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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 21/08 20060101AFI20231026BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20231026BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20231026BHJP
   B62J 45/422 20200101ALI20231026BHJP
【FI】
B62K21/08
B60T7/12 B
B62J45/00
B62J45/422
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021157850
(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公開番号】P2023048501
(43)【公開日】2023-04-07
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小河原 充史
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/059856(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/060039(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/168422(WO,A1)
【文献】特開2007-76634(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0139457(KR,A)
【文献】特開2009-248909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 21/08
B60T 7/12
B62J 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を制御する制御装置(30)と、
前記車両の振動を検出する振動検出部(39)と、
を有する鞍乗り型車両において、
前記制御装置(30)は、
前記振動検出部(39)によって検出された車幅方向の振動の振幅が、予め定められた第1閾値以上になった場合に、
前記車両の車速を低下させる制御をおこない、
且つ、
ステアリングダンパー(42)の減衰力を弱くする制御をおこなう
ことを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記車幅方向の振動が、ウィーブモードの振動であることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記振動検出部(39)は、
前記車両に生じるウォブルモードの振動と、前記ウィーブモードの振動とを検出し、
前記制御装置(30)は、
前記ウォブルモードの振動の前記車幅方向の振幅よりも前記ウィーブモードの振動の前記車幅方向の振幅が大きくなった場合に、
前記車速を低下させる制御をおこない、
且つ、
前記ステアリングダンパー(42)の前記減衰力を弱くする制御をおこなう
ことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記制御装置(30)は、前記車速が時速100キロメートル以上であり、かつ、前記ウィーブモードの振動が検出された場合に、
前記車速を低下させる制御をおこない、
且つ、
前記ステアリングダンパー(42)の減衰力を弱くする制御をおこなう
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
ハンドルの振動を検出するハンドル振動検出部(44)と、
少なくとも横方向の加速度を測定する測定装置(32)と
を有し、
前記制御装置(30)は、
前記ハンドル振動検出部(44)で検出された振動のハンドル振動位相と、前記測定装置(32)で測定された振動の車体振動位相とを比較する位相比較部(145)を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記制御装置(30)は、前記ハンドル振動位相と前記車体振動位相の差が予め定められた所定の第2閾値以上になった場合に、
前記車速を低下させる制御をおこない、
且つ、
前記ステアリングダンパー(42)の前記減衰力を弱くする制御をおこなう
ことを特徴とする請求項5に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗り型車両に生じるウォブル振動とウィーブ振動を減衰させるために、電子調節型ステアリングダンパーを制御する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010/269789号公報
【文献】特開2018-167798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ウィーブ振動が生じた場合に後輪が車幅方向に振られることに対して、車両の車速を制御して安全を確保する技術は開示されていない。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、車幅方向の振動を検出した場合に、車両姿勢を安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一の態様は、車両を制御する制御装置と、前記車両の振動を検出する振動検出部と、を有する鞍乗り型車両であって、前記制御装置は、前記振動検出部によって検出された車幅方向の振動の振幅が、予め定められた閾値以上になった場合に、前記車両の車速を低下させる制御をおこない、且つ、ステアリングダンパーの減衰力を弱くする制御をおこなう。
【発明の効果】
【0006】
車幅方向の振動を検出した場合に、車両姿勢を安定させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】鞍乗り型車両の右側面図である。
図2】実施形態に係る鞍乗り型車両の構成を説明するブロック図である。
図3】車両制御についてのフローチャートである。
図4】他の実施形態1に係る鞍乗り型車両における車両制御についてのフローチャートである。
図5】他の実施形態2に係る鞍乗り型車両の構成を説明するブロック図である。
図6】異なる振動モードの位相差に基づいた車両制御についてのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0013】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、内燃機関である。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダー部24とを備える。シリンダー部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0014】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、車体フレーム11に支持される。
【0015】
鞍乗り型車両10は、車両の制御をおこなう制御装置であるECU(Electronic Control Unit)30を有する。ECU30は、シート17の下方に設けられる。ECU30は、CAN(Cotrol Area Network)バスと呼ばれる通信網(不図示)を通じて、後述するIMU32等の各種センサや他のコントロールユニットと相互に通信をおこない、パワーユニット12等の装置を制御する。具体的には、例えば鞍乗り型車両10の乗員がアクセルをどの程度回転させたかに基づいて、ECU30はスロットル開度、燃料の噴射量、燃料の噴射時期、及び、点火タイミング等を制御する。パワーユニット12は電池駆動のモーター等であってもよい。
【0016】
鞍乗り型車両10は、車両のロール角、ヨー角、及び、ピッチ角の角速度、並びに、上下方向、左右方向、及び、前後方向の加速度を測定する測定装置であるIMU(Inertial Measurement Unit)32を有する。IMU32は、車両の振動を検出する振動検出部39として機能する。具体的には、IMU32で測定された角速度、及び、加速度等の車両情報はECU30に送信される。CPU40は、車両情報に含まれる車両のロール角、及び、ヨー角の角速度変化、並びに、車速データを用いて車体振動を計算する。ここで、車体振動は、例えば車両の前後方向、左右方向(横方向)、及び、上下方向にベクトル分解され計算される。鞍乗り型車両10が高速で走行中に生じるウィーブモードの振動を、CPU40は、車体振動に基づいて計算する。
【0017】
鞍乗り型車両10は、車両の振動を検出する振動検出部39を備える。振動検出部39は、ハンドル21の振動を検出するハンドル振動検出部44、及び、IMU32を有する。なお、本明細書では、IMU32を振動検出部39の一部として説明する(図2参照)。IMU32によって得られるデータの少なくとも一部は、車両の振動検出に用いられる。
【0018】
鞍乗り型車両10は、乗員が操舵をおこなうハンドル(ステアリング)21近傍に、ハンドルの不要な振動を抑制するステアリングダンパー42を備える。ステアリングダンパー42は、ECU30によって減衰力が 制御される。この制御について具体的には、特許文献2にも示されているように、例えばステアリングダンパー42に備えられた油路のバルブがECU30によって制御されることで、ステアリングダンパー42の減衰力が制御される。
【0019】
ハンドル21近傍には、ハンドル21の振動を検出するハンドル振動検出部44が設けられている。ハンドル振動検出部44で検出された振動についての信号は、ECU30に送信され解析される。
【0020】
鞍乗り型車両10は、車速を測定する車速測定部55をさらに備える。
【0021】
また鞍乗り型車両10は、前輪13には前輪13を制動する前輪ブレーキ(不図示)を有し、後輪15には、後輪15を制動する制動装置34を有する。制動装置34は、複数のブレーキパッド36がブレーキディスク38を車幅方向に押圧することで生じる摩擦力によって制動をおこなう。制動装置34は、乗員がブレーキレバーを操作することでその制動力を増減されるとともに、後述するようにECU30の制動力制御部47によっても制動力が制御される。
【0022】
なお、図1から図6は発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。なお、各図において一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、部材の大きさ、形状、厚みなどを適宜誇張して表現する。
【0023】
ECU30は、CPU40(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などを備え、各種制御を実行する。CPUは、中央演算処理装置であり、各種プログラムを実行することで様々な機能を実現する。RAMはCPUの作業領域、記憶領域として使用され、ROMはCPUで実行されるオペレーティングシステムやプログラムを記憶する。
【0024】
図2は、本実施形態に係る鞍乗り型車両10の構成を説明するブロック図である。ECU30は、CPU40と他の装置との間でデータの受け渡しを行うインターフェース回路を含むデータ取得部51と、データを記憶する記憶部53を有する。記憶部53が備える記憶装置は、たとえばSSD(Solid State Device)であってよい。CPU40は、記憶部53に記憶されたプログラムを実行することで、データを演算する演算部41と、データについて予め定められた判断を行う判定部43の機能を実現する。CPU40は、後輪15を制動する制動装置34を制御して当該後輪15の制動力を制御する制動力制御部47の機能を実現する。また、CPU40は、車速測定部55と、IMU32からデータを取得し、当該データに基づいてステアリングダンパー42を制御するステアリングダンパー制御部49の機能を実現する。
【0025】
鞍乗り型車両10は、複数のモードの振動現象を生じる。本明細書では、車速が時速60キロメートルから時速80キロメートルとなった際に現れるウォブルモードの振動、及び、車速が時速100キロメートル以上となった際に現れるウィーブモードの振動に対する制御を説明する。ウォブルモードの振動の周波数は、車速や車種によっても異なるが、6Hzから10Hz程度であり、ハンドル軸周りが主に振動する振動モードである。ウィーブモードの振動の周波数は1Hzから5Hzであり、車両のヨー軸とロール軸周りの回転振動が合成された振動モードである。
【0026】
図3は、本実施形態に係る鞍乗り型車両10における車両制御についてのフローチャートである。まず振動検出部39が鞍乗り型車両10の振動を検出する(ステップSA1)。本実施形態において、振動検出部39は、ハンドル振動検出部44、及び、IMU32を含む。振動検出部39で検出された振動についての信号は、CANバスを介してECU30に送信され、CPU40の演算部41が振動の振幅を計算する(ステップSA2)。具体的には、演算部41は、車両の左右方向、換言すれば、車幅方向の振動を計算する。演算部41は、記憶部53に予め定められ記憶された第1閾値と、車幅方向の振動の振幅とを比較する。そして車幅方向の振幅が第1閾値以上かどうかを、判定部43が判定する(ステップSA3)。車幅方向の振幅が第1閾値以上である場合(ステップSA3:YES)、ECU30は、車速を低下させる制御をおこなう(ステップSA4)。具体的には、制動力制御部47が後輪15の制動装置34を制御して制動力を増大させて、車速を低下させる。そしてステアリングダンパー制御部49は、ステアリングダンパー42の減衰力を弱くする制御をおこなう(ステップSA5)。なお車幅方向の振動は、ウィーブモードの振動であってよい。
【0027】
車速を低下させる制御として、ECU30がスロットルの開度を少なくすることでエンジンの回転数を低下させる制御をおこなうことも考えられる。エンジンの回転数を低下させる制御は、上記の制動力制御部47による制動装置34の制動力を増大させる制御とともにおこなわれてもよい。もちろん急激な車速の低下を避けるために、音声やランプ点滅による警告を出して、乗員に対して手動による車速の低下を促すことも考えられる。
【0028】
[実施の形態2]
図4は、実施の形態2に係る鞍乗り型車両10における車両制御についてのフローチャートである。本実施の形態2に係る鞍乗り型車両10の構成は、上述の実施の形態(以下、実施の形態1と呼ぶ)の構成と同様なので詳細な記載を省略する。実施の形態2では、ウィーブモードの振動とウォブルモードの振動とを比較して、ウィーブモードの振動が優位になった場合に車速を低下させる等の制御をおこなう。このとき鞍乗り型車両10は、車両の所定の軸に対する角速度、及び、所定の方向の加速度を検出するIMU(測定装置)を有する。具体的な手順は次のとおりである。
【0029】
ハンドル振動検出部44が、ハンドル21の振動を検出する(ステップSB1)。IMU(測定装置)32が、車両情報を測定する(ステップSB2)。ここで車両情報には車両のロール角、及び、ヨー角の角速度変化、並びに、車速のデータが含まれる。演算部41が、車両情報から車体振動を計算する(ステップSB3)。演算部41が、ハンドル振動と車体振動を弁別する(ステップSB4)。ハンドル振動として検出される振動は、ステアリング軸の回転方向の振動であるが、その振動は当然車両全体に影響を及ぼす。そのため、ハンドル振動は車体振動にも影響を与える。同様に車体振動は、ハンドル振動に影響を与える。振動検出部39が検出した2つの振動を比較演算することで、ハンドル振動と車体振動を弁別することができる。ハンドル振動は主にウォブルモードの振動であり、車体振動は主にウィーブモードの振動である。
【0030】
次に演算部41は、車幅方向についてハンドル振動の振幅と車体振動の振幅を計算する(ステップSB5)。そして判定部43は、ウィーブモードの振動がウォブルモードの振動より振幅より大きいかどうかを判定する(ステップSB6)。ウィーブモードの振動がウォブルモードの振動より振幅より大きい場合(ステップSB6:YES)、ECU30は車速を低下させる制御をおこなう(ステップSB7)。具体的には、制動力制御部47が後輪15の制動装置34を制御して制動力を増大させて、車速を低下させる。ステアリングダンパー制御部49は、ステアリングダンパー42の減衰力を弱くする制御をおこなう(ステップSB8)。ウィーブモードの振動がウォブルモードの振動より振幅以下の場合(ステップSB6:NO)、ステップSB1に戻る。
【0031】
本実施の形態ではウィーブモードの振動の大きさとウォブルモードの振動の大きさを比較する際に、振幅の大きさを基準としたが、変形実施例としては、単位時間当たりの振動のエネルギーを基準としてもよい。
【0032】
他の変形実施例として、鞍乗り型車両10のECU(制御装置)30は、車速測定部55によって測定された車速が時速100キロメートル以上であり、かつ、ウィーブモードの振動が振動検出部39によって検出された場合に、車速を低下させる制御をおこない、且つ、ステアリングダンパー42の減衰力を弱くする制御をおこなってもよい。
【0033】
[実施の形態3]
図5は、実施の形態3に係る鞍乗り型車両10の構成を説明するブロック図である。本実施の形態3の構成は、実施の形態1の構成を説明したブロック図(図2参照)とは、複数のモードの振動についての位相を比較する位相比較部145を有する点が異なる。具体的には、CPU40は、振動検出部39から取得されたデータに基づいて、ウィーブモードの振動の位相と、ウォブルモードの振動の位相とを比較する位相比較部145の機能を実現する。
他の構成は実施の形態1の構成と同様なので、詳細な説明を省略する。
【0034】
図6は、実施の形態3に係る鞍乗り型車両10における車両制御についてのフローチャートである。本実施形態においては、ハンドル振動の位相と車体振動の位相とを比較して、位相差が大きくなった場合に車速を低下させる等の制御をおこなう。このとき鞍乗り型車両10は、車両の所定の軸に対する角速度、及び、所定の方向の加速度を検出するIMU(測定装置)を有する。具体的な手順は次のとおりである。
【0035】
ハンドル振動検出部44が、ハンドル振動を検出する(ステップSC1)。IMU(測定装置)32が車両情報を測定する(ステップSC2)。ここで、車両情報には車両のロール角、及び、ヨー角の角速度変化、並びに、車速が含まれる。演算部41が、車両情報から車体振動を計算する(ステップSC3)。次に、演算部41が、ハンドル振動の位相、及び、車体振動の位相を計算する(ステップSC4)。そして判定部43が、ハンドル振動の位相と車体振動の位相との差が、予め定められ記憶部53に記憶されている第2閾値より大きいかどうかを判定する(ステップSC5)。ハンドル振動の位相と車体振動の位相との差が、第2閾値より大きい場合(SC5:YES)、ECU30は、車速を低下させる制御をおこなう(ステップSC6)。具体的には、制動力制御部47が、後輪15の制動装置34を制御して制動力を増大させて、車速を低下させる。ステアリングダンパー制御部49は、ステアリングダンパー42の減衰力を弱くする制御をおこなう(ステップSC7)。ハンドル振動の位相と車体振動の位相の差が、第2閾値以下の場合(SC5:NO)、ステップSC1に戻る。
【0036】
上記、実施の形態1と、実施の形態2と、実施の形態3は、このいずれか複数の形態を組み合わせて実施されてよい。すなわち振動の振幅と振動の位相差のいずれかが条件を満たす場合に、鞍乗り型車両10においてECU30は、車速を低下させる制御等をおこなって車両姿勢の安定化を図る制御をおこなってよい。また、鞍乗り型車両10の走行環境を判断材料に入れる制御をECU30がおこなってもよい。具体的には、鞍乗り型車両10に後続車両が近接していることをLiDAR(Light Detection And Ranging)等の検出技術で捉えた場合に、車速の急激な低下をさせない等の安全措置をともなう制御をおこなってよい。また、振動に対して乗員がブレーキレバーを操作した場合に、過度な制動力が生じないように、ECU30が、車速を低下させる制御を控える等の措置を行うことも考えられる。具体的には、乗員のブレーキレバー操作による車速低下とそれぞれの実施形態に記載された車速を低下させる制御が略同時に行われる可能性がある場合であって、急激な車速低下が生じると判定部43が判定した場合には、制動力制御部47による制動装置34の制動力の増大幅を小さくするといったことが考えられる。
【0037】
(上記実施の形態によりサポートされる構成)
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
(構成1)車両を制御する制御装置と、前記車両の振動を検出する振動検出部と、を有する鞍乗り型車両において、前記制御装置は、前記振動検出部によって検出された車幅方向の振動が、予め定められた第1閾値以上になった場合に、前記車両の車速を低下させる制御をおこない、且つ、ステアリングダンパーの減衰力を弱くする制御をおこなうことを特徴とする鞍乗り型車両。
このような構成によれば、前輪のステアリングが過度に固定されないため、後輪だけが横振れをする状態を避けやすくなる。このため車両姿勢の安定が確保しやすくなるという効果を奏する。
【0038】
(構成2)前記車幅方向の振動が、ウィーブモードの振動であることを特徴とする構成1に記載の鞍乗り型車両。
このような構成によれば、高速時に現れるウィーブモードの振動に対して乗員が対処しやすくなる。このため安全な走行状態が確保しやすくなるという効果を奏する。
【0039】
(構成3)前記振動検出部は、前記車両に生じるウォブルモードの振動と、前記ウィーブモードの振動とを検出し、前記制御装置は、前記ウォブルモードの振動の前記車幅方向の振幅よりも前記ウィーブモードの振動の前記車幅方向の振幅が大きくなった場合に、前記車速を低下させる制御をおこない、且つ、前記ステアリングダンパーの前記減衰力を弱くする制御をおこなうことを特徴とする構成2に記載の鞍乗り型車両。
このような構成によれば、車両の中高速走行時に生じるウォブルモードの振動の振幅を、高速走行時に生じるウィーブモードの振動の振幅が上回った場合に安全な走行状態が確保しやすくなるという効果を奏する。
【0040】
(構成4)前記制御装置は、前記車速が時速100キロメートル以上であり、かつ、前記ウィーブモードの振動が検出された場合に、前記車速を低下させる制御をおこない、且つ、前記ステアリングダンパーの減衰力を弱くする制御をおこなうことを特徴とする構成2または構成3に記載の鞍乗り型車両。
このような構成によれば、時速100キロメートル以上でウィーブモードの振動が顕著に現れるため、その際、確実に振動の抑制ができる。高速走行時における車幅方向の振動が生じた場合に車速を低下させることができ、且つ、前輪側が過度に固定された状態で後輪が左右方向に振られる現象が生じ難くなる。このため安全な走行状態が確保しやすくなるという効果を奏する。
【0041】
(構成5)ハンドルの振動を検出するハンドル振動検出部と、少なくとも横方向の加速度を測定する測定装置とを有し、前記制御装置は、前記ハンドル振動検出部で検出された振動のハンドル振動位相と、前記測定装置で測定された振動の車体振動位相とを比較する位相比較部を有することを特徴とする構成1から構成4のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
このような構成によれば、ハンドル振動と車体の振動の位相差を検知することで、より正確にウィーブモードの振動を検出できる。
【0042】
(構成6)前記制御装置は、前記ハンドル振動位相と前記車体振動位相の差が、予め定められた所定の第2閾値以上になった場合に、前記車速を低下させる制御をおこない、且つ、前記ステアリングダンパーの前記減衰力を弱くする制御をおこなうことを特徴とする構成5に記載の鞍乗り型車両。
このような構成によれば、ハンドル振動と車体の振動の位相差を検知することで、より正確にウィーブモードの振動を検出でき、車速を低下させることができる。このため安全な走行状態が確保しやすくなるという効果を奏する。
【0043】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0044】
10 鞍乗り型車両
30 ECU(制御装置)
32 IMU(測定装置)
39 振動検出部
42 ステアリングダンパー
44 ハンドル振動検出部
145 位相比較部
図1
図2
図3
図4
図5
図6