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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】バッチ式熱処理炉及び熱処理炉システム
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/40 20060101AFI20231026BHJP
   F27B 9/16 20060101ALI20231026BHJP
   F27D 5/00 20060101ALI20231026BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F27B9/40
F27B9/16
F27D5/00
F27D3/12 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021050543
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148742
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591076109
【氏名又は名称】エヌジーケイ・キルンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 浩平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 航也
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-054587(JP,A)
【文献】特開昭63-183373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00- 9/40
F27B 1/00- 3/28
F27B 17/00-19/04
F27D 3/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井壁と側壁と昇降床とを備える炉体と、
前記昇降床に対して回転可能に配置され、被処理物が載置可能な処理テーブルと、
前記昇降床に設けられており、前記処理テーブルが着脱可能に接続され、前記処理テーブルを回転駆動する駆動装置と、
前記昇降床に対する前記処理テーブルの回転方向の位置を検出する位置センサと、
前記位置センサの検出結果に基づいて前記駆動装置を制御する制御装置と、
を備えており、
前記処理テーブルは、
平面視すると円形状を有しており、その中心を通って上下方向に伸びる第1の軸線の回りに回転可能に構成されている第1の回転テーブルと、
平面視したときに前記第1の回転テーブルの内側に配置され、その中心を通って上下方向に伸びる第2の軸線の回りに回転可能に構成されている少なくとも1つの第2の回転テーブルと、を備えており、
平面視したときに、前記第2の回転テーブルの中心の位置は、前記第1の回転テーブルの中心の位置とは異なる位置にあり、
前記昇降床は、前記側壁の下端を開放する第1位置と、前記側壁の下端を閉じる第2位置と、の間を移動可能となっており、
前記昇降床が前記第1位置に位置すると、前記処理テーブルは前記駆動装置に着脱可能となり、
前記処理テーブルが前記駆動装置に接続された状態で前記昇降床が前記第2位置に位置すると、前記炉体内に前記第1の回転テーブルの上面及び前記第2の回転テーブルの上面が露出しており、
前記駆動装置は、
前記第1の軸線上に配置され、前記第1の回転テーブルを回転駆動する第1駆動部と、
前記第2の軸線上に配置され、前記第2の回転テーブルを回転駆動する第2駆動部と、
を備えており、
前記位置センサは、前記昇降床に対して前記第1の回転テーブルが予め設定された設定角度範囲にあるときに検出信号を出力し、
前記制御装置は、
前記第1の回転テーブルが第1の回転方向に第1の速度で回転している状態から前記第1の回転テーブルの回転を停止するときは、
(1)前記位置センサから前記検出信号が出力されると、その検出信号が出力される状態で前記第1の回転テーブルが第1の回転方向にさらに回転して出力される検出信号が停止すると、前記第1の回転テーブルを停止し、
(2)前記(1)の後、前記第1の回転テーブルを前記第1の回転方向とは逆方向となる第2の回転方向に、前記第1の速度より低速となる第2の速度で回転させ、
(3)前記(2)の状態で前記位置センサから前記検出信号が出力されると、前記第1の回転テーブルを停止させるように構成されている、バッチ式熱処理炉。
【請求項2】
天井壁と側壁と昇降床とを備える炉体と、
前記昇降床に対して回転可能に配置され、被処理物が載置可能な処理テーブルと、
前記昇降床に設けられており、前記処理テーブルが着脱可能に接続され、前記処理テーブルを回転駆動する駆動装置と、
前記昇降床に対する前記処理テーブルの回転方向の位置を検出する位置センサと、
前記位置センサの検出結果に基づいて前記駆動装置を制御する制御装置と、
を備えており、
前記処理テーブルは、
平面視すると円形状を有しており、その中心を通って上下方向に伸びる第1の軸線の回りに回転可能に構成されている第1の回転テーブルと、
平面視したときに前記第1の回転テーブルの内側に配置され、その中心を通って上下方向に伸びる第2の軸線の回りに回転可能に構成されている少なくとも1つの第2の回転テーブルと、を備えており、
平面視したときに、前記第2の回転テーブルの中心の位置は、前記第1の回転テーブルの中心の位置とは異なる位置にあり、
前記昇降床は、前記側壁の下端を開放する第1位置と、前記側壁の下端を閉じる第2位置と、の間を移動可能となっており、
前記昇降床が前記第1位置に位置すると、前記処理テーブルは前記駆動装置に着脱可能となり、
前記処理テーブルが前記駆動装置に接続された状態で前記昇降床が前記第2位置に位置すると、前記炉体内に前記第1の回転テーブルの上面及び前記第2の回転テーブルの上面が露出しており、
前記駆動装置は、
前記第1の軸線上に配置され、前記第1の回転テーブルを回転駆動する第1駆動部と、
前記第2の軸線上に配置され、前記第2の回転テーブルを回転駆動する第2駆動部と、
を備えており、
前記位置センサは、前記昇降床に対して前記第1の回転テーブルが予め設定された設定角度範囲にあるときに検出信号を出力し、
前記制御装置は、
前記第1の回転テーブルが第1の回転方向に第1の速度で回転している状態から前記第1の回転テーブルの回転を停止するときは、
(1)前記位置センサから前記検出信号が出力されると、前記第1の回転テーブルを前記設定角度範囲で停止させ、
(2)前記(1)の後、前記第1の回転テーブルを前記第1の回転方向とは逆方向となる第2の方向に回転させ、
(3)前記(2)の状態で前記位置センサから出力される検出信号が停止すると、前記第1の回転テーブルを停止させ、
(4)前記(3)の後、前記第1の回転テーブルを前記第1の回転方向に前記第1の速度より低速となる第2の速度で回転させ、
(5)前記(4)の状態で前記位置センサから前記検出信号が出力されると、前記第1の回転テーブルを停止させるように構成されている、バッチ式熱処理炉。
【請求項3】
前記処理テーブルは、前記第2の回転テーブルを複数備えており、
平面視したときに、前記複数の第2の回転テーブルは、互いに干渉することなく、前記第1の回転テーブルの異なる位置に配置されている、請求項1又は2に記載のバッチ式熱処理炉。
【請求項4】
複数のバッチ式熱処理炉本体と、
前記複数のバッチ式熱処理炉本体のそれぞれに着脱可能な少なくとも1つの請求項1又は2に記載の処理テーブルと、を備えており、
前記複数のバッチ式熱処理炉本体のそれぞれは、請求項1又は2に記載の炉体と駆動装置と位置センサと制御装置を備えている、熱処理炉システム。
【請求項5】
前記複数のバッチ式熱処理炉本体のそれぞれに前記処理テーブルを搬送する搬送台車をさらに備える、請求項4に記載の熱処理炉システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、被処理物(例えば、セラミックコンデンサ、セラミック圧電素子、セラミック抵抗などの積層セラミック部品等)に熱処理するためのバッチ式熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
炉内に配置された複数の被処理物を同時に熱処理する場合、複数の被処理物の熱処理後の特性を安定化するためには、複数の被処理物のそれぞれに同一の熱履歴を付与する必要がある。このために、特許文献1のバッチ式熱処理炉では、被処理物を載置する炉床が、主炉床と副炉床により構成されている。主炉床は、平面視すると円形状を有しており、その中心を通る軸線の回りに回転可能となっている。副炉床は、主炉床に形成された開口に配置されている。副炉床は、平面視すると円形状を有しており、その中心を通る軸線の回りに回転可能となっている。被処理物は、副炉床の上面に載置される。被処理物を熱処理する際は、副炉床自体が回転(いわゆる自転)すると共に、主炉床が回転することで副炉床も主炉床の中心を通る軸線の回りに回転(いわゆる公転)する。これによって、副炉床の上面に載置された複数の被処理物が均一に加熱され、被処理物のそれぞれに同一の熱履歴が付与されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-77001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッチ式熱処理炉により被処理物を熱処理するためには、熱処理炉内に被処理物を設置し、炉内に設置した被処理物に熱処理を行い、熱処理後の被処理物を熱処理炉の外部に取出す必要がある。被処理物の炉内への設置や炉外への取出しを効率化するために、処理テーブルを炉体の床面に対して着脱可能とし、着脱可能とした処理テーブル上に被処理物を載置することが検討されている。しかしながら、処理テーブルを炉体の床面に対して着脱可能な構成を採用する場合、処理テーブルを回転駆動するための駆動装置を炉体の床面に設けることになる。このため、処理テーブルを炉体の床面に取り付けるためには、処理テーブルを駆動装置の駆動部に対して回転方向に位置合せをして接続しなければならず、処理テーブルを炉体の床面に取り付けるための作業が煩雑になるという問題が生じる。
【0005】
本明細書は、処理テーブルを炉体の床面に対して着脱可能としたバッチ式熱処理炉において、処理テーブルの取付け作業を容易に行うことができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する第1のバッチ式熱処理炉は、天井壁と側壁と昇降床とを備える炉体と、昇降床に対して回転可能に配置され、被処理物が載置可能な処理テーブルと、昇降床に設けられており、処理テーブルが着脱可能に接続され、処理テーブルを回転駆動する駆動装置と、昇降床に対する処理テーブルの回転方向の位置を検出する位置センサと、位置センサの検出結果に基づいて駆動装置を制御する制御装置と、を備えている。処理テーブルは、平面視すると円形状を有しており、その中心を通って上下方向に伸びる第1の軸線の回りに回転可能に構成されている第1の回転テーブルと、平面視したときに第1の回転テーブルの内側に配置され、その中心を通って上下方向に伸びる第2の軸線の回りに回転可能に構成されている少なくとも1つの第2の回転テーブルと、を備えている。平面視したときに、第2の回転テーブルの中心の位置は、第1の回転テーブルの中心の位置とは異なる位置にある。昇降床は、側壁の下端を開放する第1位置と、側壁の下端を閉じる第2位置と、の間を移動可能となっている。昇降床が第1位置に位置すると、処理テーブルは駆動装置に着脱可能となる。処理テーブルが駆動装置に接続された状態で昇降床が第2位置に位置すると、炉体内に第1の回転テーブルの上面及び第2の回転テーブルの上面が露出している。駆動装置は、第1の軸線上に配置され、第1の回転テーブルを回転駆動する第1駆動部と、第2の軸線上に配置され、第2の回転テーブルを回転駆動する第2駆動部と、を備えている。位置センサは、昇降床に対して第1の回転テーブルが予め設定された設定角度範囲にあるときに検出信号を出力する。
制御装置は、第1の回転テーブルが第1の回転方向に第1の速度で回転している状態から第1の回転テーブルの回転を停止するときは、(1)前記位置センサから前記検出信号が出力されると、その検出信号が出力される状態で前記第1の回転テーブルが第1の回転方向にさらに回転して出力される検出信号が停止すると、前記第1の回転テーブルを停止し、(2)前記(1)の後、前記第1の回転テーブルを前記第1の回転方向とは逆方向となる第2の回転方向に、前記第1の速度より低速となる第2の速度で回転させ、(3)前記(2)の状態で前記位置センサから前記検出信号が出力されると、前記第1の回転テーブルを停止させるように構成されている。
【0007】
上記の第1のバッチ式熱処理炉では、例えば、被処理物を熱処理するときは、被処理物に実施したい熱処理に応じた第1の速度で第1の回転テーブルを回転させることができる。一方、被処理物の熱処理が終了して第1の回転テーブルを停止する際は、上記(1)~(3)の手順に従い、第2の速度で第2の方向に回転する状態から第1の回転テーブルを停止させる。第2の速度は、第1の速度より小さくされ、かつ、被処理物に実施する熱処理とは関係のない一定の速度とすることができる。このため、第1の回転テーブルは、その回転方向の位置が所定の位置(角度)のときに停止し、また、第1の回転テーブルと接続される駆動装置の駆動部(第1駆動部と第2駆動部)も所定の角度に対応した角度で停止する。したがって、第1の回転テーブルを取付ける際は、処理テーブルを所定の角度に予め調整しておくことで、処理テーブルを駆動装置の駆動部に接続することができる。これにより、処理テーブルの駆動装置への取付け作業を容易に行うことができる。
【0008】
本明細書に開示する第2のバッチ式熱処理炉は、天井壁と側壁と昇降床とを備える炉体と、昇降床に対して回転可能に配置され、被処理物が載置可能な処理テーブルと、昇降床に設けられており、処理テーブルが着脱可能に接続され、処理テーブルを回転駆動する駆動装置と、昇降床に対する処理テーブルの回転方向の位置を検出する位置センサと、位置センサの検出結果に基づいて駆動装置を制御する制御装置と、を備えている。処理テーブルは、平面視すると円形状を有しており、その中心を通って上下方向に伸びる第1の軸線の回りに回転可能に構成されている第1の回転テーブルと、平面視したときに第1の回転テーブルの内側に配置され、その中心を通って上下方向に伸びる第2の軸線の回りに回転可能に構成されている少なくとも1つの第2の回転テーブルと、を備えている。平面視したときに、第2の回転テーブルの中心の位置は、第1の回転テーブルの中心の位置とは異なる位置にある。昇降床は、側壁の下端を開放する第1位置と、側壁の下端を閉じる第2位置と、の間を移動可能となっている。昇降床が第1位置に位置すると、処理テーブルは駆動装置に着脱可能となる。処理テーブルが駆動装置に接続された状態で昇降床が第2位置に位置すると、炉体内に第1の回転テーブルの上面及び第2の回転テーブルの上面が露出している。駆動装置は、第1の軸線上に配置され、第1の回転テーブルを回転駆動する第1駆動部と、第2の軸線上に配置され、第2の回転テーブルを回転駆動する第2駆動部と、を備えている。位置センサは、昇降床に対して第1の回転テーブルが予め設定された設定角度範囲にあるときに検出信号を出力する。
制御装置は、第1の回転テーブルが第1の回転方向に第1の速度で回転している状態から第1の回転テーブルの回転を停止するときは、(1)位置センサから検出信号が出力されると、第1の回転テーブルを設定角度範囲で停止させ、(2)前記(1)の後、第1の回転テーブルを第1の回転方向とは逆方向となる第2の方向に回転させ、(3)前記(2)の状態で位置センサから出力される検出信号が停止すると、第1の回転テーブルを停止させ、(4)前記(3)の後、第1の回転テーブルを第1の回転方向に第1の速度より低速となる第2の速度で回転させ、(5)前記(4)の状態で位置センサから検出信号が出力されると、第1の回転テーブルを停止させるように構成されている。
【0009】
上記の第2のバッチ式熱処理炉においても、被処理物を熱処理するときは、被処理物に実施したい熱処理に応じた第1の速度で第1の回転テーブルを回転させることができる。一方、被処理物の熱処理が終了して第1の回転テーブルを停止する際は、上記(1)~(5)の手順に従って、第2の速度で第1の方向に回転する状態から第1の回転テーブルを停止させる。第2の速度は、第1の速度より小さくされ、かつ、被処理物に実施する熱処理とは関係のない一定の速度とすることができる。このため、第2のバッチ式熱処理炉においても、第1の回転テーブルを取付ける際は、駆動装置の駆動部が所定の角度に対応した角度となっている。したがって、処理テーブルの駆動装置への取付け作業を容易に行うことができる。
【0010】
なお、上記の第1のバッチ式熱処理炉又は第2のバッチ式熱処理炉においては、処理テーブルは、第2の回転テーブルを複数備えていてもよい。複数の第2の回転テーブルは、平面視したときに、互いに干渉することなく、第1の回転テーブルの異なる位置に配置されていてもよい。
【0011】
また、本明細書に開示する熱処理炉システムは、複数のバッチ式熱処理炉本体と、複数のバッチ式熱処理炉本体のそれぞれに着脱可能な少なくとも1つの処理テーブルと、を備えている。処理テーブルは、第1のバッチ式熱処理炉又は第2のバッチ式熱処理炉に装備される処理テーブルとしてもよい。また、複数のバッチ式熱処理炉本体のそれぞれは、第1のバッチ式熱処理炉又は第2のバッチ式熱処理炉に装備される、炉体と駆動装置と位置センサと制御装置を備えていてもよい。上記の熱処理炉システムでは、複数のバッチ式熱処理炉本体に対して、処理テーブルを共用することができる。
【0012】
また、熱処理炉システムでは、複数のバッチ式熱処理炉本体のそれぞれに処理テーブルを搬送する搬送台車をさらに備えてもよい。処理テーブルを共用することができるため、処理テーブルを搬送する搬送台車も共用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1に係る熱処理炉システムの概略構成を示す概略図。
図2】実施例1に係るバッチ式の熱処理炉本体と、その熱処理炉本体に着脱可能に設置される処理テーブルと、処理テーブルを搬送する搬送台車とを示す概要図。
図3】熱処理炉本体に処理テーブルが設置された状態を示す断面図(昇降床が下降した状態)。
図4】熱処理炉本体に処理テーブルが設置された状態を示す断面図(昇降床が上昇した状態)。
図5】処理テーブルが設置された熱処理炉本体の横断面図(図4のV-V断面図)。
図6】昇降床に処理テーブルが設置された状態を示す側面図(ただし、駆動装置(20,22)の図示を省略)。
図7】昇降床に処理テーブルが設置された状態を示す平面図(図6において上方から処理テーブル及び昇降床を見た図)。
図8】処理テーブルと駆動機構とを連結する連結部の概略構成を示す概略図(処理テーブルと駆動機構が連結されていない状態を示す図)。
図9】処理テーブルと駆動機構とを連結する連結部の概略構成を示す概略図(処理テーブルと駆動機構が連結されている状態を示す図)。
図10】実施例1に係る熱処理炉本体の制御系の構成を示すブロック図。
図11】実施例1に係る熱処理炉本体において、処理テーブルの回転を停止させるときに制御部で実施される停止処理の手順を示すフローチャート。
図12】実施例1に係る熱処理炉本体において、生産管理装置から停止信号を受信したときの駆動装置の駆動状態と、位置センサから出力される信号との関係を説明するためのタイミングチャート。
図13】実施例2に係る熱処理炉本体において、処理テーブルの回転を停止させるときに制御部で実施される停止処理の手順を示すフローチャート。
図14】実施例2に係る熱処理炉本体において、生産管理装置から停止信号を受信したときの駆動装置の駆動状態と、位置センサから出力される信号との関係を説明するためのタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例1) 以下、本実施例に係る熱処理炉システム100について説明する。まず、熱処理炉システム100の概略構成について説明する。図1に示すように、熱処理炉システム100が設置されるエリアには、積載エリアAと、積み下ろしエリアBと、熱処理エリアCが設けられる。熱処理炉システム100は、複数の処理テーブル30と、熱処理エリアCに設置される複数の熱処理炉本体10と、各エリアA,B,Cの間で処理テーブル30を搬送する搬送台車70と、を備えている。
【0015】
処理テーブル30は、被処理物Wが載置される上面を備えている。処理テーブル30の上面には、積載エリアAにおいて、熱処理前の被処理物Wが載置される。被処理物Wが載置された処理テーブル30は、搬送台車70によって熱処理エリアCに搬送される。熱処理エリアCには、積載エリアAと積み下ろしエリアBとを結ぶ搬送経路が設けられており、その搬送経路に沿って複数の熱処理炉本体10が設置されている。熱処理炉本体10は、バッチ式の熱処理炉であり、被処理物Wに熱処理をするために用いられる。本実施例では、複数の熱処理炉本体10のそれぞれに処理テーブル30が取付け可能となっている。このため、処理テーブル30が取付けられる熱処理炉本体10には、熱処理炉システム100の稼働状況に応じて適切な熱処理炉本体10が選択される。熱処理エリアCに搬送された処理テーブル30は、選択された熱処理炉本体10まで搬送され、選択された熱処理炉本体10に取付けられる。処理テーブル30が取付けられると、熱処理炉本体10は、その処理テーブル30に載置された被処理物Wに対して熱処理を行う。被処理物Wに対する熱処理が終了すると、次に、熱処理炉本体10から処理テーブル30が取り出される。取り出された処理テーブル30は、搬送台車70によって積み下ろしエリアBに搬送され、処理テーブル30ごと積み下ろしエリアBに下ろされる。
【0016】
上記のことから明らかなように、本実施例の熱処理炉システム100では、複数の熱処理炉本体10と、これら複数の熱処理炉本体10のそれぞれに着脱可能に取付けられる複数の処理テーブル30を備えている。このため、熱処理炉本体10が稼働中(例えば、被処理物Wを熱処理中)に、他の処理テーブル30に、次に熱処理を行う被処理物Wを載置して準備することができる。また、被処理物Wの熱処理後は、熱処理炉本体10から熱処理後の被処理物Wが載置された処理テーブル30を取外すことができる。このため、処理テーブル30が取り外された後の熱処理炉本体10に、新しい処理テーブル30(すなわち、熱処理前の被処理物Wが載置された処理テーブル30)を取付け、次の被処理物Wに熱処理を行うことができる。したがって、本実施例の熱処理炉システムによると、複数の熱処理炉本体10を効率的に稼働することができ、被処理物Wの熱処理を効率的に行うことができる。なお、熱処理炉本体10から取り外された処理テーブル30は積み下ろしエリアBにおいて放置され、熱処理後の被処理物Wを冷却することができる。
【0017】
一方、処理テーブル30を複数の熱処理炉本体10で共用すると、処理テーブル30を熱処理炉本体10に取付ける作業が必要となる。本実施例の処理テーブル30は、後述するように主炉床34と副炉床36を備え、処理テーブル30を熱処理炉本体10に取付けるためには、処理テーブル30を熱処理炉本体10に対して回転方向に正確に位置決めする必要がある。このため、本実施例の熱処理炉本体10では、処理テーブル30の回転を停止させるときは、処理テーブル30が予め設定された位置(回転方向の位置)となるように停止させる。これにより、処理テーブル30を熱処理炉本体10に取付ける作業を容易にしている。以下、処理テーブル30と搬送台車70と熱処理炉本体10について詳細に説明する。
【0018】
まず、処理テーブル30について説明する。図6~9に示すように、処理テーブル30は、主炉床34と、主炉床34に設置された4つの副炉床36と、を備えている。主炉床34は、上端に位置する小径部33と、小径部33の下方に位置する大径部32と、を有している。小径部33と大径部32は、円板状の外形状を有しており、その中心軸が同一直線上に位置するように一体化されている。大径部32の下面の中心には、後述する熱処理炉本体10の駆動機構20と係合可能とされる凹所34aが形成されている。また、大径部32の下面にはドグ38が取付けられている(図6,7参照)。ドグ38は、その上端が大径部32の外周縁近傍に固定され、その下端は大径部32の下面から下方に伸びている。ドグ38が固定される大径部32の周方向の位置は、処理テーブル30の回転停止位置を制御するための基準位置となる。熱処理炉炉体10に処理テーブル30が取付けられると、主炉床34(小径部33と大径部32)は、その中心軸(すなわち、小径部33と大径部32の中心を通って上下方向に伸びる線)が熱処理炉炉体10の軸線に一致するようになっている。
【0019】
副炉床36は、円板状の形状を有しており、主炉床34に対して回転可能に設置されている。具体的には、主炉床34には、その上端面(小径部33)から下端面(大径部32)までを貫通する貫通孔が形成されており、その貫通孔内に副炉床36が回転可能に配置されている。すなわち、副炉床36のそれぞれは、その軸線(すなわち、副炉床36の中心を通って上下方向に伸びる線)周りに回転可能となっている。本実施例では、4つの副炉床36が周方向に等間隔を空けて設置されている(すなわち、4つの副炉床36は、周方向に90°間隔で設置されている。)。4つの副炉床36のそれぞれは、その下端に後述する駆動機構20と係合可能な係合面36aを有している(図8,9参照)。4つの副炉床36の軸線のそれぞれは、主炉床34の軸線と平行であり、主炉床34の軸線から等距離に配置されている。主炉床34の上面と副炉床36の上面は面一となっており、副炉床36の上面には被処理物Wが載置可能となっている。
【0020】
主炉床34と副炉床36のそれぞれは、回転方向及び回転速度の変更停止が可能となっている。副炉床36の上面に被処理物Wが載置されるため、主炉床34が回転することで被処理物Wはいわゆる公転し、副炉床36が回転することで被処理物Wはいわゆる自転をすることになる。各炉床34,36の回転方向は任意に設定することができる。例えば、図5に示すように、主炉床34及び副炉床36がともに反時計回りに回転してもよいし、主炉床34及び副炉床36がともに時計回りに回転してもよい。あるいは、主炉床34が時計回りに回転する一方で副炉床36が反時計回りに回転してもよいし、主炉床34が反時計回りに回転する一方で副炉床36が時計回りに回転してもよい。主炉床34及び副炉床36の回転速度及び回転方向を適宜制御することで、副炉床36上に載置された被処理物Wを均一に加熱することができる。
【0021】
上述の説明から明らかなように、主炉床34が回転すると、それに応じて副炉床36も主炉床34の軸線周りに回転(公転)する。このため、主炉床34が回転を停止する位置が変化すると、副炉床36が停止する位置も変化する。上述したように、主炉床34の下面には凹所34aが形成され、副炉床36の下面には係合面36aが形成され、これら凹所34aと係合面36aのそれぞれが熱処理炉本体10の駆動機構20に接続される。したがって、主炉床34が回転を停止する位置を同一の位置とすると、副炉床36が停止する位置も常に一定の位置となり、処理テーブル30を熱処理炉本体10の駆動機構20に接続するときの位置合せを容易にすることができる。
【0022】
なお、上述した処理テーブル30は、作業者が操作する搬送台車70によって搬送される。図2に示すように、搬送台車70は、処理テーブル30を保持するアーム72を備えている。アーム72は昇降可能となっており、アーム72を昇降することで、アーム72に保持した処理テーブル30が昇降する。処理テーブル30を昇降することで、処理テーブル30を熱処理炉本体10の駆動機構20(後で詳述する)に着脱することができる。
【0023】
次に、熱処理炉本体10について説明する。図2~5に示すように、熱処理炉本体10は、架台16と、架台16に支持される炉体11と、を備えている。架台16は、熱処理エリアCの所定の位置に設置されている。炉体11を架台16で支持することで、炉体11の下方に処理テーブル30の着脱作業を行う空間が形成されている。
【0024】
炉体11は、耐火物によって構成されており、円筒状の側壁14と、円板状の天井壁12を備えている。側壁14は、その下端部が架台16に固定されており、その上端部が天井壁12まで伸びている。天井壁12は、側壁14の上端部に当接し、側壁14の上端の開口部を閉じている。天井壁12の中央には、図示しない排気口が形成されている。
【0025】
炉体11は、昇降床18をさらに備えている。昇降床18は、平面視すると方形状の箱形に形成されており、その内部に処理テーブル30を回転駆動する駆動装置(20,22)が収容されている。駆動装置(20,22)は、駆動源22と駆動機構20を備えている。駆動源22は、処理テーブル30を回転駆動するための汎用のモータ(すなわち、サーボ機能のないモータ)である。駆動源22で発生した駆動力は、駆動機構20を介して処理テーブル30(詳細には、主炉床34及び副炉床36のそれぞれ)に伝達される。
【0026】
図8、9に示すように、駆動機構20は、主炉床34の凹所34aに連結される第1連結部46と、副炉床36の下面に連結される第2連結部44を備えている。第1連結部46には、図示しない伝達部材(チェーン等)を介して駆動源22の回転駆動力が伝達される。第1連結部46の下端には円板状の支持板48が固定されている。支持板48は、主炉床34の下面に当接し、主炉床34を支持する。第2連結部44の下面には第2駆動軸42が固定されている。第2駆動軸42は支持板48の図示しない貫通孔を貫通しており、その下端に図示しない伝達部材(チェーン等)を介して駆動源22の回転駆動力が伝達される。第1連結部46及び第2連結部44のそれぞれに駆動源22の回転駆動力が伝達されることで、主炉床34は回転(自転)し、それに伴って副炉床36は自転及び公転することになる。
【0027】
第1連結部46に処理テーブル30(主炉床34)の凹所34aが連結され、第2連結部44に処理テーブル30(副炉床36)の係合面36aが連結されることで、駆動機構20に処理テーブル30が取付けられる。これによって、処理テーブル30が駆動機構20の支持板48の上面に載置され、処理テーブル30が駆動機構20に支持される。駆動機構20に処理テーブル30が取付けられると、図2~4に示すように、昇降床18の上方に処理テーブル30が支持される。ここで、昇降床18は、架台16に設けられた昇降装置24によって、炉体11の下端近傍の位置(請求項でいう第2位置の一例)と、床面近傍の位置(請求項でいう第1位置の一例)との間を昇降可能となっている。昇降床18が床面近傍の位置に位置決めされると、側壁14の下端が開放されると共に、駆動機構20に処理テーブル30が着脱可能となる(図3に示す状態)。
【0028】
また、駆動機構20に処理テーブル30が取付けられた状態で昇降床18が炉体11の下端近傍の位置に位置決めされると、処理テーブル30が側壁14の下端開口部を閉じる(図4に示す状態)。処理テーブル30が側壁14の下端開口部を閉じると、処理テーブル30と炉体12によって、被処理物Wを熱処理する炉内空間26が形成される。図4、5に示すように、炉内空間26には主炉床34の上面及び副炉床36の上面が露出しており、副炉床36の上面に載置された被処理物Wが炉内空間26に収容される。なお、炉内空間26には、図示しないヒータ50(図10に図示)とガス供給装置52(図10に図示)が配設されている。ヒータ50により被処理物Wが加熱され、ガス供給装置52によって炉内空間26の雰囲気が制御される。
【0029】
なお、図6、7に示すように、昇降床18には、処理テーブル30に取付けられたドグ38を検出するための位置センサ40が設けられている。位置センサ40から出力される検出信号は、ドグ38と対向するときにONとなり、ドグ38と対向しないときはOFFとなる。図7に示すように、ドグ38は一定の幅を有する板材であるため、主炉床34が予め設定された設定角度範囲にあるときに、位置センサ40から出力される検出信号はONとなる。
【0030】
図10に示すように、熱処理炉本体10は制御部54をさらに備えている。制御部54は、例えば、CPU,ROM,RAMを備えたコンピュータによって構成されている。制御部54は、生産管理装置60と位置センサ40に接続されており、生産管理装置60からの指示や、位置センサ40からの検出信号が入力される。制御部54は、入力される指示や検出信号に基づいて、熱処理炉本体10の各部の動作を制御する。すなわち、制御部54は、昇降装置24を制御することで昇降床18を昇降させ、駆動装置(20,22)を制御することで処理テーブル30の回転を制御し、ヒータ50とガス供給装置52を制御することで炉内温度及び炉内雰囲気を制御する。なお、本実施例では、処理テーブル30の回転を停止させる時の制御部54の動作(停止処理)に特徴を有しており、その他については従来技術と同様である。このため、処理テーブル30の回転を停止させる時の停止処理についてのみ詳細に説明する。
【0031】
図11は、処理テーブル30の回転を停止させるときに制御部54で実施される停止処理の一例を示している。図11に示すように、制御部54は、まず、生産管理装置60からの停止信号を受信したか否かを監視する(S10)。すなわち、本実施例の生産管理装置60は、各熱処理炉本体10で被処理物Wに対して実施される熱処理を制御しており、各熱処理炉本体10で所望の熱処理が完了すると、その熱処理炉本体10に熱処理を停止するための停止信号を出力する。制御部54は、まず、S10において生産管理装置60からの停止信号を受信したか否かを監視する。停止信号を受信していないときは(S10でNO)、制御部54は、駆動装置(20,22)の駆動を継続し、処理テーブル30を速度V1で正転方向に回転させる。なお、速度V1は、被処理物Wを熱処理する時における処理テーブル30の回転速度であり、被処理物Wの熱処理に応じた速度に設定されている。したがって、被処理物Wに実施する熱処理の種類等に応じて、速度V1は適宜設定されることとなる。
【0032】
停止信号を受信すると(S10でYES)、次に、制御部54は、位置センサ40から出力される検出信号がONになったか否かを監視する(S12)。上述したように、本実施例では、停止信号を受信するときは、処理テーブル30は熱処理のために設定された速度V1で正転方向に回転している。このため、停止信号受信後に直ちに処理テーブル30の回転を停止させても、速度V1が熱処理の種類等に応じて適宜設定されるため、処理テーブル30が停止する位置(角度位置)にばらつきが生じる。本実施例では、停止信号を受信しただけでは処理テーブル30の回転を直ちに停止はさせず、まずは、処理テーブル30の回転を継続し、位置センサ40からの信号がONになったか否かを監視する。
【0033】
位置センサ40から出力される検出信号がONになると(S12でYES)、次に、制御部54は、位置センサ40から出力される検出信号がOFFになったか否かを監視する(S14)。すなわち、処理テーブル30の下面に固定されたドグ38が、位置センサ40と対向しない位置となるまで、処理テーブル30の正転方向の回転を継続する。
【0034】
位置センサ40から出力される検出信号がOFFになると(S14でYES)、制御部54は、駆動装置(20,22)の駆動を停止し、処理テーブル30の正転方向の回転を停止させる(S16)。次に、制御部54は、今までとは逆の方向に駆動装置(20,22)を駆動し、処理テーブル30を逆転方向に速度V2で回転させる(S18)。ここで、速度V2は、処理テーブル30の停止精度を向上するために、熱処理とは関係なく一定の値であって、速度V1よりも小さな値に設定される。
【0035】
次に、制御部54は、位置センサ40から出力される検出信号がONになったか否かを監視する(S20)。位置センサ40から出力される検出信号がOFFであると(S20でNO)、制御部54は、駆動装置(20,22)の駆動を継続し、処理テーブル30を逆転方向に速度V2で回転させる。一方、位置センサ40から出力される検出信号がONとなると(S20でYES)は、制御部54は、駆動装置(20,22)の駆動を停止し、処理テーブル30の逆転方向の回転を停止させる(S22)。
【0036】
図12は、上述した停止処理を制御部54が実施するときにおいて、停止信号の状態と、駆動装置(20,22)の状態と、位置センサ40からの検出信号の状態の変化を示すタイミングチャートである。図12に示すように、駆動装置(20,22)は、速度V1で処理テーブル30を正転方向に回転させている。この状態で、生産管理装置60から停止信号が出力されても、駆動装置(20,22)は、処理テーブル30を正転方向の速度V1で回転させる。そして、位置センサ40からの検出信号がONとなった後にさらにOFFとなると、駆動装置(20,22)は、処理テーブル30の正転方向の回転を停止する。次に、駆動装置(20,22)は、処理テーブル30を逆転方向に速度V2(<V1)で回転させ、位置センサ40からの検出信号がONとなると、処理テーブル30の逆転方向の回転を停止させる。処理テーブル30は、熱処理とは関係なく一定で、かつ、比較的に小さな回転速度V2で回転している状態から停止させられるため、処理テーブル30は予め設定された位置(角度位置)に精度よく停止することができる。なお、駆動源22にサーボモータを使用することで処理テーブル30の停止位置精度を向上することもできるが、本実施例の停止処理を実行することで、駆動源22にサーボ機能のない汎用モータを使用しても、処理テーブル30の停止位置精度を高めることができる。
【0037】
本実施例の熱処理炉システム100では、複数の熱処理炉本体10と、これら複数の熱処理炉本体10のそれぞれに共用して用いられる複数の処理テーブル30を備えている。このため、複数の熱処理炉本体10を効率的に稼働して、被処理物Wの熱処理を効率的に行うことができる。また、処理テーブル30を熱処理炉本体10に取付ける作業が必要となるが、上述したように、処理テーブル30が回転を停止する位置は予め設定された位置となるように制御されている。特に、処理テーブル30が回転を停止するときの処理テーブル30の回転速度は、熱処理時の回転速度V1ではなく、回転速度V1よりも小さな回転速度V2で一定の速度とされている。これによって、処理テーブル30は、精度よく設定された位置に停止することができる。このため、処理テーブル30を熱処理炉本体10に取付ける作業を容易化することができる。例えば、搬送台車70に対して処理テーブル30を予め設定された位置関係で保持すれば、搬送台車70を熱処理炉本体10に対して所定の位置関係に位置決めするだけで、駆動機構20に対して処理テーブル30を接続可能な位置関係に位置決めすることができる。その結果、処理テーブル30を熱処理炉本体10に取付ける作業を容易化することができる。
【0038】
なお、上述した実施例では、作業者が搬送台車70を操作し、作業者によって処理テーブル30を熱処理炉本体10の駆動機構20に接続していたが、本明細書に開示の技術はこのような形態に限られない。例えば、搬送台車を自動化し、搬送台車が自律的に処理テーブル70を駆動機構20に接続するようにしてもよい。特に、本明細書に開示の技術を使用すれば、処理テーブル70が回転を停止すると、処理テーブル70の位置(角度位置)は予め定められた位置(角度位置)で停止する。このため、搬送台車70に対して処理テーブル30を予め設定された位置関係で保持し、搬送台車70を熱処理炉本体10に対して所定の位置関係に位置決めするだけで、駆動機構20に対して処理テーブル30を適切な位置に位置決めすることができる。これによって、搬送台車を自動化し、熱処理炉システムを省人化することができる。
【0039】
(実施例2) 次に、実施例2に係る熱処理炉システムについて説明する。実施例2の熱処理炉システムでは、実施例1と異なり、処理テーブルの回転を停止させるときに制御部で実施される停止処理のみが相違し、その他の点では実施例1の熱処理炉システム100と同一の構成を有している。以下では、実施例2の制御部で実施される停止処理のみを説明する。なお、実施例1と共通する構成については、同一の符号を用いて説明する。
【0040】
図13は、処理テーブル30の回転を停止させるときに制御部54で実施される停止処理の手順を示している。図13に示すように、制御部54は、まず、生産管理装置60から停止信号を受信したか否かを監視する(S24)。停止信号を受信していないときは(S24でNO)、制御部54は、駆動装置(20,22)の駆動を継続し、処理テーブル30を正転方向に速度V1で回転させる。一方、停止信号を受信すると(S24でYES)、制御部54は、位置センサ40から出力される検出信号がONになったか否かを監視する(S26)。そして、位置センサ40から出力される検出信号がONになると(S26でYES)、制御部54は、駆動装置(20,22)を直ちに停止し、処理テーブル30の回転を停止させる(S28)。したがって、S28で処理テーブル30の回転が停止したときは、位置センサ40から出力される検出信号はONのままとなっている。
【0041】
次に、制御部54は、駆動装置(20,22)を逆方向に駆動し、処理テーブル30を逆転方向に速度V1で回転させる(S30)。そして、制御部54は、位置センサ40から出力される検出信号がOFFになったか否かを監視する(S32)。すなわち、S30の時点では、位置センサ30から出力される検出信号はONとなっている。このため、S32では、位置センサ40から出力される検出信号がONからOFFになったか否かを監視する。
【0042】
位置センサ40から出力される検出信号がOFFになると(S32でYES)、制御部54は、駆動装置(20,22)の逆方向の駆動を直ちに停止し、処理テーブル30の逆転方向の回転を停止させる(S34)。次に、制御部54は、駆動装置(20,22)を正方向に駆動し、処理テーブル30を正転方向に速度V2で回転させる(S36)。速度V2は、熱処理の種類等とは関係なく一定の値であり、速度V1よりも小さな値に設定されている。
【0043】
次に、制御部54は、位置センサ40から出力される検出信号がONになったか否かを監視する(S38)。そして、位置センサ40から出力される検出信号がONとなると(S38でYES)は、制御部54は、駆動装置(20,22)の正転方向の駆動を停止し、処理テーブル30の正転方向の回転を停止させる(S40)。
【0044】
図14は、上述した停止処理を制御部54が実施するときにおいて、停止信号の状態と、駆動装置(20,22)の状態と、位置センサ40からの検出信号の状態の変化を示すタイミングチャートである。図14に示すように、駆動装置(20,22)は、速度V1で処理テーブル30を正転方向に回転させている。この状態で、生産管理装置60から停止信号が出力されても、駆動装置(20,22)は、処理テーブル30を正転方向に速度V1で回転させる。そして、位置センサ40からの検出信号がONとなると、処理テーブル30の正転方向の回転を停止させる。このとき、位置センサ40からの検出信号はONのままとなっている。次に、駆動装置(20,22)は、処理テーブル30を逆転方向に速度V1で回転させ、位置センサ40からの検出信号がOFFとなると、処理テーブル30の逆転方向の回転を停止させる。次に、処理テーブル30は、速度V1と比較して小さな速度V2で正転方向に回転し、位置センサ40からの検出信号がONとなると、処理テーブル30の正転方向の回転を停止させる。
【0045】
実施例2の熱処理炉システムでも、処理テーブル30が熱処理の種類等とは関係がない一定の速度V2で回転させている状態から、処理テーブル30の回転を停止させる。また、処理テーブル30の回転速度V2は、熱処理時の回転速度V1よりも小さな値に設定されている。このため、処理テーブル30を予め設定された位置(角度位置)に精度よく停止させることができる。これによって、処理テーブル30を熱処理炉本体10に取付ける作業を容易化することができる。
【0046】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0047】
100 熱処理炉システム
A 積載エリア
B 積み下ろしエリア
W 被処理物
10 熱処理炉
11 炉体
12 天井壁
14 側壁
16 架台
18 昇降床
20 駆動機構
22 駆動装置
24 昇降装置
26 炉内空間
28 開口
30 処理テーブル
32 大径部
33 小径部
34 主炉床
36 副炉床
38 ドグ
40 位置センサ
42 第2駆動軸
44 第2連結部
46 第1連結部
48 支持板
50 ヒータ
52 ガス供給装置
54 制御部
70 搬送台車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14