(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】架設体、敷設装置、及び、ナット収容構造
(51)【国際特許分類】
F16B 37/04 20060101AFI20231026BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F16B37/04 X
H02G3/04 056
(21)【出願番号】P 2020042974
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2022-09-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 計装技術,Vol.39,No.3,第23頁‐第26頁,一般社団法人日本工業計装会,令和2年1月10日発行
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100203460
【氏名又は名称】加藤 肇
(72)【発明者】
【氏名】北村 祐介
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190802(JP,A)
【文献】特開2019-140877(JP,A)
【文献】特開平11-178149(JP,A)
【文献】特開平11-200584(JP,A)
【文献】特開平08-100812(JP,A)
【文献】特表平08-503056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/04
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷設対象物の敷設方向に延びる一対の支持体の間に架設可能な架設体であって、
前記敷設対象物を支持可能な支持部と、
雌ネジが形成されたナットの前記雌ネジの軸心を軸とする回動を抑制した状態で収容可能な中空部と、を備え、
前記中空部は、
収容した前記ナットの雌ネジを前記支持部とは反対側の外方に臨ませる開口と、
前記ナットの雌ネジに螺入可能なボルトをねじ込む場合に、前記ナットにおける螺入方向の奥側から前記ナットに当接して、その位置を維持可能な奥側当接部と、を有し、
前記奥側当接部は、前記ナットを貫通した前記ボルトの先端の進入を許容する空間を形成した位置で前記ナットに当接する、架設体。
【請求項2】
前記中空部は、前記架設体の延びる方向に向かって延びる、互いに傾斜して対向する3つの面を有し、
前記開口が第1の面に形成されており、当該第1の面が前記ナットの螺入方向手前側に当接し、
他の2面が前記奥側当接部を構成し、且つ、前記ボルト体の先端が当接可能である、請求項1に記載の架設体。
【請求項3】
前記中空部は、その延びる方向の両端の少なくとも一端側が外方へ開放されている、請求項1又は2に記載の架設体。
【請求項4】
延びる方向の中心位置を示す基準部を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の架設体。
【請求項5】
延びる方向の中心から等間隔に設けられた目盛を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の架設体。
【請求項6】
敷設対象物の敷設方向に延びる一対の支持体と、請求項1~5のいずれか1項に記載の架設体とを備え、
前記架設体は、前記支持体の延びる方向に間隔をあけて複数設けられる、敷設装置。
【請求項7】
所定方向に貫通する雌ネジを有するナットを収容空間内に収容するナット収容構造であって、
前記収容空間は互いに傾斜して対向する3つの面を有し、
第1の面に形成された開口により前記ナットの前記雌ネジが外部に臨み、
前記第1の面が、所定方向における前記ナットの一方側の面に当接する一方側当接部を構成し、
他の2面が前記所定方向における前記ナットの他方側の面に当接する他方側当接部を構成し、
前記一方側当接部及び前記他方側当接部により、前記所定方向における前記ナットの移動を抑制可能であり、
前記他の2面と、前記ナットの前記他方側の面との間に、前記ナットを貫通したボルトの先端が進入可能であ
り、
前記ナットは、平行な2辺を有する板状であり、当該2辺が前記第1の面と前記傾斜する2面との接合部位に沿うように配置されている、ナット収容構造。
【請求項8】
前記収容空間は、前記開口が連続して延びており、前記ナットはその延びる方向に移動可能である、請求項7に記載のナット収容構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敷設対象物の敷設方向に延びる一対の支持体の間に架設され、その敷設対象物を支持可能な架設体、その架設体を備える敷設装置、及び、その架設体等に適用可能なナット収容構造に関する。
【背景技術】
【0002】
配管や配線等の敷設対象物を架設体により支持する場合、敷設対象物及び架設体の下方には天井も存在しないため空間が生じており、その空間の有効活用が望まれる。この点を解決する架設構造として、特許文献1に記載の架設構造がある。特許文献1に記載の架設構造は、ケーブルラックの子桁に加えて照明器具等を取り付け可能な取付具を設けることで、敷設対象物の下方空間を有効活用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の架設構造では、子桁に加えて取付具を設ける必要があるため、構成が煩雑化する。さらに、照明器具等は上方天井の近傍に取り付けられるため、作業効率の向上が求められており、特許文献1に記載の架設構造では照明器具等の取付構造についても改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、敷設対象物の敷設方向に延びる一対の支持体の間に架設されるうえで、機能及び構造を改善した架設体、その架設体を備える敷設装置、及び、その架設体等におけるナット収容構造を提供することにある。
【0006】
第1の構成は、敷設対象物の敷設方向に延びる一対の支持体の間に架設可能な架設体であって、敷設対象物を支持可能な支持部と、雌ネジが形成されたナットの雌ネジの軸心を軸とする回動を抑制した状態で収容可能な中空部と、を備え、中空部は、収容したナットの雌ネジを支持部とは反対側の外方に臨ませる開口と、ナットの雌ネジに螺入可能なボルトをねじ込む場合に、ナットにおける螺入方向の奥側からそのナットに当接して、その位置を維持可能な奥側当接部と、を有し、奥側当接部は、ナットを貫通したボルトの先端の進入を許容する間隙を形成した位置でナットに当接する。
【0007】
第1の構成では、架設体に対して、敷設対象物を支持する機能と、ボルト及びナットによる取付対象物の取付機能とを設けることができる。この場合において、ナットの回動を抑制することによりボルトをねじ込む場合においてもナットが回転しないため、ボルトをねじ込む場合における作業効率を向上させることができ、且つ、ボルトの先端の進入を許容する空間があるため、異なる長さのボルトにも対応することができる。
【0008】
第2の構成は、第1の構成に加えて、中空部は、架設体の延びる方向に向かって延びる、互いに傾斜して対向する3つの面を有し、開口が第1の面に形成されており、当該第1の面がナットの螺入方向手前側に当接し、他の2面が奥側当接部を構成し、且つ、ボルトの先端が当接可能である。
【0009】
第2の構成では、3つの面を備えていればナットの回動及び上下方向の移動を抑制可能であり、さらに、ボルトの先端が進入する空間も形成できるため、簡易な構成で第1の構成を実現することができる。
【0010】
第3の構成は、第1又は第2の構成に加えて、中空部は、その延びる方向の両端の少なくとも一端側が外方へ開放されている。
【0011】
第3の構成では、ナットを中空部内に出し入れ可能であるため、ナットに対してボルトによる仮止めをした状態で、中空部へナットを進入させることができる。
【0012】
第4の構成は、第1~第3のいずれかの構成に加えて、延びる方向の中心位置を示す基準部を有する。
【0013】
第4の構成では、ナットの位置を架設体の延びる方向の中心に位置決めすることができる。
【0014】
第5の構成は、第1~第4のいずれかの構成に加えて、延びる方向の中心から等間隔に設けられた目盛を有する。
【0015】
ナットに対してボルトを用いて取付対象物を先に取り付けておき、その後にナットを中空部内に配置する場合、架設体の中心位置を視認できない場合がある。この点、第5の構成では、取付対象物の両側の位置を等間隔の目盛に合わせて取り付けることで、取付対象物の位置を架設体の中心と一致させることができる。
【0016】
第6の構成は、敷設対象物の敷設に用いられる敷設装置であって、敷設対象物の敷設方向に延びる一対の支持体と、第1~第5のいずれかの構成の架設体とを備え、架設体は、支持体の延びる方向に間隔をあけて複数設けられる。
【0017】
第6の構成では、第1~第5のいずれかの構成の効果を有する敷設装置を提供することができる。
【0018】
第7の構成は、所定方向に貫通する雌ネジを有するナットを収容空間内に収容するナット収容構造であって、収容空間は互いに傾斜して対向する3つの面を有し、第1の面に形成された開口によりナットの雌ネジが外部に臨み、第1の面が、所定方向におけるナットの一方側の面に当接する一方側当接部を構成し、他の2面が所定方向におけるナットの他方側の面に当接する他方側当接部を構成し、一方側当接部及び他方側当接部により、所定方向におけるナットの移動を抑制可能であり、他の2面と、ナットの他方側の面との間に、ナットを貫通したボルトの先端が進入可能である。
【0019】
第7の構成では、第1の構成に準ずる効果を得ることができる。
【0020】
第8の構成は、第7の構成に加えて、収容空間は、開口が連続して延びており、ナットはその延びる方向に移動可能である。
【0021】
第8の構成では、取付対象の位置に応じてナットの位置を変更することができる。
【0022】
第9の構成は、第7又は第8の構成に加えて、ナットは、平行な2辺を有する板状であり、当該2辺が一の面と傾斜する2面との接合部位に沿うように配置されている
【0023】
第9の構成では、傾斜する2面とナットとの当接箇所が、平行な2辺となるため、ナットをより安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】架設体を備える架設構造を示す上側からの斜視図である。
【
図2】架設体を備える架設構造を示す底面側からの斜視図である。
【
図10】架設体にナットを取り付けた底面図である。
【
図12】AA線拡大端面図にボルト及び取付対象物を取り受けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本実施形態に係る架設体10を備える架設構造について、
図1及び
図2を参照して説明する。本実施形態に係る架設体10は、敷設対象物である配線又は配管の支持に用いられるものであり、金属又は硬質の樹脂で一体成型されている。この架設体10は、敷設対象物の敷設方向に延びる一対の支持体100の間に架設されるものであり、支持体100は、例えば、断面が略円形のワイヤーである。支持体100は、本実施形態では、地面又は床と並行となるように天井の近傍に取り付けられており、敷設方向に一定の張力が与えられている。この架設体10には、さらに、下方に取付対象物200が取り付けられて使用される。この取付対象物200としては、例えば、
図1及び2に示すような蛍光灯等の照明器具や、室内の表示器具等が挙げられる。なお、以下の説明において、天地方向を上下方向とし、敷設方向を前後方向とし、支持体100の離間方向すなわち架設体10の架設方向を左右方向と定義して説明する。
【0026】
架設体10は、上側から前方側下方へ向けて傾斜し、厚みが略一定の平板状であり、且つ、左右方向の断面形状が略均一である、第1面11を備えている。この第1面11の前後方向からの傾斜角は、約30°である。この第1面11の上端には、前側から後ろ側へ向けて湾曲し、厚みが第1面11と等しく略一定であり、且つ、左右方向の断面形状が略均一の円弧状である、支持部12が設けられている。支持部12の後端側には、上側から後方側下方へ向けて傾斜し、厚みが略一定の平板状であり、且つ、左右方向の断面形状が略均一である、第2面13が設けられている。この第2面13の支持部12との上下方向における連接位置、及び、第2面13の下端の上下方向における位置は、第1面11と略等しく、且つ、第2面13の前後方向からの傾斜角は、第1面11の前後方向からの傾斜角と略等しい。
【0027】
第1面11の下端には、後ろ側へ向けて湾曲し、厚みが第1面11と等しく略一定であり、且つ、左右方向の断面形状が略均一の円弧状である、前側中間部14が設けられている。この前側中間部14の下端には、前後方向に対して水平に後方へ向けて延びる平板状であり、左右方向の断面形状が略均一である、前側第3面15が設けられている。この前側第3面15の後端の位置は、第1面11と支持部12との境界、すなわち、平面から曲面へと遷移する位置よりも前方である。
【0028】
一方、第2面13の下端には、前側へ向けて湾曲し、厚みが第2面13と等しく略一定であり、且つ、左右方向の断面形状が略均一の円弧状である、後側中間部16が設けられている。この後側中間部16の下端には、前後方向に対して水平に前方へ向けて延びる平板状であり、左右方向の断面形状が略均一である、後側第3面17が設けられている。この後側第3面17の前端の位置は、第2面13と支持部12との境界、すなわち、平面から曲面へと遷移する位置よりも前方であり、且つ前側第3面15の前後幅と後側第3面17の前後幅とは、略等しい。このように前側第3面15と後側第3面17とが設けられているため、前側第3面15と後側第3面17との間には、前後幅が左右方向において一定である間隔が形成されている。
【0029】
前側第3面15及び後側第3面17のそれぞれの底面における左右方向の中央には、前後方向に延びる目印18が設けられている。この目印18は、前側第3面15及び後側第3面17のそれぞれの底面に溝を掘ることにより設けてもよいし、塗料などを用いて設けてもよい。
【0030】
架設体10の左端には、第1面11、支持部12、及び第2面13の左端から左斜め上方へ向けて延びる板状の接続部21が設けられている。この接続部21は、左右方向に対して概ね60°の角度で左斜め上方へ向けて延びている。この接続部21の上端からは、左右方向に対して略鉛直上方へ向けて延びる板状の吊下部22が設けられている。接続部21の支持部12との接続位置近傍から吊下部22の上端近傍に至るように、側面視にてT字状に左側から右側へ向けて窪んだ凹部23が設けられている。この凹部23において、吊下部22の略中央には、凹部23の厚み方向に貫通している孔24が設けられている。
【0031】
吊下部22の上端には、前後方向に間隔を開けて2つの同形状の取付部25が設けられている。この取付部25は、左斜め上方へ向けて延びた後、上端が正面視にて円弧状に湾曲された形状となっている。なお、取付部25を構成する円弧の曲率半径は、架設体10が取り付けられる支持体100の断面の半径と略等しい。
【0032】
架設体10の右端には、接続部21、吊下部22、凹部23、孔24、取付部25と左右対称な形状である、接続部31、吊下部32、凹部33、孔34、取付部35が設けられている。
【0033】
以上のように架設体10の各部が構成されているため、第1面11、第2面13、及び第3面15,17により、側面視にて、第1面11及び第2面13を等辺とし、第3面15,17が底面となる角丸二等辺三角形が形成されていると言える。この第1面11、第2面13、及び第3面15,17により囲まれる空間は中空部と称することができ、中空部は架設体10の延びる方向である左右方向に延びる空間であるということができる。この中空部は、左右の両端が開放されており、下端は第3面15,17の間において開放されており、第3面15,17の間については下方(外方)へ向けて中空部を臨ませる開口と称することができる。
【0034】
本実施形態に係る架設体10には、雌ネジ41を備えるナット40及びその雌ネジ41に螺入可能な雄ネジ51を備えるボルト50を使用することで、取付対象物200が取り付けられる。ナット40及びボルト50を使用して取付対象物200を取り付ける場合について、
図9~
図12を参照して説明する。
【0035】
ナット40の形状は、厚みが略均一な正方形であり、四隅は弧状に面取りされており、中心には厚み方向に貫通する雌ネジ41が設けられている。この雌ネジ41の直径は、第3面15,17の間隔よりも小さい。ナット40は、ナット40を架設体10の第1面11、第2面13、及び第3面15,17により囲まれる空間に入れた場合に、ナット40の底面が第3面15,17の上面15a,17aに当接し、且つ、前側の辺の上端が第1面11の内面11aに当接し、後側の辺の上端が第2面13の内面13aに当接するように、辺の長さ及び厚みが定められている。
【0036】
ナット40は、架設体10の左右両端の一方から第1面11、第2面13、及び第3面15,17により囲まれる空間である中空部に挿入され、
図9に示すように、目印18がナット40の中央と一致するように配置される。このとき、ナット40の雌ネジ41は、第3面15,17の間から外方へ臨むこととなる。目印18はナット40の位置を示す基準として機能するため、基準部と称することができる。また、第1面11、第2面13、及び第3面15,17により囲まれる空間である中空部は、ナット40の収容空間と称することができる。
【0037】
ナット40の底面は第3面15,17の上面15a,17aに当接するため、第3面15,17は一方側当接部と称することができる。または、ナット40の底面はボルト50の螺入方向の手前側であることから、手前側当接部と称することができる。そして、ナット40の上端側の辺は第1面11の内面11a及び第2面13の内面13aに当接するため、第1面11の内面11a及び第2面13の内面13aは、他方側当接部と称することができる。または、ナット40の上面側はボルト50の螺入方向の奥側であることから、奥側当接部と称することができる。
【0038】
雄ネジ51をナット40の雌ネジ41に螺入する場合、ナット40の前側の辺の上端が第1面11の内面11aに当接し、後側の辺の上端が第2面13の内面13aに当接しているため、ナット40の雌ネジ41を軸心とした回動が抑制される。加えて、ナット40の底面が第3面15,17の上面15a,17aに当接しているため、ナット40の上下方向の移動も抑制される。すなわち、ナット40の架設体10に対する相対的な位置及び姿勢の変化が抑制された状態で、ボルト50が螺入されることとなる。なお、雄ネジ51をナット40から取り外す場合にも、ナット40の雌ネジ41を軸心とした回動は抑制される。すなわち、架設体10の第1面11の内面11a及び第2面13の内面13aにより、ナット40の雌ネジ41を軸心とした正逆方向(時計回り及び反時計回り)の回動が抑制される。
【0039】
架設体10の支持部12の内面12aとナット40の上面との間には、空間が設けられているため、ナット40に螺入されたボルト50の雄ネジ51は、ナット40の上端から突出してその空間に進入可能である。ボルト50をナット40にさらにねじ込めば、ボルト50の雄ネジ51の先端は、支持部12の内面12a側へ向けて近接していく。このとき、ボルト50の長さによっては、雄ネジ51の先端は、支持部12の内面12a、又は、第1,2面11,13の内面11a,13aに当接又は圧接する場合もあれば、支持部12の内面12a、及び、第1,2面11,13の内面11a,13aと間隔を空けた状態で螺入が停止する場合もある。
【0040】
ナット40及びボルト50利用して取付対象物200を取り付ける場合には、
図12に示すように、取付対象物200を第3面15,17の下方に位置させ、取付対象物200の下方から取付対象物200に設けられた孔等にボルト50を挿入し、取付対象物200を貫通したボルト50の雄ネジ51をナット40の雌ネジ41に挿入することで、取り付ける。なお、
図12で示す取付対象物200は、例えば蛍光灯の笠である。
【0041】
なお、以上説明したナット40及びボルト50を使用した取付対象物200の取付は、
図9に示すように予めナット40を架設体10内に位置させた後に、ボルト50を螺入させるものとしてもよいし、ナット40に対してボルト50を仮止めした状態で、架設体10の左右の一方からナット40を架設体10内へ入れるものとしてもよい。
【0042】
架設体10は、
図1及び
図2で示したように、一対の支持体100の間に架設されるものである。一対の支持体100は断面円形のワイヤーであるため、その支持体100に対して取付部25,35を取り付けることで、支持体100の間に架設される。このとき、架設体10は間隔を空けて複数設けられ、その間隔や数は、取付対象物200の取付ピッチ等の構造に応じて適宜変更することができる。そして、支持部12の上面に当接して支持されるように敷設対象物が敷設される。上述したとおり、取付部25,35は敷設対象物を支持する支持部12よりも上方に設けられているため、少なくとも敷設対象物の下端は、支持体よりも下方に位置する。また、第3面15,17は取付部25,35よりも下方に位置するため、取付対象物200は支持体100よりも下方に位置することになる。
【0043】
上記構成により、本実施形態に係る架設体10は、以下の効果を奏する。
【0044】
・架設体10に対して、敷設対象物を支持する機能と、ボルト50及びナット40による取付対象物200の取付機能とを設けることができる。
【0045】
・第1面11、第2面13、及び第3面15,17によりナット40の回動を抑制しているため、ボルト50をねじ込む場合においてもナット40が回転せず、ボル50トをねじ込む場合における作業効率を向上させることができる。
【0046】
・ナット40の上面と第1面11、支持部12、及び第2面13との間に、ボルト50の雄ネジ51先端の進入を許容する空間があるため、異なる長さのボルト50に対応することができ、取付対象物200の厚みに起因するナット40を貫通したボルト50の突出長の違いにも対応することができる。
【0047】
第1面11、第2面13、及び第3面15,17によりナット40の回動及び上下方向の移動を抑制可能であり、さらに、ボルト50の先端が進入する空間も形成できるため、構成を簡略化することができる。
【0048】
・左右の両端からナット40を中空部内に出し入れ可能であるため、ナット40に対してボルト50による仮止めをした状態で、中空部へナット40を進入させることができる。
【0049】
前側第3面15及び後側第3面17のそれぞれの底面に目印18を設けているため、ナット40の位置を架設体10の延びる方向の中心に位置決めすることができる。
【0050】
第1面11、第2面13、及び第3面15,17により囲まれる空間である中空部が、左右方向に延びる空間であるため、取付対象物200の位置やボルト穴に応じてナット40の位置を変更することができる。
【0051】
・第1面11の内面11a及び第2面13の内面13と、ナット40との当接箇所が、左右方向に延びる平行な2辺であるため、ナット40をより安定して保持することができる。
【0052】
・支持体100に取り付ける架設体10の数や間隔を変更可能であるため、様々な構造の取付対象物200に柔軟に対応することができる。
【0053】
<変形例>
・実施形態では、ナット40の形状を正方形としたが、ナット40を長方形、正六角形等、他の形状としてもよい。すなわち、架設体10の第1面11、第2面13、及び第3面15,17により囲まれる空間に入れた場合に、ナット40の底面が第3面15,17の上面に当接し、ナット40の少なくとも2辺の上端がそれぞれ第1面11、第2面13の内面11a,13aに当接する形状であればよい。
【0054】
・実施形態では、ナット40の形状を板状としたが、ナット40の上部に上方へ向けて傾斜する傾斜面を設け、その傾斜面が架設体10の第1面11及び第3面13面と面接触するものとしてもよい。
【0055】
・実施形態では、架設体10の架設体10の第1面11、第2面13、及び第3面15,17により囲まれる空間について、左右の両端の一方を閉塞してもよく、この場合でも実施形態と同等の効果を奏することができる。また、架設体10の第1面11、第2面13、及び第3面15,17により囲まれる空間の左右の両端を閉塞するものとし、1又は複数のナット40が空間内から離脱不能に設けられるものとしてもよい。
【0056】
・実施形態では、架設体10の第3面15,17の底面に基準部18を設けるものとした。この点、第1面11、第2面13、及び第3面15,17の少なくともひとつの内面11a,13a,15a,17aに基準部として機能する突起等を設け、ナット40がその基準部に接触することで架設体の左右方向の中心に位置決め可能としてもよい。また、ナット40にその突起と係合する凹部を設けておき、ナット40の凹部に架設体10の突起が嵌まり込むことで、位置決めを可能としてもよい。
【0057】
・実施形態では、架設体10の第3面15,17の底面に基準部18を設けているが、左右方向の中心から等間隔に目盛を設け、その目盛を基準部としてもよい。ナット40に対してボルト50を用いて取付対象物200を先に取り付けておき、その後にナット40を空間内に配置する場合、架設体10の中心位置を視認できない場合がある。この点、本変形例では、取付対象物の両側の位置を等間隔の目盛に合わせて取り付けることで、取付対象物の位置を架設体10の中心と一致させることができる。
【0058】
・実施形態では、第1面11、第2面13、及び第3面15,17について、平面としているが、曲面であってもよい。すなわち、複数の曲面によりナット40の上下方向の位置の変化、及び、雌ネジ41を軸とする回動を抑制できればよい。
【0059】
・実施形態では、架設体10の形状を側面視にて略二等辺三角形としたが、架設体10の側面視における形状は変更可能である。すなわち、ナット40の底面が第3面15,17の上面に当接し、ナット40の少なくとも2辺の上端がそれぞれ第1面11、第2面13の内面11a,13aに当接する形状であればよい。
【0060】
・実施形態では、架設体10の形状を側面視にて角丸二等辺三角形状としているが、第1面11及び第2面13の傾斜角や上下方向及び左右方向の長さが異なっていてもよい。すなわち、第1面11及び第2面13が共にナット40の上側(奥側)に当接し、ナット40の回動を抑制できればよい。また、架設体10の形状を側面視にて略正三角形としてもよいし、角丸正三角形としてもよい。
【0061】
・実施形態では、第1面11と前側第3面15との間に側面視にて円弧状の前側中間部14を設け、第1面11と後側第3面17との間に側面視にて円弧状の後側中間部16を設けているが、側面視にて円弧状の部分を設けず、第1面11及び第2面13と第3面15,17とが連続的に接続されている形状であってもよい。なお、第1面11と第2面13との間の弧状の支持部12については、敷設対象物への損傷等を抑制するという観点からは実施形態の形状を維持すべきであるが、損傷のおそれの無い敷設対象物が敷設されるのであれば、弧状としなくてもよい。
【0062】
・前側第3面15と後側第3面17について、左右方向の全域に亘って離間しており、下方へ向けて臨む開口を形成しているが、前側第3面15と後側第3面17とを一部で連結するものとしてもよい。この場合には、左右方向の中央近傍はナット40の雌ネジ41を下方(外方)へ臨ませる必要がある場合が多いため、離間させておいたほうがよく、左右の両端等のような取付対象物200を取り付ける可能性が低い部分を連結させればよい。
【0063】
・実施形態では架設体10に取付対象物200を取り付けるものとしたが、必ずしも取り付ける必要はなく、必要に応じて取り付ければよい。
【0064】
・取付部25,35は、支持部12よりも下方に位置するものとしてもよい。この場合には、敷設対象物が支持体100よりも上方に位置することになる。また、取付部25,35を第3面15,17よりも下方に位置するものとしてもよい。この場合には、取付対象物200が支持体100よりも下方に位置することになる。
【0065】
・実施形態では、床又は地面と平行に貼られた支持体100に架設体10と取り付けるものとしたが、床又は地面から鉛直上方へ向けて延びる支持体100に取り付けるものとしてもよい。この場合には、敷設対象物はワイヤー等を利用して架設体に取り付けられることとなる。
【0066】
・支持体100に対して取り付ける架設体を、すべて実施形態に係る架設体10としてもよいし、一部を実施形態に係る架設体10以外の架設体としてもよい。すなわち、取付対象物200を取り付ける必要がある箇所には実施形態に係る架設体10を設けておき、他の箇所については、敷設対象物を支持すべく別の架設体を設けるものとしてもよい。
【0067】
・実施形態では架設体10を一体成型するものとしたが、複数の部品を組み合わせて架設体10を構成するものとしてもよい。
【0068】
・支持体100に対して架設体10が予め取り付けられていたり、固定されていたりする構造としてもよく、一部の架設体10を予め取り付けたり固定したりしておき、取付対象物200の構造に応じて架設体10を追加するものとしてもよい。
【0069】
・上述した各変形例は、組み合わせて利用することができる。例えば、上述したナット40の形状の変形例と、架設体10の形状の変形例とを組み合わせて利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
架設体…10、第1面…11、内面…11a、支持部…12、内面…12a、第2面…13、内面…13a、前側第3面…15、上面…15a、後側第3面…17、上面…17a目印…18、ナット…40、雌ネジ…41、ボルト…50、雄ネジ…51、支持体…100、取付対象物…200