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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20231026BHJP
   H05B 3/74 20060101ALI20231026BHJP
   H05B 3/03 20060101ALI20231026BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H05B3/74
H05B3/03
H05B3/20 356
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020002562
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2021111690
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岐部 太一
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228361(JP,A)
【文献】国際公開第2017/029876(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0280509(US,A1)
【文献】特開2019-125635(JP,A)
【文献】特開2016-189425(JP,A)
【文献】特開2019-153708(JP,A)
【文献】特開2000-012195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H05B 3/74
H05B 3/03
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に略直交する第1の表面および第2の表面を有する板状部材と、
前記板状部材の内部に配置され、抵抗発熱体により構成されたN個(Nは2以上の整数)の第1のヒータ電極と、
を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記板状部材の内部において、前記第1の方向における前記第1のヒータ電極と前記板状部材の前記第2の表面との間に配置され、かつ、抵抗発熱体により構成された第2のヒータ電極と、
前記板状部材の内部において、前記第1の方向における前記第2のヒータ電極と前記板状部材の前記第2の表面との間に位置する第1の仮想平面であって、前記第1の表面に略平行な第1の仮想平面上に配置され、かつ、前記N個の第1のヒータ電極のうちのM個(Mは2以上かつN以下の整数)の前記第1のヒータ電極に電気的に接続された第1のドライバ電極と、
を備えることを特徴とする、保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置において、
前記板状部材の内部において、前記第2のヒータ電極に電気的に接続された第2のドライバ電極であって、前記第1の方向における前記第2のヒータ電極と前記板状部材の前記第2の表面との間、かつ、前記第1の仮想平面とは異なる高さに位置する第2の仮想平面であって、前記第1の表面に略平行な第2の仮想平面上に配置される第2のドライバ電極、
を備えることを特徴とする、保持装置。
【請求項3】
請求項2に記載の保持装置において、
前記第1のヒータ電極の数は、前記第2のヒータ電極の数より多い、
ことを特徴とする、保持装置。
【請求項4】
請求項3に記載の保持装置において、
前記第1の方向において、前記第1のドライバ電極は、前記第2のドライバ電極と前記板状部材の前記第2の表面との間に配置される、
ことを特徴とする、保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体を製造する際にウェハを保持する保持装置として、静電チャックが用いられる。静電チャックは、所定の方向(以下、「第1の方向」という。)に略垂直な表面(以下、「上面」または「吸着面」という。)と、吸着面とは反対側の表面(以下、「下面」という)とを有する、例えばセラミックス部材等の板状部材と、板状部材の内部に設けられたチャック電極とを備えており、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、板状部材の上面にウェハを吸着して保持する。
【0003】
静電チャックの吸着面に保持されたウェハの温度が所望の温度にならないと、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがあるため、静電チャックにはウェハの温度分布を制御する性能が求められる。そのため、例えば、板状部材の内部に複数のヒータ電極が設けられる。各ヒータ電極に電圧が印加されると、各ヒータ電極が発熱することによって板状部材が加熱され、これにより、板状部材の吸着面の温度分布の制御(ひいては、吸着面に保持されたウェハの温度分布の制御)が実現される。
【0004】
従来から、板状部材の内部に、上記ヒータ電極として、複数の第1のヒータ電極と、第1の方向における第1のヒータ電極と板状部材の下面との間に配置された第2のヒータ電極と、第1のヒータ電極に電気的に接続されたドライバ電極が設けられた静電チャックが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-228361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、ドライバ電極は、ヒータ電極に電気的に接続されているため、ヒータ電極の発熱に伴って発熱する。このため、板状部材の吸着面の温度は、ドライバ電極からの発熱の影響を受ける。例えば、複数の第1のヒータ電極のうちの2つ以上が電気的に接続されたドライバ電極では、発熱の度合いが大きくなるため、板状部材の吸着面の温度への影響も大きくなる傾向がある。このため、板状部材の吸着面の内、第1の方向視において、第1のドライバ電極と重なる領域は、高温の温度特異点となりやすい。従って、板状部材の吸着面における温度分布の制御性(ひいては、吸着面に保持されたウェハの温度分布の制御性)が低下するおそれがある。
【0007】
なお、このような課題は、静電引力を利用してウェハを保持する静電チャックに限らず、上述した板状部材と同様の構成要素を有する板状部材を備え、板状部材の表面上に対象物を保持する保持装置一般(例えば、真空チャック、CVDヒータ等)に共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される保持装置は、第1の方向に略直交する第1の表面および第2の表面を有する板状部材と、前記板状部材の内部に配置され、抵抗発熱体により構成されたN個(Nは2以上の整数)の第1のヒータ電極と、を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、前記板状部材の内部において、前記第1の方向における前記第1のヒータ電極と前記板状部材の前記第2の表面との間に配置され、かつ、抵抗発熱体により構成された第2のヒータ電極と、前記板状部材の内部において、前記第1の方向における前記第2のヒータ電極と前記板状部材の前記第2の表面との間に位置する第1の仮想平面であって、前記第1の表面に略平行な第1の仮想平面上に配置され、かつ、前記N個の第1のヒータ電極のうちのM個(Mは2以上かつN以下の整数)の前記第1のヒータ電極に電気的に接続された第1のドライバ電極と、を備える。本保持装置では、上記M個の第1のヒータ電極に電気的に接続された第1のドライバ電極が、第1の方向における第2のヒータ電極と板状部材の第2の表面との間(第1の仮想平面上)に配置されている。換言すれば、第1のドライバ電極は、第1の方向において、第1のヒータ電極と第2のヒータ電極との間に配置されていない。このため、発熱の度合いの大きい第1のドライバ電極により、板状部材の第1の表面に高温の温度特異点が発生することを低減することができる。従って、本保持装置によれば、板状部材の第1の表面における温度分布の制御性(ひいては、第1の表面に保持された対象物の温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0011】
(2)上記保持装置において、前記板状部材の内部において、前記第2のヒータ電極に電気的に接続された第2のドライバ電極であって、前記第1の方向における前記第2のヒータ電極と前記板状部材の前記第2の表面との間、かつ、前記第1の仮想平面とは異なる高さに位置する第2の仮想平面であって、前記第1の表面に略平行な第2の仮想平面上に配置される第2のドライバ電極、を備える構成としてもよい。本保持装置では、第2のヒータ電極に電気的に接続された第2のドライバ電極についても、第1の方向における第2のヒータ電極と板状部材の第2の表面との間(第2の仮想平面上)に配置されている。このため、第2のドライバ電極による発熱が、板状部材の第1の表面の温度分布に影響を及ぼすことを低減することができる。また、第2の仮想平面は、第1の仮想平面とは異なる高さに位置している。すなわち、第2のドライバ電極は、第1のドライバ電極が配置された第1の仮想平面とは異なる第2の仮想平面に配置されている。このため、第1の仮想平面に第2のドライバ電極を配置する構成と比較して、第2のドライバ電極の面積を大きくすることにより第2のドライバ電極自体の発熱を抑制する等、第2のドライバ電極の設計の自由度を向上させることができる。従って、本保持装置によれば、板状部材の第1の表面における温度分布の制御性(ひいては、第1の表面に保持された対象物の温度分布の制御性)をより効果的に向上させることができるとともに、第2のドライバ電極の設計の自由度を向上させることができる。
【0012】
(3)上記保持装置において、前記第1のヒータ電極の数は、前記第2のヒータ電極の数より多い、構成としてもよい。本保持装置では、第1のヒータ電極の数が、第2のヒータ電極の数より多い。ヒータ電極の数が多い第1のヒータ電極では、第1のヒータ電極に電気的に接続する第1のドライバ電極の数も多くなり、または、第1のドライバ電極に電気的に接続する第1のヒータ電極の数が多くなりうる。このため、このような第1のドライバ電極による発熱は、板状部材の第1の表面の温度分布に、より大きく影響を及ぼしやすい。このような第1のドライバ電極を第2のヒータ電極と板状部材の第2の表面との間に配置することにより、第1のドライバ電極による発熱が、板状部材の第1の表面に影響を及ぼすことをより効果的に低減することができる。従って、本保持装置によれば、板状部材の第1の表面における温度分布の制御性(ひいては、第1の表面に保持された対象物の温度分布の制御性)をより効果的に向上させることができる。
【0013】
(4)上記保持装置において、前記第1の方向において、前記第1のドライバ電極は、前記第2のドライバ電極と前記板状部材の前記第2の表面との間に配置される、構成としてもよい。本保持装置では、第1のドライバ電極が、第2のドライバ電極と板状部材の第2の表面との間に配置されている。このため、板状部材の第1の表面の温度分布に、より大きく影響を及ぼしやすい第1のドライバ電極による発熱が、板状部材の第1の表面の温度分布に影響を及ぼすことをより効果的に低減することができる。従って、本保持装置によれば、板状部材の第1の表面における温度分布の制御性(ひいては、第1の表面に保持された対象物の温度分布の制御性)をより効果的に向上させることができる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、保持装置、静電チャック、CVDヒータ等のヒータ装置、真空チャック、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】実施形態における静電チャック100のXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。
図4】1つのセグメントSEに配置された第1の上側ヒータ電極501AのXY断面構成を模式的に示す説明図である。
図5】静電チャック100の板状部材10に配置された下側ヒータ電極層53(下側ヒータ電極503)のXY断面構成を模式的に示す説明図である。
図6】上側ヒータ電極層51への給電のための構成を模式的に示す説明図である。
図7】下側ヒータ電極層53への給電のための構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、図3は、実施形態における静電チャック100のXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
【0017】
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置された板状部材10およびベース部材20を備える。板状部材10とベース部材20とは、板状部材10の下面S2(図2参照)とベース部材20の上面S3とが上記配列方向に対向するように配置される。
【0018】
板状部材10は、上述した配列方向(Z軸方向)に略直交する略円形平面状の上面(以下、「吸着面」という)S1を有する板状部材であり、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。板状部材10の直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、板状部材10の厚さは例えば1mm~10mm程度である。板状部材10の吸着面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、板状部材10の下面S2は、特許請求の範囲における第2の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を「面方向」という。
【0019】
図2に示すように、板状部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40に電源(図示しない)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが板状部材10の吸着面S1に吸着固定される。
【0020】
板状部材10の内部には、また、板状部材10の吸着面S1の温度分布の制御(すなわち、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御)のための上側ヒータ電極層51と、下側ヒータ電極層53とが配置されている。板状部材10の内部には、さらに、上側ヒータ電極層51への給電のための上側ヒータ電極用ドライバ電極層61および上側ヒータ電極用ビア71と、下側ヒータ電極層53への給電のための下側ヒータ電極用ドライバ電極層63および下側ヒータ電極用ビア73とが配置されている。これらの構成については、後に詳述する。なお、このような構成の板状部材10は、例えば、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートにビア孔の形成やメタライズペーストの印刷等の加工を行い、これらのセラミックスグリーンシートを熱圧着し、切断等の加工を行った上で焼成することにより作製することができる。以下では、上側ヒータ電極層51および下側ヒータ電極層53を、まとめてヒータ電極層51,53ともいい、上側ヒータ電極用ドライバ電極層61および下側ヒータ電極用ドライバ電極層63を、まとめてドライバ電極層61,63ともいう。
【0021】
ベース部材20は、例えば板状部材10と同径の、または、板状部材10より径が大きい円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材20の直径は例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm~40mm程度である。
【0022】
ベース部材20は、板状部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接合部30によって、板状部材10に接合されている。接合部30は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の樹脂材料(接着材料)により構成されている。接合部30の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。
【0023】
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接合部30を介したベース部材20と板状部材10との間の伝熱(熱引き)により板状部材10が冷却され、板状部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度制御が実現される。
【0024】
A-2.上側ヒータ電極層51等の構成:
次に、上側ヒータ電極層51の構成および上側ヒータ電極層51への給電のための構成について詳述する。
A-2-1.上側ヒータ電極層51の構成:
まず、図3および図4を参照して、上側ヒータ電極層51の構成ついて詳述する。
【0025】
上側ヒータ電極層51は、N個(Nは2以上の整数)の上側ヒータ電極501(本実施形態では、第1の上側ヒータ電極501A、第2の上側ヒータ電極501B等)(図2参照)を含んでおり、それぞれ、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成された抵抗発熱体で構成されている。なお、本実施形態では、上側ヒータ電極層51は、Z軸方向において、チャック電極40より下側に配置されている。上側ヒータ電極501は、特許請求の範囲における第1のヒータ電極に相当する。
【0026】
図3に示すように、本実施形態の静電チャック100では、板状部材10にN個の仮想的な領域であるセグメントSEが設定されている。より詳細には、Z軸方向視で、板状部材10が、吸着面S1の中心点CPを中心とする同心円状の複数の第1の境界線BL1によって複数の仮想的な環状領域(ただし、中心点CPを含む領域のみは円状領域)に分割され、さらに各環状領域が、径方向RDに延びる複数の第2の境界線BL2によって円周方向CDに並ぶ複数の仮想的な領域であるセグメントSEに分割されている。N個の上側ヒータ電極501のそれぞれは、板状部材10に設定されたN個のセグメントSEの1つに配置されている。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、N個のセグメントSEのそれぞれに、1つの上側ヒータ電極501が配置されている。
【0027】
図4は、1つのセグメントSEに配置された第1の上側ヒータ電極501AのXY断面構成を模式的に示す説明図である。図4に示すように、第1の上側ヒータ電極501Aは、Z軸方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部510Aと、ヒータライン部510Aの両端部に接続されるヒータパッド部(第1のヒータパッド部511Aおよび第2のヒータパッド部512A)とを有する。以下では、第1のヒータパッド部511Aおよび第2のヒータパッド部512Aを、まとめてヒータパッド部511A,512Aともいう。Z軸方向視で、ヒータパッド部511A,512Aの幅は、ヒータライン部510Aの幅より大きい。他のセグメントSEに配置された上側ヒータ電極501の構成も同様である。すなわち、後述するN個の上側ヒータ電極501のうちの他の1つである第2の上側ヒータ電極501B(図6にて図示)は、第1の上側ヒータ電極501Aと同様に、ヒータライン部510Bと、第1のヒータパッド部511Bと、第2のヒータパッド部512Bとを有している。
【0028】
A-2-2.上側ヒータ電極層51への給電のための構成:
図6は、上側ヒータ電極層51への給電のための構成の一部を模式的に示す説明図である。以下、図2および図6を参照して、上側ヒータ電極層51への給電のための構成について説明する。なお、図6は、具体的には、第1の上側ヒータ電極501Aおよび第2の上側ヒータ電極501Bと、第1の端子部材210との間の電気的な接続関係を図示しており、両者の物理的な位置関係を図示するものではない。
【0029】
上述した上側ヒータ電極用ドライバ電極層61および上側ヒータ電極用ビア71は、上側ヒータ電極層51(具体的には、上側ヒータ電極501)への給電のための構成の一部であり、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。上側ヒータ電極用ドライバ電極層61は、複数の上側ヒータ電極用ドライバ601から構成されている。例えば、上側ヒータ電極用ドライバ601は、上側ヒータ電極用ドライバ601に接続するビア(例えば、後述の第1の上側ヒータ電極用ビア711、第2の上側ヒータ電極用ビア712、第1の給電側ビア81)の直径より大きい幅を有する線状に形成される。
【0030】
図2に示すように、本実施形態において、複数の上側ヒータ電極用ドライバ601は、いずれも、第1の仮想平面VS1上に配置されている。ここで、第1の仮想平面VS1は、板状部材10の吸着面S1に略平行な仮想平面である。また、本実施形態において、第1の仮想平面VS1は、Z軸方向における下側ヒータ電極層53と板状部材10の下面S2との間に位置している。なお、図2では、複数の上側ヒータ電極用ドライバ601のうちの1つの上側ヒータ電極用ドライバ601Aのみを図示し、他の上側ヒータ電極用ドライバ601の図示を省略している。上側ヒータ電極用ドライバ601は、特許請求の範囲における第1のドライバ電極に相当する。
【0031】
上側ヒータ電極用ドライバ601は、N個の上側ヒータ電極501のうちのM個(Mは2以上かつN以下の整数)の上側ヒータ電極501に電気的に接続されている。図2および図6に示すように、本実施形態において、上側ヒータ電極用ドライバ601Aは、2つの上側ヒータ電極501(具体的には、上側ヒータ電極501A,501B)に電気的に接続している。より具体的には、上側ヒータ電極用ドライバ601Aは、上側ヒータ電極用ビア71を構成する第1の上側ヒータ電極用ビア711(具体的には、第1の上側ヒータ電極用ビア711A)を介して、第1の上側ヒータ電極501Aの第1のヒータパッド部511Aに電気的に接続し、かつ、上側ヒータ電極用ビア71を構成する第2の上側ヒータ電極用ビア712(具体的には、第2の上側ヒータ電極用ビア712A)を介して、第2の上側ヒータ電極501Bの第2のヒータパッド部512Bに電気的に接続している。図6に示すように、本実施形態において、上側ヒータ電極用ドライバ601Aは、Z軸方向視において、第1のヒータパッド部511Aと第1の上側ヒータ電極用ビア711Aとの両方に重なる導電領域E11と、第2のヒータパッド部512Bと第2の上側ヒータ電極用ビア712Aとの両方に重なる導電領域E12と、をそれぞれ含んでいる。
【0032】
また、上側ヒータ電極用ドライバ601Aは、後述の第1の給電側ビア81を介して、後述の第1の電極パッド31に電気的に接続している。より具体的には、上側ヒータ電極用ドライバ601Aは、Z軸方向視において、第1の電極パッド31と第1の給電側ビア81との両方に重なる導電領域E81(図6参照)を含んでいる。
【0033】
図2に示すように、静電チャック100には、ベース部材20の下面S4から板状部材10の内部に至る複数の第1の端子用孔110が形成されている。各第1の端子用孔110は、ベース部材20を上下方向に貫通する貫通孔112と、接合部30を上下方向に貫通する貫通孔113と、板状部材10の下面S2側に形成された凹部111とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。なお、図2では、複数の第1の端子用孔110のうちの1つの第1の端子用孔110のみを図示し、他の第1の端子用孔110の図示を省略している。
【0034】
各第1の端子用孔110には、柱状の第1の端子部材210が収容されている。また、第1の端子用孔110を構成する板状部材10の凹部111の底面には、第1の電極パッド31が設けられている。第1の端子部材210は、例えばろう付け等により第1の電極パッド31に接合されている。また、第1の電極パッド31は、Z軸方向に延びる第1の給電側ビア81を介して、上側ヒータ電極用ドライバ601Aにおける導電領域E81に導通している。なお、第1の端子部材210および第1の電極パッド31は、すべて、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成されている。
【0035】
上述の通り、第1の上側ヒータ電極501Aの第1のヒータパッド部511Aは、上側ヒータ電極用ドライバ601Aを介して、第1の端子部材210に電気的に接続している。また、第2の上側ヒータ電極501Bの第2のヒータパッド部512Bは、上側ヒータ電極用ドライバ601Aを介して、第1の端子部材210に電気的に接続している。本実施形態において、第1の上側ヒータ電極501Aの第2のヒータパッド部512Aは、第1の上側ヒータ電極用ビア711Bを介して、他の端子部材A(図6参照)に電気的に接続しており、第2の上側ヒータ電極501Bの第1のヒータパッド部511Bは、他の上側ヒータ電極用ビア(図示せず)を介して、他の端子部材B(図6参照)に電気的に接続している。
【0036】
第1の端子部材210および端子部材A,Bは、電源(図示せず)に接続されている。電源からの電圧は、第1の端子部材210および端子部材A,B、第1の電極パッド31、および、第1の給電側ビア81を介して、上側ヒータ電極用ドライバ601Aに供給され、さらに、各上側ヒータ電極501A,501Bについて設けられた第1の上側ヒータ電極用ビア711および第2の上側ヒータ電極用ビア712を介して、各上側ヒータ電極501A,501Bに印加される。これにより、各上側ヒータ電極501A,501Bが発熱し、上側ヒータ電極501A,501Bが配置された板状部材10が加熱される。本実施形態では、上側ヒータ電極501(例えば、上側ヒータ電極501A,501B)は、板状部材10のセグメントSE単位での吸着面S1の温度制御に用いられる。
【0037】
A-3.下側ヒータ電極層53等の構成:
次に、下側ヒータ電極層53の構成および下側ヒータ電極層53への給電のための構成について詳述する。
A-3-1.下側ヒータ電極層53の構成:
まず、下側ヒータ電極層53の構成について詳述する。図5は、実施形態における静電チャック100のXY断面構成を模式的に示す説明図である。図5には、図2のV-Vの位置における静電チャック100のXY断面構成が示されている。
【0038】
下側ヒータ電極層53は、複数の(2つの)下側ヒータ電極503(本実施形態では、第1の下側ヒータ電極503Aおよび第2の下側ヒータ電極503B)を含んでおり、上側ヒータ電極501と同様に、それぞれ、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成された抵抗発熱体で構成されている。本実施形態において、上側ヒータ電極501の個数「N個」は、下側ヒータ電極503の個数「2個」より多い。なお、本実施形態では、下側ヒータ電極層53は、Z軸方向において、上側ヒータ電極層51より下側に配置されている。換言すれば、下側ヒータ電極層53は、Z軸方向において、上側ヒータ電極層51と板状部材10の下面S2との間に配置されている。下側ヒータ電極503は、特許請求の範囲における第2のヒータ電極に相当する。
【0039】
第1の下側ヒータ電極503Aは、例えば、Z軸方向視で板状部材10における外周側の領域に配置され、第2の下側ヒータ電極503Bは、例えば、板状部材10における中心側の領域に配置される。Z軸方向視での各下側ヒータ電極503A,503Bの形状は、例えば、略螺旋形である。図5に示すように、第1の下側ヒータ電極503Aは、Z軸方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部530Aと、ヒータライン部530Aの両端部に接続されるヒータパッド部(第1のヒータパッド部531Aおよび第2のヒータパッド部532A)とを有する。以下では、第1のヒータパッド部531Aおよび第2のヒータパッド部532Aを、まとめてヒータパッド部531A,532Aともいう。Z軸方向視で、ヒータパッド部531A,532Aの幅は、ヒータライン部530Aの幅より大きい。第2の下側ヒータ電極503Bの構成も同様である。
【0040】
A-3-2.下側ヒータ電極層53への給電のための構成:
図7は、下側ヒータ電極層53への給電のための構成の一部を模式的に示す説明図である。以下、図2および図7を参照して、下側ヒータ電極層53への給電のための構成について説明する。なお、図7は、具体的には、第1の下側ヒータ電極503Aと、第2の端子部材230との間の電気的な接続関係を図示しており、両者の物理的な位置関係を図示するものではない。
【0041】
上述した下側ヒータ電極用ドライバ電極層63および下側ヒータ電極用ビア73は、下側ヒータ電極層53(具体的には、下側ヒータ電極503)への給電のための構成の一部であり、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。本実施形態において、下側ヒータ電極用ドライバ電極層63は、2つの下側ヒータ電極用ドライバ603から構成されている。具体的には、一方の下側ヒータ電極用ドライバ603(下側ヒータ電極用ドライバ603A)は、下側ヒータ電極層53に含まれる第1の下側ヒータ電極503Aに電気的に接続され、他方の下側ヒータ電極用ドライバ603(図示せず)は、第2の下側ヒータ電極503Bに電気的に接続される。なお、下側ヒータ電極用ドライバ電極層63は、1つの下側ヒータ電極用ドライバ603から構成されていてもよい。このような構成では、下側ヒータ電極503A,503Bは、ともに、1つの下側ヒータ電極用ドライバ60に電気的に接続される。また、下側ヒータ電極用ドライバ603の形状は、特に限定されず、種々の形状を採用することができる。
【0042】
図2に示すように、本実施形態において、2つの下側ヒータ電極用ドライバ603は、いずれも、第2の仮想平面VS2上に配置されている。ここで、第2の仮想平面VS2は、板状部材10の吸着面S1に略平行な仮想平面である。また、本実施形態において、第2の仮想平面VS2は、Z軸方向における下側ヒータ電極層53と板状部材10の下面S2との間において、第1の仮想平面VS1の位置と異なる位置に位置している。より具体的には、第2の仮想平面VS2は、Z軸方向において、第1の仮想平面VS1より上方向に位置している。なお、図2では、2つの下側ヒータ電極用ドライバ603のうちの一方の下側ヒータ電極用ドライバ603Aのみを図示し、他方の下側ヒータ電極用ドライバ603の図示を省略している。下側ヒータ電極用ドライバ603は、特許請求の範囲における第2のドライバ電極に相当する。
【0043】
下側ヒータ電極用ドライバ603は、下側ヒータ電極503のうちの少なくとも1つの下側ヒータ電極503に電気的に接続されている。図2および図7に示すように、本実施形態において、下側ヒータ電極用ドライバ603Aは、1つの下側ヒータ電極503(具体的には、第1の下側ヒータ電極503A)に電気的に接続している。より具体的には、下側ヒータ電極用ドライバ603Aは、下側ヒータ電極用ビア73を構成する1つの下側ヒータ電極用ビア731(具体的には、第1の下側ヒータ電極用ビア731A)を介して、第1の下側ヒータ電極503Aの第1のヒータパッド部531Aに電気的に接続している。図7に示すように、本実施形態において、下側ヒータ電極用ドライバ603Aは、Z軸方向視において、第1のヒータパッド部531Aと第1の下側ヒータ電極用ビア731Aとの両方に重なる導電領域E31を含んでいる。
【0044】
また、下側ヒータ電極用ドライバ603Aは、後述の第2の給電側ビア83を介して、後述の第2の電極パッド33に電気的に接続している。より具体的には、下側ヒータ電極用ドライバ603Aは、Z軸方向視において、第2の電極パッド33と第2の給電側ビア83との両方に重なる導電領域E83(図7参照)を含んでいる。
【0045】
図2に示すように、静電チャック100には、ベース部材20の下面S4から板状部材10の内部に至る複数の第2の端子用孔130が形成されている。各第2の端子用孔130は、ベース部材20を上下方向に貫通する貫通孔132と、接合部30を上下方向に貫通する貫通孔133と、板状部材10の下面S2側に形成された凹部131とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。なお、図2では、複数の第2の端子用孔130のうちの1つの第2の端子用孔130のみを図示し、他の第2の端子用孔130の図示を省略している。
【0046】
各第2の端子用孔130には、柱状の第2の端子部材230が収容されている。また、第2の端子用孔130を構成する板状部材10の凹部131の底面には、第2の電極パッド33が設けられている。第2の端子部材230は、例えばろう付け等により第2の電極パッド33に接合されている。また、第2の電極パッド33は、Z軸方向に延びる第2の給電側ビア83を介して、下側ヒータ電極用ドライバ603Aにおける導電領域E83に導通している。なお、第2の端子部材230および第2の電極パッド33は、すべて、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成されている。
【0047】
上述の通り、第1の下側ヒータ電極503Aの第1のヒータパッド部531Aは、下側ヒータ電極用ドライバ603Aを介して、第2の端子部材230に電気的に接続している。本実施形態において、第1の下側ヒータ電極503Aの第2のヒータパッド部532Aは、第1の下側ヒータ電極用ビア731Bを介して、他の端子部材C(図7参照)に電気的に接続している。
【0048】
第2の端子部材230および端子部材Cは、電源(図示せず)に接続されている。電源からの電圧は、第2の端子部材230および端子部材C、第2の電極パッド33、および、第2の給電側ビア83を介して、下側ヒータ電極用ドライバ603Aに供給され、さらに、第1の下側ヒータ電極503Aについて設けられた第1の下側ヒータ電極用ビア731Aを介して、第1の下側ヒータ電極503Aに印加される。これにより、第1の下側ヒータ電極503Aが発熱し、第1の下側ヒータ電極503Aが配置された板状部材10が加熱される。本実施形態では、下側ヒータ電極503(下側ヒータ電極503A,503B)は、板状部材10の全体または比較的大きな領域単位での吸着面S1の温度制御に用いられる。
【0049】
A-4.ヒータ電極層51,53とドライバ電極層61,63との位置関係:
図2に示すように、本実施形態において、上側ヒータ電極層51は、チャック電極40より下側に配置され、下側ヒータ電極層53は、上側ヒータ電極層51より下側に配置されている。また、下側ヒータ電極用ドライバ電極層63は、下側ヒータ電極層53の下側に配置され、上側ヒータ電極用ドライバ電極層61は、下側ヒータ電極用ドライバ電極層63の下側に配置されている。すなわち、本実施形態において、複数の(2つの)上側ヒータ電極501が電気的に接続された上側ヒータ電極用ドライバ電極層61が、上側ヒータ電極層51と下側ヒータ電極層53との間に、配置されていない。また、本実施形態では、上側ヒータ電極用ドライバ電極層61は、板状部材10におけるヒータ電極層51,53および下側ヒータ電極用ドライバ電極層63の位置と比較して、板状部材10の吸着面S1からより離れた位置に配置されている。
【0050】
本実施形態の静電チャック100では、このような構成を採用することにより、複数の(2つの)上側ヒータ電極501が電気的に接続された上側ヒータ電極用ドライバ電極層61による発熱が、板状部材10における吸着面S1の温度に与える影響を低減することができ、吸着面S1における温度分布の制御性を向上させることができる。また、ヒータ電極層51,53のヒータパターンをシミュレーションする際、例えば、上側ヒータ電極用ドライバ電極層61の発熱を考慮して、板状部材10における吸着面S1の温度調整を行うことは困難である。本実施形態の静電チャック100では、上述の通り、上側ヒータ電極用ドライバ電極層61による発熱が、板状部材10における吸着面S1の温度に与える影響を低減することができるため、シミュレーションの確度を向上させることができる。
【0051】
A-5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の静電チャック100は、Z軸方向に略直交する吸着面S1および下面S2を有する板状部材10と、板状部材10の内部に配置され、抵抗発熱体により構成されたN個(Nは2以上の整数)の上側ヒータ電極501(上側ヒータ電極501A,501B等)と、を備え、板状部材10の吸着面S1上にウェハWを保持する保持装置である。また、本実施形態の静電チャック100は、下側ヒータ電極503(第1の下側ヒータ電極503A等)と、上側ヒータ電極用ドライバ601(上側ヒータ電極用ドライバ601A等)とを備える。下側ヒータ電極503は、板状部材10の内部において、Z軸方向における上側ヒータ電極501と板状部材10の下面S2との間に配置され、かつ、抵抗発熱体により構成されている。上側ヒータ電極用ドライバ601Aは、板状部材10の内部において、第1の仮想平面VS1上に配置され、かつ、N個の上側ヒータ電極501のうちの2個の上側ヒータ電極501A,501Bに電気的に接続されている。本実施形態の静電チャック100では、2個の上側ヒータ電極501(上側ヒータ電極501A,501B)に電気的に接続された上側ヒータ電極用ドライバ601(上側ヒータ電極用ドライバ601A)が、Z軸方向における下側ヒータ電極503と板状部材10の下面S2との間(第1の仮想平面上)に配置されている。換言すれば、上側ヒータ電極用ドライバ601(上側ヒータ電極用ドライバ601A)は、Z軸方向において、上側ヒータ電極501と下側ヒータ電極503との間に配置されていない。このため、発熱の度合いの大きい上側ヒータ電極用ドライバ601(上側ヒータ電極用ドライバ601A)により、板状部材10の吸着面S1に高温の温度特異点が発生することを低減することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、板状部材10の吸着面S1における温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態の静電チャック100は、板状部材10の内部において、第2の仮想平面VS2上に配置され、かつ、下側ヒータ電極503に電気的に接続された下側ヒータ電極用ドライバ603を備えている。本実施形態の静電チャック100では、下側ヒータ電極503に電気的に接続された下側ヒータ電極用ドライバ603についても、Z軸方向における下側ヒータ電極503と板状部材10の下面S2との間(第2の仮想平面VS2上)に配置されている。このため、下側ヒータ電極用ドライバ603による発熱が、板状部材10の吸着面S1の温度分布に影響を及ぼすことを低減することができる。また、第2の仮想平面VS2は、第1の仮想平面VS1とは異なる高さに位置している。すなわち、下側ヒータ電極用ドライバ603は、上側ヒータ電極用ドライバ601が配置された第1の仮想平面VS1とは異なる第2の仮想平面VS2に配置されている。このため、第1の仮想平面VS1に下側ヒータ電極用ドライバ603を配置する構成と比較して、下側ヒータ電極用ドライバ603の面積を大きくすることにより下側ヒータ電極用ドライバ603自体の発熱を抑制する等、下側ヒータ電極用ドライバ603の設計の自由度を向上させることができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、板状部材10の吸着面S1における温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御性)をより効果的に向上させることができるとともに、下側ヒータ電極用ドライバ603の設計の自由度を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態の静電チャック100では、上側ヒータ電極501の数は、下側ヒータ電極503の数より多い。本実施形態の静電チャック100では、上側ヒータ電極501の数が、下側ヒータ電極503の数より多い。ヒータ電極の数が多い上側ヒータ電極501では、上側ヒータ電極501に電気的に接続する上側ヒータ電極用ドライバ601の数も多くなり、または、上側ヒータ電極用ドライバ601に電気的に接続する上側ヒータ電極501の数が多くなりうる。このため、このような上側ヒータ電極用ドライバ601による発熱は、板状部材10の吸着面S1の温度分布に、より大きく影響を及ぼしやすい。このような上側ヒータ電極用ドライバ601を下側ヒータ電極503と板状部材10の下面S2との間に配置することにより、上側ヒータ電極用ドライバ601による発熱が、板状部材10の吸着面S1に影響を及ぼすことをより効果的に低減することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、板状部材10の吸着面S1における温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御性)をより効果的に向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向において、上側ヒータ電極用ドライバ601は、下側ヒータ電極用ドライバ603と板状部材10の下面S2との間に配置されている。本実施形態の静電チャック100では、上側ヒータ電極用ドライバ601が、下側ヒータ電極用ドライバ603と板状部材10の下面S2との間に配置されている。このため、板状部材10の吸着面S1の温度分布に、より大きく影響を及ぼしやすい上側ヒータ電極用ドライバ601による発熱が、板状部材10の吸着面S1の温度分布に影響を及ぼすことをより効果的に低減することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、板状部材10の吸着面S1における温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御性)をより効果的に向上させることができる。
【0055】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0056】
上記実施形態では、上側ヒータ電極用ドライバ601および下側ヒータ電極用ドライバ603は、それぞれ、第1の仮想平面VS1および第2の仮想平面VS2上に配置されているが、このような構成に限定されない。例えば、上側ヒータ電極用ドライバ601の少なくとも1つが、第1の仮想平面VS1に配置されていれば、その他の上側ヒータ電極用ドライバ601は、Z軸方向において、第1の仮想平面VS1と異なる平面上に配置される構成であってもよい。このとき、第1の仮想平面VS1と異なる平面は第2の仮想平面VS2であってもよい。同様に、下側ヒータ電極用ドライバ603の少なくとも1つが、第2の仮想平面VS2に配置されていれば、その他の下側ヒータ電極用ドライバ603は、Z軸方向において、第2の仮想平面VS2と異なる平面上に配置される構成であってもよい。このとき、第2の仮想平面VS2と異なる平面は第1の仮想平面VS1であってもよい。
【0057】
上記実施形態では、上側ヒータ電極用ドライバ601Aに、2個の上側ヒータ電極501(上側ヒータ電極501A,501B)が電気的に接続しているが、このような構成に限定されない。例えば、上側ヒータ電極用ドライバ601A(または、他の上側ヒータ電極用ドライバ601)に、N個の上側ヒータ電極501のうちの3個以上の上側ヒータ電極501が電気的に接続する構成であってもよい。
【0058】
上記実施形態において、上側ヒータ電極501の数が、下側ヒータ電極503の数と同数である構成、または、下側ヒータ電極503の数より少ない構成であってもよい。また、上記実施形態の上側ヒータ電極501および下側ヒータ電極503において、それぞれ異なる形状を採用してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、板状部材10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、板状部材10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。また、上記実施形態の静電チャック100における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10:板状部材 20:ベース部材 21:冷媒流路 30:接合部 31:第1の電極パッド 33:第2の電極パッド 40:チャック電極 51:上側ヒータ電極層 53:下側ヒータ電極層 61:上側ヒータ電極用ドライバ電極層 63:下側ヒータ電極用ドライバ電極層 71:上側ヒータ電極用ビア 73:下側ヒータ電極用ビア 81:第1の給電側ビア 83:第2の給電側ビア 100:静電チャック 110:第1の端子用孔 111:凹部 112:貫通孔 113:貫通孔 130:第2の端子用孔 131:凹部 132:貫通孔 133:貫通孔 210:第1の端子部材 230:第2の端子部材 501:上側ヒータ電極 501A:第1の上側ヒータ電極 501B:第2の上側ヒータ電極 503:下側ヒータ電極 503A:第1の下側ヒータ電極 503B:第2の下側ヒータ電極 510A:ヒータライン部 510B:ヒータライン部 511A:第1のヒータパッド部 511B:第1のヒータパッド部 512A:第2のヒータパッド部 512B:第2のヒータパッド部 530A:ヒータライン部 531A:第1のヒータパッド部 532A:第2のヒータパッド部 601:上側ヒータ電極用ドライバ 601A:上側ヒータ電極用ドライバ 603:下側ヒータ電極用ドライバ 603A:下側ヒータ電極用ドライバ 711:第1の上側ヒータ電極用ビア 711A:第1の上側ヒータ電極用ビア 711B:第1の上側ヒータ電極用ビア 712:第2の上側ヒータ電極用ビア 712A:第2の上側ヒータ電極用ビア 731:第1の下側ヒータ電極用ビア 731A:第1の下側ヒータ電極用ビア 731B:第1の下側ヒータ電極用ビア S1:吸着面 S2:下面 S3:上面 S4:下面 W:ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7