(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】車両用サスペンション
(51)【国際特許分類】
B60G 15/07 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
B60G15/07
(21)【出願番号】P 2021061802
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平丸 真之
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-218409(JP,A)
【文献】実開昭54-083754(JP,U)
【文献】特開昭62-075147(JP,A)
【文献】特開平08-210414(JP,A)
【文献】特開昭48-029563(JP,A)
【文献】特開2013-002620(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110696582(CN,A)
【文献】実開昭58-030050(JP,U)
【文献】特開昭61-140634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 - 99/00
F16F 9/00 - 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部(50)と、前記一端部(50)に対しストロークする他端部(51)と、前記一端部(50)と前記他端部(51)との間で圧縮されるばね(52)と、前記ばね(52)のプリロードを調整可能なプリロード調整機構(70)とを備え、前記プリロード調整機構(70)は、前記一端部(50)の外周(50a)に設けられるカム受け部(71)と、前記一端部(50)の外周(50a)に回転自在に嵌装されるアジャスター部(72)とを備え、前記アジャスター部(72)が、前記ばね(52)の一端(52a)を受けるリング状のばね受け部(73)と、前記ばね受け部(73)から前記カム受け部(71)側に延出する複数のカム面(91~97)を備えるカム部74とを備え、前記アジャスター部(72)の回転によって、高さが異なる前記カム面(91~97)が前記カム受け部(71)に選択的に係合することで前記プリロードが調整される車両用サスペンションにおいて、
前記アジャスター部(72)は、前記ばね受け部(73)から前記ばね(52)の軸方向に立設される縦壁部(75)と、前記アジャスター部(72)を回転させる工具(78)が係合する係合部(76)とを備え、
前記係合部(76)は、前記アジャスター部(72)の周方向に互いに離間して配置される複数の前記縦壁部(75)間の隙間によって構成される第1の係合部(81)と、前記縦壁部(75)を貫通する孔によって構成される第2の係合部(82)とを備え、
前記カム部(74)は、前記一端部(50)の外周(50a)に嵌装される円筒状であり、前記カム面(91~97)は、周方向に等間隔で複数配置され、
前記第1の係合部(81)と前記第2の係合部(82)は、前記アジャスター部(72)の周方向に交互に等間隔で配置され、
前記カム面(91~97)と前記カム受け部(71)との係合によって前記プリロードは段階的に調整され、
前記プリロードを一段階調整する際の前記アジャスター部(72)の回転角度(θ1)と、互いに隣接する前記係合部(76)同士が周方向に離れる角度(θ2)とは同じであり、
前記プリロードの各段階の調整は、前記アジャスター部(72)の径方向で互いに対向する同一高さの一対の前記カム面と前記カム受け部(71)との係合によって行われ、
前記第1の係合部(81)及び前記第2の係合部(82)の総数は、前記プリロードの調整の総段数の2倍であ
り、
前記第1の係合部(81)及び前記第2の係合部(82)は、前記アジャスター部(72)を前記アジャスター部(72)の径方向外側から見た場合に、前記ばね受け部(73)に対し径方向外側から重なる位置まで設けられていることを特徴とする車両用サスペンション。
【請求項2】
一端部(50)と、前記一端部(50)に対しストロークする他端部(51)と、前記一端部(50)と前記他端部(51)との間で圧縮されるばね(52)と、前記ばね(52)のプリロードを調整可能なプリロード調整機構(70)とを備え、前記プリロード調整機構(70)は、前記一端部(50)の外周(50a)に設けられるカム受け部(71)と、前記一端部(50)の外周(50a)に回転自在に嵌装されるアジャスター部(72)とを備え、前記アジャスター部(72)が、前記ばね(52)の一端(52a)を受けるリング状のばね受け部(73)と、前記ばね受け部(73)から前記カム受け部(71)側に延出する複数のカム面(91~97)を備えるカム部74とを備え、前記アジャスター部(72)の回転によって、高さが異なる前記カム面(91~97)が前記カム受け部(71)に選択的に係合することで前記プリロードが調整される車両用サスペンションにおいて、
前記アジャスター部(72)は、前記ばね受け部(73)から前記ばね(52)の軸方向に立設される縦壁部(75)と、前記アジャスター部(72)を回転させる工具(78)が係合する係合部(76)とを備え、
前記係合部(76)は、前記アジャスター部(72)の周方向に互いに離間して配置される複数の前記縦壁部(75)間の隙間によって構成される第1の係合部(81)と、前記縦壁部(75)を貫通する孔によって構成される第2の係合部(82)とを備え、
前記第1の係合部(81)と前記第2の係合部(82)は、前記アジャスター部(72)の周方向に交互に等間隔で配置され
、
前記第1の係合部(81)及び前記第2の係合部(82)は、前記アジャスター部(72)を前記アジャスター部(72)の径方向外側から見た場合に、前記ばね受け部(73)に対し径方向外側から重なる位置まで設けられていることを特徴とする車両用サスペンション。
【請求項3】
前記縦壁部(75)は、前記カム部(74)に対し径方向外側に配置され、前記カム部(74)を外周側から覆うことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用サスペンション。
【請求項4】
前記ばね受け部(73)と前記縦壁部(75)とは一体に形成され、
前記カム部(74)は、前記ばね受け部(73)とは別体に形成され、前記ばね受け部(73)に接合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用サスペンション。
【請求項5】
前記ばね受け部(73)、前記縦壁部(75)、前記第1の係合部(81)、及び前記第2の係合部(82)は、板材をプレス加工して一体に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用サスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一端部と、一端部に対しストロークする他端部と、一端部と他端部との間で圧縮されるばねと、ばねのプリロードを調整可能なプリロード調整機構とを備える車両用サスペンションが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、プリロード調整機構は、上記一端部の外周に設けられるカム受け部と、上記一端部の外周に回転自在に嵌装されるアジャスター部とを備え、アジャスター部が、ばねの一端を受けるリング状のばね受け部と、ばね受け部からカム受け部側に延出する複数のカム面を備えるカム部とを備え、アジャスター部の回転によって、高さが異なるカム面がカム受け部に選択的に係合することでプリロードが調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の車両用サスペンションでは、アジャスター部を回転させることでプリロードが調整されるが、車両用サスペンションの周囲のスペースは狭いことが多い。このため、アジャスター部を操作する工具をアジャスター部にセットし難く、プリロードの調整作業が煩雑になる。また、アジャスター部の構造は簡単であることが望まれる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、車両用サスペンションにおいて、プリロードの調整作業が容易なアジャスター部を簡単な構造で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
車両用サスペンションは、一端部と、前記一端部に対しストロークする他端部と、前記一端部と前記他端部との間で圧縮されるばねと、前記ばねのプリロードを調整可能なプリロード調整機構とを備え、前記プリロード調整機構は、前記一端部の外周に設けられるカム受け部と、前記一端部の外周に回転自在に嵌装されるアジャスター部とを備え、前記アジャスター部が、前記ばねの一端を受けるリング状のばね受け部と、前記ばね受け部から前記カム受け部側に延出する複数のカム面を備えるカム部とを備え、前記アジャスター部の回転によって、高さが異なる前記カム面が前記カム受け部に選択的に係合することで前記プリロードが調整される車両用サスペンションにおいて、前記アジャスター部は、前記ばね受け部から前記ばねの軸方向に立設される縦壁部と、前記アジャスター部を回転させる工具が係合する係合部とを備え、前記係合部は、前記アジャスター部の周方向に互いに離間して配置される複数の前記縦壁部間の隙間によって構成される第1の係合部と、前記縦壁部を貫通する孔によって構成される第2の係合部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
車両用サスペンションにおいて、プリロードの調整作業が容易なアジャスター部を簡単な構造で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
【
図3】プリロード調整機構の周辺部の斜視図である。
【
図4】アジャスター部をリアサスペンションの軸方向に上方から見た図である。
【
図7】ばね受け部、縦壁部、及び係合部を示す斜視図である。
【
図9】
図4に対しアジャスター部を回転させてプリロードを一段変更した状態を示す図である。
【
図10】アジャスター部を回転させる工具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0013】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、内燃機関である。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダー部24とを備える。シリンダー部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0014】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、車体フレーム11に支持される。
【0015】
鞍乗り型車両10は、自動二輪車であり、前輪13及び後輪15は、車幅方向の中央に位置する。
フロントフレーム19は、ヘッドパイプ18の上部から後下方に延びる左右一対のメインフレーム31と、ヘッドパイプ18の下部から後下方に延びる左右一対のダウンフレーム32と、メインフレーム31の後端部から下方に延びる左右一対のピボットフレーム33と、ヘッドパイプ18の後方でダウンフレーム32とを接続するガセット34とを備える。
リアフレーム20は、メインフレーム31の後端部から後上方に延びる左右一対のシートフレーム35と、ピボットフレーム33の上端部から後上方に延びてシートフレーム35の後端部に接続される左右一対のサブフレーム36とを備える。
パワーユニット12は、メインフレーム31の下方で、ダウンフレーム32とピボットフレーム33との間に配置される。
シリンダー部24は、クランクケース23の前部の上面から上方に延出する。
【0016】
燃料タンク29は、メインフレーム31の上方において、車両前後方向でシート17とヘッドパイプ18との間に配置される。燃料タンク29は、メインフレーム31に支持される。
パワーユニット12の冷却水が通るラジエーター37は、シリンダー部24及びダウンフレーム32の前方に配置され、ダウンフレーム32に取り付けられる。
【0017】
鞍乗り型車両10は、車体カバーとして、ヘッドパイプ18を前方側から覆うフロントカバー38と、燃料タンク29を前方側から覆うタンクカバー39と、ラジエーター37を車幅方向外側から覆う左右一対のラジエーターシュラウド40と、シート17の下方の車体を車幅方向外側から覆う左右一対のサイドカバー41とを備える。
【0018】
鞍乗り型車両10は、スイングアーム16の上下の揺動を減衰させるリアサスペンション42(車両用サスペンション)を備える。リアサスペンション42の上端部は、車体フレーム11の後部に接続され、リアサスペンション42の下端部は、リンク機構43を介してスイングアーム16に接続される。
リアサスペンション42の上部は、左右のピボットフレーム33の間に配置される。
【0019】
図2は、リアサスペンション42の斜視図である。
図1及び
図2を参照し、リアサスペンション42は、上下に延びる筒状に形成されており、スイングアーム16の上下の揺動に伴って軸方向に圧縮され、軸方向にストロークすることで路面からの衝撃を吸収する。
リアサスペンション42は、リアサスペンション42のストロークの中心軸42aが鉛直線に対し前傾する姿勢で配置される。リアサスペンション42がストロークする方向は、中心軸42aの軸方向である。
【0020】
リアサスペンション42は、車体フレーム11の上部に連結される一端部50と、リンク機構43に連結される他端部51と、一端部50と他端部51との間で圧縮されるばね52とを備える。
一端部50はリアサスペンション42の上端部であり、他端部51はリアサスペンション42の下端部である。
【0021】
また、リアサスペンション42は、一端部50から他端部51側へ下方に延出するシリンダー53(ダンパー)と、他端部51から一端部50側へ上方に延びてシリンダー53に接続されるピストンロッド54と、ピストンロッド54の端部に設けられてシリンダー53内に位置するピストンバルブ(不図示)とを備える。ピストンロッド54の軸線は、中心軸42aと同軸である。
シリンダー53内には、減衰用の作動油が充填される。他端部51が上下にストロークすると、上記ピストンバルブは、他端部51と一体に移動し、作動油に抗してシリンダー53内を中心軸42aの軸方向に摺動する。
【0022】
ばね52は、コイルばねである。シリンダー53及びピストンロッド54は、ばね52のコイルの内周に挿通される。すなわち、ばね52は、シリンダー53及びピストンロッド54の周囲に巻装される。
【0023】
一端部50は、上下に長い筒状部材である。
一端部50の上端には、車体フレーム11に連結される上部連結部57が設けられる。一端部50は、上部連結部57に対し車幅方向に挿通される上部連結軸(不図示)によって、車体フレーム11に連結される。一端部50の上部には、上記作動油を貯留するリザーバータンク58が接続される。リザーバータンク58は、シリンダー53内に連通する。
一端部50の下部の外周50aには、リアサスペンション42の軸方向に移動してばね52のプリロードを調整可能なプリロード調整機構70が設けられる。
【0024】
他端部51の下端には、リンク機構43に連結される下部連結部60が設けられる。下部連結部60は、下部連結部60に対し車幅方向に挿通される下部連結軸(不図示)によって、リンク機構43に連結される。
他端部51の上部には、ばね52の下端を受けるリング状のばね受け部材61が設けられる。
ばね52は、一端部50のプリロード調整機構70と他端部51のばね受け部材61との間に圧縮された状態で設けられ、他端部51をリアサスペンション42の伸張方向に付勢する。
【0025】
ばね52のプリロード(初期荷重)は、プリロード調整機構70とばね受け部材61との間で圧縮されるばね52の反力である。プリロードの大きさは、ばね52の自由長からの撓み(圧縮量)に対応する。
【0026】
図3は、プリロード調整機構70の周辺部の斜視図である。
図2及び
図3を参照し、プリロード調整機構70は、一端部50の外周50aに設けられるカム受け部71と、一端部50の外周50aに回転自在に嵌装されるアジャスター部72とを備える。
【0027】
カム受け部71は、外周50aから径方向外側に突出する突起であり、外周50aに固定されている。
カム受け部71は、外周50a上において互いに周方向に180°離れるように一対設けられる。一対のカム受け部71は、リアサスペンション42の軸方向において同じ位置に設けられる。
【0028】
アジャスター部72は、リアサスペンション42の軸方向において、カム受け部71とばね52の一端52aとの間に挟まれる。一端52aは、ばね52の上端である。
アジャスター部72は、ばね52の一端52aを受けるリング状のばね受け部73と、ばね受け部73からカム受け部71側に延出するカム部74と、ばね受け部73からばね52の軸方向に立設される縦壁部75とを備える。
【0029】
また、アジャスター部72は、アジャスター部72を回転させる工具78(
図10参照)が係合する係合部76を備える。
【0030】
図4は、アジャスター部72をリアサスペンション42の軸方向に上方から見た図である。
図5は、アジャスター部72を外周側から見た図である。
図6は、アジャスター部72の斜視図である。
図7は、ばね受け部73、縦壁部75、及び係合部76を示す斜視図である。
図8は、カム部74を示す斜視図である。
図3~
図8を参照し、アジャスター部72は、ばね受け部73、縦壁部75、及び係合部76を一体に備えるリング状部材77とカム部74とを溶接で接合することで形成される。
【0031】
リング状部材77のばね受け部73は、中心軸42aと同軸に設けられる円板状のリングである。ばね受け部73は、ばね52の一端52aに沿うようにリング状に形成される。
ばね受け部73の中心には、一端部50の外周50aよりも大径の孔73aが設けられる。
【0032】
リング状部材77の縦壁部75は、ばね受け部73の外周部73bからカム受け部71側に向けてリアサスペンション42の軸方向に延出する。縦壁部75は、ばね受け部73の上面に対し略直角に延出する板状部である。
縦壁部75は、外周部73bにおいて、アジャスター部72の周方向に等間隔をあけて複数設けられる。すなわち、縦壁部75は、アジャスター部72の周方向に互いに離間して複数配置される。本実施の形態では、縦壁部75は7個設けられる。各縦壁部75は、同一形状である。縦壁部75は、アジャスター部72の外周から見ると、リアサスペンション42の軸方向よりも周方向に長い矩形状である。
図7に示すように、縦壁部75は、ばね受け部73からカム受け部71側に向けて上方に延びる一対の側縁75aと、一対の側縁75aの上端を周方向に接続する上縁75bとを備える。
【0033】
係合部76は、互いに隣接する一対の縦壁部75間の隙間によって構成される第1の係合部81と、縦壁部75を貫通する孔によって構成される第2の係合部82とを備える。
詳細には、第1の係合部81は、一対の縦壁部75の互いに向かい合う一対の側縁75aによって区画される溝状の開口部である。
【0034】
第1の係合部81は、アジャスター部72を
図5のようにアジャスター部72の径方向外側から見た場合に、ばね受け部73の板厚部分に対し径方向外側から重なる位置まで設けられている。
第1の係合部81は、リアサスペンション42の軸方向に長く延びる溝状であり、上方及び下方に開放している。
第1の係合部81は、アジャスター部72の周方向に等間隔をあけて複数設けられる。本実施の形態では、第1の係合部81は、全ての縦壁部75に設けられており、7か所に設けられる。
【0035】
第2の係合部82は、縦壁部75を貫通する矩形の孔である。第2の係合部82は、リアサスペンション42の軸方向における縦壁部75の中間部から縦壁部75の下端まで設けられる。第2の係合部82は、リアサスペンション42の軸方向に長く延びる長孔状である。
第2の係合部82は、アジャスター部72を
図5のようにアジャスター部72の径方向外側から見た場合に、ばね受け部73の板厚部分に対し径方向外側から重なる位置まで設けられている。
第2の係合部82は、各縦壁部75に設けられる。第2の係合部82は、各縦壁部75の周方向の中間部に設けられる。第2の係合部82は、アジャスター部72の周方向に等間隔をあけて複数設けられる。本実施の形態では、第2の係合部82は、全ての縦壁部75に設けられており、7か所に設けられる。
【0036】
第1の係合部81と第2の係合部82とは、アジャスター部72の周方向において、交互に且つ等間隔に配置される。
【0037】
図7を参照し、ばね受け部73、縦壁部75、及び係合部76を一体に備えるリング状部材77は、板材をプレス加工して形成される。
縦壁部75は、ばね受け部73に対し上記板材を曲げ加工することで形成される。この曲げ加工の前段階において、ばね受け部73、孔73a、第2の係合部82、及び第1の係合部81に対応する部分は、プレス加工の抜き加工によって形成される。この状態では、縦壁部75は、ばね受け部73と面一であるとともに、ばね受け部73から放射状に径方向外側に延びる板状部である。その後、プレス加工の曲げ加工によって縦壁部75の部分を曲げることで、リング状部材77が形成される。
本実施の形態では、縦壁部75の曲げ加工の際に、第1の係合部81に対応する切り欠き部が設けられているため、縦壁部75を曲げ加工し易い。
【0038】
図3~
図8を参照し、カム部74は、リアサスペンション42の軸方向に延びる円筒状である。カム部74は、一端部50の外周50aに嵌装される。
カム部74におけるカム受け部71側の端面には、軸方向においてカム受け部71に当接する複数のカム面が設けられる。カム面は、第1カム面91、第2カム面92、第3カム面93、第4カム面94、第5カム面95、第6カム面96、及び第7カム面97が設けられる。
図4では、第1カム面91~第7カム面97は、区別できるように互いに異なるハッチングが付されている。
【0039】
カム面は、カム部74の周方向に、第1カム面91、第2カム面92、第3カム面93、第4カム面94、第5カム面95、第6カム面96、及び第7カム面97の順に等間隔で配置される。
カム部74の軸方向におけるカム面の高さは、カム部74の周方向に移動するに従って段階的に高くなるように階段状に形成される。
詳細には、カム面の高さは、第1カム面91が最も低く、第7カム面97側に向かうに従って段階的に高くなる。
第1カム面91~第7カム面97は、ばね受け部73からカム受け部71側に向けてリアサスペンション42の軸方向に延出している。
【0040】
カム面は、第1カム面91、第2カム面92、第3カム面93、第4カム面94、第5カム面95、第6カム面96、及び第7カム面97を一組とした場合、二組のカム面がカム部74の端面に設けられる。
詳細には、カム面は、同一高さの一対のカム面がアジャスター部72の径方向で互いに対向するように配置される。例えば、一対の第1カム面91の高さは同一であり、一対の第1カム面91は、アジャスター部72の周方向に互いに180°異なる位置に配置され、アジャスター部72の径方向で互いに対向する。これは、第2カム面92~第7カム面97についても同様である。
【0041】
カム部74は、中心軸42aと同軸に配置される。カム部74は、ばね受け部73の孔73aの周縁部からリアサスペンション42の軸方向に延出する。カム部74は、孔73aの周縁部に溶接で接合される。
カム部74及び環状の並びで配置される複数の縦壁部75は、中心軸42aを中心とする同心円状である。カム部74は、環状の並びの縦壁部75に対し径方向内側に離間して配置される。縦壁部75は、カム部74の径方向外側に配置され、カム部74を外周側から覆う。
【0042】
アジャスター部72は、カム部74の内周面74aが一端部50の外周50aに嵌合することで、一端部50上に配置される。アジャスター部72は、一端部50上で中心軸42aを中心に回転可能であるとともに、リアサスペンション42の軸方向に移動可能である。
アジャスター部72のばね受け部73とばね52の一端52aとの間には、リング状のワッシャー85(
図3)が介装される。
【0043】
アジャスター部72は、ばね52の反力によって一対のカム受け部71に押し付けられている。詳細には、アジャスター部72は、カム部74を介してカム受け部71の下端部に係合する。
カム部74は、同一高さの一対のカム面が、一対のカム受け部71に係合する。カム面は、第1カム面91~第7カム面97のいずれかのカム面が、一対のカム受け部71に選択的に係合される。一対のカム受け部71に係合するカム面が変更されると、リアサスペンション42の軸方向におけるアジャスター部72の位置が変化し、プリロードが変更される。
【0044】
アジャスター部72が回転すると、一対のカム受け部71に係合するカム面が変更され、プリロードが変更される。
例えば、高さが最も低い一対の第1カム面91が一対のカム受け部71に係合すると、プリロードは最小となる。
また、高さが最も高い一対の第7カム面97が一対のカム受け部71に係合すると、プリロードは最大となる。
リアサスペンション42では、高さが異なる7種の第1カム面91~第7カム面97が設けられるため、プリロードを7段階に変更することができる。すなわち、プリロードの調整の総段数は7段である。
【0045】
図4を参照し、各カム面の周方向の間隔θ1は、360°をカム面の総数で割った値である。カム部74では、カム面の総数は14個であるため、間隔θ1は略25.7°である。すなわち、2組の第1カム面91~第7カム面97は、略25.7°毎に設けられる。
間隔θ1は、プリロードを一段階調整する際のアジャスター部72の回転角度である。
【0046】
図4を参照し、互いに隣接する第1の係合部81及び第2の係合部82同士がアジャスター部72の周方向に離れる角度θ2は、360°を係合部76の総数で割った値である。
カム部74では、係合部76の総数は、第1の係合部81の総数(7個)と第2の係合部82の総数(7個)とを足した14個である。このため、角度θ2は、略25.7°である。すなわち、第1の係合部81及び第2の係合部82は、略25.7°毎に交互に設けられる。
【0047】
第1の係合部81及び第2の係合部82の総数は、プリロードの調整の総段数である7段の2倍であり、14個である。このため、間隔θ1と角度θ2とは同一となる。
【0048】
図9は、
図4に対しアジャスター部72を回転させてプリロードを一段変更した状態を示す図である。
図9では、アジャスター部72が
図4の反時計回り方向Rに回転され、プリロードは一段階だけ大きくなるように変更されている。
図4及び
図9を参照し、間隔θ1と角度θ2とが同一であるため、アジャスター部72を一段階だけ回転させると、第2の係合部82は、この回転前に第1の係合部81が位置していた位置に移動する。ここからさらに一段階プリロードを変更しても同様である。すなわち、アジャスター部72の係合部76は、プリロードの調整によって回転されても、全体的な位置がずれない。
【0049】
図10は、アジャスター部72を回転させる工具78を示す斜視図である。
工具78は、アジャスター部72の縦壁部75の外周面に沿う円弧状のガイド部78aと、ガイド部78aから突出して係合部76に係合する爪部78bと、ガイド部78aから延出する保持部78cとを備える。
作業者は、ガイド部78aを縦壁部75の外周面に突き当てるとともに爪部78bを第1の係合部81及び第2の係合部82の一方に係合させる。そして、作業者は、保持部78cを持って工具78を回転させ、アジャスター部72を回転させる。これにより、プリロードの調整が行われる。
リアサスペンション42では、係合部76が、第1の係合部81及び第2の係合部82の両方を備えるため、係合部76の数が多い。このため、係合部76に工具78を容易に係合させることができ、プリロードの調整をし易い。
【0050】
図4及び
図9には、係合部76において工具78を係合させ易い第1係合位置101及び第2係合位置102が示される。
第1係合位置101及び第2係合位置102は、互いに角度θ2(略25.7°)だけ離れている。第1係合位置101及び第2係合位置102は、アジャスター部72の周辺の車体フレーム11や部品等との位置関係で、工具78を容易に係合部76に係合させることができる位置である。
第1係合位置101及び第2係合位置102は、例えば、リアサスペンション42を鞍乗り型車両10に搭載した状態において、リアサスペンション42の後面部に位置する。この場合、左右のピボットフレーム33の間で後方に開放した部分から、第1係合位置101及び第2係合位置102に容易にアクセスできる。
【0051】
作業者は、プリロードをいずれの段階に調整する場合であっても、第1係合位置101及び第2係合位置102に位置する係合部76に工具78を係合させてアジャスター部72を回転させることができる。
例えば、
図4の状態から
図9の状態にプリロードを変更する場合、作業者は、
図4の第1係合位置101の第2の係合部82に工具を係合させ、第2係合位置102の位置まで反時計回り方向Rに角度θ2だけアジャスター部72を回転させる。
さらに一段階プリロードを増やす場合、作業者は、
図9の第1係合位置101の第1の係合部81に工具を係合させ、第2係合位置102の位置まで反時計回り方向Rに角度θ2だけアジャスター部72を回転させる。
【0052】
すなわち、作業者は、第1係合位置101と第2係合位置102との間において、アジャスター部72の角度θ2(略25.7°)の回転を繰り返すことで、プリロードの調整を行うことができる。
このため、プリロードの調整の際の工具78の回転角度(ストローク)を小さくでき、同じストロークで操作可能なため、プリロードを調整し易い。また、工具78の回転角度が小さくなるため、アジャスター部72の周辺に部品等を配置し易くなり、部品の配置の自由度が向上する。
なお、第1係合位置101及び第2係合位置102は一例であり、他の場所の係合部76に工具78を係合させても良い。
【0053】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、リアサスペンション42は、一端部50と、一端部50に対しストロークする他端部51と、一端部50と他端部51との間で圧縮されるばね52と、ばね52のプリロードを調整可能なプリロード調整機構70とを備え、プリロード調整機構70は、一端部50の外周50aに設けられるカム受け部71と、一端部50の外周50aに回転自在に嵌装されるアジャスター部72とを備え、アジャスター部72が、ばね52の一端52aを受けるリング状のばね受け部73と、ばね受け部73からカム受け部71側に延出する複数の第1カム面91~第7カム面97を備えるカム部74とを備え、アジャスター部72の回転によって、高さが異なる第1カム面91~第7カム面97がカム受け部71に選択的に係合することでプリロードが調整される。アジャスター部72は、ばね受け部73からばね52の軸方向に立設される縦壁部75と、アジャスター部72を回転させる工具78が係合する係合部76とを備え、係合部76は、アジャスター部72の周方向に互いに離間して配置される複数の縦壁部75間の隙間によって構成される第1の係合部81と、縦壁部75を貫通する孔によって構成される第2の係合部82とを備える。
この構成によれば、アジャスター部72を回転させる工具78が係合する係合部76が、複数の縦壁部75間の隙間によって構成される第1の係合部81と、縦壁部75を貫通する孔によって構成される第2の係合部82とを備えるため、簡単な構造で係合部76の数を増やすことができる。このため、工具78を係合部76に容易に係合させることができ、プリロードの調整作業が容易である。
【0054】
また、カム部74は、一端部50の外周50aに嵌装される円筒状であり、第1カム面91~第7カム面97は、周方向に等間隔で複数配置され、各係合部76は、アジャスター部72の周方向に等間隔で配置され、第1カム面91~第7カム面97とカム受け部71との係合によってプリロードは段階的に調整され、プリロードを一段階調整する際のアジャスター部72の回転角度である間隔θ1と、互いに隣接する係合部76同士が周方向に離れる角度である角度θ2とは同じである。
この構成によれば、間隔θ1と角度θ2とは同じであるため、プリロードがいずれの段に調整された場合でも、係合部76は一定の位置にある。このため、アジャスター部72を工具78で回転させる際の工具78の回転角度を小さくでき、同じストロークで操作可能である。
【0055】
また、プリロードの各段階の調整は、アジャスター部72の径方向で互いに対向する同一高さの一対のカム面とカム受け部71との係合によって行われ、第1の係合部81及び第2の係合部82の総数は、プリロードの調整の総段数の2倍である。
この構成によれば、同一高さの一対のカム面がアジャスター部72の径方向で互いに対向するため、アジャスター部72によってばね52の荷重を安定して受けることができる。第1の係合部81及び第2の係合部82の総数がプリロードの調整の総段数の2倍であるため、プリロードがいずれの段に調整された場合でも、係合部76は一定の位置にある。このため、アジャスター部72を工具78で回転させる際の工具78の回転角度を小さくできる。
【0056】
さらに、縦壁部75は、カム部74に対し径方向外側に配置され、カム部74を外周側から覆う。
この構成によれば、縦壁部75をカム部74の外周側にコンパクトに設けることができるとともに、縦壁部75によってカム部74を保護できる。
【0057】
また、ばね受け部73と縦壁部75とは一体に形成され、カム部74は、ばね受け部73とは別体に形成され、ばね受け部73に接合されている。
この構成によれば、カム部74がばね受け部73とは別体に形成されるため、カム部74を製造し易い。また、ばね受け部73及び縦壁部75を製造し易い。
【0058】
また、ばね受け部73、縦壁部75、第1の係合部81、及び第2の係合部82は、板材をプレス加工して一体に形成されている。
この構成によれば、ばね受け部73、縦壁部75、第1の係合部81、及び第2の係合部82を容易に形成できる。
【0059】
また、第2の係合部82は、アジャスター部72をアジャスター部72の径方向外側から見た場合に、ばね受け部73に対し径方向外側から重なる位置まで設けられている。
この構成によれば、第2の係合部82の範囲が長くなるため、第2の係合部82に工具78を係合させ易い。
【0060】
さらに、第1の係合部81は、アジャスター部72をアジャスター部72の径方向外側から見た場合に、ばね受け部73に対し径方向外側から重なる位置まで設けられている。
この構成によれば、第1の係合部81の範囲が長くなるため、第1の係合部81に工具78を係合させ易い。
【0061】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、鞍乗り型車両10として自動二輪車を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、前輪または後輪を2つ備える3輪の車両及び4輪以上を備える車両に適用可能である。
【0062】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0063】
(構成1)一端部と、前記一端部に対しストロークする他端部と、前記一端部と前記他端部との間で圧縮されるばねと、前記ばねのプリロードを調整可能なプリロード調整機構とを備え、前記プリロード調整機構は、前記一端部の外周に設けられるカム受け部と、前記一端部の外周に回転自在に嵌装されるアジャスター部とを備え、前記アジャスター部が、前記ばねの一端を受けるリング状のばね受け部と、前記ばね受け部からカム受け部側に延出する複数のカム面を備えるカム部とを備え、前記アジャスター部の回転によって、高さが異なる前記カム面が前記カム受け部に選択的に係合することで前記プリロードが調整される車両用サスペンションにおいて、前記アジャスター部は、前記ばね受け部から前記ばねの軸方向に立設される縦壁部と、前記アジャスター部を回転させる工具が係合する係合部とを備え、前記係合部は、前記アジャスター部の周方向に互いに離間して配置される複数の前記縦壁部間の隙間によって構成される第1の係合部と、前記縦壁部を貫通する孔によって構成される第2の係合部とを備えることを特徴とする車両用サスペンション。
この構成によれば、アジャスター部を回転させる工具が係合する係合部が、複数の縦壁部間の隙間によって構成される第1の係合部と、縦壁部を貫通する孔によって構成される第2の係合部とを備えるため、簡単な構造で係合部の数を増やすことができる。このため、工具を係合部に容易に係合させることができ、プリロードの調整作業が容易である。
【0064】
(構成2)前記カム部は、前記一端部の外周に嵌装される円筒状であり、前記カム面は、周方向に等間隔で複数配置され、各前記係合部は、前記アジャスター部の周方向に等間隔で配置され、前記カム面と前記カム受け部との係合によって前記プリロードは段階的に調整され、前記プリロードを一段階調整する際の前記アジャスター部の回転角度と、互いに隣接する前記係合部同士が周方向に離れる角度とは同じであることを特徴とする構成1記載の車両用サスペンション。
この構成によれば、プリロードを一段階調整する際のアジャスター部の回転角度と、互いに隣接する係合部同士が周方向に離れる角度とは同じであるため、プリロードがいずれの段に調整された場合でも、係合部は一定の位置にある。このため、アジャスター部を工具で回転させる際の工具の回転角度を小さくでき、同じストロークで操作可能である。
【0065】
(構成3)前記プリロードの各段階の調整は、前記アジャスター部の径方向で互いに対向する同一高さの一対の前記カム面と前記カム受け部との係合によって行われ、前記第1の係合部及び前記第2の係合部の総数は、前記プリロードの調整の総段数の2倍であることを特徴とする構成2記載の車両用サスペンション。
この構成によれば、同一高さの一対のカム面がアジャスター部の径方向で互いに対向するため、アジャスター部によってばねの荷重を安定して受けることができる。第1の係合部及び第2の係合部の総数がプリロードの調整の総段数の2倍であるため、プリロードがいずれの段に調整された場合でも、係合部は一定の位置にある。このため、アジャスター部を工具で回転させる際の工具の回転角度を小さくできる。
【0066】
(構成4)前記縦壁部は、前記カム部に対し径方向外側に配置され、前記カム部を外周側から覆うことを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の車両用サスペンション。
この構成によれば、縦壁部をカム部の外周側にコンパクトに設けることができるとともに、縦壁部によってカム部を保護できる。
【0067】
(構成5)前記ばね受け部と前記縦壁部とは一体に形成され、前記カム部は、前記ばね受け部とは別体に形成され、前記ばね受け部に接合されていることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載の車両用サスペンション。
この構成によれば、カム部がばね受け部とは別体に形成されるため、カム部を製造し易い。また、ばね受け部及び縦壁部を製造し易い。
【0068】
(構成6)前記ばね受け部、前記縦壁部、前記第1の係合部、及び前記第2の係合部は、板材をプレス加工して一体に形成されていることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載の車両用サスペンション。
この構成によれば、ばね受け部、縦壁部、第1の係合部、及び第2の係合部を容易に形成できる。
【0069】
(構成7)前記第2の係合部は、前記アジャスター部を前記アジャスター部の径方向外側から見た場合に、前記ばね受け部に対し径方向外側から重なる位置まで設けられていることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載の車両用サスペンション。
この構成によれば、第2の係合部の範囲が長くなるため、第2の係合部に工具を係合させ易い。
【0070】
(構成8)前記第1の係合部は、前記アジャスター部を前記アジャスター部の径方向外側から見た場合に、前記ばね受け部に対し径方向外側から重なる位置まで設けられていることを特徴とする構成7記載の車両用サスペンション。
この構成によれば、第1の係合部の範囲が長くなるため、第1の係合部に工具を係合させ易い。
【符号の説明】
【0071】
10 鞍乗り型車両(車両)
42リアサスペンション(車両用サスペンション)
50 一端部
50a 外周
51 他端部
52 ばね
52a 一端
70 プリロード調整機構
71 カム受け部
72 アジャスター部
73 ばね受け部
74 カム部
75 縦壁部
76 係合部
78 工具
81 第1の係合部
82 第2の係合部
91 第1カム面(カム面)
92 第2カム面(カム面)
93 第3カム面(カム面)
94 第4カム面(カム面)
95 第5カム面(カム面)
96 第6カム面(カム面)
97 第7カム面(カム面)
θ1 間隔(プリロードを一段階調整する際のアジャスター部の回転角度)
θ2 角度(互いに隣接する係合部同士が周方向に離れる角度)