(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 209/72 20060101AFI20231026BHJP
C07C 211/18 20060101ALI20231026BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231026BHJP
【FI】
C07C209/72
C07C211/18
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021516836
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2020046785
(87)【国際公開番号】W WO2021131912
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-03-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2019239639
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 恵美
(72)【発明者】
【氏名】井比 幸也
(72)【発明者】
【氏名】熊野 達之
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】冨永 保
【審判官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-143514(JP,A)
【文献】特開昭51-74997(JP,A)
【文献】特開平7-227542(JP,A)
【文献】特開2004-107327(JP,A)
【文献】特開昭55-104236(JP,A)
【文献】特開昭50-126638(JP,A)
【文献】特開2022-40373(JP,A)
【文献】有機合成化学会誌、(1956)、第14巻、第3号、第125~136頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,B01J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒及び触媒存在下、
メタキシリレンジアミンを
固定床反応器で水素化して
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを製造する方法であって、
前記溶媒が、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンであり、
前記触媒が、ルテニウム含有触媒であり、
使用により活性が低下した触媒を以下の工程(1)及び工程(2)を含む触媒再生処理工程にて処理した後に反応系にて再使用
し、前記触媒再生処理工程を前記固定床反応器で行う、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法。
工程(1):工程(2)前
に、洗浄液として、水、炭素数5以上15以下の脂肪族炭化水素、炭素数6以上15以下の芳香族炭化水素、炭素数3以上15以下のケトン及び炭素数1以上15以下のアルコールからなる群から選択される少なくとも1種を用いて、洗浄後の洗浄液中の
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量
が20質量%以下に
なるまで前記触媒を洗浄処理する。
工程(2):触媒を、100~500℃に加熱して、水素含有ガスに接触させる。
【請求項2】
前記工程(2)が、以下の(2-1)及び(2-2)の工程を含む、請求項
1に記載の
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法。
(2-1)前記触媒を、100~200℃の範囲であり、かつ平均温度が180℃以下の温度において、水素含有ガスに接触させる工程。
(2-2)前記工程(2-1)において接触処理した触媒を、200℃超~500℃の範囲の温度で水素含有ガスにさらに接触させる工程。
【請求項3】
前記工程(2)の水素含有ガスとの接触を、触媒の温度の上昇速度が40℃/分以下となる条件にて行う、請求項1
又は2に記載の
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法。
【請求項4】
前記工程(2)において、触媒の温度の上昇速度が40℃/分以下となるように、水素含有ガスの供給速度を制御する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法。
【請求項5】
前記工程(2)における水素含有ガス供給速度が、0℃、1気圧の標準状態で、触媒1kgあたり0.001~1000L/hである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の原料として、工業的に重要な化合物である。ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、例えば、キシリレンジアミンの接触水素化処理によって得ることができる。特許文献1には、ルテニウム触媒とアルキルアミン類及びアルキレンジアミン類から選ばれた溶媒を用いて接触水素化をすることにより、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを製造する方法が記載されている。
【0003】
特許文献2は、芳香族ジニトリルであるジシアノベンゼンの水素添加に使用された触媒の再生処理に関する。具体的には、液相でジシアノベンゼンの水素添加に使用された触媒(ニッケル触媒)を、200~500℃の温度範囲で水素含有ガスに接触させることにより再生し得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3974198号
【文献】特開2004-107327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造においても、特許文献2と同様に、使用に伴い次第に触媒活性が低下し、満足な収率が得られなくなるという問題が存在する。
ところが、特許文献2に開示される再生方法によりキシリレンジアミンの水素添加に使用される触媒を処理しても、触媒再生を十分に行うことができないという問題が生じた。この問題を検討したところ、キシリレンジアミンの水素添加に使用される触媒を水素含有ガスで再生しようとした際に、生じる析出物によって、以下の問題を生じることを見出した。例えば、固定床形式の反応装置においては、析出物により製造ライン上の熱交換器やフィルタ等に不具合を生じて、運転の継続が不可能となる。さらに触媒上に析出物が生じることもあり、該析出物が触媒再生を阻害する問題もある。特許文献1には、反応に使用した触媒の再生についての開示が記載されていない。
【0006】
本発明は、キシリレンジアミンの水素化反応によるビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造において、反応により活性が低下した触媒を再生し、触媒として再使用することが可能である、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は鋭意検討の結果、水素含有ガスによる触媒再生において、水素含有ガスとの接触工程前の液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量を特定量に維持することにより、上記課題を解決することができることを見出した。すなわち、本発明は以下に関する。
【0008】
溶媒及び触媒存在下、キシリレンジアミンを水素化してビス(アミノメチル)シクロヘキサンを製造する方法であって、使用により活性が低下した触媒を以下の工程(1)及び工程(2)を含む触媒再生処理工程にて処理した後に反応系にて再使用する、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法。
工程(1):工程(2)前の液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量を20質量%以下に維持する。
工程(2):触媒を、100~500℃に加熱して、水素含有ガスに接触させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キシリレンジアミンの水素化によるビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造においても、使用により活性が低下した触媒を再生処理することができる、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法を提供することができる。本発明の製造方法によれば、触媒能を回復させて再使用を可能にすると共に、触媒再生時の製造装置への固体成分の析出等を防ぐことが可能である。そのため、製造中における装置制御不能や触媒劣化を回避することが可能であり、安全かつ効率的にビス(アミノメチル)シクロヘキサンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、溶媒及び触媒存在下、キシリレンジアミンを水素化してビス(アミノメチル)シクロヘキサンを製造する方法であって、使用により活性が低下した触媒を以下の工程(1)及び工程(2)を含む触媒再生処理工程にて処理した後に反応系にて再使用する、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法に関する。
工程(1):工程(2)前の液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量を20質量%以下に維持する。
工程(2):触媒を、100~500℃に加熱して、水素含有ガスに接触させる。
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。本明細書において、「XX~YY」の記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
【0012】
<ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造>
ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、例えばアルキルアミン類及びアルキレンジアミン類からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を用い、キシリレンジアミンを触媒の存在下に水素化して製造する。
【0013】
1.キシリレンジアミン
原料物質であるキシリレンジアミンには、オルト、メタ、パラの3種の異性体が存在し、これらの単独又は混合物のいずれも原料物質とすることができる。本実施形態においては、メタ異性体及びパラ異性体から選択される少なくとも1種を原料として用いることが好ましく、メタ異性体を原料として用いることがより好ましい。
【0014】
2.溶媒
本実施形態のビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造においては、アルキルアミン類及びアルキレンジアミン類からなる群から選択される少なくとも1種を溶媒として使用することが好ましい。
本実施形態においては、循環使用することが可能な溶媒の選択が好ましい。例えば、反応生成物から蒸留分離して循環使用することが可能な溶媒や、アルキレンジアミン類溶媒としてビス(アミノメチル)シクロヘキサンを選択することが好ましい。ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは後述する通り、蒸留分離をする必要がないという利点を有する。具体的には、常温で液体である、炭素数が1~18のアルキルアミン類及びアルキレンジアミン類からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を用いることが、副生物の生成抑制と目的物の収率増加上、有効である。
【0015】
具体的なアルキルアミン類としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン及び2-エチルヘキシルアミン等を挙げることができる。具体的なアルキレンジアミン類としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4-ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン又はビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
これらの中でも、特にビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、キシリレンジアミンの水素化により得られる生成物も溶媒として循環使用することができ、かつ後工程で溶媒除去等の必要がないため、プロセス上有利である。溶媒として使用するビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、生成物であるビス(アミノメチル)シクロヘキサンと同じ異性体であることが好ましい。例えば、生成物が1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンである場合、溶媒として使用するビス(アミノメチル)シクロヘキサンは1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンであることが好ましい。
【0016】
溶媒としては、上記した通り、アルキルアミン類及びアルキレンジアミン類からなる群から選択される少なくとも1種を使用することを要するが、単独溶媒でも混合物であってもよい。アルキルアミン類及びアルキレンジアミン類からなる群から選択される少なくとも1種と、他の有機溶媒との混合物を使用することもできる。
混合される他の有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール等のアルコール類が用いられる。
【0017】
原料のキシリレンジアミンと、溶媒との重量比(キシリレンジアミン:溶媒)は、好ましくは1:100~1:1、より好ましくは1:80~1:3、さらに好ましくは1:50~1:10である。溶媒として混合溶媒を用いる場合には、混合溶媒の総重量が上記重量比の範囲内を満たすものとする。
【0018】
3.触媒
本実施形態のビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造において使用される触媒は限定されず、公知の担持及び非担持金属触媒及びラネー触媒等を挙げることができる。中でも、活性金属成分としてルテニウム、ロジウム、ニッケル、コバルト、パラジウム及び白金からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する触媒が好ましく、中でもルテニウム含有触媒が好ましい。
担持触媒の場合、担体としては、アルミナ、シリカ、珪藻土、カーボン、チタニア、ジルコニア等が挙げられる。触媒は必要に応じてLi,Na,K,Rb,Cs,Be,Ca,Ba,Ti,Cu,Cr,Zn,Mn,Mg,Fe,Ga,Ge,Nb,Ir,Pt,Bi,Al,Si,In,Sr,Ce及びMoからなる群から選択される少なくとも1種の成分を添加して変性されていてもよい。
【0019】
ルテニウム含有触媒の原料には、金属ルテニウム、酸化ルテニウム、水酸化ルテニウム等が挙げられ、アルミナ、硅藻土、カーボン等に担持した形で使用することが好ましい。
ルテニウム含有触媒の担持量は、触媒の種類、形状、ルテニウム原料の種類、反応温度、水素供給量等によって適宜選択する。例えば、アルミナ担体を用いる場合には、1mmφ~2mmφの破砕粒アルミナに、ルテニウムを2質量%程度担持させたものを用いることができる。
これらの中でも、ルテニウム含有触媒としてはルテニウム担持アルミナ触媒が好ましい。
【0020】
水素化反応に際し、反応促進や収率向上等の目的で添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物やアルコラート等が挙げられ、具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0021】
4.キシリレンジアミンの水素化
水素化反応の形式は固定床、懸濁床のいずれも可能であり、回分式、連続式のいずれの方式も可能であるが、固定床連続流通式が簡便であり好ましい。
キシリレンジアミンの水素化における水素圧は、0.4MPaG以上が好ましく、工業的には5~14MPaGが望ましい。反応温度は、好ましくは50~150℃、より好ましくは80~130℃である。
キシリレンジアミンの水素化における触媒の使用量は、例えば、上記ルテニウムを2質量%程度担持させた触媒を用いる場合には、原料のキシリレンジアミンの供給量に対するWHSVで、好ましくは0.001~5.0、より好ましくは0.001~2.0である。
【0022】
水素化反応においてはキシリレンジアミンの転化率が好ましくは95mol%以上、より好ましくは98mol%以上、さらに好ましくは転化率が実質的に100mol%となるように、反応温度や原料供給量等の条件を選択するのが、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの生産性の面から好ましい。
反応生成物からの目的物の分離は、常圧でアルキルアミン類、アルキレンジアミン類及び有機溶媒を留去し、真空蒸留することによって容易に行うことができる。
【0023】
キシリレンジアミンの水素化を、溶媒を用いて連続式で行う場合には、反応生成物を含む溶液から気液分離器を用いて溶解ガスを分離した後に、溶媒回収設備にて一旦回収し、該回収設備にて蒸留分離して溶媒を循環使用する方法と、水素化により得られたビス(アミノメチル)シクロヘキサンを一部分離し溶媒として循環使用する方法とを挙げることができる。
本実施形態の方法により接触水素化により得られたビス(アミノメチル)シクロヘキサンを溶媒として用いる場合には、気液分離器にて、反応生成物から溶解ガスを分離した後、直接循環使用することができる。
【0024】
<触媒の再生>
本実施形態においては、上記の通りビス(アミノメチル)シクロヘキサンを製造する上で、使用により活性が低下した触媒を水素含有ガスに接触させることにより再生処理した後に、反応系にて再使用する。本実施形態における触媒再生処理は、工程(2)前の液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量を20質量%以下に維持する工程(1)と、触媒を、100~500℃に加熱して、水素含有ガスに接触させる工程(2)とを含むことを特徴とする。かかる触媒の再生処理は、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの水素化反応に用いた反応器内で実施するのが簡便であり、工業的に有利であるため好ましい。
【0025】
工程(1)
工程(1)においては、続く工程(2)前の液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量を20質量%以下に維持する。工程(2)前の液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が20質量%を超えると、工程(2)で触媒に固体の析出を生じ、触媒の再生処理が不能となる。本工程(1)における液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量の調整は、例えば、洗浄液を用いて触媒を洗浄処理することにより行うことができる。
【0026】
具体的には、工程(2)前の液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が20質量%を超える場合には、洗浄液を用いて、洗浄後の液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が20質量%以下になるまで触媒を洗浄することにより、工程(2)前の液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサンを工程(1)に規定する量に維持することができる。
液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量の測定は、洗浄前後の洗浄液を一部取り出して、ガスクロマトグラフィー等の既知の方法により行うことができる。
本実施形態において、液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量は、洗浄液を用いる場合は洗浄後の洗浄液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサンの濃度であり、洗浄液を用いない場合は反応器から得られる反応生成物を含む溶液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサンの濃度である。ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを含む液体の全体の質量(ただし、液体中に混ざった触媒等の固形分の質量は除かれる)を100質量%とする。
【0027】
より具体的に説明する。
反応溶媒としてビス(アミノメチル)シクロヘキサンを用いる場合には、工程(2)前の液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量は通常20質量%を超えるため、本実施形態の一態様によれば、工程(1)において、洗浄液を用いて、液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が20質量%以下となるまで触媒を洗浄処理する。工程(2)前の液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が20質量%以下であれば、上記洗浄工程は行わずに工程(2)に進んでもよい。
ビス(アミノメチル)シクロヘキサン以外の溶媒をビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造における反応溶媒として用いた際に、工程(1)に規定するビス(アミノメチル)シクロヘキサン量を満たす場合には、特に上記洗浄処理等を行うことなく、続く工程(2)に進む。ビス(アミノメチル)シクロヘキサン以外の溶媒を用いた場合にも、工程(2)前のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が20質量%を超える場合には、上述した通り、洗浄液による洗浄処理により液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が工程(1)の要件を満たすように調整することができる。
【0028】
上記洗浄液としては、水、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン及びアルコールからなる群から選択される少なくとも1種を用いることができ、これらは単独でも混合物であってもよい。脂肪族炭化水素としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン等が挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えば、メタキシレン、パラキシレン、オルトキシレン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ノルマルブチルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、水、炭素数5以上15以下の脂肪族炭化水素、炭素数6以上15以下の芳香族炭化水素、炭素数3以上15以下のケトン及び炭素数1以上15以下のアルコールからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、安全性・環境面・コスト面から、洗浄液が水単独であるか、水を含むことがより好ましい。
洗浄液は常温であっても、加温されていてもよい。洗浄液を加温する場合には、例えば洗浄液が水の場合、常圧において揮発しない30~90℃程度に加温することが好ましい。
【0029】
本発明者等は、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造ラインにおいて、触媒の水素再生処理を行った場合に、触媒層や後工程で用いる熱交換器等において固体析出が起こり、製造上のトラブルとなることを検知した。特許文献2のようなジシアノベンゼンの水素化に使用される触媒の再生処理ではこのような現象は観察されない。鋭意検討の結果、工程(2)にて触媒を水素含有ガスに接触させる前の液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量を20質量%以下に維持することにより、上記トラブルを解決することを見出した。上記工程(1)におけるビス(アミノメチル)シクロヘキサン量は、本実施形態の一態様によれば、上記した通り、洗浄液を用いて触媒を洗浄することにより調整することができる。
【0030】
工程(1)において、工程(2)前の液中のビス(アミノメチル)シクロヘキサン量は、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下に維持する。
【0031】
洗浄形態は特に限定されず、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造に用いた反応器内で触媒を洗浄してもよいし、製造反応器から触媒を取り出して、別途洗浄を行ってもよく、特に限定されない。製造反応器内で洗浄すれば、プロセスの簡略化を図ることができ、工業的に有利であるため好ましい。
洗浄方法としては、例えば、(i)触媒層に洗浄液を張込み、抜液をくり返す方法、(ii)触媒層に洗浄液を流通させる方法等を挙げることができる。洗浄形態として(i)及び(ii)いずれの場合にも、洗浄効率を上げるため、洗浄液を循環させてもよい。
【0032】
洗浄液を循環させる場合には、循環時間は触媒の量によって異なるが、概ね0.5~10時間程度が好ましい。洗浄効率をあげるため、上記(i)の洗浄形態の場合には、一度抜液した後、新しい洗浄液を張り込む操作を行い、これを繰り返してもよい。
【0033】
工程(2)
当該工程においては、触媒を、100~500℃に加熱して、水素含有ガスに接触させることにより、活性の低下した触媒を再生する。処理温度が100℃より低いと再生処理の効果が十分ではなく、500℃を超えると、触媒が劣化するおそれがある。
触媒の再生処理は、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを製造した反応器内で行ってもよいし、触媒を反応器から抜き出した際に実施してもよい。簡便であり、また工業的に有利であるため、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを製造した反応器内で行うことが好ましい。上述した通り、この反応器は好ましくは固定床反応器である。
【0034】
本実施形態においては、水素含有ガスと接触させている間の触媒の温度上昇速度が、好ましくは40℃/分以下(ゼロを含む)、より好ましくは30℃/分以下、さらに好ましくは20℃/分以下で再生処理を行う。上記した通り、水素含有ガスによる再生処理を100~500℃の範囲で実施することが好ましいが、該温度範囲での再生処理に先立って100℃未満で水素含有ガスと触媒を接触させる場合も、触媒の温度上昇速度を40℃/分以下にコントロールすることが好ましい。水素含有ガスによる触媒の再生処理に際して、処理中に触媒の温度が急上昇して制御不能となる場合がある。触媒の温度の急上昇は、製造運転の安全性や安定性の面で好ましくない上に、触媒性能の劣化を招くため回避すべきである。
【0035】
本発明等の知見によれば、触媒の温度上昇は、再生処理時の水素含有ガスの供給速度と深く関係している。従って、再生処理における水素含有ガスの供給速度を制御することにより、触媒の温度の急上昇を回避することができる。すなわち、水素含有ガスの供給速度を低く設定することにより、起こりうる触媒の温度の急上昇を回避することが可能となる。水素含有ガスの供給速度は、触媒の温度の上昇速度が40℃/分以下となる速度に調整することが好ましい。具体的な水素含有ガスの供給速度は触媒の種類、使用履歴、及び触媒の温度によって異なるが、触媒1kgあたり、好ましくは0.001~2000NL/h(N:標準状態(0℃、1気圧))、より好ましくは0.001~1000NL/hである。
【0036】
触媒の再生に用いる水素含有ガスは、触媒再生を妨げない不活性な不純物、例えばメタン、窒素等を含んでいてもよい。水素圧は好ましくは0.01kPa~30MPa、より好ましくは0.1kPa~15MPaである。水素圧を低く設定する場合(例えば0.1MPa以下)は、窒素等の不活性な希釈ガスを用いると簡便であり好ましい。
【0037】
本実施形態においては、水素含有ガスによる再生工程(2)を以下の2段階で行うことが好ましい。すなわち、水素含有ガスによる触媒の再生処理を、(2-1)前記触媒を、100~200℃の範囲であり、かつ平均温度が180℃以下の温度において、水素含有ガスに例えば1時間以上接触させる工程(以下、低温処理工程と称することがある)、及び(2-2)前記工程(2-1)において接触処理した触媒を、200℃超~500℃の範囲の温度で水素含有ガスにさらに接触させる工程(以下、高温処理工程と称することがある)の2工程により行うことがより好ましい。再生処理を上記2工程にすることにより、触媒をより十分に再生することができる。また、2工程にすることにより、再生処理による発熱やガスの発生を緩やかにできるので、特に工業的規模の装置において好ましい。
【0038】
(2-1)低温処理工程
低温処理工程(2-1)における触媒再生時の温度は100~200℃、好ましくは120~180℃の範囲であり、かつ平均温度が180℃以下である。該平均温度とは、100~200℃で実施される低温処理工程における時間平均温度を指し、温度を時間で積分した値を処理時間長で割った値により定義される。低温処理工程(2-1)においては、100~200℃の範囲であれば、処理中の温度を変化させてもよい。例えば、一定温度保持過程と、昇温又は降温過程とを組み合わせた工程とすることも可能である。
低温処理工程の処理時間は、通常1時間以上であり、1~200時間が好ましい。
【0039】
低温処理工程(2-1)においては、触媒の温度の上昇速度が好ましくは40℃/分以下(ゼロを含む)、より好ましくは30℃/分以下、特に好ましくは20℃/分以下となるように、水素を供給する。
【0040】
(2-2)高温処理工程
高温処理工程(2-2)における触媒再生時の温度は200℃超~500℃の範囲、好ましくは210℃~400℃、より好ましくは220℃~350℃である。高温処理工程(2-2)においては、上記範囲内であれば処理中の温度を変化させてもよい。例えば、一定温度保持過程と、昇温又は降温過程とを組み合わせた工程とすることも可能である。
高温処理工程の処理時間は、通常3~300時間の範囲から選択することができる。処理時間及び処理温度は、触媒の種類や活性低下の程度に依存する。活性低下の程度が激しい場合に、処理時間を長くとることが好ましい。
【0041】
高温処理工程(2-2)においては、触媒の温度の上昇速度が好ましくは40℃/分以下(ゼロを含む)、より好ましくは30℃/分以下、特に好ましくは20℃/分以下となるように制御しながら、水素を供給することが好ましい。
【0042】
上述したように、触媒の温度の上昇は再生処理時の水素の供給速度と深く関係している。従って、上記低温処理工程(2-1)及び高温処理工程(2-2)においても、低温処理工程及び高温処理工程における水素の供給速度を制御することによって、触媒の温度の急上昇を回避することができる。
水素の供給速度は、触媒の温度の上昇速度が40℃/分以下となるように触媒の温度を監視しながら調整する。具体的な水素の供給速度は触媒の種類、使用履歴、及び触媒の温度によって異なるが、触媒1kgあたり、好ましくは0.001~2000NL/h(N:標準状態(0℃、1気圧))、より好ましくは0.001~1000NL/hである。
【0043】
低温処理工程(2-1)及び高温処理工程(2-2)に用いられる水素含有ガスは、触媒再生を妨げない不活性な不純物、例えばメタン及び窒素等を含んでいてもよい。低温処理工程(2-1)及び高温処理工程(2-2)における水素圧は、好ましくは0.01kPa~30MPa、より好ましくは0.1kPa~15MPaである。水素圧を低く設定する場合(例えば0.1MPa以下)には、窒素等の不活性な希釈ガスを用いるのが簡便であり好ましい。低温処理工程(2-1)及び高温処理工程(2-2)にて用いられる水素含有ガスの組成は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0044】
上述した再生処理により、触媒上への固体の析出を防ぎながら触媒再生が実施でき、使用により低下した触媒活性を回復させることができる。例えば、再生処理を固定床形式で行う場合には、触媒層への固体の析出を防止することができるため、再生処理を問題なく行うことができる。
再生処理により触媒はその活性を回復し、キシリレンジアミンの水素化反応触媒として再使用に供することができ、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを製造することが可能となる。
【実施例】
【0045】
以下に示す実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【0046】
実施例1
<キシリレンジアミンの水素化>
触媒として、市販の2質量%ルテニウム担持アルミナ触媒を使用した。
触媒130kgを固定床連続流通式の管状反応器(内径34cm,充填高さ200cm)に充填した。触媒を水素気流下260℃で還元して活性化させた後、反応圧力8MPaG、反応温度100℃の条件下で、原料のメタキシリレンジアミン5質量%、及び溶媒の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン95質量%からなる混合物を上記反応器に供給した。この際の原料供給量(上記原料と溶媒の混合物を指す)は11kg/hとした。
得られた反応器出口液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、メタキシリレンジアミンの転化率は99.5mol%であった。90日間反応を行ったところ、メタキシリレンジアミンの転化率は98.8mol%に低下したため、反応を停止した。
メタキシリレンジアミン(以下、「MXDA」ともいう)の転化率は以下の方法により算出した。
転化率(mol%)=((原料供給液中のMXDA質量-反応器出口液中のMXDA質量)/MXDA分子量)/(原料供給液中のMXDA質量/MXDA分子量)×100
【0047】
ガスクロマトグラフィーの条件は以下のとおりである。
装置:株式会社島津製作所製の製品名「GC-2010 plus」
カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製のDB-1(内径0.53mm、長さ30m、膜厚1.50μm)
キャリアガス:Heガスを流量2.3mL/分で流通させた。
サンプル注入量:1.0μL
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
検出器温度:280℃
気化室温度:280℃
昇温条件:100℃で18分保持して5℃/分で120℃まで昇温して20分保持した。その後、10℃/分で280℃まで昇温して10分保持した。
サンプル調製方法:サンプル0.1gに対して、内部標準物質としてジフェニルメタンを0.1g加え、メタノール10gで希釈した。
【0048】
<触媒の再生処理>
反応器の圧力を常圧とした後、液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が15質量%となるまで触媒層を水で洗浄した(工程(1))。
液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量は、洗浄液を採取し、ガスクロマトグラフィーにより定量した。ガスクロマトグラフィーの条件は以下のとおりである。
【0049】
(ガスクロマトグラフィー測定条件)
装置:株式会社島津製作所製の製品名「GC-2010 plus」
カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製のCP-Volamine(内径0.32mm、長さ60m)
キャリアガス:Heガスを流量1.5mL/分で流通させた。
サンプル注入量:1.0μL
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
検出器温度:260℃
気化室温度:230℃
昇温条件:230℃で35分保持した。
サンプル調製方法:サンプル0.1gに対して、内部標準物質としてジフェニルメタンを0.1g加え、メタノール10gで希釈した。
【0050】
次いで、水素ガスを、触媒1kgあたり240NL/hの速度で、洗浄後の上記触媒層に供給し、室温から150℃まで加熱した後、150℃で2時間水素流通を保持した(低温加熱工程(2-1))。続いて、0.1℃/分の速度で260℃まで昇温し、260℃で10時間水素流通を保持(高温加熱工程(2-2))した後、室温まで温度を下げた。なお、工程(2)において、40℃/分以上となる触媒の温度の上昇は観察されず、触媒の温度の上昇速度は1℃/分以下であった。
【0051】
<再生触媒を用いた水素化反応>
再生後の触媒を用いて、キシリレンジアミンの水素化反応を上記と同じ条件で行った。反応温度100℃において、メタキシリレンジアミンの転化率は99.8mol%であり、未使用の触媒を用いた場合とほぼ同等の成績を示した。
【0052】
実施例2
実施例1と同様に、メタキシリレンジアミンの水素化を行った。水素化反応を停止した後、液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が1質量%になるまで触媒層を水で洗浄した(工程(1))こと以外は、実施例1と同様に触媒再生処理を行った。再生処理後の触媒は実施例1と同様に再使用が可能であった。実施例2においても、工程(2)における40℃/分以上となる触媒の温度の上昇は観察されず、触媒の温度の上昇速度は1℃/分以下であった。
【0053】
実施例3
実施例1と同様に、メタキシリレンジアミンの水素化を行った。水素化反応を停止した後、液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が5質量%になるまで触媒層を水で洗浄した(工程(1))こと以外は、実施例1と同様に触媒再生処理を行った。再生処理後の触媒は実施例1と同様に再使用が可能であった。実施例3においても、工程(2)における40℃/分以上となる触媒の温度の上昇は観察されず、触媒の温度の上昇速度は1℃/分以下であった。
【0054】
比較例1
実施例1と同様に、メタキシリレンジアミンの水素化を行った。水素化反応を停止した後、触媒層の洗浄を実施しないこと以外は、実施例1と同様に水素ガスに接触させる触媒の再生処理を試みた。しかしながら、水素ガスの供給から約7時間後には水素ガスの流量が約35%減少した。触媒層に固体生成物が析出し、並びに後工程で用いる熱交換器等が閉塞し、触媒再生処理を行うことができなかった。
【0055】
比較例2
実施例1と同様に、メタキシリレンジアミンの水素化を行った。水素化反応を停止した後、液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が50質量%になるまで触媒層を水で洗浄したこと以外は、実施例1と同様に水素ガスに接触させる触媒の再生処理を試みた。しかしながら、水素ガスの供給から約11時間後には水素ガスの流量が約35%減少した。触媒層に固体生成物が析出し、並びに後工程で用いる熱交換器等が閉塞し、触媒再生処理を行うことができなかった。
【0056】
比較例3
実施例1と同様に、メタキシリレンジアミンの水素化を行った。水素化反応を停止した後、液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が30質量%になるまで触媒層を水で洗浄したこと以外は、実施例1と同様に水素ガスに接触させる触媒の再生処理を試みた。しかしながら、水素ガスの供給から約13時間後には水素ガスの流量が約35%減少した。触媒層に固体生成物が析出し、並びに後工程で用いる熱交換器等が閉塞し、触媒再生処理を行うことができなかった。
【0057】
実施例4
触媒として、2質量%ルテニウム担持アルミナ触媒を使用した。
触媒0.14m3を管状反応器(内径34cm,充填高さ200cm)に充填した。触媒を水素気流下260℃で還元して活性化させた後、反応圧力8MPaG、反応温度100℃の条件下で、原料のメタキシリレンジアミン5質量%、及び溶媒の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン95質量%からなる混合物を上記反応器に供給した。この際の原料供給量(上記原料と溶媒の混合物を指す)は11kg/hとした。
90日間反応を行った後に、反応を停止した。反応器の圧力を常圧とした後、液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が15質量%となるまで触媒層をメタノールで洗浄した(工程(1))。
水素ガスを、触媒1kgあたり240NL/hの速度で供給し、室温から150℃まで加熱した後、150℃で2時間水素流通を保持した(低温加熱工程(2-1))。続いて、0.1℃/分の速度で260℃まで昇温し、260℃で10時間水素流通を保持(高温加熱工程(2-2))した後、室温まで温度を下げた。再生処理後の触媒は実施例1と同様に再使用が可能であった。なお、工程(2)において、40℃/分以上となる触媒の温度の上昇は観察されず、触媒の温度の上昇速度は1℃/分以下であった。
【0058】
比較例4
実施例4と同様に、メタキシリレンジアミンの水素化を行った。水素化反応を停止した後、液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が50質量%になるまで触媒層をメタノールで洗浄したこと以外は、実施例4と同様に水素ガスに接触させる触媒の再生処理を試みた。しかしながら、水素ガスの供給から約12時間後には水素ガスの流量が約35%減少した。触媒層に固体生成物が析出し、並びに後工程で用いる熱交換器等が閉塞し、触媒再生処理を行うことができなかった。
【0059】
比較例5
実施例4と同様に、メタキシリレンジアミンの水素化を行った。水素化反応を停止した後、液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が30質量%になるまで触媒層をメタノールで洗浄したこと以外は、実施例4と同様に水素ガスに接触させる触媒の再生処理を試みた。しかしながら、水素ガスの供給から約18時間後には水素ガスの流量が約35%減少した。触媒層に固体生成物が析出し、並びに後工程で用いる熱交換器等が閉塞し、触媒再生処理を行うことができなかった。
【0060】
実施例5
触媒として、2質量%ルテニウム担持アルミナ触媒を使用した。
触媒0.14m3を管状反応器(内径34cm,充填高さ200cm)に充填した。触媒を水素気流下260℃で還元して活性化させた後、反応圧力8MPaG、反応温度100℃の条件下で、原料のメタキシリレンジアミン5質量%、及び溶媒の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン95質量%からなる混合物を上記反応器に供給した。この際の原料供給量(上記原料と溶媒の混合物を指す)は11kg/hとした。
90日間反応を行った後に、反応を停止した。反応器の圧力を常圧とした後、液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が15質量%となるまで触媒層をメタキシレンで洗浄した(工程(1))。
水素ガスを、触媒1kgあたり240NL/hの速度で供給し、室温から150℃まで加熱した後、150℃で2時間水素流通を保持した(低温加熱工程(2-1))。続いて、0.1℃/分の速度で260℃まで昇温し、260℃で10時間水素流通を保持(高温加熱工程(2-2))した後、室温まで温度を下げた。再生処理後の触媒は実施例1と同様に再使用が可能であった。なお、工程(2)において、40℃/分以上となる触媒の温度の上昇は観察されず、触媒の温度の上昇速度は1℃/分以下であった。
【0061】
比較例6
実施例5と同様に、メタキシリレンジアミンの水素化を行った。水素化反応を停止した後、液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が30質量%になるまで触媒層をメタキシレンで洗浄したこと以外は、実施例5と同様に水素ガスに接触させる触媒の再生処理を試みた。しかしながら、水素ガスの供給から約23時間後には水素ガスの流量が約35%減少した。触媒層に固体生成物が析出し、並びに後工程で用いる熱交換器等が閉塞し、触媒再生処理を行うことができなかった。
【0062】
実施例6
触媒として、2質量%ルテニウム担持アルミナ触媒を使用した。
触媒0.14m3を管状反応器(内径34cm,充填高さ200cm)に充填した。触媒を水素気流下260℃で還元して活性化させた後、反応圧力8MPaG、反応温度100℃の条件下で、原料のメタキシリレンジアミン5質量%、及び溶媒の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン95質量%からなる混合物を上記反応器に供給した。この際の原料供給量(上記原料と溶媒の混合物を指す)は11kg/hとした。
90日間反応を行った後に、反応を停止した。反応器の圧力を常圧とした後、液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が15質量%となるまで触媒層をアセトンで洗浄した(工程(1))。
水素ガスを、触媒1kgあたり240NL/hの速度で供給し、室温から150℃まで加熱した後、150℃で2時間水素流通を保持した(低温加熱工程(2-1))。続いて、0.1℃/分の速度で260℃まで昇温し、260℃で10時間水素流通を保持(高温加熱工程(2-2))した後、室温まで温度を下げた。再生処理後の触媒は実施例1と同様に再使用が可能であった。なお、工程(2)において、40℃/分以上となる触媒の温度の上昇は観察されず、触媒の温度の上昇速度は1℃/分以下であった。
【0063】
比較例7
実施例6と同様に、メタキシリレンジアミンの水素化を行った。水素化反応を停止した後、液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が30質量%になるまで触媒層をアセトンで洗浄したこと以外は、実施例6と同様に水素ガスに接触させる触媒の再生処理を試みた。しかしながら、水素ガスの供給から約19時間後には水素ガスの流量が約35%減少した。触媒層に固体生成物が析出し、並びに後工程で用いる熱交換器等が閉塞し、触媒再生処理を行うことができなかった。
【0064】
実施例7
触媒として、2質量%ルテニウム担持アルミナ触媒を使用した。
触媒0.14m3を管状反応器(内径34cm,充填高さ200cm)に充填した。触媒を水素気流下260℃で還元して活性化させた後、反応圧力8MPaG、反応温度100℃の条件下で、原料のメタキシリレンジアミン5質量%、及び溶媒の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン95質量%からなる混合物を上記反応器に供給した。この際の原料供給量(上記原料と溶媒の混合物を指す)は11kg/hとした。
90日間反応を行った後に、反応を停止した。反応器の圧力を常圧とした後、液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が15質量%となるまで触媒層をn-ヘプタンで洗浄した(工程(1))。
水素ガスを、触媒1kgあたり240NL/hの速度で供給し、室温から150℃まで加熱した後、150℃で2時間水素流通を保持した(低温加熱工程(2-1))。続いて、0.1℃/分の速度で260℃まで昇温し、260℃で10時間水素流通を保持(高温加熱工程(2-2))した後、室温まで温度を下げた。再生処理後の触媒は実施例1と同様に再使用が可能であった。なお、工程(2)において、40℃/分以上となる触媒の温度の上昇は観察されず、触媒の温度の上昇速度は1℃/分以下であった。
【0065】
比較例8
実施例7と同様に、メタキシリレンジアミンの水素化を行った。水素化反応を停止した後、液中の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン量が30質量%になるまで触媒層をヘプタンで洗浄したこと以外は、実施例7と同様に水素ガスに接触させる触媒の再生処理を試みた。しかしながら、水素ガスの供給から約18時間後には水素ガスの流量が約35%減少した。触媒層に固体生成物が析出し、並びに後工程で用いる熱交換器等が閉塞し、触媒再生処理を行うことができなかった。