(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】基板の洗浄方法及び洗浄装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
H01L21/304 645B
H01L21/304 643D
H01L21/304 647A
H01L21/304 647B
H01L21/304 647Z
(21)【出願番号】P 2020542786
(86)(22)【出願日】2018-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2018075550
(87)【国際公開番号】W WO2019153134
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-01-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】510005650
【氏名又は名称】エーシーエム リサーチ (シャンハイ) インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ワン フゥイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン シー
(72)【発明者】
【氏名】チェン フーピン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン シャオイェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン フーファ
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】棚田 一也
【審判官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-165939(JP,A)
【文献】特開平4-311035(JP,A)
【文献】特開2008-198994(JP,A)
【文献】特開2004-235559(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0052204(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を基板ホルダに配置する工程と、
気泡レス又は気泡フリーな液体層を前記基板上に形成するための予備湿潤プロセスの実行工程と、
前記予備湿潤プロセス後に、
洗浄用の薬液を供給して前記基板を洗浄するための超音波/高周波超音波洗浄プロセスの実行工程と、
気泡レス又は気泡フリーな前記基板の予備湿潤プロセスの実行工程の前に、前記基板の凹部における粗さを改善するために、スカム又はバリを除去する工程とを備えている基板の洗浄方法。
【請求項2】
気泡レス又は気泡フリーな前記予備湿潤プロセスが、前記基板を包囲する真空環境を構築すること、及び、しかる後に前記基板上に予備湿潤用の薬液又は薬液ミストを供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
真空度を、25Torr
以下に設定することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
気泡レス又は気泡フリーな前記予備湿潤プロセスが、予備湿潤用の薬液を気化させること、及び、しかる後に前記基板の表面上に薬液の蒸気を誘導して、前記基板上に予備湿潤用の薬液層を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記予備湿潤用の薬液を、音波発生法によって気化させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記薬液の蒸気を前記基板の温度よりも高い温度にまで加熱することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基板を前記薬液の蒸気の温度よりも低い温度にまで冷却することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記予備湿潤用の薬液を、熱加熱法によって気化させる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記予備湿潤用の薬液が、
界面活性剤を含有している、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記界面活性剤が、カルボキシル含有エチレンジアミン四酢酸、又は、テトラカルボキシル化合物-エチレンジアミン4プロピオン酸/塩である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記予備湿潤用の薬液が、前記基板の表面を酸化させて疎水性から親水性にするための酸化剤を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化剤が、オゾン溶液又はSC1溶液である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1のチャンバであって、前記第1のチャンバ内に真空環境を形成するポンプに接続された第1のチャンバと、
基板を保持するために前記第1のチャンバ内にセットされた基板ホルダと、
前記基板の表面に予備湿潤用の薬液又は薬液ミストを供給して、前記基板上に気泡レス又は気泡フリーな薬液層が形成されるように
前記第1のチャンバに構成された少なくとも1つの噴霧器と、
前記基板を洗浄するために洗浄用の薬液を供給する少なくとも1つのノズルと、前記基板を洗浄するための超音波/高周波超音波デバイスが取り付けられた第2のチャンバと、
前記基板の凹部内のスカム又はバリを除去するように構成されたデスカムユニットとを備えており、
前記基板の前記凹部内のスカム又はバリが除去されるように前記デスカムユニットが動作し、その後、前記基板上に気泡レス又は気泡フリーな前記薬液層が形成されるように前記少なくとも1つの噴霧器が動作してから、前記基板を洗浄するために前記超音波/高周波超音波デバイスが動作するように構成された基板の洗浄装置。
【請求項14】
前記第1のチャンバにおける真空度が、25Torr
以下である請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記基板ホルダに接続された回転駆動装置をさらに備えている請求項13に記載の装置。
【請求項16】
チャンバであって、前記チャンバ内に真空環境を形成するポンプに接続されたチャンバと、
基板を保持するために前記チャンバ内にセットされた基板ホルダと、
前記チャンバが真空化されて前記チャンバ内に真空環境が形成された後、前記基板の表面に予備湿潤用の薬液又は薬液ミストを供給して、前記基板上に気泡レス又は気泡フリーな薬液層が形成されるように構成され
るとともに、前記基板を洗浄するために洗浄用の薬液を供給する少なくとも1つのノズルと、
前記基板を洗浄するように構成された超音波/高周波超音波デバイスと、
前記基板の凹部内のスカム又はバリを除去するように構成されたデスカムユニットとを備えており、
前記基板の前記凹部内のスカム又はバリが除去されるように前記デスカムユニットが動作し、その後、前記基板上に気泡レス又は気泡フリーな前記薬液層が形成されるように前記少なくとも1つのノズルが動作してから、前記基板を洗浄するために前記超音波/高周波超音波デバイスが動作するように構成された基板の洗浄装置。
【請求項17】
真空度が、25Torr
以下である請求項16に記載の装置。
【請求項18】
予備湿潤用の薬液を気化させるように構成された気化ユニットに接続された第1のチャンバと、
基板を保持するために前記第1のチャンバ内にセットされた基板ホルダと、
気化液体分子を前記基板の表面に供給して、前記基板上に気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤用の薬液層を形成する、前記気化ユニットに接続された少なくとも1つの噴霧器と、
前記基板を洗浄するために洗浄用の薬液を供給する少なくとも1つのノズルと、前記基板を洗浄するための超音波/高周波超音波デバイスが取り付けられた第2のチャンバと、
前記基板の凹部内のスカム又はバリを除去するように構成されたデスカムユニットとを備えており、
前記基板の前記凹部内のスカム又はバリが除去されるように前記デスカムユニットが動作し、その後、前記基板上に気泡レス又は気泡フリーな前記薬液層が形成されるように前記少なくとも1つの噴霧器が動作してから、前記基板を洗浄するために前記超音波/高周波超音波デバイスが動作するように構成された基板の洗浄装置。
【請求項19】
チャンバと、
予備湿潤用の薬液を気化させるように構成された気化ユニットと、
基板を保持するために前記チャンバ内にセットされた基板ホルダと、
気化液体分子を前記基板の表面に供給して、前記基板上に気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤用の薬液層を形成する、前記気化ユニットに接続され
前記チャンバに構成された少なくとも1つの噴霧器と、
前記基板を洗浄するために、前記基板の表面に洗浄用の薬液又は薬液ミストを供給するように
前記チャンバに構成された少なくとも1つのノズルと、
前記基板を洗浄するように構成された超音波/高周波超音波デバイスと、
前記基板の凹部内のスカム又はバリを除去するように構成されたデスカムユニットとを備えており、
前記基板の前記凹部内のスカム又はバリが除去されるように前記デスカムユニットが動作し、その後、前記基板上に気泡レス又は気泡フリーな前記薬液層が形成されるように前記少なくとも1つの噴霧器が動作してから、前記基板を洗浄するために前記超音波/高周波超音波デバイスが動作するように構成された基板の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の洗浄方法及び洗浄装置に関する。より具体的には、基板上のパターン構造においてより効率的に微粒子を除去するために、基板洗浄工程中に損傷を引き起こす気泡内破を回避するように基板を洗浄する音波エネルギーが印加される前の前処理プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、複数の異なる処理工程を経てトランジスタ及び相互接続要素を製造することによって、半導体基板上に製造される又は加工される。近年トランジスタは、フィン電界効果トランジスタ及び3次元NANDメモリのように二次元から三次元に構築されるものがある。半導体基板に伴うトランジスタ端子同士を電気的に接続するために、半導体装置の一部として誘電材料に導電性(例えば金属)のトレンチ、ビアホール等が形成される。トレンチ及びビアホールは、トランジスタ間、及び、半導体デバイスの内部回路と半導体装置の外部回路との電気信号及び電力を接続する。
【0003】
半導体基板上におけるFinFET及び相互接続要素の形成工程では、例えば、マスキング、エッチング、及び堆積プロセスを経て、所望の半導体装置の電子回路が形成されてよい。特に、複数のマスキング及びプラズマエッチング工程を行うことによって、トランジスタのフィン及び/又は相互接続要素のトレンチやビアホールとして機能する半導体ウェハの誘電層に、finFET、3次元NANDフラッシュセル及び/又は陥凹領域のパターンを形成することができる。ポストエッチング又はフォトレジストアッシングにおいて、フィン構造及び/又はトレンチやビアホールにおける粒子及び異物を除去するために、湿式洗浄工程が必要となる。特に装置製造ノードが14nm又は16nm、或いは、それ以上移動する場合に、フィン及び/又はトレンチ及びビアホールの側壁損失は、臨界寸法の維持に重要となる。側壁損失を低減又は排除するには、適度に希釈された化学薬品、又は、場合によっては脱イオン水のみを使用することが重要となる。しかし、通常、希釈された化学薬品や脱イオン水では、フィン構造、3次元NANDホール及び/又はトレンチやビアホール内の粒子を効率的に除去できない。したがって、これらの粒子を効率的に除去するには、超音波又は高周波超音波(ultra or mega sonic)などの機械的な力が必要である。超音波又は高周波超音波は、基板構造に機械的な力を加える気泡キャビテーションを発生させ、トランジットキャビテーションやマイクロジェットなどの激しいキャビテーションは、パターン構造を損傷させる。安定した又は制御されたキャビテーションを維持することは、機械的な力を損傷限界内に制御すると同時に粒子の効率的な除去を行うために重要なパラメータとなる。
【0004】
図1A及び
図1Bは、トランジットキャビテーション(transit cavitation)が基板1010の洗浄プロセス中に基板1010上のパターン構造1030を損傷させる様子を示している。トランジットキャビテーションは、基板1010を洗浄するために印加される音響エネルギーによって生成されるものであってよい。
図1A及び
図1Bに示すように、気泡1050の内破(implosion)によって引き起こされるマイクロジェットは、パターン構造1030の頂部よりも上に生じるものであり、非常に荒々しく(数千気圧及び数千℃に達することもある)、特に特徴部のサイズtが70nm以下に収縮すると、基板1010上の微細パターン構造1030に損傷を与えうる。
【0005】
気泡内破によって生じるマイクロジェットによって引き起こされる、基板上のパターン構造を損傷させる気泡キャビテーションは、洗浄プロセス中の気泡キャビテーションを制御することによって、抑えることができる。基板全体における安定した又は制御されたキャビテーションによって、パターン構造の損傷回避を実現することができることは、2015年5月20日に出願されたPCT/CN2015/079342号に開示されている。
【0006】
ある場合には、基板を洗浄するために印加される超音波又は高周波超音波のパワー強度は非常に低いレベル(ほとんど粒子を除去できない効率)に低減されるが、基板上のパターン構造には依然として損傷が生じる。損傷の数は、わずか(100よりも小さい)である。しかしながら、通常、超音波又は高周波超音波アシストプロセスでは、洗浄工程における気泡の数は、数万である。基板上におけるパターン構造の損傷数と気泡の数とは一致しない。この現象のメカニズムは知られていない。
【0007】
図2Aに示すように、超音波又は高周波超音波アシスト基板洗浄プロセスの間、基板2010を洗浄するために印加される超音波又は高周波超音波のパワー強度は非常に低いレベル(ほとんど粒子を除去できない効率)に低減されるが、基板2010上のパターン構造2030には依然として損傷が生じる。さらに、パターン構造2030の単一壁(single wall)が損傷されることが多い。
図2Aは、損傷の2つの例を示している。一つは、パターン構造2030の単一壁が横に向かってはがれるものである。もう一つは、パターン構造2030の単一壁の一部が除去されるものである。
図2Aは2つの例を示しているが、他の同様の損傷が発生し得ることが認識されるべきである。これらの損傷を何が引き起こすのであろうか。
【0008】
図2B~
図2Dを参照すると、基板洗浄プロセスにおいて、小さい気泡2050、2052は、
図2B及び
図2Cに示すように、基板2010の表面又はパターン構造2030の側壁などの固体表面に付着する傾向がある。パターン構造2030の底部コーナーに付着した気泡2052及びパターン構造2030の単一壁に付着した気泡2050のように、気泡2050、2052が基板2010の表面又はパターン構造2030の側壁に付着しているとき、これらの気泡2050、2052が内破すると、
図2Aに示すように、単一側壁に作用する気泡内破力の方向に従った方向に向かって基板2010のサブレイヤ(sub-layer)からパターン構造2030が剥離するか、又は、パターン構造2030の単一側壁の一部が除去される。内破はマイクロジェットほど強烈ではないが、基板2010の表面及びパターン構造2030の側壁に気泡2050、2052が付着していることによって、小さい気泡の内破によって発生するエネルギーであってもパターン構造2030を損傷させ得る。
【0009】
さらに、湿式プロセスの間、複数の小さな気泡は、より大きな気泡に合体し得る。固体表面上に気泡が付着しやすいため、パターン構造の表面及び基板の表面などの固体表面上での合体は、パターン構造、特に幾何学的な臨界的部分で生じる気泡内破の危険性を増加させる。
【0010】
図3A~
図3Hは、本発明による超音波又は高周波超音波アシスト湿式洗浄プロセスの間、基板に付着した気泡の内破が基板上のパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
図3Aは、パターン構造3030を有する基板3010の表面上に洗浄液3070が供給され、パターン構造3030の底角部上に少なくとも1つの気泡3050が付着している様子を示している。
図3Bに示す正の超音波又は高周波超音波動作プロセスでは、F1は、気泡3050に作用する超音波又は高周波超音波加圧力であり、F2は、気泡3050がパターン構造3030の側壁を押圧しているときに、パターン構造3030の側壁によって生成されて気泡3050に作用する反力であり、F3は、気泡3050が基板3010を押圧しているときに、基板3010によって生成されて気泡3050に作用する反力である。
図3C及び
図3Dに示される負の超音波又は高周波超音波動作プロセスでは、気泡3050は、気泡3050を引っ張る超音波又は高周波超音波の負の力によって膨張している。気泡の体積が膨張する過程において、F1'は、気泡3050が洗浄液3070を押す力であり、F2'は、気泡3050が基板3010を押す力であり、F3'は、気泡3050がパターン構造3030の側壁を押す力である。正の超音波又は高周波超音波及び負の超音波又は高周波超音波が交互多数回印加された後、気泡内部のガス温度が益々高くなり、気泡の体積が益々大きくなり、ついには、気泡の内破3051が生じる。内破3051は、
図3Gに示すように、洗浄液3070に作用する力F1"、基板3010に作用するF2"、パターン構造3030の側壁に作用する力F3"という内破力を発生させる。内破力は、
図3Hに示すように、パターン構造3030の側壁を損傷させる。
【0011】
超音波又は高周波超音波アシスト湿式洗浄プロセスの間の気泡内破によって引き起こされる基板上のパターン構造の損傷を回避するために、基板を洗浄する洗浄液に対して音響エネルギーが印加される前に、パターン構造の表面及び基板の表面から気泡を除去することが好ましいことが、2018年1月23日に出願された特許出願PCT/CN2018/073723号に開示されている。しかしながら、パターン構造の表面から全ての気泡を除去することは困難である。したがって、パターン構造の表面に残った気泡が、依然として、基板上のパターン構造に損傷を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の目的は、基板の洗浄方法及び洗浄装置を提供することである。
【0013】
一実施形態によれば、基板の洗浄方法は、基板を基板ホルダ上に配置する工程と、気泡レス又は気泡フリーな前記基板の予備湿潤プロセスの実行工程と、前記基板を洗浄するための超音波/高周波超音波洗浄プロセスの実行工程とを含んでいる。
【0014】
一実施形態によれば、基板の洗浄装置は、第1のチャンバであって、前記第1のチャンバ内に真空環境を形成するポンプに接続された第1のチャンバと、前記基板を保持するために前記第1のチャンバ内にセットされた基板ホルダと、前記基板の表面に予備湿潤用の薬液又は薬液ミストを供給するように構成された少なくとも1つの噴霧器と、前記基板を洗浄するための超音波/高周波超音波デバイスが取り付けられた第2のチャンバとを含んでいる。
【0015】
別の一実施形態によれば、基板の洗浄装置は、チャンバであって、前記チャンバ内に真空環境を形成するポンプに接続されたチャンバと、前記基板を保持するために前記チャンバ内にセットされた基板ホルダと、前記チャンバが真空化されて前記チャンバ内に真空環境が形成された後、前記基板の表面に予備湿潤用の薬液又は薬液ミストを供給して、前記基板上に気泡レス(bubble less)又は気泡フリー(bubble-free)な薬液層が形成されるように構成された少なくとも1つのノズルと、前記基板を洗浄するように構成された超音波/高周波超音波デバイスとを含んでいる。
【0016】
別の一実施形態によれば、基板の洗浄装置は、予備湿潤用の薬液を気化させるように構成された気化ユニットに接続された第1のチャンバと、前記基板を保持するために前記第1のチャンバ内にセットされた基板ホルダと、気化液体分子を前記基板の表面に供給して、前記基板上に気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤用の薬液層を形成する、前記気化ユニットに接続された少なくとも1つの噴霧器と、前記基板を洗浄するための超音波/高周波超音波デバイスが取り付けられた第2のチャンバとを含んでいる。
【0017】
別の一実施形態によれば、基板の洗浄装置は、チャンバと、予備湿潤用の薬液を気化させるように構成された気化ユニットと、前記基板を保持するために前記チャンバ内にセットされた基板ホルダと、気化液体分子を前記基板の表面に供給して、前記基板上に気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤用の薬液層を形成する、前記気化ユニットに接続された少なくとも1つの噴霧器と、前記基板を洗浄するために、前記基板の表面に洗浄用の薬液又は薬液ミストを供給するように構成された少なくとも1つのノズルと、前記基板を洗浄するように構成された超音波/高周波超音波デバイスとを含んでいる。
【0018】
上述のように、本発明は、基板を洗浄するための超音波/高周波超音波洗浄プロセスの実行工程の前に、気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤プロセスを実行することによって、超音波/高周波超音波洗浄プロセスの実行中において基板上のパターン構造に損傷を生じさせる気泡内破を効果的に防止することができる。基板の前処理によって、気泡はパターン構造の表面に付着しやすくなることがなくなり、パターン構造の表面近傍の気泡は、パターン構造の表面に付着する前に、容易に外側に除去されることになる。このように、パターン構造及び特に幾何学的臨界部分の表面への気泡の蓄積又は付着の影響を受けることなく、超音波/高周波超音波のパワー制御によって気泡内破をより制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】トランジットキャビテーションが洗浄プロセス中に基板上のパターン構造を損傷させる様子を示している。
【
図1B】トランジットキャビテーションが洗浄プロセス中に基板上のパターン構造を損傷させる様子を示している。
【
図2A】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させる様子を示している。
【
図2B】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させる様子を示している。
【
図2C】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させる様子を示している。
【
図2D】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させる様子を示している。
【
図3A】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図3B】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図3C】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図3D】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図3E】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図3F】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図3G】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図3H】基板上のパターン構造の表面に付着した気泡の内破がパターン構造を損傷させるメカニズムを示している。
【
図4A】本発明による例示的な基板の洗浄装置を示す。
【
図4B】本発明による例示的な基板の洗浄装置を示す。
【
図5】本発明による別の例示的な基板の洗浄装置を示す。
【
図6A】本発明による例示的な基板の洗浄装置を示す。
【
図6B】本発明による例示的な基板の洗浄装置を示す。
【
図7】本発明による別の例示的な基板の洗浄装置を示す。
【
図8A】本発明による例示的な基板の洗浄方法を示す。
【
図8B】本発明による例示的な基板の洗浄方法を示す。
【
図9A】本発明による別の例示的な基板の洗浄方法を示す。
【
図9B】本発明による別の例示的な基板の洗浄方法を示す。
【
図9C】本発明による別の例示的な基板の洗浄方法を示す。
【
図9D】本発明による別の例示的な基板の洗浄方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図4A及び4Bは、本発明の例示的な実施形態による基板の洗浄装置を示す。この装置は、後続の超音波/高周波超音波洗浄プロセスの前に基板の表面を気泡レス又は気泡フリーとするために、基板を前処理することが可能である。この装置は、予備湿潤チャンバ4020及び洗浄チャンバ4000を備えている。基板4010は、基板4010の表面を気泡レス又は気泡フリーで予備湿潤されたものとするために予備湿潤チャンバ4020で前処理され、しかる後に、後続の超音波/高周波超音波洗浄プロセスのために洗浄チャンバ4000に移動させられる。
図4Aは、予備湿潤チャンバ4020を示す。予備湿潤チャンバ4020は、基板4010を予備湿潤チャンバ4020の内外へ移動させるためのドアと、予備湿潤チャンバ4020内の真空環境を生成するための真空ポンプに接続された真空ポート4022と、予備湿潤チャンバ4020内で基板4010を保持する基板ホルダ4021と、基板4010を回転させるための回転駆動デバイス4024と、基板4010の上方にあって、基板4010上に気泡レス又は気泡フリーな薬液層が形成されるように、基板4010の表面に予備湿潤用の薬液又は薬液ミストを供給するための少なくとも1つの噴霧器4023とを含む。一実施形態では、基板4010の表面に予備湿潤用の薬液が均一に分布するように、複数の噴霧器4023が使用されている。予備湿潤チャンバ4020の真空度は、25Torr以上に設定されている。
図4Bは、洗浄チャンバ4000を示す。洗浄チャンバ4000は、基板4010を保持する基板ホルダ4002と、洗浄用の薬液4070が飛散するのを防止するために基板ホルダ4002を包囲する洗浄カップ4001と、基板ホルダ4002を回転させるために基板ホルダ4002に接続されたスピンアクチュエータ4003と、洗浄チャンバ4000の頂部に配置されて、基板4010の表面への下向流を生成するファン及びフィルタユニット4015と、洗浄カップ4001の底部にある少なくとも1つの排気ポート4017と、基板4010を洗浄するために洗浄用の薬液4070に音波エネルギーを与える超音波/高周波超音波デバイス4006が取り付けられたスイングアーム4005と、基板4010の表面に薬液、薬液ミスト又は乾燥ガスを供給するための少なくとも1つのノズル4009が搭載された複数のノズルアーム4008とを備えている。
【0021】
本発明による基板の洗浄方法は、以下の工程を備えている。
【0022】
工程1:基板4010を予備湿潤チャンバ4020内に移動させ、基板4010を基板ホルダ4021に保持させる。
【0023】
工程2:予備湿潤チャンバ4020のドアを閉じ、真空ポート4022から予備湿潤チャンバ4020の真空化を開始して、設定時間に予備湿潤チャンバ4020内の真空環境を構築する。予備湿潤チャンバ4020の真空度は、25Torr以上に設定されている。
【0024】
工程3:真空環境形成後、基板4010を100-200RPMで回転させ、予備湿潤用の薬液又は薬液ミストを基板4010の表面上に供給する。
【0025】
工程4:400-600RPMで基板4010を回転させ、しかる後、基板4010の回転を停止し、予備湿潤チャンバ4020の真空圧を解放し、その後、予備湿潤チャンバ4020のドアを開放する。
【0026】
工程5:基板4010を予備湿潤チャンバ4020から洗浄チャンバ4000に移動させ、基板4010を洗浄チャンバ4000内の基板ホルダ4002に保持させる。
【0027】
工程6:基板4010を10RPMから1000RPMまでの設定された低回転数で回転させる。
【0028】
工程7:基板4010の表面に洗浄用の薬液を供給するために、ノズルアーム4008を基板4010の表面の上方の位置まで揺動させる。この工程では、複数の薬液を使用することができる。
【0029】
工程8:超音波/高周波超音波洗浄プロセスのために、基板4010の表面に洗浄用の薬液を供給する。
【0030】
工程9:超音波/高周波超音波デバイス4006を基板4010の表面上の一定高さにまで下降させ、超音波/高周波超音波デバイス4006と基板4010の表面との間のギャップを、音波伝達媒体としての洗浄用の薬液で充たす。
【0031】
工程10:超音波/高周波超音波デバイス4006をオンとして、プログラムされた手順で一定時間基板4010の表面を洗浄する。
【0032】
工程11:超音波/高周波超音波デバイス4006をオフにし、超音波/高周波超音波デバイス4006を上昇させる。
【0033】
工程12:洗浄のために、基板4010表面上にリンス薬液又はDI水を供給する。
【0034】
工程13:基板4010を乾燥させる。
【0035】
工程14:基板4010の回転を停止し、基板4010を洗浄チャンバ4000から取り出す。
【0036】
工程2から工程3は、気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤プロセスを目的としたものである。工程2において予備湿潤チャンバ4020から空気又はN2のようなガスを抜いて基板4010の表面を包囲する真空環境を構築するので、予備湿潤用の薬液は、工程3において気泡によって遮断されることなく基板4010上のビアホール、トレンチなどに入り込む。
【0037】
工程7から工程11は、少なくとも1サイクル繰り返すことができる。また、SC1(NH4OH、H2O2、H2O混合物)、オゾン水、アンモニアのような少なくとも1種の薬液をこの洗浄サイクルで使用することができる。
【0038】
工程6から工程12までの洗浄プロセスにおいて、基板4010の回転速度は、種々の時間で10RPMから1500RPMに設定することができ、プログラム可能な手順によって制御されることができる。
【0039】
図5は、本発明の別の例示的な実施形態による、基板の洗浄装置を示す。この装置は、後続の超音波/高周波超音波洗浄プロセスの前に基板の表面を気泡レス又は気泡フリーとするために、基板を前処理することが可能である。この装置は、予備湿潤機能及び洗浄機能を1つの洗浄チャンバ5000に組み入れたものであり、基板は、気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤された基板の表面を得るために前処理され、しかる後、後続の超音波/高周波超音波洗浄プロセスによって洗浄される。
図5は、洗浄チャンバ5000を示す。洗浄チャンバ5000は、洗浄カップ5001と、洗浄チャンバ5000内に真空環境を生成するために真空ポンプに接続された真空ポート5018と、スピンアクチュエータ5003と、基板ホルダ5002と、基板5010表面への下向流を生成するためのファン及びフィルタユニット5015と、洗浄カップ5001の底部の少なくとも1つの排気ポート5017と、排気ポート5017の第1のシャッター5047及びファン及びフィルタユニット5015の第2のシャッター5045と、超音波/高周波超音波デバイス5006が取り付けられたスイングアーム5005と、基板5010の表面に予備湿潤用の薬液又は薬液ミスト、洗浄用の薬液又は薬液ミスト、及び、乾燥ガスを供給するための少なくとも1つのノズル5009が搭載された複数のノズルアーム5008とを備えている。真空ポート5018が前処理プロセスにおいて洗浄チャンバ5000の真空圧形成のための作業を開始すると、ファン及びフィルタユニット5015および排気ポート5017は、基板5010の表面への下向流の生成を停止する。第2のシャッター5045は、ファン及びフィルタユニット5015と洗浄チャンバ5000とを分離するために閉じられ、第1のシャッター5047も、排気ポート5017と洗浄チャンバ5000とを分離して、洗浄チャンバ5000内に真空環境を構築するように閉鎖されている。しかる後、洗浄プロセスにおいて、ファン及びフィルタユニット5015と排気ポート5017とが下向流生成のために再始動される。
【0040】
本発明による基板の別の洗浄方法は、以下の工程を備えている。
【0041】
工程1:基板5010を洗浄チャンバ5000内に移動させ、基板5010を基板ホルダ5002に保持させる。
【0042】
工程2:洗浄チャンバ5000のドアを閉じ、ファン及びフィルタユニット5015と排気ポート5017をオフにし、第1のシャッター5047及び第2のシャッター5045を閉じ、真空ポート5018から洗浄チャンバ5000の真空化を開始して、設定時間に洗浄チャンバ5000内の真空環境を構築する。予備湿潤チャンバ4020の真空度は、25Torr以上に設定されている。
【0043】
工程3:真空環境が形成された後に、基板5010を10RPMから1000RPMまでの設定された低回転数で回転させる。
【0044】
工程4:予備湿潤するノズルを基板5010の表面の上方の位置まで揺動させて、基板5010の表面に予備湿潤用の薬液又は薬液ミストを供給する。
【0045】
工程5:洗浄チャンバ5000の真空圧を解放し、ファン及びフィルタユニット5015と排気ポート5017とをオンにし、第1のシャッター5047および第2のシャッター5045を開けて、基板5010上に下向流を形成させる。
【0046】
工程6:基板5010の表面に洗浄用の薬液5070を供給するため、ノズルアームを基板5010の表面の上方の位置まで揺動させる。この工程では、複数の薬液を使用することができる。
【0047】
工程7:超音波/高周波超音波洗浄プロセスのために、基板5010の表面に洗浄用の薬液を供給する。
【0048】
工程8:超音波/高周波超音波デバイス5006を基板5010の表面上の一定高さにまで下降させ、超音波/高周波超音波デバイス5006と基板5010の表面との間のギャップを、音波伝達媒体としての洗浄用の薬液で充たす。
【0049】
工程9:超音波/高周波超音波デバイス5006をオンとして、プログラムされた手順で一定時間基板5010の表面を洗浄する。
【0050】
工程10:超音波/高周波超音波デバイス5006をオフにし、超音波/高周波超音波デバイス5006を上昇させる。
【0051】
工程11:洗浄のために、基板5010表面上にリンス薬液又はDI水を供給する。
【0052】
工程12:基板5010を乾燥させる。
【0053】
工程13:基板5010の回転を停止し、基板5010を洗浄チャンバ5000から取り出す。
【0054】
工程2から工程4は、気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤プロセスを目的としたものである。工程2において洗浄チャンバ5000から空気又はN2のようなガスを抜いて基板5010の表面を包囲する真空環境を構築するので、予備湿潤用の薬液は、工程4において気泡によって遮断されることなく基板5010上のビアホール、トレンチなどに入り込む。
【0055】
工程6から工程10は、少なくとも1サイクル繰り返すことができる。また、SC1、オゾン水、アンモニアのような少なくとも1種の薬液をこの洗浄サイクルで使用することができる。
【0056】
工程5から工程11までの洗浄プロセスにおいて、基板5010の回転速度は、種々の時間で10RPMから1500RPMに設定することができ、プログラム可能な手順によって制御されることができる。
【0057】
図6A及び6Bは、本発明の例示的な実施形態による基板の洗浄装置を示す。この装置は、後続の超音波/高周波超音波洗浄プロセスの前に基板の表面を気泡レス又は気泡フリーとするために、基板を前処理することが可能である。この装置は、予備湿潤チャンバ6020及び洗浄チャンバ6000を備えている。基板は、基板の表面を気泡レス又は気泡フリーで予備湿潤されたものとするために予備湿潤チャンバ6020で前処理され、しかる後に、後続の超音波/高周波超音波洗浄プロセスのために洗浄チャンバ6000に移動させられる。
図6Aは、予備湿潤チャンバ6020を示す。予備湿潤チャンバ6020は、予備湿潤用の薬液6031を気相分子に気化させるように構成された気化ユニット6030と、基板6010を回転させるように構成された回転駆動装置6024と、気化ユニット6030に接続され、気化液体分子を基板6010の表面に分配して、基板の上に気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤用の薬液層を形成するように構成された少なくとも1つの噴霧器6023と、基板6010を予備湿潤チャンバ6020内で保持するように構成された基板ホルダ6021とを備えている。一実施形態では、基板6010の表面に気化液体分子が均一に分布するように、複数の噴霧器6023が使用されている。気化ユニット6030は、液相の予備湿潤用薬液6031を気体分子に気化させるために使用されている。一実施形態では、気化ユニット6030は、音波発生法によって、予備湿潤用薬液6031を気相分子に変換する。音響発生法を用いて薬液の蒸気を形成している間、薬液の蒸気は基板6010の温度よりも高い温度に加熱される。代替的には、基板6010が薬液の蒸気の温度よりも低い温度にまで冷却される。別の実施形態では、気化ユニット6030は、熱加熱法によって、予備湿潤用薬液6031を気相分子に変換する。そして、気化液体分子は、N
2、空気、オゾン、NH
3、H
2、およびHeなどのいくつかの媒体ガスによっても搬送され得る。搬送ガスは、気化液体分子を搬送するためだけであれば希ガスであってよく、気化液体分子が基板表面を酸化または表面不活性化(passivation)するのをアシストするためには活性ガスであってもよい。
【0058】
気化液体分子は、大容量蒸気環境から、基板6010上のビアホールおよびトレンチなどのパターン構造内へとより容易に搬送される。気化液体分子が基板6010表面上で分配された後、気化液体分子は、基板8010表面上で凝縮して、
図8A~
図8Bに示すように、予備湿潤用の液体分子の薄層8020を形成し、そして、液体分子は、基板8010上のビアホールおよびトレンチの底部から頂部まで層状に形成される。しかしながら、基板表面の一部が十分に濡れていない場合、予備湿潤薬液分子のこのボトムアップ液体層形成が影響を受けることになり、液体層が表面張力のために前記一部で破壊される。一実施形態では、界面活性剤または添加剤を含有する液相予備湿潤薬液が気化ユニット6030において気化され、界面活性剤または添加剤の分子を含有する気化混合液分子となる。界面活性剤又は添加剤の分子を含む気化混合液分子は、基板表面の薬液の濡れ性を向上させることができ、これにより、ビアホール及びトレンチ等の基板6010上のパターン構造を、気泡の閉塞を起こすこと無くボトムアップ式に薬液で充填することができる。カルボキシル含有エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、テトラカルボキシル化合物-エチレンジアミン4プロピオン酸(EDTP)酸/塩などの化学物質は、薬液の濡れ性を高めるために、薬液中に加えられる界面活性剤として使用される。別の実施形態では、基板6010の表面を酸化させて疎水性から親水性とする化学物質を含有する液相予備湿潤薬液が、気化ユニット6030内で気化されて気化混合液分子となる。気化混合液分子は、基板表面の薬液の濡れ性を向上させることができ、これにより、ビアホール及びトレンチ等の基板6010上のパターン構造を、気泡の閉塞を起こすこと無くボトムアップ式に薬液で充填することができる。オゾン溶液又はSC1溶液(NH
4OH、H
2O
2、H
2O混合物)などの化学物質は、シリコン又はポリシリコン層のような疎水性表面材料を親水性シリコン酸化物層に酸化させるために使用される。
【0059】
図6Bは、洗浄チャンバ6000を示す。洗浄チャンバ6000は、洗浄カップ6001と、スピンアクチュエータ6003と、基板ホルダ6002と、基板6010表面への下向流を生成するためのファン及びフィルタユニット6015と、洗浄カップ6001の底部の少なくとも1つの排出ポート6017と、超音波/高周波超音波デバイス6006が取り付けられたスイングアーム6005と、洗浄用の薬液、薬液ミスト又は乾燥ガスを基板6010の表面に供給する少なくとも1つのノズル6009が取り付けられた複数のノズルアーム6008とを備えている。
【0060】
本発明による基板の洗浄方法は、以下の工程を備えている。
【0061】
工程1:基板6010を予備湿潤チャンバ6020内に移動させ、基板6010を基板ホルダ6021に保持させる。
【0062】
工程2:気化液体分子を生成するために、気化ユニット6030に予備湿潤薬液を供給する。
【0063】
工程3:予備湿潤チャンバ6020のドアを閉じ、次いで基板6010を回転させ、予備湿潤プロセスのために基板6010表面上の噴霧器6023から気化液体分子の供給を開始する。
【0064】
工程4:基板6010を予備湿潤チャンバ6020から洗浄チャンバ6000に移動させ、基板6010を基板ホルダ6002に保持させる。
【0065】
工程5:基板6010を10RPMから1000RPMまでの設定された低回転数で回転させる。
【0066】
工程6:基板6010の表面に洗浄用の薬液を供給するため、ノズルアーム6008を基板6010の表面の上方の位置まで揺動させる。この工程では、複数の薬液を使用することができる。
【0067】
工程7:超音波/高周波超音波洗浄プロセスのために、基板6010の表面に洗浄用の薬液を供給する。
【0068】
工程8:超音波/高周波超音波デバイス6006を基板6010の表面上の一定高さにまで下降させ、超音波/高周波超音波デバイス6006と基板6010の表面との間のギャップを、音波伝達媒体としての洗浄用の薬液で充たす。
【0069】
工程9:超音波/高周波超音波デバイス6006をオンとして、プログラムされた手順で一定時間基板6010の表面を洗浄する。
【0070】
工程10:超音波/高周波超音波デバイス6006をオフにし、超音波/高周波超音波デバイス6006を上昇させる。
【0071】
工程11:洗浄のために、基板6010表面上にリンス薬液又はDI水を供給する。
【0072】
工程12:基板6010を乾燥させる。
【0073】
工程13:基板6010の回転を停止し、基板6010を洗浄チャンバ6000から取り出す。
【0074】
工程2から工程3は、気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤プロセスを目的としたものである。気化液体分子が基板6010表面上で分配され、気化液体分子は、基板6010表面上で凝縮して、予備湿潤用の液体分子の薄層を形成し、そして、液体分子は、基板6010表面上のビアホールおよびトレンチの底部から頂部まで層状に形成される。
【0075】
工程7から工程10は、少なくとも1サイクル繰り返すことができる。また、SC1、オゾン水、アンモニアのような少なくとも1種の薬液をこの洗浄サイクルで使用することができる。
【0076】
工程6から工程11までの洗浄プロセスにおいて、基板6010の回転速度は、種々の時間で10RPMから1500RPMに設定することができ、プログラム可能な手順によって制御されることができる。
【0077】
図7は、本発明の別の例示的な実施形態による、基板の洗浄装置を示す。この装置は、後続の超音波/高周波超音波洗浄プロセスの前に基板の表面を気泡レス又は気泡フリーとするために、基板を前処理することが可能である。この装置は、予備湿潤機能及び洗浄機能を1つのチャンバ7000に組み入れたものであり、基板は、気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤された基板の表面を得るために前処理され、しかる後、後続の超音波/高周波超音波洗浄プロセスによって洗浄される。
図7は、洗浄チャンバ7000を示す。洗浄チャンバ7000は、洗浄カップ7001と、スピンアクチュエータ7003と、基板ホルダ7002と、基板7010表面への下向流を生成するためのファン及びフィルタユニット7015と、洗浄カップ7001の底部の少なくとも1つの排出ポート7017と、超音波/高周波超音波デバイス7006が取り付けられたスイングアーム7005と、予備湿潤用の薬液7031を気化させて気相分子とする気化ユニット7030と、気化ユニット7030に接続されて基板7010の表面に気化した液体分子を分配して基板7010上に気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤用の薬液層を形成する少なくとも1つの噴霧器7023、及び、洗浄用の薬液、薬液ミスト又は乾燥ガスを基板7010の表面に供給する少なくとも1つのノズル7009が取り付けられた複数のノズルアーム7008とを備えている。一実施形態では、基板7010の表面に気化液体分子が均一に分布するように、複数の噴霧器7023が使用されている。気化ユニット7030は、液相の予備湿潤用薬液7031を気体分子に気化させるために使用されている。一実施形態では、気化ユニット7030は、音波発生法によって、予備湿潤用薬液7031を気相分子に変換する。別の実施形態では、気化ユニット7030は、熱加熱法によって、予備湿潤用薬液7031を気相分子に変換する。そして、気化液体分子は、N
2、空気、オゾン、NH
3、H
2、およびHeなどのいくつかの媒体ガスによっても搬送され得る。搬送ガスは、気化液体分子を搬送するためだけであれば希ガスであってよく、気化液体分子が基板7010の表面を酸化または表面不活性化(passivation)するのをアシストするためには活性ガスであってもよい。
【0078】
気化液体分子は、大容量蒸気環境から、基板7010の表面上のビアホールおよびトレンチなどのパターン構造内へとより容易に搬送される。気化液体分子が基板7010表面上で分配された後、気化液体分子は、基板7010表面上で凝縮して、
図8A~
図8Bに示すように、予備湿潤用の液体分子の薄層8020を形成し、そして、液体分子は、基板7010上のビアホールおよびトレンチの底部から頂部まで層状に形成される。しかしながら、基板7010の表面の一部が十分に濡れていない場合、予備湿潤薬液分子のこのボトムアップ液体層形成が影響を受けることになり、液体層が表面張力のために前記一部で破壊される。一実施形態では、界面活性剤または添加剤を含有する液相予備湿潤薬液が気化ユニット7030において気化され、界面活性剤または添加剤の分子を含有する気化混合液分子となる。界面活性剤又は添加剤の分子を含む気化混合液分子は、基板表面の薬液の濡れ性を向上させることができ、これにより、ビアホール及びトレンチ等の基板7010上のパターン構造を、気泡の閉塞を起こすこと無くボトムアップ式に薬液で充填することができる。カルボキシル含有エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、テトラカルボキシル化合物-エチレンジアミン4プロピオン酸(EDTP)酸/塩などの化学物質は、薬液の濡れ性を高めるために、薬液中に加えられる界面活性剤として使用される。別の実施形態では、基板7010の表面を酸化させて疎水性から親水性とする化学物質を含有する液相予備湿潤薬液が、気化ユニット7030内で気化されて気化混合液分子となる。気化混合液分子は、基板表面の薬液の濡れ性を向上させることができ、これにより、ビアホール及びトレンチ等の基板7010上のパターン構造を、気泡の閉塞を起こすこと無くボトムアップ式に薬液で充填することができる。オゾン溶液又はSC1溶液(NH
4OH、H
2O
2、H
2O混合物)などの化学物質は、シリコン又はポリシリコン層のような疎水性表面材料を親水性シリコン酸化物層に酸化させるために使用される。
【0079】
本発明による基板の別の洗浄方法は、以下の工程を備えている。
【0080】
工程1:基板7010を洗浄チャンバ7000内に移動させ、基板7010を基板ホルダ7002に保持させる。
【0081】
工程2:基板を10RPMから1000RPMまでの設定された低回転数で回転させる。
【0082】
工程3:気化液体分子を生成するために、気化ユニット7030に予備湿潤薬液を供給する。
【0083】
工程4:ノズルアーム7008を基板7010の表面の上方の位置まで揺動させ、噴霧器7023を用いて、予備湿潤プロセスのために基板7010の表面に気化液体分子を分配する。
【0084】
工程5:ノズル7009を用いて基板7010の表面に洗浄用の薬液を供給する。この工程では、複数の薬液を使用することができる。
【0085】
工程6:超音波/高周波超音波洗浄プロセスのために、基板7010の表面に洗浄用の薬液を供給する。
【0086】
工程7:超音波/高周波超音波デバイス7006を基板7010の表面上の一定高さにまで下降させ、超音波/高周波超音波デバイス7006と基板7010の表面との間のギャップを、音波伝達媒体としての洗浄用の薬液7070で充たす。
【0087】
工程8:超音波/高周波超音波デバイス7006をオンとして、プログラムされた手順で一定時間基板7010の表面を洗浄する。
【0088】
工程9:超音波/高周波超音波デバイス7006をオフにし、超音波/高周波超音波デバイス7006を上昇させる。
【0089】
工程10:洗浄のために、基板7010表面上にリンス薬液又はDI水を供給する。
【0090】
工程11:基板7010を乾燥させる.
【0091】
工程12:基板7010の回転を停止し、基板7010を洗浄チャンバ7000から取り出す。
【0092】
工程2から工程4は、気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤プロセスを得ることを目的としたものである。気化液体分子が基板7010表面上で分配され、気化液体分子は、基板7010表面上で凝縮して、予備湿潤用の液体分子の薄層を形成し、そして、液体分子は、基板7010表面上のビアホールおよびトレンチの底部から頂部まで層状に形成される。
【0093】
工程6から工程9は、少なくとも1サイクル繰り返すことができる。また、SC1、オゾン水、アンモニアのような少なくとも1種の薬液をこの洗浄サイクルで使用することができる。
【0094】
工程5から工程10までの洗浄プロセスにおいて、基板7010の回転速度は、種々の時間で10RPMから1500RPMに設定することができ、プログラム可能な手順によって制御されることができる。
【0095】
図9A~
図9Bは、基板9010の凹部にある程度のスカム(scums)またはバリ9061を有するパターン構造9060が形成された基板9010を示す。気泡9062は、予備湿潤プロセスおよび後続の洗浄プロセスの間に、スカムまたはバリ9061を有する領域の周囲に蓄積し、これにより、超音波/高周波超音波洗浄プロセスにおいて
図2Aに示されるようにパターン構造9060の損傷が引き起こされ得る。したがって、気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤プロセスを実行する前に、
図9Cに示すようにスカム又はバリ9061を除去してパターン構造9060の表面を平滑化するデスカムユニットを用いることが好ましい。この場合、予備湿潤プロセスにおいて、
図9Dに示すようにスカム又はバリの表面に気泡が捕捉されることがない。一実施形態では、パターン構造9060上のスカム又はバリ9061を除去してパターン構造の表面を平滑化するために、高エネルギーのプラズマを使用する。しかる後、基板9010を、気泡レス又は気泡フリーな予備湿潤プロセスのために予備湿潤チャンバへ、そして、超音波/高周波超音波洗浄プロセスのための洗浄チャンバへと移送する。