(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】油圧回路および建設機械
(51)【国際特許分類】
F15B 11/02 20060101AFI20231026BHJP
F15B 11/17 20060101ALI20231026BHJP
F15B 11/042 20060101ALI20231026BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F15B11/02 M
F15B11/17
F15B11/042
E02F9/22 K
(21)【出願番号】P 2020001488
(22)【出願日】2020-01-08
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】岡田 泰輔
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-278241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/02
F15B 11/17
F15B 11/042
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポンプ及び第2ポンプから油を供給され第1アクチュエータへの油供給を制御する第1方向切換弁と、
前記第1方向切換弁の上流側で前記第2ポンプから油を供給され第2アクチュエータへの油供給を制御する第2方向切換弁と、
少なくとも前記第2方向切換弁から前記第2アクチュエータへの油供給が停止し且つ前記第1方向切換弁から前記第1アクチュエータへ油が供給される場合に、前記第1ポンプから前記第1方向切換弁への油供給を停止する又は前記第1ポンプから前記第1方向切換弁への油供給量を減少させる弁と、
第3ポンプから油を供給され第3アクチュエータへの油供給を制御する第3方向切換弁と、を備える、油圧回路。
【請求項2】
前記弁は、前記第2方向切換弁から前記第2アクチュエータへ油が供給され且つ前記第1方向切換弁から前記第1アクチュエータへ油が供給される場合に、前記第1ポンプから前記第1方向切換弁へ油を供給する又は前記第1ポンプから前記第1方向切換弁への油供給量を増大させる、請求項1に記載に油圧回路。
【請求項3】
前記第2方向切換弁から前記第2アクチュエータへ油が供給され、前記第3方向切換弁から前記第3アクチュエータへ油が供給され且つ前記第1方向切換弁から前記第1アクチュエータへ油が供給される場合に、前記第1ポンプから前記第1方向切換弁へ油を供給する又は前記第1ポンプから前記第1方向切換弁への油供給量を増大させる、請求項
1又は2に記載に油圧回路。
【請求項4】
前記第1アクチュエータは、ショベルカーのアームを駆動し、
前記第2アクチュエータは、左右の走行装置の一方を駆動し、
前記第3アクチュエータは、前記左右の走行装置の他方を駆動する、請求項
1~3のいずれか一項に記載の油圧回路。
【請求項5】
第1アクチュエータ
、第2アクチュエータ
及び第3アクチュエータに並行して油を供給する場合に、第1ポンプからの油を前記第1アクチュエータに供給し且つ第2ポンプからの油を前記第
2アクチュエータに供給し、
第3ポンプからの油を前記第3アクチュエータに供給し、
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータのうちの前記第1アクチュエータのみに油を供給する際に、前記第1ポンプから前記第1アクチュエータへの油供給を停止または油供給量を減少させ、且つ、前記第2ポンプから前記第1アクチュエータへ油を供給する、油圧回路。
【請求項6】
請求項
1~5のいずれか一項に記載の油圧回路を備える、建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧回路および建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、複数のアクチュエータに油を供給する油圧回路が開示されている。この油圧回路は、建設機械であるショベルカーに適用されている。特許文献1及び2の油圧回路では、ショベルカーの走行装置を駆動するアクチュエータ(油圧モータ)に対して第1のポンプから油が供給され、ショベルカーのアームを駆動するアクチュエータ(油圧シリンダ)に対して第2のポンプから油が供給される。ただし、走行装置用のアクチュエータに油が供給されていない場合、第1のポンプからの油も、アーム駆動用のアクチュエータに対して供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-217852号公報
【文献】実公平4-578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に開示された油圧回路において、アーム駆動用のアクチュエータは、走行装置の動作時に第2のポンプのみから油を供給され、走行装置の非動作時に第1および第2のポンプの両方から油を供給される。このため、アーム駆動用のアクチュエータの動作速度は、走行装置の動作の有無に応じて変化する。
【0005】
アクチュエータの動作速度が他のアクチュエータの動作状況に応じて変化する場合、当該アクチュエータの操作性が低下する。本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、アクチュエータの動作速度が他のアクチュエータの動作に依存して大きく変化してしまうことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による油圧回路は、
第1ポンプ及び第2ポンプから油を供給され第1アクチュエータへの油供給を制御する第1方向切換弁と、
前記第1方向切換弁の上流側で前記第2ポンプから油を供給され第2アクチュエータへの油供給を制御する第2方向切換弁と、
少なくとも前記第2方向切換弁から前記第2アクチュエータへの油供給が停止し且つ前記第1方向切換弁から前記第1アクチュエータへ油が供給される場合に、前記第1ポンプから前記第1方向切換弁への油供給を停止する又は前記第1ポンプから前記第1方向切換弁への油供給量を減少させる弁と、を備える。
【0007】
本発明による油圧回路において、前記弁は、前記第2方向切換弁から前記第2アクチュエータへ油が供給され且つ前記第1方向切換弁から前記第1アクチュエータへ油が供給される場合に、前記第1ポンプから前記第1方向切換弁へ油を供給する又は前記第1ポンプから前記第1方向切換弁への油供給量を増大させるようにしてもよい。
【0008】
本発明による油圧回路は、第3ポンプから油を供給され第3アクチュエータへの油供給を制御する第3方向切換弁を備えるようにしてもよい。
【0009】
本発明による油圧回路において、前記第2方向切換弁から前記第2アクチュエータへ油が供給され、前記第3方向切換弁から前記第3アクチュエータへ油が供給され且つ前記第1方向切換弁から前記第1アクチュエータへ油が供給される場合に、前記第1ポンプから前記第1方向切換弁へ油を供給する又は前記第1ポンプから前記第1方向切換弁への油供給量を増大させるようにしてもよい。
【0010】
本発明による油圧回路において、
前記第1アクチュエータは、ショベルカーのアームを駆動し、
前記第2アクチュエータは、左右の走行装置の一方を駆動し、
前記第3アクチュエータは、前記左右の走行装置の他方を駆動するようにしてもよい。
【0011】
本発明による他の油圧回路は、
第1アクチュエータ及び第2アクチュエータに並行して油を供給する場合に、第1ポンプからの油を前記第1アクチュエータに供給し且つ第2ポンプからの油を前記第1アクチュエータに供給し、
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータのうちの前記第1アクチュエータのみに油を供給する際に、前記第1ポンプから前記第1アクチュエータへの油供給を停止または油供給量を減少させ、且つ、前記第2ポンプから前記第1アクチュエータへ油を供給する。
【0012】
本発明による建設機械は、上述した本発明によるいずれかの油圧回路を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アクチュエータの動作速度が他のアクチュエータの動作に依存して大きく変化してしまうことを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、建設機械、油圧システム及び油圧回路を示す図である。
【
図5】
図5は、
図1の油圧回路の一変形例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、
図1の油圧回路の他の変形例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、
図1の回路を含むようにして構成された建設機械用の油圧回路の一具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面に示された具体例を参照しながら説明する。
【0016】
以下に説明する油圧回路20は、ポンプから供給される油の流れを制御する回路であって、一例として、建設作業を行うための機械、すなわち建設機械10に適用される。本実施の形態の油圧回路20が適用され得る建設機械10として、ショベルカー、クレーン車、フォークリフト等が例示される。建設機械10に適用される油圧回路20は、ショベル、ブレード、クレーン、ハンマー、駆動装置等の機械装備に接続されたアクチュエータと、油圧システム15を構成する。油圧回路20は、アクチュエータとしての油圧シリンダや油圧モータへ油を供給し、アクチュエータの動作を制御する。アクチュエータが動作することで、機械装備を駆動する。すなわち、油圧システム15は、油圧回路20と、油圧回路20に油を供給するポンプと、油圧回路20から油を供給されるアクチュエータと、を含んでいる。建設機械10は、油圧システム15および機械装備を含んでいる。
【0017】
図1は、本実施の形態による油圧回路の基本的な構成を示す図であり、
図2~
図4は、
図1の油圧回路の作用を説明するための図である。
図1~
図4に示すように、油圧回路20は、まず、第1方向切換弁V1および第2方向切換弁V2を有している。この油圧回路20は、第1ポンプP1及び第2ポンプP2から油を供給される。第1方向切換弁V1は、第1ポンプP1及び第2ポンプP2から油を供給され、第1アクチュエータA1への油供給を制御する。一方、第2方向切換弁V2は、第2ポンプP2から油を供給され、第2アクチュエータA2への油供給を制御する。
【0018】
油圧回路20は、第1ポンプP1に接続した第1供給路L1と、第2ポンプP2に接続した第2供給路L2と、を有している。第1ポンプP1は第1供給路L1内に油を吐出し、第1ポンプP1から吐出された油は第1供給路L1内を流れる。第2ポンプP2は第2供給路L2内に油を吐出し、第2ポンプP2から吐出された油は第2供給路L2内を流れる。第1方向切換弁V1及び第2方向切換弁V2は、第2供給路L2上に設けられている。
【0019】
第2方向切換弁V2は、第1方向切換弁V1の直列上流側で第2ポンプP2からの油を供給される。すなわち、第2方向切換弁V2を介して第2アクチュエータA2へ第2ポンプP2からの油を供給する際に第2ポンプP2から第1方向切換弁V1への油供給が停止し、第2方向切換弁V2を介した第2アクチュエータA2への第2ポンプP2からの油供給が停止している際に第2ポンプP2から第1方向切換弁V1へ油が供給される。図示された例において、第2方向切換弁V2は、第2供給路L2上において第1方向切換弁V1と第2ポンプP2との間に位置している。第2供給路L2は、センターバイパス通路として、第2ポンプP2からの油が第2方向切換弁V2及び第1方向切換弁V1をこの順番で通過している。第2方向切換弁V2が、中立位置にある場合、言い換えると第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2に油が流れ込んでいない場合、
図1等に示すように、第2方向切換弁V2は第2供給路L2を開放し、第2ポンプP2から吐出された油は、第2方向切換弁V2内の通路を通過して、第2供給路L2内を第1方向切換弁V1に向けて流れる。一方、第2方向切換弁V2が、動作位置にある場合、言い換えると第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2に油が供給されている場合、
図3等に示すように、第2供給路L2は第2方向切換弁V2で閉鎖される。
【0020】
すなわち、第2方向切換弁V2が動作位置にある場合、第2ポンプP2からの油の第2供給路L2内における流路における第2方向切換弁V2よりも下流側には、第2ポンプP2からの油が流れない。この油圧回路20において、第2ポンプP2から供給される油を、第1方向切換弁V1及び第2方向切換弁V2を介して同時に第1アクチュエータA1及び第2アクチュエータA2の両方に供給することはできない。第2方向切換弁V2を介した第2アクチュエータA2への供給が優先され、このとき、第1方向切換弁V1を介して第1アクチュエータA1へ第2ポンプP2からの油を供給することができない。
【0021】
その一方で、油圧回路20は、第1供給路L1から分岐した合流供給路L4と、第1供給路L1から合流供給路L4への油の流入を制御する合流弁VXと、を有している。
図1に示すように、合流供給路L4は、第1方向切換弁V1に通じている。したがって、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2へ第2ポンプP2の油が供給されている場合でも、言い換えると第2方向切換弁V2よりも下流側に第2ポンプP2の油が供給されていない場合でも、第1方向切換弁V1は、合流供給路L4を介して第1ポンプP1から油を供給される。したがって、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2へ第2ポンプP2の油が供給されている際に、第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1へ第1ポンプP1の油を供給することができる。すなわち、第2ポンプP2からの油によって第2アクチュエータA2を動作させながら、同時に、第1ポンプP1からの油によって第1アクチュエータA1を動作させることができる。
【0022】
図示された例において、第2供給路L2は、第2ポンプP2からタンクTまで延びる主供給路L2aと、主供給路L2aから分岐して第1方向切換弁V1に接続する分岐供給路L2bと、を有している。第1方向切換弁V1は主供給路L2a上に設けられている。主供給路L2aは第1方向切換弁V1内を延びている。第1方向切換弁V1は主供給路L2aを開閉する。分岐供給路L2b上には逆止弁CVxが設けられている。逆止弁CVxは、分岐供給路L2bを介した主供給路L2aから第1方向切換弁V1への油の流入を許容し、分岐供給路L2bを介した第1方向切換弁V1の側から主供給路L2aへの油の流入を規制する。そして、合流供給路L4は分岐供給路L2bに接続している。合流供給路L4は、逆止弁CVxと第1方向切換弁V1との間となる位置において分岐供給路L2bに接続している。
【0023】
合流供給路L4上には、逆止弁CVが設けられている。逆止弁CVは、合流供給路L4を介した第1供給路L1から第2供給路L2への油の流入を許容し、合流供給路L4を介した第2供給路L2から第1供給路L1への油の流入を規制する。
【0024】
合流弁VXは、少なくとも第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2への油供給が停止し且つ第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1へ油が供給されている場合、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給を停止する又は第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量を減少させる。より厳密に表現すると、合流弁VXは、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2への油供給が停止し且つ第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1へ油が供給されている場合、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給を停止する、又は、第2方向切換弁から前記第2アクチュエータへ油が供給され且つ前記第1方向切換弁から第1アクチュエータへ油が供給されている場合の第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量よりも第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量を減少させる。第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2への油供給が停止している場合、第2ポンプP2からの油は、第2方向切換弁V2を通過して、第1方向切換弁V1へ供給される。したがって、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2への油供給が停止している場合、合流供給路L4を介した第1ポンプP1からの油供給が停止または減少したとしても、十分な量の油を第1方向切換弁V1に供給することができる。
【0025】
また、合流弁VXは、第1供給路L1上に設けられている。第1供給路L1は合流弁VX内を延びている。合流弁VXは第1供給路L1に絞り形成することができる。
【0026】
図示された例において、合流弁VXは、
図1に示された第1位置と、
図4に示された第2位置と、を有している。合流弁VXは、第1位置において、合流供給路L4を第1供給路L1に接続する。すなわち、合流弁VXが第1位置にある場合、合流供給路L4を介して第1供給路L1は第2供給路L2、とりわけ図示された例では第2供給路L2の分岐供給路L2bに通じるようになる。また、合流弁VXは、
図1に示された第1位置において、第1供給路L1を開放する。とりわけ、合流弁VXは、
図1に示された第1位置において、絞りを形成することなく第1供給路L1を開放する。
【0027】
一方、合流弁VXは、第2位置において、合流供給路L4を第1供給路L1に接続するとともに、第1供給路L1を絞る。合流供給路L4が第1供給路L1に接続する位置は、第1供給路L1の絞り21が設置される位置よりも、第1ポンプP1から吐出された油の第1供給路L1内での流路に沿って上流側となっている。したがって、合流弁VXが第2位置にある場合、第1供給路L1内を流れる第1ポンプP1から吐出された油は、合流供給路L4を介して第2供給路L2に流入することを促進される。つまり、合流弁VXが第2位置にある場合、合流弁VXが第1位置にある場合と比較して、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量を増大させることができる。
【0028】
とりわけ合流弁VXが第1位置にあり第1方向切換弁V1が動作位置にある場合には、第2供給路L2内の圧力が上昇するので、合流弁VXが第2位置にある場合と比較して、合流供給路L4上に設けられた逆止弁CVにより、第1供給路L1内を流れる第1ポンプP1から吐出された油が合流供給路L4を介して第2供給路L2に流入することが抑制される。したがって、合流弁VXを第1位置に維持することで、とりわけ合流弁VXを第1位置に維持するとともに第1方向切換弁V1が動作位置に維持することで、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給を停止すること、或いは、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量を、合流弁VXを第2位置に維持した場合と比較して、減少させることができる。
【0029】
図示された例において、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2へ油が供給され且つ第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1へ油が供給される場合、合流弁VXは第2位置に維持され、その他の場合に合流弁VXは第1位置に維持されるようになっている。この例によれば、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2へ油が供給され且つ第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1へ油が供給される場合に、その他の場合と比較して、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量を増大させることができる。また、この例によれば、少なくとも第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2への油供給が停止し且つ第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1へ油が供給されている場合に、合流弁VXを第1位置に維持することで、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給を停止する又は第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量を減少させることが可能となる。より厳密に表現すると、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2への油供給が停止し且つ第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1へ油が供給されている場合、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給を停止する、又は、第2方向切換弁から前記第2アクチュエータへ油が供給され且つ前記第1方向切換弁から第1アクチュエータへ油が供給されている場合の第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量よりも第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量を減少させる。
【0030】
なお、第1供給路L1は、合流供給路L4が接続する位置よりも下流側において、タンクTに接続している。したがって、第1ポンプP1から供給される油は、合流供給路L4に流れ込まなかった場合、タンクTに流入する。同様に、第2供給路L2は、第1方向切換弁V1よりも下流側において、タンクTに接続している。したがって、第2ポンプP2から供給される油は、第1方向切換弁V1や第2方向切換弁V2を介して第1アクチュエータA1や第2アクチュエータA2に供給されなかった場合、タンクTに流入する。
【0031】
次に、以上に説明した油圧回路20における油の流れを説明する。
【0032】
まず、
図1は、第1方向切換弁V1及び第2方向切換弁V2が共に中立位置に維持されている状態を示している。言い換えると、
図1は、第1方向切換弁V1を介して第1アクチュエータA1に油が供給されておらず且つ第2方向切換弁V2を介して第2アクチュエータA2に油が供給されていない状態を示している。
図1に示された状態において、第1ポンプP1から第1供給路L1に供給された油はタンクTに回収される。また、
図1に示された状態において、第2ポンプP2から第2供給路L2に供給された油はタンクTに回収される。
【0033】
図1に示された状態において、合流弁VXは、第1位置に維持され、第1供給路L1を合流供給路L4に接続している。したがって、第1ポンプP1から第1供給路L1内へ吐出された油は、第1供給路L1内を通過してタンクTに流れ込むだけでなく、合流供給路L4を介して第1供給路L1から第2供給路L2に流入することも可能である。ただし、合流供給路L4上に逆止弁CVが設けられている。また、合流供給路L4は、逆止弁CVxと閉鎖された第1方向切換弁V1との間となる位置において第2供給路L2、とりわけ図示された例では第2供給路L2の分岐供給路L2bに接続している。したがって、第1ポンプP1の吐出圧力と第2ポンプP2の吐出圧力が概ね同一であれば、第1ポンプP1から吐出された油は、概ね、合流供給路L4を介して第2供給路L2に流れ込むことなく、第1供給路L1を通過してタンクTに流入することになる。
【0034】
次に、
図2に示された状態において、第1方向切換弁V1が動作位置にあり、第2方向切換弁V2が中立位置にある。言い換えると、
図2に示された状態において、第1アクチュエータA1に油が供給されており、第2アクチュエータA2に油が供給されていない。
図2に示された状態において、第2ポンプP2から第2供給路L2に吐出された油は、第2方向切換弁V2を通過して第1方向切換弁V1に流れ込む。第1方向切換弁V1は、第2ポンプP2から供給された油を第1アクチュエータA1に供給し、第1アクチュエータA1が動作する。図示された例において、第1アクチュエータA1は油圧シリンダにより構成されている。
【0035】
図2に示された状態において、合流弁VXは、第1位置に維持され、第1供給路L1を合流供給路L4に接続している。ただし、第1アクチュエータA1が動作している場合、通常、第2供給路L2内の圧力は無負荷の第1供給路L1内の圧力よりも高くなる。したがって、第1ポンプP1から第1供給路L1内へ吐出された油は、合流供給路L4を介して第2供給路L2に流入することなく、タンクTへ流れ込む。
【0036】
次に、
図3に示された状態において、第1方向切換弁V1が中立位置にあり、第2方向切換弁V2が動作位置にある。言い換えると、
図3に示された状態において、第1アクチュエータA1に油が供給されておらず、第2アクチュエータA2に油が供給されている。
図3に示された状態において、第2ポンプP2から第2供給路L2に吐出された油は、第2方向切換弁V2よりも下流側には流れない。第2ポンプP2から第2供給路L2に吐出された油は、第2方向切換弁V2を介して第2アクチュエータA2に供給され、第2アクチュエータA2が動作する。図示された例において、第2アクチュエータA2は油圧モータにより構成されている。
【0037】
図3に示された状態において、合流弁VXは、第1位置に維持され、第1供給路L1を合流供給路L4に接続している。ただし、合流供給路L4上に逆止弁CVが設けられている。したがって、第1ポンプP1の吐出圧力と第2ポンプP2の吐出圧力が概ね同一であれば、第1ポンプP1から吐出された油は、概ね、合流供給路L4を介して第2供給路L2に流れ込むことなく、第1供給路L1を通過してタンクTに流入することになる。
【0038】
次に、
図4に示された状態において、第1方向切換弁V1及び第2方向切換弁V2が共に動作位置にある。言い換えると、
図4に示された状態において、第1アクチュエータA1及び第2アクチュエータA2の両方に油が供給されている。
【0039】
図4に示された状態において、第2ポンプP2から第2供給路L2に吐出された油は、第2方向切換弁V2を介して第2アクチュエータA2に供給され、第2アクチュエータA2が動作する。その一方で、
図4に示された状態において、第2ポンプP2から第2供給路L2に吐出された油は、第2方向切換弁V2よりも下流側には流れない。ただし、
図4に示された状態において、合流弁VXは第2位置に維持されている。合流弁VXが第2位置に維持されることで、第1供給路L1上に絞り21が設置され、第1供給路L1内の圧力が上昇する。一方、第2供給路L2の合流供給路L4と接続する位置、とりわけ図示された例では分岐供給路L2bは、第2方向切換弁V2によって第2ポンプP2から吐出された油の供給が規制され、低圧に保たれている。このため、第1ポンプP1から第1供給路L1に吐出された油は、合流供給路L4を介して第2供給路L2に流入する。この第1ポンプP1からの油が第1方向切換弁V1に供給される。第1方向切換弁V1は第1ポンプP1からの油を第1アクチュエータA1に供給し、第1アクチュエータA1が動作する。
【0040】
以上のような本実施の形態による油圧回路20によれば、次に説明する作用効果を享受することができる。
【0041】
本実施の形態において、第2方向切換弁V2は、第2ポンプP2による油供給経路(第2供給路)L2上に第1方向切換弁V1と直列回路で配置される。そして、第2方向切換弁V2は、直列回路における第1方向切換弁V1の上流側に位置している。したがって、第2方向切換弁V2から第1方向切換弁V1への油供給の有無に依存して、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2への油供給量が大きく変化することを効果的に防止することができる。結果として、第1アクチュエータA1の動作の有無に依存して、第2アクチュエータA2の動作速度が大きく変化してしまうことを効果的に防止することができる。これにより、第1アクチュエータA1の動作状態によらず、第2アクチュエータA2の動作特性を安定させることができ、第2アクチュエータA2の操作性を改善することができる。
【0042】
次に、第1方向切換弁V1は、第2ポンプP2からの油供給経路(第2供給路)L2としての直列回路における第2方向切換弁V2の下流側に位置している。したがって、第1方向切換弁V1は、第2アクチュエータA2の動作中に第2ポンプP2から油を供給されず、その代わりに第1ポンプP1から油を供給される。第2アクチュエータA2の動作中、第1アクチュエータA1は第1ポンプP1から供給される油によって動作する。一方、第2アクチュエータA2の非動作中、第1方向切換弁V1は第2ポンプP2から油を供給され、第1アクチュエータA1は、第2ポンプP2から供給される油によって動作する。このように第2ポンプP2からの油が第1アクチュエータA1に供給される場合、合流弁VXは、第1ポンプP1から第1方向切換弁への油供給を停止する、又は、第2ポンプP2からの油供給が停止している場合と比較して第1ポンプから第1方向切換弁への油供給量を減少させる。
【0043】
すなわち、第1アクチュエータA1は、第2アクチュエータA2の動作時に第1ポンプP1からの油によって動作することになるが、第2アクチュエータA2の非動作時には第2ポンプP2からの油が供給される。そして、第2ポンプP2から油が第1方向切換弁V1に供給される第2アクチュエータA2の非動作時に、第1ポンプP1からの油供給が停止し、又は、第2アクチュエータA2の動作時と比較して油供給量が減少する。すなわち、第2ポンプP2から第1方向切換弁V1への油供給の有無に応じて、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量が調節される。より具体的には、第2ポンプP2から第1方向切換弁V1へ油が供給される場合、第2ポンプP2から第1方向切換弁V1への油が供給されない場合と比較して、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給を停止又は油供給量を低減する。
【0044】
したがって、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2への油供給の有無に依存して、第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1への油供給量が大きく変化することを効果的に防止することができる。結果として、第2アクチュエータA2の動作の有無に依存して、第1アクチュエータA1の動作速度が大きく変化してしまうことを効果的に防止することができる。つまり、第2アクチュエータA2の動作状態によらず、第1アクチュエータA1の動作特性を安定させることができ、第1アクチュエータA1の操作性を改善することができる。
【0045】
上述した一実施の形態の一具体例において、合流弁VXは、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2へ油が供給され且つ第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1へ油が供給されている場合に、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量を増大させる。より具体的には、第2ポンプP2から動作位置にある第1方向切換弁V1へ油が供給されない場合、第2ポンプP2から動作位置にある第1方向切換弁V1へ油が供給される場合と比較して、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量を増大させる。この具体例によれば、第1アクチュエータA1は、第2アクチュエータA2の動作中、第2ポンプP2から油を供給されない代わりに、第1方向切換弁V1を介して第1ポンプP1から十分な量の油を供給される。したがって、第2アクチュエータA2の動作の有無に依存して、第1アクチュエータA1の動作速度が大きく変化してしまうことを効果的に防止することができる。
【0046】
ところで、
図1~
図4の示された例において、油圧回路20は、第1ポンプP1及び第2ポンプP2に加え、第3ポンプP3からも油の供給を受ける。油圧回路20は、第3ポンプP3から油を供給され第3アクチュエータA3への油供給を制御する第3方向切換弁V3を有している。また、油圧回路20は、第3ポンプP3に接続した第3供給路L3を有している。第3ポンプP3は第3供給路L3内に油を吐出し、油は第3供給路L3内を流れる。この第3供給路L3上に、第3方向切換弁V3が設けられている。
図1~
図4に示された例において、第3供給路L3は、第3方向切換弁V3よりも下流側において、タンクTに接続している。したがって、第3ポンプP3から供給される油は、第3方向切換弁V3を介して第3アクチュエータA3に供給されなかった場合、タンクTに回収される。
【0047】
図1~
図4に示された例において、第3方向切換弁V3は、第3ポンプP3のみから油を供給される。したがって、第1アクチュエータA1や第2アクチュエータA2の動作状況によらず、第3アクチュエータA3の動作速度を一定に保つことが可能となる。また、第3アクチュエータA3の動作の有無が、第1アクチュエータA1及び第2アクチュエータA2の動作速度に影響することもない。そして上述したように、第2アクチュエータA2の動作状況によらず、第1アクチュエータA1の動作速度を概ね一定に保つことが可能となる。また、第1アクチュエータA1の動作状況によらず、第2アクチュエータA2の動作速度を概ね一定に保つことが可能となる。したがって、他のアクチュエータの動作状況によらず、第1アクチュエータA1の動作速度を第3アクチュエータA3の動作速度と揃えることや、第2アクチュエータA2の動作速度を第3アクチュエータA3の動作速度と揃えることが可能となる。
【0048】
図示された例において、第3アクチュエータA3は油圧モータによって構成されている。したがって、第2アクチュエータA2をなす油圧モータからの回転出力と、第3アクチュエータA3をなす油圧モータからの回転出力を、概ね同一にすることも可能となる。例えば、後述する具体例のように、第2アクチュエータA2をなす油圧モータ及び第3アクチュエータA3をなす油圧モータが、クローラ等の左右の走行装置の各々に割り当てられた駆動手段である場合、第1アクチュエータA1の動作状況に依存することなく、左側の走行装置の動作と右側の走行装置の動作とを効果的に揃えることができる。結果として、第1アクチュエータA1の動作状況によらず、油圧回路20を含む建設機械10の走行時における意図しない斜行を効果的に防止することができる。
【0049】
このように、第3アクチュエータA3が第2アクチュエータA2と関連性を有する例、例えば第3アクチュエータA3が第2アクチュエータA2と協働することが期待されている例では、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2へ油が供給されるとともに第3方向切換弁V3から第3アクチュエータA3へ油が供給され且つ第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1へ油が供給される場合に、合流弁VXを第2位置に維持し、その他の場合に合流弁VXを第1位置に維持するようにしてもよい。
【0050】
この設定によれば、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2へ油が供給されるとともに第3方向切換弁V3から第3アクチュエータA3へ油が供給され且つ第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1へ油が供給される場合に、合流弁VXは、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量を増大させることができる。この設定によれば、第1アクチュエータA1は、第2アクチュエータA2及び第3アクチュエータA3の動作中、第2ポンプP2から油を供給されない代わりに、第1ポンプP1から十分な量の油を供給される。したがって、他のアクチュエータの動作の有無に依存して、第1アクチュエータA1の動作速度が大きく変化してしまうことを効果的に防止することができる。
【0051】
同様に、この設定において、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2への油供給が停止するとともに第3方向切換弁V3から第3アクチュエータA3への油供給が停止し且つ第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1へ油が供給される場合に、合流弁VXは、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給を停止する又は第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量を減少させるようにしてもよい。この設定によれば、第1アクチュエータA1は、第2アクチュエータA2及び第3アクチュエータA3の非動作中、第2ポンプP2から油を供給されるようになる一方で、第1ポンプP1からの油供給が停止または小量となる。したがって、他のアクチュエータの動作の有無に依存して、第1アクチュエータA1の動作速度が大きく変化してしまうことを効果的に防止することができる。
【0052】
また、
図1~
図4に示された具体例に対する一変形例として、
図5に示すように、第1供給路L1上に一以上の第4方向切換弁V4が設けられていてもよい。
図5に示された例において、第4方向切換弁V4は、合流弁VXの直列上流側で第1ポンプP1から油を供給され第4アクチュエータA4への油供給を制御する。すなわち、第4方向切換弁V4を介して第4アクチュエータA4へ第1ポンプP1からの油を供給する際に第1ポンプP1から合流弁VXへの油供給が停止し、第4方向切換弁V4を介した第4アクチュエータA4への第1ポンプP1からの油供給が停止している際に第1ポンプP1から合流弁VXへ油が供給される。
図5に示された例において、第4アクチュエータA4は油圧モータによって構成されている。
【0053】
図5に示された例においては、第4方向切換弁V4から第4アクチュエータA4に油が供給されている状態において、第1ポンプP1から吐出された油は、合流弁VXより、第1ポンプP1からの油供給経路における合流弁VXの直列上流側となる第4アクチュエータA4へ優先して供給される。したがって、第4アクチュエータA4は、合流弁VXを介して油を供給され得る第1アクチュエータA1と並行して使用されにくい機械装備を駆動するアクチュエータや、第2方向切換弁V2と並行して使用されにくい機械装備を駆動するアクチュエータであることが好ましい。
【0054】
さらに、
図1~
図4に示された具体例に対する他の変形例として、
図6に示すように、第3供給路L3上に一以上の第5方向切換弁V5が設けられていてもよい。
図6に示された例において、第5方向切換弁V5は、第3方向切換弁V3の直列下流側で第3ポンプP3から油を供給され第5アクチュエータA5への油供給を制御する。この例において、第3方向切換弁V3を介して第3アクチュエータA3へ第3ポンプP3からの油を供給する際に第3ポンプP3から第5方向切換弁V5への油供給が停止し、第3方向切換弁V3を介した第3アクチュエータA3への第3ポンプP3からの油供給が停止している際に第3ポンプP3から第5方向切換弁V5へ油が供給される。
図6に示された例において、第5アクチュエータA5は油圧シリンダによって構成されている。
【0055】
ただし、
図6に示された例においては、第1供給路L1から第2合流供給路L5が分岐している。第2合流供給路L5は、合流供給路L4と同様に第1供給路L1から分岐している。ただし、第2合流供給路L5は、合流供給路L4と異なり、第1方向切換弁V1ではなく、第5方向切換弁V5に通じている。
【0056】
図6に示された例において、第3供給路L3は、第3ポンプP3からタンクTまで延びる主供給路L3aと、主供給路L3aから分岐して第5方向切換弁V5に接続する分岐供給路L3bと、を有している。第5方向切換弁V5は主供給路L3a上に設けられている。主供給路L3aは第5方向切換弁V5内を延びている。第5方向切換弁V5は主供給路L3aを開閉する。分岐供給路L3b上には逆止弁CVyが設けられている。逆止弁CVyは、分岐供給路L3bを介した主供給路L3aから第5方向切換弁V5への油の流入を許容し、分岐供給路L3bを介した第5方向切換弁V5の側から主供給路L3aへの油の流入を規制する。そして、第2合流供給路L5は分岐供給路L3bに接続している。第2合流供給路L5は、逆止弁CVyと第5方向切換弁V5との間となる位置において分岐供給路L3bに接続している。
【0057】
図6に示された例において、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2へ油が供給され且つ第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1へ油が供給される場合と、第3方向切換弁V3から第3アクチュエータA3へ油が供給され且つ第5方向切換弁V5から第5アクチュエータA5へ油が供給される場合とに、合流弁VXを第2位置に維持するようにしてもよい。そして、この例において、その他の場合に、合流弁VXを第1位置に維持するようにしてもよい。
【0058】
或いは、
図6に示された例においては、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2へ油が供給されるとともに第3方向切換弁V3から第3アクチュエータA3へ油が供給され且つ第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1へ油が供給される場合と、第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2へ油が供給されるとともに第3方向切換弁V3から第3アクチュエータA3へ油が供給され且つ第5方向切換弁V5から第5アクチュエータA5へ油が供給される場合とに、合流弁VXを第2位置に維持するようにしてもよい。そして、この例において、その他の場合に、合流弁VXを第1位置に維持するようにしてもよい。
【0059】
図6に示された例によれば、第5アクチュエータA5は、第3アクチュエータA3の動作中、第3ポンプP3から油を供給されない代わりに、第1ポンプP1から十分な量の油を供給される。したがって、他の第3アクチュエータA3の動作の有無に依存して、第5アクチュエータA5の動作速度が大きく変化してしまうことを効果的に防止することができる。また、第5アクチュエータA5は、第3アクチュエータA3の非動作中、第3ポンプP3から油を供給されるようになる一方で、第1ポンプP1からの油供給が停止または小量となる。したがって、第3アクチュエータA3の動作の有無に依存して、第5アクチュエータA5の動作速度が大きく変化してしまうことを効果的に防止することができる。
【0060】
さらに、
図6の例に代えて、合流弁VXとは別個に、第1供給路L1から第2合流供給路L5への油の流入を制御する第2合流弁を設けるようにしてもよい。第2合流弁は、合流弁VXと同様の第1位置と第2位置とを有するようにしてもよい。この例において、第3方向切換弁V3から第3アクチュエータA3へ油が供給され且つ第5方向切換弁V5から第5アクチュエータA5へ油が供給される場合に、第2合流弁を第2位置に維持するようにしてもよい。そして、この例において、その他の場合に、第2合流弁を第1位置に維持するようにしてもよい。
【0061】
さらに、
図1~
図4に示された例から、合流弁VXの構成を適宜変更することができる。例えば図示された例において、合流弁VXが、第1位置において、合流供給路L4を第1供給路L1に接続するようにした。この例に限られず、合流弁VXは、第1位置において、合流供給路L4を第1供給路L1から遮断するようにしてもよい。また図示された例において、合流弁VXが、第2位置において、第1供給路L1に絞りを形成するようにした。この例に限られず、合流弁VXは、第2位置において、第1供給路L1を遮断するようにしてもよい。また
図6に対する上述の変形例として、第2合流弁を設けた場合、第2合流弁は合流弁VXと同様の変形を行うことができる。
【0062】
次に、
図7を参照して、上述してきた本実施の形態の油圧回路20を建設機械10に適用した具体例について説明する。
図7に示された例において、建設機械10は、ショベルカーとして機能する。なお、以下の説明および以下の説明で用いる
図7では、
図1~
図6を参照して既に説明した油圧システム15及び油圧回路20と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いる。
【0063】
図7に示された油圧システム15は、
図1~
図6に示された油圧システムと同様に、油の供給源として、第1ポンプP1、第2ポンプP2及び第3ポンプP3を有している。
【0064】
また、
図7に示された油圧回路20は、
図1~
図6に示された油圧回路と同様に、三台のポンプP1,P2,P3の各々に対応して、第1供給路L1、第2供給路L2及び第3供給路L3を有している。第1供給路L1は、第1の油供給系統として、第1ポンプP1から吐出された油の流路となる。第2供給路L2は、第2の油供給系統として、第2ポンプP2から吐出された油の流路となる。第3供給路L3は、第3の油供給系統として、第3ポンプP3から吐出された油の流路となる。
【0065】
第1の油供給系統をなす第1供給路L1上には、三つの方向切換弁1AV,1BV,1CVが設けられている。三つの方向切換弁1AV,1BV,1CVは、この順番にて直列で第1ポンプP1から油を供給される。すなわち、第1の油供給系統における最上流側に位置する第1系統1番方向切換弁1AVが動作位置にある場合、第1の油供給系統における上流側から二番目に位置する第1系統2番方向切換弁1BV、及び、第1の油供給系統における上流側から三番目に位置する第1系統3番方向切換弁1CVには、第1供給路L1を通過して油が供給されない。一方、第1系統1番方向切換弁1AVが中立位置にある場合、第1供給路L1の第1系統1番方向切換弁1AVよりも下流側に、第1供給路L1を通過して第1ポンプP1からの油が流れる。また、第1系統1番方向切換弁1AV及び第1系統2番方向切換弁1BVが共に中立位置にある場合、第1系統3番方向切換弁1CVに第1ポンプP1からの油が第1供給路L1を通過して供給される。第1系統1番方向切換弁1AVが中立位置にあり且つ第1系統2番方向切換弁1BVが動作位置にある場合、第1系統3番方向切換弁1CVには第1供給路L1を介して油が供給されない。
【0066】
ただし、
図7に示された油圧回路20は、第1系統1番方向切換弁1AVよりも上流側となる位置において第1供給路L1から延び出したパラレル供給路L7を有している。第1系統1番方向切換弁1AVが中立位置にあるとき、パラレル供給路L7を介して第1系統2番方向切換弁1BVおよび第1系統3番方向切換弁1CVは、第1の油供給系統に含まれる方向切換弁1AV,1BV,1CVの状態に依存することなく、第1ポンプP1から油の供給を受けることができる。
【0067】
図7に示された油圧システム15は、第1の油供給系統から油の供給されるようになる三つのアクチュエータ1AA,1BA,1CAを有している。第1系統1番方向切換弁1AVによって第1系統1番アクチュエータ1AAへの油供給が制御され、第1系統2番方向切換弁1BVによって第1系統2番アクチュエータ1BAへの油供給が制御され、第1系統3番方向切換弁1CVによって第1系統3番アクチュエータ1CAへの油供給が制御される。
図7に示された具体例において、第1系統1番アクチュエータ1AAは、運転室を含むショベルカーの本体を走行装置等に対して旋回させるための油圧モータとして構成され、第1系統2番アクチュエータ1BAはブレード(ドーザ)を駆動する油圧シリンダとして構成され、第1系統3番アクチュエータ1CAはショベルカーのブームを左右にスイングさせるための油圧シリンダとして構成されている。
【0068】
第2の油供給系統をなす第2供給路L2上には、三つの方向切換弁2AV,2BV,2CVが設けられている。三つの方向切換弁2AV,2BV,2CVは、この順番にて直列で第2ポンプP2から油を供給される。すなわち、第2の油供給系統における最上流側に位置する第2系統1番方向切換弁2AVが動作位置にある場合、第2の油供給系統における上流側から二番目に位置する第2系統2番方向切換弁2BV、及び、第2の油供給系統における上流側から三番目に位置する第2系統3番方向切換弁2CVには、油が供給されない。一方、第2系統1番方向切換弁2AVが中立位置にある場合には、第2供給路L2の第2系統1番方向切換弁2AVよりも下流側に、第2ポンプP2からの油が流れる。また、第2系統1番方向切換弁2AV及び第2系統2番方向切換弁2BVが共に中立位置にある場合、第2系統3番方向切換弁2CVに第2ポンプP2からの油が供給される。第2系統1番方向切換弁2AVが中立位置にあり且つ第2系統2番方向切換弁2BVが動作位置にある場合、第2系統3番方向切換弁2CVには油が供給されない。
【0069】
図7に示された油圧システム15は、第2の油供給系統から油の供給されるようになる二つのアクチュエータ2AA,2BAを有している。第2系統1番方向切換弁2AVによって第2系統1番アクチュエータ2AAへの油供給が制御され、第2系統2番方向切換弁2BVによって第2系統2番アクチュエータ2BAへの油供給が制御される。
図7に示された具体例において、第2系統1番アクチュエータ2AAは、右側のクローラ(右側の走行装置)を駆動する油圧モータとして構成され、第2系統2番アクチュエータ2BAはアームを上げ下げさせるための油圧シリンダとして構成されている。
【0070】
なお、図示された例において、第2系統3番方向切換弁2CVは、予備として設けられており、アクチュエータに接続していない。したがって、
図7に示された例において、第2系統3番方向切換弁2CVは中立位置に維持されることを想定されている。
【0071】
第3の油供給系統をなす第3供給路L3上には、四つの方向切換弁3AV,3BV,3CV,3DVが設けられている。四つの方向切換弁3AV,3BV,3CV,3DVは、この順番にて直列で第3ポンプP3から油を供給される。すなわち、第3の油供給系統における最上流側に位置する第3系統1番方向切換弁3AVが動作位置にある場合、第3の油供給系統における上流側から二番目に位置する第3系統2番方向切換弁3BV、第3の油供給系統における上流側から三番目に位置する第3系統3番方向切換弁3CV、及び、第3の油供給系統における上流側から四番目に位置する第3系統4番方向切換弁3DVには、第3供給路L3を介して油が供給されない。
【0072】
図7に示された油圧回路20は、第3供給路L3における第3系統1番方向切換弁3AVと第3系統2番方向切換弁3BVとの間となる位置から延び出したパラレル供給路L6を有している。第3系統1番方向切換弁3AVが中立位置にあるとき、パラレル供給路L6を介して第3系統2番方向切換弁3BV、第3系統3番方向切換弁3CV及び第3系統4番方向切換弁3DVは、第3の油供給系統に含まれる第3系統1番方向切換弁3AV以外の他の方向切換弁3BV,3CV,3DVの状態に依存することなく、第3ポンプP3から油の供給を受けることができる。
【0073】
図7に示された油圧システム15は、第3の油供給系統から油を供給されるようになる四つのアクチュエータ3AA,3BA,3CA,3DAを有している。第3系統1番方向切換弁3AVによって第3系統1番アクチュエータ3AAへの油供給が制御され、第3系統2番方向切換弁3BVによって第3系統2番アクチュエータ3BAへの油供給が制御され、第3系統3番方向切換弁3CVによって第3系統3番アクチュエータ3CAへの油供給が制御され、第3系統4番方向切換弁3DVによって第3系統4番アクチュエータ3DAへの油供給が制御される。
図7に示された具体例において、第3系統1番アクチュエータ3AAは、左側のクローラ(左側の走行装置)を駆動する油圧モータとして構成され、第3系統2番アクチュエータ3BAはブームを上げ下げさせるための油圧シリンダとして構成され、第3系統3番アクチュエータ3CAはバケットの向きを変化させる油圧シリンダとして構成され、第3系統4番アクチュエータ3DAは、左右のクローラの相対位置を変化させる油圧シリンダとして構成されている。
【0074】
図7に示された油圧回路20は、さらに、第1の油供給系統に含まれる三つの方向切換弁1AV,1BV,1CVの直列下流側で第1ポンプP1から油を供給される合流弁VXを有している。油圧回路20は、この合流弁VXを介して第1供給路L1から分岐する第1合流供給路L4及び第2合流供給路L5を有している。第1合流供給路L4は、第2系統2番方向切換弁2BVに接続し、動作位置にある第2系統2番方向切換弁2BVに油を供給することができる。第2合流供給路L5は、第3系統2番方向切換弁3BVに接続し、動作位置にある第3系統2番方向切換弁3BVに油を供給することができる。
【0075】
合流弁VXは、
図1~
図6を参照しながら説明したように第1位置と第位2位置とを有している。第2位置にある合流弁VXは、第1供給路L1に絞りを形成し、合流供給路L4を介した第2系統2番方向切換弁2BVの油供給および第2合流供給路L5を介した第3系統2番方向切換弁3BVへの油供給を可能とする。
【0076】
図7に示された例において、合流弁VXは、パイロット圧を受けることで、第1位置から第2位置へ切り換わる。油圧回路20は、合流弁VXへのパイロット圧の付与を制御する制御弁VYを有している。この制御弁VYは、第2系統1番方向切換弁2AV及び第3系統1番方向切換弁3AVの両方が動作位置にあり且つ第2系統2番方向切換弁2BVが動作位置にある場合に、合流弁VXにパイロット圧を負荷する。すなわち、制御弁VYは、第2系統1番アクチュエータ2AA及び第3系統1番アクチュエータ3AAに油を供給し且つ第2系統2番アクチュエータ2BAに油を供給する際に、合流弁VXを第2位置に維持する。その他の状況下において、制御弁VYはパイロット圧を合流弁VXに負荷しない。
【0077】
なお、合流弁VXは、具体的な構成としてスプール弁として構成されている。合流弁VXをなすスプール弁のスプールを、中立位置から一側に移動させることで、合流弁VXは第1位置から第2位置へ切り換わる。制御弁VYからのパイロット圧は、合流弁VXの中立位置にあるスプールを他側へ移動させる。
【0078】
なお、第1ポンプP1から油を吐出される第1供給路L1の下流端は、第2供給路L2における第2系統2番方向切換弁2BVと第2系統3番方向切換弁2CVとの間に接続している。上述したように、第2系統3番方向切換弁2CVは、予備の方向切換弁であって中立位置に維持されることを想定されている。したがって、第1供給路L1は、第2供給路L2と同様に、その下流端においてタンクTに接続している。同様に、第3供給路L3も、その下流端においてタンクTに接続している。
【0079】
以上のような構成からなる
図7に示された油圧システム15及び油圧回路20において、第1の油供給系統に位置する方向切換弁1AV,1BV,1CVは、
図5に示された油圧回路における第4方向切換弁V4に該当する。アクチュエータ1AA,1BA,1CAは、
図5に示された油圧回路における第4方向切換弁V4に該当する。
【0080】
第2の油供給系統に位置する第2系統1番方向切換弁2AVは、
図1~6に示された油圧回路における第2方向切換弁V2に該当する。第2系統1番アクチュエータ2AAは、
図1~6に示された油圧回路における第2アクチュエータA2に該当する。第2の油供給系統に位置する第2系統2番方向切換弁2BVは、
図1~6に示された油圧回路における第1方向切換弁V1に該当する。第2系統2番アクチュエータ2BAは、
図1~6に示された油圧回路における第1アクチュエータA1に該当する。
【0081】
第3の油供給系統に位置する第3系統1番方向切換弁3AVは、
図6に示された油圧回路における第3方向切換弁V3に該当する。第3系統1番アクチュエータ3AAは、
図1~6に示された油圧回路における第3アクチュエータA3に該当する。第3の油供給系統に位置する第3系統2番方向切換弁3BVは、
図6に示された油圧回路における第5方向切換弁V5に該当する。第3系統2番アクチュエータ3BAは、
図6に示された油圧回路における第5アクチュエータA5に該当する。
【0082】
次に、以上の構成からなる
図7に示された建設機械10、油圧システム15及び油圧回路20の具体例の作用について説明する。
【0083】
まず、ショベルカーを走行させる場合について説明する。第2系統1番アクチュエータ2AA及び第3系統1番アクチュエータ3AAを動作させることで、左右のクローラ(走行装置)を駆動し、ショベルカーを走行させることができる。このとき、第2系統1番アクチュエータ2AAには、第2ポンプP2から吐出された油が供給される。このとき、第2ポンプP2から吐出された油は、第2系統1番方向切換弁2AVよりも下流側の方向切換弁2BV,2CVに供給されなくなる。すなわち、第2ポンプP2から吐出された油は、他のアクチュエータの動作に用いられることなく、第2系統1番アクチュエータ2AAの動作のみに使用される。したがって、ショベルカーの操作レバー等の操作手段の操作量に応じた流入量にて、第2系統1番アクチュエータ2AAへ油を供給することができる。つまり、操作手段の操作量と第2系統1番アクチュエータ2AAの動作速度を一定の関係に保つことができ、第2系統1番アクチュエータ2AAの操作性に優れる。
【0084】
同様に、第3系統1番方向切換弁3AVには、第3ポンプP3から吐出された油が供給される。このとき、第3ポンプP3から吐出された油は、第3系統1番方向切換弁3AVよりも下流側の方向切換弁3BV,3CV,3DVに供給されなくなる。すなわち、第3ポンプP3から吐出された油は、他のアクチュエータの動作に用いられることなく、第3系統1番アクチュエータ3AAの動作のみに使用される。したがって、ショベルカーの操作レバー等の操作手段の操作量に応じた流入量にて、第3系統1番アクチュエータ3AAへ油を供給することができる。つまり、操作手段の操作量と第3系統1番アクチュエータ3AAの動作速度を一定の関係に保つことができ、第3系統1番アクチュエータ3AAの操作性に優れる。
【0085】
以上のことから、ショベルカーの操作手段の操作量に対する走行装置の動作量、すなわちショベルカーの移動速度を、他のアクチュエータの動作状況に依存することなく、概ね一定とすることが可能となる。また、左右の走行装置の動作量を揃えることができ、ショベルカーの前進時または後退時に斜行してしまうことを効果的に回避することができる。これらにより、走行装置に関し優れた操作性を確保することができる。
【0086】
次に、第2系統2番方向切換弁2BVを動作させてアームを駆動する場合について説明する。まず、走行装置を駆動することなくアームを駆動する場合について説明する。第2系統1番アクチュエータ2AAが動作せず、ショベルカーのクローラ(走行装置)が停止している場合、第2ポンプP2からの油は、第2系統1番方向切換弁2AVを通過して、第2系統2番方向切換弁2BV(
図1~
図6における第1方向切換弁V1)に供給される。したがって、クローラ(走行装置)が停止した状態において、第2ポンプP2から吐出された油を、第2系統2番方向切換弁2BVを介して第2系統2番アクチュエータ2BAに供給することで、アームを動作させることができる。とりわけクローラ(走行装置)の停止中、第2ポンプP2から吐出された油は、他のアクチュエータの動作に用いられることなく、アームを駆動する第2系統2番アクチュエータ2BAの動作のみに使用される。
【0087】
したがって、クローラ(走行装置)が停止した状態では、ショベルカーの操作レバー等の操作手段の操作量に応じた流入量にて、第2系統2番アクチュエータ2BAに油を供給することができる。これにより、操作手段の操作量に対するアームの動作速度を、他のアクチュエータの動作状況に依存することなく、概ね一定とすることが可能となる。
【0088】
次に、走行装置を駆動しながら同時にアームを駆動する場合について説明する。上述したように、第2系統1番アクチュエータ2AAが動作してショベルカーのクローラ(走行装置)が駆動されている場合、第2ポンプP2からの油は、第2系統2番方向切換弁2BV(
図1~
図6における第1方向切換弁V1)に供給されない。その一方で、左右のクローラ(走行装置)を駆動しながら、同時にアームを駆動する場合、合流弁VXが第2位置に切り換わり、第1ポンプP1から吐出された油が合流供給路L4を経由して第2系統2番方向切換弁2BVに供給される。したがって、クローラ(走行装置)が駆動されている状態において、第1ポンプP1から吐出された油を、第2系統2番方向切換弁2BVを介して第2系統2番アクチュエータ2BAに供給することで、アームを動作させることができる。
【0089】
なお、クローラ(走行装置)が駆動されていない場合、合流弁VXは第1位置に維持される。合流弁VXが第1位置にある場合、第1供給路L1内の油は、第1供給路L1をそのまま流れてタンクTに流入するようになる。
【0090】
以上のように、アームを駆動する第2系統2番方向切換弁2BVは、クローラ(走行装置)の非駆動時には第2ポンプP2からの油で動作し、クローラ(走行装置)の駆動時には第1ポンプP1からの油で動作する。したがって、第1ポンプP1からの油吐出量と第2ポンプP2からの油吐出量が大きく異ならない場合、第2系統2番方向切換弁2BVへの油流入量は、クローラの動作の有無に依存して大きく変化しない。これにより、操作手段の操作量に対するアームの動作速度を、クローラ(走行装置)の動作状況に依存することなく、概ね一定とすることが可能となる。結果として、優れたアームの操作性を確保することができる。また、アームの動作状況によらず、左右の走行装置の動作量を揃えることができ、ショベルカーの前進時または後退時に斜行してしまうことを効果的に回避することができる。
【0091】
なお、合流弁VXを介して第2系統2番アクチュエータ2BAに供給される油供給系統において、第2系統2番アクチュエータ2BAよりも直列上流側に、第1系統1番方向切換弁1AV、第1系統2番方向切換弁1BV及び第1系統3番方向切換弁1CVが設けられている。そして、第1系統1番方向切換弁1AV、第1系統2番方向切換弁1BV及び第1系統3番方向切換弁1CVのいずれかが動作位置に切り換わり、対応するアクチュエータ1AA,1BA,1CAに油が供給されると、第1ポンプP1からの油は第2系統2番方向切換弁2BVに流れ込まなくなる。ただし、合流弁VXよりも上流側の方向切換弁1AV,1BV,1CVによって油を供給されるアクチュエータ1AA,1BA,1CAとして、図示された例では、ショベルカーの旋回、ブレードの動作およびブームスイングを行うためのアクチュエータが選択されている。ショベルカーの旋回、ブレードの動作およびブームスイングは、実際上、ショベルカーの走行またはアーム動作と並行して実施されることは稀である。したがって、第2系統2番方向切換弁2BVに油が供給されず、意図したアームの操作を実施できないことは想定されにくい。
【0092】
以上に説明してきた一実施の形態において、油圧回路20は、第1ポンプP1及び第2ポンプP2から油を供給され第1アクチュエータA1への油供給を制御する第1方向切換弁V1と、第1方向切換弁V1の直列上流側で第2ポンプP2から油を供給され第2アクチュエータA2への油供給を制御する第2方向切換弁V2と、少なくとも第2方向切換弁V2から第2アクチュエータA2への油供給が停止し且つ第1方向切換弁V1から第1アクチュエータA1へ油が供給される場合に、第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給を停止する又は第1ポンプP1から第1方向切換弁V1への油供給量を減少させる合流弁VXと、を有している。
【0093】
この一実施の形態において、第2方向切換弁V2は、第2ポンプP2による油供給路上に第1方向切換弁V1と直列回路で配置され、直列回路における第1方向切換弁V1の上流側に位置している。したがって、第1アクチュエータA1の動作の有無に依存して、第2アクチュエータA2の動作速度が大きく変化してしまうことを効果的に防止することができる。これにより、第1アクチュエータA1の動作状況によらず、第2アクチュエータA2の動作特性を安定させることができ、第2アクチュエータA2の操作性を改善することができる。
【0094】
また、第1アクチュエータA1は、第2アクチュエータA2の動作時に第1ポンプP1からの油によって動作することができる。第2アクチュエータA2の非動作時に、第1ポンプP1からの油供給を停止させて又は油供給量を減少させて、第2ポンプP2からの油によって動作することができる。したがって、第2アクチュエータA2の動作の有無に依存して、第1アクチュエータA1の動作速度が大きく変化してしまうことを効果的に防止することができる。つまり、第2アクチュエータA2の動作状態によらず、第1アクチュエータA1の動作特性を安定させることができ、第1アクチュエータA1の操作性を改善することができる。
【0095】
また、本実施の形態において、第1アクチュエータA1及び第2アクチュエータA2に並行して油を供給する場合に、第1ポンプP1からの油を第1アクチュエータA1に供給し且つ第2ポンプP2からの油を第2アクチュエータA2に供給し、第1アクチュエータA1及び第2アクチュエータA2のうちの第1アクチュエータA1のみに油を供給する際に、第1ポンプP1から第1アクチュエータA1への油供給を停止または油供給量を減少させ且つ第2ポンプP2から第1アクチュエータA1へ油を供給する。この一実施の形態において、第1アクチュエータA1は、第2アクチュエータA2の動作時に第1ポンプP1からの油によって動作することができる。第2アクチュエータA2の非動作時に、第1ポンプP1からの油供給を停止させて又は油供給量を減少させて、第2ポンプP2からの油によって動作することができる。したがって、第2アクチュエータA2の動作の有無に依存して、第1アクチュエータA1の動作速度が大きく変化してしまうことを効果的に防止することができる。つまり、第2アクチュエータA2の動作状態によらず、第2アクチュエータA2の動作特性を安定させることができ、第2アクチュエータA2の操作性を改善することができる。
【0096】
いくつかの図示された例を参照して一実施の形態を説明してきたが、これらの例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【符号の説明】
【0097】
10 建設機械
15 油圧システム
20 油圧回路
21 絞り21
P1 第1ポンプ
P2 第2ポンプ
P3 第3ポンプ
L1 第1供給路
L2 第2供給路
L2a 主供給路
L2b 分岐供給路
L3 第3供給路
L3a 主供給路
L3b 分岐供給路
L4 合流供給路
L5 第2合流供給路
L6 パラレル供給路
L7 パラレル供給路
V1 第1方向切換弁
V2 第2方向切換弁
V3 第3方向切換弁
V4 第4方向切換弁
V5 第5方向切換弁
VX 合流弁VX
VY 制御弁VY
A1 第1アクチュエータ
A2 第2アクチュエータ
A3 第3アクチュエータ
A4 第4アクチュエータ
A5 第5アクチュエータ
T タンク
CV 逆止弁
CVx 逆止弁
CVy 逆止弁
1AV 第1系統1番方向切換弁
1BV 第1系統2番方向切換弁
1CV 第1系統3番方向切換弁
1AA 第1系統1番アクチュエータ
1BA 第1系統2番アクチュエータ
1CA 第1系統3番アクチュエータ
2AV 第2系統1番方向切換弁
2BV 第2系統2番方向切換弁
2CV 第2系統3番方向切換弁
2AA 第2系統1番アクチュエータ
2BA 第2系統2番アクチュエータ
3AV 第3系統1番方向切換弁
3BV 第3系統2番方向切換弁
3CV 第3系統3番方向切換弁
3DV 第3系統4番方向切換弁
3AA 第3系統1番アクチュエータ
3BA 第3系統2番アクチュエータ
3CA 第3系統3番アクチュエータ
3DA 第3系統4番アクチュエータ