる。
【0082】
ポリマーのTgの測定法は、示差走査熱量測定法(DSC)、容量分析又は動的熱機械測定(DMA)を含む。
【0083】
好ましくは、ポリマーP’のモノマーは、ポリマーPの存在下で、第2の重合ステップで重合される。これによりポリマーPとポリマーP’との混合物が2相形で得られる。好ましくは、ポリマーP’は、ポリマーPで構成されるマトリックス中に疎水性領域(又は内包物、又は粒子)の形態で存在する。P’領域の平均サイズDv50(これはレーザー散乱により決定できる)は好ましくは1μmより小さい。
【0084】
いくつかの有利な態様において、ポリマーPは非水溶性且つ非イオン性モノマー、例えばメタクリル酸メチル、から誘導された繰り返し単位を含み;そしてポリマーP’はこれと同じモノマーから誘導されたホモポリマー、又はこれと同じモノマーから誘導された繰り返し単位を含むコポリマーである。これはポリマーPからポリマーP’の合成を容易にし、そしてポリマーP’充填剤がポリマーPのマトリックス中に細かく均一に分散された分散体を得させる。
【0085】
ポリマーPとポリマーP’との合計に対するポリマーP’の重量比率は特に:1~5%;又は5~10%;又は10~15%;又は15~20%;又は20~25%;又は25~30%;又は30~35%;又は35~40%;又は40~45%;又は45~50%;又は50~55%;又は55~60%;又は60~65%;又は65~70%;又は70~75%;又は75~80%であることができる。10~60%、特に20~40%の比率が好ましい。
【0086】
調製法
ポリマーPは一段階ラジカル重合法を用いて得ることができる。
ポリマーPとポリマーP’との混合は、二段階ラジカル重合法を用いて得ることができる(或いは、ポリマーPとポリマーP’を、それぞれ別々に調製した後に混合することができる)。
好ましくは、両方法は界面活性剤の不存在下で行われる(カチオン性モノマーが既に界面活性機能を有する)。
【0087】
一段階重合法は下記の操作を含むことができる:
i) 場合によっては適当な架橋剤の存在下で、モノマーを液体担体(好ましくは脱塩水)の溶液又は分散液中に入れる;
ii) 該溶液又は分散液を重合する;そして
iii) 場合によっては液体担体の含量を調整する。
【0088】
好ましくは、上記溶液又は分散液は10~80重量%のモノマーを含む。
【0089】
窒素バブリングを反応器に、例えば重合前に10~45分間設置するのは有用であろう。重合温度は有利には5~90℃、好ましくは40~85℃である。
【0090】
水溶性ラジカル開始剤を使用できる。分解反応速度が重合温度と両立する限り、熱的、レドックス、光又はその他の分解による開始系を使用できる。特に、モノマー重量に対して0.005~2重量%、好ましくは0.01~0.75重量%の開始剤を添加できる。好ましくは、水溶性開始剤を水溶液(例えば、脱塩水中に0.5~2%の重量濃度)の形で添加する。水溶性開始剤を反応器が一旦反応温度になったら、又はその前に添加することができる。該開始剤は一回又は数回の添加で、例えば反応開始時点で一部、そして反応中(例えば30~45分後)に別の部分の添加で、添加することができる。例えば、適した水溶性ラジカル開始剤は、過硫酸ナトリウム、カリウム及びアンモニウム、過酸化水素、tert-ブチルヒドロペルオキシド、4,4’-アゾ-ビス(4-シアノペンタン酸)の塩、2,2’-アゾ-ビス(2-アミジノプロパンジヒドロクロリド)、又は過硫酸/メタ重亜硫酸ナトリウム、過酸化水素/ビタミンC、tert-ブチルヒドロペルオキシド/エリソルビン酸レドックス対である。
【0091】
重合反応の完了は、発熱ピークの後の目標温度への戻りにより、又は等熱条件下で、冷却要求の終了により検出できる。
【0092】
好ましくは、ステップiii)の前に、残留モノマーを除去する(いわゆる《クッキング》ステップ)。これは一般に1~8時間続く。好ましくは《クッキング》は液体担体の多量の蒸発を引き起こさない。従って、圧力が大気圧でありそして液体担体が水である場合、それは100℃より低い温度で行われる。
【0093】
次に生成物を冷却しそして貯蔵のために反応器から除去することができる。生成物は、10~70重量%のポリマー重量濃度を有する透明又は半透明な溶液又は分散液の形態であることができる。
【0094】
二段階重合製造法は、上記のステップii)とiii)の間に下記の追加のステップを含み得る:
iv)ステップii)の生成物の溶液又は分散液中に、ポリマーP’の合成に必要な少なくとも1種の非水溶性不飽和モノマーを(例えばモノマーの合計重量の1~75重量%の比率で)入れ、そして液体担体の含有量を調整し;そして
v)重合する。
【0095】
反応器中に窒素バブリングを、例えば重合前に10~45分設けるのは有用であろう。重合温度は有利には5~90℃、好ましくは40~85℃である。
【0096】
重合開始剤を使用できる。水溶性又は油溶性のラジカル開始剤を使用できる。油溶性開始剤を使用した場合、非水溶性モノマーの一部分が溶媒として作用することができる。好ましくは、水溶性ラジカル開始剤が使用される。
【0097】
分解反応速度が重合温度と両立する限り、熱的、レドックス、光又はその他の分解システムによる開始システムを使用できる。特に、モノマー重量に対して0.005~2重量%、好ましくは0.01~0.75重量%の開始剤を添加できる。好ましくは、開始剤は希薄溶液(例えば、脱塩水中に0.5~2重量%の濃度)の形態で添加される。開始剤は反応器が一旦反応温度になったら、又はその前に添加することができる。該開始剤は一回又は数回の添加で、例えば反応開始時点で一部、そして反応中(例えば30~45分後)に別の部分の添加で、添加することができる。
【0098】
最初の重合ステップにおける場合と同じ水溶性ラジカル開始剤を使用できる。油溶性ラジカル開始剤を単独で又は水溶性開始剤の1種又はそれ以上と組み合わせて使用することも可能である。油溶性開始剤の中で、過酸化ベンゾイルのような有機過酸化物、2,2’-アゾ-ビス-2-メチルブチロニトリルのようなアゾ化合物、及びクメンヒドロペルオキシド/塩化チオニルのようなレドックス対、又はクメンヒドロペルオキシド/メタ重亜硫酸ナトリウムのような混合(水溶性/油溶性)レドックス対を特に述べることができる。
【0099】
好ましくは、ステップiii)の前に、残留モノマーを除去する(いわゆる《クッキングステップ》)。これは一般に1~8時間続く。好ましくは《クッキング》は液体担体の多量の蒸発を引き起こさないので、圧力が大気圧でありそして液体担体が水である場合、100℃より低い温度で行われる。
【0100】
生成物を冷却しそして貯蔵のために反応器から除去できる。それは、エマルジョン重合法で得ることができる生成物と同様に、好ましくは光散乱性コロイド分散体(《ラテックス》)の形態の、好ましくは10~60%の乾燥抽出物比率(ポリマー濃度)を有する。
【0101】
本発明の組成物
本発明の組成物は、ポリマーP、場合によってはもしあればポリマーP’、及び液体担体を含む。いくつかの態様において、いくつかの異なるP及び/又はいくつかの異なるP’が含まれる。しかしながら、単一のポリマーP及び場合によっては単一のP’が存在するのが好ましい。
【0102】
いくつかの態様において、液体担体は水(例えば、脱塩水又は水溶液)である。
【0103】
いくつかの態様において、液体担体はアルコール、特にエタノール、メタノール、グリコール及びポリグリコールのようなジオール及びポリオールから選ばれたアルコール、グリセロール、(ポリ)グリコールエーテル及びエステル及びイソソルビドである。エチレングリコールを例として引用できる。
【0104】
水とアルコールとの混合物もまた使用できる。
【0105】
上記組成物を表面に塗布する前に、該組成物中に担体が30~99重量%、更に好ましくは40~90重量%の重量比率で含まれるのが好ましい。
【0106】
液体担体、好ましくは水、はポリマーP(及び場合によってはポリマーP’)の製造法から直接誘導することができる。場合によっては、水含有量は、特に蒸発により、所望値に調整することができる。
【0107】
或いは、上記組成物の液体担体は、重合に使用したものと異なることができる。特に、重合に使用される液体担体が水の場合、上記組成物の調製時に水をアルコール又は水/アルコール混合物に置き換えることが可能である。
【0108】
上記組成物を表面に塗布した後、液体担体は該組成物中に1~60%、更に好ましくは2~50%、より好ましくは5~35%の重量比率で含まれるのが好ましい。表面への塗布後の液体担体含量の可能な調整は以下に更に詳しく記載する。表面上の組成物層中の液体担体含量の測定は、重量分析で(該層の質量を初めに塗布した組成物の質量と比較し、そして初めに塗布した組成物の液体担体含量を計算に入れることにより)行うことができる。或いは、電気抵抗又は電気容量を測定するか、又は赤外分析する。
【0109】
上記組成物はポリマーP’とは異なる充填剤を、特に(しかし排他的ではなく)ポリマーP’の不存在下で、又はポリマーP’の含量が少ない場合は、含み得る。好ましくはそれは無機充填剤である。
【0110】
上記無機充填剤は特に、炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、ベーマイト、ポリ珪酸塩、およびそれらの混合物から選ばれ、該無機充填剤の該組成物中の重量含量は、好ましくは1~50%、更に好ましくは2~20%である。
【0111】
上記充填剤粒子の平均サイズDv50(これはレーザー散乱により決定できる)は好ましくは1μm未満である。
【0112】
上記充填剤はポリマーP(および場合はよってはポリマーP’)の合成中に又は合成後に、適当な分散手段、例えば超音波の補助を用いて又は用いずに激しい撹拌を含む分散手段を用いて添加することができる。
【0113】
電子機器の保護
本発明の組成物は、電子機器を保護するために使用される。
【0114】
上記電子機器は有利には、基板上に配置された1つ又はそれ以上の電子部品を含む。該電子部品は導電性材料の層、半導電性材料の層およびその他の層を含み得る。それらは好ましくは基板の1方側の面だけに位置するが、いくつかの態様においては、基板の両側の面に位置することができる。
【0115】
特に、上記基板は金属ホイル、ケイ素、ガラス、石英又はポリマーシートであることができるが、可撓性機器には、該基板はポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)のシートであるのが好ましい。
【0116】
上記基板の厚さは、好ましくは3μm~4mmの間、更に特定的には上記機器が可撓性であるのが望ましい場合は12μm~200μmの間で変わることができる。
【0117】
上記基板の上の電子部品の最大厚さは特に10nm~1mm、好ましくは20nm~500μmの間で変わることができる。
【0118】
電子機器はまた、封入構造体を含むのが有利である。《封入構造体》とは、電子部品と基板の全部又は一部とを覆う層又は層(又はフイルム)の積層体を含む構造体を意味する。好ましくはこの封入構造体は、電子部品および基板をそのいずれの側の面も完全に封入する。
【0119】
有利には、上記封入構造体は本発明の組成物の少なくとも1層を含む。
【0120】
本発明の組成物の層(又は各層)は特に、1μm~1mm、好ましくは2μm~400μm、より好ましくは5μm~150μm、更に好ましくは10μm~100μm、より更に好ましくは20μm~70μmの厚さを有し得る。
【0121】
封入構造体は、場合によってはポリマー層が結合されたガラス壁(特に硬い電子機器に対して)、又は2つのかかるガラス壁であって、電子部品と基板とにより形成された組立品のどちらの側の面にも配置されたガラス壁を含み得る。
【0122】
或いはそして好ましくは、上記封入構造体は、少なくとも1つのガスバリアフイルム、そして更に好ましくは電子部品と基板により形成された組立品のどちら側の面にも配置された2つのガスバリアフィルムを含む。
【0123】
本願で規定するガスバリアフィルムは、10-1g.m-2.d-1より低い、好ましくは10-2g.m-2.d-1より低い、より好ましくは10-3g.m-2.d-1より低い、更に好ましくは10-4g.m-2.d-1より低い、更により好ましくは10-5g.m-2.d-1より低い直交方向の水蒸気透過速度(WVTR)を有するフィルムである。
【0124】
直交方向の水蒸気透過速度は次のようにして測定することができる:サンプルの上流表面上で対象気体(水蒸気)の所定の部分圧を維持する。対象気体の濃度は規定された標準(例えば標準ASTMD3985-95およびF1249-90において、85%湿度測定および温度38℃において水を測定)に依存する。サンプルの下流表面を、サンプル内で拡散した気体をセンサーまで運ぶ中性気体(窒素)の流れにより又は真空を使用して、透過物(permeant)がゼロの部分圧に保持する。測定は、定常流(一時的形態の後に続く定常の形態)を得ることにより行われる。
【0125】
上記ガスバリアフィルムは好ましくは、ポリマー支持体又は基板と、1つ又はそれ以上のガスバリア層と、場合によっては1つ又はそれ以上の挿入層とを含む(前以て形成された)多層構造体である。各ガスバリア層は好ましくは無機層である。
【0126】
上記ガスバリアフィルムは有利には、例えば金属酸化物又は金属窒化物のタイプの無機層(高密度)の1つ又はそれ以上の連続した対(dyads);および好ましくは数ミクロン、例えば1~25μm、特に2~5μm、の厚さを有する挿入ポリマー層(密度がより低い);および最後に、組み立て後に積層体の最も外側の位置に置かれそして電子部品に関して最も外側の保護層としても作用するポリマー基板を含む。
【0127】
各無機層は、特に例えばSiOについてプラズマ励起化学蒸着PECVD又は物理蒸着PVDの場合、ほぼ数百ナノメートル、例えば50nm~1μm、更に好ましくは100nm~700nm、又は200~500nm、の厚さを有することができる。例えばAl、又はZnO、又はZnO:Al、又はSiO、又はTiO、又はTa、又はHfO、又はSnOの堆積物について、原子層蒸着ALDについては、数十ナノメートル、例えば10~100nm、更に好ましくは15~50nm、そして特に20~40nmの領域のもっと狭い厚さであることができる。ガスバリアフィルムのポリマー基板は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリエチレンナフタレート(PEN)であることができる。
【0128】
例えば、各挿入ポリマー層は有機ポリマー、例えばアクリルケミカルタイプ、又は混成有機/無機材料、例えば商品名Ormocer(登録商標)で市販されているもの、であることができる。
【0129】
交互する無機層と挿入ポリマー層の代わりに、無機SiO型と混成SiO型の間で連続して変化する混成多層構造体(この構造体はPECVDで得ることができる)を使用することが可能である。
【0130】
或いは更に、上記多層構造体は可撓性ガラスの層を含み得る。
【0131】
或いは、ある種の用途には、封入構造体にガスバリアフィルムを使用しないことも可能である。これは、本発明の組成物の層が水透過遅延効果を有するためで、特別な場合である。この遅延効果によって、(特に室内での用途のために)真に湿った条件下での本発明の層の吸水の可逆性(吸収/脱離)に加えて、有利にも封入構造体内でガスバリアフィルムを省略できることになる。
【0132】
封入構造体内で、上記組成物を1つ又はそれ以上の層の形態で、電子部品(および基板)の上および/又は下で、又はその周りに又はそれから(少なくとも電子部品から)距離をおいて、含ませることができる。
【0133】
基板および多層構造体の両方が、該基板と多層構造の層との厚さを通過する横断方向を規定する。言い換えると、横断方向とは基板の平面に直交する方向である。電子部品の《上》および《下》の用語は、この横断方向に、電子部品の一方側又は他方側の上にあることを意味する。電子部品の《周り》の用語は、この電子部品の上でも下でもない位置決めを表す。
【0134】
上記組成物が電子部品からある距離で適用された場合、該組成物の層と電子部品との間の(上記の横断方向に直交する方向への)距離は、好ましくは100nm又はそれ以上、1μm又はそれ以上、10μm又はそれ以上、又は100μm又はそれ以上である。
【0135】
第1の変形では、本発明の組成物の少なくとも1層は電子部品の全体又は一部、および場合によっては基板の全体又は一部を被覆する(即ち、電子部品の上および/又は下に配置される)ことができる。好ましくは、該層は基板の少なくとも一部と電子部品の少なくとも一部とを被覆する。より好ましくは、該層は電子部品を完全に被覆する。更に好ましくは、該層は電子部品と基板とを完全に被覆する。該層は基板の2つの面の1面だけ(好ましくは電子部品を含む面)を完全に又は部分的に被覆するか、又は両側の面を完全に又は部分的に被覆することができる。好ましくは、該層は電子部品および基板の両側の面の全体を被覆する。
【0136】
従って、図1を参照すると、本発明の電子部品は上述したように基板2を含むことができ、その上に少なくとも1つの電子部品1が配置される。横断方向は模式図で高さの向きに相当する。
【0137】
封入構造体は下記を含む:
-本発明の組成物の層3であって、電子部品1と基板2の両方をそれらの両側の面で被覆し、そして電子部品1と基板2との組合品を完全に封入する上記組成物の層;及び
-本発明の組成物の層上に該層のいずれかの側に配置された第1ガスバリアフィルム4a及び第2ガスバリアフィルム4b。
【0138】
ガスバリアフィルム4a,4bはガス5が基板に垂直方向に透過するのに対して強い抵抗性を与える。他方、ガス6の横方向の透過、即ち、基板に本質的に平行な透過については、本発明の組成物の層の性質が決定因子である。
【0139】
一般に、本発明の組成物の層が基板及び/又は電子部品の上又は下に配置されるかこれらを被覆することが示された場合、2つの可能性が想像される:
-本発明の組成物の層は、基板及び/又は電子部品(必要に応じて)と直接接触している;
-或いは、基板及び/又は電子部品(適用可能である場合)と本発明の組成物の層との間に1つ又はそれ以上の中間層が存在するために、本発明の組成物の層は、基板及び/又は電子部品(必要に応じて)と直接接触していない。
【0140】
この2番目の事例では、本発明の組成物の層は特に該中間層の上にそして該中間層と直接接触して配置することができ、該中間層自体は基板及び/又は電子部品の上にそしてそれと直接接触して配置される。
【0141】
中間層の存在は、電子部品と本発明の組成物の層との直接の接触を防止するが、これは、化学的性質が不適合性であるか、或いは本発明の組成物の層が徐々に水を摂取し、従って電子部品と不適合となるとの理由で、電子部品が本発明の組成物の層との直接接触により劣化しそうな場合に必要であろう。
【0142】
上記中間層は平滑化層、即ち、表面の粗さを減少させる層、であることができる。
【0143】
上記中間層は、好ましくは1nm~50μm、より好ましくは100nm~20μmの厚さを有する。その粗さRaは好ましくは20nm又はそれ未満、そしてより好ましくは10nm又はそれ未満、そして更に好ましくは7nm又はそれ未満である。表面粗さはアルファ-ステップIQ型の表面形状測定装置を用いて表面形状を測定することにより決定できる。
【0144】
上記中間層は、特にそれが平坦化層である場合は、ポリマー層であることができ、特に弗化ビニリデン(VDF)から誘導された繰り返し単位と、場合によっては1種又はそれ以上の他のモノマーとを含むポリマー層であることができる。ヘキサフルオロプロペン(HFP)は1つの好ましいコモノマーである。従って、平坦化層に使用されるフッ素化ポリマーは好ましくは(VDF-HFP)コポリマーPである。HFPから誘導される繰り返し単位のモル比率は好ましくは2~50%、特に5~40%である。
【0145】
或いは、更に第2の事例では、本発明の組成物の層を、接着剤層の上に且つ該接着剤層と直接接触して配置することができ、該接着剤層はそれ自体が基板及び/又は電子部品の上に且つそれに直接接触して配置されている。
【0146】
或いは、そして更に第2の事例では、本発明の組成物の層を接着剤層の上に且つそれと直接接触して配置することができ、該接着剤層はそれ自体が(上記のような)平坦化層の上に且つそれと直接接触して配置され、該平坦化層自体は基板及び/又は電子部品の上に且つそれと直接接触して配置されている。この事例では、2つの重ねられた中間層、即ち平坦化層及び接着剤層、が基板及び/又は電子部品と本発明の組成物の層との間に配置される。
【0147】
第1の事例及び第2の事例の両方において、本発明の組成物の層の上に位置するガスバリアフィルムは該層と直接接触していることができる。或いは、1つ又はそれ以上の中間層、そして特に接着剤層、を本発明の組成物の層とガスバリアフィルムとの間に設けることができる。
【0148】
接着剤層を用いない場合、本発明の組成物はそれ自体が隣接する層又は構造体(特にガスバリアフィルム、電子部品及び基板及び/又は平坦化層)との接着のために要求される接着機能を満たす。
【0149】
第2の変形では、電子部品の全体の上にも一部の上にも本発明の組成物の層がない(即ち、電子部品の上にも下にも本発明の組成物の層が配置されていない)。この場合、本発明の組成物の少なくとも1層が電子部品の周りに、そこから距離をおいて配置されるのが好ましく、そして好ましくは(横断方向に直交する平面に沿って)電子部品の組立品を完全に取り囲むか又は個々の電子部品の各々を取り囲む。
【0150】
この第2の変形の一例は図2a及び2bに例示される。これらは封入構造体を備えた電子機器の2つの断面図で、それぞれ横断方向に直交する平面に沿った断面図及び横断方向を含む平面に沿った断面図である(この横断方向は図2bで高さ方向に対応する)。
【0151】
例示された例において、電子部品1及びその基板2(図中、単一の区域の形態で図式的に示されている)はどちらの側も第1ガスバリアフィルム4aと第2ガスバリアフィルム4bで被覆されている。2つのガスバリアフィルム4a,4bの間で且つ電子部品1とその基板2の周りに、同心的な態様で:中間区域7及び本発明の組成物の層を含む区域3が連続して配置されている。
【0152】
図には示されていないが、電子部品1とその基板2の周りに同心的な様式で且つガスバリアフィルム4a,4bの間に配置した、中間区域7/本発明の組成物の層を含む区域3の一連の2つ又はそれ以上の連続した対を設けることが可能である。該連続は横方向透過に対する抵抗を更に改良することができる。
【0153】
各中間区域7は、本発明の組成物とは異なる接着剤層を含むことができる。或いは、各中間区域7は空隙区域及び/又はガス、特に空気又は不活性ガス、を充填した区域であることができるが、或いはポリマー材料を含んでもよい。
【0154】
中間区域7及び本発明の組成物の層を含む区域3の対の組立品(アセンブリー)は、場合によっては、再びガスバリアフィルム4a,4bの間の末端区域8で囲われることができ、そして例えば本発明の組成物とは異なる接着剤層を含んでもよい。この末端区域は端部密閉区域と呼ぶこともできる。
【0155】
例示されていないが、上述したような1つ又はそれ以上の平坦化層及び/又は1つ又はそれ以上の接着剤層を、各ガスバリアフィルム4a,4bと電子部品1及びその基板2で形成された組立品、及び場合によっては中間区域7、本発明の組成物を含む区域3及び/又は端部密閉区域8との間に設けることができることを理解されたい。
【0156】
上記の全てにおいて、本発明の組成物と異なる各接着剤層は特に、感圧性接着剤層又は光架橋性若しくは熱架橋性液体接着剤、好ましくは光架橋性アクリル接着剤であることができる。熱溶融性フィルム、例えばエチレンと酢酸ビニル(EVA)とのコポリマー、又は液体接着剤、例えばシリコン、を使用することも可能である。熱後架橋もまた使用できる。
【0157】
本願に記載する電子機器の封入組立品は特にタイプHB(高バリア)又はUHB(超高バリア)であることができる。HB構造体は直交方向の水蒸気伝達速度10-3~10-5g.m-2.d-1を有し、そしてUHB構造体は10-5g.m-2.d-1未満の水蒸気伝達速度を有する。
【0158】
好ましくは、電子部品の上及び/又は下に位置する封入構造体の一部分は透明であるか、又は封入構造体全体が透明である。
【0159】
好ましくは透明である例えばガラス製のカバーを、上述したような封入構造体を備えた電子機器の頂上に配置できる。
【0160】
電子機器はまた、図面には示されていないコネクタ(接続器)を含む。これらのコネクタは封入構造体内を一般に横断方向と直交する方向に通過する。必要であるなら、接着剤をコネクタの周りに、該封入構造体への該コネクタの適合性を改良するために適用することができる。
【0161】
上記の種々の封入構造体を製造するために、本発明の組成物の層又は各層及び追加の層(接着剤層、平坦化層...)を相次ぎ:
-基板及び電子部品で形成された組立品の上に;及び/又は
-バリアフィルム上に
設けることができる。
【0162】
これらの層の設置は、個々の又は連続した手段を用いて行うことができる。特に、スピン(回転)被覆、噴霧、スクリーン印刷、フレキソ印刷、スロットダイ沈着、テープ注入成形、インクジェット印刷、浸漬被覆を使用できる。好ましい被覆法はドクターブレード型(電子機器との接触なし)のスピン被覆、スロットダイ沈着又はテープ注入成形である。
【0163】
本発明の組成物の粘度は被着技術に適合させることができ、そして特に該組成物中のポリマー濃度を介して制御できる。
【0164】
本発明の組成物の層を付着させた後に、少なくとも液体担体の部分的蒸発のために、特に付着が(直接又は間接的に)ガスバリアフィルム上に行われた場合、乾燥操作を実施することができる。乾燥は、特に熱及び/又は減圧を加えることにより得られる。例えば、最初の乾燥状態は、周囲の雰囲気(典型的には20~30℃及び20~70%の相対湿度)で行い、次いで減圧下での加熱(例えば70℃の温度で)により2番目の乾燥を行うことができる。
【0165】
有利には部分乾燥を実施するか、又は完全乾燥を行い、次いで液体担体、特に水、の部分的摂取を実施する。液体担体が水の場合、部分的摂取状態は、乾燥製品を周囲の雰囲気(典型的には20~30℃そして相対湿度20~70%)に置くか、又は制御された雰囲気中で人工気候室(例えば50~90℃、好ましくは65~85℃の温度、そして相対湿度70~95%、例えば85%)に置くことにより行うことができる。
【0166】
好ましくは、付着後及び任意の乾燥/部分的摂取の後の上記組成物の中の液体担体含量は2~50重量%、更に好ましくは5~35重量%である。
【0167】
残留液体担体(特に残留水)の存在は特に、本発明の組成物の層に改良された接着性と減少した透過性を与える。
【0168】
ガスバリアフィルム(場合によっては、上述したようにその上に付着した追加の層を有する)を、電子部品と基板とで形成された組立品(場合によっては、上述したようにその上に付着した追加の層を有する)と、特にロール技術又は真空法にロールを使用して、積層することができる。
【実施例
【0169】
下記は本発明の非限定的例である。
【0170】
実施例1-架橋された単相ポリマーの調製
脱塩水316gを、熱交換流体を循環させて系(システム)を加熱/冷却するための二重ジャケット、気体状窒素を供給して酸素を追い出す枝分れ配管、モーターに結合して可変の速度での回転を許す撹拌棒、材料を供給する入口、及び凝縮/還流系に連結された蒸気出口を備えた重合反応器に入れた。
【0171】
窒素フラッシングを適用し、反応媒体を70℃にし、300rpmで撹拌した。該反応器に相次ぎ塩化アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム水溶液(活性材料80重量%)125g、メタクリル酸メチル17.8g及びN,N’-メチレンビス(アクリルアミド)0.64gを充填した。30分間脱ガスした後、第1の開始剤溶液、即ち脱塩水18g中に過硫酸カリウム0.24gの溶液、を反応媒体に射出注入した。発熱反応が完了すると、二重ジャケットの温度を変更して反応媒体を80℃にした。開始剤溶液の添加から30分後、脱塩水18g中に過硫酸カリウム0.24gの溶液の同じ添加を再開した。
【0172】
反応媒体を周囲温度に冷却する前に、反応媒体を80℃に保持して硬化を3時間行った。次に反応器を空にした。得られた溶液は僅かに黄色の、透明な粘性溶液の形態で、測定した乾燥抽出物25.1重量%を有した。
【0173】
実施例2-2相ポリマーの調製
実施例1の手順を、下記の相違点をもって繰り返した:
-使用したモノマー:塩化アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム水溶液(活性材料80重量%)125g、メタクリル酸メチル17.7g及びN,N’-メチレンビス(アクリルアミド)0.64g;
-硬化時間を3時間の代わりに4時間とした。
【0174】
硬化後、冷却操作の代わりに、脱塩水328g及びメタクリル酸メチル58.5gを相次いで添加し、そして30分間の窒素フラッシングのもとに反応媒体を再び入れた。この時間の後、水22.5g中の過硫酸カリウム0.30gから成る開始剤溶液を再び射出注入した。更なる発熱反応が観察され、媒体の透明性が失われた。この添加を45分後、水22.5g中の過硫酸カリウム0.30gを用いて再開した。反応媒体を周囲温度に冷却する前に再び80℃に2時間30分間保持した。反応器を空にした。得られた溶液は白色ラテックスの形態で、19.1重量%の測定乾燥抽出物を有した。
【0175】
実施例3-非架橋単相ポリマーの調製
実施例1の手順(プロトコル)を、下記の相違点をもって繰り返した:
-使用したモノマー:塩化アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム水溶液(活性材料80重量%)135g、及びメタクリル酸メチル12g。
-1回目の添加から45分後に、2回目の開始剤溶液の添加。
【0176】
得られた溶液は僅かに黄色の透明な低粘度の溶液の形態で、測定した乾燥抽出物28.1重量%を有した。
【0177】
実施例4-基板上への付着(実施例1、2及び3のポリマー)
注射器を使用して、実施例1のポリマー溶液3mlを取り出し、そして前以てUV/オゾン処理に10分間付したPET基板のサンプル(8cm×8cm×50μm)上に付着させた。該溶液をテープ-注入成形技法(ドクターブレード法)を使用して、操作速度25mm/秒で広げた。得られた材料を70℃で2時間乾燥するために、減圧オーブンに入れた。
【0178】
実施例2の液体分散体(ラテックス)を44重量%の乾燥抽出物が得られるまで加熱により濃縮した。5μmフィルターを備えた注射器を用いて、該分散体3mLを取り出し、前以てUV/オゾン処理に10分間付したPET基板のサンプル(8cm×8cm×50μm)の中心に付着させた。該サンプルを1000rpmで回転させた;この速度は7秒後に到達し、23秒間維持した。得られた材料を70℃で2時間乾燥するために、減圧オーブンに入れた。
【0179】
合成の完了で得られた実施例3の溶液を85℃に加熱して、溶媒として使用した水を蒸発させた。得られた固体を、エチレングリコールを加える前に減圧下に70℃で2時間置いて、48重量%の固体を含む混合物を得た。注射器を用いて、エチレングリコールの溶液3mLを取り出し、そして前以てUV/オゾン処理に10分間付したPET基板のサンプル(8cm×8cm×50μm)上に付着させた。該溶液を35mm/秒で動くテープ-注入成形技法(ドクターブレード法)を使用して拡げた。得られた材料を直ちに、第1基板と同じ寸法をもつ第2のPET基板で覆った。
【0180】
実施例5-透過性測定(実施例1のポリマー)
厚さ50μmのPET基板であって、その上に厚さ62μmの実施例1のポリマーが付着され、乾燥されそして50μmの別のPET基板で覆われた前記PET基板から構成された系の透過性を調査した。このサンプルを水蒸気伝達速度(WVTR)及びタイムラグ(平衡が達成されるまでに観測された時間でありTLと表される)への接近法を与える透過率測定器の中に入れた。
【0181】
分散係数における傾向をもまた、前述のサンプルの初期状態(乾燥状態での分散係数Ddry)とWVTR安定化後の最終状態(湿潤状態での分散係数Dwet)との間で監視した。
【0182】
比較は、PET基板/比較用接着剤/PET基板の系を用いて行った。比較用接着剤は市販の接着剤DELO(登録商標)Katiobond(登録商標)LP655、参照用バリア接着剤、であった。本発明の系に関しては、2つのPET基板のそれぞれは50μmの厚さを有し、接着剤層の厚さは62μmであった。
【0183】
162μmの厚さを有するPET層を用いても比較を行った。
結果を以下の表に示す。
【0184】
【表1】
【0185】
本発明を用いると、TLにおいてかなりの増加を得ることができ、従って平衡を遅らせることができることがわかる。
【0186】
実施例6-透過性測定(実施例3のポリマー)
実施例5と同様にして、50μm厚のPET基板から成り、その上にエチレングリコールに溶かした実施例3のポリマー(48重量%)の47μm厚の層を付着させ、50μm厚の別のPET基板で覆い、そして溶媒を乾燥させない系について透過性を調べた。
【0187】
147μmの厚さを有するPET層を用いて比較を行った。
結果を以下の表に示す。
【0188】
【表2】
【0189】
再び、本発明を用いると、TLにおいてかなりの増加を得ることができ、従って平衡を遅らせることができることがわかる。
【0190】
実施例7-透明性測定(実施例1のポリマー)
透過率測定はUV-可視分光光度計で行った。
250~900nmの範囲内で50μmの厚さを有するPETサンプルの透過率はPET-実施例1-PETサンプル(50μm-26μm-50μm)の透過率よりも0.8%低く、本発明の組成物の全体的透明性を例証する。
【0191】
連続照明(AM1.5スペクトルを有する1000W/mの太陽光)に1700時間暴露した後、観察された透過率損失は、400~800nmの範囲内で0.3%の領域だけであり、本発明の照明下での経年劣化に対する良好な耐性を例証する。
【0192】
実施例8-機械的特性評価(実施例1のポリマー)
サンプルを下記の系から半径7cmの円盤の形態で調製した:厚さ175μmのPET基板単独、実施例5に記載したPET-DELO-PET多層及びPET-実施例1-PET多層。距離dは、サンプルの2つの直径方向に反対側の末端を分離する距離、そしてFはこれらの2つの末端の1つに加えられた、該末端を他の末端の方に動かすための力である。サンプルのへりのポイントAを固定支持体に(クランプで)保持した。強いワイヤをポイントAと直径方向に反対側のポイントBに取り付けた。このワイヤをサンプル中のポイントAに作られた穴を通して、可変重量に連結した。この器具で、屈曲方向をBからAに向けながら、ポイントBに加える力を変化させることができる。距離dは距離ABに相当する。
結果を以下の表に示す。
【0193】
【表3】
【0194】
本発明に従って調製されたサンプルは顕著な可撓性を有することが見いだされる。
【0195】
実施例9-光電池機器の封入(実施例1のポリマー)
有機光電池機器を、2016年8月29日出願のフランス特許出願16/58014に記載されたフッ素化ポリマーを含む約2μm厚の平坦化層で前以て被覆した。
【0196】
実施例1のポリマーの厚さ26μmの層を、3M(登録商標)UBF510バリアフィルムの基板上に、実施例4と同じ方法で付着させた。得られた材料を野外に2時間放置し、次に70℃で10分間、減圧乾燥した。光重合性接着剤のARKEMA(登録商標)AEC-ポリマーF15の一滴を、実施例1のポリマーで被覆したUBF510基板で形成された系の中心に置き、次に封入しようとする光電池機器のサイズに対応する表面の上に拡げた。
【0197】
この機器をF15接着剤の上に置き、次に同様にして拡げたF15接着剤の第2の一滴で被覆した。実施例1のポリマーで被覆したUBF510基板系を上記と同じようにして前の調製物上に積層した。組立品をUV照明下で低圧水銀灯を有するUV KEOLオーブン中に各面について2分間置いて、F15接着剤を架橋した。
【0198】
電気回路に接続した光電池機器をランプで照明して、電圧及び電流(I)又は電流密度(J)を測定可能にした。照明はAM1.5スペクトルで1000W/mであった。該機器の電流曲線(I又はJ)を電圧の関数として決定した。
【0199】
上記機器は下記の決定により特性化した:
-その開放回路電圧、又はゼロ電流における電圧(Voc);
-その短回路電流密度、又はゼロ電圧における電流密度(Jsc);
-Pmax/(Voc×Jsc)に等しいその形状因子(FF)、ここでPmaxは該機器により与えられる最大電力、即ち、電流-電位曲線上の積V×Jが最も高い点であり;そして
-その電力変換効率PCE=Voc×Jsc×FF/Pi、ここでPiは該機器がランプから受け取る入射電力である。
【0200】
結果を下記の表に示す。
【0201】
【表4】
【0202】
本発明は、光電池機器を効率的に封入し、特に収率損失は5%未満である。
【0203】
第2のステップで、有機光電池機器を、40℃及び95%の湿度で12時間、次いで20℃及び50%の湿度で12時間から成るサイクルを有する人工気候室に置くことにより、加速したエージングに付した。
【0204】
4サイクル後、PCEは封入していない光電池機器については69%減少し、そして封入した光電池機器については8%だけしか減少しなかった。
【0205】
従って、本発明は非常に良好な経年劣化に対する耐性を与える。
【0206】
実施例10-光電池機器の封入(実施例2のポリマー)
実施例2の液体分散体(ラテックス)を44重量%の乾燥抽出物が得られるまで単に加熱することにより濃縮した。5μmフィルターを取り付けた注射器を用いて、該分散体3mLを取り出し、そして3M(登録商標)UBF510バリアフィルムのサンプル(8cm×8cm×200μm)の中心に置いたが、該サンプルは、前以てUV/オゾン処理に10分間付しそしてマスクを前以て設けて、本発明の組成物が後の光電池機器の位置及びそれに隣接する領域に対応する中心区域7及び1(図2に従う)に付着しないようにした。
【0207】
該サンプルを1000rpmで回転させた;この速度は7秒後に到達し、23秒維持した。得られた材料を乾燥のために70℃の減圧オーブンに2時間置いた。上記マスクを除いた後、周辺区域3及び8(図2に従う)のみに上記組成物の堆積物を含む3M(登録商標)UBF510バリアフィルムが得られた。
【0208】
一滴の光重合性ARKEMA(登録商標)AEC-ポリマーF15接着剤を、ポリマーで被覆したUBF510基板で形成された系の中心に置き、中央区域7及び1に相当する表面の上に拡げた。
【0209】
有機光電池機器をF15接着剤の上に置き、次に同様にして拡げた2滴目のF15接着剤で被覆した。区域3及び8のみを実施例2のポリマーで被覆したUBF510基板系を上記と同様にして前述の調製物上に手で積層した。組立品をUV照明下で低圧水銀灯を有するUV KEOLオーブン中に各側面について2分間置いて、F15接着剤を架橋させた。
【0210】
第2ステップで、このようにして封入した有機光電池機器を、45℃且つ85%の湿度で12時間、次いで45℃且つ15%の湿度で12時間から成るサイクルを有する人工気候室に置くことにより、加速エージングに付した。下記の表は、前述した構造化封入物を有する機器について、正規化したPCE、即ちPCE(t)/PCE(t=0)を示し、そして比較用として、参考用接着剤DELO(登録商標)Katiobond(登録商標)LP655で封入した機器、及び封入しない機器についての正規化したPCEを示す。
【0211】
【表5】
【0212】
従って、本発明は参考用と比べて非常に良好な耐エージング性を与え、加えて可撓性を有する。
【0213】
実施例11-接着性測定(実施例2のポリマー)
実施例4に記載したように、厚さ50μmのPET基板から構成され、その上に実施例2の乾燥ポリマーの30μm層が付着され、厚さ50μmの別のPET基板により被覆された系を調製した。
【0214】
このサンプルを幅2cm、長さ7cm(5cmは堆積物を含み、2cmは2つのPET基板のみ)のテスト試料に切断した。T剥離試験を行って、本発明の水の重量割合の関数としての接着性を調べた。本発明の水の重量割合は、測定時に付着した組成物中の液体担体の重量含量に相当する。剥離試験のために、各PETに、付着物を含まない区域内でジョー(あご状部)を取り付け、これらのジョーを一定速度100mm/分で徐々に引き離し;要した力を測定しそして2cmの付着物幅と関係づけた。
【0215】
2%未満又は16%を越える水の重量割合については接着性は比較的低い(F<1N/cm)ことが見いだされた。最大接着性は5%に近い重量割合で達し、3.1N/cmの値であった。
図1
図2a
図2b