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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】光解離性バルビツール酸系化合物
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/40 20060101AFI20231026BHJP
   C08F 20/20 20060101ALI20231026BHJP
   C07D 239/62 20060101ALI20231026BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20231026BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C08F4/40
C08F20/20
C07D239/62
C07D405/12
C08F20/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020541685
(86)(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 US2019013726
(87)【国際公開番号】W WO2019152187
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】62/624,158
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】モーザー,ウィリアム エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】タウンセンド,エリック エム.
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ザッカリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】カルーソ デイリー,メアリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】クロップ,マイケル エー.
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/095704(WO,A1)
【文献】特表2009-538978(JP,A)
【文献】特開2006-183013(JP,A)
【文献】国際公開第2015/037670(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00-4/58
C08F 4/72-4/82
C08F 2/00-2/60
C08F 6/00-246/00
C09D 9/00-201/10
A61K 31/33-33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性成分と、
下記を含むレドックス開始剤系:
a)レドックスサイクルに関与する遷移金属錯体、
b)酸化剤、と、
下記式の光解離性還元剤:
【化1】
[式中、
、R、及びRは、それぞれ独立して、H、C1~18ヒドロカルビルであり、
Photoは、光解離性基である]と、
任意に、四級アンモニウムハライドと、
を含む、重合性組成物。
【請求項2】
前記光解離性基RPhotoが、フェナシル基、2-アルキルフェナシル基、エチレン架橋フェナシル基、p-ヒドロキシフェナシル基、ベンゾイン基、o-又はp-ニトロベンジル基、o-ニトロ-2-フェネチルオキシカルボニル基、クマリン-4-イルメチル基、ベンジル基、o-又はp-ヒドロキシベンジル基、o-又はp-ヒドロキシナフチル基、2,5-ジヒドロキシベンジル基、9-フェニルチオキサンチル、9-フェニルキサンチル基、アントラキノン-2-イル基、8-ハロ-7-ヒドロキシキノリン-2-イルメチル基、及びピバロイルグリコール基から選択される、請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
前記遷移金属錯体が、式:
[MLn+
[式中、Mはレドックスサイクルに関与する遷移金属であり、Lは配位子であり、Aはアニオンであり、nは1~7、好ましくは1~3の整数値を有する遷移金属上の形式電荷であり、pは1~9、好ましくは1~2の数値を有する遷移金属上の配位子の数である]のものである、請求項1又は2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
Mが、Cu、Fe、Ru、Cr、Mo、Pd、Ni、Pt、Mn、Rh、Re、Co、V、Au、Nb及びAgから選択される、請求項3に記載の重合性組成物。
【請求項5】
前記レドックス開始剤系が、前記重合性組成物の前記重合性成分の100重量部を基準として、0.05~約10重量部の量で前記組成物中に存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項6】
前記レドックス開始剤系の酸化剤が、過硫酸及びその塩、過酸化物、ヒドロペルオキシド、遷移金属、過ホウ酸及びその塩、過マンガン酸及びその塩、過リン酸及びその塩、並びにこれらの混合物から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項7】
前記重合性成分が、
i.i~ivの全モノマー100重量部に基づいて85~100重量部の(メタ)アクリル酸エステル、
ii.i~ivの全モノマー100重量部に基づいて0~15重量部の酸官能性エチレン性不飽和モノマー、
iii.i~ivの全モノマー100重量部に基づいて0~10重量部の非酸官能性エチレン性不飽和極性モノマー、
iv.i~ivの全モノマー100重量部に基づいて0~5重量部のビニルモノマー、及び
v.i~ivの全モノマー100重量部に基づいて0~5重量部の多官能性(メタ)アクリレート、
vi.i100重量部に基づいて、0.1~10重量部の前記レドックス開始剤系、
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項8】
i~ivの全モノマー100重量部に基づいて0.01~5重量部の多官能性(メタ)アクリレートをむ、請求項7に記載の重合性組成物。
【請求項9】
前記重合性成分が、
i.i~ivの全モノマー100重量部に基づいて最大100重量部の(メタ)アクリル酸エステル、
ii.i~ivの全モノマー100重量部に基づいて0~15重量部酸官能性エチレン性不飽和モノマー、
iii.i~ivの全モノマー100重量部に基づいて0~15重量部の非酸官能性エチレン性不飽和極性モノマー、
iv.i~ivの全モノマー100重量部に基づいて0~5重量部のビニルモノマー、
v.i~ivの全モノマー100重量に基づいて0~100重量部の多官能性(メタ)アクリレート、及び
vii~vの00重量部に基づいて、約0.1重量~約5.0重量の前記レドックス開始剤系(前記遷移金属錯体、酸化剤及び光解離性還元剤を含む)、
を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項10】
前記i~ivの全モノマー100重量部に基づいて、50重量部超の多官能性(メタ)アクリレートを含む、請求項に記載の重合性組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
レドックス反応は、接着剤配合物等のアクリレート、メタクリレート及びその他のビニル系樹脂の硬化を開始するための重要な方法である。レドックス開始による硬化は、硬化深度の改善及び硬化の初期段階における応力蓄積の低速化など、光開始による硬化と比べて利点を有することが多い。
【0002】
レドックス開始剤系の使用における重大な課題は、安定性と反応性との間の最適なバランスを見出すことである。レドックス系の反応性は、短い時間内での完全硬化及び機械的特性の達成のために、十分に高いことが必要である。しかし、反応性が大きすぎる場合、硬化早発、応力の蓄積、及び配合物の貯蔵安定性が低いなどの問題に直面する可能性がある。
【0003】
過酸化物及び/又は酸素、ハライド塩、及びアセチルアセトン酸銅等の銅化合物の存在下で、特定のβ-ジカルボニル(すなわち、1,3-ジカルボニル)化合物を用いるビニル化合物のフリーラジカル重合が、米国特許第3,347,954号(Bredereckら)に記載されている。このような組成物は、一般的に好ましい短時間で、経時的にビニル化合物をフリーラジカル重合させる。この組成物は、自発的反応性であるので、例えば、使用直前に合わせるA剤及びB剤等の2剤系として提供するのが一般的なやり方である。
【発明の概要】
【0004】
出願人は、「オンデマンド」のレドックス開始による硬化を生じることによってこれらの問題を克服する方法を提供し、オンデマンドの硬化では、レドックス硬化開始剤系の還元剤は、配合物が保管され納入される間は潜在的(latent)活性を有するが、その後、必要なときにトリガーできる。
【0005】
本開示は、酸化剤、光解離性還元剤、及びレドックスサイクルに関与する遷移金属錯体を含む、重合を開始するためのレドックス開始剤系を提供する。UVなどの化学線に曝露すると、光解離性化合物は光分解して、還元剤を生成し、レドックス開始による重合を開始する。有利には、当該組成物の重合は、化学線への曝露によって開始され得るが、継続的照射は必要ではない。レドックス開始剤系を重合性成分モノマー又はオリゴマーと組み合わせて重合性組成物を形成する場合、重合が開始され、その後光不在下で組成物が硬化し続けるにつれて、分子量及び物理的特性が構築され得る。
【0006】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の重合性組成物は、感圧接着剤(PSA)と構造用接着剤の利点を、1剤型光誘起PSA-(半)構造用アクリル接着剤の形態で組み合わせる。この接着剤は、従来のPSAのように、未硬化又は部分硬化状態で作用し、容易な適用、高いウェットアウト、及びグリーン強度をもたらす。短時間のUV光トリガーの適用により、ラジカル発生型レドックス反応が開始され、この反応は光が取り除かれた後も続き、定常の硬化速度及び付随する凝集力の増大を誘発する。最終的に、硬化は、接着剤に構造用性能又は半構造用性能を付与するのに十分なレベルで横ばいになる。
【0007】
多くの実施形態では、これらの特性及び硬化挙動の収集は、2つの不透明基材の間の永久結合という一般的な事例で特に有用であろう。UVトリガーの不在下では、接着剤の弾性率は、ダルキスト基準(Dahlquist criterion)で記述されるレベルよりも低く、これは、その材料が粘着性であり、加圧のみで基材との結合を形成できることを意味する。次に、UVトリガーを接着剤の露出面に適用して、自己持続型レドックス反応を開始するが、表面に粘着性を残し、合理的な時間(「オープンタイム」)内で第2の基材をウェットアウトすることができる。結合を閉鎖した後、接着剤は、その弾性率が構造強度に十分なレベルに達するまで硬化し続ける。
【0008】
一態様では、本開示は、1つ以上のエチレン性不飽和重合性モノマー又はオリゴマーと、照射時に可逆的レドックスサイクルに関与する開始剤系とを含む、重合性組成物を提供する。
【0009】
一態様では、本開示は、2個(好ましくは3個)以上の(メタ)アクリレート基を含む多官能性(メタ)アクリレートモノマー、及び/又は多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーと、任意に(メタ)アクリレート官能性希釈剤と、可逆的レドックスサイクルに関与する開始剤系と、を含む構造用接着剤組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0010】
化学重合性組成物は、重合性成分(例えば、エチレン性不飽和重合性モノマー又はオリゴマー)と、下記を含むレドックス開始剤系:遷移金属錯体、酸化剤、及び下記式の光解離性還元剤:
【化1】
[式中、
、R及びRは、それぞれ独立して、H、C1~18ヒドロカルビルであり、
Photoは、光解離性基である]
を含む。異性体Ia及びbは、機能的等価物と見なされるであろう。
【0011】
、R及びRは、独立して、1~18個の炭素原子を有するヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基を表し得る。好ましくは、R及びRは、それぞれ、1~12個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子、更により好ましくは1~4個の炭素原子を有する。例示的な基R及びRとしては、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、及びオクタデシルが挙げられる。一般的に、置換ヒドロカルビル基(一置換であっても多置換であってもよい)における置換基の性質は、フリーラジカル重合に干渉する置換基をあまり使用しないか、又は完全に除外すべきであることを除いて、特に重要ではない。例示的な置換ヒドロカルビル基としては、ヒドロキシヒドロカルビル基(例えば、ヒドロキシエチル及びヒドロキシプロピル)、アルコキシヒドロカルビル基(例えば、メトキシエチル及びメトキシエトキシ)、アルカノイルヒドロカルビル基(例えば、アセチルエチル及びベンゾイルエチル)、ハロアルキル基(例えば、クロロエチル及びジクロロプロピル)、及びジアルキルアミノヒドロカルビル基(例えば、ジメチルアミノプロピル及びジエチルアミノエチル)が挙げられる。
【0012】
式Ia及びbの好適なバルビツール酸誘導体の例としては、1,3,5-トリメチルバルビツール酸、1,3,5-トリエチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-エチルバルビツール酸、1,5-ジメチルバルビツール酸、1-メチル-5-エチルバルビツール酸、1-メチル-5-プロピルバルビツール酸、5-エチルバルビツール酸、5-プロピルバルビツール酸、5-ブチルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸、及び1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツール酸から誘導したもの挙げられる。
【0013】
照射を受けることができ、開裂又は断片化して遷移金属を放出する、任意の既知の光解離性基(RPhoto)を使用してもよい。Petr Klan et al.,Photoremovable Protecting Groups in Chemistry and Biology:Reaction Mechanisms and Efficiency,Chem Reviews,2013,Vol.113,pp 119-191及びJacob Wirz et al.,Photoremovable Protecting Groups:Reaction Mechanisms and Applications,Photochem.Photobiol.Sci.,2002,Vol.1,pp.441-458を参照できる。
【0014】
式Iを参照すると、有用な光解離性基「Rphoto」としては、限定するものではないが、フェナシル基、2-アルキルフェナシル基、エチレン架橋フェナシル基、o-又はp-ヒドロキシフェナシル基、ベンゾイン基、o-ニトロベンジル基、o-ニトロ-2-フェネチルオキシカルボニル基、クマリン-4-イルメチル基、ベンジル基、o-ヒドロキシベンジル基、o-ヒドロキシナフチル基、2,5-ジヒドロキシベンジル基、9-フェニルチオキサンチル、9-フェニルキサンチル基、アントラキノン-2-イル基、8-ハロ-7-ヒドロキシキノリン-2-イルメチル基、及びピバロイルグリコール基が挙げられる。
【0015】
式Iの光解離性化合物は、一般に、β-ジカルボニル化合物のエノールエーテル又はエステルを調製するための当該技術分野において既知の手段によって調製される。いくつかの実施形態では、β-ジカルボニル化合物を塩基又は酸で処理し、得られたエノール/エノレートをRPhoto基でアルキル化又はエステル化してもよい。式Ia及びbの化合物は、対応するハロ化合物を付加除去することによって調製されてもよい。
【0016】
レドックス開始剤系は、レドックスサイクルに関与する遷移金属錯体を含む。有用な遷移金属化合物は、一般式
[MLn+を有し、式中、Mはレドックスサイクルに関与する遷移金属であり、
Lは配位子であり、Aはアニオンであり、nは1~7、好ましくは1~3の整数値を有する遷移金属上の形式電荷であり、pは1~9、好ましくは1~2の数値を有する遷移金属上の配位子の数である。
【0017】
有用な遷移金属Mは、触媒活性のある原子価状態のCu、Fe、Ru、Cr、Mo、Pd、Ni、Pt、Mn、Rh、Re、Co、V、Au、Nb及びAgである。好ましい低原子価金属としては、Cu(II)、Fe(II)、Ru(II)及びCo(II)が挙げられる。これらと同じ金属の他の原子価状態を使用してもよく、活性のある低原子価状態がin situで発生してもよい。
【0018】
有用なアニオンAとしては、ハロゲン、C~Cアルコキシ、NO 2-、SO 2-、PO 3-、HPO 2-、PF、トリフレート、ヘキサフルオロホスフェート、メタンスルホネート、アリールスルホネート、CN、アルキルカルボキシレート並びにアリールカルボキシレートが挙げられる。
【0019】
配位子Lは、遷移金属塩を好適な溶媒に可溶化させると共に適切な反応性及び選択性のために遷移金属のレドックス電位を調節するために使用される。配位子は、金属錯体を、酸化的付加/還元的脱離のような2電子プロセスではなく、所望の1電子原子移動プロセスを起こすように導くことができる。配位子は、異なるモノマー及び溶媒の存在下で、又は異なる温度において、錯体の安定性を更に増強する場合がある。酸性モノマー及び遷移金属を強く錯化するモノマーは、配位子の適切な選択によっていっそう効率的に重合され得る。
【0020】
有用な配位子としては、σ結合を通して遷移金属に配位することができる1個以上の窒素、酸素、リン及び/又は硫黄原子を有する配位子、π結合を通して遷移金属に配位することができる2個以上の炭素原子を含む配位子、並びにμ結合又はη結合を通して遷移金属に配位することができる配位子が挙げられる。
【0021】
有用な配位子は、σ結合を通して遷移金属に配位することができる1個以上の窒素、酸素、リン及び/又は硫黄原子を有する配位子が挙げられ、最大約30個の炭素原子と、アルミニウム、ホウ素、窒素、硫黄、非ペルオキシド酸素、リン、ヒ素、セレン、アンチモン、及びテルルから選択される最大10個のヘテロ原子とを好ましくは含む一座化合物及び多座化合物によって提供され、ここで、金属原子に付加すると、0個、1個又は2個の水素を失った後に、多座化合物は、好ましくは、金属Mn+と共に4員、5員又は6員の飽和環又は不飽和環を形成する。σ好適な一座化合物又は一座基の例は、一酸化炭素、エタノール、ブタノール、及びフェノールなどのアルコール;ピリジン、ニトロソニウム(すなわち、NO);アンモニア、ホスフィン、トリメチルアミン、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルアミン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルアルシン、トリブチルホスファイトなどの第15族元素の化合物;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;フェニルイソニトリル、ブチルイソニトリルなどのイソニトリル;エトキシメチルカルベン、ジチオメトキシカルベンなどのカルベン基;メチリデン及びエチリデンなどのアルキリデンである。
【0022】
好適な多座化合物又は多座基の例としては、ジピリジル、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジフェニルアルシノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン;ポリアミン、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチルトリス-アミノエチルアミン、ジエチレントリアミン、1,3-ジイソシアノプロパン、及びヒドリドトリピラゾリルボレート;ヒドロキシカルボン酸、例えば、グリコール酸、乳酸、サリチル酸;多価フェノール、例えば、カテコール及び2,2'-ジヒドロキシビフェニル;ヒドロキシアミン、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、及び2-アミノフェノール;ジチオカルバメート、例えば、ジエチルジチオカルバメート、ジベンジルジチオカルバメート;キサンテート、例えば、エチルキサンテート、フェニルキサンテート;ジチオレン、例えば、ビス(ペルフルオロメチル)-1,2-ジチオレン;アミノカルボン酸、例えば、アラニン、グリシン及びo-アミノ安息香酸;ジカルボン酸ジアミン、例えば、オキサルアミド、ビウレット;2,4-ペンタンジオンなどのジケトン;2-ヒドロキシアセトフェノンなどのヒドロキシケトン;サリチルアルドキシムなどのα-ヒドロキシオキシム;ベンジルオキシムなどのケトキシム;1,10-フェナントロリン、ポルフィリン、クリプタンド及び18-クラウン-6などのクラウンエーテル、並びにジメチルグリオキシムなどのグリオキシムが挙げられる。
【0023】
σ結合を通して遷移金属に配位することができる他の好適な配位子は、例えば、F、OH、Cl、Br、I、及びHなどの無機基、並びに、例えば、CN、SCN、アセトキシ、ホルミルオキシ、ベンゾイルオキシなどの有機基である。σ配位子は、ポリマーの単位、例えば、ポリ(エチレンアミン)中のアミノ基;ポリ(4-ビニルフェニルジフェニルホスフィン)中のホスフィノ基;ポリ(アクリル酸)中のカルボン酸基;及びポリ(4-ビニルフェニルイソニトリル)中のイソニトリル基であることもできる。
【0024】
π結合を通して遷移金属に配位することができる2個以上の炭素原子を含む有用な配位子は、利用できる不飽和基、すなわち、エチレン性-C=C-基;アセチレン性-C≡C-基;又は化合物の全分子量に関係なく利用できるπ電子を有する芳香族基、を有する任意のモノマー化合物又はポリマー化合物によって提供される。
【0025】
例示的なπ結合配位子は、100個未満の炭素原子(モノマー状のとき)、好ましくは60個未満の炭素原子、並びに窒素、硫黄、非ペルオキシド酸素、リン、ヒ素、セレン、ホウ素、アルミニウム、アンチモン、テルル、ケイ素、ゲルマニウム、及びスズから選択される0~10個のヘテロ原子を有する、線状又は環状エチレン性及びアセチレン性化合物であり、配位子は、エチレン、アセチレン、プロピレン、メチルアセチレン、α-ブテン、2-ブテン、ジアセチレン、ブタジエン、1,2-ジメチルアセチレン、シクロブテン、ペンテン、シクロペンタン、ヘキセン、シクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、シクロへプテン、1-オクテン、4-オクテン、3,4-ジメチル-3-ヘキセン、及び1-デセン;η-アリル、η-ペンテニル、ノルボルナジエン、η-シクロヘキサジエニル、シクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、並びに最大で25個の環並びに最大で100個の炭素原子及び窒素、硫黄、非ペルオキシド酸素、リン、ヒ素、セレン、ホウ素、アルミニウム、アンチモン、テルル、ケイ素、ゲルマニウム、及びスズから選択される最大で10個のヘテロ原子を有する置換及び非置換の炭素環式及びヘテロ環式芳香族配位子などであり、例えば、η-シクロペンタジエニル、ベンゼン、メシチレン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、クリセン、ピレン、η-シクロヘプタトリエニル、トリフフェニルメタン、パラシクロファン、1,4-ジフェニルブタン、η-ピロール、η-チオフェン、η-フラン、ピリジン、γ-ピコリン、キナルジン、ベンゾピラン、チオクロム、ベンゾキサジン、インドール、アクリジン、カルバゾール、トリフェニレン、シラベンゼン、アルサベンゼン、スチバベンゼン、2,4,6-トリフェニルホスファベンゼン、η-セレノフェン、ジベンゾスタンピン、η-テルロフェン、フェノチアジン、セレナントレン、フェノキサホスフィン、フェナルサジン、フェナテルラジン、η-メチルシクロペンタジエニル、η-ペンタメチルシクロペンタジエニル、及び1-フェニルボラベンゼンなどである。その他の好適な芳香族化合物は、多数の化学ハンドブックのいずれかを参照することによって見つけることができる。
【0026】
好ましい配位子としては、非置換及び置換ピリジン及びビピリジン、テトラメチルエチレンジアミン及びヘキサメチルトリス-アミノエチルアミンなどの多座アミンを含む第三級アミン、アセトニトリル、(CHO)Pなどのホスファイト、1,10-フェナントロリン、ポルフィリン、クリプタンド並びに18-クラウン-6などのクラウンエーテルが挙げられる。最も好ましい配位子は、多座アミン、ビピリジン及びホスファイトである。有用な配位子及び本発明の開始剤系に有用な配位子-金属錯体は、Matyjaszewski and Xia,Chem.Rev.,Vol.101,pp.2921-2990,2001に記載されている。
【0027】
遷移金属錯体に対する光解離性還元剤(式I)のモル比は、概ね、選択された重合性成分を重合するのに有効なものであるが、1000:1~5:1、好ましくは500:1~25:1、より好ましくは250:1~50:1、最も好ましくは200:1~75:1であってもよい。レドックス開始剤系の酸化剤及び光解離性還元剤は、ほぼ等モル量で使用される。一般的に、酸化剤と光解離性還元剤とのモル比は、1:1.5~1.5:1、好ましくは1:1.1~1.1~1である。
【0028】
好適な酸化剤はまた、当業者によく知られており、過硫酸及びその塩、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、セシウム、及びアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい酸化剤としては、過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル、ヒドロペルオキシド(例えば、クミルヒドロペルオキシド)、t-ブチルヒドロペルオキシド、及びアミルヒドロペルオキシド、並びに遷移金属の塩、例えば、塩化コバルト(III)及び塩化第二鉄、硫酸セリウム(IV)、過ホウ酸及びその塩、過マンガン酸及びその塩、過リン酸及びその塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
還元剤及び酸化剤は、適切なフリーラジカル反応速度を得るのに十分な量で存在する。これは、任意の充填剤を除く、重合性組成物の全成分を混ぜ合わせることにより、及び、ハードニングされた塊が得られたか否かを観察することにより、評価することができる。
【0030】
好ましくは、光解離性還元剤は、重合性組成物のモノマー成分の総重量を基準として、少なくとも0.01重量部、より好ましくは少なくとも0.1重量部の量で存在する。好ましくは、還元剤は、重合性組成物の重合性成分の総重量を基準として、10重量部以下、より好ましくは5重量部以下の量で存在する。
【0031】
好ましくは、酸化剤は、重合性組成物の重合性成分の総重量を基準として、少なくとも0.01重量部、より好ましくは少なくとも0.10重量部の量で存在する。好ましくは、酸化剤は、重合性組成物の重合性成分の総重量を基準として、10重量部以下、より好ましくは5重量部以下の量で存在する。
【0032】
硬化性組成物は、フリーラジカル重合速度を加速し得る四級アンモニウムハライドを任意に含む。好適な四級アンモニウムハライドとしては、4つのヒドロカルビル(例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アラルキル、アルカリール、及び/又はアリール)基を有するものが挙げられる。好ましくは、ヒドロカルビル基は、独立して、1~18個の炭素原子、より好ましくは1~12個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。好適なヒドロカルビル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、及びオクタデシル、ベンジル、フェニル、トリル、シクロヘキシル、並びにメチルシクロヘキシルが挙げられる。例示的な好適な四級アンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウムハライド、テトラエチルアンモニウムハライド、テトラプロピルアンモニウムハライド、テトラブチルアンモニウムハライド、エチルトリメチルアンモニウムハライド、ジエチルジメチルアンモニウムハライド、トリメチルブチルアンモニウムハライド、トリオクチルメチルアンモニウムハライド、及びベンジルトリブチルアンモニウムハライドが挙げられる。任意のハライド(例えば、F、Cl、Br、I)イオンを四級アンモニウムハライドで用いてよいが、好ましくは、ハライドイオンは、塩化物又は臭化物である。
【0033】
四級アンモニウム塩は、任意の量で硬化性組成物中に存在してもよいが、好ましくは0.01~5重量%、好ましくは0.1~2%の量で存在し得るが、他の量も重合性モノマー100部に対して使用されてもよい。
【0034】
本開示は、レドックス開始剤系(遷移金属錯体、酸化剤及び光解離性還元剤を含む)と、少なくとも1つの重合性成分モノマー、例えばビニルモノマー、及び(メタ)アクリロイルモノマー((メタ)アクリレートホモコポリマー及びコポリマーを生成するためのアクリレートエステル、アミド、及び酸を含む)と、を含む重合性組成物を更に提供する。レドックス開始剤系は、重合性組成物の重合性成分100重量部を基準として、約0.1~約10重量部、好ましくは0.1~5重量部の量で組成物中に存在する。
【0035】
いくつかの実施形態において、重合性組成物は、レドックス開始剤系と1つ以上のビニルモノマーとを含む。重合性組成物に有用なビニルモノマーとしては、ビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル)、ビニルエステル(例えば、ビニルアセテート及びビニルプロピオネート)、スチレン、置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン)、ビニルハライド、ジビニルベンゼン、アルケン(例えば、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキシレンからドデセンまで、イソプレン、ブタジエンの異性体)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
いくつかの実施形態において、重合性組成物は、1つ以上の(メタ)アクリレートエステルモノマーを含む。(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの調製に有用な(メタ)アクリレートエステルモノマーは、非三級アルコールの(メタ)アクリル酸エステルモノマーであり、このアルコールは、1~14個の炭素原子、好ましくは平均で4~12個の炭素原子を含有する。
【0037】
(メタ)アクリレートエステルモノマーとして用いるのに好適なモノマーの例としては、非三級アルコール、例えばエタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、イソオクチルアルコール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、2-プロピルヘプタノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノール、シトロネロール、ジヒドロシトロネロールなどと、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれかとのエステルが挙げられる。いくつかの実施形態では、好ましい(メタ)アクリレートエステルモノマーは、(メタ)アクリル酸とブチルアルコール若しくはイソオクチルアルコールとのエステル、又はこれらの組み合わせであるが、2種以上の異なる(メタ)アクリレートエステルモノマーの組み合わせが好適である。いくつかの実施形態では、好ましい(メタ)アクリレートエステルモノマーは、2-オクタノール、シトロネロール、又はジヒドロシトロネロールなどの再生可能な資源に由来するアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである。
【0038】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、高ガラス転移(T)モノマーを含むことが望ましい。これらの高Tモノマーのホモポリマーは、少なくとも25℃、及び好ましくは少なくとも50℃のTを有する。本発明に有用な好適なモノマーの例としては、限定するものではないが、t-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、3,3,5トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N-オクチルアクリルアミド、及びプロピルメタクリレート、又は組み合わせが挙げられる。
【0039】
(メタ)アクリレートエステルモノマーは、ポリマーを調製するために使用される全モノマー含量(多官能性(メタ)アクリレートの量を除く)100部を基準として、最大100重量部、好ましくは85~99.5重量部の量で存在する。好ましくは、(メタ)アクリレートエステルモノマーは、全モノマー含量100部を基準として90~95重量部の量で存在する。高Tモノマーが含まれるとき、コポリマーは、最大50重量部、好ましくは最大20重量部の(メタ)アクリレートエステルモノマー成分を含んでもよい。
【0040】
重合性組成物は、酸官能性モノマー含んでもよく、ここで酸官能基は、カルボン酸などの酸そのものであってもよく、又は一部分は、その塩、例えば、アルカリ金属カルボン酸塩であってもよい。有用な酸官能性モノマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和スルホン酸、エチレン性不飽和ホスホン酸又はリン酸、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。このような化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、オレイン酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。
【0041】
入手しやすさから、酸官能性共重合体の酸官能性モノマーは、概して、エチレン性不飽和カルボン酸、すなわち(メタ)アクリル酸から選択される。更により強い酸が所望である場合、酸性モノマーとしては、エチレン性不飽和スルホン酸及びエチレン性不飽和ホスホン酸が挙げられる。酸官能性モノマーは、一般に、合計100重量部のモノマーを基準として、0.5~15重量部、好ましくは1~15重量部、最も好ましくは5~10重量部の量で使用される。
【0042】
重合性組成物は、極性モノマーを含んでもよい。コポリマーの調製に有用な極性モノマーは、油溶性と水溶性の両方の性質をある程度有し、その結果、乳化重合中の水相と油相との間に、極性モノマーが分配される。本明細書で使用するとき、用語「極性モノマー」は、酸官能性モノマーを含まない。
【0043】
好適な極性モノマーの代表的な例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;N-ビニルピロリドン;N-ビニルカプロラクタム;アクリルアミド;モノ-又はジ-N-アルキル置換アクリルアミド;t-ブチルアクリルアミド;ジメチルアミノエチルアクリルアミド;N-オクチルアクリルアミド;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリ(アルコキシアルキル)(メタ)アクリレート、例えば2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど;アルキルビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテルなど;並びにこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。好ましい極性モノマーとしては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びN-ビニルピロリドンからなる群から選択されるものが挙げられる。極性モノマーは、全モノマー100重量部を基準として、0~10重量部、好ましくは0.5~5重量部の量で存在してよい。
【0044】
重合性組成物は、アクリルコポリマーを調製するときに、ビニルモノマーを更に含んでもよい。使用される場合、(メタ)アクリレートポリマーにおいて有用なビニルモノマーとしては、ビニルエステル(例えば、ビニルアセテート及びビニルプロピオネート)、スチレン、置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン)、ビニルハライド、ジビニルベンゼン、及びこれらの混合物が挙げられる。α本明細書で使用するとき、ビニルモノマーは、酸官能性モノマー、アクリレートエステルモノマー及び極性モノマーを除外する。かかるビニルモノマーは、アクリルコポリマーを調製するとき、全モノマー100重量部を基準として、0~5重量部、好ましくは1~5重量部で概して使用される。
【0045】
多官能性(メタ)アクリレートは、重合性モノマーの配合物に組み込まれてもよい。有用な多官能性(メタ)アクリレートの例としては、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレート、例えば1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート及びプロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレートなど、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。多官能性(メタ)アクリレートの量及び種類(identity)は、接着剤組成物、例えば、接着剤、又はハードコートの用途に応じて調整される。
【0046】
典型的には、多官能性(メタ)アクリレートは、残りの重合性単官能性モノマー100重量部を基準として、最大100部、好ましくは0.1~100部の量で存在する。いくつかの実施形態において、多官能性(メタ)アクリレートは、残りの重合性モノマー100重量部を基準として、50重量部よりも多い量で使用される。いくつかの実施形態では、多官能性(メタ)アクリレートは、接着剤用途の重合性組成物の全モノマー100部を基準として、0.01~5部、好ましくは0.05~1部の量で、また、ハードコートに関しては、より多くの量で存在してもよい。
【0047】
かかる実施形態において、アクリルコポリマーは、以下を含む重合性組成物から調製されてもよい:
i.最大100重量部、好ましくは85~99.5重量部の(メタ)アクリル酸エステル、
ii.0~15重量部、好ましくは0.5~15重量部の酸官能性エチレン性不飽和モノマー、
iii.0~15重量部の非酸官能性エチレン性不飽和極性モノマー、
iv.0~5重量部のビニルモノマー、
v.i~ivに対して、0~100重量部、好ましくは50~100重量部の多官能性(メタ)アクリレート、
及び
vi.i~vの全モノマー100部に対して、約0.1重量%~約5.0重量%、の量のレドックス開始剤系(錯体、酸化剤及び光解離性還元剤を含む)。
【0048】
重合性組成物は、その他の添加剤も含んでもよい。好適な添加剤の例としては、粘着付与剤(例えば、ロジンエステル、テルペン、フェノール、及び脂肪族、芳香族、又は脂肪族及び芳香族の合成炭化水素樹脂の混合物)、界面活性剤、可塑剤(物理的発泡剤以外)、核形成剤(例えば、タルク、シリカ、又はTiO)、顔料、染料、補強剤、固体充填剤、安定剤(例えば、UV安定剤)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。添加剤は、製造する硬化組成物に所望される特性を得るのに十分な量で添加することができる。所望の特性は、得られるポリマー物品に意図される用途により大部分が決定される。
【0049】
着色剤、研磨顆粒、酸化防止安定剤、熱分解安定剤、光安定剤、導電性粒子、粘着付与剤、流動化剤、フィルム形成ポリマー、増粘剤、艶消し剤、不活性充填剤、結合剤、発泡剤、殺真菌剤、殺菌剤、界面活性剤、可塑剤、ゴム強靭化剤、及び当業者に公知のその他の添加剤などの補助剤を、任意に組成物に添加してもよい。これらは、例えば無機充填剤及び有機充填剤のような実質的に非反応性の物質であってもよい。これらの補助剤は、存在する場合、それらに意図される目的に有効な量で添加される。
【0050】
いくつかの実施形態では、強靭化剤(toughening agent)を用いてもよい。本発明で有用な強靭化剤は、ゴム相及び熱可塑性相の両方を有するポリマー化合物、例えば、重合したジエンゴムコア及びポリアクリレートポリメタクリレートシェルを有するグラフトポリマー;ゴムポリアクリレートコア及びポリアクリレート又はポリメタクリレートシェルを有するグラフトポリマー;並びにフリーラジカル重合性モノマー及び共重合性ポリマー安定剤からエポキシド中にてin situで重合されるエラストマー粒子である。
【0051】
第1の種類の有用な強靭化剤の例としては、参照により本明細書に援用される米国特許第3,496,250号(Czerwinski)に開示されているような、アクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルのシェルがグラフト化される重合したジエンゴム骨格鎖又はコア、モノビニル芳香族炭化水素、又はそれらの混合物を有するグラフトコポリマーが挙げられる。好ましいゴム状骨格は、重合したブタジエン又はブタジエンとスチレンとの重合した混合物を含む。重合メタクリル酸エステルを含む好ましいシェルは、低級アルキル(C~C)置換メタクリレートである。好ましいモノビニル芳香族炭化水素は、スチレン、αメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、エチルビニルベンゼン、イソプロピルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、及びエチルクロロスチレンである。グラフトコポリマーは、触媒に害となる官能基を含有しないことが重要である。
【0052】
第2の種類の有用な強靭化剤の例は、アクリレートコア-シェルグラフトコポリマーであり、ここで、コア又は骨格は、約0℃未満のガラス転移温度を有する、ポリブチルアクリレート又はポリイソオクチルアクリレートなどのポリアクリレートポリマーであり、そこにポリメチルメタクリレートなどの約25℃よりも高いガラス転移温度を有するポリメタクリレートポリマー(シェル)がグラフトされている。
【0053】
本発明において有用な第3のクラスの強靭化剤は、組成物の他の構成成分と混合する前に、約25℃未満のガラス転移温度(T)を有するエラストマー粒子を含む。これらのエラストマー粒子は、フリーラジカル重合性モノマーと、樹脂に可溶性である共重合性ポリマー安定剤とから重合される。フリーラジカル重合性モノマーは、ジオール、ジアミン、及びアルカノールアミンなどの共反応性二官能性水素化合物と組み合わせた、エチレン性不飽和モノマー又はジイソシアネートである。
【0054】
有用な強靭化剤としては、コアが架橋スチレン/ブタジエンゴムであり、シェルがポリメチルアクリレートである、メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)コポリマーなどのコア/シェルポリマー(例えば、Rohm and Haas(Philadelphia,PA)から入手可能なACRYLOID KM653及びKM680)、ポリブタジエンを含むコアと、ポリ(メチルメタクリレート)を含むシェルと、を有するもの(例えば、Kaneka Corporation(Houston,TX)から入手可能なKANE ACE M511、M521、B11A、B22、B31、及びM901、並びにATOFINA(Philadelphia,PA)から入手可能なCLEARSTRENGTH C223)、ポリシロキサンコア及びポリアクリレートシェルを有するもの(例えば、ATOFINAから入手可能なCLEARSTRENGTH S-2001、及びWacker-Chemie GmbH,Wacker Silicones,(Munich,Germany)から入手可能なGENIOPERL P22)、ポリアクリレートコア及びポリ(メチルメタクリレート)シェルを有するもの(例えば、Rohm and Haasから入手可能なPARALOID EXL2330、及び武田薬品工業株式会社(大阪、日本)から入手可能なスタフィロイドAC3355及びAC3395)、MBSコア及びポリ(メチルメタクリレート)シェルを有するもの(例えば、Rohm and Haasから入手可能なPARALOID EXL2691A、EXL2691、及びEXL2655)など、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましい変性剤は、先に挙げたACRYLOID及びPARALOID変性剤など、並びにこれらの混合物を含む。
【0055】
強靭化剤は、重合性組成物の重合性成分100重量部を基準として、約1~35重量部、好ましくは約3~25重量部に等しい量で有用である。強靭化剤は、重合性組成物の構成成分と反応すること又は硬化に干渉することなく、硬化後の組成物に強度を付与する。
【0056】
いくつかの実施形態において、重合性組成物は、1つ以上の非フリーラジカル重合性フィルム形成ポリマーを含んでもよい。用語「フィルム形成有機ポリマー」は、乾燥すると一様に凝結する有機ポリマーを指す。組成物への使用に好適なフィルム形成ポリマーは、概ね、熱可塑性有機ポリマーである。
【0057】
好適なポリマーの例としては、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリカプロラクトン;コポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレートイソフタレート;ポリアミド、例えば、ポリヘキサメチレンアジプアミド;ビニルポリマー、例えば、ポリ(ビニルアセテート/メチルアクリレート)、ポリ(塩化ビニリデン/ビニルアセテート);ポリオレフィン、例えば、ポリスチレン及びスチレンとアクリレートのコポリマー、例えば、ポリ(スチレン-co-ブチルアクリレート);ポリジエン、例えば、ポリ(ブタジエン/スチレン);アクリルポリマー、例えば、ポリ(メチルメタクリレート-co-エチルアクリレート)、ポリ(メチルアクリレート-co-アクリル酸);ポリウレタン、例えば、脂肪族、脂環式又は芳香族ジイソシアネートとポリエステルグリコール又はポリエーテルグリコールとの反応生成物;並びにセルロース誘導体、例えば、エチルセルロースなどのセルロースエーテル及びセルロースアセテート/ブチレートなどのセルロースエステルが挙げられる。フィルム形成ポリマーの組み合わせも使用してもよい。このようなポリマーの水性エマルション又はラテックスを調製する方法及び材料はよく知られていて、市販供給源から広く入手可能である。
【0058】
いくつかの実施形態では、架橋性組成物には充填剤を含有させることができる。いくつかの実施形態では、充填剤の合計重量は、最大で50重量%、好ましくは最大で30重量%、並びにより好ましくは最大で10重量%の充填剤である。充填剤は、当該技術分野において既知の幅広い材料から1種以上選択することができ、充填剤としては、有機及び無機充填剤が挙げられる。無機充填剤粒子としては、シリカ、サブミクロンのシリカ、ジルコニア、サブミクロンのジルコニア、及び米国特許第4,503,169号(Randklev)に記載されている種類の非ガラス質微小粒子が挙げられる。
【0059】
充填剤成分としては、ナノサイズのシリカ粒子、ナノサイズの金属酸化物粒子、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ナノ充填剤はまた、米国特許第7,090,721号(Craigら)、同第7,090,722号(Buddら)、同第7,156,911号、及び同第7,649,029号(Kolbら)に記載されている。
【0060】
いくつかの実施形態では、充填剤は、表面改質されてもよい。ナノ粒子の表面を改質するには、例えばナノ粒子に表面改質剤(例えば、粉末又はコロイド分散液の形態で)を加えて、表面改質剤をナノ粒子と反応させるなどの多くの従来法がある。他の有用な表面改質方法は、例えば、米国特許第2,801,185号(Iler)及び米国特許第4,522,958号(Dasら)、米国特許第6,586,483号(Kolbら)に記載されており、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
表面修飾基は表面改質剤から誘導することができる。概略的に、表面改質剤は、式X-Yによって表すことができ、式中、X基は、粒子の表面に結合することができ(すなわち、シリカ粒子のシラノール基)、Y基は、反応性又は非反応性官能基である。非官能基は、系の他の構成成分(例えば、基材)と反応しない。非反応性官能基は、粒子の極性を比較的高く、比較的低く、又は比較的非極性とするように、選択することができる。いくつかの実施形態では、非反応性官能基「Y」は、酸基(カルボン酸塩、スルホン酸塩、及びホスホン酸塩基を含む)、アンモニウム基若しくはポリ(オキシエチレン)基、又はヒドロキシル基などの親水基である。他の実施形態において、「Y」は、重合性樹脂又はモノマーとフリーラジカル重合することができる、ビニル、アリル、ビニルオキシ、アリルオキシ、及び(メタ)アクリロイルを含むエチレン性不飽和重合性基などの反応性官能基であってもよい。
【0062】
このような、場合に応じて用いられる表面改質剤は、シリカナノ粒子の表面官能基(Si-OH基)の0~100%、一般には1~90%(存在する場合)が官能化される量で使用することができる。官能基の数は、所定量のナノ粒子を、利用可能な反応部位が全て表面改質剤によって官能化されるように過剰量の表面改質剤と反応させることによって実験的に決定される。次いでその結果から、より低い割合の官能化が計算される。一般に表面改質剤の量は、無機ナノ粒子の重量に対して同じ重量の表面改質剤の最大で2倍の重量が与えられるだけの充分な量で使用される。使用するとき、表面改質剤の無機ナノ粒子に対する重量比は、好ましくは2:1~1:10である。表面改質されたシリカナノ粒子が望ましい場合、コーティング組成物に添加する前にナノ粒子を改質することが好ましい。
【0063】
本重合性組成物は、ハードコート及び構造用又は半構造用接着剤の調製にも有用である。用語「ハードコート」又は「ハードコート層」は、対象の外部表面上に配置された層又はコーティングを意味し、層又はコーティングは、対象を少なくとも磨耗から保護するよう設計される。
【0064】
本開示は、レドックス開始剤系と、2個(好ましくは3個)以上の(メタ)アクリレート基を含む多官能性(メタ)アクリレートモノマー、及び/又は多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーと、任意に(メタ)アクリレート官能性希釈剤と、を含む、ハードコート組成物を提供する。
【0065】
有用な多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、3つ以上の(メタ)アクリレート基を含む。多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、ハードコート層に摩耗耐性を加えるため、本発明の実施において有用である。3個以上の(メタ)アクリレート基を含む好ましい多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(Sartomer 355)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(Sartomer 399)、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート(DPHPA)、グリセリルプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。本発明の別の有用な放射線硬化性成分は、2個又はそれ以上の(メタ)アクリレート基を有し、約400~2000の範囲の平均分子量(M)を有する種類の、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーである。
【0066】
有用な多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリレート化エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル化エポキシ(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートは、比較的低粘度を有する傾向にあるため、スピンコーティング法によってより均一な層を適用可能になるという理由で、最も好ましい。具体的には、好ましい多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、UCB Radcure,Inc.(Smyrna,Georgia)から商品名EBECRYL(Eb)で市販のものがあり、例えば:Eb40(四官能性アクリレート化ポリエステルオリゴマー)、ENO(ポリエステル四官能性(メタ)アクリレートオリゴマー)、Eb81(多官能性(メタ)アクリレート化ポリエステルオリゴマー)、Eb600(ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート)、Eb605(25%トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートにより希釈したビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート)、Eb639(ノボラックポリエステルオリゴマー)、Eb2047(三官能性アクリレート化ポリエステルオリゴマー)、Eb3500(二官能性ビスフェノール-Aオリゴマーアクリレート)、Eb3604(多官能性ポリエステルオリゴマーアクリレート)、Eb6602(三官能性芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー)、Eb8301(六官能性脂肪族ウレタンアクリレート)、EbW2(二官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー)、及びこれらの混合物が挙げられる。もちろんのこと、最も好ましいのはEb600、Eb605、Eb80、及びEb8lである。
【0067】
分子量は、メルカプタン、ジスルフィド、トリエチルシラン、四臭化炭素、四塩化炭素、α-メチルスチレン及びその他の当該技術分野において既知のものなどの連鎖移動剤及び連鎖遅延剤(chain retarding agent)の使用によって制御してもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーは、
a)50重量部超、好ましくは75重量部超、最も好ましくは80重量部超の、(メタ)アクリレートエステルモノマー単位と、
b)1~10重量部、好ましくは、1~5重量部、最も好ましくは、1~3重量部の、ペンダントフリーラジカル重合性官能基を有するモノマー単位と、
c)0~20重量部のその他の極性モノマー単位と、
を含み、モノマー単位の合計が、100重量部である、ペンダント重合性基を有する反応性オリゴマーを含んでもよい。
【0069】
反応性オリゴマーは、式:
-[MUnsatd[Mester[Mpolar-、II
(式中、
[MUnsatd]は、ペンダントフリーラジカル重合性官能基を有するモノマー単位を表し、下付き文字「o」はその重量部(parts be weight)であり、
[Mester]は、(メタ)アクリレートエステルモノマー単位を表し、下付き文字「p」はその重量部を表し、
[Mpolar]は、極性モノマー単位を表し、下付き文字「q」はその重量部を表す]によって表すことができる。
【0070】
組成物の反応性オリゴマー(II)は、例えば、(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルオキシ、プロパルギル、ビニル、アリル、アセチレニル及び(メタ)アクリルアミドなどのフリーラジカル重合性不飽和を含む1以上のペンダント基を含む。すなわち、モノマー単位[MUnsatd]は、かかる重合性基を含有する。
【0071】
ペンダント重合性不飽和基をオリゴマーに組み込む間接的方法は、前駆体オリゴマーのモノマー単位に反応性官能基を含めることであり、前駆体オリゴマーは、前駆体オリゴマーの官能基と共反応性である官能基を有するエチレン性不飽和化合物で更に官能化され得る。
【0072】
有用な反応性官能基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、オキサゾロニル基、オキサゾリニル基、アセトアセチル基、アズラクトニル基、カルボキシル基、イソシアナト基、エポキシ基、アジリジニル基、ハロゲン化アシル基、及び環状無水物基が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中で好ましいのは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アズラクトニル基及びアジリジニル基である。これらのペンダント反応性官能基は、反応性ペンダント官能基と共反応性である官能基を含む不飽和化合物と反応する。2つの官能基が反応すると、ペンダント不飽和を有するオリゴマーが得られる。いくつかの用途において、オリゴマー上のペンダント官能基の一部が未反応の状態であるように、共反応性官能基を含む不飽和化合物を化学量論的当量よりも少なく使用することが望ましい場合がある。具体的には、式IIIの反応性オリゴマーは、官能化されて式IIの反応性オリゴマーを提供し得る反応性官能基を有する、式[MFG]のモノマー単位を有する前駆体オリゴマーから調製され得る。
【0073】
ペンダントフリーラジカル重合性官能基を組み込む「間接的方法」を使用するとき、有用な反応性官能基としては、ヒドロキシル基、二級アミノ基、オキサゾリニル基、オキサゾロニル基、アセチル基、アセトニル基、カルボキシル基、イソシアナト基、エポキシ基、アジリジニル基、ハロゲン化アシル基、ビニルオキシ基、及び環状無水物基が挙げられる。ペンダント反応性官能基がイソシアナト官能基の場合、共反応性官能基は、好ましくは、二級アミノ基又はヒドロキシル基を含む。ペンダント反応性官能基がヒドロキシル基を含む場合、共反応性官能基は、好ましくは、カルボキシル基、エステル基、ハロゲン化アシル基、イソシアナト基、エポキシ基、無水物基、アズラクトニル基、又はオキサゾリニル基を含む。ペンダント反応性官能基がカルボキシル基を含む場合、共反応性官能基には、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、又は、オキサゾリニル基が含まれているのが好ましい。最も一般的には、反応は求核性官能基と求電子性官能基との間のものである。
【0074】
前駆体オリゴマーの官能化に使用できる好ましいエチレン性不飽和化合物は、一般式:
【化2】
[式中、R21は、水素、C~Cアルキル基、又はフェニル基、好ましくは水素又はメチル基であり、R20は、単結合、又はエチレン性不飽和基を共反応性官能基「FG」に結合させる二価の連結基であり、好ましくは、最大34個、好ましくは最大18個、より好ましくは最大10個の炭素、並びに任意で、酸素及び窒素原子を含有し、R20が単結合ではない場合、好ましくは、
【化3】
から選択され、式中、R22は、1~6個の炭素原子を有するアルキレン基、5~10個の炭素原子を有する5員若しくは6員のシクロアルキレン基、又は各アルキレンが1~6個の炭素原子を有するアルキレン-オキシアルキレンであるか、又は6~16個の炭素原子を有する二価の芳香族基であり、FGは共反応性官能基であって、フリーラジカル重合性官能基を組み込むためにオリゴマーのペンダント反応性官能基と反応することができる。]を有する。
【0075】
共反応性官能基を有する式IVの有用な化合物の代表的な例としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート;アミノアルキル(メタ)アクリレート、例えば、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート及び4-アミノスチレン;オキサゾリニル化合物、例えば、2-エテニル-1,3-オキサゾリン-5-オン、2-ビニル-4,4-ジメチル-1,3-オキサゾリン-5-オン、2-イソプロペニル-4,4-ジメチル-1,3-オキサゾリン-5-オン及び2-プロペニル-4,4-ジメチル-1,3-オキサゾリン-5-オン;カルボキシ置換化合物、例えば、(メタ)アクリル酸及び4-カルボキシベンジル(メタ)アクリレート;イソシアナト置換化合物、例えば、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート及び4-イソシアナトシクロヘキシル(メタ)アクリレート;エポキシ置換化合物、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート;アジリジニル置換化合物、例えば、N-アクリロイルアジリジン及び1-(2-プロペニル)-アジリジン;並びにハロゲン化アクリロイル、例えば、塩化(メタ)アクリロイルが挙げられる。
【0076】
反応性オリゴマーは、それ自体と、又はヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどの多官能性アクリレートと、レドックス重合してもよい。ペンダント重合性基を有する反応性オリゴマーは、米国特許第7598298号(Lewandowskiら)、同第7342047号(Lewandowskiら)及び同第7074839号(Fanslerら)に記載のように調製されてもよく、このそれぞれを参照により本明細書に援用する。
【0077】
重合性反応性オリゴマー構成成分は、希釈剤モノマーを更に含んでもよい。本明細書において「反応性希釈剤」とも称される(メタ)アクリレート官能性希釈剤は、比較的低分子量の一又は二官能性非芳香族(メタ)アクリレートモノマーである。これらの比較的低分子量の反応性希釈剤は、有利には、比較的低い粘度のもの、例えば、25℃で約30センチポアズ(cps)未満のものである。二官能性非芳香族(メタ)アクリレートは、二官能性非芳香族(メタ)アクリレートがより迅速な硬化時間を可能にするため、概して、単官能性非芳香族(メタ)アクリレートよりも好ましい。好ましい反応性希釈剤としては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(UCB Radcure,Inc.(Smyrna,Georgia)のHDDA)、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート(1130A,Radcure)、2(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート(SARTOMER Company,Inc.(Exton,Pennsylvania)から商標名Sartomer 256で販売されている)、n-ビニルホルムアミド(Sartomer 497)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート(Sartomer 285)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(Sartomer 344)、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(Radcure)、ネオペンチルグリコールジアルコキシジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0078】
いくつかの実施形態において、重合性組成物は、
20~80重量部の多官能性(メタ)アクリレートモノマー及び/又は多官能性(メタ)アクリレート反応性オリゴマーと、
0~の重量部範囲の(メタ)アクリレート希釈剤と、
20~75重量%のシリカ(官能化の有無にかかわらず、それ自体)と、
重合性組成物の重合性成分100重量部を基準として、約0.1重量%~約5.0重量%のレドックス開始剤系と、を含んでもよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、重合性組成物は、部分的に硬化された組成物が2つの基材(又は被着体)の間に配置され、続いて、完全に硬化されて、基材間の構造的又は半構造的な結合をもたらす、構造用及び半構造用接着剤組成物を提供する。「半構造用接着剤」は、少なくとも約0.5MPa、より好ましくは少なくとも約1.0MPa、最も好ましくは少なくとも約1.5MPaの重なり剪断強度(overlap shear strength)を有する硬化接着剤である。しかし、特に高い重なり剪断強度を有するかかる硬化接着剤は、構造用接着剤と呼ばれる。「構造用接着剤」は、少なくとも約3.5MPa、より好ましくは少なくとも約5MPa、最も好ましくは少なくとも約7MPaの重なり剪断強度を有する硬化接着剤である。
【0080】
いくつかの実施形態では、本開示は、レドックス開始剤系と、a)(メタ)アクリレートエステルモノマー単位、ヒドロキシル官能性モノマー単位、及び重合性基を有するモノマー単位を含む、第1の反応性オリゴマーと、b)C~Cアルキレンオキシド繰り返し単位及び重合性末端基を含む、第2の構成成分と、c)希釈剤モノマー成分と、を含む接着剤組成物を提供する。
【0081】
第1の構成成分の反応性オリゴマーは、一般式:
~[MEster-[MOH-[MPolar-[MSilyl-[MPoly~、
(式中、
-[MEster]-は、共重合された(メタ)アクリレートエステルモノマー単位を表し、下付き文字aは、50重量部よりも大きく、
-[MOH]-は、ペンダントヒドロキシ基を有する共重合された(メタ)アクリロイルモノマー単位を表し、下付き文字bは0~20重量部を表し、
[MPolar]は、任意の極性モノマー単位を表し、下付き文字cは0~20、好ましくは1~10重量部であり、
[MSilyl]は、シリル官能性モノマー単位を表し、下付き文字eは0~10、好ましくは1~5重量部であり、
[MPoly]は、重合性基シラン官能性モノマー単位を含むモノマー単位を表し、下付き文字dは1~10重量部を表す]のものである。下付き文字a~eの合計は100重量部である。波線符号は、連続するポリマー鎖を表す。かかる反応性オリゴマーは、出願人の同時係属米国特許出願公開第2015/0284601号(Yurtら、参照により本明細書に援用する)及び国際公開第2014/078115号(Behlingら)に更に記載されている。Yurtの‘601号に教示されるように、オリゴマーは、MOHモノマーのペンダントヒドロキシ基の官能化によって、重合性基(MPoly単位)で官能化される。Yurtの‘601号の第2の構成成分は、C~Cアルキレンオキシド単位と、1~3個の末端重合性基、例えば(メタ)アクリレート基とを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、従来の表面改質剤により改質されたシリカ及び未改質のシリカを含むシリカの量は、20~75重量%、好ましくは、50~70重量%である。
【0083】
充填剤成分としては、ナノサイズのシリカ粒子、ナノサイズの金属酸化物粒子、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ナノ充填剤は、米国特許第7,090,721号(Craigら)、同第7,090,722号(Buddら)、同第7,156,911号(Kangasら)、及び同第7,649,029号(Kolbら)にも記載されている。
【0084】
本発明の重合は、バルクで、又は溶媒中で実施されてもよい。溶媒は、好ましくは有機であり、重合性モノマーにおける開始剤及び開始剤系の溶解を補助するために、及び加工助剤として、使用できる。好ましくは、かかる溶媒は、構成成分と反応性ではない。重合性組成物の調製を単純化するために、少量の溶媒中で遷移金属錯体の濃縮溶液を調製することが有利であり得る。
【0085】
好適な溶媒としては、エーテル、例えば、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、ジ-t-ブチルエーテル、グリム(ジメトキシエタン)、ジグリム、ジエチレングリコールジメチルエーテル;環状エーテル、例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン;アルカン;シクロアルカン;芳香族炭化水素溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン;ハロゲン化炭化水素溶媒;アセトニトリル;ラクトン、例えば、ブチロラクロン、及びバレロラクトン;ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノン;スルホン、例えば、テトラメチレンスルホン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン、ブタジエンスルホン、メチルスルホン、エチルスルホン、プロピルスルホン、ブチルスルホン、メチルビニルスルホン、2-(メチルスルホニル)エタノール、及び2,2'-スルホニルジエタノール;スルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシド;環状カーボネート、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びビニレンカーボネート;カルボン酸エステル、例えば、エチルアセテート、Methyl Cellosolve(商標)及びメチルホルメート;及びその他の溶媒、例えば、塩化メチレン、ニトロメタン、アセトニトリル、グリコールサルファイト及び1,2-ジメトキシエタン(グリム)、かかる溶媒の混合物、並びに超臨界溶媒(COなど)が挙げられる。本発明の重合はまた、既知の懸濁重合、乳化重合、及び沈殿重合プロセスに従って実施されてもよい。
【0086】
好ましくは、レドックス開始剤系のモノマー及び構成成分は、開始の速度が、発生したラジカル基がポリマーラジカルに伝播及び/又は移動する速度よりも1,000分の1以下(好ましくは100分の1以下)遅いように選択される。本願において、「伝播」とは、ポリマー-モノマー付加体ラジカルを形成するためのポリマーラジカルとモノマーとの反応を意味する。
【0087】
重合は、-78~200℃、好ましくは0~160℃、最も好ましくは20~100℃の温度で実施してもよい。反応は、モノマーのうちの少なくとも10%(好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%)をポリマーに変換するのに十分な時間の長さで行うのがよい。典型的には、反応時間は、数分から5日、好ましくは30分から3日、及び最も好ましくは1~24時間である。
【0088】
好ましくは、重合性組成物は、遷移金属錯体が第1の混合物中にあり、酸化剤、光解離性還元剤、及び任意の充填剤が、第1の混合物中にある、「2剤型」の系を含む。重合性モノマーは、第1及び/又は第2の混合物の部分であってもよく、好ましくは第1の混合物中にある。2つの部分を組み合わせ、任意に基材上にコーティングし、化学線への曝露によってレドックス反応が開始される。別の実施形態において、重合性組成物は、遷移金属錯体、光解離性還元剤及び重合性モノマー成分が第1の混合物中にあり、酸化剤が第2の混合物中にある「2剤型」の系を含む。
【0089】
重合性組成物及びレドックス開始剤系は、組み合わされ、活性化UV放射が照射されて光解離性遷移金属錯体を開裂又は断片化し、レドックスサイクルを開始し、重合性成分を重合し得る。UV光源には2つの種類があり得る。すなわち、1)、280~400ナノメートルの波長範囲にわたって、概ね10mW/cm以下(例えば、Electronic Instrumentation&Technology,Inc.(Sterling,VA)によって製造されたUvimap(商標)UM365L-S放射計を用いて、United States National Institute of Standards and Technologyによって承認された手順に従って測定した場合)をもたらす、バックライト等の比較的低強度の光源、及び2)概ね10mW/cm超、好ましくは15~450mW/cmの強度をもたらす中圧水銀ランプ等の比較的高強度の光源である。重合性組成物を完全に又は部分的に重合させるために化学線を使用する場合、高い強度及び短い曝露時間が好ましい。例えば、600mW/cmの強度、及び約1秒間の曝露時間を成功裡に使用することができる。強度は、約0.1~約150mW/cm、好ましくは約0.5~約100mW/cm、より好ましくは約0.5~約50mW/cmの範囲をとり得る。Clearstone UV LEDランプ(Clearstone Technologies Inc.,Hopkins,MN 385nm)などのUV LEDも使用してもよい。
【0090】
上記組成物は、特定の基材に適するように改変された従来のコーティング技術を用いて基材上にコーティングされる。例えば、これらの組成物は、ローラーコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング及びダイコーティングなどの方法によって、様々な固体基材に適用することができる。これらの様々なコーティング方法によって、組成物を様々な厚さで基材上に配置することが可能となり、それによって組成物のより広範な使用が可能となる。
【0091】
重合性組成物を、従来のコーティング技術を用いて様々な可撓性及び非可撓性基材上にコーティングして、コーティングされた物品を製造することができる。可撓性基材は、本明細書において、テープ裏材として従来から利用されている、又は任意の他の柔軟性材料であってもよい、任意の材料と定義される。例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、及びエチルセルロースなどのプラスチックフィルムが挙げられるが、これらに限定されない。発泡体裏材を使用してもよい。
【0092】
いくつかの好ましい実施形態において、基材は、レドックスサイクルを開始するために使用されるUV放射を透過するように選択されてもよい。コーティングされた物品は、その後、透明な基材の厚みを通して開始されてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、基材は剥離ライナーであり、基材/接着剤層/剥離ライナー、又は剥離ライナー/接着剤/剥離ライナーという構造の接着剤物品を形成する。接着剤層は、硬化、未硬化、又は部分的に硬化されていてよい。剥離ライナーは、典型的には、硬化性組成物に対する親和性が低い。例示的な剥離ライナーは、紙(例えば、クラフト紙)、又は他の種類のポリマー材料から調製可能である。いくつかの剥離ライナーは、シリコーン含有材料又はフルオロカーボン含有材料などの剥離剤の外層でコーティングされている。剥離コーティングは、溶媒法又は無溶媒法によって適用できる。
本発明は、以下の態様を包含する。
(1)重合性成分と、
下記を含むレドックス開始剤系:
a)レドックスサイクルに関与する遷移金属錯体、
b)酸化剤、
下記式の光解離性還元剤:
【化8】
[式中、
、R 、及びR は、それぞれ独立して、H、C 1~18 ヒドロカルビルであり、
a)R Photo は、光解離性基である]と、
任意に、四級アンモニウムハライドと、
を含む、重合性組成物。
(2)前記光解離性基R Photo が、フェナシル基、2-アルキルフェナシル基、エチレン架橋フェナシル基、p-ヒドロキシフェナシル基、ベンゾイン基、o-又はp-ニトロベンジル基、o-ニトロ-2-フェネチルオキシカルボニル基、クマリン-4-イルメチル基、ベンジル基、o-又はp-ヒドロキシベンジル基、o-又はp-ヒドロキシナフチル基、2,5-ジヒドロキシベンジル基、9-フェニルチオキサンチル、9-フェニルキサンチル基、アントラキノン-2-イル基、8-ハロ-7-ヒドロキシキノリン-2-イルメチル基、及びピバロイルグリコール基から選択される、項目1に記載の重合性組成物。
(3)前記遷移金属錯体が、式:
[ML n+ [式中、Mはレドックスサイクルに関与する遷移金属であり、Lは配位子であり、A はアニオンであり、nは1~7、好ましくは1~3の整数値を有する遷移金属上の形式電荷であり、pは1~9、好ましくは1~2の数値を有する遷移金属上の配位子の数である]のものである、項目1又は2に記載の重合性組成物。
(4)Mが、Cu、Fe、Ru、Cr、Mo、Pd、Ni、Pt、Mn、Rh、Re、Co、V、Au、Nb及びAgから選択される、項目3に記載の重合性組成物。
(5)Mが、銅、鉄、コバルト及び白金から選択される、項目4に記載の重合性組成物。
(6)前記レドックス開始剤系が、前記重合性組成物の前記重合性成分の100重量部を基準として、0.05~約10重量部の量で前記組成物中に存在する、項目1~5のいずれかに記載の重合性組成物。
(7)三級アミン、芳香族スルフィン酸塩、チオ尿素、及びこれらの混合物から選択される二次還元剤を更に含む、項目1~6のいずれかに記載の重合性組成物。
(8)前記レドックス開始剤系の酸化剤が、過硫酸及びその塩、過酸化物、ヒドロペルオキシド、遷移金属、過ホウ酸及びその塩、過マンガン酸及びその塩、過リン酸及びその塩、並びにこれらの混合物から選択される、項目1~7のいずれかに記載の重合性組成物。
(9)1種よりも多くの酸化剤を含む、項目1~8のいずれかに記載の重合性組成物。
(10)前記重合性成分が、
i.85~100重量部の(メタ)アクリル酸エステル、
ii.0~15重量部の酸官能性エチレン性不飽和モノマー、
iii.0~10重量部の非酸官能性エチレン性不飽和極性モノマー、
iv.0~5部のビニルモノマー、及び
v.0~5部の多官能性(メタ)アクリレート、
vi.i)~v)の100重量部に基づいて、0.1~10重量部の前記レドックス開始剤系、
を含む、項目1~9のいずれかに記載の重合性組成物。
(11)0.01~5部の多官能性(メタ)アクリレートを更に含む、項目10に記載の重合性組成物。
(12)無機充填剤を更に含む、項目1~11のいずれかに記載の重合性組成物。
(13)1つ以上の重合性ビニルモノマーと、前記レドックス開始剤系と、を含む、項目1~9のいずれかに記載の重合性組成物。
(14)前記ビニルモノマーが、ビニルエーテル、ビニルエステル、スチレン、置換スチレン、ビニルハライド、ジビニルベンゼン、アルケン、イソプレン、ブタジエン及びこれらの混合物から選択される、項目13に記載の重合性組成物。
(15)前記遷移金属錯体の酸化剤に対するモル比が、1:1000~1:5である、項目1~14のいずれかに記載の重合性組成物。
(16)前記酸化剤の還元剤に対するモル比が1:1.5~1.5:1である、項目1~15のいずれかに記載の重合性組成物。
(17)前記酸化剤及び還元剤が、前記重合性組成物の前記重合性成分の総重量を基準として、0.01~10重量部の量で存在する、項目1~16のいずれかに記載の重合性組成物。
(18)前記重合性成分が、
i.最大100重量部の(メタ)アクリル酸エステル、
ii.0~15重量部、好ましくは0.5~15重量部の酸官能性エチレン性不飽和モノマー、
iii.0~15重量部の非酸官能性エチレン性不飽和極性モノマー、
iv.0~5部のビニルモノマー、
v.100部のi~ivに対して、0~100部の多官能性(メタ)アクリレート、及び
vii.i~vの全モノマー100部に対して、約0.1重量%~約5.0重量%の量の前記レドックス開始剤系(前記遷移金属錯体、酸化剤及び光解離性還元剤を含む)、
を含む、項目1~17のいずれかに記載の重合性組成物。
(19)前記i~ivの100重量部を基準として、50重量部超の多官能性(メタ)アクリレートを含む、項目18に記載の重合性組成物。
(20)前記重合性組成物の前記重合性成分の100重量部に対して、1~35重量部の強靭化剤を更に含む、項目1~18のいずれかに記載の重合性組成物。
(21)前記遷移金属錯体がナフテン酸Cu(II)である、項目1~20のいずれかに記載の重合性組成物。
(22)前記重合性エチレン性不飽和成分が、ペンダント重合性基を有する反応性オリゴマーを含む、項目1~21のいずれかに記載の重合性組成物。
(23)前記反応性オリゴマーが、
a)50重量部超、好ましくは75重量部超、最も好ましくは80重量部超の、(メタ)アクリレートエステルモノマー単位と、
b)0.5~10重量部、好ましくは1~5重量部、最も好ましくは1~3重量部の、ペンダントフリーラジカル重合性官能基を有するモノマー単位と、
c)0~20重量部のその他の極性モノマー単位と、
を含み、前記モノマー単位の合計が、100重量部である、項目22に記載の重合性組成物。
(24)遷移金属錯体を含む第1の混合物、酸化剤及び光解離性還元剤を含む第2の混合物、前記第1及び/又は第2の混合物中の重合性成分を組み合わせることと、得られた組み合わされた混合物に照射して、光解離性遷移金属錯体を光分解し、レドックス重合サイクルを開始することと、を含む、重合の方法。
(25)下記式:
【化9】
[式中、
、R 、及びR は、C 1~18 ヒドロカルビルであり、
Photo は、光解離性基である]の光解離性還元剤。
(26)前記光解離性基R Photo が、フェナシル基、2-アルキルフェナシル基、エチレン架橋フェナシル基、p-ヒドロキシフェナシル基、ベンゾイン基、o-ニトロベンジル基、o-ニトロ-2-フェネチルオキシカルボニル基、クマリン-4-イルメチル基、ベンジル基、o-ヒドロキシベンジル基、o-ヒドロキシナフチル基、2,5-ジヒドロキシベンジル基、9-フェニルチオキサンチル、9-フェニルキサンチル基、アントラキノン-2-イル基、8-ハロ-7-ヒドロキシキノリン-2-イルメチル基、及びピバロイルグリコール基から選択される、項目25に記載の光解離性還元剤。
(27)1,3,5-トリメチルバルビツール酸、1,3,5-トリエチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-エチルバルビツール酸、1,5-ジメチルバルビツール酸、1-メチル-5-エチルバルビツール酸、1-メチル-5-プロピルバルビツール酸、5-エチルバルビツール酸、5-プロピルバルビツール酸、5-ブチルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸、及び1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツール酸のエノレートから誘導される、項目25又は26に記載の光解離性還元剤。
(28)項目1~22のいずれかに記載の重合性組成物のコーティングを基材上に有する、多層物品。
(29)前記基材が剥離ライナーである、項目28に記載の多層物品。
(30)前記基材がテープ裏材である、項目28に記載の多層物品。
(31)前記重合性組成物が2つの基材の間に配置されている、項目30に記載の多層物品。
(32)フィルム形成ポリマーを更に含む、項目1~22のいずれかに記載の重合性組成物。
(33)前記重合性成分が1つ以上のエチレン性不飽和重合性オリゴマーを含む、項目1~22のいずれかに記載の重合性組成物。
【実施例
【0094】
材料
材料及びそれらの供給元は、表1に列挙されたとおりであった。特に記載のない限り、他の全ての試薬はSigma-Aldrich Company(St.Louis,Missouri)などのファインケミカル業者から入手したか、又は入手可能であり、あるいは知られている方法で合成することができる。
【表1】
【0095】
調製例1(PE1):2-ニトロベンジルブロック1,3-ジメチルバルビツール酸の合成
【化4】
POCl(60.0ミリリットル(mL)、660mmol)中の1,3-ジメチルバルビツール酸(7.80グラム(g)、50.0ミリモル(mmol))の懸濁液を氷水浴中で冷却し、脱イオン水(2.5mL、140mmol)を滴下した。得られた濁った混合物を還流させながら1時間加熱し、その間、これは透明で淡黄色になった。過剰のPOClを減圧下で除去し、黄色残渣をCHCl中に溶解し、飽和NaHCO水溶液、水、及び飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、淡黄色固形物にした。サクションフィルターカラム(SiO、EtOAc溶離剤)による精製により、白色結晶固形物(7.70グラム)が得られる。この物質の一部(3.49g)をCHCl(50mL)中に溶解し、脱イオンHO(80mL)中の2-ニトロベンジルアルコール(4.59g、30.0mmol)、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド(0.62g、2.0mmol)及びNaOH(4.0g、100mmol)の混合物に添加した。得られた二相混合物を、周囲温度で終夜、激しく撹拌した。次いで、有機層を水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄し、次いでMgSO上乾燥させ、濃縮して黄色固形物を得た。サクションフィルターカラム(SiO、EtOAc溶離剤)による精製により、生成物を淡黄色固形物(4.60グラム、2つの工程で70%の収率)が得られる。H NMRスペクトルは、所望の生成物と一致している。
【0096】
以下の実施例は、それぞれ表2及び3に記載のベース樹脂と促進剤との10:1混合物からなる。ベース樹脂は、アクリルモノマー、遷移金属塩、及び任意にハロゲン化アンモニウム塩からなる。全ての成分をDAC混合カップ(FlackTek Inc.,Landrum,SC)に添加し、均質になるまで混合することによって、ベース樹脂を調製した。
【表2】
【0097】
促進剤は、希釈剤、開始剤分子、及び過酸化物からなる(表3)。全ての成分を撹拌棒を備えた小型ガラスバイアルに添加し、撹拌して均質性を確保することによって促進剤を調製した。
【表3】
【0098】
以下の表4は、開始剤化合物としてのPE1の使用、実施例1~6(EX1~6)を示す。配合物を、1.50gの適用可能なベース樹脂(表2)及び0.15gの促進剤(表3)を小型ガラスバイアルに添加し、均質性を確保するために約30秒間振盪することによって調製した。その後直ちに、混合配合物の1滴を、ガラス顕微鏡スライド(75×38×1.0mm、Fisher Scientific,Pittsburgh,PAから)上に置き、顕微鏡カバーガラス(22×22mm、Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)で被覆した。適用可能な場合、365nmのLEDランプを装備したLX-400器具(Lumen Dynamics,Mississauga,Ontario,Canada)を使用して、カバーガラスの表面から約1センチメートル(cm)以内にランプを30秒間保持して、サンプルを照射した。硬化時間は、カバーガラスを手でそれ以上移動させることができない点として定義した。照射なしでは、塩化アンモニウムを含まない全ての混合2剤型配合物は、420分間超、安定であった。塩化アンモニウムを組み込むと、これらの混合された2剤型配合物の安定性は低下し、硬化は240分以内に起こった。EX1~6については、短時間照射は、レドックス硬化を誘発する際に非常に効果的であった。塩化アンモニウム塩を含有する配合物の照射時に、最も速い硬化が観察された。
【表4】
【0099】
調製例2(PE2):2-ニトロベンジルブロック5-フェニル-1,3-ジメチルバルビツール酸(b-PhDMBA)の合成
【化5】
1,3-ジメチルウレア(2.66g、30.0mmol)及びフェニルマロン酸(5.40g、30.0mmol)のCHCl(70mL)溶液に、AcOH(5.5mL、96.0mmol)を添加した。得られた反応混合物を50℃で加熱した。無水酢酸(11.3mL、120.0mmol)及びトリフルオロ酢酸(0.5mL、6.6mmol)を添加し、次いで反応混合物を一晩撹拌しながら還流加熱した。翌朝、揮発性成分を減圧下で除去し、残渣を水(100mL)に添加した。2時間撹拌した後、形成された固形物を濾過により回収し、追加の水で洗浄した。次いで、固形物をCHCl中に溶解し、NaCl飽和水溶液(sat.aq.)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、1,3-ジメチル-5-フェニルバルビツール酸(4.20グラム、収率60%)を、白色固形物として得た。
【0100】
1,3-ジメチル-5-フェニルバルビツール酸(4.20グラム、18.08mmol)を、POCl(30mL)中に溶解した。水(1.0mL)を混合物に滴加すると、顕著な発熱をもたらした。発熱が終了後、混合物を4時間還流加熱した。次いで、POClの大部分を減圧下で除去し、冷水を残渣に添加した。混合物を、CHCl(3×75mL)で抽出した。有機層を合わせたものを、飽和NaHCO水溶液、水、及び飽和NaCl水溶液で順次洗浄し、次いで、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して橙色の油状物を得た。この物質サクションフィルターカラム(SiO、3:1のヘキサン/EtOAc溶離剤)により精製することで、白色個体である1,3-ジメチル-5-フェニル-6-クロロウラシル(4.30グラム、収率95%)を得た。
【0101】
ベンジルトリ-n-ブチルアンモニウムクロリド(0.54グラム、1.7mmol)及び2-ニトロベンジルアルコール(3.94グラム、25.7mmol)を、HO(80mL)中NaOH(3.43グラム、85.8mmol)の溶液に添加した。次いで、CHCl(50mL)中の1,3-ジメチル-5-フェニル-6-クロロウラシル(4.30グラム、17.15mmol)の溶液を添加した。得られた二相混合物を、室温で終夜、激しく撹拌した。翌朝、水層を約6のpHに調整し、次いでCHCl(3×75mL)で抽出した。次いで、有機層を合わせたものを、HO及び飽和NaCl水溶液で洗浄し、次いで、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して橙色の油状物を得た。サクションフィルターカラム(SiO、1:1のヘキサン/EtOAc溶離剤)による精製により、生成物(3.14グラム、収率50%)を、白色固形物として得られる。
【0102】
調製例3(PE3):2-ニトロベンジルブロック5-ベンジル-1,3-ジメチルバルビツール酸(b-BnDMBA)の合成
【化6】
100mLの高温HO中の1,3-ジメチルバルビツール酸(3.90グラム、25.0mmol)の溶液に、ベンズアルデヒド(2.65グラム、25.0mmol)のEtOH(20mL)溶液を添加した。得られた混合物を、還流下で加熱しながら激しく撹拌した。5時間後、混合物を室温まで冷却し、沈殿物を濾過により回収し、追加の水で洗浄した。一晩乾燥させた後、これにより、5-ベンジリデン-1,3-ジメチルピリミジン-2,4,6-トリオン(5.90グラム、収率97%)を淡黄色の固形物として得た。
【0103】
5-ベンジリデン-1,3-ジメチルピリミジン-2,4,6-トリオン(5.90グラム、24.15mmol)をEtOH(70mL)に加え、NaBH(0.91グラム、24.15mmol)を数分かけて少しずつ添加した。2時間後、EtOHの大部分を減圧下で除去し、残渣を、100mLの1N HCl水溶液(aq.)の添加によりクエンチした。この混合物をEtOAc(3×75ml)で抽出し、合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、5-ベンジル-1,3-ジメチルバルビツール酸(5.83グラム、収率98%)を、白色結晶固形物として得た。
【0104】
1,3-ジメチル-5-ベンジルバルビツール酸(7.39グラム、30.0mmol)を、POCl(41.4グラム270mmol)中に溶解した。水(1.35mL)を混合物に滴加すると、顕著な発熱をもたらした。発熱が終了後、混合物を3時間還流加熱した。次いで、POClの大部分を減圧下で除去し、冷水を残渣に添加した。混合物を、CHCl(3×75mL)で抽出した。有機層を合わせたものを、飽和NaHCO水溶液、水、及び飽和NaCl水溶液で順次洗浄し、次いで、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して橙色の油状物を得た。この物質をサクションフィルターカラム(SiO、7:1のヘキサン/EtOAc溶離剤)により精製することで、1,3-ジメチル-5-ベンジル-6-クロロウラシル(7.94グラム、定量的収率)を橙色油状物として得て、これは固形物にゆっくりと結晶化する。
【0105】
ベンジルトリ-n-ブチルアンモニウムクロリド(0.94グラム、3.0mmol)及び2-ニトロベンジルアルコール(6.13グラム、40.0mmol)を、HO(90mL)中NaOH(6.0グラム、150mmol)の溶液に添加した。次いで、CHCl(70mL)中の1,3-ジメチル-5-ベンジル-6-クロロウラシル(7.94グラム、30.0mmol)の溶液を添加した。得られた二相混合物を、室温で終夜、激しく撹拌した。翌朝、水層を約6のpHに調整し、次いでCHCl(3×75mL)で抽出した。次いで、有機層を合わせたものを、HO及び飽和NaCl水溶液で洗浄し、次いで、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して橙色の油状物を得た。サクションフィルターカラム(SiO、7:1のヘキサン/EtOAc~EtOAcの傾斜溶離剤)による精製により、生成物(4.20グラム、収率37%)を、薄桃色の固形物として得られる。
【0106】
調製例4(PE4):クマリンブロック5-ベンジル-1,3-ジメチルバルビツール酸(Cou-BnDMBA)の合成
【化7】
1,3-ジメチル-5-ベンジルバルビツール酸(7.39グラム、30.0mmol)を、POCl(41.4グラム270mmol)中に溶解した。水(1.35mL)を混合物に滴加すると、顕著な発熱をもたらした。発熱が終了後、混合物を3時間還流加熱した。次いで、POClの大部分を減圧下で除去し、冷水を残渣に添加した。混合物を、CHCl(3×75mL)で抽出した。有機層を合わせたものを、飽和NaHCO水溶液、水、及び飽和NaCl水溶液で順次洗浄し、次いで、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して橙色の油状物を得た。この物質をサクションフィルターカラム(SiO、7:1のヘキサン/EtOAc溶離剤)により精製することで、1,3-ジメチル-5-ベンジル-6-クロロウラシル(7.94グラム、定量的収率)を橙色油状物として得て、これは固形物にゆっくりと結晶化する。
【0107】
3-メトキシフェノール(3.72g、30.0mmol)及びエチル-4-クロロアセトアセテート(7.41g、45.0mmol)のメタンスルホン酸(40mL)溶液を、室温で一晩撹拌した。翌朝、氷水(200mL)を添加し、得られた灰色の沈殿物を濾過により回収し、追加のHOで洗浄した。回収した材料を真空下で乾燥させて、4-クロロメチル-7-メトキシクマリン(6.40g、収率95%)をベージュ色の固形物として得た。
【0108】
4-クロロメチル-7-メトキシクマリン(1.35グラム、6.00mmol)の1:1のDMSO/HO(30mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(1.0mL)を添加した。得られた混合物を、48時間還流加熱した。冷却時に、HO(100mL)を添加し、混合物をCHCl(3×50mL)で抽出した。有機層を合わせたものを、HO及び飽和NaCl水溶液で順次洗浄し、次いで、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して橙色の固形物を得た。この物質サクションフィルターカラム(SiO、97:3のCHCl/MeOH溶離剤)により精製することで、6-メトキシ-1-ヒドロキシメチル-3-オキソ-3H-ベンゾピラン(1.11グラム、収率90%)を淡い黄褐色固形物として得た。
【0109】
ベンジルトリ-n-ブチルアンモニウムクロリド(0.16グラム、0.50mmol)を、HO(30mL)中NaOH(1.0グラム、25.0mmol)の溶液に添加した。次いで、CHCl(30mL)中の6-メトキシ-1-ヒドロキシメチル-3-オキソ-3H-ベンゾピラン(1.03グラム、5.00mmol)及び1,3-ジメチル-5-ベンジル-6-クロロウラシル(1.32グラム、5.00mmol)の溶液を添加した。得られた二相混合物を、室温で終夜、激しく撹拌した。翌朝、水層を約6のpHに調整し、次いでCHCl(3×30mL)で抽出した。次いで、有機層を合わせたものを、HO及び飽和NaCl水溶液で洗浄し、次いで、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して橙色の油状物を得た。サクションフィルターカラム(SiO、7:1のヘキサン/EtOAc~EtOAcの傾斜溶離剤)による精製により、生成物(0.24グラム、収率11%)を、淡黄色固形物として得られる。
【0110】
以下の実施例は、それぞれ表5又は6及び7に記載のベース樹脂と促進剤との10:1混合物からなる。ベース樹脂は、アクリルモノマー、遷移金属塩、及びハロゲン化アンモニウム塩からなる。全ての成分をDAC混合カップ(FlackTek Inc.,Landrum,SC)に添加し、均質になるまで混合することによって、ベース樹脂を調製した。
【表5】
【表6】
【0111】
促進剤は、希釈剤、開始剤分子、及び過酸化物からなる(表7)。全ての成分を撹拌棒を備えた小型ガラスバイアルに添加し、撹拌して均質性を確保することによって促進剤を調製した。
【表7】
【0112】
以下の表8は、開始剤化合物としてのPE2~PE4の使用、実施例7~20(EX7~20)を示す。配合物を、1.50gの適用可能なベース樹脂(表5又は6)及び0.15gの促進剤(表7)を小型ガラスバイアルに添加し、均質性を確保するために約30秒間振盪することによって調製した。その後直ちに、混合配合物の1滴を、ガラス顕微鏡スライド(75×38×1.0mm、Fisher Scientific,Pittsburgh,PAから)上に置き、顕微鏡カバーガラス(22×22mm、Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)で被覆した。適用可能な場合、365nmのLEDランプを装備したLX-400器具(Lumen Dynamics,Mississauga,Ontario,Canada)を使用して、カバーガラスの表面から約1センチメートル(cm)以内にランプを30秒間保持して、サンプルを照射した。硬化時間は、カバーガラスを手でそれ以上移動させることができない点として定義した。照射なしでは、全ての混合2剤型配合物は、400分間超安定であった。EX7~20については、短時間照射は、レドックス硬化を誘発する際に非常に効果的であった。
【表8】
【0113】
反応性オリゴマーAの合成
反応性オリゴマーAを、概して、以下の手順に従って調製した:2EHA(12g)、50gのCHA、30gのBA、5gのAcm、3gのHPA、0.1gのVAZO-52、0.1gのTDDM、及び100gのEtOAcを、ガラス瓶に添加した。内容物を混合し、窒素で4分間バブリングした後、密閉し、60℃にて24時間、Launder-Ometer回転水槽中に置いた。24時間後、サンプルを、GPCを用いて分析して、M及び多分散指数を決定した。第2の工程では、0.52gのIEM及び40gのMEKを瓶に添加した。瓶をポリテトラフルオロエチレンテープで封止し、温度60℃に達するように設計されたIRランプ加熱ローラー上で24時間圧延した。得られたポリマーの重量平均分子量は、従来のゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)法により測定しておよそ298kDであった。GPC装置は、Waters Corporation(Milford,Massachusetts)から入手し、高圧液体クロマトグラフィーポンプ(Model 1515HPLC)、オートサンプラー(Model 717)、UV検出器(Model 2487)、及び屈折率検出器(Model 2410)を含んでいた。クロマトグラフは、Varian Inc.(Palo Alto,California)から入手可能な、2個の5ミクロンPLgel MIXED-Dカラムを装備していた。最終的な決定を、ポリスチレン標準を参照することにより行った。
【0114】
試験方法
重なり剪断試験法サンプル調製
選択された接着剤組成物(EtOAc/MEK溶液中)を、RL1シリコーン処理ポリエステル剥離ライナーの張り側上にコーティングし、70℃の溶媒オーブン内で30分間乾燥した。1”×4”×0.064”(2.5cm×10.2cm×0.16cm)のアルミニウム基材を、末端1”(2.54cm)をスコッチ・ブライトハンドパッド業務用No.7447(3M)で擦った後、イソプロパノールで洗浄し、空気乾燥した。接着剤組成物の1/2”×1”(1.3cm×2.5cm)の部分を、1つの基材の擦られた端部に適用した。剥離ライナーを除去し、組成物をDバルブマイクロ波源(Heraeus Noblelight America,Gaithersburg,MD)からのUVに曝露させた。各サンプルに適用された放射線の量は、EIT PowerPuck II放射計(EIT,Inc.,Sterling,VA)によって測定した場合、UVAでは2.0J/cm、UVBでは0.5J/cm、UVCでは0.2J/cm、及びUVVでは2.1J/cmであった。第2の基材を、照射サンプルに適用することで、結合を閉鎖した(結合面積1/2”×1”(1.3cm×2.5cm))。このアセンブリは、指圧を適用することによってウェットアウトされた。接着部を大型バインダークリップではさみ、試験前に室温で18~24時間静置した。
【0115】
動的重なり剪断試験方法
動的重なり剪断試験を、MODEL 55R1122 INSTRON引張試験機(Instron,Norwood,MA)を使用して、周囲温度にて実施した。試験片をグリップに載せ、0.1”(0.25cm)/分でクロスヘッドを操作し、試験片に荷重をかけ、損傷した。破断時応力をpsi単位で記録し、パスカル(又はキロパスカル)に変換した。各サンプルの3つの試験片を試験し、平均結果を計算した。
【0116】
実施例:
実施例21(EX21):マスクされたバルビツール酸誘導体を有するテープ
表9(以下)中の各配合物を、プラスチックカップ内で組み合わせ、均質になるまで激しく手動撹拌した。
【表9】
【0117】
上記配合物のそれぞれからのテープ構造及び重なり剪断サンプルを、上記の重なり剪断試験法サンプル調製手順に従って作製した。得られたサンプルを、上記の動的重なり剪断試験方法に従って試験した。試験の結果を、それぞれpsi及びkPaで、表10及び11に報告する。
【表10】
【表11】