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特許7373598ジヌクレオシドポリリン酸化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ジヌクレオシドポリリン酸化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 21/02 20060101AFI20231026BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 31/7072 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 11/10 20060101ALN20231026BHJP
【FI】
C07H21/02
C07H21/04 A
A61K31/7072
A61P27/04
A61P11/00
A61P11/10
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022022562
(22)【出願日】2022-02-17
(62)【分割の表示】P 2018118073の分割
【原出願日】2018-06-21
(65)【公開番号】P2022065110
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】10-2017-0078424
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514052597
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ キョン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】リー スン ウク
(72)【発明者】
【氏名】リーム ヒュン ジョン
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-528665(JP,A)
【文献】特表平11-506790(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103704(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/012949(WO,A1)
【文献】Nucleic Acids Research,1987年,Vol.15, No.8,pp.3573-3580
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S-1)下記化学式2で表されるヌクレオシドリン酸化合物のナトリウム塩と;
カルボジイミド類の縮合剤と;および
金属イオンと;を
溶媒の存在下で反応させるステップ、ならびに
(S-2)(i)(S-1)ステップの終了後粗生成物の固体を得;(ii)生成された粗生成物の固体を水に溶解し、得られた溶液を陰イオン交換樹脂に吸着し、下記化学式1で表されるジヌクレオシドポリリン酸を溶出し、下記化学式1で表されるジヌクレオシドポリリン酸をナトリウム形態に転換するステップ
を含む、下記化学式1で表されるジヌクレオシドポリリン酸のナトリウム塩またはその水和物の製造方法であって、
前記金属イオンがカルシウムのイオンである、方法:
【化1】
前記化学式において、
およびRは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立してピリミジン塩基であり;
は、ピリミジン塩基であり;
nは、4の整数であり;
mは、1~3の整数である。
【請求項2】
前記ピリミジン塩基はウラシルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学式1で表されるヌクレオシドポリリン酸は下記化学式1aで表される、請求項1に記載の方法。
【化2】
【請求項4】
前記化学式2で表されるヌクレオシドリン酸化合物は下記化学式2a~化学式2cのうちいずれか一つで表される、請求項1に記載の方法:
【化3】
【請求項5】
前記カルボジイミド類の縮合剤は下記化学式3で表される、請求項1に記載の方法:
【化4】
前記化学式3において、
およびRは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して炭素数1~6の直鎖、分枝鎖もしくは環状鎖のアルキル基であり、前記アルキル基はアルキルアミン基で選択的に置換されてもよい。
【請求項6】
前記RおよびRは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立してエチル、イソプロピル、シクロヘキシルまたはジメチルアミノプロピルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記カルボジイミド類の縮合剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)またはその塩、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)およびN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記金属イオンは、金属の塩化物、臭化物、硝酸化物、硫酸化物および酢酸化物からなる群から由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記金属イオンは下記化学式4で表される金属塩触媒から由来する、請求項1に記載の方法:
【化5】
前記化学式4において、
aは、Mのモル数であり、
bは、Mのイオン価数であり、
Mは、カルシウムであり、
cは、Xのモル数であり、
dは、Xのイオン価数であり、
Xは、ハロゲン、カーボネート、アセテート、ニトレート、トリフレート、サルフェート、カルボキシレートまたはこれらの誘導体であり、
aとbの積の値と、cとdの積の値とは同一である。
【請求項10】
前記(S-1)ステップの溶媒は、水、または水と有機溶媒の混合溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記有機溶媒は、C-Cのアルコール、C-C10のケトン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記縮合剤の当量および前記金属イオンの当量は、同一であるかまたは異なり、各々前記化学式2で表されるヌクレオシドリン酸化合物1モル当量に対して0.1モル~30.0モル当量で反応する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
応温度0℃~50℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
粗生成物の固体を得るステップは、有機溶媒を注入または逆注入することによって粗生成物の固体を生成し、前記粗生成物の固体を濾過するステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
機溶媒親水性有機溶媒である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記親水性有機溶媒はC-Cのアルコール、C-C10のケトン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記陰イオン交換樹脂は、弱塩基性陰イオン交換樹脂または強塩基性陰イオン交換樹脂である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジヌクレオシドポリリン酸化合物の製造方法に関し、ヌクレオシドリン酸化合物からハロゲン化金属の存在下でジヌクレオシドポリリン酸化合物、その塩またはその水和物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヌクレオシドは、核酸塩基と五炭糖がN-グリコシド結合により結合した配糖体化合物であり、リン酸化酵素によってヌクレオシドにリン酸基が結合されると、DNA鎖の基本構成成分であるヌクレオチドとなる。
【0003】
このようなヌクレオチドの一種であるジヌクレオシドポリリン酸またはその塩は、生体内の物質と類似して体内で安定しており、それに応じた疾病治療に効果を有すると知られている。
【0004】
特に、下記化学式1aで表されるP,P-ジ(ウリジン5’-)四リン酸(以下、「UPU」と表記する)またはその塩は、眼球乾燥症または涙液分泌減少症に伴う角結膜上皮障害の治療剤として用いられており、痰排出誘導作用を有するため、去痰剤または肺炎治療剤として開発が期待されている化合物である。
【化1】
【0005】
従来のUPUの合成法としては、非特許文献1にはウリジン5’-三リン酸(以下、UTPと表記する)の脱水縮合反応により製造されるウリジン5’-環状三リン酸とウリジン5’-一リン酸(以下、UMPと表記する)とを反応させる従来の製造方法について報告されており、特許文献1にはその改良された製造方法について報告されている。
【0006】
特許文献2には、ウリジン、UMP、UDPまたはUTPおよびその塩とウリジンヌクレオチド化合物を極性、非プロトン性有機溶媒および疎水性アミンに溶解させ、一リン酸化剤または二リン酸化剤をリン酸化剤として用いてリン酸化反応させ、カルボジイミド、活性カルボニルまたは活性リンを活性化剤として用いてUPUを製造する方法について報告されている。
【0007】
また、特許文献3には、ウリジン5’-二リン酸(UDP)、UMPまたはピロリン酸と、置換基を有してもよい、イミダゾール、ベンズイミダゾールまたは1,2,4-トリアゾールからなる群より選択される化合物とを縮合させることで合成されるリン酸活性化合物と、UMP、UDP、UTPおよびピロリン酸からなる群より選択されるリン酸化合物またはその塩とを、金属イオンの存在下、水または親水性有機溶媒中で反応させてUPUを製造する方法について報告されている。
【0008】
しかし、従来のUPUの製造方法は、金属塩交換工程反応などの煩わしい工程過程が多数必要であり、その結果、最終化合物の合成効率および純度が低下するという問題点がある。
【0009】
具体的には、特許文献2および特許文献1などの従来のUPUの製造方法は、反応直前にリン酸化合物の金属塩をトリブチルアミンまたはトリエチルアミンのようなアミン塩の形態で反応させなければならない。その結果、一般にウリジンリン酸化合物のナトリウム塩のような金属塩をイオン交換樹脂カラムクロマトグラフィーによって遊離酸の形態のリン酸化合物に変換した後、アミンと塩形成を行わなければならないという煩わしい工程過程が必要である。このような工程の遂行により、最終化合物の合成効率および純度の低下が発生しうる。特に、非常に不安定な物質として知られたUTPを用いた前記合成反応の場合、純度が低下し易く、水分に敏感なUTPアミン塩のような有機塩は高い吸湿性を有するようになって保管と品質の維持が非常に難しいという問題点がある。
【0010】
また、特許文献3に記載された製造方法は、45~94%の高収率でUPUを合成することができるが、上記で言及されたリン酸化合物有機塩を準備する塩交換工程反応およびそれに応じた脱水工程過程が必要となり、有機溶媒中でリン酸活性化合物を合成した後に減圧濃縮工程により溶媒を除去し、水の存在下でpHを調整して反応しなければならない煩わしさに因り化合物の純度を低下させるという問題点がある。
【0011】
したがって、上記のような理由で、煩わしい工程過程なしで環境に優しい反応条件下で高収率のジヌクレオシドポリリン酸化合物を高純度で製造し、産業的に大量生産に好適なジヌクレオシドポリリン酸の製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2008/012949号
【文献】国際公開第1999/05155号
【文献】国際公開第2014/103704号
【非特許文献】
【0013】
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、11、(2001)、157-160
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、大量生産に好適で且つ効率的で、環境に無害であり、高純度で大量生産が可能なジヌクレオシドポリリン酸、その塩および水和物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、下記化学式1で表されるジヌクレオシドポリリン酸、その塩およびその水和物を製造する方法を提供する。
【0016】
本発明の一実施形態において、
(S-1)下記化学式2で表されるヌクレオシドリン酸化合物、その塩またはその水和物と;
カルボジイミド類の縮合剤と;および
金属イオンと;を
溶媒の存在下で反応させるステップを含む、下記化学式1で表されるジヌクレオシドポリリン酸、その塩またはその水和物の製造方法を提供する。
【化2】
前記化学式において、
およびRは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立してピリミジン塩基であり;
は、ピリミジン塩基であり;
nは、2~6の整数であり;
mは、1~3の整数である。
【0017】
本発明において、前記ピリミジン塩基は、シトシン、ウラシルまたはチミンからなる群より選択されることができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記塩基はウラシルである。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記nは4である。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記化学式1で表されるヌクレオシドポリリン酸は、下記化学式1aで表される。
【化3】
【0021】
本発明の製造方法によれば、市中で購買可能な前記化学式2、その塩またはその水和物を別途の転換工程なしでそのまま用いることによって、生産に必要な設備の減少、転換工程で用いられる時間、努力、費用の節減が可能であり、それに応じた不純物の発生を最小化することができる。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記化学式2で表されるヌクレオシドリン酸化合物は、下記化学式2a~化学式2cのうちいずれか一つで表される。
【化4】
【0023】
本発明の一実施形態において、前記ヌクレオシドリン酸化合物の塩は金属塩またはアミン塩である。
【0024】
前記ヌクレオシドリン酸化合物の金属塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、セリウム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛およびホウ素からなる群より選択されてもよく、好ましくは、リチウム、ナトリウムまたはカリウムのアルカリ金属塩およびカルシウムまたはマグネシウムのアルカリ土類金属塩であってもよい。
【0025】
また一つの実施形態において、前記アミン塩は、3級アミン類であってもよく、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、ピリジンなどのアルキル鎖がC~Cで構成されたトリアルキルアミンおよび環状トリアルキルアミンからなる群より選択されてもよい。
【0026】
本発明において、縮合剤は、縮合反応において反応助剤として添加される化合物を意味する。
【0027】
本発明の一実施形態において、前記カルボジイミド類の縮合剤は下記化学式3で表される。
【化5】
前記化学式3において、
およびRは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して炭素数1~6の直鎖、分枝鎖もしくは環状鎖のアルキル基であり、前記アルキル基はアルキルアミン基で選択的に置換されてもよい。
【0028】
具体的には、前記RおよびRは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立してエチル、イソプロピル、シクロヘキシルまたはジメチルアミノプロピルである。
【0029】
前記カルボイミド類の縮合剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)またはその塩、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)およびN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)からなる群より選択される。
【0030】
本発明のまた一つの実施形態において、前記(S-1)ステップは、トリアゾール類の添加剤をさらに含んで反応することができる。前記トリアゾール添加剤は、具体的には、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)または1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)であってもよい。前記トリアゾール添加剤は、前記カルボジイミド類の縮合剤の効率を上昇させる効果がある。
【0031】
本発明の一実施形態において、前記金属イオンは、金属の塩化物、臭化物、硝酸化物、硫酸化物および酢酸化物からなる群から由来する。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記金属イオンは、カルシウム、マグネシウム、セリウム、鉄、リチウム、アルミニウム、チタニウムおよびナトリウムからなる群より選択される金属のイオンであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記金属イオンは、下記化学式4で表される金属塩触媒から由来してもよい。
【化6】
前記化学式4において、
aは、Mのモル数であり、
bは、Mのイオン価数(Ionic valency)であり、
Mは、カルシウム、マグネシウム、セリウム、鉄、リチウム、アルミニウム、チタニウムまたはナトリウムであり、
cは、Xのモル数であり、
dは、Xのイオン価数であり、
Xは、ハロゲン、カーボネート、アセテート、ニトレート、トリフレート、サルフェート、カルボキシレートまたはこれらの誘導体であり、
aとbの積の値と、cとdの積の値とは同一である。
【0033】
本発明の一実施形態において、前記金属イオンは、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムなどのカルシウム塩、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、臭化マグネシウムなどのマグネシウム塩、塩化セリウム、フッ素セリウム、ヨウ化セリウム、硝酸セリウム、トリフルオロ酢酸セリウムなどのセリウム塩から由来する金属イオンであってもよく、具体的には、塩化カルシウム、塩化セリウム、ヨウ化リチウム、塩化マグネシウム、塩化鉄から由来する金属イオンであってもよいが、これらに制限されず、無水物の形態または水和物の形態の全てを含んでもよい。
【0034】
本発明に係る製造方法において、安価で人体に無害な触媒類を用いることによって、反応時間の画期的な短縮と高収率のジヌクレオシドポリリン酸を提供することができるため、医薬品原料の生産に非常に好適に適用することができる。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記溶媒は水、有機溶媒または水と有機溶媒の混合溶媒である。
【0036】
本発明の一実施形態において、前記溶媒としては水を単独で用いることができる。本発明に係る製造方法は、水を単独で用いることができるため、環境に優しい反応条件で産業的に大量生産に適用する場合、環境汚染の問題、有機溶媒の使用によって発生する費用および廃有機溶媒の処理費用を最小化できるので経済的で且つ環境に優しいものである。
【0037】
一実施形態において、前記溶媒としては水および有機溶媒の混合溶媒を用いることができる。
【0038】
また一つの実施形態において、前記有機溶媒は、C-Cのアルコール、C-C10のケトン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドからなる群より選択される。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記(S-1)ステップにおいて、前記縮合剤の当量および前記金属イオンの当量は同一であるかまたは異なり、各々前記化学式2で表されるヌクレオシドリン酸化合物1モル当量に対して0.1モル~30.0モル当量で反応する。特に、前記縮合剤の当量および前記金属イオンの当量は同一であるかまたは異なり、各々前記化学式2で表されるヌクレオシドリン酸化合物1モル当量に対して1.0モル~10.0モル当量で反応する。
【0040】
本発明の一実施形態において、前記(S-1)ステップにおける反応温度は、一般的な医薬品の合成が可能な反応温度の範囲で無理なく実行可能であり、具体的には、前記(S-1)ステップにおける反応温度は、0℃~50℃であってもよく、より詳細には5℃~35℃で反応する。
【0041】
本発明の一実施形態において、(S-2)前記(S-1)ステップから収得した生成物を固体化して分離精製するステップをさらに含む。
【0042】
前記(S-2)ステップは、前記(S-1)ステップで行われた反応溶液を固体化した後、様々な方法を利用して医薬品として使用できるように精製するステップである。
【0043】
前記(S-2)ステップは、具体的には、前記(S-1)ステップを終了した後、有機溶媒を注入または逆注入することによって、粗固体を生成し、それを濾過する第1ステップを含む。
【0044】
本発明の一実施形態において、前記(S-2)ステップにおける有機溶媒は親水性有機溶媒であってもよい。前記親水性有機溶媒は、C-Cのアルコール、C-C10のケトン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドからなる群より選択される。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど、アセトン、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドからなる群より選択されることができる。
【0045】
本発明の一実施形態において、前記(S-2)ステップは、前記第1ステップ後、生成された粗固体を水に溶解し、陰イオン交換樹脂に吸着して目的化合物を溶出した後にナトリウムの形態に転換して最終化合物を得る第2ステップをさらに含むことができる。
【0046】
本発明において、前記陰イオン交換樹脂としては、弱塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA67、ダイヤイオンSA-11Aなど)、強塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA402、ダイヤイオンPA-312など)、弱酸性陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンWK-30など)又は強酸性陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンPK-216、ダウエックス50WX2など)が用いられることができる。特に、弱塩基性陰イオン交換樹脂を介して目的化合物をより高純度で溶出することができる。
【0047】
本発明の一実施形態において、前記化学式2で表されるヌクレオシドリン酸化合物、その塩またはその水和物と;前記化学式3で表される縮合剤と;および前記化学式4で表される金属塩触媒から由来する金属イオンとを溶媒の存在下で反応させるステップを含む、前記化学式1aで表されるP,P-ジ(ウリジン5’-)四リン酸、その塩またはその水和物の製造方法を提供することができる。
【0048】
上記で言及されたものは、互いに矛盾しない限り同様に適用されることができる。
【0049】
本発明に係る製造方法のように、前記化学式2で表されるヌクレオシドリン酸化合物を縮合剤および金属イオンと共に環境に優しい溶媒である水を用いて反応を行うことによって、比較的に簡単な工程により、前記化学式1で表されるジヌクレオシドポリリン酸、その塩またはその水和物を高効率および高純度で生産することができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、市販する形態のヌクレオシドリン酸化合物またはその金属塩をヌクレオシドリン酸化合物の遊離酸または有機塩の形態への複雑で且つ煩わしい転換工程なしで高い反応転換率でジヌクレオシドポリリン酸を合成することができる。それにより、副反応物がほぼ生成されないことによって精製が非常に容易であり、医薬品の原料として用いられるための高品質の化合物を得ることができる。また、溶媒として水を単独で用いるか、または有機溶媒と混合して用いることによって、工業的な大量生産時に環境汚染を最小化することができる、非常に効率的で且つ環境に優しい合成法である。さらに、様々な構造の置換されたリン酸化合物誘導体の合成にも広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】実施例1で合成されたUPU(ジクアホソル)の核磁気共鳴分析(H NMR)の結果である。
図2】実施例1で反応終了後に得られた1次UPU(ジクアホソル)のHPLCデータである。
図3】実施例1で合成および精製後に最終的に得られたUPU(ジクアホソル)のHPLCデータである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を提示する。但し、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記の実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0053】
また、以下にて言及された試薬および溶媒は中国の原料製造元、Sigma-Aldrich KoreaおよびTCI社から購入したものであり、HPLCはAgilent Technologies社の1200 Seriesを使って測定し、H NMRは、Bruker社の400 ultraShield NMR Spectrometerを使って測定した。純度はHPLCの面積%で測定した。
【0054】
本発明で用いられたHPLCの条件は次の通りであり、反応後または反応混合物中のUPU(ジクアホソル)の純度を測定した。
検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:260nm)
カラム:YMC-Pack ODS-AQ(4.6mm×250mm、5μm)
移動相:0.4%リン酸二水素カリウム水溶液
流量:0.5mL/min
試料:UPU(ジクアホソル)10mg/移動相10mL
注入量:10μL
【0055】
実施例1.UDP・2NaからUP Uの合成
UDP・2Na塩(1000g、2.23mol)を精製水3.0Lに溶解して10℃で攪拌した後、EDC・HCl(428g、2.23mol)とCaCl・2HO(328g、2.23mmol)を順に滴加して10℃で4時間30分間攪拌した。反応はHPLCでモニターした。
【0056】
前記反応の終了後、精製水3.0LとEtOH 12.0Lで得られた化合物を固体化し、常温で約1時間攪拌した。生成された固体を濾過し乾燥して目的とするUPU化合物1,038g(純度94.1%)を得た。
【0057】
得られた固体を脱イオン水に溶かして弱塩基性陰イオン交換樹脂(Amberlite IRA系列)に吸着させた後、脱イオン水、低濃度の塩酸溶液、塩化ナトリウム溶液で順次溶出して減圧濃縮した後、エタノールで固体を析出した。固体を濾過、乾燥して目的とするUPU・4Naを得た(780g、収率80%、純度99.95%)。
【0058】
実験例1.UDP・2NaからUPUの合成:金属塩に対する効果
UDP・2Na塩(500mg、1.12mmol)を精製水2mLに溶解して、DIC(259uL、1.67mmol)と各種金属塩(1.67mmol)を順に滴加して常温で反応させた。
【0059】
前記反応液をHPLCで分析し、UDP・2Naに対比して目的とするUPUへの転換率と反応溶液中のUPUの純度を求めた。
【0060】
【表1】
【0061】
前記表1の結果より、UDP・2Na塩からUPUの合成において、金属塩がない場合の転換率は2%であるのに対し、マグネシウム塩の場合は79%、鉄塩の場合は25%の転換率を示し、カルシウムを金属塩として選択した場合は97%~98%の高い転換率を示し、反応液の純度も83%~84%として顕著な上昇効果を確認した。
【0062】
すなわち、前記結果より、本発明の前記化学式2で表されるヌクレオシドリン酸化合物、その塩またはその水和物;縮合剤;および金属イオンを反応させる場合、金属イオンがない場合に比べて、高収率および高純度のUPUを得ることができるということを確認した。
【0063】
実験例2.UDP・2NaからUPUの合成:縮合剤に対する効果
UDP・2Na塩(500mg、1.12mmol)を精製水2mLに溶解して、各種縮合剤(1.67mmol)と金属塩CaCl・2HO(247mg、1.67mmol)を順に滴加して常温で反応させた。
【0064】
前記反応液をHPLCで分析し、UDPに対比して目的とするUPUへの転換率とUPUの純度を求めた。
【0065】
【表2】
【0066】
前記表2の結果より、UDP・2Na塩からUPUの合成において、縮合剤としてDIC、EDC・HCl、またはDICとHOBtを用いる場合、目的とするUPUへの転換率は98%以上を示し、UPUの純度も84%以上を示すことを確認した。特に、EDC・HClを縮合剤として用いる場合、反応時間が顕著に減少し、UPUへの高い転換率と目的化合物であるUPUを高純度で合成できるということを確認した。
【0067】
実験例3.UDP・2NaからUPUの合成:反応温度、縮合剤と金属塩の当量の効果
UDP・2Na塩(500mg、1.12mmol)を精製水2mLに溶解して、該当する当量の縮合剤と金属塩CaCl・2HOを順に滴加して反応させた。
【0068】
前記反応液をHPLCで分析し、UDPに対比して目的とするUPUへの転換率とUPUの純度を求めた。
【0069】
【表3】
【0070】
前記表3の結果より、UDP・2Na塩からUPUの合成において、40℃以上の高い反応温度では、出発物質および目的化合物が分解されて、反応溶液中の純度が45%~72%に低くなった。
【0071】
実験例4.UDP・有機塩からUPUの合成:金属塩に対する効果
UDP・2TBA塩(1g、1.30mmol)をDMF 10mLに溶解して、DIC(240uL、1.55mmol)と各種金属塩(1.55mmol)を順に滴加して常温で反応させた。前記反応液をHPLCで分析し、UDPに対比して目的とするUPUへの転換率と純度を求めた。
【0072】
UDP・2TEA塩(500mg、0.82mmol)をDMF 5mLに溶解して、DICと各種金属塩を下記の当量に合わせて滴加して常温で反応させた。前記反応液をHPLCで分析し、UDPに対比して目的とするUPUへの転換率と純度を求めた。
【0073】
【表4】
【0074】
前記表4の結果より、UDP有機塩(TBA塩またはTEA塩)からUPUの合成において、カルシウム、鉄、マグネシウム、リチウム、又はセリウム塩の存在下では83%~99%の高い転換率を確認した。
【0075】
前記転換率の高い反応溶液中、カルシウム塩又はマグネシウム塩の存在下で反応した時、UPUを71%~83%の高純度で得ることができるということを確認した。
【0076】
すなわち、前記結果より、本発明の前記化学式2で表されるヌクレオシドリン酸化合物、その塩またはその水和物;縮合剤;および金属イオンを反応させる場合、高収率および高純度のUPUを得ることができるということを確認した。
【0077】
実験例5.cUTPからUPUの合成:金属塩に対する効果
UTP・TBA塩(5g、9.10mmol)をDMF 50mLに溶解して、DIC(1.69mL、10.92mmol)でcUTP溶液を作り、HPLCで定量したcUTP溶液1ml(0.11mmol)を取って、UMP・TBA塩溶液(0.13mmol)と各種金属塩(0.132mmol)を順に滴加して常温で反応させた。
【0078】
前記反応液をHPLCで分析し、UTPに対比して目的とするUPUへの転換率とUPUの純度を求めた。
【0079】
【表5】
【0080】
前記表5の結果より、UTP・TBA塩からUPUの合成において、カルシウム、鉄、マグネシウム、リチウム、又はセリウム塩の存在下では83%~99%の高い転換率を示したが、金属塩がない場合の転換率は41%として顕著に低いということを確認することができる。
【0081】
前記結果より、本発明の前記化学式2で表されるヌクレオシドリン酸化合物、その塩またはその水和物;縮合剤;および金属イオンを反応させる場合、金属イオンがない場合に比べて、高収率および高純度のUPUを得ることができるということを確認した。
【0082】
比較例1.UDPからUPUの合成:国際公開第2014/103704号
UDP・2Na塩(50g、0.112mmol)を精製水400mLに溶解して、Dowex 50w×2-100強酸性陽イオン交換樹脂に吸着させた後、精製水1200mLを30mL/分の速度で通過させて、Na塩が除去されたUDP溶液を溶出する。溶出液にトリブチルアミン(80mL、0.336mmol)を注入してpH7以上に中和し、60℃で減圧濃縮した後、1,4-ジオキサンで数回にかけて共沸減圧濃縮して水を除去する。得られた残渣を常温で12時間真空乾燥してUDP・2TBA塩75g(収率87%、水分1.2%)を得た。
【0083】
前記ステップでNa塩をTBA塩に置換させたUDP・2TBA(14.0g、18.1mmol)をプロピオニトリル46mLに溶解し、カルボニルジイミダゾール(8.8g、54.3mmol)を投入して常温で約30分間攪拌し減圧濃縮して溶媒を除去する。得られた残渣に精製水7mLを注入して約5℃に冷却した後、UDP・2Na(4.1g、9.1mmol)を投入する。6N塩酸水溶液を用いて反応溶液をpH3.9に滴定した後、60%塩化第2鉄水溶液(75μL、0.36mmol)を加え、10℃で27時間攪拌した。反応溶液を7.5N水酸化ナトリウム水溶液でpH10に滴定し、5℃で1時間攪拌した。同一温度でエタノール90mLを注入し、同一温度で12時間静置し濾過して固体形態のUPU化合物13.8g(純度86.9%)を得た。
【0084】
前記実験例1~5の結果に基づき、実施例1で確認された本発明に係る製造方法のように、前記化学式2で表されるヌクレオシドリン酸化合物、その塩またはその水和物;縮合剤;および金属イオンを反応させる場合、煩わしい転換工程なしで高い反応転換率で高収率および高純度のジヌクレオシドポリリン酸を合成できるということを確認した。これは、先行技術のうち最も効果的であった実験方法である比較例1に比べるにしても、煩わしいUDPの塩置換工程なしで市販のナトリウム塩などの金属塩形態の出発物質を別途の加工なしで利用可能であり、非常に簡素化された反応工程によって作業時間も画期的に改善したことを確認した。
【0085】
前記のような結果より、本発明に係るジヌクレオシドポリリン酸、その塩またはその水和物の製造方法は、産業に親和的で且つ大量生産に有用に適用できるということを確認することができる。
図1
図2
図3