(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 3/44 20060101AFI20231026BHJP
E05D 15/16 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
E06B3/44
E05D15/16 Z
(21)【出願番号】P 2020065120
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 尚史
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-176667(JP,A)
【文献】特開2014-218833(JP,A)
【文献】特開2017-101423(JP,A)
【文献】特開2018-119344(JP,A)
【文献】実開昭57-99097(JP,U)
【文献】実開昭59-57673(JP,U)
【文献】特開2015-221972(JP,A)
【文献】特開2007-113217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 17/60
E05D 15/16
E05D 15/22
E06B 3/44
E06B 3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦枠を有する枠体と、
前記枠体内の上方に配置される上障子と、
前記枠体内の下方に配置され、前記枠体内を上下方向に移動可能な下障子と、
前記上障子を支持すると共に前記縦枠に固定される支持部材と、
前記上障子の下框における屋内側の見付面において前記支持部材と前記下框とを締結する締結部材と、を備える建具。
【請求項2】
前記下框は、内部に形成され前記支持部材が配置される支持部材配置部と、前記支持部材配置部と連通すると共に屋内側に開放する孔と、を有し、
前記支持部材は、横方向にスライド可能に前記支持部材配置部に配置されると共に、スライド方向の一端部側が前記縦枠に固定可能に構成され、
前記締結部材は、前記孔を貫通した状態で前記支持部材と前記下框とを締結する、請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記縦枠に固定され、前記支持部材の前記縦枠の側の端部を仮置き可能な仮置き部を備える、請求項1又は2に記載の建具。
【請求項4】
前記締結部材は、前記下障子が閉位置に位置する場合において、屋内側から見た場合に前記下障子の上框に遮蔽される、請求項1~3のいずれかに記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枠体と、上方に固定される上障子と、枠体内を上下方向に移動可能な下障子と、を備える上げ下げ窓(建具)が知られている(例えば、特許文献1参照)。上障子は、障子固定金具に支持された状態で枠体に固定されている。上障子は、下方側から、ネジにより障子固定金具に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上障子を下方側からネジにより障子固定金具に締結する構造においては、屋外側から、上障子の下端部にネジの頭部が見えている。そのため、上障子の下方側から締結されるネジを、屋外側から緩めることが可能である。屋外側からネジを緩めることが可能である場合には、防犯上好ましくない。よって、防犯性能を向上できることが望まれる。
【0005】
本開示は、防犯性能を向上できる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、縦枠を有する枠体と、前記枠体内の上方に配置される上障子と、前記枠体内の下方に配置され、前記枠体内を上下方向に移動可能な下障子と、前記上障子を支持すると共に前記縦枠に固定される支持部材と、前記上障子の下框における屋内側の見付面において前記支持部材と前記下框とを締結する締結部材と、を備える建具に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る上げ下げ窓を屋内側から見た正面図である。
【
図2】本実施形態に係る上げ下げ窓の縦断面図である。
【
図3】本実施形態に係る上げ下げ窓の上障子が配置される部分の横断面図である。
【
図4】上障子の取付構造を屋内側から見た図である。
【
図5】上障子の取付構造の詳細を示す斜視図である。
【
図7】上障子を枠体に取り付ける手順において、上障子を枠体に配置する手順を示す図である。
【
図8A】上障子を枠体に取り付ける手順において、障子スライド金具をスライドさせる前の状態を示す図である。
【
図8B】上障子を枠体に取り付ける手順において、障子スライド金具をスライドさせて縦枠に固定する状態を示す図である。
【
図9】下框の変形形態を示す図であって、下框に設けられた通し溝を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。なお、本明細書において、「見付方向」とは、建物の壁に形成された開口部に納められた上げ下げ窓1におけるガラスパネルの面方向を意味し、「見込方向」とは、上記ガラスパネルの厚さ方向(即ち、奥行き方向)を意味する。「見付面」は、上げ下げ窓1を正面側から見たときに見える面である。「見込面」は、上げ下げ窓1の奥行方向の面(見付方向を向く面)である。図面において、屋内側を「INSIDE」と記載し、屋外側を「OUTSIDE」と記載する。
【0009】
本実施形態の建具としての上げ下げ窓1は、図示しない建物の壁に形成された開口部に納められる。
図1に示すように、上げ下げ窓1は、建物の開口部に取り付けられる枠体2と、枠体2内の上方に配置された上障子3と、枠体2内の下方に配置され枠体2内を上下方向に移動可能に納められた下障子4と、障子固定構造6と、を備える。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の上げ下げ窓1は、上障子3が枠体2内の上部に固定されており、下障子4が枠体2内を上下方向に移動可能に構成される。上げ下げ窓1は、閉鎖時に下障子4が上障子3の下方に配置される。枠体2は、
図1~
図3に示すように、上枠21と、下枠22と、左右の縦枠23,24とにより矩形に枠組みされて形成される。
【0011】
図1~
図4に示すように、上障子3は、框体30と、框体30に嵌め込まれて固定されたガラスパネル35と、を備える。框体30は、上框31と、下框32と、左右の縦框33,34と、により矩形に框組みされる。下障子4は、框体40と、框体40に嵌め込まれて固定されたガラスパネル45と、を備える。框体40は、上框41と、下框42と、左右の縦框43,44と、により矩形に框組みされる。
【0012】
上障子3は、
図1~
図6に示すように、障子固定構造6により枠体2の縦枠23,24に固定されている。障子固定構造6は、上げ下げ窓1の左右に一対設けられる。障子固定構造6は、上障子3の下端部に配置される下框42において、上障子3を縦枠23,24に固定する構造である。
【0013】
障子固定構造6は、上障子3の下框32の内部に形成される下框下端中空部321(スライド部材配置部)と、上障子3を支持すると共に縦枠23,24に固定される障子スライド取付金具7(支持部材)と、縦枠23,24の見込面に固定される障子固定金具8と、障子スライド取付金具7と下框42とを締結するネジ61(締結部材)と、を備える。
【0014】
下框下端中空部321は、
図2及び
図4に示すように、下框42の下端部の内部において、左右方向(横方向)に延びて形成される。下框下端中空部321における屋内側見付面321a(見付面)には、左右方向に延びるスリット溝322(孔)が形成される。
【0015】
スリット溝322は、見付方向の左右方向に所定長さ延びる長穴状の貫通溝である。スリット溝322は、下框下端中空部321と連通すると共に屋内側に開放して左右方向に延びる。スリット溝322は、下框下端中空部321の内部に連通する。
【0016】
スリット溝322には、上障子3と障子スライド取付金具7とを固定する際に、
図5及び
図6に示すように、ネジ61が挿通される。ネジ61は、上障子3の下框42と障子固定金具8とを締結する。
【0017】
障子スライド取付金具7は、
図5及び
図6に示すように、上障子3の下框32の下框下端中空部321の内部に左右方向にスライド可能に配置される。障子スライド取付金具7は、
図5及び
図6に示すように、断面視U字状で左右方向に延びるスライドバー71と、スライドバー71の左右方向の一端部から外側に延びる一対の側方延在片72と、スライドバー71の左右方向の一端部の外側において斜め下方に延びる下方延在片73と、を有する。
【0018】
スライドバー71は、左右方向に延びる。スライドバー71は、縦方向の断面形状が、上方に向けて開放するU字状に形成される。スライドバー71は、左右方向に延びる長方形状の底面板711と、底面板711の見込方向の両端部から立ち上がると共に左右方向に延びる一対の縦板712と、を有する。
【0019】
一対の側方延在片72は、スライドバー71の一対の縦板712それぞれが左右方向の外側に延びることで形成される。
【0020】
下方延在片73は、障子スライド取付金具7の左右方向の外側の端部側に配置される。下方延在片73は、左右方向の外側に向かうに従って下り傾斜で延びる。下方延在片73は、障子固定金具8を介して、縦枠23,24に固定される。下方延在片73は、ネジ62により、縦枠23,24に固定された障子固定金具8の載置固定部81の取付傾斜板部812に固定される。これにより、左右方向にスライド移動される障子スライド取付金具7は、左右方向(スライド方向)の一端部側が縦枠23,24に固定可能である。
【0021】
以上のように構成される障子スライド取付金具7は、下框32の下框下端中空部321の屋内側見付面321aに形成されたスリット溝322を貫通して配置されたネジ61により、下框32に固定される。ネジ61は、下框32における屋内側見付面321aにおいて、スリット溝322を貫通した状態で、障子スライド取付金具7と下框32とを締結する。ネジ61は、下障子4が閉位置に位置する場合において、屋内側から見た場合に、下障子4の上框41に遮蔽される。
【0022】
具体的には、ネジ61を、屋内側から、下框32の下框下端中空部321の屋内側見付面321aに形成されたスリット溝322に挿入することで、ネジ61の先端は、障子スライド取付金具7のスライドバー71の屋内側の面にねじ込まれている。ネジ61の軸部は、下框32の下框下端中空部321の屋内側見付面321aに形成されたスリット溝322を貫通して配置されている。ネジ61がねじ込まれることにより、ネジ61の頭部は、スリット溝322の縁部において、障子スライド取付金具7のスライドバー71との間に、下框32の下框下端中空部321の屋内側見付面321aを挟むことで、下框32と障子スライド取付金具7とを固定する。
【0023】
障子スライド取付金具7は、スリット溝322を貫通して配置されるネジ61を緩めた状態において、下框下端中空部321の内部において、左右方向にスライド可能に配置される。障子スライド取付金具7のスライドバー71の屋内側の面には、スリット溝322を貫通して配置されたネジ61の先端がねじ込まれている。スリット溝322が左右方向に延びるため、障子スライド取付金具7にねじ込まれたネジ61をスリット溝322に沿って左右方向に移動させることで、障子スライド取付金具7の左右方向の固定位置を調整できる。なお、スリット溝322に不図示のカバーを取り付けてもよい。
【0024】
障子固定金具8は、
図5及び
図6に示すように、ネジ63により、左右の縦枠23,24の見込面に固定される。上障子3は、障子固定金具8を介して枠体2に固定される。障子固定金具8は、上げ下げ窓1の左右方向の外側に向けて開放する断面略C字形状の載置固定部81と、上側固定板部82と、下側固定板部83と、を有する。
【0025】
載置固定部81は、上側に配置され左右方向に所定長さ延びる上面載置板部811(仮置き部)と、上面載置板部811の左右方向の内側の端部から外側に向かうに従って下り傾斜で延びる取付傾斜板部812と、取付傾斜板部812の下端部から左右方向の外側に左右方向に延びる下面板813と、を有する。
【0026】
上面載置板部811は、障子固定金具8に障子スライド取付金具7を取り付ける際に、障子スライド取付金具7のスライドバー71の縦枠23,24側の左右方向の外側の端部を仮置き可能である。取付傾斜板部812には、障子スライド取付金具7の下方延在片73が固定される。
【0027】
上側固定板部82は、載置固定部81の上面載置板部811の左右方向の外側の端部から上方に延出する。上側固定板部82は、ネジ63により、縦枠23,24の見込面に固定される。下側固定板部83は、載置固定部81の下面板813の左右方向の外側の端部から下方に延出する。下側固定板部83は、ネジ63により、縦枠23,24の見込面に固定される。
【0028】
次に、上げ下げ窓1において、枠体2に上障子3を固定する手順について説明する。枠体2に上障子3を固定する場合には、事前に、障子スライド取付金具7を下框32の下框下端中空部321の内部に配置すると共にスリット溝322にネジ61を貫通させた状態で、ネジ61により、上障子3の下框32と障子スライド取付金具7を仮固定しておく。具体的には、上障子3の下框32の屋内側から、スリット溝322にネジ61を貫通させて、スリット溝322に貫通して配置されたネジ61により、上障子3の下框32と障子スライド取付金具7とを仮固定する。
【0029】
まず、
図5に示すように、上障子3の下框32の下框下端中空部321に、障子スライド取付金具7をネジ61により仮固定した状態で、作業者は、
図7に示すように、一対の障子固定金具8それぞれを縦枠23,24の見込面に固定する。
【0030】
続けて、上障子3を、いわゆる横ケンドンにより、縦枠23,24に配置する。詳細には、
図7に示すように、上障子3を左右方向の一方の端部と他方の端部との位置を前後にずらすように傾けた状態で、上障子3の左右方向の一方の端部を、一方の縦枠23,24に挿入しながら、上障子3の左右方向の両端の前後の位置が一致するように移動させて、上障子3の左右方向の他端部を、他方の縦枠23,24に挿入する。これにより、上障子3を縦枠23,24に配置する。
【0031】
次に、
図8Aに示す状態から、仮固定したネジ61を緩めて、一対の障子スライド取付金具7それぞれを左右方向の外側にスライドさせて、一対の側方延在片72を、縦枠23,24に固定した障子固定金具8の上面載置板部811に載置する。これにより、障子スライド取付金具7を障子固定金具8の上面載置板部811に仮置きできる。
【0032】
そして、
図8Bに示すように、ネジ62により、障子スライド取付金具7を障子固定金具8に固定する。その後、スリット溝322に貫通して配置されたネジ62により、上障子3の下框32の屋内側から、障子スライド取付金具7を上障子3の下框32の屋内側見付面321aに固定する。これにより、屋外側からネジ61が見えないため、防犯性能を向上させることができる。
【0033】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。本実施形態の上げ下げ窓1は、縦枠23,24を有する枠体2と、枠体2内の上方に配置される上障子3と、枠体2内の下方に配置され、枠体2内を上下方向に移動可能な下障子4と、上障子3を支持すると共に縦枠23,24に固定される障子スライド取付金具7と、上障子3の下框32における屋内側見付面321aにおいて障子スライド取付金具7と下框32とを締結するネジ61と、を備える。これにより、障子スライド取付金具7を屋内側見付面321aにおいて、ネジ61により障子スライド取付金具7と下框32とを締結できる。よって、屋外側からネジ61が見えないため、防犯性能を向上させることができる。
【0034】
本実施形態においては、下框32は、内部に形成され障子スライド取付金具7が配置される下框下端中空部321と、下框下端中空部321と連通すると共に屋内側に開放して左右方向に延びるスリット溝322と、を有し、障子スライド取付金具7は、左右方向にスライド可能に下框下端中空部321に配置されると共に、左右方向の一端部側が縦枠23,24に固定可能に構成され、ネジ61は、スリット溝322を貫通した状態で障子スライド取付金具7と上障子3の下框32とを締結する。これにより、障子スライド取付金具7をスリット溝322に沿って移動させて、ネジ61により、障子スライド取付金具7と上障子3の下框32とを締結できる。よって、障子スライド取付金具7により、上障子3を縦枠23,24に容易に固定できる。
【0035】
本実施形態においては、縦枠23,24に固定され、障子スライド取付金具7の縦枠23,24側の端部を仮置き可能な上面載置板部811を備える。これにより、仮置きした状態で手を離せるため、障子スライド取付金具7を縦枠23,24に取り付ける際の作業性を向上させることができる。よって、上障子3を枠体2に取り付ける作業を容易に行うことができる。
【0036】
本実施形態においては、ネジ61は、下障子4が閉位置に位置する場合において、屋内側から見た場合に下障子4の上框41に遮蔽される。これにより、下障子4が閉位置に位置する場合に、ネジ61が屋内側からも見えないため、防犯性能を一層向上できる。
【0037】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれる。
【0038】
前記実施形態においては、下框32に設けられる孔を、見付方向の左右方向に所定長さ延びる長穴状のスリット溝322により構成したが、これに限定されない。例えば、下框32に設けられる孔を、丸穴(不図示)で構成してもよいし、
図9に示すように、下框32の見付方向の左右方向に通しで溝状に延びる通し溝323で構成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 上げ下げ窓(建具)、2 枠体、3 上障子、4 下障子、7 障子スライド取付金具(支持部材)、23,24 縦枠、32 下框、41 上框、61 ネジ(締結部材)、321 下框下端中空部(支持部材配置部)、321a 屋内側見付面(見付面)、322 スリット溝(孔)、811 上面載置板部(仮置き部)