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特許7373497ブロー成形機およびブロー成形機の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ブロー成形機およびブロー成形機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/78 20060101AFI20231026BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20231026BHJP
   B29C 49/42 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B29C49/78
B29C49/06
B29C49/42
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020548517
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2019036387
(87)【国際公開番号】W WO2020066749
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2018185053
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 康裕
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第10212896(DE,A)
【文献】国際公開第2012/057016(WO,A1)
【文献】特開2011-156728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形部と、加熱部と、前記加熱部で加熱されたプリフォームを前記ブロー成形部へ搬送するための搬送路と、を少なくとも備える樹脂製の容器のブロー成形機であって、
前記搬送路は、連続的かつ間欠的に駆動される搬送可動部材と、前記搬送可動部材を駆動させる複数の搬送駆動部と、第一の駆動部群と、を備え、
前記ブロー成形部は、複数のブロー可動部材と、第二の駆動部群と、を備え、
前記搬送路の複数の前記搬送駆動部の各々が、前記第一の駆動部群によって同期して駆動され、
前記ブロー成形部の前記ブロー可動部材の各々が、前記第二の駆動部群によって同期して駆動され
前記第一の駆動部群と前記第二の駆動部群の各々は複数のサーボモータより構成され、
前記第一の駆動部群は、第一の仮想軸に同期された電子カムによって制御され、
前記第二の駆動部群は、第二の仮想軸に同期された電子カムによって制御される
ブロー成形機。
【請求項2】
ブロー成形部と、加熱部と、前記加熱部で加熱されたプリフォームを前記ブロー成形部へ搬送するための搬送路と、を少なくとも備える樹脂製の容器のブロー成形機であって、
前記搬送路は、連続的かつ間欠的に駆動される搬送可動部材と、前記搬送可動部材を駆動させる複数の搬送駆動部と、第一の駆動部群と、を備え、
前記ブロー成形部は、複数のブロー可動部材と、第二の駆動部群と、を備え、
前記搬送路の複数の前記搬送駆動部の各々が、前記第一の駆動部群によって同期して駆動され、
前記ブロー成形部の前記ブロー可動部材の各々が、前記第二の駆動部群によって同期して駆動され
前記搬送可動部材はプリフォームを支持可能に構成される第一の搬送部材であり、
前記搬送駆動部は、
前記第一の搬送部材を連続駆動する第一の搬送駆動部と、
前記第一の搬送部材を間欠駆動する第二の搬送駆動部および第三の搬送駆動部と、
を少なくとも備え、
前記搬送路において前記第一の搬送部材は、前記第一の搬送駆動部、前記第二の搬送駆動部および前記第三の搬送駆動部にこの順番で駆動されて搬送され、
前記第一の搬送駆動部、前記第二の搬送駆動部および前記第三の搬送駆動部の各々が、同期されて制御され、
前記第三の搬送駆動部は、前記第二の搬送駆動部が一定の駆動速度から加速された後に駆動され、前記第三の搬送駆動部の駆動速度が前記第二の搬送駆動部の駆動速度まで加速された時点から前記第二の搬送駆動部の駆動速度と等速で駆動され、前記第二の搬送駆動部の駆動速度が0になった時点で停止するように駆動される、
ブロー成形機。
【請求項3】
前記搬送可動部材はプリフォームを支持可能に構成される第一の搬送部材であり、
前記搬送駆動部は、
前記第一の搬送部材を連続駆動する第一の搬送駆動部と、
前記第一の搬送部材を間欠駆動する第二の搬送駆動部および第三の搬送駆動部と、
を少なくとも備え、
前記搬送路において前記第一の搬送部材は、前記第一の搬送駆動部、前記第二の搬送駆動部および前記第三の搬送駆動部にこの順番で駆動されて搬送され、
前記第一の搬送駆動部、前記第二の搬送駆動部および前記第三の搬送駆動部の各々が、同期されて制御される、
請求項1に記載のブロー成形機。
【請求項4】
前記第二の搬送駆動部および前記第三の搬送駆動部が、それぞれ速度の連続性を保つように駆動される、請求項3に記載のブロー成形機。
【請求項5】
前記第二の搬送駆動部は、前記第一の搬送駆動部の駆動速度と等速で駆動された状態で前記第一の搬送部材を初期駆動し、その後加速されて前記第一の搬送部材を加速駆動する、請求項3に記載のブロー成形機。
【請求項6】
前記第三の搬送駆動部は、前記第二の搬送駆動部が一定の駆動速度から加速された後に駆動され、前記第三の搬送駆動部の駆動速度が前記第二の搬送駆動部の駆動速度まで加速された時点から前記第二の搬送駆動部の駆動速度と等速で駆動され、前記第二の搬送駆動部の駆動速度が0になった時点で停止するように駆動される、請求項3に記載のブロー成形機。
【請求項7】
前記ブロー可動部材は少なくとも、割型であるブローキャビティ型および底型ならびに前記プリフォームおよび前記容器を搬送するための第二の搬送部材であり、
前記ブローキャビティ型の開閉動作および前記第二の搬送部材の搬送動作の各々が、同期されて制御される、
請求項1に記載のブロー成形機。
【請求項8】
前記第二の搬送部材により前記プリフォームを前記ブローキャビティ型に搬送する第一の搬送動作の途中で、前記ブローキャビティ型を閉じる第一の開閉動作が実施される、請求項7に記載のブロー成形機。
【請求項9】
前記ブローキャビティ型を開く第二の開閉動作の途中で、前記第二の搬送部材により前記容器を前記ブローキャビティ型から前記ブローキャビティ型の外部へ搬送する第二の搬送動作が実施される、請求項7に記載のブロー成形機。
【請求項10】
ブロー成形部と、加熱部と、前記加熱部で加熱されたプリフォームを前記ブロー成形部へ搬送するための搬送路と、を少なくとも備える樹脂製の容器のブロー成形機の制御方法であって、
前記搬送路の搬送可動部材を駆動する複数の搬送駆動部の各々を同期させて制御し、
前記ブロー成形部の複数のブロー可動部材を駆動する複数のブロー駆動部の各々を同期させて制御し、
前記ブロー駆動部の各々は複数のサーボモータより構成され、
前記搬送駆動部は、第一の仮想軸に同期された電子カムによって制御され、
前記ブロー駆動部は、第二の仮想軸に同期された電子カムによって制御される、
ブロー成形機の制御方法。
【請求項11】
ブロー成形部と、加熱部と、前記加熱部で加熱されたプリフォームを前記ブロー成形部へ搬送するための搬送路と、を少なくとも備える樹脂製の容器のブロー成形機の制御方法であって、
前記搬送路の搬送可動部材を駆動する複数の搬送駆動部の各々を同期させて制御し、
前記ブロー成形部の複数のブロー可動部材を駆動する複数のブロー駆動部の各々を同期させて制御し、
前記搬送可動部材は前記プリフォームを支持可能に構成される第一の搬送部材であり、
前記搬送駆動部は、
前記第一の搬送部材を連続駆動する第一の搬送駆動部と、
前記第一の搬送部材を間欠駆動する第二の搬送駆動部および第三の搬送駆動部と、
を少なくとも備え、
前記搬送路において前記第一の搬送部材は、前記第一の搬送駆動部、前記第二の搬送駆動部および前記第三の搬送駆動部にこの順番で駆動されて搬送され、
前記第一の搬送駆動部、前記第二の搬送駆動部および前記第三の搬送駆動部の各々が、同期されて制御され、
前記第三の搬送駆動部は、前記第二の搬送駆動部が一定の駆動速度から加速された後に駆動され、前記第三の搬送駆動部の駆動速度が前記第二の搬送駆動部の駆動速度まで加速された時点から前記第二の搬送駆動部の駆動速度と等速で駆動され、前記第二の搬送駆動部の駆動速度が0になった時点で停止するように駆動される、
ブロー成形機の制御方法。
【請求項12】
ブロー成形部と、加熱部と、前記加熱部で加熱されたプリフォームを前記ブロー成形部へ搬送するための搬送路と、駆動部と、を少なくとも備える樹脂製の容器のブロー成形機の制御方法であって、
前記搬送路は連続搬送領域と間欠搬送領域とを含むループ状に構成され、複数の搬送可動部材を備え、
前記搬送可動部材は前記プリフォームを支持可能に構成される第一の搬送部材であり、
前記駆動部は、前記連続搬送領域に設けられて前記第一の搬送部材を連続駆動する第一の搬送駆動部と、前記間欠搬送領域に設けられて前記第一の搬送部材を間欠駆動する第二の搬送駆動部および第三の搬送駆動部と、を少なくとも備え、
前記第二の搬送駆動部と前記第三の搬送駆動部との間の前記搬送路において、停止している前記第一の搬送部材に搭載された前記プリフォームを前記ブロー成形部に転送する転送部と、を備え、
前記第二の搬送駆動部と前記第三の搬送駆動部とを少なくとも同期させて駆動させ、
前記転送部で停止している下流側の前記第一の搬送部材に対して上流側の前記第一の搬送部材を移動させて、上流側の前記第一の搬送部材と下流側の前記第一の搬送部材との間の距離を小さくし、
上流側の前記第一の搬送部材と下流側の前記第一の搬送部材とが接触する前に下流側の前記第一の搬送部材を移動させて、上流側の前記第一の搬送部材と下流側の前記第一の搬送部材との間の距離を保つ、ブロー成形機の制御方法。
【請求項13】
ブロー成形部と、加熱部と、前記加熱部で加熱されたプリフォームを前記ブロー成形部へ搬送するための搬送路と、駆動部と、を少なくとも備える樹脂製の容器のブロー成形機の制御方法であって、
前記ブロー成形部は複数のブロー可動部材を備え、
前記ブロー可動部材は少なくとも、割型であるブローキャビティ型および底型ならびに前記プリフォームおよび前記容器を搬送するための第二の搬送部材であり、
前記駆動部は、前記ブローキャビティ型を開閉させる第一のブロー駆動部と、前記底型を昇降させる第二のブロー駆動部と、前記第二の搬送部材を移動させる第三のブロー駆動部と、を備え、
前記第一のブロー駆動部、前記第二のブロー駆動部、前記第三のブロー駆動部と、を少なくとも同期させて駆動させ、
前記第二の搬送部材により前記プリフォームを前記ブローキャビティ型に搬送する搬送動作の途中で、前記ブローキャビティ型を閉じる開閉動作が実施され
前記第一のブロー駆動部、前記第二のブロー駆動部、前記第三のブロー駆動部は、それぞれサーボモータによって構成され、
前記第一のブロー駆動部、前記第二のブロー駆動部、前記第三のブロー駆動部は、同一の仮想軸に同期された電子カムによって制御される、
ブロー成形機の制御方法。
【請求項14】
ブロー成形部と、加熱部と、前記加熱部で加熱されたプリフォームを前記ブロー成形部へ搬送するための搬送路と、駆動部と、を少なくとも備える樹脂製の容器のブロー成形機の制御方法であって、
前記ブロー成形部は複数のブロー可動部材を備え、
前記搬送路は、連続的かつ間欠的に搬送可動部材を駆動する搬送駆動部を備え、
前記ブロー可動部材は少なくとも、割型であるブローキャビティ型および底型ならびに前記プリフォームおよび前記容器を搬送するための第二の搬送部材であり、
前記駆動部は、前記ブローキャビティ型を開閉させる第一のブロー駆動部と、前記底型を昇降させる第二のブロー駆動部と、前記第二の搬送部材を移動させる第三のブロー駆動部と、を備え、
前記第一のブロー駆動部、前記第二のブロー駆動部、前記第三のブロー駆動部と、を少なくとも同期させて駆動させ、
前記第二の搬送部材により前記プリフォームを前記ブローキャビティ型に搬送する搬送動作の途中で、前記ブローキャビティ型を閉じる開閉動作が実施され
前記搬送可動部材は前記プリフォームを支持可能に構成される第一の搬送部材であり、
前記搬送駆動部は、
前記第一の搬送部材を連続駆動する第一の搬送駆動部と、
前記第一の搬送部材を間欠駆動する第二の搬送駆動部および第三の搬送駆動部と、
を少なくとも備え、
前記搬送路において前記第一の搬送部材は、前記第一の搬送駆動部、前記第二の搬送駆動部および前記第三の搬送駆動部にこの順番で駆動されて搬送され、
前記第一の搬送駆動部、前記第二の搬送駆動部および前記第三の搬送駆動部の各々が、同期されて制御され、
前記第三の搬送駆動部は、前記第二の搬送駆動部が一定の駆動速度から加速された後に駆動され、前記第三の搬送駆動部の駆動速度が前記第二の搬送駆動部の駆動速度まで加速された時点から前記第二の搬送駆動部の駆動速度と等速で駆動され、前記第二の搬送駆動部の駆動速度が0になった時点で停止するように駆動される、ブロー成形機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形機およびブロー成形機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、同時射出成形個数と同時ブロー成形個数とを不一致とした1.5ステージ方式の射出延伸ブロー成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許第5563095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械1台で材料から多様なサイズの容器製造を可能とし、取り数(同時成形個数)も変更できる、1.5ステップ式のブロー成形機が上市されている。この機種は省スペースでの汎用性と生産性の向上を追求した結果、数多くの可動部材と、これら可動部材を駆動するための機械的に制御される専用の駆動部(メカニカルカムやカムクラッチ、タイミングベルトを用いる方法、等)が設けられている。
【0005】
近年、この機種の市場競争力を高めるため、汎用性の拡充と生産性の向上に関わる部分を改良したいという要望が挙がっている。しかしながら、従前のように機械的な制御方法を採用すると、装置の調整や機械部品の交換に関わる作業が多くなり、作業者の負担が増大する。また、上記の改良を実現するには、一層精密かつ安定的に可動部を動作制御することが必須になり、機械的な制御方法ではこのような制御が困難であった。
【0006】
本発明は、短時間の成形サイクルを実現でき、多様なサイズの容器製造に容易に対応することができるブロー成形機およびブロー成形機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明の一側面に係るブロー成形機は、
ブロー成形部と、加熱部と、前記加熱部で加熱されたプリフォームを前記ブロー成形部へ搬送するための搬送路と、を少なくとも備える樹脂製の容器のブロー成形機であって、
前記搬送路は、連続的かつ間欠的に駆動される搬送可動部材と、前記搬送可動部材を駆動させる複数の搬送駆動部と、第一の駆動部群と、を備え、
前記ブロー成形部は、複数のブロー可動部材と、第二の駆動部群と、を備え、
前記搬送路の複数の前記搬送駆動部の各々が、前記第一の駆動部群によって同期して駆動され、
前記ブロー成形部の前記ブロー可動部材の各々が、前記第二の駆動部群によって同期して駆動される。
【0008】
また、上記のブロー成形機は、
前記第一の駆動部群と前記第二の駆動部群の各々は複数のサーボモータより構成され、
前記第一の駆動部群は、第一の仮想軸に同期された電子カムによって制御され、
前記第二の駆動部群は、第二の仮想軸に同期された電子カムによって制御されると、好ましい。
当該構成を備えるブロー成形機によれば、搬送駆動部およびブロー可動部材の動作をそれぞれ電子カムによって制御することで、可動部材の動作を安定的かつ最短となるように容易に最適化することができる。
【0009】
また、上記のブロー成形機は、
前記搬送可動部材はプリフォームを支持可能に構成される第一の搬送部材であり、
前記搬送駆動部は、
前記第一の搬送部材を連続駆動する第一の搬送駆動部と、
前記第一の搬送部材を間欠駆動する第二の搬送駆動部および第三の搬送駆動部と、
を少なくとも備え、
前記搬送路において前記第一の搬送部材は、前記第一の搬送駆動部、前記第二の搬送駆動部および前記第三の搬送駆動部にこの順番で駆動されて搬送され、
前記第一の搬送駆動部、前記第二の搬送駆動部および前記第三の搬送駆動部の各々が、同期されて制御されると、好ましい。
当該構成を備えるブロー成形機によれば、第一の搬送部材の動作を容易に最適化することができる。具体的には、第一の搬送部材の動作による振動を軽減でき、第一の搬送部材の衝突を抑制することができる。また、機械的な制御方法では困難であったイニシャル動作(各駆動部の位相を初期状態にそれぞれ戻す動作)が容易となる。これにより、安定的な動作を実現でき、機械的負荷を軽減できる。
【0010】
また、上記のブロー成形機は、
前記第二の搬送駆動部および前記第三の搬送駆動部が、それぞれ速度の連続性を保つように駆動されると、好ましい。
当該構成を備えるブロー成形機によれば、駆動される第一の搬送部材が急停止または急発進することなく、スムーズに搬送路上で搬送され、第一の搬送部材の動作による振動や第一の搬送部材同士の衝突を抑制することができる。これにより、安定的な動作を実現でき、機械的負荷も軽減できる。
【0011】
また、上記のブロー成形機は、
前記第二の搬送駆動部は、前記第一の搬送駆動部の駆動速度と等速で駆動された状態で前記第一の搬送部材を初期駆動し、その後加速されて前記第一の搬送部材を加速駆動すると、好ましい。
【0012】
また、上記のブロー成形機は、
前記第三の搬送駆動部は、前記第二の搬送駆動部が一定の駆動速度から加速された後に駆動され、前記第三の搬送駆動部の駆動速度が前記第二の搬送駆動部の駆動速度まで加速された時点から前記第二の搬送駆動部の駆動速度と等速で駆動され、前記第二の搬送駆動部の駆動速度が0になった時点で停止するように駆動されると、好ましい。
【0013】
また、上記のブロー成形機は、
前記ブロー可動部材は少なくとも、割型であるブローキャビティ型および底型ならびに前記プリフォームおよび前記容器を搬送するための第二の搬送部材であり、
前記ブローキャビティ型の開閉動作および前記第二の搬送部材の搬送動作の各々が、同期されて制御されると、好ましい。
当該構成を備えるブロー成形機によれば、ブローキャビティ型および底型ならびに第二の搬送部材の動作を容易に最適化することができる。具体的には、ブローキャビティ型の開閉動作に係る時間を短縮でき、振動や騒音を低減することができる。これにより、安定的な動作を実現でき、機械的負荷を軽減できる。
【0014】
また、上記のブロー成形機は、
前記第二の搬送部材により前記プリフォームを前記ブローキャビティ型に搬送する第一の搬送動作の途中で、前記ブローキャビティ型を閉じる第一の開閉動作が実施されると、好ましい。
【0015】
また、上記のブロー成形機は、
前記ブローキャビティ型を開く第二の開閉動作の途中で、前記第二の搬送部材により前記容器を前記ブローキャビティ型から前記ブローキャビティ型の外部へ搬送する第二の搬送動作が実施されると、好ましい。
当該構成を備えるブロー成形機によれば、ブロー成形のサイクル時間を短縮することができる。さらに、ブロー成形部に一定数のプリフォームが搬送される一定のサイクル時間において、第二の搬送部材単体の移動速度を、ブローキャビティ型および第二の搬送部材をそれぞれ独立して動かす場合に比べて、遅くすることができる。短いサイクル時間の間でも、ブロー可動部材の一つである第二の搬送部材の動作を遅くすることができるため、成形サイクルを短縮しつつ、安定的な動作を実現でき、機械的負荷も軽減できる。
【0016】
また、上記課題を解決することのできる本発明の一側面に係るブロー成形機の制御方法は、
ブロー成形部と、加熱部と、前記加熱部で加熱されたプリフォームを前記ブロー成形部へ搬送するための搬送路と、を少なくとも備える樹脂製の容器のブロー成形機の制御方法であって、
前記搬送路の搬送可動部材を駆動する複数の搬送駆動部の各々を同期させて制御し、
前記ブロー成形部の複数のブロー可動部材を駆動する複数のブロー駆動部の各々を同期させて制御する。
【0017】
また、上記課題を解決することのできる本発明の一側面に係るブロー成形機の制御方法は、
ブロー成形部と、加熱部と、前記加熱部で加熱されたプリフォームを前記ブロー成形部へ搬送するための搬送路と、駆動部と、を少なくとも備える樹脂製の容器のブロー成形機の制御方法であって、
前記搬送路は連続搬送領域と間欠搬送領域とを含むループ状に構成され、複数の搬送可動部材を備え、
前記搬送可動部材は前記プリフォームを支持可能に構成される第一の搬送部材であり、
前記駆動部は、前記連続搬送領域に設けられて前記第一の搬送部材を連続駆動する第一の搬送駆動部と、前記間欠搬送領域に設けられて前記第一の搬送部材を間欠駆動する第二の搬送駆動部および第三の搬送駆動部と、を少なくとも備え、
前記第二の搬送駆動部と前記第三の搬送駆動部との間の前記搬送路において、停止している前記第一の搬送部材に搭載された前記プリフォームを前記ブロー成形部に転送する転送部と、を備え、
前記第二の搬送駆動部と前記第三の搬送駆動部とを少なくとも同期させて駆動させ、
前記転送部で停止している下流側の前記第一の搬送部材に対して上流側の前記第一の搬送部材を移動させて、上流側の前記第一の搬送部材と下流側の前記第一の搬送部材との間の距離を小さくし、
上流側の前記第一の搬送部材と下流側の前記第一の搬送部材とが接触する前に下流側の前記第一の搬送部材を移動させて、上流側の前記第一の搬送部材と下流側の前記第一の搬送部材との間の距離を保つ。
【0018】
また、上記課題を解決することのできる本発明の一側面に係るブロー成形機の制御方法は、
ブロー成形部と、加熱部と、前記加熱部で加熱されたプリフォームを前記ブロー成形部へ搬送するための搬送路と、駆動部と、を少なくとも備える樹脂製の容器のブロー成形機の制御方法であって、
前記ブロー成形部は複数のブロー可動部材を備え、
前記ブロー可動部材は少なくとも、割型であるブローキャビティ型および底型ならびに前記プリフォームおよび前記容器を搬送するための第二の搬送部材であり、
前記駆動部は、前記ブローキャビティ型を開閉させる第一のブロー駆動部と、前記底型を昇降させる第二のブロー駆動部と、前記第二の搬送部材を移動させる第三のブロー駆動部と、を備え、
前記第一のブロー駆動部、前記第二のブロー駆動部、前記第三のブロー駆動部と、を少なくとも同期させて駆動させ、
前記第二の搬送部材により前記プリフォームを前記ブローキャビティ型に搬送する搬送動作の途中で、前記ブローキャビティ型を閉じる開閉動作が実施される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、短時間の成形サイクルを実現でき、多様なサイズの容器製造に容易に対応することができるブロー成形機およびブロー成形機の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ブロー成形機の全体を示す平面概略図である。
図2】ブロー成形機の全体を示す側面概略図である。
図3】搬送路の平面図である。
図4】搬送部材を示す図である。
図5】一組の搬送部材を示す図である。
図6】搬送路に設けられた複数のスプロケットを駆動する第一の駆動部群に設定された電子カムを説明するブロック図である。
図7】ブロー成形部の平面概略図である。
図8】ブロー成形部の側面視における部分断面の概要を示す図である。
図9】ブロー成形部のブロー可動部材を駆動する第二の駆動部群に設定された電子カムを説明するブロック図である。
図10】搬送路における搬送駆動部の駆動の様子を示す図である。
図11】ブロー成形部におけるブロー可動部材の動きを示す図である。
図12】ブロー成形部におけるブロー可動部材の時間に対する変位を示す図である。
図13】ブロー成形機が備えるGUIの一例を示す図である。
図14】ブロー成形機が備えるGUIの別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0022】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」について適宜言及する。これらの方向は、図1および図2に示すブロー成形機について設定された相対的な方向である。ここで、「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。
【0023】
図1は、実施形態に係る樹脂製の容器20のブロー成形機1の全体の様子を示す平面概略図である。図2は、実施形態に係るブロー成形機1の全体の様子を示す側面概略図である。ブロー成形機1は、樹脂製のプリフォーム10を成形する射出成形部100と、プリフォーム10をブロー成形して容器を成形するブロー成形部500と、射出成形部100で成形されたプリフォーム10をブロー成形部500へ搬送するための搬送路300と、を備えている。ブロー成形機1は、同時に射出成形されたN個のプリフォーム10をn回に分けてM個ずつブロー成形動作する、ホットパリソン方式(1.5ステージ方式)のブロー成形機である。
【0024】
ここで、図1及び図2を参照して、射出成形部100について説明する。図1及び図2に示すように、射出成形部100は、N個のプリフォーム10を、左右方向と平行なn(nは2以上の整数)列の各列にてM(M=N/n:Mは自然数)個ずつ同時に射出成形するように構成されている。射出成形部100は、樹脂を射出する射出装置110と、射出コア型120と、射出ネック型(図示省略)と、射出キャビティ型130と、4本のタイバー140に沿って型締め駆動する型締め機構と、を有する。
【0025】
図1に示すように、射出成形部100にて同時に射出成形されるプリフォーム個数Nは例えば最大24個(3列×8個)とされる。プリフォーム径が大きい場合には、各列で4個のプリフォーム配列とされ、3列で計N=12個とされる。
【0026】
射出成形部100には、射出成形されたN個のプリフォーム10を取り出す取出装置150が設けられている。取出装置150は、N個(例えば3列×8個)の保持部材152(例えばポット)を、射出コア型120の下方の受取位置P1と、タイバー140で囲まれた空間よりも外方の受渡位置P2とに、水平移動可能としている。
【0027】
ここで、取出装置を備えた射出成形部については、例えば本出願人による日本国特許第4148576号公報に開示されたプリフォーム成形装置の技術を用いることができる。ただし、本実施形態の射出成形部100はこれに限定されるものではない。
【0028】
ブロー成形機1は、射出成形部100から搬送路300へプリフォーム10を受け渡すための第一の反転部200を備えている(図2)。第一の反転部200は、射出成形部100で成形された正立状態のプリフォーム10を、ネック部12を下向きとした倒立状態に反転させて、搬送路300へ受け渡すように構成されている。第一の反転部200は、第一の反転部材210と、射出成形部100の取出装置150から第一の反転部材210へプリフォーム10を搬送させるためのプリフォーム搬送装置220と、を備えている。
【0029】
プリフォーム搬送装置220は、図2に示す受渡位置P2にある3列の保持部材152に保持されたN個のプリフォーム10を、第一の反転部材210まで搬送する。プリフォーム搬送装置220は、プリフォーム保持具222と、プリフォーム保持具222を上下方向にて昇降する第一の搬送機構224と、プリフォーム保持具222及び第一の搬送機構224を前後方向に水平移動させる第二の搬送機構226とを有する。第一および第二の搬送機構224,226の駆動源には、例えば、エアシリンダーやサーボモータが用いられる。
【0030】
第一の反転部材210は、N個の第一の反転ポット212と、第一の反転ポット212と対向するように設けられたN個の第二の反転ポット214と、を有する。第一の反転ポット212及び第二の反転ポット214(第一の反転部材210)は、軸の廻りに180°間欠的に反転可能である。第一の反転部材210は、駆動源216(例えばサーボモータ)により駆動されるボールねじ等によって昇降可能である。
【0031】
搬送路300は、射出成形部100から第一の反転部200を経て搬送されたプリフォーム10をブロー成形部500へ搬送するように構成されている。ここで、図3図6を参照して、搬送路300について説明する。図3は、搬送路300の平面図である。搬送路300は、プリフォーム10を支持可能に構成される複数の第一の搬送部材310(搬送可動部材の一例)を備える。搬送路300はループ状で構成されて、第一の搬送部材310を循環搬送するように構成されている。搬送路300は、第一の搬送部材310を連続駆動する第一の搬送駆動部320である複数のスプロケット320a,320b,320c,320dと、第一の搬送部材310を間欠駆動する第二の搬送駆動部330であるスプロケット330aと、第一の搬送部材310を間欠駆動する第三の搬送駆動部340であるスプロケット340aと、第一の搬送部材310を間欠駆動する第四の搬送駆動部350であるスプロケット350aと、を備えている。搬送路300は、複数の第一の搬送部材310を搬送方向H(図5参照)に沿って案内する案内レール302(図4参照)を備えている。搬送方向Hにおいて、第一の搬送駆動部320が最も上流側に配置され、第二の搬送駆動部330、第三の搬送駆動部340および第四の搬送駆動部350が、この順番で下流側に配置されている。
【0032】
第一の搬送部材310によって第一の搬送部材310が連続駆動される領域は連続搬送領域T1であり、第二の搬送駆動部330、第三の搬送駆動部340、及び第四の搬送駆動部350によって第一の搬送部材310が間欠駆動される領域は間欠搬送領域T2である。連続搬送領域T1には、プリフォーム10の温度をブロー成形に適した温度に加熱する加熱部360が設けられている。加熱部360は、高さ方向にて多段で搬送方向Hにて間隔をおいて配置されたヒーター例えばクォーツヒーターと反射鏡とを連続搬送領域T1の搬送路300の両側に配置して構成することができる。加熱部360内では、ヒーターの背面から熱風を吹き出してもよく、この熱風を加熱部360内にてプリフォーム10の搬送方向Hに沿って導くことができる。
【0033】
図4は、第一の搬送部材310を示す図であり、図5は一組の第一の搬送部材310を示す図である。第一の搬送部材310は、自転軸Sに対して延びる本体部311を備える部材である。自転軸Sの延びる方向における本体部311の一端部(上端部)に、プリフォーム10のネック部12に挿入される保持部312が固定されている。自転軸Sの延びる方向における本体部311の他端部(下端部)には、自転駆動力が付与されるスプロケット313が固定されている。スプロケット313は、加熱部360に配される固定または可動チェーン362に噛合して自転軸Sを中心に自転する。
【0034】
図5に示すように、搬送方向Hにて隣り合う2つの第一の搬送部材310は、互いにが接するリング状部材314を有する。リング状部材314は、本体部311に対して回転ベアリング315を介して支持されている。リング状部材314の外周は例えば円形であり、隣り合うリング状部材314は転接可能である。これにより、搬送路300の湾曲した部分でも隣り合うリング状部材314は転接関係を維持できる。
【0035】
図5に示すように、搬送方向Hにて連続するM(例えばM=8)個の第一の搬送部材310は、連結部材316により連結されて一つの搬送治具310A(一組の第一の搬送部材310)を構成する。連結部材316は、一つの第一の搬送部材310の本体部311を、例えば上流側にて隣り合う他の第一の搬送部材310の本体部311と連結する内側リンク316aと、一つの第一の搬送部材310の本体部311を、例えば下流側にて隣り合うさらに他の第一の搬送部材310の本体部311と連結する外側リンク316bと、で構成される。内側リンク316aと外側リンク316bとの連鎖である連結部材316がチェーンを形成し、このチェーンが図1及び図3に示す複数のスプロケット320a,320b,320c,320d,330a,340a,350aに噛合される。
【0036】
なお、図5に示すようにM個の第一の搬送部材310を連結して搬送治具310Aを構成する場合、同時ブロー成形個数Mが異なる仕様では、個数Mに合わせて搬送治具310Aを用意する。これに対して、非連結の第一の搬送部材310を用いる場合には、同時ブロー成形個数Mの変化に対する対応が容易となる。ただし、連結せずに個々の第一の搬送部材310を用いる場合には、スプロケット等の連続・間欠駆動部材に噛合するチェーンに相当する部材を、個々の第一の搬送部材310に設けておく必要がある。
【0037】
ここで、図3では、一つの搬送治具310Aの中の先頭の第一の搬送部材310(またはプリフォーム10)の位置を、先頭以外の他の7つと区別するためにマーキングしている。
【0038】
図6は、搬送路300に設けられた複数のスプロケット(搬送駆動部)を駆動させる第一の駆動部群に設定された電子カムを説明するブロック図である。スプロケット320a,330a,340a,350aは、それぞれアクチュエーター320A,330A,340A,350A(第一の駆動部群)によって駆動される。アクチュエーター320A,330A,340A,350Aは、例えばサーボモータである。アクチュエーター320A,330A,340A,350Aの各々には、電子カム320E,330E,340E,350Eが設定されている。各々の電子カムは第一の仮想軸300Aに同期されており、各々の電子カムによって、アクチュエーター320A,330A,340A,350Aの各々の動作が第一の仮想軸300Aに同期して制御される。これにより、第一の搬送駆動部320~第四の搬送駆動部350の動作が第一の仮想軸300Aに同期して制御される。
【0039】
連続駆動する第一の搬送駆動部320は、図3に示される複数のスプロケット320a,320b,320c,320dのうち、1つ(スプロケット320a)が電子カム320Eによって制御され、残りのスプロケット320b,320c,320dはスプロケット320aと、タイミングベルト等によって機械的に同期されている。または、残りのスプロケット320b,320c,320dの内のいくつかを機械的に同期せずに上流の搬送治具310Aに働く駆動力によって従動するような構成としてもよい。
【0040】
また、間欠駆動する第二の搬送駆動部330、第三の搬送駆動部340、および第四の搬送駆動部350は速度の連続性を保つように制御される。速度の連続性を保つとは、間欠駆動する第二の搬送駆動部、第三の搬送駆動部及び第四の搬送駆動部がパルス状の速度変化によって動作するのではなく、緩やかな加速と減速とによって駆動速度が連続的になった状態を保つことを指す。
【0041】
ここで、図1図2に戻り、ブロー成形機1を説明する。間欠搬送領域T2の第二の搬送駆動部330および第三の搬送駆動部340の間には、搬送路300で搬送されるプリフォーム10を倒立状態から正立状態に反転させてブロー成形部500に受け渡す、第二の反転部400(搬送路300からブロー成形部500にプリフォーム10を転送する転送部の一例)が設けられている。第二の反転部400は、第二の搬送駆動部330および第三の搬送駆動部340の間の搬送路300において静止したプリフォーム10を、ブロー成形部500に設けられた後述する第二の搬送部材530に受け渡す、第二の反転部材(図示省略)を備えている。
【0042】
また、搬送路300の第一の反転部200の下方の位置には、(n+1)以上の数例えば4つ(4列)の搬送治具310Aを並列駆動する並列駆動装置370が配置されている(図2)。並列駆動装置370は、左右方向端部の各2つのスプロケット372a,372bに掛け渡された2つのチェーン374に複数の搬送レールの両端を取り付けて構成される。スプロケット372a,372bの一方が1ステップ分だけ回転されると、搬送レールが1ステップ分だけ移送される。並列駆動装置370に配置される4列の搬送治具310Aの中の先頭列は、例えばエアシリンダー等で構成される搬出装置(図示省略)により左方向に押し出されるように構成されている。これにより、プリフォーム10が搭載された8つの第一の搬送部材310(搬送治具310A)が順次、連続駆動するスプロケット320dと噛合して連続搬送されることになる。
【0043】
先頭列の搬送治具310Aの中の先頭の第一の搬送部材310が、搬出装置により搬出されて最上流のスプロケット320dと噛合されて、スプロケット320dから搬送治具310Aに連続搬送力が付与される。連続搬送領域T1に存在する4つの連続駆動するスプロケット320a,320b,320c,320dと噛合する各搬送治具310A(第一の搬送部材310)に駆動力が付与されることで、それよりも上流側にて連続駆動するスプロットと非噛合の他の搬送治具310A(第一の搬送部材310)が押動され、複数の搬送治具310Aが連続搬送領域T1の搬送方向Hに沿って連続搬送される。
【0044】
ブロー成形部500は、M個のプリフォーム10を吹き込みエアーと延伸ロッドの縦軸駆動で二軸延伸して容器に成形するものである。ここで、図7図9を参照して、ブロー成形部500について説明する。図7は、ブロー成形部500の平面概略図であり、図8は、ブロー成形部500の側面視における部分断面の概要を示す図である。ブロー成形部500は、割型であって容器20の胴部の形状を規定する左右方向に開閉可能なブローキャビティ型510と、容器20の底部を規定する昇降可能な底型520と、プリフォーム10および容器20を前後方向に搬送するための第二の搬送部材530と、を備えている。ブロー成形部500は、これらの他に延伸ロッド、ブローコア型、ネック型等を備え得るが、これらの構成については周知のものを適用でき、これらの詳細な説明は本明細書では省略される。
【0045】
図9は、ブロー成形部500のブローキャビティ型510、底型520、および第二の搬送部材530を駆動させる第二の駆動部群に設定された電子カムを説明するブロック図である。ブローキャビティ型510、底型520、および第二の搬送部材530は、それぞれアクチュエーター510A,520A,530Aで構成される第二の駆動部群(ブロー駆動部)によって駆動される。アクチュエーター510Aが第一のブロー駆動部、アクチュエーター520Aが第二のブロー駆動部、アクチュエーター530Aが第三のブロー駆動部に相当する。アクチュエーター510A,520A,530Aは、例えばサーボモータ、エアシリンダー、油圧シリンダー等である。アクチュエーター510A,520A,530Aの各々には、電子カム510E,520E,530Eが設定されている。電子カム510E,520E,530Eの各々は、第二の仮想軸500Aに同期されており、電子カム510E,520E,530Eによって、アクチュエーター510A,520A,530Aの各々の動作が第二の仮想軸500Aに同期して制御され、すなわち、ブローキャビティ型510の開閉動作、底型520の昇降動作および第二の搬送部材530の搬送動作の各々が第二の仮想軸500Aに同期して制御される。
【0046】
第二の搬送部材530は、M個のプリフォーム10または容器20のネック部(12)を掴んで間欠搬送するチャック部材である。第二の搬送部材530は、一対でプリフォーム10または容器20のネック部(12)を掴む保持アーム532を有する(図7)。第二の搬送部材530は、搬入部534と搬出部536とを一体的に有し、前後方向に往復駆動するように構成されている。この往復駆動は、アクチュエーター530A(例えばサーボモータ)により実現される。その往復駆動により、搬入部534はプリフォーム受取位置B1とブロー成形位置B2との間を往復し、搬出部536はブロー成形位置B2と取出位置B3との間を往復する。搬入部534および搬出部536のそれぞれに、M個のプリフォーム10を搬送する一対の保持アーム532が設けられている。一対の保持アーム532は、例えばエアシリンダーの駆動力によって、一体で左右方向に開閉駆動される。また、搬入部534の一対の保持アーム532同士の列ピッチは、プリフォーム受取位置B1からブロー成形位置B2へ移動する際に、プリフォーム受取位置B1での狭ピッチからブロー成形位置B2での広ピッチへと変換される。
【0047】
続いて、ブロー成形機1におけるプリフォーム10および容器20の搬送動作並びに搬送治具310Aの動作について説明する。まず、射出成形されたプリフォーム10が搬送路300へ搬送される工程を、図1及び図2を参照して説明する。
【0048】
射出成形部100で射出成形されたN個のプリフォーム10は、受取位置P1で射出コア型120から外れて、取出装置150の保持部材152に収容される。続いて、保持部材152が受渡位置P2に移動し、プリフォーム搬送装置220のプリフォーム保持具222にプリフォーム10が保持される。その後、プリフォーム保持具222が移動され、第一の反転部材210の第一の反転ポット212に、プリフォーム保持具222からプリフォーム10が受け渡される。その後、第一の反転部材210は下方向に移動され、次いで反転して、第一の反転ポット212が上側から下側へ移動される。そして、第一の反転ポット212に収容されたプリフォーム10が、搬送路300の並列駆動装置370上の3つの搬送治具310AにM個ずつ分けて搭載される。この一連の流れにより、射出成形されたプリフォーム10が搬送路300へ搬送される。なお、約500mLの小型プリフォームを成形する場合、射出成形時間(射出成形サイクル)は約10秒である。射出成形時間は、例えば、前後バッチにおける射出成形部100の金型を閉じる動作の開始時間の間隔で規定される。
【0049】
次に、搬送路300においてプリフォーム10が搬送される工程を、図2図3図6及び図10を参照して説明する。図10は、搬送路300におけるスプロケット320a,330a,340a,350aの駆動の様子を示す図である。
【0050】
並列駆動装置370上の3つの搬送治具310Aに搭載されたプリフォーム10は、前のサイクルで搬送治具310Aに搭載されたプリフォーム10が、搬出装置により左方向に搬送された後に、スプロケット372a,372bの一方が1ステップ分だけ回転され、1ステップ分だけ前方向に移送される。次いで、並列駆動装置370上の先頭の搬送治具310Aが、搬出装置により左方向に搬送されて、連続搬送領域T1の搬送路300に搬出される。
【0051】
連続搬送領域T1では、連続駆動するスプロケット320a,320b,320c,320dの駆動力と、前後の第一の搬送部材310がリング状部材314で密接することにより、複数の搬送治具310Aが連続搬送される。その過程で、プリフォーム10は加熱部360により自転されながら加熱される。スプロケット320aは、第一の仮想軸300Aの回転周期(サイクル周期)に同期された電子カム320Eによって制御されるアクチュエーター320Aによって、一定の駆動速度で作動される。なお、ここでの駆動速度とは、スプロケットの位相速度を意味する。以降において、スプロケット320a,330a,340a,350aの駆動速度という場合は、スプロケットの位相速度を意味する。
【0052】
加熱部360を経て、プリフォーム10を搭載した搬送治具310Aは、間欠搬送領域T2の、スプロケット330aに噛合される。スプロケット330aは、第一の仮想軸300Aの回転周期に同期された電子カム330Eによって制御されるアクチュエーター330Aによって作動される。搬送治具310Aの先頭の第一の搬送部材310がスプロケット330aに噛合される時点(時間t0)において、スプロケット330aはスプロケット320aと等速の駆動速度で作動される(図10)。時間t0からスプロケット330aは加速され、搬送治具310Aを加速駆動する。この加速駆動は、スプロケット320bの駆動速度が最高速に達するまでの間、緩やかに加速度を上昇させ、また緩やかに加速度を減少させることで、駆動速度が連続的に変化するようにされる(図10)。時間t0からスプロケット330aの加速駆動が始まる前の所定時間に、搬送治具310Aとスプロケット320aとの噛合は解除される。つまり、搬送治具310Aはこのタイミングで、連続搬送領域T1から間欠搬送領域T2に移る。
【0053】
所定時間経過後に、スプロケット330aは減速されて、搬送治具310Aを減速駆動し、最終的に時間t5において、駆動速度は0となる(図10)。この減速駆動は、スプロケット330aの駆動速度が0に達するまでの間、緩やかに加速度を減少させ、また緩やかに加速度を上昇させることで、駆動速度が連続的に変化するようにされる(図10)。時間t5では、搬送治具310Aはスプロケット330aとの噛合が解除され、スプロケット340aと噛合し静止(停止)される。スプロケット330aの加速駆動及び減速駆動により搬送治具310Aは、スプロケット330a及びスプロケット340aの間の第二の反転部400で停止される。搬送治具210Aが停止している間に、搬送治具210Aに搭載されたプリフォーム10は、第二の反転部材によって倒立状態から正立状態に直されて、ブロー成形部500の第二の搬送部材530に受け渡される。なお、時間t0から時間t5における搬送治具310Aの搬送と停止に係る時間は、例えば、約3.3秒とされる。
【0054】
時間t5のすぐ後に、スプロケット330aは駆動速度が連続的に変化するように加速されて、スプロケット320aの駆動速度と等速に合せられて、所定時間経過後、連続搬送されてきた次の搬送治具310Aの加速駆動が行われる(時間t0)。
【0055】
スプロケット340aは、スプロケット330aが時間t0において加速されてから所定時間経過後の時間t1において駆動されて、第二の反転部400に停止されている搬送治具310Aを加速駆動する。スプロケット340aの加速は駆動速度が連続的に変化するようにされ、時間t3において、スプロケット340aの駆動速度がスプロケット330aの駆動速度と等速となる。スプロケット340aの駆動速度は、時間t3から時間t5までスプロケット330aの駆動速度と同一とされ、時間t5以降は0とされる。時間t1からスプロケット340aの加速駆動が始まる前の所定時間に、搬送治具310Aとスプロケット330aとの噛合は解除される。
【0056】
ここで、スプロケット330a,340aにおける搬送治具310Aの挙動について説明する。時間t0において、第二の反転部400で停止している下流側の搬送治具310Aに対して、スプロケット330aにより上流側の搬送治具310Aを移動させることで、上流側および下流側の搬送治具310Aの距離が小さくなる。そして時間t1において、上流側と下流側との搬送治具310Aが接触する前に、スプロケット340aにより下流側の搬送治具310Aを移動させる。時間t3において、スプロケット340aの駆動速度がスプロケット330aの駆動速度と等速となり、下流側および上流側の搬送治具310Aの距離が一定に保たれる。時間t5において、それぞれの搬送治具310Aが停止する。これにより、下流側および上流側の搬送治具310Aとの距離を保ち、上流側と下流側との搬送治具310Aの接触を防止できる。
【0057】
スプロケット350aは、スプロケット340aが時間t1において加速されてから所定時間経過後の時間t2において駆動される。スプロケット350aの加速は駆動速度が連続的に変化するようにされ、時間t4において、スプロケット350aの駆動速度がスプロケット340aの駆動速度と等速となる。時間t4から所定時間経過後にスプロケット350aは減速されて、時間t6においてスプロケット350aの駆動速度は0とされる。時間t4以降で、スプロケット350aの駆動速度がスプロケット340aの駆動速度と等速となっている際に、第二の反転部400からスプロケット340dによって搬送されてきた搬送治具310Aが、スプロケット350aに噛合されて駆動される。数回の間欠駆動によって、スプロケット350aに噛合された搬送治具310Aは、並列駆動装置370の搬送レールにスライドインされる。時間t2からスプロケット350aの加速駆動が始まる前の所定時間に、搬送治具310Aとスプロケット340aとの噛合は解除される。
【0058】
並列駆動装置370上の先頭の搬送治具310Aが、搬出装置により左方向に搬送されて連続搬送領域T1の搬送路300に搬出されると、搬送レールが1ステップ分だけ前方向に移送されて、次の搬送治具310Aが並列駆動装置370の搬送レールにスライドインされる。3つの搬送治具310Aが並列駆動装置370の上に配置されたところで、再びプリフォーム10が搬送治具310Aに搭載されて、順次連続搬送領域T1の搬送路300に搬出される。これら動作を繰り返すことによって、搬送治具310Aが搬送路300を循環する。
また、図10で示されている通り、間欠搬送領域T2のスプロケット330a,340a,350aの各々は、回転同期中、等速で駆動されるタイミング(時間t3、時間t4)が設けられている。
【0059】
次に、ブロー成形部500においてプリフォーム10および容器20が搬送される工程及び容器20が成形される工程を、図7図8図9図11及び図12を参照して説明する。図11は、ブロー成形部500におけるブロー可動部材の動きを示す図である。図12は、ブロー成形部500におけるブロー可動部材の時間に対する変位を示す図である。なお、図12における「変位」とは、ベクトルではなくスカラーとしての移動量を意味する。また、図12の縦軸は、ブロー可動部材のそれぞれ(ブローキャビティ型510、底型520、および第二のブロー搬送部材530のそれぞれ)で異なるスケールとされている。
【0060】
第二の反転部400の第二の反転部材により搬送路300からプリフォーム10が正立状態で第二の搬送部材530の搬入部534に受け渡される。プリフォーム10は、ネック部12が一対の保持アーム532により掴まれることで、搬入部534に保持される。この際、搬出部536の一対の保持アーム532により容器20のネック部が掴まれることで、ブロー成形された容器20が搬出部536に保持される(図11のC1)。
【0061】
続いて、ブローキャビティ型510を開く開放動作(型開き動作)が開始されて、容器20が開放される(図11のC2、図12の時間t10)。ブローキャビティ型510は、第二の仮想軸500Aの回転周期(サイクル周期)に同期された電子カム510Eによって制御されるアクチュエーター510Aによって作動される。ブローキャビティ型510の開放動作の途中で、底型520を下降する下降動作が開始される(図12の時間t11)。底型520は、第二の仮想軸500Aの回転周期に同期された電子カム520Eによって制御されるアクチュエーター520Aによって作動される。なお、ブローキャビティ型510の分割された型の各々を、2つのアクチュエーター510A(2つの電子カム510E)で作動する構成にしても良い。
【0062】
続いて、第二の搬送部材530が後方向へ移動しても容器20がブローキャビティ型510および底型520に干渉しない位置まで、ブローキャビティ型510が左右方向に移動されて底型520が下降したところで、第二の搬送部材530の後方向への移動を開始する(図11のC3およびC4,図12の時間t12)。第二の搬送部材530は、第二の仮想軸500Aの回転周期に同期された電子カム530Eによって制御されるアクチュエーター530Aによって作動される。なお、図12に示すブローキャビティ型510および第二の搬送部材530の時間と変位と関係では、ブローキャビティ型510が開き終わってから第二の搬送部材530の移動が開始されているが(時間t12)、図11のC3に示すようにブローキャビティ型510が開き終わる前に、第二の搬送部材530の移動を開始してもよい。また、底型520が下降しきる前に、第二の搬送部材530の移動を開始してもよい。なお、第二の搬送部材530は、前後移動用とピッチ変換用の2つのアクチュエーター530A(2つの530E)で作動する構成にしても良い。
【0063】
第二の搬送部材530が後方向に移動されることにより、搬入部534のプリフォーム10がプリフォーム受取位置B1からブロー成形位置B2へ搬送され、搬出部536の容器20がブロー成形位置B2と取出位置B3へ搬送される(図7図11のC5)。プリフォーム10がプリフォーム受取位置B1からブロー成形位置B2へ搬送される途中で、ブローキャビティ型510を閉じる閉鎖動作(型閉じ動作)を開始してもプリフォーム10がブローキャビティ型510に干渉しない位置まで第二の搬送部材530が移動されたところで、ブローキャビティ型510の閉鎖動作を開始する(図11のC6、図12の時間t13)。そして、プリフォーム10のプリフォーム受取位置B1からブロー成形位置B2への搬送が完了した所で(図11のC7,図12の時間t14)、ブローキャビティ型510が閉じてプリフォーム10が固定されて(図11のC8,図12の時間t16)、容器20のブロー成形が開始される。
【0064】
プリフォーム10がブローキャビティ型510で固定されたところで、プリフォーム10は第二の搬送部材530から開放される。なお、底型520の上昇が完了した時にブローキャビティ型510が開いているように、底型520の上昇動作は開始される(図12の時間t15)。ブロー成形位置B2から取出位置B3へ搬送された容器20は、第二の搬送部材530から開放されて回収される。プリフォーム10および容器20を開放した第二の搬送部材530は、前方向へ移動し、次のサイクルのプリフォーム10および容器20を保持して搬送する。これらの動作を繰り返して、ブロー成形部500においてプリフォーム10および容器20が搬送される。
【0065】
また、ブロー成形機1は、図13および図14に示すような、ブロー成形機1の動作を設定するためのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を備えている。作業者は、GUI上に表示される各種タブ(図13の「Mold parameters」や「injectiоn」、図14の「Machine setting」や「Servo motor setting」)を選択することで各種設定画面を表示させることができ、各種設定画面において各種パラメータを設定して、ブロー成形機1の動作を設定できる。図13では、「Mold parameters」タブが選択された状態が示されており、図14では、「Servo motor setting」タブが選択された状態が示されている。またGUI上には、図13から図14のように表示を切り替える、すなわちタブ自体の表示を切り替えるためのアイコンも表示される(図示省略)。
【0066】
GUI上に表示されるパラメータの中には、その値を変更することで対応する複数の駆動部の動作を一度に変更させることができるキーパラメータが存在する。例えば、搬送路300におけるアクチュエーター320A,330A,340A,350Aの動作を設定する場合において、図13に示す「Cycle time(前述の射出成形時間に相当)」という一つのパラメータを変えると、自動的に第一の駆動部群の各々の同期された動作時間(第一の駆動部群の電子カム曲線の横軸長(時間長))が一度に変更される。また、例えば、ブロー成形部500におけるアクチュエーター510A,520A,530Aの動作を設定する場合において、図14に示す「Virtual axis(第二の仮想軸500Aに相当)」の「Movement time」を変更すると、自動的に第二の駆動部群の各々の同期された動作時間(第二の駆動部群の電子カム曲線の横軸長(時間長))が一度に変更される。
【0067】
ところで、ホットパリソン式(1ステップ式)ブロー成形機の一種である1.5ステップ式のブロー成形機では、省スペースでの汎用性と生産性の向上を追求した結果、可動部(搬送部の移行台やブロー成形部の金型・搬送チャック等)と、それら専用の駆動部(モータ等)が数多く設けられている。汎用性の拡充(生産可能な容器サイズの拡張)、生産性の向上(サイクル短縮)等の改良に際し、従前のように機械的な制御方法(メカニカルカムやタイミングベルトを用いる方法)を採用すると、装置の調整や機械部品の交換に関わる作業が多くなり、作業者の負担が増大する。また、上記の改良を実現するには、例えば、搬送部では取り数に応じ異なる移行台に対し適切な位置・速度制御を行い、ブロー成形部では最終成形品のサイズに応じ型開閉ストローク・速度を適宜調節する必要性が生ずる。このような緻密かつ安定的な動作制御を機械的な制御方法で実施することは困難であった。
【0068】
上記の実施形態に係るブロー成形機1では、搬送路300の第一の搬送部材310を駆動させるスプロケット320a,330a,340a,350a(複数の搬送駆動部)の各々が、アクチュエーター320A,330A,340A,350A(第一の駆動部群)によって同期して制御され(図6)、ブロー成形部500のブローキャビティ型510、底型520、および第二の搬送部材530(ブロー可動部材)の各々の動作が、アクチュエーター510A,520A,530A(第二の駆動部群)によって同期して制御される(図9)。搬送駆動部およびブロー可動部材の動作をそれぞれ第一の駆動部群および第二の駆動部群によって同期して制御することにより、可動部材の動作を安定的かつ最短となるように容易に最適化することができる。また、容器の取り数の変更に伴ってサイクル時間を変更する際にも、各駆動部の機械的な調整作業が不要となり、作業時間を短縮することができる。これにより、短時間の成形サイクルを実現でき、多様なサイズの容器製造に容易に対応することができる。また、安定的な動作を実現できることにより、機械的負荷も軽減できる。
【0069】
また、上記の実施形態に係るブロー成形機1では、第二の搬送駆動部330は、第一の搬送駆動部320の駆動速度と等速で駆動された状態で第一の搬送部材310を初期駆動し(図10の時間t0)、その後加速されて第一の搬送部材310を加速駆動する。当該構成とすることで、第一の搬送駆動部320から第二の搬送駆動部330にかけて第一の搬送部材310をスムーズに駆動させることができ、第一の搬送部材310の動作による振動や第一の搬送部材310同士の衝突を抑制することができる。これにより、安定的な動作を実現でき、機械的負荷も軽減できる。
【0070】
また、上記の実施形態に係るブロー成形機1では、第三の搬送駆動部340は、第二の搬送駆動部330が一定の駆動速度から加速された後に駆動され(図10の時間t1)、第三の搬送駆動部340の駆動速度が第二の搬送駆動部330の駆動速度まで加速された時点から第二の搬送駆動部330の駆動速度と等速で駆動され(図10の時間t3)、第二の搬送駆動部330の駆動速度が0になった時点で停止するように駆動される(図10の時間t5)。当該構成とすることで、第二の搬送駆動部330から第三の搬送駆動部340にかけて第一の搬送部材310をスムーズに駆動させることができ、第一の搬送部材310の動作による振動や第一の搬送部材310同士の衝突を抑制することができる。これにより、安定的な動作を実現できることにより、機械的負荷も軽減できる。
【0071】
また、上記の実施形態に係るブロー成形機1では、ブロー成形部500において、第二の搬送部材530によりプリフォーム10をブローキャビティ型510に搬送する第一の搬送動作の途中で、ブローキャビティ型510を閉じる第一の開閉動作が実施される(図11図12の時間t13)。当該構成とすることで、ブロー成形のサイクル時間を短縮することができる。さらに、ブロー成形部500に一定数のプリフォーム10が搬送される一定のサイクル時間において、ブローキャビティ型510単体の移動速度を、ブローキャビティ型510および第二の搬送部材530をそれぞれ独立して動かす場合に比べて、遅くすることができる。短いサイクル時間の間でも、ブロー可動部材の一つであるブローキャビティ型510の動作を遅くすることができるため、成形サイクルを短縮しつつ、安定的な動作を実現でき、機械的負荷も軽減できる。
【0072】
また、上記の実施形態に係るブロー成形機1を動作させる制御において、搬送路300の第一の搬送部材310(搬送可動部材)を駆動するスプロケット330a,340a(複数の搬送駆動部)の各々を同期させて制御し、ブロー成形部500のブローキャビティ型510、底型520および第二の搬送部材530(複数のブロー可動部材)をそれぞれ駆動するアクチュエーター510A,520A,530A(複数のブロー駆動部)の各々を同期させて制御している(図6図9)。搬送駆動部およびブロー駆動部の動作を同期して制御することにより、搬送可動部材およびブロー可動部材の動作を安定的かつ最短となるように容易に最適化することができる。また、容器の取り数の変更に伴ってサイクル時間を変更する際にも、各駆動部の機械的な調整作業が不要となり、作業時間を短縮することができる。これにより、短時間の成形サイクルを実現でき、多様なサイズの容器製造に容易に対応することができる。また、安定的な動作を実現できることにより、機械的負荷も軽減できる。
【0073】
また、上記の実施形態に係るブロー成形機1を動作させる制御において、スプロケット330a(第二の搬送駆動部330)とスプロケット340a(第三の搬送駆動部340)とを少なくとも同期させて駆動させている(図10)。そして、第二の反転部400(転送部の一例)で停止している下流側の第一の搬送部材310に対して上流側の第一の搬送部材310を移動させて、上流側の前記第一の搬送部材310と下流側の前記第一の搬送部材310との間の距離を小さくしている(図10の時間t0)。さらに、上流側の前記第一の搬送部材と下流側の前記第一の搬送部材とが接触する前に下流側の前記第一の搬送部材を移動させて(図10の時間t1)、上流側の前記第一の搬送部材と下流側の前記第一の搬送部材との間の距離を保っている。このような制御を採用することで、第一の搬送部材310の衝突を抑制することができる。これにより、安定的な動作を実現でき、機械的負荷を軽減できる。特に、スプロケット330aとスプロケット340aと間の搬送距離は、スプロケット340aとスプロケット350aとの間の搬送距離より小さい。成形サイクルを高めるため搬送治具310Aの搬送速度を上げると、回転同期させていない従前の方法では2つの搬送治具310Aの衝突が生じやすい。この衝突により僅かながら搬送治具310Aの位置ずれが発生し、搬送治具310Aのプリフォーム10を第二の反転部400(第二の反転部材)に上手く転送できない場合があった。上述の制御により、搬送治具310Aと第二の反転部400との間のプリフォーム10の転送が確実に実施できる。
【0074】
また、上記の実施形態に係るブロー成形機1を動作させる制御において、アクチュエーター510A,520A,530A(それぞれ第一のブロー駆動部、前記第二のブロー駆動部および前記第三のブロー駆動部)を少なくとも同期させて駆動させている(図9図12)。そして第二の搬送部材530によりプリフォーム10をブローキャビティ型510に搬送する搬送動作の途中で、ブローキャビティ型510を閉じる開閉動作が実施されている(図11図12の時間t13)。このような制御を採用することで、ブロー成形のサイクル時間を短縮することができる。さらに、ブロー成形部500に一定数のプリフォーム10が搬送される一定のサイクル時間において、ブローキャビティ型510単体の移動速度を、ブローキャビティ型510および第二の搬送部材530をそれぞれ独立して動かす場合に比べて、遅くすることができる。短いサイクル時間の間でも、ブロー可動部材の一つであるブローキャビティ型510の動作を遅くすることができるため、成形サイクルを短縮しつつ、安定的な動作を実現でき、機械的負荷も軽減できる。
【0075】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0076】
例えば、上記の実施形態において3列で各列8個、合計24個のプリフォーム10を成形する射出成形部100および8個の第一の搬送部材310が連結された搬送治具310Aを説明したが、本発明は一度に射出成形されるプリフォームの数および連結される第一の搬送部材310の数は限定されない。射出成形部100の金型を変えて、3列で各列4個、合計12個の取り数の態様、3列で各列6個、合計18個の取り数の態様、3列で各列12個、合計36個の取り数の態様等としてもよい。搬送治具においては、各列のプリフォームの数に応じて連結する第一の搬送部材の数を変更することができるし、一部の第一の搬送部材にはプリフォームを搭載せずに駆動させる態様も取り得る。ただし、電子カムが設定された上記の実施形態のブロー成形機1によれば、このようにプリフォームの個数が変更されても、容易に搬送路300の搬送駆動部の動作を最適化できるので、作業時間を好適に短縮することができる。
【0077】
本願は、2018年9月28日付で出願された日本国特許出願(特願2018-185053)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0078】
1:ブロー成形機、10;プリフォーム、20:容器、300:搬送路、310:第一の搬送部材、320:第一の搬送駆動部、330:第二の搬送駆動部、340:第三の搬送駆動部、350:第四の搬送駆動部、360:加熱部、500:ブロー成形部、510:ブローキャビティ型、520:底型、530:第二の搬送部材
図1
図2
図3
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