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  • 特許-調節卵巣刺激のための組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】調節卵巣刺激のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/24 20060101AFI20231026BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
A61K38/24 ZMD
A61P15/08
A61K9/08
【請求項の数】 2
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020182295
(22)【出願日】2020-10-30
(62)【分割の表示】P 2020512546の分割
【原出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2021046398
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】17189119.5
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500297535
【氏名又は名称】フェリング ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】アルセ サエズ,ジョアン-カルレス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムガルド,リスベス
(72)【発明者】
【氏名】クレイン,ビャルケ ミルナー
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522871(JP,A)
【文献】REKOVELLE(R) dosing chart for the first treatment cycle,[online],2017年03月,[retrieved on 2020-07-08]. Retrieved from the Internet::<URL:https ://ferringforfertility.co.uk/wp-content/uploads/2017/03/REKUK013-Dosing- Card-insert-v2_web.pdf>
【文献】Fertil. Steril. (Feb 2017) vol.107, no.2, p.387-396, Supplemental Tables
【文献】Abstract of the 33rd Annual Meeting of ESHRE, (Jul-2017) p.i444(P-673)
【文献】Abstract of the 30th Annual Meeting of ESHRE, (2014) p.i323(P-493)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α2,3およびα2,6シアリル化を含み、総シアリル化の約80%~90%がα2,3シアリル化であり、総シアリル化の約10%~20%がα2,6シアリル化である、組換え卵胞刺激ホルモン(FSH)を含む、アジア人患者における不妊症の治療のための薬剤であって、≧26pmol/Lの血清AMHレベルおよび52kg未満の体重を有すると同定されたアジア人患者に投与され;6μgの組換えFSHの1日用量で投与される薬剤であって、前記薬剤が、33.3μg組換えFSH/mL水の濃度を有する組換えFSH水溶液を0.18mL含む、薬剤。
【請求項2】
不妊症の治療は、患者の血清AMHレベルおよび体重を判定するステップ、ならびに規定された血清AMHレベルおよび体重を有する患者に投薬を施すステップを含む、請求項1に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不妊症の治療のための組成物および医薬製品に関する。
【背景技術】
【0002】
体外受精(IVF)などの生殖補助医療(Assisted reproductive technology)(ART)技法は周知である。これらのART技法は、一般的に、卵胞のコホートを完全な成熟まで刺激する調節卵巣刺激(controlled ovarian stimulation)(COS)のステップを要求する。標準的COSレジメンは、早発LHサージを防ぐために、通常では刺激の前および/または間のGnRH類似体の投与とともに、卵胞発育を刺激するための単独でのまたは黄体形成ホルモン(LH)活性との組み合わせでの卵胞刺激ホルモン(FSH)などのゴナドトロピンの投与を含む。COSに一般的に用いられる医薬組成物は、Rekovelle(登録商標)およびGonal F、尿由来FSH、組換えFSH+LH調製物、尿由来メノトロピン[ヒト閉経期ゴナドトロピン(hMG)]、ならびに高度精製ヒト閉経期ゴナドトロピン(HP-hMG)を含めた、組換え卵胞刺激ホルモン(rFSH)を含む。IVFは、重症例では生命を脅かし得る卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の危険性を伴い得る。
【0003】
調節卵巣刺激(COS)への女性の応答潜在性を予測する能力は、個別化COSプロトコールの開発を可能にし得る。そのような個別化プロトコールは、例えば、刺激への過度の応答を有すると予測される女性におけるOHSSの危険性を低下させ得、および/または不良応答者として分類される女性における妊娠転帰を改善し得る。抗ミュラー管ホルモン(AMH)の血清濃度は、卵巣予備能の信頼できるマーカーとして現在確立されている。AMHのレベルの減少は、COSの間のゴナドトロピンへの卵巣応答の低下と相関する。さらに、高レベルのAMHは、過度の卵巣応答の優れた予測因子でありかつOHSSの危険性の指標である。
【0004】
ARTを受けている35歳より下の女性についての予備調査において、OHSSを発症する危険性がある女性におけるCOSのための最適なFSH開始用量を予測するために、CONSORT投薬アルゴリズム(基礎FSH、BMI、年齢、およびAFCを組み込んでいる)が用いられた(Olivennesら、2009)。用量を個別化することは、十分な卵母細胞産出量および良好な妊娠率につながった。しかしながら、低用量群(75IUのFSH)において不十分な応答に起因した高いキャンセル率があり、患者の相当な割合にOHSSが生じた。
【0005】
それゆえ、刺激への十分な応答および/またはOHSSの危険性の減少を提供する個別化COSプロトコールの必要性がある。
【0006】
上で示されるように、標準的COSプロトコールは、FSHの投与を含み得る。FSHは天然には脳下垂体前葉によって分泌され、卵胞発育および排卵を支える機能を果たす。FSHは、他の糖タンパク質ホルモンLHおよびCGにも共通の92アミノ酸のαサブユニット、ならびに当該ホルモンの生物学的特異性を付与するFSHに固有の111アミノ酸のβサブユニットを含む(PierceおよびParsons、1981)。各サブユニットは、複合糖質残基の付加によって翻訳後修飾される。両サブユニットは、αサブユニットではアミノ酸52および78に、ならびにβサブユニットではアミノ酸残基7および24に、N-結合グリカン付着のための2つの部位を持つ(RathnamおよびSaxena、1975、SaxenaおよびRathnam、1976)。ゆえに、FSHは約30質量%までグリコシル化される(DiasおよびVan Roey.2001、
Foxら、2001)。
【0007】
閉経後ヒト尿から精製されたFSHは、自然生殖における排卵を促進するためにも生殖補助医療のための卵母細胞を提供するためにも、不妊症治療において長年にわたって用いられている。最近まで、フォリトロピンアルファ(GONAL-F、Merck Serono/EMD Serono)およびフォリトロピンベータ(PUREGON/FOLLISTIM、MSD/Schering-Plough)など、卵巣刺激のための唯一の認可された組換えFSH(rFSH)生成物は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株に由来した。
【0008】
存在する様々なアイソフォームの量の差に関係する、FSH調製物に伴うかなりの不均質性がある。個々のFSHアイソフォームは、同一のアミノ酸配列を呈するが、それらが翻訳後修飾される程度に差があり;特定のアイソフォームは、糖質分岐構造の不均質性および異なる量のシアル酸(末端糖類)組み込みによって特徴付けされており、その両方とも特異的アイソフォーム生物活性に影響するように見える。
【0009】
天然FSHのグリコシル化は非常に複雑である。天然由来の下垂体FSHにおけるグリカンは、1、2、3、および4分岐グリカンの組み合わせを含み得る広範な構造を含有し得る(PierceおよびParsons、1981.Ryanら、1987.BaenzigerおよびGreen、1988)。グリカンは、さらなる修飾:コアフコシル化、バイセクティンググルコサミン、アセチルラクトサミンを有して伸長した鎖、部分的または完全なシアリル化、α2,3およびα2,6結合を有するシアリル化、ならびにガラクトースの代わりに置換された硫酸化ガラクトサミンを持ち得る(Dalpathadoら、2006)。さらに、個々のグリコシル化部位におけるグリカン構造の分布間に差がある。同等レベルのグリカン複雑性が、個体の血清に由来するおよび閉経後女性の尿に由来するFSHにおいて見い出されている(Wideら、2007)。
【0010】
組換えFSH生成物のグリコシル化は、宿主細胞株に存在するグリコシルトランスフェラーゼの範囲を反映する。操作されたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)に由来する市販のrFSH生成物は、天然生成物に見い出されるものよりも限定された範囲のグリカン修飾を有する。CHO細胞由来rFSHに見い出されるグリカン不均質性の低下の例には、バイセクティンググルコサミンの欠如、ならびにコアフコシル化およびアセチルラクトサミン伸長の程度の低下が含まれる(Hardら、1990)。加えて、CHO細胞は、α2,3結合を用いてしかシアル酸を付加することしかできず(Kagawaら、1988、Takeuchiら、1988、Svenssonら、1990);CHO細胞由来rFSHは、α2,3結合シアル酸のみを含み、α2,6結合シアル酸を含まない。
【0011】
ゆえに、CHO細胞由来FSHは、α2,3およびα2,6結合シアル酸が前者優位で混合したグリカンを含有する天然に生成されたFSH(例えば、ヒト下垂体/血清/尿FSH)とは異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本出願人らは、WO2009/127826Aとして公開された国際特許出願第PCT/GB2009/000978号の主題であるヒト細胞株由来組換えFSHを開発した。rFSHおよびα2,3シアリルトランスフェラーゼの両方を発現するようにヒト細胞株を操作することによって、α2,3およびα2,6結合シアル酸の両方が混合した組換えFSHを作製した。発現生成物は強酸性であり、α2,3およびα2,6結合シアル酸の両方の混合を持ち;後者は、内因性シアリルトランスフェラーゼ活性によって提供される
。α2,3またはα2,6というシアル酸結合のタイプは、FSHの生物学的クリアランスに劇的な影響を有し得ることが見い出された。α2,3およびα2,6結合シアル酸の両方が混合した組換えFSHは、従来のCHO細胞において発現したrFSHに対して2つの利点を有する:第一に、2種のシアリルトランスフェラーゼの組み合わされた活性に起因して、物質がより高度にシアリル化される;および第二に、物質が天然FSHとより酷似している。これは、α2,3結合シアル酸のみを生成し(Kagawaら、1988、Takeuchiら、1988、Svenssonら、1990)かつ減少したシアル酸含有量を有する(Ulloa-Aguirreら、1995、Andersenら、2004)CHO細胞由来組換え生成物と比較して、生物学的により適当である可能性がある。
【0013】
WO2009/127826Aとして公開された国際特許出願第PCT/GB2009/000978号の主題であるヒト細胞株由来組換えFSHのアミノ酸配列は、天然のままの配列であり、天然ヒトFSHおよび既存のCHO由来rFSH生成物と同一である。しかしながら、本出願人らは、α2,3およびα2,6結合シアル酸の両方の混合を有するヒト由来組換えFSH生成物(すなわち、例えばヒト細胞株を操作することによって作製されたヒト細胞株において生成されたまたは発現した組換えFSH)が、(例えば、個別化)COSプロトコールにおいて利用された場合に特に効果的であり得ることを見い出した。
【0014】
2016年12月13日、欧州委員会(EC)は、体外受精(IVF)または卵細胞質内精子注入(intracytoplasmic sperm injection)(ICSI)サイクルなどの生殖補助医療(ART)を受けている女性における多卵胞の発育のための調節卵巣刺激における使用のための、ヒト細胞株由来組換え卵胞刺激ホルモン(ヒトrFSH)であるREKOVELLE(登録商標)(フォリトロピンデルタ、FE999049としても知られる)に対する販売承認を与えた。REKOVELLE(登録商標)は、ヒト細胞株に由来した最初のrFSHである。REKOVELLE(登録商標)(フォリトロピンデルタ)生成物は、国際特許出願第PCT/GB2009/000978号に開示される方法によって生成される。
【0015】
IVF/ICSI患者における、2つの、調節、無作為化、評価者盲検、並行群対照、多施設の第2相抗ミュラー管ホルモン(AMH)階層化試験が、FE999049と回収される卵母細胞の数との用量応答関係性を判定する目的で、1つは欧州において、1つは日本において行われた。両試験において、無作為化は、スクリーニング時のAMHレベルに従って階層化された;低AMH(5.0~14.9pmol/L)または高AMH(15.0~44.9pmol/L)。欧州の用量応答第2相試験では、5.2μg/日~12.1μg/日に及ぶ5つの用量のFE999049が検討され、認可されたrFSH生成物の参照群(GONAL-F、150IU/日)も含まれた。日本の用量応答第2相試験では、3つの用量のFE999049(6μg/日、9μg/日、および12μg/日)が検討され、認可されたrFSH生成物の標準療法(FOLLISTIM、150IU/日)も含まれた。現在のところ、フォリトロピンベータ(FOLLISTIM)は、IVF/ICSIサイクルにおける調節卵巣刺激のための日本において認可された唯一の医療製品である。
【0016】
欧州および日本の第2相試験において、1日用量は刺激期間を通じて固定された。両試験において、回収される卵母細胞の数に対するFE999049についての統計的に有意な用量応答関係性が、集団全体に対しておよび各AMH無作為化階層に対して観察された。許容される妊娠率が、全FE999049用量に関して達成された。さらに、観察されたFE999049用量応答プロファイルは、欧州の試験および日本の試験において類似していた。
【0017】
この作業により、REKOVELLE(登録商標)(フォリトロピンデルタ、FE999049)生成物を投薬するための個別化COSプロトコールの開発が可能となった。
【0018】
本出願人らは、移植のための2個の高品質の卵母細胞の選択を可能にするために、一般的に9個近くの卵母細胞を回収する必要があることを見い出した。
【0019】
本出願人らは、低AMH(AMH<リットルあたり15pmol/L)を有する対象に関して、これを達成するためにかなり高用量のフォリトロピンデルタ(例えば、12μg)が要求されることを見い出した。この用量で、8~14個の卵母細胞が、低AMHを有する対象の60%から回収されるであろう。これは、8~14個の卵母細胞が対象の33%のみから回収される、150IUのGonal-fを用いて治療された低AMHを有する対象の治療と比べて、予想外のかつ有意な改善である。本出願人らは、患者の体重に従ってこの用量を調整する必要がないことを見い出した。
【0020】
しかしながら、集団の60%(および、不妊症に対して治療された30歳を下回る女性の80%)は、高AMH(つまり、≧15pmol/LのAMH)を有する。これらの対象に関しては、一般的に、平均9~11個の卵母細胞を回収することがかなり直接的であり;刺激プロトコールに関する問題はOHSSの危険性である。本出願人らは、低用量のフォリトロピンデルタを投薬された患者において、回収される卵母細胞と対象の体重との間に関係性があることを見い出した。これは、固定用量のFSHを用いた治療(当技術分野において通常である)に伴う危険性があり得ることを意味する。本出願人らは、公知の治療プロトコールと比較して許容されるまたは改善された卵母細胞回収を有する改善された安全性プロファイル(OHSSの危険性の低下)を提供する、FSHの用量とAMHレベルと対象の重量との間の関係性を確立した。
【0021】
REKOVELLEの用法用量は、各患者に対して個別化され、望ましい安全性/有効性プロファイルを伴う卵巣応答を獲得することを目指す、すなわち回収される卵母細胞の十分な数を達成することおよび卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を防ぐ介入を低下させることを目指す。REKOVELLEはマイクログラムで投薬される。
【0022】
最初の治療サイクルに関して、個々の1日用量は、女性の血清抗ミュラー管ホルモン(AMH)濃度および彼女の体重に基づいて決定される。用量は、Roche製の以下の診断テスト:ELECSYS AMH Plusイムノアッセイによって測定されたAMHの最近の判定(すなわち、過去12ヶ月以内)に基づくべきである。個々の1日用量は、刺激期間を通じて維持されるべきである。
【0023】
AMH<15pmol/Lを有する女性に関して、REKOVELLEの1日用量は、体重に関係なく12マイクログラムである。
【0024】
AMH≧15pmol/Lを有する女性に関して、REKOVELLEの1日用量は、増加するAMH濃度によって0.19から0.10マイクログラム/kgに減少する(表1、下記)。
【0025】
用量は、注射ペンの投薬目盛に合わせるために、四捨五入して0.33マイクログラムまでの概数にされるべきである。最初の治療サイクルに対する最大1日用量は12マイクログラムである。REKOVELLE用量の算出に関して、体重は、刺激の開始直前に、靴およびオーバーコートなしで測定されるべきである。
【0026】
【表1】
【0027】
AMH濃度は、pmol/Lで表現されるべきであり、かつ四捨五入して整数にされるべきである。AMH濃度がng/mLである場合、濃度は、使用前に7.14を掛けることによってpmol/L(ng/mL×7.14=pmol/L)に変換されるべきである。
【0028】
REKOVELLEを用いた治療は、月経出血の開始後2または3日目に開始されかつ十分な卵胞発育(≧3個の卵胞≧17mm)が達成されるまで継続されるべきであり、それは平均で治療の9日目までである(5~20日間に及ぶ)。250マイクログラムの組換えヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)または5,000IUのhCGの単回注射を施して、最終卵胞成熟を誘発する。過度の卵胞発育(≧25個の卵胞≧12mm)を有する患者において、REKOVELLEを用いた治療は停止されるべきであり、hCGを用いた最終卵胞成熟の誘引は実施されるべきではない。
【0029】
後続の治療サイクルに関して、REKOVELLEの1日用量は、前のサイクルにおける患者の卵巣応答に従って維持されるまたは修正されるべきである。患者が、OHSSを発症せずに前のサイクルにおいて十分な卵巣応答を有した場合、同じ1日用量が用いられるべきである。前のサイクルにおいて卵巣低応答の場合、後続のサイクルにおける1日用量は、観察された応答の程度に従って25%または50%増加されるべきである。前のサイクルにおいて卵巣過剰応答の場合、後続のサイクルにおける1日用量は、観察された応答の程度に従って20%または33%減少されるべきである。前のサイクルにおいてOHSSを発症したまたはOHSSの危険性があった患者では、後続のサイクルに対する1日用量は、OHSSまたはOHSSの危険性が生じたサイクルの用量よりも33%下回る。最大1日用量は24マイクログラムである。
【0030】
女性の血清AMHおよび体重に基づくFE999049個別化投薬レジメンの有効性および安全性は、欧州、北米、および中南米を含めた11ヶ国において行われた大規模な第3相試験ESTHER-1(欧州および世界の他の国々における、証拠に基づくヒトrFSHを用いた刺激試験(Evidence based Stimulation Trial with Human rFSH in Europe and Rest of World))において確認されている。ESTHER-1試験は、以下の治療:1
)刺激を通じて固定された1日用量を用いたその個別化投薬レジメンにおけるFE999049、または2)150IU/日の標準的開始用量での、その後に刺激の間の対象の卵胞応答に基づく用量調整が続く、認可されたCHO由来rFSH生成物(フォリトロピンアルファ、GONAL-F)、のうちの一方を用いた調節卵巣刺激に1:1に無作為化された1,326人のIVF/ICSI患者において行われた。その個別化投薬レジメンにおけるFE999049は、進行中の妊娠率(30.7%対31.6%)および進行中の着床率(35.2%対35.8%)に関して、フォリトロピンアルファよりも劣っていないと実証された。集団全体に関して、FE999049に対して10.0およびフォリトロピンアルファに対して10.4という平均を有して、回収される卵母細胞の数の観点において治療群の間に統計的に有意な差はなかった。それにもかかわらず、フォリトロピンアルファと比較した個別化FE999049投薬レジメンは、8.0対7.0という平均を有して、AMH<15pmol/Lを有する患者(低応答の危険性がある集団)の間で統計的に有意により多くの回収される卵母細胞、および11.6対13.3という平均を有して、AMH≧15pmol/Lを有する患者(過剰応答の危険性がある集団)の間で統計的に有意により少ない卵母細胞につながった。FE999049療法を用いた卵巣応答のこの推移についての即時の臨床的関連性は、フォリトロピンアルファと比較して、極端な卵巣応答を有する統計的に有意により少ない患者として、すなわち、AMH<15pmol/Lを有する患者の間で<4個の卵母細胞(12%対18%)、およびAMH≧15pmol/Lを有する患者の間で≧15個または≧20個の卵母細胞(28%対35%、および10%対16%)として実現された。FE999049に対して8~14個の卵母細胞として規定される適当な卵巣応答を有する患者のパーセンテージは、フォリトロピンアルファと比較して、FE999049を用いて治療された統計的に有意により多くの患者によって到達された、すなわち、FE999049に対する固定用量の個別化投薬レジメンとは対照的に、フォリトロピンアルファ群における患者の37%に対する刺激の間の用量調整の遂行にもかかわらず、43%対38%。CHO由来rFSH生成物群と比較して、FE999049群における統計的に有意により低い総ゴナドトロピン用量が観察され、それぞれ90μgおよび104μgの平均を有した。
【0031】
ゴナドトロピン治療に伴う最も深刻な危険性は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)である。全体として、ESTHER-1第3相試験において、FE999049サイクルの4.4%およびフォリトロピンアルファサイクルの6.5%において、OHSSおよび/または早期OHSSの予防的介入が生じた。中程度/重度のOHSSおよび/または早期OHSSに対する予防的介入は、FE999049およびフォリトロピンアルファを用いた治療サイクルのそれぞれ3.3%および5.6%の発生率で観察された。
【0032】
以前の調査により、日本人患者における5%~28.3%のOHSS率が報告されている。日本におけるFE999049第2相試験において、中程度/重度の早期OHSSの発生率は、FOLLISTIM群における対象に対して19.5%であった。OHSS発生率報告のばらつきにもかかわらず、日本人IVF/ICSI患者における高いOHSS発生率は、より安全なOHSSプロファイルを有する治療選択肢の日本における明確な必要性を示している。ESTHER-1第3相試験における1,300サイクルを上回る数に基づき、FE999049の個別化投薬レジメンは、CHO由来rFSH生成物の標準的レジメンと比較して、早期OHSSおよび/または早期OHSSに対する予防的介入を有する対象の割合の統計的に有意な低下と関連付けられ、FE999049群における4.7%およびフォリトロピンアルファ群における6.2%の発生率を有した。
【0033】
多くのアジア集団(例えば、日本、中国、韓国、およびインド)において、多くの女性は、米国および西欧における女性と比較して低い体重を有する。それゆえ、欧州における一般的集団に適した固定用量をアジア人/日本人患者に投与することは、これらのより軽量な患者が、用量/kg体重の観点からあまりにも高い用量のFSHを受けることにつな
がり得る危険性がある。これは今度は、これらの患者における過剰応答およびOHSSの危険性につながり得る。伝統的な「固定用量」FSHプロトコールは、日本における報告されるいくらか高いOHSS率の要因であり得る。
【0034】
患者は体重によって投薬されるため、表Aに示された用量プロトコールは、この危険性を軽減するのをいくらか助ける。しかしながら、非常に低用量のゴナドトロピンは、不十分な卵胞誘導および卵巣応答の不良と潜在的に関連している。それゆえ、表Aのプロトコールに従った投薬は、高AMHを有する非常に軽量な患者が、有効性の視点から準最適であり得る用量のFSHを受けることにつながり得る危険性がある。それゆえ、これらの患者(彼らは高AMHおよび低体重を有するため、この危険性に陥る傾向がより高くあり得る)における過剰刺激およびOHSSの危険性を低下させると同時に、高AMHを有するより軽量な患者(重量<60kg)の効果的な投薬の必要性がある。
【0035】
本出願人らは、(AMHおよび体重に基づき)表Aに示された個別化FE999049投薬レジメンに従って<6μgのFE999049を受けているであろうが、実際には無作為化どおりに6μgのFE999049または150IUのFOLLISTIMのいずれかを受けた、上述の日本の第2相試験(下記の実施例2も参照されたい)における患者を同定した。これは、患者のごく限られた数のみであった(6μgのFE999049群における5人の患者、および150IUのFOLLISTIM群における3人の患者)。驚くべきことに、15個の卵母細胞またはそれを上回る数の卵巣応答は、6μgのFE999049群における5人の患者のいずれにおいても観察されなかったが、150IUのFOLLISTIM群における3人中2人の患者(66.7%)において観察された。また驚くべきことに、GnRHアゴニストによる誘引を要求する過度の卵胞発育は、6μgのFE999049群における5人の患者のいずれにおいても観察されなかったが、150IUのFOLLISTIM群における3人中1人の患者(33.3%)において観察された。早期OHSSは、6μgのFE999049群における5人中1人の患者(20.0%)に対して、および150IUのFOLLISTIM群における3人中1人の患者(33.3%)に対して報告された。これらのデータは、体重<60kgおよびAMH≧15pmol/Lを有するそうした患者を含めた、日本人IVF/ICSI患者における6μgのFE999049の安全でかつ有効な使用を支持する。
【0036】
本出願人らは、低体重を有する日本人患者の過少量投薬を回避することを意図して、日本人集団におけるより低い体重を説明する6μgという最小用量を特定し、それによってこれらの患者における有効性を維持し、同時にOHSSなどの副作用を回避することが可能であることを驚くべきことに見い出した。この技術的効果は、任意のアジア集団、または実際には、患者の民族的背景に関係なく、低体重および高AMHを有する患者を含む任意の集団に適用されると解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明によれば、第一の態様において、6~8μgの組換えFSHの1日用量またはそれと同等の1日用量を含む、AMH≧15pmol/L(例えばAMH≧16pmol/L、例えばAMH≧19pmol/L、例えばAMH≧26pmol/L、例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧40pmol/L)および体重<60kgを有する患者(例えば、女性患者)における不妊症の治療における使用のための組成物(例えば、医薬組成物)が提供される。好ましくは、組成物は、6~8μgの組換えFSHの1日用量を含む。より好ましくは、組成物は、6μgの組換えFSHの1日用量を含む。
【0038】
不妊症の治療は、患者の血清AMHレベルおよび体重を判定するステップ(または複数のステップ)を含み得る。不妊症の治療は、規定された血清AMHレベルおよび体重を有する患者に投薬を施すステップを含み得る。例えば、不妊症の治療は、患者の血清AMH
レベルおよび体重を判定するステップ(または複数のステップ)、ならびにAMH≧15pmol/L(例えばAMH≧16pmol/L、例えばAMH≧19pmol/L、例えばAMH≧26pmol/L、例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧40pmol/L)および体重<60kg[例えば体重<55kg、例えば<52kg、例えば<50kg、例えば<45kg]を有する患者に投薬を施すステップを含み得る。
【0039】
患者の血清AMHレベルを判定するステップは、投薬が患者に最初に施される最高で12ヶ月前に行われ得る。好ましくは、患者の血清AMHレベルは、ELECSYS AMH Plusイムノアッセイ(Roche、Switzerlandから入手可能、www.roche.comを参照されたい)によって判定される(測定される)。患者の体重を判定するステップは、投薬が患者に最初に施される直前(例えば、0~2日前)に行われ得る。患者の体重を判定するステップは、周知であるように、体重計を用い得る。
【0040】
組成物(例えば、医薬組成物)は、体重<59kg、例えば<56kg、例えば<55kg、例えば<52kg、例えば<50kg、例えば<45kg、例えば<42kg、例えば<31.5kgを有する患者における不妊症の治療のための使用のためのものであり得る。組成物(例えば、医薬組成物)は、40~59.9kgの体重を有する患者における不妊症の治療のための、例えば45~55kgの体重を有する患者における不妊症の治療のための使用のためのものであり得る。組成物は、AMH≧16pmol/L、例えばAMH≧19pmol/L、例えばAMH≧26pmol/L、例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧30pmol/L、例えばAMH≧40pmol/Lを有する患者における不妊症の治療のための使用のためのものであり得る。
【0041】
好ましくは、組成物(例えば、医薬組成物)は、体重<52kg(例えば<50kg、例えば<45kg)を有し、かつAMH≧26pmol/L(例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧30pmol/L、例えばAMH≧40pmol/L)を有する患者における不妊症の治療のための使用のためのものである。この例において、不妊症の治療は、患者の血清AMHレベルおよび体重を判定するステップ、ならびにAMH≧26pmol/Lおよび体重<52kgを有する患者に投薬を施すステップを含み得る。
【0042】
本発明によれば、さらなる態様において、6~8μgの組換えFSHの1日用量またはそれと同等の1日用量を含む、AMH≧15pmol/L(例えばAMH≧16pmol/L、例えばAMH≧19pmol/L、例えばAMH≧26pmol/L、例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧40pmol/L)を有すると(治療前に)同定され、かつ体重<60kgを有すると(治療前に)同定された患者(例えば、女性患者)における不妊症の治療における使用のための組成物(例えば、医薬組成物)が提供される。好ましくは、組成物は、6~8μgの組換えFSHの1日用量を含む。より好ましくは、組成物は、6μgの組換えFSHの1日用量を含む。
【0043】
不妊症の治療は、患者の血清AMHレベルおよび体重に基づいて(治療前に)患者を同定するステップを含み得る。不妊症の治療は、規定された血清AMHレベルおよび体重を有すると同定された患者に投薬を施すステップを含み得る。例えば、不妊症の治療は、患者の血清AMHレベルおよび体重に基づいて(治療前に)患者を同定するステップ、ならびにAMH≧15pmol/L(例えばAMH≧16pmol/L、例えばAMH≧19pmol/L、例えばAMH≧26pmol/L、例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧40pmol/L)を有すると(治療前に)同定され、かつ体重<60kg[例えば体重<55kg、例えば<52kg、例えば<50kg、例えば<45kg]を有すると(治療前に)同定された患者に投薬を施すステップを含み得る。
【0044】
患者の血清AMHレベルおよび体重に基づいて(治療前に)患者を同定するステップは
、投薬が患者に最初に施される直前(例えば、0~2日前)に行われ得る。患者を同定するステップは、以前に判定された血清AMHレベル(例えば、投薬が患者に最初に施される最高で12ヶ月前に判定された血清AMHレベル)に基づき得る。好ましくは、患者の血清AMHレベルは、ELECSYS AMH Plusイムノアッセイ(Roche、Switzerlandから入手可能、www.roche.comを参照されたい)によって判定される(測定される)。患者を同定するステップは、投薬が患者に最初に施される直前(例えば、0~2日前)に判定された患者の体重に基づき得る。患者の体重を判定するステップは、周知であるように、体重計を用い得る。
【0045】
組成物(例えば、医薬組成物)は、体重<59kg、例えば<56kg、例えば<55kg、例えば<52kg、例えば<50kg、例えば<45kg、例えば<42kg、例えば<31.5kgを有すると(治療前に)同定された患者における不妊症の治療のための使用のためのものであり得る。組成物(例えば、医薬組成物)は、40~59.9kgの体重を有すると(治療前に)同定された患者における不妊症の治療のための、例えば45~55kgの体重を有する患者における不妊症の治療のための使用のためのものであり得る。組成物は、AMH≧16pmol/L、例えばAMH≧19pmol/L、例えばAMH≧26pmol/L、例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧30pmol/L、例えばAMH≧40pmol/Lを有すると(治療前に)同定された患者における不妊症の治療のための使用のためのものであり得る。
【0046】
好ましくは、組成物(例えば、医薬組成物)は、体重<52kg(例えば<50kg、例えば<45kg)を有すると(治療前に)同定され、かつAMH≧26pmol/L(例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧30pmol/L、例えばAMH≧40pmol/L)を有すると(治療前に)同定された患者における不妊症の治療のための使用のためのものである。この例において、不妊症の治療は、患者の血清AMHレベルおよび体重に基づいて(治療前に)患者を同定するステップ、ならびにAMH≧26pmol/Lを有すると(治療前に)同定されかつ体重<52kgを有すると(治療前に)同定された患者に投薬を施すステップを含み得る。
【0047】
好ましくは、FSHは組換えFSH(rFSH)である。好ましくは、rFSH(例えば、ヒト細胞株由来組換えFSH)は、α2,3およびα2,6シアリル化を含む。本発明による使用のためのFSH(rFSH)は、α2,3シアリル化である、総シアリル化の1%~99%を有し得る。本発明によるFSH(rFSH)は、α2,6シアリル化である、総シアリル化の1%~99%を有し得る。好ましくは、総シアリル化の80~95%、例えば80~90%、例えば82~89%、例えば85~89%はα2,3シアリル化である。好ましくは、総シアリル化の5~20%、例えば10~20%、例えば11~18%、例えば11~15%はα2,6シアリル化である。シアリル化によって、それは、FSH糖質構造に存在するシアル酸残基の量を意味する。α2,3シアリル化とは2,3位におけるシアリル化(当技術分野において周知であるように)を、α2,6シアリル化とは2,6位におけるシアリル化(また当技術分野において周知である)を意味する。ゆえに、「総シアリル化の%がα2,3シアリル化であり得る」とは、2,3位においてシアリル化されている、FSHに存在するシアル酸残基の総数の%を指す。「α2,6シアリル化である、総シアリル化の%」という用語は、2,6位においてシアリル化されている、FSHに存在するシアル酸残基の総数の%を指す。rFSHは、単一アイソフォームとしてまたはアイソフォームの混合物として存在し得る。
【0048】
組成物は、アジア人患者(例えば、日本人、中国人、朝鮮人、インド人患者、例えば漢、大和、または朝鮮民族の患者)における不妊症の治療のための使用のためのものであり得る。
【0049】
本発明によれば、さらなる態様において、卵胞刺激ホルモン(FSH)、好ましくは組換えFSHを含む、アジア人(例えば、日本人、中国人、朝鮮人、インド人)患者における不妊症の治療のための薬剤であって、≧15pmol/Lの血清AMHレベル(例えばAMH≧16pmol/L、例えばAMH≧19pmol/L、例えばAMH≧28pmol/L)を有すると(治療前に)同定され、かつ60kg未満の体重を有すると(治療前に)同定されたアジア人(例えば、日本人、中国人、朝鮮人、インド人)患者に投与され;6~8μgの組換えFSHの1日用量またはそれと同等の1日用量で投与される薬剤が提供される。好ましくは、1日用量は、6~8μgの組換えFSHである。より好ましくは、1日用量は、6μgの組換えFSHである。
【0050】
不妊症の治療は、患者の血清AMHレベルおよび体重に基づいて(治療前に)患者を同定するステップを含み得る。不妊症の治療は、規定された血清AMHレベルおよび体重を有すると同定された患者に投薬を施すステップを含み得る。例えば、不妊症の治療は、患者の血清AMHレベルおよび体重に基づいて(治療前に)患者を同定するステップ、ならびにAMH≧15pmol/L(例えばAMH≧16pmol/L、例えばAMH≧19pmol/L、例えばAMH≧26pmol/L、例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧40pmol/L)を有すると(治療前に)同定され、かつ体重<60kg[例えば体重<55kg、例えば<52kg、例えば<50kg、例えば<45kg]を有すると(治療前に)同定された患者に投薬を施すステップを含み得る。
【0051】
患者の血清AMHレベルおよび体重に基づいて(治療前に)患者を同定するステップは、投薬が患者に最初に施される直前(例えば、0~2日前)に行われ得る。患者を同定するステップは、以前に判定された血清AMHレベル(例えば、投薬が患者に最初に施される最高で12ヶ月前に判定された血清AMHレベル)に基づき得る。好ましくは、患者の血清AMHレベルは、ELECSYS AMH Plusイムノアッセイ(Roche、Switzerlandから入手可能、www.roche.comを参照されたい)によって判定される(測定される)。患者を同定するステップは、投薬が患者に最初に施される直前(例えば、0~2日前)に判定された患者の体重に基づき得る。患者の体重を判定するステップは、周知であるように、体重計を用い得る。
【0052】
本明細書において、「刺激の初日」とも称される「治療の初日」とは、(例えば、組換え)FSHの投薬が患者に施される最初の日を指す。治療(刺激)の初日は、患者の月経周期の1、2、または3日目、好ましくは2日目または3日目に行われ得る。言い換えれば、治療(刺激)の初日は、当技術分野において周知であるように、患者が月経出血を始めた1、2、または3日後、好ましくは2または3日後であり得る。
【0053】
FSHの投薬は、治療の初日に開始し、2~20日間継続し得る、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日間継続する。FSHの投薬は、治療の初日に開始し、7~13日間、例えば9~13日間、例えば10~13日間、例えば10~11日間継続し得る。FSHの投薬は、上述の1日用量と同等の用量で施され得る。例えば、組成物は、3日ごとに18μgのFSHの用量での投与のため(例えば、1、4、7日目などの投与のため)のものであり得る。
【0054】
組成物(例えば、医薬組成物)または薬剤は、FSHを用いた治療の初日より前に、内因性ゴナドトロピン生成を抑制する(異なる)医薬組成物を用いた患者の事前治療の後(例えば、対象が、ステロイド、GnRHアゴニスト、GnRHアンタゴニスト等を用いて(事前)治療された後)に投与され得る。本明細書において、「事前治療された」または「事前治療」という用語は、FSHおよびhCGを用いた治療の初日より前に、内因性ゴナドトロピン生成を抑制する医薬組成物の投与を指す。これは当技術分野において周知で
ある。ゆえに、組成物(例えば、医薬組成物)または薬剤は、GnRHアゴニスト(例えば、シナレル(Synarel)、リュープロン(Lupron)、デカペプチル(Decapeptyl))の投与の(例えば投与の開始の、例えば連日投与の開始の)12~16、例えば13~15、例えば14日後の投与のためのものであり得る。生成物は、GnRHアゴニストとの投与のためのものであり得る。
【0055】
他の例において、組成物(例えば、医薬組成物)または薬剤は、GnRHアンタゴニスト(例えば、ガニレリクス(ganirelix)、セトロレリクス(cetrorelix))の投与の前の投与のための、例えばGnRHアンタゴニストの投与の5または6日前の投与のためのものであり得る。生成物は、GnRHアンタゴニストとの投与のためのものであり得る。
【0056】
好ましくは、組成物(例えば、医薬組成物)または薬剤は、最終卵胞成熟を誘発する高(排卵)用量のhCG(例えば4,000~11,000IUのhCG、例えば5,000IUのhCG、10,000IUのhCG等;または150~350マイクログラムの組換えhCG、例えば250マイクログラムの組換えhCG)の投与の前の投与のためのものである。
【0057】
上記の用量は、患者の(対象の)最初の刺激プロトコールにおける不妊症の治療のためのものであり得る。さらなる刺激サイクルに関して、用量は、最初のサイクルにおける実際の卵巣応答に従って調整され得ると解されるであろう。
【0058】
本出願人らは、特異的特徴を有する特異的用量の組換えFSHを用いて、患者を彼らの特異的AMHレベルに基づいて治療し、それによって、刺激への十分な応答の可能性を増加させ(例えば、低応答潜在性を有する患者において)、および/またはOHSSの危険性を減少させる(例えば、高応答者または過度応答者として分類される患者において)、「個別化」COSプロトコールを考案した。
【0059】
AMHの血清レベルは、当技術分野において公知の任意の方法によって判定され得る(例えば、測定され得る)。血清AMHレベルは、キットであるAMH Gen-II酵素結合免疫吸着アッセイ(Beckman Coulter,Inc.、Webster、Texas)を用いて測定され得る。このアッセイは、1.1pmol/Lの定量下限を有して0.57pmol/Lよりも大きなAMH濃度を検出し得る。血清AMHレベルは、自動AMH ACCESSアッセイ(Beckman Coulter,Inc.、Webster、Texas)を用いて測定され得る。好ましくは、血清AMHレベルは、Roche Diagnostics製のElecsys(登録商標)AMHアッセイを用いて測定される。他のアッセイを用いてもよい。
【0060】
本明細書において、血清AMH値は、一般的にpmol/Lを単位として記述される。これは、1ng/ml AMH=7.1pmol/L AMHという変換式を用いてng/mLに変換され得る。
【0061】
本明細書において、「患者」および「対象」という用語は互換可能に用いられる。
【0062】
本明細書において、「不妊症の治療」という用語は、調節卵巣刺激(COS)、または調節卵巣刺激(COS)の1つのステップもしくはステージを含む方法、例えば子宮内授精(IUI)、体外受精(IVF)、または卵細胞質内精子注入(ICSI)による不妊症の治療を含む。「不妊症の治療」という用語は、排卵誘発(OI)による、または排卵誘発(OI)の1つのステップもしくはステージを含む方法による不妊症の治療を含む。「不妊症の治療」という用語は、子宮内膜症、例えばステージIもしくはステージII子
宮内膜症を有する対象における、および/または無排卵性不妊症、例えばWHOタイプII無排卵性不妊症を有する対象における、および/または男性要因不妊症を有するパートナーを有する対象における不妊症の治療を含めた、卵管性不妊症または原因不明の不妊症における不妊症の治療を含む。生成物(または組成物)は、子宮内膜症を有する対象における、例えば子宮内膜症の様々なステージに対する米国生殖医学会議(American
Society for Reproductive Medicine)(ASRM)分類システムによって定義されるステージIまたはステージII子宮内膜症を有する対象における(ステージIV最も重度;ステージI最も軽度)[American Society for Reproductive Medicine.Revised American Society for Reproductive Medicine classification of endometriosis:1996.Fertil Steril 1997;67、817 821.]、不妊症の治療(および/または調節卵巣刺激)のための(における使用のための)ものであり得る。
【0063】
組成物または薬剤は、卵胞期初期に1~16IU/L、例えば1~12IU/Lの正常な血清FSHレベルを有する対象における不妊症の治療(および/または調節卵巣刺激)のための(における使用のための)ものであり得る。
【0064】
組成物または薬剤は、18~42歳、例えば25~37歳の対象における不妊症の治療(および/または調節卵巣刺激)のための(における使用のための)ものであり得る。生成物は、BMI>1かつBMI<35kg/mを有する対象、例えばBMI>18かつBMI<25kg/mを有する対象、例えばBMI>20かつBMI<25kg/mを有する対象における不妊症の治療(および/または調節卵巣刺激)のための(における使用のための)ものであり得る。
【0065】
rFSHは、ヒト細胞株、例えばPer.C6細胞株、HEK293細胞株、HT1080細胞株等において生成され得るまたは発現され得る。これは、シアリル化を保持するための例えば細胞成長培地の取扱いおよび制御が公知の工程に関してよりも重大性が低くあり得るため、生成方法を簡略化し得る(かつ、より効率的にし得る)。方法は、公知のrFSH生成物の生成と比較して、生成される塩基性rFSHがほとんどないためより効率的でもあり得;より多くの酸性rFSHが生成され、塩基性FSHの分離/除去は問題となることが少ない。rFSHは、PER.C6(登録商標)細胞株、PER.C6(登録商標)由来細胞株、または改変PER.C6(登録商標)細胞株において生成され得るまたは発現され得る。ヒト細胞株(例えば、PER.C6(登録商標)細胞株、HEK293細胞株、HT1080細胞株等)において生成されるまたは発現されるrFSHは、[細胞株の]内因性シアリルトランスフェラーゼ活性によって提供されるいくらかのα2,6結合シアル酸(α2,6シアリル化)を含むと考えられ、かつ内因性シアリルトランスフェラーゼ活性によって提供されるいくらかのα2,3結合シアル酸(α2,3シアリル化)を含むと考えられる。細胞株は、α2,3-シアリルトランスフェラーゼを用いて修飾され得る。細胞株は、α2,6-シアリルトランスフェラーゼを用いて修飾され得る。あるいはまたは加えて、rFSHは、[細胞株の]内因性シアリルトランスフェラーゼ活性によって提供されるα2,6結合シアル酸(α2,6シアリル化)を含み得る。本明細書において、「ヒト由来組換えFSH」という用語は、ヒト細胞株において生成されるまたは発現される組換えFSH(例えば、ヒト細胞株を操作することによって作製された組換えFSH)を意味する。
【0066】
rFSHは、α2,3-および/またはα2,6-シアリルトランスフェラーゼを用いて生成され得る。例では、rFSHは、α2,3-シアリルトランスフェラーゼを用いて生成される。rFSHは、内因性シアリルトランスフェラーゼ活性によって提供されるα2,6結合シアル酸(α2,6シアリル化)を含み得る。
【0067】
組成物は医薬組成物であり得る。医薬組成物は不妊症の治療のためのものである。不妊症の治療は、生殖補助医療(ART)、排卵誘発、または子宮内授精(IUI)を含み得る。医薬組成物は、例えば、公知のFSH調製物が用いられる医学的適応症において用いられ得る。
【0068】
組成物または薬剤は、薬物投与の任意の経路、例えば経口、直腸、非経口、経皮(例えば、パッチ技術)、静脈内、筋肉内、皮下、嚢内(intrasusternal)、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、または点滴)のためのまたは口腔用もしくは鼻腔用スプレーとしての、周知の組成物に製剤化され得る。典型的な組成物は、他の中でもとりわけ、Remington’s Pharmaceutical Sciences第15編(Matt Publishing Company、1975)、1405~1412および1461~87ページ、ならびに国民医薬品集XIV第14編(American
Pharmaceutical Association、1975)に記載される、塩および防腐剤、バッファー等を含めた水溶液、非毒性の賦形剤など、薬学的に許容される担体を含む。
【0069】
適切な水性および非水性の薬学的な担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロースおよびその適切な混合物、植物油(オリーブ油など)、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。本発明の組成物または薬剤は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、界面活性剤、および分散剤などであるがそれらに限定されない添加物も含有し得る。抗細菌剤および抗真菌剤が微生物の成長を防ぐために含まれ得、例えばm-クレゾール、ベンジルアルコール、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等を含む。防腐剤が含まれる場合、ベンジルアルコール、フェノール、および/またはm-クレゾールが好ましく;しかしながら、防腐剤は、決してこれらの例に限定されるわけではない。さらに、糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが望ましくあり得る。
【0070】
組成物または薬剤は、NaもしくはK塩、またはその組み合わせからなる群より選択される薬学的に許容されるアルカリ金属カチオンを含む塩をさらに含み得る。好ましくは、塩はNa塩、例えばNaClまたはNaSOである。
【0071】
好ましくは、組成物または薬剤は、組換えFSH、ならびにポリソルベート20、L-メチオニン、フェノール、硫酸二ナトリウム、およびリン酸ナトリウムバッファーのうちの1つまたは複数を含む。
【0072】
ある場合には、持続的作用をもたらすために、皮下または筋肉内注射からのFSH(および、存在する場合には他の活性成分)の吸収を遅らせることが望ましい。これは、難水溶性を有する結晶性または非晶質材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。次いで、FSHの吸収の速度は、その溶解の速度に依存し、それは今度は結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口的に投与されたFSH組み合わせ形態の遅延性吸収は、油ビヒクル中にFSH組み合わせを溶解するまたは懸濁することによって達成される。注射可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中にFSH(および、存在する場合には他の物質)のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製され得る。FSH対ポリマーの比率および採用される特定のポリマーの性質に依存して、FSH放出の速度は制御され得る。他の生分解性ポリマーの例には、ポリビニルピロリドン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物)等が含まれる。注射可能なデポー製剤は、生体組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルション中にFSHを封入することによっても調製される。
【0073】
注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通した濾過によって、または使用直前に滅菌水もしくは他の注射可能な滅菌媒体中に溶解され得るもしくは分散され得る滅菌固形組成物の形態に滅菌剤を組み込むことによって滅菌され得る。注射可能な製剤は、任意の適切な容器、例えばバイアル、プレフィルドシリンジ、注射カートリッジ等で供給され得る。
【0074】
組成物または薬剤は、単回使用のためにまたは複数回使用(複数回投薬)のために製剤化され得る。組成物または薬剤が複数回使用のために製剤化される場合、防腐剤が含まれることが好ましい。防腐剤が含まれる場合、ベンジルアルコール、フェノール、および/またはm-クレゾールが好ましく;しかしながら、防腐剤は、決してこれらの例に限定されるわけではない。単回使用または複数回使用に製剤化された組成物または薬剤は、NaもしくはK塩、またはその組み合わせからなる群より選択される薬学的に許容されるアルカリ金属カチオンを含む塩をさらに含み得る。好ましくは、塩はNa塩、例えばNaClまたはNaSOである。
【0075】
組成物または薬剤は、バイアル、プレフィルドカートリッジ(例えば、単回投与または複数回使用のための)などの容器中、または例えば複数回投薬を施すための「ペン」などの注射器具中に含まれ得る。
【0076】
組成物または薬剤は、FSH(任意で、hCG、LH、LH活性等とともに)を含む製剤(例えば、注射可能な製剤)であり得る。LH活性は、存在する場合、LHまたはヒト絨毛性ゴナドトロピンhCGに由来し得る。1種を上回る種類の活性成分(すなわち、FSHおよび例えばhCGまたはLH)がある場合、これらは、別個でのまたは一緒での投与に適切であり得る。別個に投与される場合、投与は逐次的であり得る。組成物または薬剤は、任意の適当なパッケージで供給され得る。例えば、組成物または薬剤は、FSHもしくはhCGのいずれか、またはFSHおよびhCGの両方の組み合わせ(または組み合わせ)を含有するいくつかの容器(例えば、プレフィルドシリンジまたはバイアル)を含み得る。hCGは、組換えhCGまたは尿hCGであり得る。組成物または薬剤が、FSH、例えば組換えFSHを含有するいくつかの容器(例えば、プレフィルドシリンジまたはバイアル)を含む場合、各容器は同じ量のFSHを含み得る。1つまたは複数の容器は、異なる量のFSHを含み得る。シリンジまたはバイアルは、ブリスターパッケージまたは無菌性を維持する他の手段にパッケージされ得る。どの組成物または薬剤も、FSH(および、存在する場合には例えばhCG)製剤を用いるための取扱説明書を任意で含有し得る。医薬組成物の様々な構成要素のpHおよび正確な濃度は、この分野におけるルーチン的実践に従って調整される。GOODMANおよびGILMAN’s THE PHARMACOLOGICAL BASIS FOR THERAPEUTICES、第7編を参照されたい。好ましい実施形態において、本発明の組成物または薬剤は、非経口投与のための組成物として供給される。非経口製剤の調製のための一般的方法は、当技術分野において公知であり、REMINGTON;THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY、前出、780~820ページに記載されている。非経口組成物は、液体製剤で、または投与の直前に注射可能な無菌媒体と混合される固体として供給され得る。とりわけ好ましい実施形態において、非経口組成物は、投与および投薬量の均一性を容易にするために単位剤形で供給される。
【0077】
本発明によれば、さらなる態様において、AMH≧15pmol/L(例えばAMH≧16pmol/L、例えばAMH≧19pmol/L、例えばAMH≧26pmol/L、例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧40pmol/L)、および体重<60kg[例えば体重<55kg、例えば<52kg、例えば<50kg、例えば<45kg、例えば<42kg、例えば<31.5kg]を有する患者(例えば、女性患者)に
、6~8μgの組換えFSHの1日用量またはそれと同等の1日用量を投与するステップを含む、不妊症の治療の方法が提供される。好ましくは、1日用量は、6~8μgの組換えFSHである。より好ましくは、1日用量は、6μgの組換えFSHである。
【0078】
方法は、患者の血清AMHレベルおよび体重を判定するステップを含み得る。方法は、規定された血清AMHレベルおよび体重を有する患者に投薬を施すステップを含み得る。例えば、方法は、患者の血清AMHレベルおよび体重を判定するステップ、ならびにAMH≧15pmol/L(例えばAMH≧16pmol/L、例えばAMH≧19pmol/L、例えばAMH≧26pmol/L、例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧40pmol/L)および体重<60kg(例えば体重<55kg、例えば<52kg、例えば<50kg、例えば<45kg、例えば<42kg、例えば<31.5kg)を有する患者に投薬を施すステップを含み得る。
【0079】
本発明によれば、さらなる態様において、AMH≧15pmol/L(例えばAMH≧16pmol/L、例えばAMH≧19pmol/L、例えばAMH≧26pmol/L、例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧40pmol/L)を有すると(治療前に)同定され、かつ体重<60kg(例えば体重<55kg、例えば<52kg、例えば<50kg、例えば<45kg)を有すると(治療前に)同定された患者(例えば、女性患者)に、6~8μgの組換えFSHの1日用量またはそれと同等の1日用量を投与するステップを含む、不妊症の治療の方法が提供される。好ましくは、1日用量は、6~8μgの組換えFSHである。より好ましくは、1日用量は、6μgの組換えFSHである。
【0080】
方法は、患者の血清AMHレベルおよび体重に基づいて(治療前に)患者を同定するステップを含み得る。方法は、規定された血清AMHレベルおよび体重を有すると同定された患者に投薬を施すステップを含み得る。例えば、方法は、患者の血清AMHレベルおよび体重に基づいて(治療前に)患者を同定するステップ、ならびにAMH≧15pmol/L(例えばAMH≧16pmol/L、例えばAMH≧19pmol/L、例えばAMH≧26pmol/L、例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧40pmol/L)を有すると(治療前に)同定され、かつ体重<60kg[例えば体重<55kg、例えば<52kg、例えば<50kg、例えば<45kg]を有すると(治療前に)同定された患者に投薬を施すステップを含み得る。
【0081】
方法は、アジア人(例えば、日本人、中国人、朝鮮人、インド人)患者における不妊症の治療のための使用のためのものであり得る。
【0082】
好ましくは、患者は、体重<52kg(例えば<50kg、例えば<45kg)を有し(有すると同定されており)、かつAMH≧26pmol/L(例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧30pmol/L、例えばAMH≧40pmol/L)を有する(有すると同定されている)。
【0083】
好ましくは、FSHは組換えFSH(rFSH)である。好ましくは、rFSH(例えば、ヒト細胞株由来組換えFSH)は、α2,3およびα2,6シアリル化を含む。本発明による使用のためのFSH(rFSH)は、α2,3シアリル化である、総シアリル化の1%~99%を有し得る。本発明によるFSH(rFSH)は、α2,6シアリル化である、総シアリル化の1%~99%を有し得る。好ましくは、総シアリル化の80~95%、例えば80~90%、例えば82~89%、例えば85~89%はα2,3シアリル化である。好ましくは、総シアリル化の5~20%、例えば10~20%、例えば11~18%、例えば11~15%はα2,6シアリル化である。シアリル化によって、それは、FSH糖質構造に存在するシアル酸残基の量を意味する。α2,3シアリル化とは2,
3位におけるシアリル化(当技術分野において周知であるように)を、α2,6シアリル化とは2,6位におけるシアリル化(また当技術分野において周知である)を意味する。ゆえに、「総シアリル化の%がα2,3シアリル化であり得る」とは、2,3位においてシアリル化されている、FSHに存在するシアル酸残基の総数の%を指す。「α2,6シアリル化である、総シアリル化の%」という用語は、2,6位においてシアリル化されている、FSHに存在するシアル酸残基の総数の%を指す。rFSHは、単一アイソフォームとしてまたはアイソフォームの混合物として存在し得る。
【0084】
本発明によれば、一態様において、6~8μgの組換えFSHの1日用量を含む、AMH≧26pmol/Lおよび体重<52kgを有する患者における不妊症の治療における使用のための組成物が提供される。好ましくは、患者は、体重<52kg(例えば<50kg、例えば<45kg)を有し(有すると同定されており)、かつAMH≧26pmol/L(例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧30pmol/L、例えばAMH≧40pmol/L)を有する(有すると同定されている)。
【0085】
本発明によれば、別の態様において、6~8μgの組換えFSHの1日用量またはそれと同等の1日用量を含む、AMH≧26pmol/Lおよび体重<61kgを有する患者における不妊症の治療における使用のための組成物が提供される。好ましくは、患者は、体重<52kg(例えば<50kg、例えば<45kg)を有し(有すると同定されており)、かつAMH≧26pmol/L(例えばAMH≧28pmol/L、例えばAMH≧30pmol/L、例えばAMH≧40pmol/L)を有する(有すると同定されている)。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1図1は、患者の体重およびAMHレベルを示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
発明の詳細な説明
本発明は、以下の実施例、ならびに実施例3の回顧的分析において考察される日本の第II相臨床試験における全患者の体重およびAMHを提示し、上記の表Aに示された用量プロトコールが、<6μgのRekovelle(登録商標)(diamonds)または≧6μgのRekovelleの用量を特定するかどうかを示す図1を参照して、ここでより詳細に記載される。
【実施例
【0088】
(実施例1)
【0089】
Rekovelle
Rekovelle(登録商標)は、WO2013/020996およびWO2009/127826Aに開示される方法によって操作されたPER.C6(登録商標)細胞株において発現された組換えFSHである。
【0090】
Rekovelle(登録商標)に対する販売承認取得者は、Ferring Pharmaceuticals A/S、Kay Fiskers Plads 11、2300 Copenhagen S、Denmarkであり、それは、英国においてFerring Pharmaceuticals、Drayton Hall、Church
Road、West Drayton、UB7 7PS、UKから入手可能である。
【0091】
Rekovelle(登録商標)中の活性物質はフォリトロピンデルタ(FE999049)である。Rekovelleは高度にシアリル化されており、α2,3およびα2
,6シアリル化を含み、総シアリル化の約85%~90%がα2,3シアリル化であり、総シアリル化の約10%~15%がα2,6シアリル化である。
【0092】
REKOVELLEは、注射用の透明でかつ無色の溶液(注射液)である。それは、1個のカートリッジおよび3個のペン型注射針のパックで入手可能である。各複数回投薬カートリッジは、0.36ミリリットルの溶液中に12マイクログラムのフォリトロピンデルタを含有する。1ミリリットルの溶液は、各ミリリットルの溶液中に33.3マイクログラムのフォリトロピンデルタを含有する。他の成分は、フェノール、ポリソルベート20、L-メチオニン、硫酸ナトリウム十水和物、第二リン酸ナトリウム・12水和物、濃リン酸、水酸化ナトリウム、および注射用水である。
(実施例2)
【0093】
フォリトロピンデルタを用いた調節卵巣刺激を受けている日本人IVF/ICSI患者における、無作為化、評価者盲検、(AMH)階層化、用量応答試験
IVF/ICSI患者における、無作為化、調節、評価者盲検、並行群対照、多施設の第2相抗ミュラー管ホルモン(AMH)階層化試験が、FE999049と回収される卵母細胞の数との用量応答関係性を判定する目的で、日本において行われた。無作為化は、スクリーニング時のAMHレベルに従って階層化された;低AMH(5.0~14.9pmol/L)または高AMH(15.0~44.9pmol/L)。
【0094】
20~39歳(平均年齢33.7歳)の158人の患者が、フォリトロピンデルタであるFE999049(Ferring Pharmaceuticals)の3つの用量レベルを用いたCOSを受けた。FE999049の用量は、6μg/日、9μg/日、および12μg/日であり、認可されたrFSH生成物の標準療法(FOLLISTIM、MSD、150IU/日)も対照として含まれた。現在のところ、フォリトロピンベータ(FOLLISTIM)は、IVF/ICSIサイクルにおける調節卵巣刺激のための日本において認可された唯一の医療製品である。
【0095】
患者を、6μg/日、9μg/日、および12μg/日のFE999049(n=117)または150IUのフォリトロピンベータ(n=41)の固定用量に無作為化した。無作為化は、AMHレベル[低AMH=5.0~14.9pmol/L;高AMH=15.0~44.9pmol/L;Elecsys(登録商標)AMH、Roche Diagnostics]に従って階層化された。ゴナドトロピンは、月経周期の2~3日目に開始された。ガンレリクス(Ganrelix)0.25mg/日を、刺激の6日目から添加し、最終卵胞成熟の誘引を、直径≧17mmを有する≧3個の卵胞が観察された当日に行った。OHSSをGolan分類を用いて評価した。
【0096】
1日用量は刺激期間を通じて固定された。回収される卵母細胞の数に対するFE999049についての統計的に有意な用量応答関係性が、集団全体に対しておよび各AMH無作為化階層に対して観察された。許容される妊娠率が、全FE999049用量に関して達成された。
【0097】
患者はこの試験では体重によって投薬されず、患者は6μg/日を下回る用量のFE999049を受けなかった。この試験における患者は、治療前に、AMHおよび体重の組み合わせによって同定されなかった。
(実施例3)
【0098】
第II相試験の回顧分析
多くのアジア諸国(例えば、日本、中国、韓国、およびインド)において、多くの女性は、米国および西欧における女性と比較して低い体重を有する。それゆえ、欧州における
一般的集団に適した固定用量をアジア人/日本人患者に投与することは、低体重の患者が、用量/kg体重の観点から高い用量のFSHを受けることにつながり得る危険性がある。これは今度は、これらの患者における過剰応答およびOHSSの危険性につながり得る。伝統的な「固定用量」FSHプロトコールは、日本の調査における報告されるいくらか高いOHSS率の要因であり得る。
【0099】
患者は体重によって投薬されるため、上記の表Aに示された用量プロトコールは、この危険性を軽減するのをいくらか助ける。しかしながら、非常に低用量のゴナドトロピンは、不十分な卵胞誘導および卵巣応答の不良と潜在的に関連している。それゆえ、表Aのプロトコールに従った投薬は、高AMHを有する非常に軽量な患者が、有効性の視点から準最適であり得る用量のFSHを受けることにつながり得る危険性がある。それゆえ、これらの患者(彼らは高AMHおよび低体重を有するため、この危険性に陥る傾向がより高くあり得る)における過剰刺激およびOHSSの危険性を低下させると同時に、高AMHを有するより軽量な患者(重量<60kg)の効果的な投薬の必要性がある。
【0100】
日本の第2相試験において全体として、6μgのFE999049用量に関して安全性懸念はなかった。体重<60kgを有する、日本の第2相試験における患者の安全性プロファイルが回顧的に検討されている。6μgのFE999049群における観察結果に対する背景として、FOLLISTIMを用いた参照療法群からのデータも呈示される。表1は、卵巣応答に関連した安全性パラメーターを呈示している。
【0101】
【表2】
【0102】
体重<60kgを有する患者の間で、早期OHSSを有する患者の総数は、6μgのFE999049群において4人(13.8%)および150IUのFOLLISTIM群において8人(24.2%)であった。中程度/重度の早期OHSSは、6μgのFE999049および150IUのFOLLISTIM群において、それぞれ3人(10.3%)の患者および7人(21.2%)の患者に対して報告された。さらに、8~14個の卵母細胞という適当な応答を上回る卵母細胞産出量は、150IUのFOLLISTIM群における7人(21.2%)の患者とは対照的に、6μgのFE999049群において1人(3.4%)の患者のみに観察された。GnRHアゴニスト誘引が要求される程度までの過度の卵胞発育は、6μgのFE999049群においてどの患者にも観察されなかったが、150IUのFOLLISTIM群において1人の患者に対して生じた。ゆえに、<60kgの重さがある患者における卵巣応答安全性プロファイルは、150IUのFOLLISTIMと比較して、6μgのFE999049に関して改善されるように見える。
【0103】
表1は、AMHレベルとは無関係に、体重<60kgを有する全患者を網羅している。AMH<15pmol/Lを有する全患者は、12μgのFE999049を受けるであろう。それゆえ、患者が<6μgの算出用量を有し得るが6μgを受けるであろう状況は、AMH≧15pmol/Lを有する患者に対してのみ当てはまる。体重<60kgおよびAMH≧15pmol/Lを有した、日本の第2相試験における患者に関するデータが、表2に提示されている。
【0104】
【表3】
【0105】
体重<60kgおよびAMH≧15pmol/Lを有する患者の間で、早期OHSSを有する患者の総数は、6μgのFE999049群において4人(22.2%)および150IUのFOLLISTIM群において7人(31.8%)であった。中程度/重度のOHSSは、早期OHSS症例の間で最もよく見られる重症度であり、6μgのFE999049群において3人(16.7%)の患者および150IUのFOLLISTIM群において6人(27.3%)の患者に対して報告された。6μgのFE999049群において1人(5.6%)の患者のみが15~19個の卵母細胞を回収されたものの、これは150IUのFOLLISTIM群において4人(18.2%)の患者の症例であり、加えて2人(9.1%)の患者が≧20個の卵母細胞を有した。過度の卵胞発育に起因したGnRHアゴニストによる誘引は、6μgのFE999049群において必要とされなかったが、150IUのFOLLISTIM群において1人の患者に対して必要とされた。ゆえに、<60kgの重さがありかつAMH≧15pmol/Lを有する患者における6μgのFE999049を用いた調節卵巣刺激は、150IUのFOLLISTIMを用いた調節卵巣刺激よりも、早期OHSSのより低い危険性および過度の卵巣応答のより低い危険性を伴った。
【0106】
体重<60kgを有する患者における有害事象プロファイルに関して、調節卵巣刺激に用いられた薬物に関係していると治験責任医師によって判断された有害事象の頻度は、6μgのFE999049群において20.7%および150IUのFOLLISTIM群において33.3%であった。体重<60kgおよびAMH≧15pmol/Lを有する患者の間で、関係する有害事象の頻度は、6μgのFE999049群において27.8%および150IUのFOLLISTIM群において36.4%であった。
【0107】
有効性の視点から、体重<60kgを有する患者における移植を有するサイクルあたりの臨床妊娠率は、6μgのFE999049群において40.0%および標準療法群にお
いて21.7%であった。体重<60kgおよびAMH≧15pmol/Lを有する患者に関して、移植を有するサイクルあたりの臨床妊娠率は、6μgのFE999049および標準療法群において、それぞれ38.5%および20.0%であった。
【0108】
最後に、Ferringは、AMHおよび体重に基づき、個別化FE999049投薬レジメン(上記の表A)に従って<6μgのFE999049を受けているであろうが、この試験では無作為化どおりに6μgのFE999049または150IUのFOLLISTIMのいずれかを受けた、日本の第2相試験における患者を同定した。これは、患者のごく限られた数のみであった(6μgのFE999049群における5人の患者、および150IUのFOLLISTIM群における3人の患者)が、卵巣応答安全性データは、以前に提示されたものと合致した。15個の卵母細胞またはそれを上回る数の卵巣応答は、6μgのFE999049群における5人の患者のいずれにおいても観察されなかったが、150IUのFOLLISTIM群における3人中2人の患者(66.7%)において観察された。GnRHアゴニストによる誘引を要求する過度の卵胞発育は、6μgのFE999049群における5人の患者のいずれにおいても観察されなかったが、150IUのFOLLISTIM群における3人中1人の患者(33.3%)において観察された。早期OHSSは、6μgのFE999049群における5人中1人の患者(20.0%)に対して、および150IUのFOLLISTIM群における3人中1人の患者(33.3%)に対して報告された。
【0109】
言い換えれば、本出願人らは、低体重を有する日本人患者の過少量投薬を回避することを意図して、日本人集団におけるより低い体重を説明する6μgという最小用量を特定し、それによってこれらの患者における有効性を維持し、同時にOHSSなどの副作用を回避することが可能であることを驚くべきことに見い出した。
【0110】
この用量の適当性を支持する日本の第2相試験における6μgのFE999049に関する安全性および有効性データに加えて、日本の第2相試験から推定されている用量応答モデルを用いたシミュレーションが行われている。これらのシミュレーションの目的は、<6μgであるとされた用量を用いた投薬レジメンと比較した、最低用量として6μgを用いた提案される投薬レジメンに関する卵母細胞の数の予想される差を査定することである。日本の第2相試験における全158人の無作為化された患者の体重およびAMHレベルに基づき、18人(11%)は、<6μgの算出用量の代わりに、提案される投薬レジメンを用いて6μgの用量を受けたであろう。これらの患者のすべては、試験における全患者の体重およびAMHを提示している図1に示されるように、52kgを下回る体重および26pmol/Lを超えるAMHを有した。図1は、図の右下に小さなひし形(四角ではなく)を有するこれら18人の患者を示している。
【0111】
<6μgの算出用量を有する18人の患者において、平均算出用量は5.33μgであり、ゆえに提案される投薬レジメンは、最小値を有しないレジメンと比較して、13%高い平均用量に達する(5.33μgの代わりに6.0μgの平均用量)。
【0112】
卵巣応答は、最小用量として6μgを遂行することによって有益に影響されると予想される。表3に示されるように、<6μgの算出用量を有する患者において、より多くの患者が、6μgが最小用量である提案される投薬レジメンを用いて、回収される8~14個の卵母細胞という目標を達成すると期待される(最小用量を有しないレジメンを用いた44.8%に対して、患者の48.0%)。
【0113】
【表4】
【0114】
ゆえに、日本の第2相試験からの観察されたデータに加えて、提案される投薬レジメンを用いた卵巣応答のモデル予測は、6μgという最小用量の適当性をさらに支持する。
【0115】
結論として、最小用量としての6μgの遂行を含めた、提案されるFE999049投薬レジメンは、安全でかつ有効であり、日本における第3相試験に対してこれを提案しているところである。<6μgの算出用量を有する日本人患者に関する第3相データは、PMDA審査の目的で特異的に分析されて、これらの患者における6μgのFE999049の有効性および安全性を支持するであろう。
(実施例10)
【0116】
日本における第3相臨床試験
方法論
これは、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストプロトコール後にIVF/ICSIのための調節卵巣刺激を受けている20~40歳の最初のサイクルの日本人患者において用いられる場合の、その個別化投薬レジメンにおけるFE999049の有効性および安全性を評価する、無作為化、評価者盲検、調節、並行群対照、多施設試験である。試験は、回収される卵母細胞の数に関して、日本において認可されたrFSH生成物、すなわちFOLLISTIMに対するFE999049の非劣性を実証するように設計されている。
【0117】
対象は、組み入れ基準および除外基準を順守して、刺激の開始の60日以内前にスクリーニングされる。月経周期の2~3日目に、対象は、FE999049またはFOLLISTIMを用いた調節卵巣刺激に1:1比で無作為化される。無作為化は、施設によっておよびスクリーニング時のAMHレベルに従って階層化される(<15pmol/Lおよび≧15pmol/L)。
【0118】
FE999049に無作為化された対象は、スクリーニング時の彼らのAMHレベルおよび刺激の開始時の彼らの体重に基づいて彼らの個々のFE999049用量を決定される(下記を参照されたい)。FE999049の1日用量は、刺激期間を通じて固定される。AMH<15pmol/Lを有する対象に関して、FE999049の1日用量は、体重に関係なく12μgである。AMH≧15pmol/Lを有する対象に関して、FE999049の1日用量は、0.19~0.10μg/kgに及ぶ連続的段階にあり、すなわち実際のAMHおよび体重に依存する。これは下記の表に示されている。FE999049の最小許容1日用量は6μgであり、FE999049の最大許容1日用量は12μgである。対象は、最大20日間FE999049を用いて治療され得、延期すること(coasting)は許されない。
【0119】
FOLLISTIMに無作為化された対象に関して、投薬レジメンは表示の範囲内である(下記を参照されたい)。FOLLISTIMの開始用量は150IUであり、刺激の
最初の5日間固定され、その後それは個々の応答に基づいて75IU調整され得る。FOLLISTIMの最大許容1日用量は375IUである。対象は、最大20日間FOLLISTIMを用いて治療され得、延期することは許されない。
【0120】
刺激の間、対象は、刺激1日目および6日目に、ならびにこの後少なくとも1日おきに経膣超音波によってモニターされる。≧15mmの3個の卵胞が観察された場合、来院は毎日実施されなければならない。早発黄体形成ホルモン(LH)サージを防ぐために、GnRHアンタゴニストが刺激6日目に0.25mgの1日用量で開始され、刺激期間を通じて継続される。最終卵胞成熟の誘引は、直径≧17mmを有する≧3個の卵胞が観察された当日に、5,000IUの尿ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を用いて行われる。直径≧12mmを有する≧25個の卵胞として規定される過度の卵胞発育の場合、サイクルはキャンセルされるべきである(注記:直径≧12mmを有する≧25~35個の卵胞の場合、GnRHアゴニストが最終卵胞成熟の誘引として投与され得る)。直径≧17mmを有する≧3個の卵胞が20日目までに到達され得ないという治験責任医師の判断として規定される卵胞発育不良の場合、サイクルはキャンセルされるべきである。
【0121】
卵母細胞回収は、最終卵胞成熟の誘引の36時間(±2時間)後に行われ、卵母細胞は、IVFまたはICSIによって授精され得る。受精および胚発生は、卵母細胞回収から移植の日まで評価される。使用可能な最高品質の1個の胚盤胞が卵母細胞回収後5日目に移植され、一方で残りの胚盤胞は凍結保存され得る。GnRHアゴニストによる最終卵胞成熟の誘引を受けた対象に関して、移植は行われず、その代わりに胚盤胞は5日目に凍結保存され得る。凍結保存されたすべての胚盤胞は、日本産婦人科学会(JSOG)による宣言に従って、試験の完了後に対象によって用いられ得る。
【0122】
卵母細胞回収の翌日から臨床妊娠来院の日までの黄体期支援のために、1日3回のプロゲステロン膣錠(ルティナス(LUTINUS)、Ferring Pharmaceuticals)100mgが提供される。黄体期支援は、移植を受ける予定である対象にのみ提供され、移植なしまたは陰性のβhCGテストの場合には早期に終結され得る。βhCGテストは移植の13~15日後に実施され、その後に移植の5~6週間後の経膣超音波が続いて、臨床妊娠および生命妊娠(vital pregnancy)を評価する。
【0123】
内分泌プロファイルならびに臨床化学および血液学パラメーターを査定する目的で、試験の間に血液サンプルが収集される。内分泌パラメーターは、スクリーニング時、刺激1日目、刺激6日目、および刺激の終了時に測定される。臨床化学および血液学パラメーターは、スクリーニング時、刺激の終了時、および試験の終了時に評価される。皮下投与後のFE999049の局所忍容性は、1日3回:注射の直後、30分後、および24時間後に対象によって評価される。注射部位反応の評価は、刺激期間を通じて行われ、対象によって日記に記録される。
【0124】
試験の手順および/または評価が日曜日、祝日、または診療所の営業時間外に実施される予定である場合、手順および/または評価は、次回の平日(もともとの来院スケジュールの最大1日後)に先延ばしにされ得るまたは適当な場合にはキャンセルされ得る。
【0125】
義務的な追跡調査として、生命妊娠を有する対象に関して、妊娠の進行および転帰データが集められる。データは、進行中の妊娠(移植後10~11週間)および妊娠転帰、ならびに出生時および出生後4週間の時点での新生児の健康状態に関して収集される。妊娠追跡調査は、いかなる介入も含まず、データ収集のみを含む。妊娠追跡調査データは、対象の婦人科医/産科医および対象の母子健康手帳(Maternal and Child Health Handbook)から得られる報告に基づく。データは、対象の婦
人科医/産科医、対象自身、または該当する場合には他の情報源のいずれかにより、試験現場によって回収される。Ferringは、試験の主要部分(すなわち、最高で臨床妊娠来院まで)の完了後にJ-NDAを提出し、その時点で入手可能な妊娠追跡調査データをJ-NDAに含めるつもりである。妊娠追跡調査データは、完了後に提出され得る。
【0126】
対象の数
およそ328人の対象が、FE999049およびFOLLISTIMに1:1比で無作為化される。
【0127】
組み入れ/除外のための基準
彼女たちの最初のIVF/ICSIサイクルを受けており、かつ卵管性不妊症、原因不明の不妊症、子宮内膜症ステージI/IIに関連した不妊症を有すると診断された、または男性要因不妊症を有すると診断されたパートナーを有する、IVFおよび/またはICSI治療を受ける適格性がある女性が、この試験に含まれる。対象は、17.5~32.0kg/m2の肥満度指数(BMI)を有する20~40歳である。
【0128】
子宮内膜症ステージIII/IV、反復流産の病歴、またはゴナドトロピンを用いた調節卵巣刺激の禁忌を有する女性は、この試験への参加から除外される。
【0129】
組み入れ基準および除外基準の完全なリストが下で提供される。
【0130】
組み入れ基準
1.インフォームドコンセント文書が、任意の試験関連手順の前に署名された。
2.良好な身体的および精神的な健康状態にある。
3.20~40歳の日本人女性。対象は、彼女たちがインフォームドコンセント文書に署名する時に少なくとも20歳(20回目の誕生日を含む)でなければならず、無作為化の時点で40歳を上回っていない(最高で41回目の誕生日の前日まで)。
4.男性パートナーからの射精された精子を用いた体外受精(IVF)および/または卵細胞質内精子注入(ICSI)治療を受ける適格性がある、卵管性不妊症、原因不明の不妊症、子宮内膜症ステージI/II(改訂された米国生殖医学会議(ASRM)分類によって定義される)を有すると診断された、または男性要因不妊症を有すると診断されたパートナーを有する不妊症女性。
5.無作為化前の少なくとも1年間の間の不妊症(卵管性不妊症または重度の男性要因不妊症の場合には適用されない)。
6.試験サイクルは、IVF/ICSIのための対象の最初の調節卵巣刺激サイクルである。
7.排卵性であると推測される24~35日間(両方を含む)の定期的な月経周期。
8.スクリーニングの1年以内前の、予想される正常機能と一致した子宮を立証する子宮卵管造影、子宮鏡検査、生理食塩水注入ソノグラフィー、または経膣超音波(例えば、直径3cmよりも大きな粘膜下または壁内筋腫として定義される臨床的に妨害する子宮筋腫の証拠がない、ポリープがない、および妊娠の機会の低下と関連する先天性の構造異常がない)。これは、上記の医学的病状のいずれかを有すると診断されているが、スクリーニングの1年以内前にそれらを外科的に矯正している女性も含む。
9.スクリーニングの1年以内前に、重要な異常の証拠がない(例えば、3cmよりも大きな子宮内膜腫がない、またはゴナドトロピンの使用に禁忌を示すと考えられる肥大した卵巣がない)両方の卵巣、ならびに重要な異常の証拠がない(例えば、卵管留水腫がない)ファロピウス管および周辺組織、の存在を立証する経膣超音波ならびに十分な可視化。両方の卵巣は、卵母細胞回収に使用可能でなければならない。
10.1~15IU/LのFSHの卵胞期初期(周期2~4日目)の血清レベル(スクリーニングの3ヶ月以内前に得られた結果)。
11.スクリーニングの1年以内前に、陰性の血清B型肝炎表面抗原(HBsAg)、C型肝炎ウイルス(HCV)、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体テスト。
12.スクリーニング時に、17.5~32.0kg/m2(両方を含む)の肥満度指数(BMI)。
13.1個の胚盤胞の移植を受け入れる意思がある。
【0131】
除外基準
1.既知の子宮内膜症ステージIII~IV(改訂されたASRM分類によって定義される)。
2.刺激1日目の刺激の開始前に、経膣超音波で観察される>10mm(嚢胞を含む)の1個または複数の卵胞(無作為化の前に嚢胞の穿刺が許される)。
3.反復流産(妊娠(異所性妊娠を除く)の超音波確認後かつ妊娠の24週目前の3回連続した喪失として定義される)の既知の病歴。
4.対象または彼女のパートナーの既知の異常な核型。精子生成が重度に損なわれている場合(濃度<100万個/mL)、Y染色体微小欠失がないことを含めた正常な核型が立証されなければならない。
5.活発な動脈もしくは静脈血栓塞栓症、または重度の血栓性静脈炎、あるいはこれらの事象の病歴。
6.既知のポルフィリン症。
7.任意の既知の臨床的に重要な全身性疾患(例えば、インスリン依存性糖尿病)。
8.既知の遺伝性または後天性の血栓性疾患。
9.制御された甲状腺機能疾患を例外として、試験への参加を危うくし得る任意の既知の内分泌または代謝異常(下垂体、副腎、膵臓、肝臓、または腎臓)。
10.抗FSH抗体の既知の存在(対象の医療記録において入手可能な情報に基づく)。11.ゴナドトロピンの使用に禁忌を示すと考えられる、卵巣、乳房、子宮、副腎、下垂体、または視床下部の既知の腫瘍。
12.治験責任医師によって臨床的に関連すると判断される、スクリーニング時の臨床化学、血液学、またはバイタルサインの任意の異常な所見。
13.腎機能または肝機能の既知の中程度または重度の障害。
14.現時点での授乳。
15.診断未確定の膣出血。
16.スクリーニングの3年以内前に観察された臨床的に重要な既知の異常な子宮頸部細胞診(臨床的重要性が解決されている場合を除く)。
17.ゴナドトロピン刺激を不可能にする、スクリーニング時の検査室分析からの所見。18.ゴナドトロピン刺激を不可能にする、スクリーニング時の婦人科検診での所見。
19.妊娠の機会の低下と関連する、スクリーニング時の婦人科検診での所見、例えば先天性子宮異常または子宮内器具の保持。
20.妊娠(スクリーニング時および無作為化前に陰性の尿妊娠テストによって確認されなければならない)または妊娠の禁忌。
21.既知の現時点で活発な骨盤内炎症性疾患。
22.デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、メトホルミン、および経口避妊薬、プロゲストゲン、またはエストロゲン調製物を用いた周期プログラム化を含めた、スクリーニング前の最後の月経周期中のホルモン調製物(甲状腺薬剤を除く)または受胎修飾薬の使用。
23.化学療法(妊娠性病状を除く)または放射線療法の既知の経歴。
24.アルコールもしくは薬物の現時点もしくは過去(無作為化の1年前)の乱用、および/または1週間あたり14単位を上回るアルコールの現時点(先月)の摂取。
25.1日あたり10本を上回るタバコの現時点または過去(無作為化の3ヶ月前)の喫煙習慣。
26.試験において用いられる医療製品中の任意の薬物物質または賦形剤への過敏症。
27.GnRHまたは任意のGnRH類似体/誘導体中の任意の薬物物質または賦形剤への過敏症。
28.試験への以前の参加。
29.追跡調査期間を含めた、別の試験への現時点での参加。
30.スクリーニング前の過去3ヶ月の間の任意の非登録治験薬の使用。
【0132】
月経周期の2~3日目に、対象は、FE999049またはFOLLISTIMのいずれかを用いた治療に1:1比で無作為化され、調節卵巣刺激が開始される。
【0133】
FE999049投薬レジメン
FE999049に無作為化された対象は、スクリーニング時の彼らのAMHレベルおよび無作為化時の彼らの体重に基づいて彼らの個々の用量を決定される。AMH<15pmol/Lを有する対象に関して、FE999049の1日用量は、体重に関係なく12μgである。AMH≧15pmol/Lを有する対象に関して、FE999049の1日用量は、0.19~0.10μg/kgに及ぶ連続的段階にあり、すなわち実際のAMHおよび体重に依存する。
【0134】
FE999049の1日用量は、刺激期間を通じて固定される。FE999049の最小許容1日用量は6μgである。FE999049の最大許容1日用量は12μgである。投薬は、最終卵胞成熟の誘引の基準が満たされるまで継続される。対象は、最大20日間FE999049を用いて治療され得る。延期することは許されない。
【0135】
完全なFE999049投薬レジメンは、以下の表に詳細に一覧にされている。
【0136】
【表5】
【0137】
FE999049調製物は、腹部に1日1回の皮下注射として投与される。投薬は、2回の注射に分けられてはいけない。局所注射部位反応を最小限に抑えるために、注射部位を定期的に変えることが賢明である。
【0138】
最初のFE999049注射は診療所で行われ、試験医薬代表者によってまたは試験医
薬代表者による監視下で対象によって実施される。後続の注射は、自宅でまたは診療所で行われ得る。試験医薬代表者は、FE999049を投与する方法についての指示を対象に与える。
【0139】
FE999049用量の算出、およびFE999049プレフィルドペンへの用量の設定
対象の血清AMH濃度は、スクリーニング時に採取された血液サンプルから入手可能であり、Roche Diagnostics製のElecsys(登録商標)AMHアッセイを用いて中央検査室によって分析される。AMH濃度は、中央検査室からeCRFに直接提供される。対象の体重は、較正された体重計を用いて無作為化時に測定され、靴およびオーバーコートなしで実施される。体重結果はeCRFに入力される。FE999049投薬アルゴリズムはeCRFにおいてプログラム化されており、それにより対象のAMHおよび体重に基づくFE999049用量が算出される。
【0140】
FE999049プレフィルド注射ペンは、FE999049の皮下投与を意図したものである。それは、液体FE999049薬品を含有する一体化した非交換式の3mLカートリッジを有する非無菌針に基づく使い捨て器具である。各カートリッジは複数回用量を保ち、そのサイズは使用者によって調整可能である。0.33μgきざみで0.33μg~20.0μgの用量を設定することが可能である。FE999049プレフィルド注射ペンは、0~20μgの番号を付された投薬目盛を有する。各数字は2本の線によって分離され、各線は0.33μgを表す。プレフィルド注射ペンは、四捨五入して0.33μgまでの概数にされる用量を送達するように設定され得る。算出用量が8.25μg(0.11μg/kg75.0kg)であり、次いでそれは8.33μgに、すなわち8μg+ペン上の1本の線に四捨五入される、35pmol/LのAMHレベルを有して75.0kgの重さがある対象についてのこの例にあるように、算出用量の四捨五入が必要とされ得る。eCRFは、プレフィルド注射ペン上の数字および線に合う出力で算出用量を提供する、すなわち対象の算出用量を提供する前に、任意の四捨五入が自動的に行われる。
【0141】
試験医薬代表者は、プレフィルド注射ペンの正しい使用の教育を受けかつ訓練され、それにより正しい指示が対象に提供され得る。
【0142】
5.1.2 FOLLISTIM投薬レジメン
FOLLISTIMに無作為化された対象に関して、投薬レジメンは表示の範囲内である。FOLLISTIMの開始用量は150IUであり、刺激の最初の5日間固定され、その後それは個々の応答に基づいて75IU調整され得る。FOLLISTIMの最大許容1日用量は375IUである。投薬は、最終卵胞成熟の誘引の基準が満たされるまで継続される。対象は、最大20日間FOLLISTIMを用いて治療され得る。延期することは許されない。FOLLISTIM投薬レジメンは、以下の表に詳細に示されている。
【0143】
【表6】


【0144】
参考文献





図1