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  • 特許-測量用標識、及び測量方法 図1
  • 特許-測量用標識、及び測量方法 図2
  • 特許-測量用標識、及び測量方法 図3
  • 特許-測量用標識、及び測量方法 図4
  • 特許-測量用標識、及び測量方法 図5
  • 特許-測量用標識、及び測量方法 図6
  • 特許-測量用標識、及び測量方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】測量用標識、及び測量方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
G01C15/06 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020019497
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021124448
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大泉 純也
(72)【発明者】
【氏名】横尾 泰広
(72)【発明者】
【氏名】酒井 静
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-035728(JP,A)
【文献】特開2015-161682(JP,A)
【文献】特開平07-208993(JP,A)
【文献】登録実用新案第3212102(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量に用いられる標識において、
平坦面を有し、三脚に着脱可能である載置体と、
前記載置体と同一の形状であって、レーザー測量、又は写真測量において検知可能な標識シートと、を備え、
前記標識シートは、三脚に設置された前記載置体の前記平坦面上に、交換可能であって重ねるように載置し得る、
ことを特徴とする測量用標識。
【請求項2】
前記標識シートは、磁力によって前記載置体の前記平坦面に付着する、
ことを特徴とする請求項1記載の測量用標識。
【請求項3】
前記標識シートは、反射シートで形成されるととともに、表面には標識が付された、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の測量用標識。
【請求項4】
測量用標識を用いたレーザー測量、又は写真測量において、
平坦面を有する載置体を三脚に設置する載置体設置工程と、
前記載置体と同一の形状であって、レーザー測量、又は写真測量において検知可能な標識シートを、三脚に設置された前記載置体の前記平坦面上に重ねるように載置する標識シート載置工程と、
前記標識シートを含む範囲に対して、レーザー測量、又は写真測量を行う本測量工程と、を備えた、
ことを特徴とする測量方法。
【請求項5】
測量用標識を用いたレーザー測量において、
平坦面を有する載置体を三脚に設置する載置体設置工程と、
前記載置体と同一の形状であって、レーザー測量において検知可能な標識シートを、三脚に設置された前記載置体の前記平坦面上に重ねるように載置する標識シート載置工程と、
前記標識シートを含む範囲に対して、レーザー測量を行う本測量工程と、を備え、
前記標識シート載置工程では、色相環においてレーザー測量に用いるレーザー光の色から90度回転した色が付された前記標識シートを載置する、
ことを特徴とする測量方法。
【請求項6】
前記標識シート載置工程では、座標が未知の観測点に前記標識シートを載置し、
前記本測量工程の結果に基づいて、前記観測点の座標を求める、
ことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の測量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、対空標識などの測量用標識に関するものであり、より具体的には、三脚に着脱可能である測量用標識と、これを用いた測量方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地形図の作製など広範囲に渡って地形を計測する場合、空中写真測量や航空レーザー計測を実施するのが主流である。空中写真測量は、同一箇所を写した異なる2枚の空中写真を一組とするステレオペア写真を用意し、双方の写真に写された同一対象物を同定するとともに、その対象物の写真上の位置の相違(視差)を利用して地上における対象物の座標を求める手法である。一方の航空レーザー計測は、対象地形の上空を航空機で飛行し、地形に対して照射したレーザーパルスの反射波を受けて計測する手法である。
【0003】
空中写真測量を実施するにあたっては、水平位置と標高の基準となる標定点を設置する必要があり、また標定点の写真座標を測定するためその位置には対空標識が設置される。この対空標識は、写真上で明確に識別できる必要があり、例えば図7に示すような模様(標識)のものが利用される。またレーザー計測を実施するときにも標定点の位置に対空標識を設置することがある。
【0004】
これまでの対空標識は、木杭やベニヤ板を使って現地で作成~設置していた。この作業には手間や時間がかかるうえ、設置精度も悪く、また一度使用した対空標識はその流用や転用が難しいものであった。そのため、これまでにも対空標識に関する改良技術がいくつか提案されており、例えば特許文献1では空中から投下して使用することができる対空標識について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-200951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される対空標識は、現地で作成したり設置したりする必要はないし、回収できれば他でも流用することもできる。しかしながら、ベース板のみで全体を支える構造であるため堅固に安定した状態で設置することが難しく、また標定点に正確に設置することも難しい。そのうえ、既述したとおり空中写真測量では写真上で明確に識別できる対空標識が望ましく、航空レーザー計測ではレーザーの反射強度に特徴を有する対空標識が望ましいところ、それぞれの測量に対応できる対空標識としては利用できない。
【0007】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち堅固に安定した状態で設置することができるうえ容易に設置でき、しかも他での流用や転用が可能であって、さらに測量方法に応じて柔軟に標識の模様等を変更することができる測量用標識と、これを用いた測量方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、測量用標識を測量用の三脚に取り付けるという点、測量用標識を載置体と標識シートで構成することによって標識シートを交換容易にするという点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0009】
本願発明の測量用標識は、測量に用いられる標識であり、載置体と標識シートを備えたものである。このうち載置体は、三脚に着脱可能であって平坦面を有しており、一方の標識シートは、レーザー測量や写真測量において検知可能なものである。また標識シートは、三脚に設置された載置体の平坦面上に交換可能に載置することができる。
【0010】
本願発明の測量用標識は、標識シートが磁力によって載置体の平坦面に付着するものとすることもできる。
【0011】
本願発明の測量用標識は、載置体の平坦面の中心部に第1嵌合手段が設けられ、標識シートの中心部に第2嵌合手段が設けられたものとすることもできる。この場合、第1嵌合手段と第2嵌合手段のうちいずれか一方が凸部であって他方が凹部とされ、第1嵌合手段と第2嵌合手段が嵌合することによって載置体の平坦面の中心部と標識シートの中心部とが重なるように標識シートを載置することができる。
【0012】
本願発明の測量用標識は、表示手段と出力手段、標識記憶手段を備えたものとすることもできる。このうち表示手段は、三脚に着脱可能なものであり、表示手段にレーザー測量や写真測量において検知可能な標識を出力手段に出力するものであり、標識記憶手段は、2種類以上の標識を記憶するものである。なお出力手段は、標識記憶手段から読み出した1の標識を表示手段に出力する。
【0013】
本願発明の測量方法は、測量用標識を用いたレーザー測量や写真測量を行う方法であり、載置体設置工程と標識シート載置工程、本測量工程を備えた方法である。このうち載置体設置工程では、平坦面を有する載置体を三脚に設置し、標識シート載置工程では、レーザー測量や写真測量において検知可能な標識シートを三脚に設置された載置体の平坦面上に載置する。そして本測量工程では、標識シートを含む範囲に対してレーザー測量や写真測量を行う。
【0014】
本願発明の測量方法は、標識シート載置工程において、レーザー測量に用いるレーザー光の色に基づいて適色を選定するとともにその適色が付された標識シートを載置する方法とすることもできる。
【0015】
本願発明の測量方法は、本測量工程の結果に基づいて観測点の座標を求める方法とすることもできる。この場合、標識シート載置工程では、座標が未知の観測点に標識シートを載置する。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の測量用標識、及び測量方法には、次のような効果がある。
(1)載置体を三脚に取り付けることができるため、堅固に安定した状態で設置することができるうえ、容易に設置することができる。
(2)載置体を三脚に着脱可能に取り付けることができるため、他での流用や転用が可能であり、しかも現地で作成する手間などを省くことができる。
(3)空中写真測量では写真上で明確に識別できる標識シートを設置し、航空レーザー計測ではレーザーの反射強度に特徴を有する標識シートを設置するなど、測量方法に応じて柔軟に標識シートを変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】三脚に設置した本願発明の測量用標識を示す側面図。
図2】(a)は測量用標識100を模式的に示す側面図、(b)は載置板の中心に設けられた第1嵌合手段と標識シートの中心に設けられた第2嵌合手段を示す平面図。
図3】載置体の平坦面上に交換可能に載置される標識シートを示す写真図。
図4】表示手段に標識を表示する本願発明の測量用標識を示す側面図。
図5】本願発明の測量方法の主な工程の流れを示すフロー図。
図6】丸枠の対空標識の一例を示すモデル図。
図7】対空標識の一例を示すモデル図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願発明の測量用標識、及び測量方法の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0019】
1.測量用標識
はじめに、本願発明の測量用標識について説明する。なお本願発明の測量方法は、本願発明の測量用標識を用いてレーザー測量や写真測量を行う方法であり、したがってまずは本願発明の測量用標識について説明し、その後に本願発明の測量方法について説明することとする。
【0020】
本願発明の測量用標識100は、図1に示すように三脚TRに設置することができ、もちろんトランシットやレベル、トータルステーションなどと同様、容易に設置することも取り外すこともできる。
【0021】
測量用標識100は、図2(a)に示すように載置体110と標識シート120からなるいわば2層構造となっている。なお図2(a)は、測量用標識100を模式的に示す側面図である。また載置体110は、表面(図では上面)が略平坦面(平坦面を含む)である板状の載置板111と、三脚TRに取り付けるための係止具112とを含んで構成される。一方の標識シート120は、シート状であって載置体110の平坦面(図では上面)上に載置されるものであり、しかも図3に示すように交換可能に載置することができるものである。交換可能に載置するため、載置体110と標識シート120のうちいずれか一方(あるいは両方)に磁石を含めることもできる。
【0022】
標識シート120の表面(上面)は、写真測量(特に空中写真測量)やレーザー測量(特に航空レーザー計測)において検知可能な構成とされ、例えば写真測量用として利用する場合は図6図7に示すような標識(模様)を付し、レーザー測量用として利用する場合はレーザーを強い反射強度で返す(反射させる)反射シートで形成するとよい。図6に示す標識は、図7に示すような標識の角枠(四角枠)を丸枠(円形枠)に変更したものである。なお、図6の左端に示す「丸枠型」は、白や黒などの一色(無地)とすることができる。もちろん、反射シートで形成するとともに図6図7に示すような標識(模様)を付した標識シート120としてもよい。
【0023】
測量用標識100が対空標識として用いられるケースでは、標定点の上に三脚TRを据えて、標識シート120の中心が標定点の直上となるように標識シート120を載置体110に載置する必要がある。係止具112によって載置体110を三脚TRに取り付けると、トランシットやレベル、トータルステーションなどと同様、載置板111はその中心が標定点の直上となるように配置される。ところが、正確に標識シート120の中心が標定点の直上となるように、つまり標識シート120の中心と載置板111の中心が一致するように標識シート120を載置するのはそれほど容易ではない。そこで、標識シート120と載置板111を同一の形状とするか、図2に示すように第1嵌合手段113と第2嵌合手段121を利用するとよい。より詳しくは、図2(b)に示すように載置板111の中心に第1嵌合手段113を設け、さらに標識シート120の中心に第2嵌合手段121を設けるとともに、第1嵌合手段113を凹部(例えば小孔)とし、図2(a)に示すように第2嵌合手段121を凸部(例えば先鋭の突出体)とすることで、第1嵌合手段113と第2嵌合手段121を嵌合することによって標識シート120の中心と載置板111の中心が一致するように(標識シート120の中心が標定点の直上となるように)標識シート120が載置されるわけである。なお、第1嵌合手段113と第2嵌合手段121が嵌合する構造であれば、第1嵌合手段113を凸部とし、第2嵌合手段121を凹部とすることもできる。
【0024】
測量用標識100は、図2に示すような構成に代えて、ディスプレイといった表示手段に図6図7に示すような標識(模様)を表示する構成とすることもできる。この場合の測量用標識100は、図4に示すように表示手段130と出力手段140、標識記憶手段150を含んで構成される。このうち表示手段130は、三脚TRに取り付けるための係止具112(図2(a))を備ており、図2に示す測量用標識100と同様、その中心が所定位置(例えば標定点)の直上となるように表示手段130は配置される。
【0025】
標識記憶手段150は、レーザー測量や写真測量において検知可能な標識を2種類以上記憶するもので、出力手段140は、標識記憶手段150から読み出した標識を表示手段130に表示するものである。
【0026】
出力手段140は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、パーソナルコンピュータ(PC)や、iPad(登録商標)といったタブレット型PC、スマートフォンを含む携帯端末などによって構成することができる。コンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリを具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイ(表示手段130)を含むものもあるディスプレイを含む出力手段140は、表示手段130と兼ねることもでき、すなわちスマートフォンなどの携帯端末を表示手段130及び出力手段140として利用し、その携帯端末を三脚TRに取り付けることもできる。
【0027】
標識記憶手段150は、汎用的コンピュータ(例えば出力手段140)の記憶装置を利用することもできるし、そのほかデータベースサーバに構築することもでき、この場合、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由(つまり無線通信)で保存するクラウドサーバとすることもできる。なお図4では、表示手段130と出力手段140は無線通信手段を介して接続され、出力手段140と標識記憶手段150は有線通信手段を介して接続されているが、表示手段130と出力手段140を有線通信とし出力手段140と標識記憶手段150を無線通信とすることもできるし、両方ともに無線通信(あるいは有線通信)とすることもできる。
【0028】
2.測量方法
続いて本願発明の測量方法について図5を参照しながら説明する。図5は、本願発明の測量方法の主な工程の流れを示すフロー図であり、座標が既知の基準点(例えば標定点)の上に測量用標識100を設置してレーザー測量や写真測量を行う例を示しているが、これに限らず本願発明の測量方法は座標が未知の観測点の上に測量用標識100を設置してレーザー測量や写真測量を行うこともできる。なお、本願発明の測量方法は、ここまで説明した測量用標識100を用いてレーザー測量や写真測量を行う方法であり、したがって測量用標識100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の測量方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「1.測量用標識」で説明したものと同様である。
【0029】
図5に示すように、はじめに標定点や観測点の上に三脚TRを据え(Step10)、係止具112を用いて載置板111を三脚TRに設置する(Step20)。そして、あらかじめ選定された(Step30)標識シート120を載置板111上に載置する(Step40)。このとき、第1嵌合手段113や第2嵌合手段121を利用しながら、標識シート120の中心と載置板111の中心が一致するように(標識シート120の中心が標定点や観測点の直上となるように)標識シート120を載置するとよい。標識シート120を選定するにあたっては、写真測量用として利用するケースでは例えば図6図7に示すような標識(模様)のうち適切なものを、レーザー測量用として利用するケースではレーザーを強い反射強度で返す(反射させる)反射シートで形成されたものを、それぞれ選定するとよい。なお発明者らは、レーザー測量に用いるレーザーの色に基づく適色を付すことによって、標識シート120をより識別しやすくなることを見出した。より詳しくは、色相環においてレーザーの色から約90度回転した色を標識シート120に付すと好適となる。例えばレーザーの色が赤色であれば黄色や青紫色を標識シート120に付し、レーザーの色が緑色であれば青色や橙色(赤みの橙色)を標識シート120に付すわけである。
【0030】
選定された標識シート120を載置板111上に載置すると、実際に写真測量(例えば空中写真測量)やレーザー測量(例えば航空レーザー計測)を行い(Step50)、その結果を計算して目的の成果を得る(Step50)。例えば、標定点(座標が既知)の上に測量用標識100を設置した場合は、標定点を基準とする他の観測点の座標等が得られ、観測点(座標が未知)の上に測量用標識100を設置した場合は、他の基準点に基づいてこの観測点の座標が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本願発明の測量用標識、及び測量方法は、地形図作成のほか、用地測量や施工現場における出来形計測などにも利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
100 本願発明の測量用標識
110 (測量用標識の)載置体
111 (載置体の)載置板
112 (載置体の)係止具
113 (載置体の)第1嵌合手段
120 (測量用標識の)標識シート
121 (標識シートの)第2嵌合手段
130 (測量用標識の)表示手段
140 (測量用標識の)出力手段
150 (測量用標識の)標識記憶手段
TR 三脚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7