(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20231026BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20231026BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H05K1/02 N
H05K1/02 F
H01L23/12 E
H01L23/12 J
H01L23/36 C
(21)【出願番号】P 2020189239
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】水谷 友昭
【審査官】原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-197835(JP,A)
【文献】特開平11-265970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H01L 23/12
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
回路素子が搭載される素子搭載予定部を有しているヒートシンクと、
前記絶縁基板上に配置され、パターンの一部が切り欠かれた切り欠き部を有するグランドパターンと、
前記絶縁基板の前記グランドパターンが配置された配置面に配置され、少なくとも一部が前記切り欠き部の領域内に位置しており、前記回路素子に信号線を介して電気的に接続される配線パターンと
を備え、
前記ヒートシンクは、その一部が前記グランドパターンの配置面上に前記グランドパターンの一部と重なるように配置されており、当該配置面上で前記グランドパターンと接合されて
おり、
前記切り欠き部と、前記ヒートシンクとは、平面視で部分的に重なるように配置されている、配線基板。
【請求項2】
前記グランドパターンと前記ヒートシンクとは、溶加材を用いて接合されており、
前記グランドパターン上には、前記溶加材の流出を抑制する流出抑制部が設けられている、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記流出抑制部は、前記配線パターンの前記信号線との接続予定部よりも前記素子搭載予定部から離れた位置において、前記配線パターンを横切るように配置されている、請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記グランドパターンに形成されている前記切り欠き部は、前記ヒートシンクの前記素子搭載予定部を避けて形成されている、請求項1から3の何れか1項に記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップなどを放熱させるためのヒートシンクを備えている配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路などを搭載した半導体チップは、例えば、スイッチング素子、抵抗、コンデンサなどの様々な回路素子で構成されている。これらの回路素子は、動作中に発熱して高温となることで、故障や動作不良の原因となる。そのため、半導体チップを備えている配線基板には、回路素子から発生した熱を放出させるためのヒートシンクが備えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、配線層が形成された基板上にヒートシンクを介して半導体チップが設けられるとともに、前記配線層が前記ヒートシンクに電気的に接続された半導体集積回路装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、ガラスセラミック製の多層基板1に段差状の凹部10を設け、凹部10の内部に導電性のヒートシンク4を配置し、ヒートシンク4上にパワーFETチップ5を取り付けた構成が開示されている。この多層基板1の凹部10内には、各プリント基板1a~1d間に形成されたグランドライン2が露出する。ヒートシンク4の下面は、凹部10の段差に沿う段差状に形成され、露出したグランドライン2に接触する。ヒートシンク4の下面はプリント基板1aに形成された接続部11に接続される。
【0006】
ヒートシンクがグランドラインと電気的に接続されることで、半導体チップからヒートシンクへ伝達された電気信号をグランドラインへ逃がし、ノイズを抑制することができる。しかし、特許文献1に開示されているグランドラインの配置では、信号線(ボンディングワイヤ)を介して半導体チップ上の回路素子と接続された基板上の配線パターンの周囲において、ノイズを十分に抑制することができない。
【0007】
また、配線パターンの周囲にグランドラインを配置したとしても、特許文献1のような構成では、ヒートシンクからグランドラインへ伝達される電気信号に遅れが生じる。そのため、回路素子の動作開始直後のノイズの抑制効果を十分に得ることができない。
【0008】
そこで、本発明では、配線パターンに隣接してグランドラインが配置されている配線基板において、ヒートシンクからグランドラインへ伝達される電気信号の遅延を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面にかかる配線基板は、絶縁基板と、回路素子が搭載される素子搭載予定部を有しているヒートシンクと、前記絶縁基板上に配置され、パターンの一部が切り欠かれた切り欠き部を有するグランドパターンと、前記絶縁基板の前記グランドパターンが配置された配置面に配置され、少なくとも一部が前記切り欠き部の領域内に位置しており、前記回路素子に信号線を介して電気的に接続される配線パターンとを備えている。この配線基板において、前記ヒートシンクは、その一部が前記グランドパターンの配置面上に前記グランドパターンの一部と重なるように配置されており、当該配置面上で前記グランドパターンと接合されている。
【0010】
上記の構成によれば、グランドパターンに形成されている切り欠き部の領域内に配線パターンの少なくとも一部が配置されていることで、配線パターン内を伝達する電気信号へのノイズの影響を低減させることができる。また、ヒートシンクとグランドパターンとが上記のように接合されていることで、ヒートシンクからグランドパターンへ伝達される電気信号(ノイズの原因となる電気信号)の伝達経路を短くすることができる。そのため、ヒートシンクからグランドパターンへ伝達される電気信号の遅延を抑制することができる。
【0011】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記切り欠き部と、前記ヒートシンクとは、平面視で部分的に重なるように配置されていてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、切り欠き部の領域内に配置される配線パターンの端部を、ヒートシンクの素子搭載予定部により近づけて配置することができる。これにより、素子搭載予定部に搭載される回路素子と配線パターンとの距離がより短くなり、双方での信号の送受信の速度をより高めることができる。
【0013】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記グランドパターンと前記ヒートシンクとは、溶加材を用いて接合されており、前記グランドパターン上には、前記溶加材の流出を抑制する流出抑制部が設けられていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、グランドパターンとヒートシンクとを溶加材を用いて接合する際に、流出抑制部によって溶加材の流れを堰き止めることができる。したがって、溶加材がグランドパターンの形成領域をつたって配線基板の端部側へ流れることを抑制することができる。
【0015】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記流出抑制部は、前記配線パターンの前記信号線との接続予定部よりも前記素子搭載予定部から離れた位置において、前記配線パターンを横切るように配置されていてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、回路素子が搭載された配線基板において、配線パターン上の回路素子とより近い位置で信号線と配線パターンとを接続させることができる。これにより、素子搭載予定部に搭載される回路素子と配線パターンとの間の信号の送受信の速度をより高めることができる。
【0017】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記グランドパターンに形成されている前記切り欠き部は、前記ヒートシンクの前記素子搭載予定部を避けて形成されていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、素子搭載予定部に搭載される回路素子の外周端部の全領域において、回路素子の下方にグランドパターンが存在する構成とすることができる。そのため、回路素子の放熱性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一局面にかかる配線基板によれば、配線パターンに隣接してグランドパターンが配置されている配線基板において、ヒートシンクからグランドパターンへ伝達される電気信号の遅延を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態にかかる配線基板の一部分の構成を示す平面模式図である。
【
図2】
図1に示す配線基板において半導体チップおよび信号線が取り付けられる前の状態を示す平面模式図である。
【
図3】
図1に示す配線基板のA-A線部分の構成を示す断面模式図である。
【
図4】
図1に示す配線基板のB-B線部分の構成を示す断面模式図である。
【
図5】第2の実施形態にかかる配線基板の一部分の構成を示す平面模式図である。
【
図6】
図5に示す配線基板において半導体チップおよび信号線が取り付けられる前の状態を示す平面模式図である。
【
図7】
図5に示す配線基板のC-C線部分の構成を示す断面模式図である。
【
図8】従来の配線基板の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0022】
〔第1の実施形態〕
本実施形態では、本発明にかかる配線基板の一例として、半導体チップ22が搭載される配線基板1を例に挙げて説明する。
【0023】
図1には、配線基板1の一部分の表面の構成を示す。本実施形態では、便宜上、略平板状の配線基板1において半導体チップ22が搭載される側の面を表面とし、その反対側の面を裏面とする。但し、配線基板1の表面および裏面の定義はこれに限定はされず、任意に決めることができる。
【0024】
図2には、半導体チップ22が搭載される前の配線基板1の一部分の表面の構成を示す。この配線基板1は、半導体チップ22を放熱させるためのヒートシンク21を備えている。ヒートシンク21の表面の中央部(破線で示す領域)は、半導体チップ22などの回路素子が搭載される素子設置面(素子搭載予定部)21aとなっている。また、
図2に示す配線基板1には、信号線23は取り付けられていない。
図2では、この配線基板1の配線パターン15において、信号線23と接続される予定の箇所を接続予定部23aとして示す。
【0025】
図3および
図4には、配線基板1の断面構成を示す。
図3は、
図1に示す配線基板1のA-A線部分の構成を示す断面模式図である。
図4は、
図1に示す配線基板1のB-B線部分の構成を示す断面模式図である。
【0026】
半導体チップ22が搭載される前の配線基板1は、主として、セラミック基板(絶縁基板)11、第2セラミック部12、配線パターン15、堰き止め部(流出抑制部)17、ヒートシンク21、およびグランドパターン31などを備えている。
【0027】
セラミック基板11は、配線基板1の土台となる部材である。
図3などに示すように、第2セラミック部12は、セラミック基板11の一部と重なるようにセラミック基板11上に配置されている。セラミック基板11および第2セラミック部12は、複数のセラミックシートを積層して形成されている。
【0028】
セラミック基板11と第2セラミック部12との間には、所定形状を有する導電性の金属層(例えば、配線パターン15、グランドパターン31など)が設けられている。また、図示はされていないが、セラミック基板11および第2セラミック部12を構成している各セラミックシートの間にも、所定形状の導電性の金属層が設けられていてもよい。
【0029】
セラミックシートは、例えば、アルミナ(Al2O3)を主成分とする高温焼成セラミックで形成することができる。また、別の態様では、セラミックシートは、ガラス-セラミックなどの中温焼成セラミック(MTCC)、または低温焼成セラミック(LTCC)で形成されていてもよい。
【0030】
配線パターン15は、セラミック基板11上に形成された導電性の金属層を所定形状にパターニングすることによって形成される。グランドパターン31は、配線パターン15と同様に、セラミック基板11上に形成された導電性の金属層を所定形状にパターニングすることによって形成される。すなわち、配線パターン15は、セラミック基板11上のグランドパターン31の配置面と同じ面上に配置される。
【0031】
配線パターン15は、信号線23を介して半導体チップ22と電気的に接続される。これにより、配線パターン15と半導体チップ22との間で電気信号の伝達が可能となる。配線パターン15は、セラミック基板11上の半導体チップ22の近傍から配線基板1の端部の方にまで延びている。配線基板1の端部に到達した配線パターン15は、さらに、配線基板1の端面から裏面にまで延びている(
図3参照)。一例では、配線基板1の裏面において、配線パターン15は、他の電子部品の接続端子と電気的に接続される。
【0032】
グランドパターン31は、半導体チップ22が載置されるヒートシンク21の外周(例えば、張り出し部21bの形成位置)に沿うように形成されている。例えば、グランドパターン31は、セラミック基板11に形成されている開口部11aの周縁部上に設けられている(
図3および
図4参照)。
【0033】
また、グランドパターン31には、開口部11a側のグランドパターン31の本体部からセラミック基板11の端部側へ延びる引き出し部32(本実施形態では、第1引き出し部32aおよび第2引き出し部32b)が設けられている。セラミック基板11上の端部の方へ延びる引き出し部32は、配線基板1の端部にまで到達した後、配線基板1の端面を通って裏面にまで延びている(
図4参照)。
【0034】
グランドパターン31は、上記のような構成を有していることで、ヒートシンク21上に載置される半導体チップ22からヒートシンク21へ伝達された電気信号(ノイズ)を、引き出し部32から配線基板1の端部側へ送ることができる。このグランドパターン31に隣接して配線パターン15が配置されていることで、配線パターン15内を伝達する電気信号へのノイズの影響を低減させることができる。
【0035】
図1などに示すように、本実施形態では、グランドパターン31の引き出し部32は、2つの引き出し部(すなわち、第1引き出し部32aおよび第2引き出し部32b)に分岐している。この2つの引き出し部の間には、金属層の一部が切り欠かれた切り欠き部33が形成されている。
【0036】
配線パターン15は、その少なくとも一部が切り欠き部33で囲まれた領域33A内に位置している。切り欠き部33内の領域33Aにおいて、配線パターン15の形成領域以外の領域では、セラミック基板11が露出している。このように、グランドパターン31の引き出し部32の一部を切り欠いた形状とし、この切り欠き部分に配線パターン15を配置することで、配線パターン15の周囲にグランドパターンを配置することができる。これにより、配線パターン15内を伝達する電気信号へのノイズの影響を低減させることができる。
【0037】
本実施形態では、
図1などに示すように、切り欠き部33の形状は略長方形状となっている。但し、切り欠き部33の形状は、長方形状に限定はされない。切り欠き部は、例えば、半導体チップの近傍に配置される配線パターンの形状に合わせて、この配線パターンを少なくとも部分的に取り囲むような形状となっている。
【0038】
配線パターン15およびグランドパターン31などを形成する導電性の金属部は、例えば、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、またはマンガン(Mn)などの金属材料、あるいはこれらの金属材料を主成分とする合金材料によって形成することができる。
【0039】
金属部は、例えば、薄膜形成法(例えば、フォトリソグラフィなど)、印刷ペーストによるメタライズ法、金属層をエッチングしてパターン化する方法、パターン状の金属層を転写する方法などの従来公知の方法を用いて、所定形状にパターニングされる。これにより、配線パターン15およびグランドパターン31などが形成される。
【0040】
ヒートシンク21は、平面視で半導体チップ22よりもやや大きな表面を有する略平板状の部材である。ヒートシンク21の表面には、半導体チップ22が搭載される素子設置面21aが設けられている。ヒートシンク21は、熱伝導性および導電性を有する材料で形成されている。このような材料としては、例えば、銅(Cu)、Fe(鉄)、Al(アルミニウム)、CuW(銅-タングステン)合金、およびAgPt(銀-白金)合金などの金属材料が挙げられる。
【0041】
ヒートシンク21が熱伝導性を有することで、半導体チップ22で発生した熱を逃がすことができる。また、ヒートシンク21が導電性を有することで、半導体チップ22で発生したノイズをグランドパターン31へ伝達させることができる。
【0042】
ヒートシンク21は、セラミック基板11に形成されている開口部11a内に配置される。ヒートシンク21の周縁部には、上面部分が外周方向に張り出している張り出し部21bが設けられている(
図3参照)。
図3および
図4に示すように、ヒートシンク21の張り出し部21bの下面は、セラミック基板11上のグランドパターン31の配置面上に配置され、グランドパターン31と接合されている。グランドパターン31の上面と、ヒートシンク21の張り出し部21bの下面とは、ロウ材(溶加材)41によって接合されている。
【0043】
このように、ヒートシンク21の一部(例えば、張り出し部21b)は、ロウ材41、半田などの溶加材を介して、グランドパターン31と面接触した状態で配置されている。この状態は、ヒートシンク21が、グランドパターン31の一部と重なるように配置されており、グランドパターン31の配置面上でグランドパターンと接合されている状態の一例である。この状態は、ヒートシンク21の一部とグランドパターン31の一部とが、他の絶縁基板(具体的には、絶縁基板内の導電性ビア)を介することなく接合されている状態ということもできる。
【0044】
堰き止め部(流出抑制部)17は、グランドパターン上にグランドパターンの配置面から突出するように設けられている。具体的には、堰き止め部17は、ヒートシンク21側から配線基板1の端部側へと延びるグランドパターン31の第1引き出し部32aおよび第2引き出し部32bを横切るように配置されている。
【0045】
このような堰き止め部17が設けられていることで、セラミック基板11にヒートシンク21をロウ付けする際に、液状のロウ材がグランドパターンの形成領域をつたって配線基板1の端部側へ流れることを抑制することができる。これにより、セラミック基板11上にヒートシンク21を接合させるためのロウ材が広範囲に流出して、接合部分のロウ材の量が減少することを抑制することができる。
【0046】
堰き止め部17は、非導電性の材料で形成されている。このような材料としては、例えば、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミ(AlN)、ガラスなどのセラミック材料、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂材料などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、強度などに優れているアルミナ(Al2O3)を好適に用いることができる。
【0047】
半導体チップ22は、例えば、スイッチング素子、抵抗、コンデンサなどの様々な回路素子で構成されている。半導体チップ22は、従来公知の半導体チップの構成が適用できる。半導体チップ22は、
図2に示す配線基板1のヒートシンク21の表面に設けられている素子設置面21a上に設置される。そして、半導体チップ22に備えられている各接続端子は、信号線23の一端と電気的に接続される。信号線23は、導電性の芯材を有しており、電気信号を伝達する。信号線23の他端は、配線パターン15の接続予定部23aに設けられている接続端子と電気的に接続される。
【0048】
なお、
図2に示すように、堰き止め部17は、配線パターン15における信号線23との接続予定部23aよりも素子設置面21aから離れた位置において、配線パターン15を横切るように配置されている。この構成によれば、半導体チップ22が搭載された配線基板1において、配線パターン15上の半導体チップ22とより近い位置で信号線23と配線パターン15とを接続させることができる。これにより、半導体チップ22と配線パターン15との間の信号の送受信の速度をより高めることができる。
【0049】
本実施形態にかかる配線基板1は、上記のような構成を有することで、ヒートシンク21からグランドパターン31の引き出し部32へ伝達される電気信号の遅延を抑制することができる。この点について、従来の配線基板901と比較して説明する。
図8には、従来の配線基板901の断面構成を示す。
【0050】
配線基板901は、主として、セラミック基板911、第2セラミック部912、第3セラミック部913、配線パターン(図示せず)、ヒートシンク921、およびグランドパターン931などを備えている。ヒートシンク921上には、半導体チップ22が搭載される。
【0051】
セラミック基板911、第2セラミック部912、および第3セラミック部913は、本実施形態にかかる配線基板1におけるセラミック基板11および第2セラミック部12に相当する。配線パターンは、信号線(図示せず)を介して半導体チップ22と電気的に接続される。ヒートシンク921は、セラミック基板911に形成されている開口部内に配置される。
【0052】
グランドパターン931は、セラミック基板911上に形成されており、半導体チップ22の近傍から配線基板901の端部にまで延びている。グランドパターン931は、セラミック基板911内を貫通する導電性ビア(図示せず)を介して、ヒートシンク921と電気的に接続されている。これにより、ヒートシンク921上に載置される半導体チップ22からヒートシンク921へ伝達された電気信号(ノイズ)をグランドパターン931から配線基板901の端部側へ逃がすことができる。
【0053】
図8には、半導体チップ22で発生したノイズがグランドパターン931へ伝達される様子を矢印で模式的に示す。また、
図4には、本実施形態にかかる配線基板1において、半導体チップ22で発生したノイズがグランドパターン31(具体的には、第2引き出し部32b)へ伝達される様子を矢印で模式的に示す。
【0054】
配線基板901では、半導体チップ22で発生したノイズの原因となる電気信号は、先ずヒートシンク921へ伝わった後、セラミック基板911に設けられた導電性ビアを介してグランドパターン931へ伝わる(
図8の矢印参照)。一方、配線基板1では、ヒートシンク21とグランドパターン31とは、ロウ材41を介して互いに面接触した状態となっているため、半導体チップ22で発生したノイズの原因となる電気信号は、ヒートシンク21からグランドパターン31へほぼ直接的に伝わる(
図4の矢印参照)。
【0055】
このように、配線基板1は、配線基板901と比較して、ノイズ抑制の効果を発揮させるための電気信号の伝達経路が短くなる。そのため、ヒートシンクからグランドパターンへ伝達される電気信号の遅延を抑制することができ、半導体チップ22への信号の入出力のタイミングとほぼ同時に、ノイズ抑制の効果を発揮させることができる。
【0056】
また、本実施形態にかかる配線基板1では、
図1などに示すように、切り欠き部33で囲まれた領域33Aと、ヒートシンク21とは、平面視で部分的に重なるように配置されている。本実施形態では、
図3に示すように、ヒートシンク21の張り出し部21bが、切り欠き部33内の領域33Aに張り出すように設けられている。
【0057】
この構成により、配線パターン15の半導体チップ側の端部を半導体チップ22により近づけて配置することができる。これにより、半導体チップ22と配線パターン15との距離がより短くなり、双方での信号の送受信をより速めることができる。
【0058】
また、グランドパターン31に形成されている切り欠き部33は、ヒートシンク21の素子設置面(素子搭載予定部)21aを避けて形成されている(
図2参照)。すなわち、
図1に示すように、グランドパターン31に形成されている切り欠き部33内の領域33Aは、上面視で半導体チップ22と重複する領域を有しないように設けられている。
【0059】
この構成により、半導体チップ22の外周端部の全領域において、半導体チップ22の下方にグランドパターン31が存在するため、半導体チップ22の放熱性をさらに向上させることができる。
【0060】
(第1の実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる配線基板1は、セラミック基板11、ヒートシンク21、グランドパターン31、および配線パターン15などを備えている。ヒートシンク21は、半導体チップ22が搭載される素子設置面21aを有している。グランドパターン31は、セラミック基板11上に配置され、切り欠き部33を有する。ヒートシンク21とグランドパターン31とは、ロウ材41などを用いて接合されている。配線パターン15は、セラミック基板11のグランドパターン31が配置された配置面に配置され、少なくとも一部が切り欠き部33の領域33A内に位置している。素子設置面21aに半導体チップ22が設置された後、配線パターン15は、信号線23を介して半導体チップ22に電気的に接続される。
【0061】
上記の構成によれば、グランドパターン31がヒートシンク21と接合されることで、半導体チップ22からヒートシンク21へ伝達された電気信号(ノイズの原因となる電気信号)をグランドパターンへ逃がし、ノイズを抑制することができる。そして、グランドパターン31に形成されている切り欠き部33で囲まれた領域33A内に配線パターン15の少なくとも一部を配置することで、配線パターン15内を伝達する電気信号(半導体チップ22との間の入出力信号)へのノイズの影響を低減させることができる。
【0062】
また、本実施形態にかかる配線基板1においては、ヒートシンク21の一部(例えば、張り出し部21b)がグランドパターン31の配置面上にグランドパターン31の一部と重なるように配置されており、当該配置面上でグランドパターン31と接合されている。この構成により、ノイズ抑制の効果を発揮させるために、ヒートシンク21からグランドパターン31へ伝達される電気信号の伝達経路を短くすることができる。そのため、ヒートシンク21からグランドパターン31へ伝達される電気信号の遅延を抑制することができ、半導体チップ22への信号の入出力のタイミングとほぼ同時に、ノイズ抑制の効果を発揮させることができる。
【0063】
なお、本実施形態で例示した
図1などでは、配線基板1に備えられている配線パターン15は一つのみ示されているが、配線パターン15の個数は一つに限定されない。配線パターン15が複数並んで配置されている構成では、隣り合う配線パターン15同士の間にグランドパターン31が設けられていることが好ましい。より好ましくは、一つの配線パターン15ごとに、それを囲うようにグランドパターン31の切り欠き部33が設けられているのがよい。すなわち、一つの切り欠き部33で囲まれた領域33A内に、一つの配線パターン15の少なくとも一部が配置されている構成がよい。これにより、各配線パターン15内を伝達する電気信号(半導体チップ22との間の入出力信号)へのノイズの影響を低減させることができる。
【0064】
〔第2の実施形態〕
続いて、第2の実施形態にかかる配線基板101について、
図5から
図7を参照しながら説明する。本実施形態にかかる配線基板101は、主として、グランドパターンに設けられている切り欠き部の構成が第1の実施形態とは異なっている。
【0065】
図5には、配線基板101の一部分の表面の構成を示す。
図6には、半導体チップ22が搭載される前の配線基板101の一部分の表面の構成を示す。
図7には、配線基板101の断面構成を示す。
図7は、
図5に示す配線基板1のC-C線部分の構成を示す断面模式図である。
【0066】
配線基板101は、半導体チップ22を放熱させるためのヒートシンク21を備えている。
図6に示すように、ヒートシンク21の表面の中央部(破線で示す領域)は、半導体チップ22などの回路素子が搭載される素子設置面(素子搭載予定部)21aとなっている。なお、
図6に示す配線基板101には、信号線23は取り付けられていない。
図6では、この配線基板1の配線パターン15において、信号線23と接続される予定の箇所を接続予定部123aとして示す。
【0067】
半導体チップ22が搭載される前の配線基板101は、主として、セラミック基板(絶縁基板)11、第2セラミック部12、配線パターン115、堰き止め部(流出抑制部)117、ヒートシンク21、およびグランドパターン31などを備えている。セラミック基板(絶縁基板)11、および第2セラミック部12は、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。
【0068】
ヒートシンク21は、第1の実施形態と同様に、セラミック基板11に形成されている開口部11a内に配置される。ヒートシンク21の周縁部には、上面部分が外周方向に張り出している張り出し部21bが設けられている(
図7参照)。
図7に示すように、ヒートシンク21の張り出し部21bの下面は、セラミック基板11上のグランドパターン31の配置面上に配置され、グランドパターン31と接合されている。グランドパターン31の上面と、ヒートシンク21の張り出し部21bの下面とは、ロウ材(溶加材)41によって接合されている。
【0069】
グランドパターン31は、第1の実施形態と同様に、半導体チップ22が載置されるヒートシンク21の外周(例えば、張り出し部21bの形成位置)に沿うように形成されている。本実施形態では、グランドパターン31には、開口部11a側のグランドパターン31の本体部からセラミック基板11の端部側へ延びる引き出し部132(本実施形態では、第1引き出し部132aおよび第2引き出し部132b)が設けられている。セラミック基板11上の端部の方へ延びる引き出し部132は、配線基板101の端部にまで到達した後、配線基板101の端面を通って裏面にまで延びている(
図7参照)。
【0070】
図5などに示すように、本実施形態では、グランドパターン31の引き出し部132は、2つの引き出し部(すなわち、第1引き出し部132aおよび第2引き出し部132b)に分岐している。この2つの引き出し部の間には、金属層の一部が切り欠かれた切り欠き部133が形成されている。
【0071】
なお、本実施形態では、切り欠き部133の形状が第1の実施形態の切り欠き部33の形状とは異なっている。本実施形態では、切り欠き部133の半導体チップ22側の端部は、ヒートシンク21の端部よりも配線基板1の端部側に位置している。すなわち、ヒートシンク21の端部の全領域は、グランドパターン31と上面視で重なっている。この構成により、グランドパターン31上にヒートシンク21をロウ付けしたときに、グランドパターン31とヒートシンク21とをより強固に接合させることができる。
【0072】
配線パターン115は、信号線23を介して半導体チップ22と電気的に接続される。第1の実施形態の配線パターンと同様に、配線パターン115は、セラミック基板11上の半導体チップ22の近傍から配線基板1の端部の方にまで延びている。なお、後述するように、配線パターン115の半導体チップ22側の端部の位置が、第1の実施形態の配線パターン15の端部の位置とは異なっている。
【0073】
配線パターン115は、その少なくとも一部が切り欠き部133で囲まれた領域133A内に位置している。切り欠き部133内の領域133Aにおいて、配線パターン115の形成領域以外の領域では、セラミック基板11が露出している。このように、グランドパターン31の引き出し部132の一部を切り欠いた形状とし、この切り欠き部分に配線パターン115を配置することで、配線パターン115の周囲にグランドパターンを配置することができる。これにより、配線パターン115内を伝達する電気信号へのノイズの影響を低減させることができる。
【0074】
堰き止め部(流出抑制部)117は、グランドパターン上にグランドパターンの配置面から突出するように設けられている。具体的には、堰き止め部117は、ヒートシンク21側から配線基板101の端部側へと延びるグランドパターン31の第1引き出し部132aおよび第2引き出し部132bを横切るように配置されている。
【0075】
堰き止め部117が設けられていることで、セラミック基板11にヒートシンク21をロウ付けする際に、液状のロウ材がグランドパターンの形成領域をつたって配線基板1の端部側へ流れることを抑制することができる
【0076】
本実施形態では、堰き止め部117は、配線パターン115の全領域よりも半導体チップ22側に配置される。すなわち、堰き止め部117は、配線パターン115上を跨がない構成となっている。この構成により、堰き止め部117を、ヒートシンク21とグランドパターン31とのロウ付けによる接合部のより近くに配置することができる。
【0077】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【0078】
上述の実施形態では、半導体チップが搭載された配線基板を例に挙げて説明しているが、本発明にかかる配線基板には、半導体チップは備えられていなくてもよい。すなわち、配線基板は、絶縁基板と、半導体チップが搭載される予定の素子搭載予定部を有しているヒートシンクと、絶縁基板上に配置されたグランドパターンと、絶縁基板のグランドパターンが配置された配置面に配置された配線パターンとを少なくとも備えていればよい。
【符号の説明】
【0079】
1 :配線基板
11 :セラミック基板(絶縁基板)
15 :配線パターン
17 :堰き止め部(流出抑制部)
21 :ヒートシンク
21a :(ヒートシンクの)素子設置面(素子搭載予定部)
22 :半導体チップ(回路素子)
23 :信号線
23a :(配線パターンの信号線との)接続予定部
31 :グランドパターン
33 :切り欠き部
33A :(切り欠き部で囲まれた)領域
41 :ロウ材(溶加材)
101 :配線基板
115 :配線パターン
117 :堰き止め部(流出抑制部)
133 :切り欠き部