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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】通信システム及び通信端末
(51)【国際特許分類】
   H04L 67/10 20220101AFI20231026BHJP
   G06F 9/445 20180101ALI20231026BHJP
【FI】
H04L67/10
G06F9/445 120
G06F9/445 150
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021072931
(22)【出願日】2021-04-22
(65)【公開番号】P2022167247
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白根 一登
(72)【発明者】
【氏名】木原 一
【審査官】前田 健人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151873(JP,A)
【文献】国際公開第2002/003199(WO,A1)
【文献】特開2014-178820(JP,A)
【文献】特開2005-157544(JP,A)
【文献】特開2004-048777(JP,A)
【文献】特開2005-223788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 67/10
G06F 9/445
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストコンピュータと、前記ホストコンピュータと通信する通信端末と、を有する通信システムであって、
前記通信端末は、
予め定められた種類の複数のソフトウェアモジュールを記憶する記憶部と、
データを処理する処理部と、を有し、
前記処理部は、
前記ホストコンピュータから、前記複数のソフトウェアモジュールの内、実行すべきソフトウェアモジュールを指定する指定情報をダウンロードし、
前記実行すべきソフトウェアモジュールの追加が必要な場合は、前記ホストコンピュータから、前記実行すべきソフトウェアモジュールが使用する前記記憶部の容量に関する容量情報をダウンロードし、
前記実行すべきソフトウェアモジュールを記憶するために必要な空き容量が前記記憶部にある場合は、前記指定情報で指定されており、かつ前記記憶部に記憶されていない前記実行すべきソフトウェアモジュールを前記ホストコンピュータからダウンロードして前記記憶部に記憶し、
前記実行すべきソフトウェアモジュールを記憶するために必要な空き容量が前記記憶部にない場合は、前記記憶部に予め記憶されており、かつ前記指定情報で指定されていない前記ソフトウェアモジュールを前記記憶部から消去し、
前記実行すべきソフトウェアモジュールを前記記憶部から読み出して実行することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記処理部は、
システムに組み込まれて使用が開始されるタイミングで、前記ホストコンピュータから、前記指定情報と前記容量情報をダウンロードすることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記処理部は、
前記ホストコンピュータから、携帯電話無線を介して、前記指定情報と前記容量情報をダウンロードすることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記記憶部は、
メーカからの出荷時点のタイミングで、予め定められた種類の前記複数のソフトウェアモジュールを記憶することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記通信端末は、
局地的な通信により対象機器と通信を行うことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項6】
複数の通信端末と、前記複数の通信端末の各々に接続された複数のホストコンピュータと、前記複数の通信端末の各々に接続された単一のメーカ側ホストコンピュータと、を有する通信システムであって、
前記通信端末の各々は、
予め定められた種類の複数のソフトウェアモジュールを記憶する記憶部を有し、
起動時に前記メーカ側ホストコンピュータと通信を行い、前記通信端末の各々を識別する個体識別情報を前記メーカ側ホストコンピュータに送信し、
前記メーカ側ホストコンピュータは、
受信した前記個体識別情報に基づいて、前記通信端末の各々が実行すべきソフトウェアモジュールを指定する指定情報と、前記実行すべきソフトウェアモジュールが使用する前記記憶部の容量に関する容量情報とを生成し、
前記通信端末の各々は、
前記メーカ側ホストコンピュータから、前記指定情報をダウンロードし、
前記実行すべきソフトウェアモジュールの追加が必要な場合は、前記メーカ側ホストコンピュータから、前記容量情報をダウンロードし、
前記実行すべきソフトウェアモジュールを記憶するために必要な空き容量が前記記憶部にある場合は、前記指定情報で指定されており、かつ前記記憶部に記憶されていない前記実行すべきソフトウェアモジュールを前記メーカ側ホストコンピュータ又は前記ホストコンピュータからダウンロードして前記記憶部に記憶し、
前記実行すべきソフトウェアモジュールを記憶するために必要な空き容量が前記記憶部にない場合は、前記記憶部に予め記憶されており、かつ前記指定情報で指定されていない前記ソフトウェアモジュールを前記記憶部から消去し、
前記実行すべきソフトウェアモジュールを前記記憶部から読み出して実行することを特徴とする通信システム。
【請求項7】
前記通信端末の各々は、
システムに組み込まれて使用が開始されるタイミングで、前記メーカ側ホストコンピュータから、前記指定情報と前記容量情報をダウンロードすることを特徴とする請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記通信端末の各々は、
前記メーカ側ホストコンピュータから、携帯電話無線を介して、前記指定情報と前記容量情報をダウンロードすることを特徴とする請求項6に記載の通信システム。
【請求項9】
前記通信端末の各々の前記記憶部は、
メーカからの出荷時点のタイミングで、予め定められた種類の前記複数のソフトウェアモジュールを記憶することを特徴とする請求項6に記載の通信システム。
【請求項10】
前記通信端末の各々は、
局地的な通信により対象機器と通信を行うことを特徴とする請求項6に記載の通信システム。
【請求項11】
ホストコンピュータと通信する通信端末であって、
予め定められた種類の複数のソフトウェアモジュールを記憶する記憶部と、
データを処理する処理部と、を有し、
前記処理部は、
前記ホストコンピュータから、前記複数のソフトウェアモジュールの内、実行すべきソフトウェアモジュールを指定する指定情報をダウンロードし、
前記実行すべきソフトウェアモジュールの追加が必要な場合は、前記ホストコンピュータから、前記実行すべきソフトウェアモジュールが使用する前記記憶部の容量に関する容量情報をダウンロードし、
前記実行すべきソフトウェアモジュールを記憶するために必要な空き容量が前記記憶部にある場合は、前記指定情報で指定されており、かつ前記記憶部に記憶されていない前記実行すべきソフトウェアモジュールを前記ホストコンピュータからダウンロードして前記記憶部に記憶し、
前記実行すべきソフトウェアモジュールを記憶するために必要な空き容量が前記記憶部にない場合は、前記記憶部に予め記憶されており、かつ前記指定情報で指定されていない前記ソフトウェアモジュールを前記記憶部から消去し、
前記実行すべきソフトウェアモジュールを前記記憶部から読み出して実行することを特徴とする通信端末。
【請求項12】
前記処理部は、
システムに組み込まれて使用が開始されるタイミングで、前記ホストコンピュータから、前記指定情報と前記容量情報をダウンロードすることを特徴とする請求項11に記載の通信端末。
【請求項13】
前記処理部は、
前記ホストコンピュータから、携帯電話無線を介して、前記指定情報と前記容量情報をダウンロードすることを特徴とする請求項11に記載の通信端末。
【請求項14】
前記記憶部は、
メーカからの出荷時点のタイミングで、予め定められた種類の前記複数のソフトウェアモジュールを記憶することを特徴とする請求項11に記載の通信端末。
【請求項15】
局地的な通信により対象機器と通信を行うことを特徴とする請求項11に記載の通信端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム及び通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話無線を使用して通信を行う通信端末を考える。この通信端末は、携帯電話無線を使用して通信を行う機能と、局地的な通信を行う機能とを備えているものとする。局地的な通信としては、例えばEthernet(登録商標)通信、無線LAN通信、シリアル通信、Bluetooth(登録商標)通信、などがあげられる。
【0003】
この通信端末は、局地的な通信によって得られたデータを、携帯電話無線を通じて、相手側のコンピュータに送信することができる。また、携帯電話無線を通じた相手側のコンピュータとの通信内容に応じて、局地的な通信を行うことができる。
【0004】
局地的な通信や携帯電話無線を通じた通信の内容や方法は、この通信端末において動作しているソフトウェアによって決定される。このソフトウェアは複数のモジュールによって構成されており、これらのモジュールの一部を入れ替えることによって、異なる通信の内容や方法を採ることができるものとする。
【0005】
この通信端末は、携帯電話無線を利用して、これらのモジュールをダウンロードし、自身の記憶装置に書込むことができるものとする。すなわち、この通信端末は、携帯電話無線を通じてダウンロードしたデータによって自身のソフトウェアを書き換えることができる。
【0006】
このような通信端末は、ソフトウェアを入れ替えることによって挙動を変えることができるので、様々な用途に適用することができる。例えば、局地的な通信の相手に合わせるためにソフトウェアを入れ替えたり、携帯電話無線を通じて相手側のコンピュータに送るデータの形式や内容、タイミングなどに合わせるためにソフトウェアを入れ替えたり、といったことが考えられる。
【0007】
これに関連する技術として、例えば、特許文献1がある。特許文献1は、携帯電話のファームウェア更新に関する。電池を備えた携帯電話が、電池の残量が少なくなった時に、ファームウェア更新を中断する。サーバからファームウェアをダウンロードする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-72761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通信端末は、メーカから製品として出荷される時点で用途が決まっていることもある。そのような場合は出荷する時点でソフトウェアを決めておくこともできるが、様々な用途向けごとにソフトウェアの組み合わせを用意し、それらを管理し、出荷時に仕向け先ごとにソフトウェアを入れ替えるという運用では、管理上の手間が大きいという課題がある。
【0010】
この課題を解決するためのひとつの方法として、通信端末にインストールしておくソフトウェアを、用途や仕向け先を問わず統一しておき、実際にシステムに組み込まれてから最初に動作させられるときに、携帯電話無線を通じて適切なモジュールをダウンロードして自身のソフトウェアを書き換えるという動作が考えられる。
【0011】
しかし、この場合、複数の通信端末が同時にソフトウェアモジュールをダウンロードしようとして、このソフトウェアモジュールを記録しているサーバに対する通信が輻輳したり、携帯電話無線システムに対する負荷が大きくなったりすることが考えられる。
【0012】
また、携帯電話無線の場合、携帯電話キャリアとの契約によっては、当該ソフトウェアモジュールのダウンロードに伴う通信に対しても課金され、その費用が大きくなることがある、という課題が発生する。
【0013】
これらの課題への対策として、メーカからの出荷時点で通信端末に全てのソフトウェアモジュールを記録しておき、サーバからはどのソフトウェアモジュールを使用するかという情報だけをダウンロードするという方法が考えられる。
【0014】
どのソフトウェアモジュールを使用するかという情報は、例えばソフトウェアモジュールの名前だけが列挙されたデータなので、ソフトウェアモジュールそのものに比較すればデータのサイズが小さく、したがって通信の輻輳や携帯電話無線システムへの負荷を軽減することができる。
【0015】
しかし、一般に通信端末が持つ記憶装置の容量は限られており、したがってメーカからの出荷時点で記録しておくことができるソフトウェアモジュールの種類も制限される。このため前述したようなメーカからの出荷時点で全てのソフトウェアモジュールを記録しておくという方法は採用できない場合がある。
【0016】
特許文献1は、サーバからファームウェアをダウンロードすることを開示しているが、システムへの負荷及び通信端末の記憶装置の容量を軽減して通信を行うことについては考慮されていない。
【0017】
本発明の目的は、通信システムにおいて、システムへの負荷及び通信端末の記憶装置の容量を軽減して通信を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様の通信システムは、ホストコンピュータと、前記ホストコンピュータと通信する通信端末と、を有する通信システムであって、前記通信端末は、予め定められた種類の複数のソフトウェアモジュールを記憶する記憶部と、データを処理する処理部と、を有し、前記処理部は、前記ホストコンピュータから、前記複数のソフトウェアモジュールの内、実行すべきソフトウェアモジュールを指定する指定情報をダウンロードし、前記実行すべきソフトウェアモジュールの追加が必要な場合は、前記ホストコンピュータから、前記実行すべきソフトウェアモジュールが使用する前記記憶部の容量に関する容量情報をダウンロードし、前記実行すべきソフトウェアモジュールを記憶するために必要な空き容量が前記記憶部にある場合は、前記指定情報で指定されており、かつ前記記憶部に記憶されていない前記実行すべきソフトウェアモジュールを前記ホストコンピュータからダウンロードして前記記憶部に記憶し、前記実行すべきソフトウェアモジュールを記憶するために必要な空き容量が前記記憶部にない場合は、前記記憶部に予め記憶されており、かつ前記指定情報で指定されていない前記ソフトウェアモジュールを前記記憶部から消去し、前記実行すべきソフトウェアモジュールを前記記憶部から読み出して実行することを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様の通信システムは、複数の通信端末と、前記複数の通信端末の各々に接続された複数のホストコンピュータと、前記複数の通信端末の各々に接続された単一のメーカ側ホストコンピュータと、を有する通信システムであって、前記通信端末の各々は、予め定められた種類の複数のソフトウェアモジュールを記憶する記憶部を有し、起動時に前記メーカ側ホストコンピュータと通信を行い、前記通信端末の各々を識別する個体識別情報を前記メーカ側ホストコンピュータに送信し、前記メーカ側ホストコンピュータは、受信した前記個体識別情報に基づいて、前記通信端末の各々が実行すべきソフトウェアモジュールを指定する指定情報と、前記実行すべきソフトウェアモジュールが使用する前記記憶部の容量に関する容量情報とを生成し、前記通信端末の各々は、前記メーカ側ホストコンピュータから、前記指定情報をダウンロードし、前記実行すべきソフトウェアモジュールの追加が必要な場合は、前記メーカ側ホストコンピュータから、前記容量情報をダウンロードし、前記実行すべきソフトウェアモジュールを記憶するために必要な空き容量が前記記憶部にある場合は、前記指定情報で指定されており、かつ前記記憶部に記憶されていない前記実行すべきソフトウェアモジュールを前記メーカ側ホストコンピュータ又は前記ホストコンピュータからダウンロードして前記記憶部に記憶し、前記実行すべきソフトウェアモジュールを記憶するために必要な空き容量が前記記憶部にない場合は、前記記憶部に予め記憶されており、かつ前記指定情報で指定されていない前記ソフトウェアモジュールを前記記憶部から消去し、前記実行すべきソフトウェアモジュールを前記記憶部から読み出して実行することを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様の通信装置は、ホストコンピュータと通信する通信端末であって、予め定められた種類の複数のソフトウェアモジュールを記憶する記憶部と、データを処理する処理部と、を有し、前記処理部は、前記ホストコンピュータから、前記複数のソフトウェアモジュールの内、実行すべきソフトウェアモジュールを指定する指定情報をダウンロードし、前記実行すべきソフトウェアモジュールの追加が必要な場合は、前記ホストコンピュータから、前記実行すべきソフトウェアモジュールが使用する前記記憶部の容量に関する容量情報をダウンロードし、前記実行すべきソフトウェアモジュールを記憶するために必要な空き容量が前記記憶部にある場合は、前記指定情報で指定されており、かつ前記記憶部に記憶されていない前記実行すべきソフトウェアモジュールを前記ホストコンピュータからダウンロードして前記記憶部に記憶し、前記実行すべきソフトウェアモジュールを記憶するために必要な空き容量が前記記憶部にない場合は、前記記憶部に予め記憶されており、かつ前記指定情報で指定されていない前記ソフトウェアモジュールを前記記憶部から消去し、前記実行すべきソフトウェアモジュールを前記記憶部から読み出して実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、通信システムにおいて、システムへの負荷及び通信端末の記憶装置の容量を軽減して通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1の通信システムの構成を示すブロック図である。
図2】ソフトウェアの構成の例を示す図である。
図3】通信端末をメーカが出荷し実際に利用される際の模式図である。
図4】実施例2の通信システムの構成を示すブロック図である。
図5】実施例1の通信システムの動作を示すフローチャートである。
図6】実施例2の通信システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて実施例について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1を参照して、実施例1の通信システムの構成について説明する。
図1に示すように、通信端末101は、ホストコンピュータ102と通信する広域通信部107と、対象機器103と通信する局所通信部104と、データを記憶する記憶部106と、局所通信部104から得たデータ、広域通信部107から得たデータ及び記憶部106から読み出したデータを処理し、局所通信部104及び広域通信部107から適切なデータを送信するとともに、記憶部106に適切なデータを記録する処理部106を有する。処理部105が行う処理は、記憶部106に記録されているソフトウェアによって規定される。
【0025】
図2を参照して、ソフトウェアの構成の例について説明する。図2において、矢印はデータのやり取りを表す。
201、202、203、204は、通信端末101の記憶部106に記憶されており、処理部105によって読み出されて実行されるソフトウェアモジュールである。それぞれのソフトウェアモジュール201、202、203、204は、異なる機能を持っている。ここで、図2では、4つのモジュールを描画したが、実際には必ずしも4つに限られるものではない。
【0026】
また、図2では、それぞれのソフトウェアモジュールモジュール201、202、203、204の機能として、局所通信部104を用いた送受信、記憶部106の読み書き、広域通信部107を用いた送受信を挙げたが、必ずしもこれらの機能に限定されるものでもなく、また、必ずしもこれらの機能を全て備えるものでもない。
【0027】
図2において重要な点は、ソフトウェアが基本ソフトウェア205とソフトウェアモジュール201、202、203、204に分けられていることである。典型的な構成では、ソフトウェアモジュール201、202、203、204は複数存在する。基本ソフトウェア205は、ソフトウェアモジュール201、202、203、204に対して様々な機能を提供する。
【0028】
これらの機能の中には、局所通信部104を用いてデータを送受信する機能、広域通信部107を用いてデータを送受信する機能、記憶部106のデータを読み書きする機能などが含まれるが、これらに限らない。ソフトウェアモジュール201、202、203、204は、基本ソフトウェアに対して適切な方法でデータを送受信することによって、これらの機能を利用することができる。
【0029】
また、ソフトウェアモジュール201、202、203、204は、ソフトウェアモジュール201、202、203、204同士でデータをやり取りすることができる。このようなデータのやり取りは、それらのソフトウェアモジュール201、202、203、204の間であらかじめ定めておいた方法によって行われる。ソフトウェアモジュール201、202、203、204の中には、他のソフトウェア201、202、203、204とのデータのやり取りのみを行い、基本ソフトウェアが提供する機能を利用しないものもあり得る。また、基本ソフトウェアが提供する機能は、複数のソフトウェアモジュール201、202、203、204によって利用されてもよい。
【0030】
ここで、例えば、基本ソフトウェアが提供する局所通信部104を用いてデータを送受信する機能を利用するソフトウェアモジュール201、202、203、204は、局所通信部104を通じて対象機器103へデータを送信することがある。このデータは、例えば対象機器103に対する何らかの問い合わせであったり、対象機器103に何らかの動作をさせる指令であったりする。このような問い合わせや指令は、対象機器103の種類や仕様によって異なる。したがって、このようなソフトウェアモジュール201、202、203、204は、局所通信部104に接続されている対象機器103によって異なる動作をしなくてはならない。
【0031】
このように動作を変える手段のひとつとして、実行するソフトウェアモジュールそのものを変えるという方法が考えられる。このようにすることによって、それぞれのソフトウェアモジュールの機能を単純にすることができる。ソフトウェアモジュールそれ自体も通信端末101が持つ記憶部106に記録されたデータとして存在しているため、あまりにも多機能なソフトウェアモジュールはデータとしてのサイズも大きくなり、記憶部106の容量を圧迫してしまう。ソフトウェアモジュールの機能を単純にすることは、この弊害を抑制することができる。
【0032】
図5のフローチャートを参照して、実施例1の通信システムの動作について説明する。
ステップ501の開始ステップで、ホストコンピュータ102は常時稼働しており、いつでも動作できる状態とする。通信端末101は、電源がOFFされているなど、起動していない状態とする。ステップ502で、通信端末101が起動完了するまで待つ。
【0033】
ステップ503で、通信端末101が、ホストコンピュータ102から、必要なソフトウェアモジュールを指定する指定情報をダウンロードする。
【0034】
ステップ504で、通信端末101が、指定情報および自身が備える記憶部106に記録されているソフトウェアモジュールをもとに、ソフトウェアモジュールの追加が必要かどうか判定する。ソフトウェアモジュールの追加が必要ならばステップ505に、そうでなければステップ509に進む。ステップ505で、通信端末101が、ホストコンピュータ102から容量情報をダウンロードする。
【0035】
ステップ506で、通信端末101が、ステップ505でダウンロードした容量情報と、自身が備える記憶部106の空き容量とを参照し、記憶部106が十分空いているかどうかを判定する。十分空いているならばステップ507に、そうでなければステップ508に進む。
【0036】
ステップ507で、通信端末101が、ホストコンピュータ102から、指定情報によって指定されたソフトウェアモジュールをダウンロードし、自身が備える記憶部106に記憶する。
【0037】
ステップ508で、通信端末101が、自身が備える記憶部106に記録されており、かつ指定情報によって指定されていないソフトウェアモジュールを消去する。
【0038】
ステップ509で、通信端末101が、自身が備える記憶部106に記憶されており、かつ指定情報によって指定されたソフトウェアモジュールを実行する。ステップ510で、終了を終了する。
【0039】
図3は、通信端末をメーカが出荷し、実際に利用される際の模式図である。
図3において、301は、通信端末を製造、出荷するメーカである。302、306、310は、通信端末と通信を行うホストコンピュータである。303、307、311は、メーカ301によって製造、出荷される通信端末である。
【0040】
304、308、312は、通信端末と通信を行う対象機器である。305、309、313は、通信端末、ホストコンピュータ、対象機器によって構成されるシステムである。
【0041】
通信端末303、307、311は各出荷先においてそれぞれのホストコンピュータ302、306、310および対象機器304、308、312と通信することでシステムを構成する。図3では便宜上3つの出荷先を考え、それぞれシステム1(305)、システム2(309)、システム3(313)とする。
【0042】
システム1(305)、システム2(309)、システム3(313)は、いずれも通信端末、ホストコンピュータ、対象機器によって構成されるという点は同じであるが、システムの動作や通信の内容などは必ずしも同じではない。例えば、通信端末と対象機器が通信に使用する手段や方式、通信の内容や頻度などはそれぞれ異なっている。通信端末とホストコンピュータの通信も同様である。
【0043】
したがって、たとえ通信端末1(303)、通信端末2(307)、通信端末3(311)のハードウェアが同一であったとしても、それらの通信端末の記憶部106に記録され、処理部105によって実行されるソフトウェアモジュールが互いに異なるため、通信端末1(303)、通信端末2(307)、通信端末3(311)は互いに異なる機能を持つことになる。
【実施例2】
【0044】
図3に示すように、多くの場合、それぞれのシステムごとに利用される対象機器は異なる。したがって、局所通信の手順や通信の内容なども異なる。また、ホストコンピュータの仕様もシステムごとに異なることが考えられる。さらに、対象機器やホストコンピュータとデータをやり取りする契機、通信端末自身の記憶部に記録するデータの内容、ホストコンピュータや対象機器から得たデータに何らかの演算を行うかどうか、行う場合はその内容なども異なる。
【0045】
これに対応するための方法としては、図2に示したソフトウェアモジュールをそれぞれのシステムに合わせて入れ替えることが考えられる。しかし、メーカから出荷する時点でそれぞれのシステム向けにファームウェアであるソフトウェアモジュールを変更して出荷することは、出荷した通信端末のトレーサビリティの確保やバージョン管理などの面において手間が大きい。そこで、実施例2では、図4に示すように、メーカ側ホストコンピュータ401を導入する。
【0046】
図4を参照して、実施例2の通信システムの構成について説明する。
図4に示す実施例2の通信システムの構成が、図3に示す実施例1の通信システムの構成と異なる点は、各通信端末がメーカ側ホストコンピュータ401と広域通信機能を用いて通信する点である。その他の構成は、図3に示す実施例1の通信システムの構成と同じなのでその説明は省略する。
【0047】
図4では、メーカ側ホストコンピュータ401を全てのシステムで共通としたが、必ずしも共通でなくてもよく、あるシステムに対しては独立したメーカ側ホストコンピュータを用意してもよい。
【0048】
また、図4ではホストコンピュータとメーカ側ホストコンピュータ401とを別のコンピュータとして描画したが、メーカ側ホストコンピュータ401の機能をホストコンピュータに組み入れても良い。
【0049】
図4のシステムにおいて、各通信端末は、その起動時に、メーカ側ホストコンピュータ401と通信を行い、自身の個体を識別する情報を送信する。メーカ側ホストコンピュータ401は、受信した通信端末の個体識別情報から、その通信端末が実行すべきソフトウェアモジュールと、その通信端末がその記憶部106に記憶しておくべきソフトウェアモジュールとを特定する。
【0050】
メーカ側ホストコンピュータ401は、特定したソフトウェアモジュールについて、各ソフトウェアモジュールを特定する情報を、その通信端末に対して送信する。
【0051】
通信端末は、受信した情報に基づいて自身の記憶部106を照査し、記録しておくべきソフトウェアモジュールでないソフトウェアモジュールがあった場合には、そのソフトウェアモジュールを消去する。
【0052】
さらに、その記憶部106に記憶しておくべきソフトウェアモジュールが記憶されていない場合、そのソフトウェアモジュールをメーカ側ホストコンピュータ401からダウンロードして記憶部106に記憶する。その上で、通信端末は、メーカ側ホストコンピュータ401によって特定された、実行すべきソフトウェアモジュールの実行を開始する。このようにすることによって、メーカは、出荷時点で通信端末にシステムに合わせて異なるソフトウェアを記憶する必要がなくなる。
【0053】
図6のフローチャートを参照して、実施例2の通信システムの動作について説明する。
図6のフローチャートは、図5のフローチャートに新たにステップ601が追加され、ホストコンピュータがホストコンピュータ102からメーカ側ホストコンピュータ401に変更されている点以外は、図5のフローチャートと同じなのでその説明は省略する。
【0054】
新たに追加されたステップ601について説明する。新たに追加されたステップ601では、通信端末が、メーカ側ホストコンピュータ401に対して、通信端末自身の個体を識別する情報(個体識別情報)を送信する。
【0055】
個体識別情報としては、例えば、通信端末自身の製造番号などが挙げられる。メーカ側ホストコンピュータ401は、この個体識別情報を用いて、その通信端末の個体に特有の指定情報と容量情報を用意することができる。
【0056】
上記実施例によれば、通信端末には出荷時点でいかなるソフトウェアを記憶しても、各システムに適したソフトを自動的に実行できる。
【0057】
したがって、例えばロットごとに出荷時点のソフトウェアを変えても、システムの運用上は差し支えなくなる。このとき、出荷時点のソフトウェアに対する考え方としては、使用時にメーカ側ホストコンピュータからダウンロードするデータ量がなるべく少なくなるようにすることが望ましい。
【0058】
例えば、通信端末のあるロットは、大部分が特定のシステムに利用されるということが分かっている場合には、そのシステムに利用されるソフトウェアモジュールを出荷時点で記憶しておくということが考えられる。あるいは、サイズが大きく、かつ多く利用されることが見込まれるソフトウェアモジュールが開発された場合には、あるロットからそのソフトウェアモジュールを出荷時点で記憶しておくという方法も考えられる。
【0059】
上記実施例によれば、通信システムにおいて、システムへの負荷及び通信端末の記憶装置の容量を軽減して通信を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
101 通信端末
102 ホストコンピュータ
103 対象機器
104 局所通信部
105 処理部
106 記憶部
107 広域通信部
302 ホストコンピュータ
306 ホストコンピュータ
310 ホストコンピュータ
303 通信端末
307 通信端末
311 通信端末
304 対象機器
308 対象機器
312 対象機器
401 メーカ側ホストコンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6