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  • 特許-植物栽培方法 図1
  • 特許-植物栽培方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】植物栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20231026BHJP
【FI】
A01G31/00 601B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020109500
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022006917
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】502159974
【氏名又は名称】小林 一雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 一雄
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-029924(JP,A)
【文献】特開2000-224932(JP,A)
【文献】特開平11-225596(JP,A)
【文献】特開2015-112061(JP,A)
【文献】特開2001-161160(JP,A)
【文献】特開2004-135534(JP,A)
【文献】実開昭60-168363(JP,U)
【文献】実開平01-167154(JP,U)
【文献】実開昭62-181139(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00 - 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が略水平なトレイの上に、下部に給水用開孔を備えた複数の植物栽培用ポットを積載し、該ポットには礫を再利用するために洗浄する際に水に沈む比重が1を超える礫の培地を収納し、トレイ上面は養液の間欠供給によって湛液状態と養液をポットの底から供給しない乾燥状態を反復させる植物栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養液を用いて植物を育成する水耕栽培に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農耕不適地での栽培、水の使用量が少ない、雑草がない、動物による被害がない、促成栽培の一種で収量が多い、清潔、輪作可能、無農薬可能、標準化容易、天候に左右されない、周年栽培可能、細菌が少ないなどの長所があるため、土を用いず植物を栽培する温室内での水耕栽培さらには団粒構造で植栽の保持力が強く培地内に空気を含む礫耕栽培の技術開発が進められて来た。
【0003】
しかし、多くの方式は養液の循環利用を採用していてひとたび養液が汚染されると系統全体が被害にあう危険性がある。また、溶液中に苔や藻類が発生して緑化し美観を損ねるのでアルミホイルなどの遮光手段を必要としている。更に植物を支える培地の再利用への配慮が乏しい。
この改善策として、
【文献】や
【文献】に示す装置、方法が開発された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-135534号公報
【0005】
【文献】特開2004-229538号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は、
【文献】にあるようにポットはトレイ上を移動可能にしつつ光遮断不要にして栽培するが、養液を循環使用せずに使いきりとして養液の管理を容易にすること、また、
【文献】にあるように培地に礫を使用するが礫の再利用に際し礫と植物残渣の分別を容易にすること。更に、養液は緑化を防ぐため間欠供給するが培地が乾燥して植物が枯れないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
収穫後に培地を水で攪拌洗浄する際に植物残渣と礫を水に沈むか否かで分別可能にして再利用できるように比重が1を超える礫の培地を使用し、培地を収納するポットはその下部に給水用開孔を備えていて養液を水位差及び毛細管現象で摂取する。養液は間欠補給するとポットを複数個収納する略水平なトレイ上面は整合して乾燥状態を発生させることが可能なので苔や藻類の連続成長を間欠成長に変えることで養液の緑化を遅延ないし防止しながら植物を育成する簡便で清潔な礫耕式水耕方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
収穫後の培地の水洗時に植物残渣と礫を仕分け可能にして再利用できる礫の培地を使用し、培地を収納するポットはその下部に給水用開孔を備え養液を水位差および毛細管現象で摂取するが、養液は略水平なトレイ上面の乾燥を待って間欠補給するとトレイ上面は整合して乾燥状態が発生することで、苔や藻類による緑化を遅延ないし防止したので、簡便で清潔に植物を育成する礫耕式水耕方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例の斜視図と要部断面図
図2】本発明の他の実施例の正面図
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0010】
図1は本発明の一実施例の斜視図と要部断面図を示したもので培地となる礫3は耐水性のある合成樹脂製などのカップ状のポット2に収納されている。ポット2はその下部に給水用開孔4を備え養液を当初は水位差で次いで毛細管現象で摂取する。養液は間欠補給するとポット2を複数個収納する耐水材からなる周囲を縁取りされた略水平な平面状のトレイ1上面は整合して乾燥状態が発生するので苔や藻類の連続成長を阻害し、苔や藻類による緑化を遅延ないし防止して植物5を育成可能にしている。
【0011】
なお、トレイ1は耐水性のない平板と縁取り材を用いても樹脂フィルムで上部を覆うことで作成できる。
【0012】
種をまくときは毛細管現象によって湿りをおびる高さに礫3の高さを設定するが表面が湿っていることは表面に苔が発生するおそれがあるので苔の発生を懸念する場合は植物5が丈夫になってから礫3を積み増しするとよい。他にも種をまくときは水位を高く設定するがその後は低めに設定して礫3上面を乾燥させる方法や、種をまいて発芽後根が湿った礫3に届くまでは上方から直接養液を給水してもよい。
給水用開孔4は礫3が落下しない程度の大きさでよいが植物5の根が給水用開孔4を通過してポット2から外へ延び、かつその根が太くなって給水用開孔4を塞いで養液が供給されなくなることがある。その際は外へ伸長した根を切断し更に釘などで根を押し上げて給水用開孔4を再開させる。または給水用開孔4を大きくして網を載せることで礫3の落下を防いでもよい。
【0013】
トレイ1は横方向にも奥行き方向にもポット2を複数個置ける広さを持たせると移動が自由になる。植物5が成長して大きくなったものに隣接して未熟で小さいものを配置可能なのでトレイ1の面積の利用効率が向上する。
植物5を収穫切断後に茎部に芽がありさらに成長するようであれば連続使用するが見込みがない時はポット2と礫3を洗浄して再利用すると更新が図られる。
【0014】
トレイ1上面が水平でないと高所に配置されたポット2の養液吸収終了後に低所のトレイ1上面乾燥までの時間が長期化し植物が枯れてしまう恐れがある。小粒軽石の培地を0.7~1.2リットル収容して湛水高さを0.5~1cmとし点検補給ピッチを1日当たり1~2回として葉物野菜を育成した場合にはトレイ1上面の高低差を1mm程度に納めると高所に設置されたポット2の水分が絶えることなくトレイ1上面全面の乾燥を待つことができて植物5は枯れなかった。なお、ポット2の容量、植物種類、植物5の大きさ、礫3の条件などで必要な精度は変化する。
【0015】
礫3は水に沈むことと多孔質材の利用など保水力のあることが重要で軽石、火山礫、焼結セラミックス、ゼオライト、鹿沼土など比重が1を超える物が使われる。使用した軽石は2社のものを使用したがいずれも表面に気泡がない粉体の固形物で水に沈む種類であった。また、鹿沼土は硬度の高いものを選択すると比較的長期にわたって団粒形状を保ち粉化が遅く培地として使用可能である。表面が丸味を帯びて滑らかな小粒砂利は保水力がすくないので混合を少量に留めて使用することが望ましい。
【0016】
培地の種類によって毛細管現象による湿り高さが異なる。湿り高さは湿ると色が濃くなるのでその境界を目視することで判別できる。湿り高さは時間の経過で上昇し変化するが一昼夜置いたときの湿る高さを測定した。各種培地の湿り高さの上昇値は小粒軽石:10cm、黒色火山礫:8cm、小粒焼結セラミックス:9cm小粒ゼオライト:8cm表面が丸味を帯びて滑らかな小粒砂利:3cm小粒鹿沼土:19cmあった。なおここで小粒とは6mmの篩を通り抜け2mmの篩を通らないものとした。礫3の大きさは6mm制限されるものではなく植物5の種類や大きさなどによってはより大粒の礫3が好適である。
【0017】
例えば軽くて作業性の良い小粒軽石を用いて植物5を育成する場合には培地高さを8cmにして湛水高さを1cmにすると培地表面は湿ることになり上面に種をまくと水分が供給されて発芽する。発芽後苔が発生することがあるが無視する場合はそのままにするが美観を意識する場合は植物5が丈夫になってから軽石を上部に散布して積層する。
【0018】
更に使用面積の効率向上のために種まき用の小型ポットに種をまき根が十分廻った状態で本ポット2に移植してもよいがこの場合は種まき用の培地に礫3以外の種類としてパーミキュライトやピートモスのように土でないものを使用すると大部分は水に沈むので再利用可能であり、礫3に混合しても弊害はない。
【0019】
収穫後に礫3を水で攪拌洗浄すると再利用が可能になる。先ずは大きな容器に礫3を入れ、水を加えて一晩置くと表層の礫3は当初は空気を含んでいて水に浮くものもあるが水と置換して水に沈む。また、定時間静置することは植物に吸収されなかった養分が希釈排出される効果が期待される。次いで水洗いをする。攪拌が終了して運動が止まった時に根や苔は水に浮くまたは水中に漂うが礫3は沈むので汚れた水を流すことで分別できる。水を何回か替えて洗浄し、水が澄んできたら水を切って礫3を乾燥と消毒をして再利用する。太陽光に曝すことが簡便である。乾燥後2mmで粉粒を排除する。なお、排水は有機物を主成分とするものであり花木への水遣りに使うことができる。
【0020】
合成樹脂製などの小型のトレイ1は水道蛇口へ持ち運び洗浄できる。大型の設備の場合は移動が困難で設備として水抜栓および排水システムを構築するとよい。苔や藻類の発生による弊害はほとんどないが美観を損なうことと苔や藻類の発生を防いでも時間の経過で塵埃が表面に積もるので食品を育成するものとして美観を保つためトレイ1を洗浄する。
【0021】
図2は本発明の他の実施例の正面図を示したもので複数段の棚にトレイ1を設置する例で棚の梁は透かし構造としトレイ1は無色透明の合成樹脂で構成すると上部からの光が下部へより多く届く。また図示するように養液供給を配管と弁を用いてシステム化すると作業が容易になる。ポット2は移動可能で最上段に示すように大きな植物5のポット2に隣接して小さな植物5のポット2や発芽前のポット2を配置するとトレイ1面積の有効利用が可能である。
【0022】
省力化を図り自動化するには非導電性のトレイ1上平面に図1に示すように電極対6を設置すると抵抗値は湛液状態では低く、湿潤状態では高く、更に乾燥状態では絶縁状態になるので抵抗値を検出して制御に利用できる。内側側面にも電極対6を設置して液面高さ検出器とし、弁を電磁弁にしてパソコンなどを用いた制御システムを構成すれば養液供給の省力自動管理が可能になる。
植物5に水分供給を減らしてストレスを与える農法を採用する場合は乾燥後の養液供給までの時間を長めに制御する。
【0023】
養液は液耕用のものを液耕用の濃度で使用可能でその都度規定濃度になるよう浄水で希釈後容器やタンクに保管すれば良いので特別の管理は不要である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本法を採用すると設備投資する機器が少なく金額も少ないので害虫の侵入を防ぐ温室やビニールハウス、日光が届く建屋内空き部屋等があれば清浄な無農薬野菜類の生産が少ない投資額で可能になる。遊休地があれば都市近郊での地産地消が実現できる。特に高齢化が進む中山間地域での高齢者による清潔軽作業での現金獲得手段として有効である。また、介護施設などで利用者に与える軽作業にも適していて植物の成長を観察することで精神の安寧を得ることが期待される。
【符号の説明】
【0025】
1 トレイ
2 ポット
3 礫
4 給水用開孔
5 植物
6 電極対
図1
図2