(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】水質計測装置及び水質計測装置の保管方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/27 20060101AFI20231026BHJP
G01N 27/28 20060101ALI20231026BHJP
G01N 27/38 20060101ALI20231026BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
G01N27/27 D
G01N27/28 321F
G01N27/38 301
G01N27/416 353Z
G01N27/416 351A
G01N27/416 351J
(21)【出願番号】P 2020021286
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀井 駿典
(72)【発明者】
【氏名】田島 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】大澤 敬正
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-181334(JP,A)
【文献】特開2016-211927(JP,A)
【文献】特開2000-329728(JP,A)
【文献】特表2003-516549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象液を流す流路と、
応答膜部を有し、前記応答膜部の表面が前記流路内に配置されるイオンセンサと、を備え、前記計測対象液の水質を計測する水質計測装置であって、
ガラス電極を有するとともに前記ガラス電極の表面が前記流路内に配置されるガラス電極型センサと、
前記流路内における流体の流れを制御する駆動部と、
前記イオンセンサ及び前記ガラス電極型センサよりも前記計測対象液が流される方向における上流側の第1位置において、前記流路を開放する第1開状態と前記流路を閉塞する第1閉状態とに切り替わる第1開閉部と、
前記イオンセンサ及び前記ガラス電極型センサよりも前記計測対象液が流される方向における下流側の第2位置において前記流路を開放する第2開状態と前記流路を閉塞する第2閉状態とに切り替わる第2開閉部と、
前記流路に液を供給する供給部と、を有し、
保管条件が成立した場合に、前記第1開閉部を前記第1閉状態とし前記第2開閉部を前記第2閉状態とすることで、前記応答膜部の表面および前記ガラス電極の表面が同一の閉空間に存在する状態が形成され、前記応答膜部の表面が液中に浸されずかつ前記閉空間が湿潤状態となる
水質計測装置。
【請求項2】
前記駆動部、前記第1開閉部、前記第2開閉部および前記供給部の動作を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記保管条件が成立した場合に、前記湿潤状態とする動作を前記駆動部に行わせる
請求項1に記載の水質計測装置。
【請求項3】
前記第1開閉部は、前記閉空間の前記上流側において前記流路を開閉する第1電磁弁であり、
前記第2開閉部は、前記閉空間の前記下流側において前記流路を開閉する第2電磁弁である
請求項2に記載の水質計測装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記保管条件が成立した場合に、前記閉空間から液を排出する動作及び前記閉空間内に空気を流入させる動作を前記駆動部に行わせる
請求項2又は請求項3に記載の水質計測装置。
【請求項5】
前記閉空間を流れる液の流量を検出可能な流量センサを備え、
前記湿潤状態は、前記閉空間から液を排出する動作及び前記閉空間内に空気を流入させる動作を前記駆動部が行っているときに前記流量センサが検出する前記閉空間の流量が所定値未満となった状態である
請求項4に記載の水質計測装置。
【請求項6】
前記供給部は、前記閉空間に洗浄水を流す洗浄動作を行う洗浄部を有し、
前記制御部は、前記保管条件が成立した場合に前記洗浄部に前記洗浄動作を行わせ、前記洗浄動作の後に前記湿潤状態とする動作を前記駆動部に行わせる
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の水質計測装置。
【請求項7】
計測対象液を流す流路と、
応答膜部を有し、前記応答膜部の表面が前記流路内に配置されるイオンセンサと、を備え、前記計測対象液の水質を計測する水質計測装置の保管方法であって、
前記水質計測装置は、
ガラス電極を有するとともに前記ガラス電極の表面が前記流路内に配置されるガラス電極型センサと、
前記流路内における流体の流れを制御する駆動部と、
前記イオンセンサ及び前記ガラス電極型センサよりも前記計測対象液が流される方向における上流側の第1位置において、前記流路を開放する第1開状態と前記流路を閉塞する第1閉状態とに切り替わる第1開閉部と、
前記イオンセンサ及び前記ガラス電極型センサよりも前記計測対象液が流される方向における下流側の第2位置において前記流路を開放する第2開状態と前記流路を閉塞する第2閉状態とに切り替わる第2開閉部と、
前記流路に液を供給する供給部と、を有し、
保管条件が成立した場合に、前記第1開閉部を前記第1閉状態とし前記第2開閉部を前記第2閉状態とすることで、前記応答膜部の表面および前記ガラス電極の表面が同一の閉空間に存在する状態を形成し、前記応答膜部の表面が液中に浸されずかつ前記閉空間が湿潤状態とする
水質計測装置の保管方法。
【請求項8】
前記水質計測装置は、前記駆動部、前記第1開閉部、前記第2開閉部および前記供給部の動作を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記保管条件が成立した場合に、前記湿潤状態とする動作を前記駆動部に行わせる
請求項7に記載の水質計測装置の保管方法。
【請求項9】
前記第1開閉部は、前記閉空間の前記上流側において前記流路を開閉する第1電磁弁であり、
前記第2開閉部は、前記閉空間の前記下流側において前記流路を開閉する第2電磁弁である
請求項8に記載の水質計測装置の保管方法。
【請求項10】
前記制御部は、前記保管条件が成立した場合に、前記閉空間から液を排出する動作及び前記閉空間内に空気を流入させる動作を前記駆動部に行わせる
請求項8又は請求項9に記載の水質計測装置の保管方法。
【請求項11】
前記水質計測装置は、前記閉空間を流れる液の流量を検出可能な流量センサを備え、
前記湿潤状態は、前記閉空間から液を排出する動作及び前記閉空間内に空気を流入させる動作を前記駆動部が行っているときに前記流量センサが検出する前記閉空間の流量が所定値未満となった状態である
請求項10に記載の水質計測装置の保管方法。
【請求項12】
前記供給部は、前記閉空間に洗浄水を流す洗浄動作を行う洗浄部を有し、
前記制御部は、前記保管条件が成立した場合に前記洗浄部に前記洗浄動作を行わせ、前記洗浄動作の後に前記湿潤状態とする動作を前記駆動部に行わせる
請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の水質計測装置の保管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質計測装置及び水質計測装置の保管方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液膜型のイオン選択性電極を備えたイオンセンサが開示されている。このイオンセンサは、マグネシウムイオンに対して選択的に反応するマグネシウムイオン選択性電極と、カルシウムイオンに対して選択的に反応するカルシウムイオン選択性電極と、を有してなる。
【0003】
一方、特許文献2には、参照極と、ガラス電極によって構成される作用極とを備えたpHセンサが開示されている。このpHセンサは、参照極及び作用極の出力に基づいて被測定液のpHを測定する機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-253410号公報
【文献】特開2012-163531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水質検査装置では、計測対象液内に含有される対象イオンの濃度と計測対象液のpHとを共通の経路で計測することができると有用である。しかし、液膜型のイオンセンサに適した保管状態と、ガラス電極を備えたセンサに適した保管状態とが異なるため、両センサを共通経路に併存させて保管することは難しい。
【0006】
例えば、液膜型のイオンセンサは、特定のイオンと選択的に相互作用することができるイオノフォアを有する応答膜部(液膜部である電極膜)を備える。この種のセンサは、応答膜部を液に浸し続けると、イオノフォアが溶け出すため、応答膜部を液に浸し続けて保管することはできない。
【0007】
一方、ガラス電極を用いてpH濃度を検出するpHセンサは、ガラス電極の表面に水和ゲル層が存在する状態でpH濃度測定機能を発揮し、ガラス電極の表面に水和ゲル層が存在しなくなると、濃度測定機能を回復させるための別途の処置が必要となる。従って、この種のセンサは、ガラス電極の表面の乾燥を防ぐために適度な水分が維持され続けることが望ましい。なお、この問題は、pHセンサだけでなく、ガラス電極を用いた他のセンサでも生じ得る。
【0008】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、応答膜部の表面が流路内に配置されるイオンセンサと、ガラス電極を用いたセンサとを、同一装置に併存させつつ良好に保管し得る水質計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの解決手段である水質計測装置は、計測対象液を流す流路と、応答膜部を有し、上記応答膜部の表面が上記流路内に配置されるイオンセンサと、を備え、上記計測対象液の水質を計測する水質計測装置である。そして、この水質計測装置は、ガラス電極を有するとともに上記ガラス電極の表面が上記流路内に配置されるガラス電極型センサと、上記流路内における流体の流れを制御する駆動部と、上記イオンセンサ及び上記ガラス電極型センサよりも上記計測対象液が流される方向における上流側の第1位置において、上記流路を開放する第1開状態と上記流路を閉塞する第1閉状態とに切り替わる第1開閉部と、上記イオンセンサ及び上記ガラス電極型センサよりも上記計測対象液が流される方向における下流側の第2位置において上記流路を開放する第2開状態と上記流路を閉塞する第2閉状態とに切り替わる第2開閉部と、上記流路に液を供給する供給部と、を有する。そして、この水質計測装置は、保管条件が成立した場合に、上記第1開閉部を上記第1閉状態とし上記第2開閉部を上記第2閉状態とすることで、上記応答膜部の表面および上記ガラス電極の表面が同一の閉空間に存在する状態が形成され、上記応答膜部の表面が液中に浸されずかつ上記閉空間が湿潤状態となる。
【0010】
上記の水質計測装置は、保管条件が成立した場合に、応答膜部の表面およびガラス電極の表面が同一の閉空間に存在する状態を形成し、この閉空間内を応答膜部の表面が液中に浸されない状態かつ湿潤状態とすることができる。この水質計測装置は、応答膜部の表面が液中に浸されない状態を維持しながら保管することができるため、応答膜部が液に浸され続けて保管されることに起因する不具合を抑制することができる。また、この水質計測装置は、閉空間内に液が存在する状態を維持しながら保管することができるため、保管中に閉空間内の湿度の低下を抑えることができ、保管中にガラス電極の表面が乾燥することを防ぐことができる。
【0011】
本発明の一つの解決手段である水質計測装置は、上記駆動部、上記第1開閉部、上記第2開閉部および上記供給部の動作を制御する制御部を有していてもよい。上記制御部は、上記保管条件が成立した場合に、上記湿潤状態とする動作を上記駆動部に行わせてもよい。
【0012】
この水質計測装置は、上記保管条件が成立した場合に自身の制御によって上記湿潤状態とする動作を自動的に行うことができる。
【0013】
本発明の一つの解決手段である水質計測装置において、上記第1開閉部は、上記閉空間の上記上流側において上記流路を開閉する第1電磁弁であってもよい。そして、上記第2開閉部は、上記閉空間の上記下流側において上記流路を開閉する第2電磁弁であってもよい。
【0014】
この水質計測装置は、電磁弁によって上記閉空間の上流側の第1位置及び下流側の第2位置を所望のタイミングで確実に開放又は閉塞することができ、上記湿潤状態で両側が閉塞された後の保管中には、上記閉空間が閉塞前と同様の状態で維持されやすくなる。
【0015】
本発明の一つの解決手段である水質計測装置において、上記制御部は、上記保管条件が成立した場合に、上記閉空間から液を排出する動作及び上記閉空間内に空気を流入させる動作を上記駆動部に行わせてもよい。
【0016】
この水質計測装置は、上記湿潤状態で両側が閉塞された後の保管中には、応答膜部の表面が閉空間内において空気中に晒された状態で維持されやすくなる。よって、この水質計測装置は、応答膜部が液に浸され続けて保管されることに起因する不具合を確実に抑制することができる。また、この水質計測装置は、応答膜部の表面が液中に浸されない湿潤状態を、閉空間からの液の排出と閉空間への空気の導入によって簡易に生じさせることができる。
【0017】
本発明の一つの解決手段である水質計測装置は、上記閉空間を流れる液の流量を検出可能な流量センサを備えていてもよい。そして、上記湿潤状態は、上記閉空間から液を排出する動作及び上記閉空間内に空気を流入させる動作を上記駆動部が行っているときに上記流量センサが検出する上記閉空間の流量が所定値未満となった状態であってもよい。
【0018】
この水質計測装置は、応答膜部の表面が液中に浸されない状態となったか否かを「閉空間の流量」に基づいて定量的に判定することができる。
【0019】
本発明の一つの解決手段である水質計測装置において、上記供給部は、上記閉空間に洗浄水を流す洗浄動作を行う洗浄部を有していてもよい。そして、上記制御部は、上記保管条件が成立した場合に洗浄部に洗浄動作を行わせ、洗浄動作の後に上記湿潤状態とする動作を上記駆動部に行わせてもよい。
【0020】
この水質計測装置は、上記保管条件が成立した場合に、上記閉空間を洗浄水によって洗浄する動作を行い、このような洗浄動作の後の上記湿潤状態で上記閉空間の両側を閉塞することができる。よって、この水質計測装置は、上記閉空間の両側が閉塞された後の保管中に、上記閉空間内をより清浄な状態で保ちつつ、応答膜部の表面が流路内に配置されるイオンセンサとガラス電極を用いたセンサとを良好に保管することができる。
【0021】
本発明の一つの解決手段である水質計測装置の保管方法は、計測対象液を流す流路と、応答膜部を有し、上記応答膜部の表面が上記流路内に配置されるイオンセンサと、を備え、上記計測対象液の水質を計測する水質計測装置の保管方法である。そして、上記水質計測装置は、ガラス電極を有するとともに上記ガラス電極の表面が上記流路内に配置されるガラス電極型センサと、上記流路内における流体の流れを制御する駆動部と、上記イオンセンサ及び上記ガラス電極型センサよりも上記計測対象液が流される方向における上流側の第1位置において、上記流路を開放する第1開状態と上記流路を閉塞する第1閉状態とに切り替わる第1開閉部と、上記イオンセンサ及び上記ガラス電極型センサよりも上記計測対象液が流される方向における下流側の第2位置において上記流路を開放する第2開状態と上記流路を閉塞する第2閉状態とに切り替わる第2開閉部と、上記流路に液を供給する供給部と、を有する。上記保管方法は、保管条件が成立した場合に、上記第1開閉部を上記第1閉状態とし上記第2開閉部を上記第2閉状態とすることで、上記応答膜部の表面および上記ガラス電極の表面が同一の閉空間に存在する状態を形成し、上記応答膜部の表面が液中に浸されずかつ上記閉空間が湿潤状態とする。
【0022】
上記の保管方法は、保管条件が成立した場合に、応答膜部の表面およびガラス電極の表面が同一の閉空間に存在する状態を形成し、この閉空間内を応答膜部の表面が液中に浸されない状態かつ湿潤状態とすることができる。この保管方法は、応答膜部の表面が液中に浸されない状態を維持しながら保管することができるため、応答膜部が液に浸され続けて保管されることに起因する不具合を抑制することができる。また、この保管方法は、上記閉空間内に液が存在する状態を維持しながら保管することができるため、保管中に上記閉空間内の湿度の低下を抑えることができ、保管中にガラス電極の表面が乾燥することを防ぐことができる。
【0023】
本発明の一つの解決手段である水質計測装置の保管方法では、上記水質計測装置が、上記駆動部、上記第1開閉部、上記第2開閉部および上記供給部の動作を制御する制御部を有していてもよい。そして、上記制御部は、上記保管条件が成立した場合に、上記湿潤状態とする動作を上記駆動部に行わせてもよい。
【0024】
この保管方法では、上記保管条件が成立した場合に、水質計測装置が自身の制御によって上記湿潤状態とする動作を自動的に行うことができる。
【0025】
本発明の一つの解決手段である水質計測装置の保管方法では、上記第1開閉部は、上記閉空間の上記上流側において上記流路を開閉する第1電磁弁であってもよい。そして、上記第2開閉部は、上記閉空間の上記下流側において上記流路を開閉する第2電磁弁であってもよい。
【0026】
この保管方法は、電磁弁によって上記閉空間の上流側の第1位置及び下流側の第2位置を所望のタイミングで確実に開放又は閉塞することができ、上記湿潤状態で両側が閉塞された後の保管中には、上記閉空間が閉塞前と同様の状態で維持されやすくなる。
【0027】
本発明の一つの解決手段である水質計測装置の保管方法では、上記制御部は、上記保管条件が成立した場合に、上記閉空間から液を排出する動作及び上記閉空間内に空気を流入させる動作を上記駆動部に行わせてもよい。
【0028】
この保管方法では、上記湿潤状態で両側が閉塞された後の保管中には、応答膜部の表面が上記閉空間内において空気中に晒された状態で維持される。よって、この保管方法は、応答膜部が液に浸され続けて保管されることに起因する不具合を確実に抑制することができる。また、この保管方法は、応答膜部の表面が液中に浸されない湿潤状態を、上記閉空間からの液の排出と上記閉空間への空気の導入によって簡易に生じさせることができる。
【0029】
本発明の一つの解決手段である水質計測装置の保管方法では、上記水質計測装置は、上記閉空間を流れる液の流量を検出可能な流量センサを備えていてもよい。そして、上記湿潤状態は、上記閉空間から液を排出する動作及び上記閉空間内に空気を流入させる動作を上記駆動部が行っているときに上記流量センサが検出する上記閉空間の流量が所定値未満となった状態であってもよい。
【0030】
この保管方法は、応答膜部の表面が液中に浸されない状態となったか否かを「閉空間の流量」に基づいて定量的に判定することができる。
【0031】
本発明の一つの解決手段である水質計測装置の保管方法では、上記供給部は、上記閉空間に洗浄水を流す洗浄動作を行う洗浄部を有していてもよい。そして、上記制御部は、上記保管条件が成立した場合に上記洗浄部に上記洗浄動作を行わせ、上記洗浄動作の後に上記湿潤状態とする動作を上記駆動部に行わせてもよい。
【0032】
この保管方法は、上記保管条件が成立した場合に、上記閉空間を洗浄水によって洗浄する動作を行い、このような洗浄動作の後の上記湿潤状態で上記閉空間の両側を閉塞することができる。よって、この保管方法は、上記閉空間の両側が閉塞された後の保管中に、上記閉空間内をより清浄な状態で保ちつつ、応答膜部の表面が流路内に配置されるイオンセンサとガラス電極を用いたセンサとを良好に保管することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、応答膜部の表面が流路内に配置されるイオンセンサと、ガラス電極を用いたセンサとを、同一装置に併存させつつ良好に保管し得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、第1実施形態の水質計測装置を概念的に例示するブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の水質計測装置における第1センサ部の具体例を説明する説明図である。
【
図3】
図3は、
図2の第1センサ部におけるpHセンサの具体例を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、
図2の第1センサ部における液膜型イオンセンサの具体例を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、
図1の水質計測装置における第2センサ部の具体例を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、
図1の水質計測装置で行われる計測制御の流れを例示するフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図1の水質計測装置で行われる洗浄制御の流れを例示するフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図1の水質計測装置で行われるキャンセル制御の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<第1実施形態>
1.水質計測装置の構成
図1には、第1実施形態に係る水質計測装置100が例示される。
図1の水質計測装置100は、計測対象液の水質を計測する装置である。生物を飼育するための飼育水(例えば、養殖分野の飼育水など)を対象液として、この対象液の水質を計測するために用いられる装置であってもよく、飼育水とは異なる種類の対象液の水質を計測するための装置であってもよい。水質計測装置100は、養殖施設、アクアリウム、水耕栽培施設などでの水質管理に用いられるものであってもよく、その他の施設での水質管理に用いられるものであってもよく、施設以外での水質管理に用いられるものであってもよい。
図1で例示される計測対象液190は、例えば、塩分を含む水(例えば、海水、汽水、人工海水など)であってもよく、塩分を含まない水又は塩分濃度が低い水であってもよい。
【0036】
水質計測装置100は、計測対象液に含まれる対象イオンの濃度を計測する装置である。
図1の例では、計測対象液190が自動的に又は人為的に収容部178に収容され得る。水質計測装置100は、収容部178に収容された計測対象液190を第1センサ部110A及び第2センサ部110Bに供給して計測対象液190に含有されるイオンの濃度を計測する。
【0037】
水質計測装置100は、主に、センサ部110、駆動部115、制御部120、流路130、収容部170、などを備える。
【0038】
収容部170は、複数の収容部172,174B,174C,174D,174E、176A,176B,178、を備える。収容部178は、計測対象液190を収容するサンプリング容器として構成されている。なお、
図1の例では、1つのサンプリング容器(収容部178)を例示しているが、複数の収容部が設けられ、各収容部から流路130へと計測対象液が供給され得る構成となっていてもよい。収容部172は、洗浄などに用いる水(純水)が収容される容器である。収容部174B,174C,174D,174Eは、ゼロ校正やスパン校正を行うための校正液が収容される容器である。収容部176Aは、酸(例えば硫酸)を収容する容器である。収容部176Bは、塩基(例えば水酸化ナトリウム水溶液)を収容する容器である。
【0039】
流路130は、収容部178からセンサ部110へと計測対象液190を流し、その計測対象液190をセンサ部110から排出するように構成された流路である。流路130のうち、電磁弁140と電磁弁166との間に配置された流路が第1流路132である。流路130のうち、電磁弁166と電磁弁146との間に配置された流路が第2流路134である。流路130のうち、電磁弁140と収容部178との間に配置された流路が第3流路136である。流路130のうち、電磁弁146よりも下流側に配置された流路が第4流路138である。
【0040】
制御部120は、情報処理装置として構成され、各種制御を行う機能を有し、各種信号を取得する機能や各種情報処理を行う機能をも有する。制御部120は、駆動部115の動作を制御する。
【0041】
駆動部115は、流路130内を駆動する装置であり、流路130内における流体の流れを制御する装置である。駆動部115は、流路130内において液を流動させたり、停止させたりする駆動動作を行い得る。駆動部115は、制御部120によって制御される装置である。駆動部115は、電磁弁140,142A,142B,142C,142D,142E,146,166を備える。駆動部115は、三方弁162,168も備える。駆動部115は、ポンプ150,154も備える。本構成では、駆動部115が供給部の一例に相当してもよく、駆動部115から電磁弁140及び電磁弁146を除いた部分が供給部の一例に相当してもよい。供給部は、流路130に液を流す動作を行う装置であり、例えば、電磁弁140が流路130を開放する開状態であり且つ電磁弁146が流路130を開放する開状態である場合に後述の閉空間135内に計測対象液190を流す動作を行い得る。
【0042】
電磁弁140は、制御部120による制御に応じて開閉する電磁弁であり、流路130の所定位置での流動を許容する状態と許容しない状態とに切り替わる弁である。電磁弁140は、第1開閉部の一例に相当し、第1電磁弁の一例に相当する。電磁弁140は、後述する閉空間135(
図2)よりも上流側の第1位置において流路130を開閉し、第1位置において流路130を開放する開状態(第1開状態)と、第1位置において流路130を閉塞する閉状態(第2閉状態)とに切り替わる。電磁弁142A,142B,142C,142D,142Eは、収容部172,174B,174C,174D,174Eの各々と三方弁162との間の流動を許容する状態と許容しない状態とに切り替わる弁である。なお、本明細書において、流路130における上流側とは、計測対象液190が流される方向における上流側を意味し、流路130における下流側とは、計測対象液190が流される方向における下流側を意味する。
【0043】
電磁弁146は、制御部120による制御に応じて開閉する電磁弁であり、流路130の所定位置での流動を許容する状態と許容しない状態とに切り替わる弁である。電磁弁146は、第2開閉部の一例に相当し、第2電磁弁の一例に相当する。電磁弁146は、後述する閉空間135(
図2)よりも下流側の第2位置において流路130を開閉し、第2位置において流路130を開放する開状態(第2開状態)と、第2位置において流路130を閉塞する閉状態(第2閉状態)とに切り替わる。第2位置は、流路130において電磁弁146が設けられた位置である。電磁弁146は、開状態(第2開状態)のときに流路130を開放して電磁弁146の上流側から下流側への液の流動を許容し、閉状態(第2閉状態)のときに流路130を閉塞して電磁弁146の上流側から下流側への液の流動を遮断する。
【0044】
三方弁162は、制御部120によって制御される弁であり、三方弁162よりも流路130の下流側に液を送る際の供給元を、収容部178側と、収容部172,174B,174C,174D,174E側とに切り替え得る弁である。三方弁162が第1切替状態のときには、収容部178側からセンサ部110側への液の供給が許容され、収容部172,174B,174C,174D,174E側からセンサ部110側への液の供給が遮断される。三方弁162が第2切替状態のときには、収容部172,174B,174C,174D,174E側からセンサ部110側への液の供給が許容され、収容部178側からセンサ部110側への液の供給が遮断される。
【0045】
電磁弁166は、制御部120によって制御される弁であり、供給路182と流路130との間の液の流動を許容する開状態と、許容しない閉状態とに切り替わる弁である。電磁弁166が閉状態のときには、供給路182と流路130との間での液の流動は遮断され、供給路182側から流路130への酸や塩基の供給は遮断される。電磁弁166が開状態のときには、供給路182側から流路130側への液の供給は許容される。合流部130Cは、流路130に対して電磁弁166側からの供給路が接続される部分であり、流路130を流れる液に対して電磁弁166側からの液が合流し得る部分である。
【0046】
三方弁168は、制御部120によって制御される弁であり、供給路180側に液を送る際の供給元を、収容部176A側と収容部176B側とに切り替える弁である。三方弁168が第1切替状態のときには、収容部176Aと供給路180との間での液の流動を許容し、収容部176Bと供給路180との間での液の流動を遮断し、収容部176Aに収容された酸を供給路180側に供給可能とする。三方弁168が第2切替状態のときには、収容部176Bと供給路180との間での液の流動を許容し、収容部176Aと供給路180との間での液の流動を遮断し、収容部176Bに収容された塩基を供給路180側に供給可能とする。
【0047】
供給路180は、三方弁168から供給される液を流す経路であり、一端が三方弁168に接続されている。供給路180の他端は、ポンプ154に接続されている。供給路182は、供給路180を介してポンプ154側に供給された液を電磁弁166側に供給する経路である。
【0048】
ポンプ150は、公知のポンプとして構成され、流路130に設けられている。ポンプ150は、自身の動作中に流路130内の液を下流側に送り出す機能を有し、具体的には、自身の動作中に三方弁162側の液をセンサ部110側に送り出す機能を有する。ポンプ154は、公知のポンプとして構成され、供給路180と供給路182との間に設けられている。ポンプ154は、自身の動作中に供給路180内の液を供給路182側(電磁弁166側)に送り出す機能を有する。
【0049】
流量センサ152は、流路130を流れる液の流量を計測するセンサである。流量センサ152は、後述する閉空間135内の流量(具体的には、第1流路132の流量)を検出する。流量センサ156は、供給路182を流れる液の流量を計測するセンサである。
【0050】
なお、図示はされていないが、流路130には、流路130を流れる液体に対して濾過処理を施す濾過部が設けられていてもよく、この濾過部が流路130を流れる液体から異物を除去するように構成されていてもよい。
【0051】
図2には、第1センサ部110Aの内部構成が模式的に示される。
第1センサ部110Aは、予め計測対象のイオン(対象イオン)が定められており、流路130を介して第1センサ部110Aに流れ込んだ液に含まれる複数種類の対象イオンの濃度を計測する。収容部178からセンサ部110に計測対象液190が供給される場合には、「センサ部110に流れ込んだ液」は、計測対象液190である。
図1の例では、第1センサ部110Aでの計測対象となる対象イオンは、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンである。収容部174B,174C,174D,174Eからセンサ部110に校正液が供給される場合には、「センサ部110に流れ込んだ液」は、校正液である。
【0052】
図2のように、第1センサ部110Aは、pHセンサ30、カルシウムイオンセンサ22、マグネシウムイオンセンサ24、参照電極111、を備える。
【0053】
pHセンサ30は、ガラス電極型センサの一例に相当する。pHセンサ30は、公知のpHセンサと同様の原理で動作するセンサとして構成されている。pHセンサ30は、流路130において、カルシウムイオンセンサ22の上流側に設けられている。さらに詳細
には、pHセンサ30は、第1流路132において、カルシウムイオンセンサ22の上流側に設けられている。pHセンサ30は、電極部30A及び電位差計30Bを備える。電極部30Aは、ガラス電極として構成されている。pHセンサ30は、例えば
図3のような構成をなしている。電極部30Aは、第1流路132内の空間(閉空間135の一部)に露出している。閉空間135に液が充満している状態では、電極部30Aの表面(ガラス電極の表面)が閉空間135内の液に浸される。閉空間135は、電磁弁140,146,166が閉状態とされ且つ三方弁162が第1切替状態とされたときに密閉される空間である。なお、閉空間135は、電磁弁140,146が開状態となった場合には密閉が解除され、液の流動が許容される空間となる。閉空間135は、pHセンサ30の電極部30Aの一部と、カルシウムイオンセンサ22の応答膜部の一部と、マグネシウムイオンセンサ24の応答膜部の一部とがいずれも配置される共通の空間である。閉空間135は、第1流路132内の空間と第2流路134内の空間とを含む。
【0054】
pHセンサ30は、流路130内に計測対象液190が充満しているとき(即ち、閉空間135に液が充満しているとき)に、電極部30Aの表面(ガラス電極の表面)が計測対象液190中に浸されて計測対象液190に接触する。このとき、pHセンサ30は、電極部30A近傍の計測対象液190のpHに対応した電位を電極部30Aに発生させる。電位差計30Bは、電極部30Aの電位と参照電極111の電位との差を計測し、その電位差を示す信号(計測対象液190のpHに応じた電圧信号)を制御部120に出力する。
【0055】
図2で示される参照電極111は、公知の参照電極(比較電極)として構成され、pHセンサ30、カルシウムイオンセンサ22、マグネシウムイオンセンサ24、pHセンサ32の電極電位の基準となる基準電位を発生させる。
【0056】
図2で示されるカルシウムイオンセンサ22は、応答膜部の表面が流路内に配置されるイオンセンサの一例に相当し、具体的には液膜型イオンセンサの一例に相当する。
図2のように、カルシウムイオンセンサ22は、流路130においてpHセンサ30の下流側に設けられている。カルシウムイオンセンサ22は、電極部22A及び電位差計22Bを備える。カルシウムイオンセンサ22は、例えば
図4のように構成されている。電極部22Aは、応答膜部(液膜)122Dと、内部液122Cと、内部液122Cを収容する収容部122Bと、内部電極122Aと、を備える。電極部22Aは、応答膜部122Dの表面が流路内に配置される。応答膜部122Dは、イオノフォアが担持された液膜型のイオン感応膜である。
【0057】
カルシウムイオンセンサ22は、例えば公知の液膜型のカルシウムイオンセンサと同様の原理で動作する。流路130内に計測対象液190が充満しているとき(即ち、閉空間135に計測対象液190が充満しているとき)に、応答膜部122Dの表面が計測対象液190中に浸されて計測対象液190に接触する。このとき、カルシウムイオンセンサ22は、応答膜部122D近傍の計測対象液190のカルシウムイオン濃度に対応した電位を内部電極122Aに発生させる。電位差計22Bは、内部電極122Aの電極電位と参照電極111の電極電位との電位差を計測し、その電位差を示す信号(カルシウムイオンの濃度に応じた電位差を示す電圧信号)を制御部120に出力する。
【0058】
図2で示されるマグネシウムイオンセンサ24は、応答膜部の表面が流路内に配置されるイオンセンサの一例に相当し、具体的には液膜型イオンセンサの一例に相当する。マグネシウムイオンセンサ24は、流路130において、カルシウムイオンセンサ22の下流側に設けられている。マグネシウムイオンセンサ24は、電極部24A及び電位差計24Bを備える。電極部24Aは、
図4で示される電極部22Aと同様の構成をなす。電極部24Aも、電極部22Aと同様の応答膜部を有し、応答膜部の表面が流路内に配置される。マグネシウムイオンセンサ24も、例えば公知の液膜型のマグネシウムイオンセンサと同様の原理で動作する。流路130内に計測対象液190が充満しているとき(即ち、閉空間135に計測対象液190が充満しているとき)に、マグネシウムイオンセンサ24は、応答膜部近傍の計測対象液190のマグネシウムイオン濃度に対応した電位を内部電極に発生させる。電位差計22Bは、この内部電極の電極電位と参照電極111の電極電位との電位差を計測し、その電位差を示す信号(マグネシウムイオンの濃度に応じた電位差を示す電圧信号)を制御部120に出力する。
【0059】
上述のように、水質計測装置100では、流路130内の閉空間135(共通空間)内にカルシウムイオンセンサ22及びマグネシウムイオンセンサ24の両応答膜部の表面とpHセンサ30のガラス電極の表面とが共に設けられる。そして、水質計測装置100は、電磁弁140(第1開閉部)が閉状態(第1閉状態)のときに閉空間135と閉空間135よりも上流側の空間(具体的には、第3流路136内の空間)とが遮断される。更に、水質計測装置100は、電磁弁146(第2開閉部)が閉状態(第2閉状態)のときに閉空間135と閉空間135よりも下流側の空間(具体的には、第4流路138内の空間)とが遮断される構成をなす。
【0060】
図5で示されるように、第2センサ部110Bは、pHセンサ32と、アンモニアセンサ26と、亜硝酸センサ28とを備える。
【0061】
pHセンサ32は、pHセンサ30(
図3)と同様の構成をなし、同様に機能する。pHセンサ32は、第2流路134内に計測対象液190が充満しているときに、計測対象液190のpHに対応した電位を電極部32Aに発生させる。電位差計32Bは、電極部32Aの電位と参照電極111(
図2)の電位との差を計測し、その電位差を示す信号(計測対象液190のpHに応じた電圧信号)を制御部120に出力する。
【0062】
亜硝酸センサ28は、亜硝酸イオン又は亜硝酸ガスを計測対象とし、後述する酸添加動作によって酸を添加された後の計測対象液190に含まれる計測対象の濃度を計測する。亜硝酸センサ28は、流路130において電磁弁166(
図1)の下流側(具体的には合流部130Cの下流側)に設けられている。
図1で示される三方弁168及び供給路182は、計測対象液190に対して酸(例えば硫酸)を添加する経路である。この経路によって酸が加えられることで、計測対象液190に含まれる亜硝酸イオンを亜硝酸としてガス化させることができる。具体的には、三方弁168において収容部176Aから酸が供給可能となるように切り替えがなされ、電磁弁166において供給路182から流路130へと供給可能となるように開状態に切り替えがなされ、ポンプ154が流動動作を行うことにより流路130(具体的には、第2流路134)に酸が供給される。酸の供給は、例えば供給後の計測対象液190(電磁弁166の下流側(具体的には合流部130Cの下流側)の計測対象液190)のpHが1.5以下になるよう調整される。
【0063】
亜硝酸センサ28は、公知の隔膜式イオンセンサとして構成され、電極部28A及び電位差計28Bを備える。電極部28Aは、公知の隔膜式イオン電極として構成され、電極部内部の内部液(電解液)と内部電極(例えばガラス電極)とを有する。電極部28Aは、例えば、隔膜を通過させて内部液に亜硝酸ガスを溶け込ませ、この亜硝酸ガスによって変化する内部液のpHに応じた起電力を内部電極と参照電極との間に発生させる構成をなす。このようにして、電極部28Aは、亜硝酸ガスを選択的に検知することができる。電極部28Aは、合流部130Cの下流側において流路130(具体的には第2流路134)を流動する液に浸される。電極部28Aは、酸が添加された計測対象液190中に含まれる亜硝酸ガス(合流部130Cを通過する前から計測対象液190に含有されていた亜硝酸ガスと、合流部130Cを通過した後に亜硝酸イオンからガス化した亜硝酸ガスと、を合わせた亜硝酸ガス)の濃度に対応した電極電位を発生させる。電位差計28Bは、電極部28Aの内部電極の電極電位と参照電極(基準電極)の電極電位との差を計測し、その電位差を示す信号(亜硝酸ガスの濃度に応じた電位差を示す信号)を制御部120に出力する。亜硝酸センサ28の参照電極(基準電極)28Cは、内部液中に配置される。
【0064】
アンモニアセンサ26は、アンモニウムイオン又はアンモニアを計測対象とし、後述する塩基添加動作によって塩基が添加された後の計測対象液190に含まれる計測対象の濃度を計測する。アンモニアセンサ26は、流路130において電磁弁166(
図1)の下流側(具体的には合流部130Cの下流側)に設けられている。
図1で示される電磁弁166及び供給路182は、計測対象液190に対して塩基を添加する経路でもある。この経路によって塩基が加えられることで、計測対象液190に含まれるアンモニウムイオンをアンモニアとしてガス化させることができる。具体的には、三方弁168において収容部176Bから供給路180へと塩基が供給可能となるように切り替えがなされ、電磁弁166において供給路182から流路130に液が供給可能となるように開状態に切り替えがなされ、ポンプ154が流動動作を行うことにより流路130(具体的には、第2流路134)に塩基が供給される。塩基の供給は、例えば供給後の計測対象液190(電磁弁166の下流側(具体的には合流部130Cの下流側)の計測対象液190)のpHが11.5以上になるよう調整される。
【0065】
アンモニアセンサ26は、公知の隔膜式イオンセンサとして構成され、電極部26A及び電位差計26Bを備える。電極部26Aは、公知の隔膜式イオン電極として構成され、電極部内部の内部液(電解液)と内部電極(例えばガラス電極)とを有する。電極部26Aは、例えば、隔膜を通過させて内部液にアンモニアガスを溶け込ませ、このアンモニアガスによって変化する内部液のpHに応じた起電力を内部電極と参照電極との間に発生させる構成をなす。このようにして、電極部26Aは、アンモニアガスを選択的に検知することができる。電極部26Aは、合流部130Cの下流側において流路130(具体的には第2流路134)を流動する液に浸される。電極部26Aは、塩基が添加された計測対象液190中に含まれるアンモニアガス(すなわち、合流部130Cを通過する前から元々計測対象液190に含有されていたアンモニアガスと、合流部130Cを通過することでアンモニウムイオンからガス化したアンモニアガスと、を合わせたアンモニアガス)の濃度に対応した電極電位を発生させる。電位差計26Bは、電極部26Aの内部電極の電極電位と参照電極(基準電極)の電極電位との差を計測し、その電位差を示す信号(アンモニアガスの濃度に応じた電位差を示す信号)を制御部120に出力する。アンモニアセンサ26の参照電極(基準電極)26Cは、内部液中に配置される。
【0066】
2.計測制御
次の説明は、水質計測装置100で行われる計測制御に関する。水質計測装置100の保管方法は、水質計測装置100が行う後述の計測制御、洗浄制御、キャンセル制御などによって実現される。
図1で示される水質計測装置100において制御部120は、計測開始条件の成立に応じて
図6に示される計測制御を開始する。計測開始条件は、例えば図示されない操作装置によって所定の計測開始操作がなされたことであってもよく、その他の計測開始条件(例えば、予め設定された計測予約時間が到来したこと等)であってもよい。
【0067】
図1で示される制御部120は、
図6のように、上記計測開始条件の成立に応じて第1計測動作を行う(ステップS11)。第1計測動作は、
図1で示される計測対象液190を第1流路132に流しつつ第1センサ部110AによってpH、カルシウムイオン、マグネシウムイオンを計測し、塩基が添加された計測対象液190を第2流路134に流しつつ第2センサ部110BによってpH、アンモニアガスを計測する動作である。制御部120は、ステップS11(
図6)では、電磁弁140を開状態とし、三方弁162を第1切替状態とし、ポンプ150を動作させる。これらの動作により、収容部178に収容された計測対象液190が、収容部178から第1流路132に供給される。なお、第1計測動作中は、収容部172,174B,174C,174D,174E側から流路130への液の供給は遮断され、供給路181から第1流路132への液の供給は遮断される。
【0068】
この第1計測動作が行われているときに、pHセンサ30は、第1流路132を流れる計測対象液190のpHを計測する。カルシウムイオンセンサ22は、第1流路132を流れる計測対象液190のカルシウムイオン濃度を計測する。マグネシウムイオンセンサ24は、第1流路132を流れる計測対象液190のマグネシウムイオン濃度を計測する。
【0069】
制御部120は、第1計測動作の際に、電磁弁166を開状態とし、供給路182と流路130との間での液の流動を許容し、第1センサ部110A側から第2センサ部110B側への液の供給も許容する。更に、制御部120は、三方弁168を第2切替状態として収容部176Bと供給路180との間での液の流動を許容し、ポンプ154を動作させる。このような動作により、収容部176Bに収容された塩基が第2流路134に供給される。
【0070】
この第1計測動作が行われているときには、pHセンサ32は、第2流路134を流れる計測対象液190のpHを計測する。アンモニアセンサ26は、第2流路134を流れる計測対象液190に含有されるアンモニアガスを計測する。
【0071】
制御部120は、
図6のステップS11の後、ステップS12にて第2計測動作を行う。第2計測動作は、
図1で示される計測対象液190に対して酸を添加し、添加後の計測対象液190を第2流路134に流しつつ第2センサ部110BによってpH、亜硝酸ガスを計測する動作である。制御部120は、ステップS12(
図6)では、電磁弁140を開状態(第1開状態)とし、三方弁162を第1切替状態とし、ポンプ150を動作させる。この動作により、収容部178に収容された計測対象液190が、収容部178から第1流路132に供給される。このとき、収容部172,174B,174C,174D,174E側から流路130への液の供給は遮断され、供給路181から第1流路132への液の供給は遮断される。更に、制御部120は、電磁弁166を開状態にして供給路182と流路130との間での液の流動を許容し、第1センサ部110A側から第2センサ部110B側への液の供給も許容する。更に、制御部120は、三方弁168を第1切替状態として収容部176Aと供給路180との間での液の流動を許容し、ポンプ154を動作させる。このような動作により、収容部176Aに収容された酸が第2流路134に供給される。
【0072】
このような第2計測動作が行われているときに、pHセンサ32は、第2流路134を流れる計測対象液190のpHを計測する。亜硝酸センサ28は、第2流路134を流れる計測対象液190に含有される亜硝酸ガスを計測する。
【0073】
制御部120は、
図6のステップS12の後、ステップS13にて洗浄動作を行う。洗浄動作は、収容部172から流路130への水(純水)の流動を許容して洗浄する動作である。制御部120は、洗浄動作の際に、計測対象液190や校正液の供給を遮断するとともに収容部172内の水(洗浄水である純水)を第1流路132に流し、第1流路132と第2流路134との間での液の流動を許容するようにポンプ150、電磁弁140,146,166、三方弁162、電磁弁142A~142Eを制御する。このとき、制御部120は、電磁弁140を遮断状態とし、電磁弁146を開放状態とし、電磁弁142Aを開放状態とし、電磁弁142B~142Eを遮断状態とする。更に、制御部120は、三方弁162を第2切替状態とし、電磁弁166を、閉状態にする。制御部120は、このような状態で、ポンプ150を駆動し、収容部172内の水(洗浄水である純水)を第1流路132側に送り込む。このような洗浄動作により、第1流路132及び第2流路134は、水によって洗い流される。
【0074】
この例では、電磁弁140、電磁弁142A、三方弁162、ポンプ150が洗浄部の一例に相当し、閉空間135に洗浄水を流す洗浄動作を行いうる。また、この例では、ステップS13を開始する条件が成立した場合(具体的には、ステップS12の第2計測動作が終了した場合)が、「保管条件が成立した場合」の一例に相当し、制御部120は、保管条件が成立した場合に洗浄部に前記洗浄動作を行わせる。
【0075】
制御部120は、
図6のステップS13の後、ステップS14にて大気開放動作を駆動部115に行わせる。大気開放動作は、閉空間135から液を排出し、閉空間135内に空気を流入させる動作であり、具体的には、第1流路132及び第2流路134から液を排出し、第1流路132及び第2流路134に空気を流入させる動作である。制御部120は、ステップS14にて大気開放動作を行う場合、電磁弁140を閉状態として計測対象液190の供給を停止し、三方弁162を第1切替状態として収容部172,174B~174E側からの液の供給も停止する。更に、制御部120は、電磁弁166を閉状態とし、電磁弁146を開状態(第2開状態)とし、ポンプ150を動作させる。この動作により、流路130において電磁弁140と電磁弁146との間に残存していた液が第4流路138から排出される。このとき、図示しない通気口(例えば、電磁弁140と三方弁162との間に設けられた通気口)から流路130内に空気(大気)が流入されるようにする。この通気口は、通常時に外部への液の流出が遮断され、大気開放動作時に空気(大気)の流入が可能であればよく、例えば電磁弁によって開閉されてもよく、逆止弁が設けられていてもよい。
【0076】
制御部120は、このような大気開放動作を、予め定められた開放動作停止条件の成立まで行う。開放動作停止条件は、流量センサ152が検出する流量が閾値未満となったことであってもよく、流量センサ152が検出する流量が閾値未満で一定時間維持されたことであってもよく、流量センサ152が検出する流量が閾値未満となってから所定時間が経過したことであってもよい。或いは、ステップS14の大気開放動作の開始から一定の経過時間が経過したことであってもよい。いずれの例でも、開放動作停止条件の成立時に、「応答膜部の表面が液中に浸されず且つ閉空間135内に液が存在する状態(湿潤状態)」であればよい。つまり、いずれの場合でも、開放動作停止条件の成立時に確実に上記湿潤状態となるように装置の特性を考慮して上記閾値、上記一定時間、上記所定時間、上記一定の経過時間などが設定されればよい。ここでいう「閉空間135内に液が存在する状態」、即ち、閉空間135の形成開始時点の湿潤状態は、閉空間135内の湿度低下の抑制に影響を及ぼさない量の液が存在する状態(例えば、1~2滴の液のみが閉空間135内に存在する状態など)を意味するものではない。この「閉空間135内に液が存在する状態」は、閉空間135内の湿度低下の抑制に寄与する量の液が存在する状態を意味する。例えば、閉空間135内の湿度低下の抑制に寄与する量であれば、閉空間135内に十数滴又は数十滴の液が存在する状態であってもよく、それ以上の滴数の液が存在する状態であってもよい。また、閉空間135内の湿度低下の抑制に寄与する量であれば、閉空間135内の一部又は全長にわたって液が一定長さ以上に連続する状態であってもよく、閉空間135内の全長にわたって液が連続せず、水滴が散在した状態であってもよい。
【0077】
このように、制御部120は、上述の「保管条件が成立した場合」において、上記洗浄動作(ステップS13)の後に、大気開放動作(閉空間135から液を排出する動作及び閉空間135内に空気を流入させる動作)を駆動部115に行わせる。そして、この大気開放動作は、閉空間135内を上記湿潤状態とする動作である。
【0078】
制御部120は、
図6のステップS14の後、ステップS15にて終了動作を行う。終了動作は、上記湿潤状態において電磁弁140(第1開閉部)を閉状態(第1閉状態)とし且つ電磁弁146(第2開閉部)を閉状態(第2閉状態)とする動作である。なお、終了動作は、三方弁162を第1切替状態で維持し、電磁弁166を閉状態で維持する動作でもある。このような動作により、閉空間135(共通空間)が密閉空間となり、閉空間135と閉空間135の上流側(電磁弁140の上流側)との間での流体の流動が遮断され、閉空間135と閉空間135の下流側(電磁弁146の下流側)との間での流体の流動が遮断される。よって、このような密閉状態が維持される限り、電磁弁140(第1開閉部)の閉状態(第1閉状態)又は電磁弁146(第2開閉部)の閉状態(第2閉状態)が解除されるまでは、閉空間135内が上記湿潤状態で安定的に維持される。
【0079】
3.洗浄制御
次の説明は、水質計測装置100で行われる洗浄制御に関する。
図1で示される水質計測装置100において制御部120は、洗浄開始条件の成立に応じて
図7に示される洗浄制御を開始する。洗浄開始条件は、例えば図示されない操作装置によって所定の洗浄開始操作がなされたことであってもよく、その他の洗浄開始条件(例えば、予め設定された洗浄予約時間が到来したこと等)であってもよい。
【0080】
制御部120は、
図7の洗浄制御を開始した場合、まずステップS21にて洗浄動作を行う。ステップS21の洗浄動作は、ステップS13(
図6)の洗浄動作と同様であり、閉空間135に洗浄水を供給し得る動作である。この例では、上述の洗浄開始条件が成立した場合が「保管条件が成立した場合」の一例に相当し、制御部120は、保管条件が成立した場合に洗浄部に洗浄動作を行わせる。
【0081】
制御部120は、
図7のステップS21の後、ステップS22にて大気開放動作を駆動部115に行わせる。ステップS22の大気開放動作は、ステップS14(
図6)の大気開放動作と同様の動作であり、閉空間135から液を排出する動作及び閉空間135内に空気を流入させる動作である。制御部120は、このような大気開放動作を、予め定められた開放動作停止条件の成立まで行う。開放動作停止条件は、ステップS14(
図6)の大気開放動作と同様である。
【0082】
制御部120は、
図7のステップS22の後、ステップS23にて終了動作を行う。ステップS23の終了動作は、ステップS15(
図6)の終了動作と同様の動作であり、上述の湿潤状態において電磁弁140(第1開閉部)を閉状態(第1閉状態)とし且つ電磁弁146(第2開閉部)を閉状態(第2閉状態)とする動作である。
【0083】
水質計測装置100は、このような洗浄制御の後にも、閉空間135を上述の湿潤状態で安定的に維持することができる。
【0084】
4.キャンセル制御
次の説明は、水質計測装置100で行われるキャンセル制御に関する。
図1で示される水質計測装置100において制御部120は、キャンセル条件の成立に応じて
図8に示されるキャンセル制御を開始する。キャンセル条件は、例えば図示されない操作装置によって所定のキャンセル操作がなされたことであってもよく、その他のキャンセル条件であってもよい。
図8のキャンセル制御は、例えば
図6の計測制御が実行されている最中に上記キャンセル条件が成立した場合に、
図6の計測制御に代えて実行され得る制御である。
【0085】
制御部120は、
図8のキャンセル制御を開始した場合、まずステップS31にて洗浄動作を行う。ステップS31の洗浄動作は、ステップS13(
図6)やステップS21(
図7)の洗浄動作と同様であり、閉空間135に洗浄水を供給し得る動作である。この例では、上述のキャンセル条件が成立した場合が「保管条件が成立した場合」の一例に相当し、制御部120は、保管条件が成立した場合に洗浄部に洗浄動作を行わせる。
【0086】
制御部120は、
図8のステップS31の後、ステップS32にて大気開放動作を駆動部115に行わせる。ステップS32の大気開放動作は、ステップS14(
図6)、ステップS22(
図7)の大気開放動作と同様の動作であり、閉空間135から液を排出する動作及び閉空間135内に空気を流入させる動作である。制御部120は、このような大気開放動作を、予め定められた開放動作停止条件の成立まで行う。開放動作停止条件は、ステップS14(
図6)の大気開放動作と同様である。
【0087】
制御部120は、
図8のステップS32の後、ステップS33にて終了動作を行う。ステップS33の終了動作は、ステップS15(
図6)、ステップS23(
図7)の終了動作と同様の動作であり、上述の湿潤状態において電磁弁140(第1開閉部)を閉状態(第1閉状態)とし且つ電磁弁146(第2開閉部)を閉状態(第2閉状態)とする動作である。
【0088】
水質計測装置100は、このようなキャンセル制御の後にも、閉空間135を上述の湿潤状態で安定的に維持することができる。
【0089】
5.効果の例
次の説明は、水質計測装置100の効果の例に関する。
水質計測装置100は、保管条件が成立した場合に、閉空間135内を湿潤状態とし、上記湿潤状態で閉空間135の両側を閉塞することができる。上記湿潤状態は、応答膜部の表面が液中に浸されず且つ閉空間135内に液が存在する状態である。よって、両側が閉塞された後の閉空間135は、水分の流出や流入が抑制され、上記湿潤状態が維持される。つまり、水質計測装置100は、上記湿潤状態で両側が閉塞された後の保管中には、応答膜部の表面が液中に浸されない状態を維持することができ、カルシウムイオンセンサ22やマグネシウムイオンセンサ24の応答膜部が液に浸され続けて保管されることに起因する不具合を抑制することができる。また、水質計測装置100は、上記湿潤状態で両側が閉塞された後の保管中には、閉空間135内に液が存在する状態を維持することができるため、湿度の低下を抑えることができ、pHセンサ30のガラス電極の表面の乾燥を防ぐことができる。
【0090】
また、水質計測装置100は、保管条件が成立した場合に自身の制御によって上記湿潤状態とする動作を自動的に行うことができる。
【0091】
水質計測装置100において、電磁弁140(第1開閉部)は、閉空間135の上流側において流路130を開閉する第1電磁弁であり、電磁弁146(第2開閉部)は、閉空間135の下流側において流路130を開閉する第2電磁弁である。この水質計測装置100は、電磁弁によって閉空間135の上流側の第1位置及び下流側の第2位置を所望のタイミングで確実に開放又は閉塞することができ、上記湿潤状態で両側が閉塞された後の保管中には、閉空間135が閉塞前と同様の状態で維持されやすくなる。
【0092】
水質計測装置100において、制御部120は、保管条件が成立した場合に、閉空間135から液を排出する動作及び閉空間135内に空気を流入させる動作を駆動部115に行わせる。この水質計測装置100は、上記湿潤状態で両側が閉塞された後の保管中には、応答膜部の表面が閉空間135内において空気中に晒された状態で維持されやすくなる。よって、この水質計測装置100は、応答膜部が液に浸され続けて保管されることに起因する不具合を確実に抑制することができる。また、この水質計測装置100は、上記湿潤状態(応答膜部の表面が液中に浸されない状態)を、閉空間135からの液の排出と閉空間135への空気の導入によって簡易に生じさせることができる。
【0093】
上記湿潤状態は、閉空間135から液を排出する動作及び閉空間135内に空気を流入させる動作を駆動部115が行っているときに流量センサ152が検出する閉空間135の流量が所定値未満となった状態であってもよい。この水質計測装置100は、応答膜部の表面が液中に浸されない状態となったか否かを「閉空間135の流量」に基づいて定量的に判定することができる。
【0094】
水質計測装置100は、保管条件が成立した場合に、閉空間135を洗浄水によって洗浄する動作を行い、このような洗浄動作の後の上記湿潤状態で閉空間135の両側を閉塞することができる。よって、この水質計測装置100は、閉空間135の両側が閉塞された後の保管中に、閉空間135内をより清浄な状態で保ちつつ、応答膜部の表面が流路内に配置されるイオンセンサとガラス電極を用いたセンサとを良好に保管することができる。
【0095】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0096】
上記実施形態では、水質計測装置100自身が制御部を備える構成であったが、制御部は、水質計測装置が備えていなくてもよい。例えば、上述の制御部120と同様の動作を行い得る制御部が水質計測装置とは別の装置として設けられ、水質計測装置がこの制御部によって制御される構成であってよい。このように水質計測装置とは別の装置として制御部が設けられる場合、この制御部は、水質計測装置の一部又は全部に対して一体的に組み込まれていてもよく、水質計測装置から離れた場所に設けられ、水質計測装置を遠隔制御し得る構成であってもよい。
【0097】
水質計測装置の保管方法は、制御部の制御によって第1開閉部や第2開閉部が切り替えられなくてもよい。例えば、保管条件が成立した場合に、作業者が人為的な作業によって第1開閉部を第1閉状態とし第2開閉部を第2閉状態としてもよい。
【0098】
上記実施形態では、ガラス電極型センサとしてpHセンサが例示されるが、この例に限定されない。ガラス電極型センサは、ガラス電極を計測対象液中に浸して計測を行うセンサであればよく、電気伝導度センサやORPセンサ(酸化還元電位センサ)などであってもよい。
【0099】
上記実施形態では、第2開閉部を電磁弁146によって構成したが、第2開閉部は、流路を開閉し得る構成であればよい。例えば、流路130の端部に液体槽を設け、この液体槽の水位を、流路130の端部を液体によって閉塞する水位と閉塞しない水位とに変化させる構成であってもよい。水位の変化は、液体槽への液体の供給と排出を制御することで行うことができる。或いは、流路130において第2センサ部110Bよりも下流側において液体が溜まって流路を閉塞し得る貯留部分を設けてもよい。この場合、貯留部分に液体が溜まりつつ流動していない状態が第2閉状態であり、貯留部分の液体が強制的に流されるように流動している状態が第2開状態である。
【0100】
上記実施形態では、電磁弁146が第2開閉部の一例であったが、第1流路132と第2流路との間に電磁弁が設けられ、この電磁弁が第1流路132内の空間と第1流路132の下流側の空間とを連通又は遮断するように動作することで、第2開閉部として機能してもよい。
【0101】
上記実施形態では、水質計測装置100の計測対象である計測対象液は、「生産物の生育管理に使用する水」が例示されるが、その具体例は、上述の例に限定されない。例えば、「生産物の生育管理」の具体例としては、「水産業における生育管理」「農業における生育管理」「畜産業における生育管理」「林業における生育管理」などであってもよく、その他の第一次産業における生育管理であってもよい。
【0102】
水質計測装置100の計測対象である計測対象液は、具体的には「水生生物の養殖管理」に用いる水であってもよい。この場合、「水生生物の養殖管理に用いる水」としては、水生生物を飼育する飼育水が例示される。また、「水生生物」としては、エビなどの甲殻類が例示される。ただし、水生生物は、この例に限定されず、エビ以外の十脚目、軟甲綱、甲殻亜門、節足動物門等の生物であってもよい。或いは、水生生物は、鯛などの魚類、ホタテ貝などの貝類、ワカメなどの藻類などであってもよい。
【0103】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
22…カルシウムイオンセンサ(イオンセンサ)
24…マグネシウムイオンセンサ(イオンセンサ)
30…pHセンサ(ガラス電極型センサ)
30A…電極部(ガラス電極)
100…水質計測装置
115…駆動部(供給部)
120…制御部
122D…応答膜部
130…流路
135…閉空間
140…電磁弁(第1開閉部、第1電磁弁、洗浄部)
142A…電磁弁(洗浄部)
150…ポンプ(洗浄部)
152…流量センサ
146…電磁弁(第2開閉部、第2電磁弁)
162…三方弁(洗浄部)
190…計測対象液