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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】PLC用の差込プラグ及びコンセント
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/54 20060101AFI20231026BHJP
   H01R 13/46 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H04B3/54
H01R13/46 301Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022109602
(22)【出願日】2022-07-07
(62)【分割の表示】P 2020123457の分割
【原出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022136116
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2019225262
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594178147
【氏名又は名称】山本 公義
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 公義
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-090560(JP,A)
【文献】特開2013-125642(JP,A)
【文献】特開2013-165925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/54
H01R 13/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置に設けられた、直流電力の受給及び電力線を利用した通信(PLC)が可能な差込プラグであって、
複数の異なる電圧の直流電力の受給が可能な3つ以上の受給電極と、
PLC信号の送受信が可能な第1コネクタと、
を備え、
受給する直流電圧の総和が前記端末装置の使用直流電圧となるように、前記3つ以上の受給電極のうちの所定の受給電極に前記端末装置の電力線が接続されている
ことを特徴とする差込プラグ。
【請求項2】
プラグ本体と、
前記プラグ本体の表面から前記差込プラグの差込方向に突出した突部と、
を有し、
前記3つ以上の受給電極が前記突部の表面に設けられている
請求項1記載の差込プラグ。
【請求項3】
前記突部には先端表面から前記差込方向と反対方向に凹んだ孔部が形成され、
前記第1コネクタが前記孔部内に設けられている
請求項2に記載の差込プラグ。
【請求項4】
前記3つ以上の受給電極は受給電力の電圧が高いほど広い表面積を有する請求項1~3のいずれかに記載の差込プラグ。
【請求項5】
直流電力の電力供給及び電力線を利用した通信(PLC)が可能なコンセントであって、
直流電力の電圧を複数の異なる電圧に変換するDC/DC電力変換装置と、
複数の異なる電圧の直流電力を供給可能な3つ以上の供給電極と、
PLC信号の送受信が可能な第2コネクタと、
差込プラグの差し込みが可能な差込部とを備え、
前記3つ以上の供給電極が、前記差込部の内周面に設けられている
ことを特徴とするコンセント。
【請求項6】
直流電力の電力供給及び電力線を利用した通信(PLC)が可能なコンセントであって、
直流電力の電圧を複数の異なる電圧に変換するDC/DC電力変換装置と、
複数の異なる電圧の直流電力を供給可能な3つ以上の供給電極と、
PLC信号の送受信が可能な第2コネクタと、
を備え
前記3つ以上の供給電極は供給電力の電圧が高いほど広い表面積を有する
ことを特徴とするコンセント。
【請求項7】
直流電力を交流電力に変換するDC/AC電力変換装置をさらに備える請求項5又は6に記載のコンセント。
【請求項8】
直流電力信号とPLC信号との重畳及び分離を行うPLCモデムをさらに備える請求項5~7のいずれかに記載のコンセント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力の受給/供給及び電力線を利用した通信(PLC:Power Line Communication)が可能な差込プラグ及びコンセントなどに関するものである。
【背景技術】
【0002】
PLCは、AC100V、AC200Vなどの各家庭内に引き込まれている電力線に搬送波を重畳してデータ通信を行う技術である。図12に示すように、家庭内の各部屋に配設されているコンセント92にPLCモデム91を接続することによってネットワークが構築される。PLCモデム91に設けられているプラグをコンセント92に差し込むとPLCモデム91に給電が行われて、通信信号としてのPLC信号が電力信号に重畳して送り出されると共に、電力信号に重畳されたPLC信号が電力信号から分離されて受け取られる。
【0003】
PLCモデム91によって電力信号に重畳されて電力線に出力されるPLC信号は家庭内に配設された宅内電力線PLを通って他のコンセント92に接続されたPLCモデム91により受信されるか、あるいは、電力量計WM及び引込み電力線11を通って屋外の変圧器TFの2次側に設けられた親PLCモデム(不図示)を経由して既設の光ファイバーなどの公衆回線94を介してインターネットに接続されサーバー96やデータベース97、携帯端末98などに送信される。
【0004】
一方、光ファイバーなどの公衆回線94から送られてきた通信信号は、変圧器TFの2次側に設けられた親PLCモデム(不図示)によって電力信号に重畳されて引込み電力線11及び電力量計WMを通って家庭内に送られ、コンセント92に接続されたPLCモデム91によって宅内電力線PLから取り出されパソコン等の家電機器で受信される。これにより、例えば、外出先からスマートフォンなどのSNS端末から自宅の家電製品のオンオフなどを行うことが可能となる。
【0005】
このようにPLCシステムは、一般家庭に既に設けられている引込み電力線11及び宅内に配設されている宅内電力線PLを通信回線として利用するものであり、需要者の負担の少ない通信回線を提供できる利点がある。
【0006】
変圧器TFから引込み電力線11によって家庭内に引き込まれた電力は配分電盤Dにおいて複数に分岐されてそれぞれコンセント92あるいは各種の宅内電気機器(端末機)に供給される。電気容量のチェックや屋内配線の安全確保などの観点から、配分電盤DにはリミッターLi、主幹ブレーカーBr及び複数個の分岐ブレーカー5が設置されており、宅内電力線PLはこれらのブレーカー5に接続している。なお、地域によっては配分電盤DにリミッターLiが設置されていない所もある。PLC信号はこれらの主幹ブレーカーBr及び分岐ブレーカー5を通る毎に減衰するので、PLCシステムでは信号電圧を増幅するための中継装置などを配分電盤等に配置する必要がある場合があった。
【0007】
そこで、PLC信号の減衰を抑制するために主幹ブレーカーBr及び分岐ブレーカー5を迂回してPLC信号の送受信を行う技術が提案されているが(例えば特許文献1,2)、主幹ブレーカーBr及び分岐ブレーカー5を迂回してPLC信号の送受信を行う場合であっても交流電力信号から分離したPLC信号には未だ多くのノイズが含まれるという問題があった。
【0008】
このため直流電力にPLC信号を重畳して送受信することが検討されている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-23505号公報
【文献】特開2010-62887号公報
【文献】特開2010-40204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者による検討結果でも、直流電力にPLC信号を重畳して送受信するとPLC信号のノイズ低減が認められた。また、家庭用の電気機器の多くは直流電力で駆動するので、宅内電力供給を直流電力にすると、従来は必要とされていた電気機器ごとのAC/DC電力変換装置が不要となる利点も得られる。
【0011】
しかしながら家庭用の電気機器が駆動する直流電力の電圧は電気機器によって異なるところ(例えば5V,12V,24V,48Vなど)、従来のコンセントでは供給可能な直流電力の電圧は1種類であったため、宅内電力供給を直流電力にすると、電気機器の使用電圧に合わせて供給電圧の異なるコンセントを個別に準備する必要があった。
【0012】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なる電圧の直流電力の受給が可能で、電力線を利用した通信(PLC)が可能な差込プラグを提供することにある。
【0013】
また本発明の他の目的は、異なる電圧の直流電力の供給が可能で、電力線を利用した通信(PLC)が可能なコンセント及びテーブルタップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成する本発明に係る差込プラグは、直流電力の受給及び電力線を利用した通信(PLC)が可能な差込プラグであって、異なる電圧の直流電力の受給が可能な3つ以上の受給電極と、PLC信号の送受信が可能な第1コネクタとを備えたことを特徴とする。
【0015】
前記構成の差込プラグにおいて、プラグ本体と、前記プラグ本体の表面から前記差込プラグの差込方向に突出した突部とを有し、前記3つ以上の受給電極が前記突部の表面に設けられている構成としてもよい。
【0016】
前記構成の差込プラグにおいて、前記突部には先端表面から前記差込方向と反対方向に凹んだ孔部が形成され、前記第1コネクタが前記孔部内に設けられている構成としてもよい。
【0017】
前記構成の差込プラグにおいて、前記3つ以上の受給電極は受給電力の電圧が高いほど広い表面積を有する構成としてもよい。
【0018】
前記目的を達成する本発明に係るコンセントは、直流電力の電力供給及び電力線を利用した通信(PLC)が可能なコンセントであって、異なる電圧の直流電力の供給が可能な3つ以上の供給電極と、PLC信号の送受信が可能な第2コネクタとを備えたことを特徴とする。
【0019】
前記構成のコンセントにおいて、差込プラグが差込可能な差込部を有し、前記3つ以上の供給電極が、前記差込部の内周面に設けられている構成としてもよい。
【0020】
また前記構成のコンセントにおいて、前記差込部への差込プラグの着脱を検知する検知部をさらに有し、前記検知部による検知信号に基づいて電力供給が開始及び停止され、前記差込プラグが前記差込部に装着される際は、前記差込プラグの受給電極と前記供給電極とが接触した後に電力供給が開始され、前記差込プラグが前記差込部から離脱する際は、前記差込プラグの受給電極と前記供給電極とが離間する前に電力供給が停止される構成としてもよい。
【0021】
また前記構成のコンセントにおいて、前記差込プラグが被検知部としての凸部を有し、前記検知部は前記凸部の移動を検知して信号を発する構成としてもよい。
【0022】
また前記構成のコンセントにおいて、前記凸部が前記差込部に係止可能な係止部を有し、前記係止部は前記差込プラグが前記差込部に装着された状態から離脱するのを阻止する構成としてもよい。
【0023】
前記構成のコンセントにおいて、前記第2コネクタが、前記差込部の奥側面から前記差込方向と反対方向に突出するように設けられている構成としてもよい。
【0024】
前記構成のコンセントにおいて、前記3つ以上の供給電極は供給電力の電圧が高いほど広い表面積を有する構成としてもよい。
【0025】
前記構成のコンセントにおいて、内蔵制御手段をさらに設け、前記内蔵制御手段は、PLCを介した制御信号によって、コンセントから電力を受給する電気機器の電源の入/切制御を行うことが可能である構成としてもよい。
【0026】
前記目的を達成する本発明に係るテーブルタップは、電源コードと、前記電源コードの一方端に設けられた差込プラグ部と、前記電源コードの他方端に設けられたコンセント部とを有するテーブルタップであって、前記差込プラグ部が、異なる電圧の直流電力の受給が可能な3つ以上の受給電極と、PLC信号の送受信が可能な第1コネクタとを備え、前記コンセント部が、異なる電圧の直流電力の供給が可能な3つ以上の供給電極と、PLC信号の送受信が可能な第2コネクタとを備えたことを特徴とする。
【0027】
前記構成のテーブルタップにおいて、内蔵制御手段をさらに備え、前記内蔵制御手段は、PLCを介した制御信号によって、テーブルタップから電力を受給する電気機器の電源の入/切制御を行うことが可能である構成としてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、異なる電圧の直流電力の供給及び受給が可能で、電力信号から分離したPLC信号に含まれるノイズを低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る差込プラグ4及びコンセント3を用いたPLCシステムの一実施形態を示す概略回路図である。
図2】本発明で使用可能なカプラーの一例を示す回路図である。
図3】本発明に係るコンセント3の一例を示す斜視図である。
図4】本発明に係る差込プラグ4の一例を示す斜視図である。
図5】本発明に係るコンセント3の変形例を示す斜視図である。
図6】本発明に係る差込プラグ4の変形例を示す斜視図である。
図7図5のコンセント3に図6の差込プラグ4が差し込まれたことを検知スイッチ50で検知されるのを説明する図である。
図8】係止爪によってコンセント3に差込プラグ4が係止されるとともに検知スイッチ50で差込みが検知されるのを説明する図である。
図9】本発明で使用可能な検知部の他の形態を示す図である。
図10】本発明で使用可能な検知部の他の形態を示す図である。
図11】本発明に係るテーブルタップTの一例を示す斜視図である。
図12】従来のPLCシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る差込プラグ及びコンセントについて図に基づいてさらに詳しく説明するが本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0031】
図1は本発明に係る差込プラグ及びコンセントを用いたPLCシステムの一実施形態を示す概略回路図である。図1に示すように、変圧器TF(図12を参照)で低電圧化された商用電力は引込み電力線11により電力量計WMを通ってAC/DC電力変換装置6に送られる。そしてAC/DC電力変換装置6において交流電力が直流電力に変換されて宅内の所定位置に設けられた配分電盤Dに供給される。なお、電力量計WMは、通常、本体部がハウジング(筐体)Hに収納されているので、AC/DC電力変換装置6は電力量計WMのこのハウジングH内に配置されるのが望ましい。また、AC/DC電力変換装置6は電力量計WMの2次側以降であれば、例えば、主幹ブレーカーBrと分岐ブレーカー5との間などに設置しても構わない。
【0032】
本発明で使用する電力量計WMに特に限定はなく従来公知のものが使用できるが、電力量の計測の外に通信機能を備えたスマートメーターであるのが好ましい。宅内と宅外との信号通信がスマートメーターの通信機能を利用して行うことができるようになるからである。スマートメーターの通信方式は今のところ3つの方式、すなわち無線マルチホップ通信方式、N通信方式(携帯電話やWiMAXなどの通信キャリアを利用)、PLC方式があり、これらの通信方式の中から使用環境に合った方式が適宜選択され使用される。
【0033】
配分電盤Dには、リミッターLiと、主幹ブレーカーBrと、切替部21と、複数個の分岐ブレーカー5a,5b,5c・・・(総称して「分岐ブレーカー5」と記すことがある。)とが設けられている。そして切替部21には蓄電池Bが接続され、蓄電池Bには太陽光発電SCが接続されている。
【0034】
AC/DC電力変換装置6としては従来公知ものが使用できる。AC/DC電力変換装置6は例えばAC(交流)100VをDC(直流)48Vに変換する。そして後述するようにコンセント3の電力変換装置33においてさらにDC/AC変換あるいはDC/DC変換されて端末機の使用可能な電力及び電圧とされる。
【0035】
リミッターLiは、電力会社との契約により定められたアンペア以上の電流が流れると電力供給を遮断する装置である。本発明で使用するリミッターLiとしては従来公知ものが使用できる。なお、電力会社によってリミッターLiが不要であることがある。
【0036】
主幹ブレーカーBrは、家庭内全体の電流を検出して定格電流を超えると回路を遮断するものである。本発明で使用する主幹ブレーカーBrとしては従来公知ものが使用できる。
【0037】
切替器21は、通常時は、AC/DC電力変換装置6によって交流から直流に変換された電力を分岐ブレーカー5を介して各端末機に供給すると共に蓄電池Bにも供給する。蓄電池Bに供給された電力は蓄電池Bに蓄積される。また蓄電池Bは太陽光発電SCに接続しており、太陽光発電SCで発電された電力は蓄電池Bに蓄積される。一方、停電時は、蓄電池Bは蓄積されている電力が切替部21及び分岐ブレーカー5を介して端末機に供給される。
【0038】
分岐ブレーカー5は、例えば「2階照明器具」、「1階居間コンセント」など用途によって分けられており、その使用電流が定格電流を超えると回路を遮断するものである。本発明で使用する分岐ブレーカー5としては従来公知ものが使用できる。
【0039】
図1の回路図に示すように、AC/DC電力変換装置6の1次側には、電力量計WMを経由して変圧器TF(図12を参照)に接続された、1本の中性線Nと2本の電力線L1,L2の計3本からなる引込み電力線11が接続されている。そして、AC/DC電力変換装置6で交流電力が直流電力に変換されて、AC/DC電力変換装置6から2本の幹線からなる接続線12が延出しリミッターLiの1次側に接続されている。リミッターLiと主幹ブレーカーBrとは接続線13で接続されている。リミッターLiから接続線14が延出し、切替部21を経た後、接続線14に複数の分岐ブレーカー5が接続している。
【0040】
そして、各分岐ブレーカー5の2次側には宅内電力線PLが接続される。宅内電力線PLは屋内に配線されてそれぞれ所定位置に配設されたコンセント3あるいは端末機に接続される。コンセント3は、差込部31と、電力信号とPLC信号との重畳及び分離を行うPLCモデム32と、電力変換装置33とを有する。なお、電力変換装置33は、直流電力を交流電力に変換するDC/AC電力変換装置と直流電力を所定電圧を変換するDC/DC電力変換装置とを有する。
【0041】
エアコンディショナーAcや照明器具LE、パーソナルコンピューターPCなどの端末機は電力供給を受けるための差込プラグ4を有し、この差込プラグ4がコンセント3の差込部31に接続されることによって端末機に電力が供給されると共に、PLC通信が可能となる。
【0042】
以上のような直流電力信号にPLC信号を重畳し、直流電力信号からPLC信号を分離する本発明のPLCシステムによれば、交流電力信号にPLC信号を重畳・分離していた従来のPLCシステムに比べて、電力信号から分離したPLC信号に含まれるノイズが格段に減少し通信精度が向上する。
【0043】
またPLC信号の減衰及びノイズを抑制する観点から主幹ブレーカーBr及び分岐ブレーカー5を迂回してPLC信号を送受信するのが望ましい。図1に示すように、各分岐ブレーカー5の2次側には第1カプラー7a~7cがそれぞれ取り付けられている。また、リミッターLiの1次側に接続する接続線12には第2カプラー8が取り付けられている。第1カプラー7a~7c及び第2カプラー8は直流電力信号にPLC信号を重畳する及び/又は直流電力信号からPLC信号を分離する装置であって、誘導性結合器や容量性結合器から構成される。
【0044】
図2に、本発明で使用可能なカプラーの一例を示す回路図を示す。この図に示すカプラーは、結合回路部71と、PLC信号を増幅して直流電力信号に重畳して送出する送信回路部72と、結合回路部71を通じて取り込んだ直流電力信号からPLC信号を分離する受信回路部73とを有する。受信回路部73によって直流電力信号から分離されたPLC信号は制御部Cに送られる一方、制御部Cから送られてきたPLC信号は送信回路部72によって電力信号に重畳され送り出される。
【0045】
制御部Cは、第1カプラー7a~7c及び第2カプラー8から送られてくるPLC信号を、いずれの第1カプラー7a~7c又は第2カプラー8によって直流電力信号に重畳するかを制御する。例えば図1に示したPLCシステムにおいて、パーソナルコンピューターPCからエアーコンディショナーAcの入切信号や設定温度信号などの動作信号(PLC信号)が出力されると、動作信号はPLCモデム32によって直流電力信号に重畳され、コンセント3、宅内電力線PLを通って分岐ブレーカー5cに向かって送られる。そして、分岐ブレーカー5cに向かって送られた動作信号は、分岐ブレーカー5cの2次側に取り付けられた第1カプラー7cによって直流電力信号から分離されて制御部Cに送られる。制御部Cは、エアーコンディショナーAcに電力を送る宅内電力線PLが接続されている分岐ブレーカー5bの2次側に取り付けられた第1カプラー7bによってPCからの動作信号を直流電力信号に重畳する。直流電力信号に重畳された動作信号は、宅内電力線PLを通りコンセント3のPLCモデム32によって直流電力信号から分離されてエアーコンディショナーAcに至りエアーコンディショナーAcの動作が制御される。
【0046】
また電力量計(スマートメーター)WMの通信機能を利用してエアーコンディショナーAcの動作信号が宅外から送られてきた場合、動作信号は、電力量計WM内のPLCモデム(不図示)によってAC/DC電力変換装置6で交流から直流に変換された後の直流電力信号に重畳されて接続線12を介してリミッターLiに向かって送られる。そして図1に示すように、動作信号は、リミッターLiの1次側に設けられた第2カプラー8によって直流電力信号から分離されて制御部Cに送られる。制御部Cは、前記と同様に、エアーコンディショナーAcに電力を送る宅内電力線PLが接続されている分岐ブレーカー5bの2次側に取り付けられた第1カプラー7bによってPCからの動作信号を直流電力信号に重畳する。直流電力信号に重畳された動作信号は、宅内電力線PLを通りコンセント3のPLCモデム32によって直流電力信号から分離されてエアーコンディショナーAcに至りエアーコンディショナーAcの動作が制御される。
【0047】
このようなシステムによれば、動作信号(PLC信号)は主幹ブレーカーBr及び分岐ブレーカー5を迂回して送信されるので、送信途中における信号の減衰が抑制される。
【0048】
ここで、AC/DC電力変換装置6は、電力量計WMが収納されているハウジング(筐体)H内に設けられている。これにより、電力量計WMがスマートメーターである場合に、スマートメーターの通信機能を利用して宅外の通信網と接続することが可能となる。特にスマートメーターの通信方式が無線通信である無線マルチホップ通信方式とN通信方式の場合には、電力量計WM内のPLCモデム(不図示)によって、宅内から宅外に送信されるPLC信号は直流電力信号から分離され無線によって送信される一方、宅外から宅内に送信されてきたPLC信号は直流電力信号に重畳されて接続線12を介して宅内電力線PLに送られる。つまり、宅内と宅外との間で通信されるPLC信号についても交流電力に重畳されることがないので交流電圧信号に重畳していた従来に比べて低ノイズ通信が可能となる。
【0049】
(コンセント)
近年の宅内電気機器などの端末機の多くは直流電力で駆動するが、従来の宅内電力供給は交流電力であったため、端末機の内部や端末機から延出した差込プラグなどにおいて交流電力を直流電力に電力変換していた。一方、本発明のPLCシステムでは宅内電力供給は直流電力であるため、端末機の使用にあたって交流電力を直流電力に変換する必要がない。しかし、直流電力であっても端末機によって駆動電圧が異なるため、本発明のPLCシステムで使用するコンセント3は電力変換装置33を備える。電力変換装置33は、直流電力を交流電力に変換するDC/AC電力変換装置と、直流電力の電圧を変換するDC/DC電力変換装置とを有する。
【0050】
DC/AC電力変換装置では、AC/DC電力変換装置6において48Vの直流電圧に変換されコンセント3に送られてきた直流電圧を100Vなどの交流電力に変換し、交流電力を駆動電力する端末機に供給可能としている。またDC/DC電力変換装置では、例えばAC/DC電力変換装置6において48Vの直流電圧に変換されコンセント3に送られてきた直流電圧を0V,5V,12V,24V,48V,50V,100V,150Vなどの複数の直流電圧に変換し、端末機によって定められた使用電圧に合わせて選択使用可能としている。
【0051】
図3に本発明に係るコンセント3の差込口31の一例を示す斜視図を示す。図3に示す差込口31は交流電力用の差込部31aと直流電力用の差込部31bとを有する。交流電力用の差込部31aは従来と同様に形状及び構造であるのでここでは説明を省略する。
【0052】
直流電力用の差込部31bは、後述する差込プラグ4が嵌入可能な孔形状を有し、孔内に異なる供給電圧に対応する複数の供給電極を備える。具体的には直流電力用の差込部31bは、四角形状の開口を有し所定の奥行き方向長さを有する第1孔部311と、第1孔部311の奥側面の中央部に第1孔部311よりも小さい開口を有し所定の奥行き方向長さを有する第2孔部312とを有する。
【0053】
第1孔部311の4つの内側面の左右方向又は上下方向の中央部にはそれぞれ所定幅で奥行き方向に延在する溝313a~313d(図3では溝313a,313bのみ図示)が形成され、各溝313a~313dの底面には供給電極34a~34d(図3では供給電極34a,34bのみ図示)が形成されている。
【0054】
また第2孔部312の4つの内側面にも左右方向又は上下方向の中央部にそれぞれ所定幅で前後方向に延在する溝314a~314d(図3では溝314a,314bのみ図示)が形成され、各溝314a~314dの底面には供給電極35a~35d(図3では供給電極35a,35bのみ図示)が形成されている。このような構造によって差込部31bは8つの供給電極34a~34d,35a~35dを有し、例えば、供給電極35a~35dには24Vの直流電力が供給され、供給電極34aはアース電極、供給電極34b,34dには12Vの直流電力が供給され、供給電極34cには5Vの直流電力が供給される。なお、安全性の観点からは、電圧の高い電力は第1孔部の開口から離れた位置の供給電極、すなわち第2孔部312の内側面に設けられている供給電極35a~35dに供給され、電圧の低い電圧は第1孔部の内周面に設けられている供給電極34a~34dに供給されるようにするのが望ましい。
【0055】
そしてまた、第2孔部312の奥側面の中央部にはUSBの第2コネクタ36が手前方向に向かって伸び出るように形成されており、USBの第2コネクタ36の先端は第1孔部311の奥側面にわずかに届かない所に位置する。
【0056】
(差込プラグ)
図4に、本発明に係る差込プラグ4の一例を示す斜視図を示す。図4の差込プラグ4は、端末装置から延出する電源コード40の先端に設けられており、図3に示すコンセント3の差込口31の差込部31bに差し込みが可能とされている。すなわち、差込プラグ4は、後面から電源コード40が延出する略直方体形状のプラグ本体41と、プラグ本体41の前面に形成された、前方(差込方向)に突出する突部42とを有する。突部42は、前方に突出する四角柱状の第1突部421と、第1突部421の前面の中央部において前方に突出する前後方向に垂直な断面形状が第1突部421よりも小さい四角柱状の第2突部422とを有する。第2突部422の前面には外周縁から内側に所定幅のフランジ部を残して後方に凹んだ四角形状の孔部43が形成され、孔部43の後面の略中央部にはUSBの第1コネクタ46が前方向に向かって伸び出るように形成されている。
【0057】
第1突部421及び第2突部422は、コンセント3の差込部31bの第1孔部311及び第2孔部312にそれぞれ嵌入可能な形状とされている。第1突部421及び第2突部422の上下及び左右の4つの外側面の左右方向及び上下方向の中央部にはそれぞれ所定幅で前後方向に延在する帯状の受給電極423a~423d(図4では受給電極423a,423dのみ図示)及び受給電極424a~424dが当該外側面から外方にわずかに突出するように設けられている。そして受給電極423a~423d及び受給電極424a~424dは前端側を中心として後端側が弾性的に揺動可能に設けられている。
【0058】
コンセント3の差込口31bに差込プラグ4の突部42を差し込むと、コンセント3の差込口31bの第1孔部311及び第2孔部312に差込プラグ4の第1突部421及び第2突部422が嵌入する。そして、差込口31の第1孔部311及び第2孔部312の内側面に形成された、底面に供給電極34a~34d及び35a~35dを有する溝313a~313d,溝314a~314dに、差込プラグ4の第1突部421及び第2突部422の外側面から外方にわずか突出する受給電極423a~423d及び受給電極424a~424dが接触しながら進入する。これにより、コンセント3の8つの供給電極34a~34d,35a~35dと差込プラグ4の8つの受給電極423a~423d,424a~424dとが面接触し接続する。また同時に、コンセント側のUSBの第2コネクタ36と差込プラグ側のUSBの第1コネクタ46とが接続する。なお、前述のように、受給電極423a~423d及び受給電極424a~424dは、供給電極34a~34d及び35a~35dとの摺接によって弾性変形可能となされている。
【0059】
差込プラグ4の8つの受給電極423a~423d,424a~424dのうち所望の受給電極、すなわち端末機の使用直流電圧に対応する所定の受給電極に端末機の電力線が接続されている。そして端末機に所望の直流電力が供給される。例えば、端末機の使用直流電圧が48Vの場合には、コンセント3側の24Vの直流電力を供給する供給電極35a及び供給電極35bに接続する差込プラグ4側の受給電極424a及び受給電極424bに、供給される24Vの直流電力が直列となるように端末機の電力線が接続される。つまり、コンセント3側から供給される直流電圧の総和(直列配置)が端末機の使用直流電圧になるように端末機の電力線が差込プラグ4の所定の受給電極に選択接続される。また同時に、コンセント3側のアース電極としての供給電極34aに接続する差込プラグ4側のアース電極としての受給電極423aに端末機の電力線が接続される。またコンセント側のUSBの第2コネクタ36と差込プラグ側のUSBの第1コネクタ46とが接続することによってPLC信号の送受信が可能となる。
【0060】
(変形例1)
図5図7にコンセント3及び差込プラグ4の変形例を示す。図5及び図6にコンセント3及び差込プラグ4の斜視図であり、図7は差込プラグ4のコンセント3への差込みを検知する説明図である。
【0061】
差込プラグ4をコンセント3に差し込む場合及び差込プラグ4をコンセント3から引き抜く場合に、コンセント3の供給電極と差込プラグ4の受給電極との間にアーク放電が生じることがある。直流電力の場合、アーク放電は消えにくく危険である。そこで、コンセント3への差込プラグ4の着脱を検知する検知部を設けて、検知部による検知信号に基づいて、差込プラグ4がコンセント3に装着される際は、差込プラグ4の受給電極とコンセント3の供給電極とが接触した後に電力供給を開始し、差込プラグ4がコンセント3から離脱する際は、差込プラグ4の受給電極とコンセント3の供給電極とが離間する前に電力供給を停止するようにする。
【0062】
図5に示すように、コンセント3の第1孔部311の奥側面の左下部に円形の係入孔37が形成されている。図7に示すように、係入孔37の軸方向奥側には検知部としての検知スイッチ50が配置されている。この検知スイッチ50はいわゆるリミットスイッチであって、直方体形状のスイッチ本体51と、スイッチ本体51から外方に出没可能で、バネ(不図示)によって突出方向に常に付勢されているプランジャー52と、細板状で長手方向一方端がスイッチ本体51に軸54で揺動可能に軸支され、長手方向途中部がプランジャー52の先端に当接するレバー53とを備える。通常状態ではプランジャー52はバネ(不図示)の付勢力によってスイッチ本体51から突出し、プランジャー52の先端にレバー53が当接している。そして、このような構造の検知スイッチ50は、レバー53の長手方向自由端側が係入孔37の軸中心上に位置するようにコンセント3内に配置される。
【0063】
一方、図6に示すように、差込プラグ4の第1突部421の前面の右下部には前方向に突出した円柱形状のピン(凸部)47が設けられている。ピン47の外径はコンセント3の係入孔37の内径よりも小さく、また、ピン47の前方向への突出長さは、差込プラグ4がコンセント3に完全に差し込まれたときに、ピン47の先端が検知スイッチ50のレバー53に当接してプランジャー52をスイッチ本体51内に押し入れることができる長さに設定されている。
【0064】
図7に示すように、このような構造の差込プラグ4がコンセント3に差し込まれると、コンセント3の8つの供給電極34a~34d,35a~35dと差込プラグ4の8つの受給電極423a~423d,424a~424dとが面接触し、この電極同士の接触面積は、差込プラグ4がコンセント3に差し込まれるにしたがって増大する。また差込プラグ4がコンセント3に差し込まれると差込プラグ4のピン47がコンセント3の係入孔37内に進入していく。そして、差込プラグ4がコンセント3に完全に差し込まれる直前において、差込プラグ4のピン47が検知スイッチ50のレバー53に当接しレバー53をスイッチ本体51側に回動させる。このレバー53の回動によってプランジャー52が不図示のバネに抗してスイッチ本体51内に押し入れられて検知スイッチ50がオンになり(図7(b))、コンセント3の供給電極から差込プラグ4の受給電極への電力供給が開始される。このように、差込プラグ4の受給電極とコンセント3の供給電極とが接触した後に電力供給が開始されるので、差込プラグ4の受給電極とコンセント3の供給電極とが接近した際に生じるアーク放電が効果的に抑制される。
【0065】
また、差込プラグ4がコンセント3から引き抜かれる場合は、前述の差込プラグ4がコンセント3に差し込まれる場合と反対の動作が行われる。すなわち、差込プラグ4がコンセント3から引き抜かれる際、まず、差込プラグ4のピン47と検知スイッチ50のレバー53との当接状態が解除されて、プランジャー52が不図示のバネの付勢力によってスイッチ本体51から突出する。これによって検知スイッチ50はオンからオフになり、コンセント3の供給電極から差込プラグ4の受給電極への電力供給が停止される。これにより差込プラグ4の受給電極とコンセント3の供給電極とが離間する際に生じるアーク放電が効果的に抑制される。
【0066】
(変形例2)
図8に、コンセント3及び差込プラグ4の他の変形例を示す。図8は差込プラグ4のコンセント3への差込みを検知する説明図である。図8に示すように、差込プラグ4のプラグ本体41の左右両側面には、先端(奥側)が自由端とされた一対の腕状部(凸部)48a,48bが設けられている。一対の腕状部48a,48bの先端には外方に突出した係止爪(係止部)481a,481bが形成され、一対の腕状部48a,48bの途中部には外方に突出した直方体形状の押圧部482a,482bが形成されている。係止爪481a,481bは奥側面が手前に向かって外方に傾斜した傾斜面とされ、手前側面がプラグ本体の側面に対して垂直な垂直面とされている。係止爪481a,481bと押圧部482a,482bとは腕状部48a,48bと一体に形成されている。一対の腕状部48a,48bの形成位置は、差込プラグ4がコンセント3に完全に差し込まれたときに、コンセントに形成された係止孔38a,38bに係止爪481a,481bが係止する位置である。また、一対の腕状部48a,48bとプラグ本体41の側面との間には、押圧部482a,482bに対してプラグ本体41の内方に向かって外力が加わったときに、一対の腕状部48a,48bが撓んで係止爪481a,481bがプラグ本体41の内方側に移動可能となる隙間が形成されている。
【0067】
一方、コンセント3の第1孔部311の左右の内側面には四角形状の一対の係入孔38a,38bが形成されている。そして、係入孔38aの右方には検知部としての検知スイッチ50が配置されている。より詳細には、レバー53の自由端側が係入孔38aの軸中心上に位置するように検知スイッチ50が配置されている。なお、検知スイッチ50の構造は変形例1で示したものと同一であるのでここでは説明を省略する。
【0068】
このような構造の差込プラグ4がコンセント3に差し込まれると、変形例1と同様に、コンセント3の8つの供給電極34a~34d,35a~35dと差込プラグ4の8つの受給電極423a~423d,424a~424dとが面接触し、この電極同士の接触面積は、差込プラグ4がコンセント3に差し込まれるにしたがって増大する。そして、差込プラグ4がコンセント3に完全に差し込まれる直前に差込プラグ4の係止爪481a,481bの傾斜面がコンセント3の第1孔部311の左右の縁部に接触して一対の腕状部48a,48bの先端部はプラグ本体41の内方側に撓む。そして係止爪481a,481bの傾斜面が第1孔部311の左右の縁部を越えると、一対の腕状部48a,48bは弾性力によって元の状態に戻り、係止爪481a,481bの垂直面が係止孔38a,38bに係止する。これにより差込プラグ4のコンセント3からの抜けが阻止される。また同時に、係止爪481aが検知スイッチ50のレバー53に当接しレバー53をスイッチ本体51側に回動させる。このレバー53の回動によってプランジャー52が不図示のバネに抗してスイッチ本体51内に押し入れられて検知スイッチ50がオンになり(図8(b))、コンセント3の供給電極から差込プラグ4の受給電極への電力供給が開始される。このように、差込プラグ4の受給電極とコンセント3の供給電極とが完全に接触した後に電力供給が開始されるので、差込プラグ4の受給電極とコンセント3の供給電極とが接近した際に生じるアーク放電が効果的に抑制される。
【0069】
反対に、差込プラグ4がコンセント3から引き抜かれる場合は、まず、差込プラグ4の腕状部48a,48bの押圧部482a,482bが内方に向かって押圧される。すると、一対の腕状部48a,48bの先端側が内方に撓むことで係止爪481a,481bの係止孔38a,38bとの係止状態が解消され差込プラグ4のコンセント3からの引き抜きが可能になる。また同時に、係止爪481aと検知スイッチ50のレバー53との当接状態が解除されて、プランジャー52が不図示のバネの付勢力によってスイッチ本体51から突出する(図8(a)の状態)。これによって検知スイッチ50はオンからオフになり、コンセント3の供給電極から差込プラグ4の受給電極への電力供給が停止される。その後、差込プラグ4がコンセント3から引き抜かれる。したがって、差込プラグ4の受給電極とコンセント3の供給電極とが離間する際にアーク放電が生じることがない。
【0070】
なお、以上説明した変形例では検知部として接触形リミットスイッチ50を用いたが、検知部はこれに限定されるものではなく、コンセント3への差込プラグ4の着脱を検知するものであれば従来公知のものを用いることができる。例えばJIS C8201-5-2に記載されている各種の近接スイッチを本発明の検知部として使用することができる。
【0071】
図9は検知部として誘導形近接スイッチ50aを用いた場合であって、プラグ4側に設けられたピン47の先端部に金属部471を設けると共に、コンセント3側に誘導形近接スイッチ50aを設ける。近接スイッチ50a内の検出コイル(不図示)から出る高周波磁界中に、ピン47の金属部471が接近すると、金属部471に電磁誘導現象による誘導電流が流れ、この電流によって近接スイッチ50a内の検出コイル(不図示)のインピーダンスが変化、発振が停止し、これによってコンセント3へのプラグ4の装着が検知される。
【0072】
また図10は検知部として光電形近接スイッチ50bを用いた場合であって、プラグ4側に板状の遮光板472を設けると共に、コンセント3側に光電形近接スイッチ50bを設ける。近接スイッチ50bは所定距離を隔てて発光素子501と受光素子502とが対向配置された構造を有する。コンセント3にプラグ4が差し込まれていない状態では、発光素子501から出射された光は一直線に受光素子502に投射され受光される。一方、プラグ4がコンセント3に差し込まれると、プラグ4の遮光板472が近接スイッチ50bの発光素子501と受光素子502との間に挿入され、発光素子501からの出射光が遮光板472によって遮られて受光素子502で受光されなくなる。これによりコンセント3へのプラグ4の装着が検知される。
【0073】
(テーブルタップT)
図11に、本発明に係るテーブルタップTの一例を示す斜視図を示す。図11に示すテーブルタップTは、所定長さを有する電源コード30と、電源コード30の前端に設けられた差込プラグ部4aと、電源コード30の後端に設けられたコンセント部3aとを有する。コンセント部3aには交流電力用の差込部31cと直流電力用の差込部31dとが前後方向に所定間隔で交互に2つずつ形成されている。差込プラグ部4aの構造は図4に示した差込プラグ4と同一の構造である。また、コンセント部3aの直流電力用の差込部31dの構造は図3に示した直流電力用の差込部31bと同一の構造である。なお、コンセント部3aにはDC/AC電力変換装置(不図示)が内蔵されており、コンセント部3aに供給される直流電力がこのDC/AC電力変換装置によって所定電圧の交流電力に変換され交流電力用の差込部31cから供給可能とされている。
【0074】
以上説明したコンセント3及びテーブルタップTと、差込プラグ4とによれば、交流電力と直流電力とを供給可能で且つUSBによってPLC信号を送受信可能となるため、ノイズの代表的な発生源である交流電力駆動の電子レンジやモーターなどの動作ノイズがPLC信号に及ぼす影響を低く抑えることが可能となる。
【0075】
(その他)
以上説明した実施形態では差込プラグ4のプラグ本体41と電源コード40とは分離不能に成形されていたが、プラグ本体41と電源コード40とは離接可能であってもよい。例えば、電源コード40の先端に従来公知の直流プラグを設けると共に、プラグ本体41に直流ジャックを設けて、プラグ本体41の直流ジャックに対して電源コード40の先端の直流プラグを抜き差し可能とする。このような構成によれば、直流プラグを有する従来の電気機器に対しても本発明のコンセント3及び差込プラグ4を介して直流電力を供給することが可能となる。
【0076】
また、以上説明したコンセント3の差込部31b及び差込プラグ4の突部42の差込方向に垂直な断面形状は四角形状としていたが、これに限定されるものではなく、例えば円柱状や多角柱状であっても構わない。また差込部31b及び突部42は1段であってもよいし、3段以上であってもよい。そしてまた、コンセント側に突部を設け、差込プラグ側に差込部を設けて差込プラグとコンセントとを接続するようにしてもよい。また供給電極及び受給電極は3つ以上、すなわち供給可能な直流電力の電圧が2種類以上であればよく、供給電極及び受給電極は9つ以上であってもよいし、7つ以下であってもよい。
【0077】
そしてまた、本出願人が特開2018-125830において既に提案しているように、本発明のコンセント3に内蔵制御手段(アドレスを指定するデバイスと出力用のリレーなどを備える)を設けることによって、インターネットからの情報、或いはインターネットへの情報の伝達が可能となる。例えば、本発明の差し込みプラグ及びコンセントを農業分野に用いた場合、屋内外の気温や湿度、土の温度等を測定するセンサーからの情報をコンセントを通じて伝達することができる。
またコンセント又はテーブルタップに内蔵制御手段を設けると、通信機能を有しない機器も含めコンセントやテーブルタップに接続した電気機器の電源のON/OFF等が遠隔操作可能となる。また、カメラを接続すると農作物の栽培、育成状況を監視することや、不審者の侵入、火災、ガス漏れ等の画像を伝達することができる。
【0078】
本発明の差込プラグを介して本発明のコンセントに差し込むだけで、それぞれの機器に対応した直流電力が供給されると共に、各々の機器で測定・検知されたデータがPLC信号として電力信号に重畳されて農業施設内のコンピューターや公衆回線を介してインターネットに接続されたサーバーやデータベース、携帯端末などに送信可能となる。加えて、送信された検知データに基づき、コンピュータや携帯端末から制御信号が発信されて、農業施設に設置されている本発明の差込プラグを介して本発明のコンセントに差し込まれている温度調整器や散水器などの各種機器が制御される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る差込プラグ及びコンセントによれば、異なる電圧の直流電力の供給及び受給が可能で、また電力信号から分離したPLC信号に含まれるノイズを低減させることが可能となる。
【符号の説明】
【0080】
3 コンセント
3a コンセント部
4 差込プラグ
4a 差込プラグ
5,5a~5c 分岐ブレーカー
6 AC/DC電力変換装置
C 制御部
7,7a~7c 第1カプラー
8 第2カプラー
B 蓄電池
T テーブルタップ
11 引込み電力線
30 電源コード
31 差込部
31a,31b,31c,31d 差込部
311 第1孔部
312 第2孔部
32 PLCモデム
33 電力変換装置
34a~34d 供給電極
35a~35d 供給電極
36 第2コネクタ
37 係入孔
38a,38b 係入孔
41 プラグ本体
42 突部
421 第1突部
422 第2突部
423a~423d 受給電極
424a~424d 受給電極
43 孔部
46 第1コネクタ
47 ピン(凸部)
48a,48b 腕状部(凸部)
481a,481b 係止爪(係止部)
50 検知スイッチ(検知部)
Ac エアコンディショナー(端末機)
Br 主幹ブレーカー
LE 照明器具(端末機)
Li リミッター
PC パーソナルコンピューター(端末機)
PL 宅内電力線
SC 太陽光発電
TF 変圧器
WM 電力量計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12