(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】変換装置、変換方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 17/05 20110101AFI20231026BHJP
E02B 3/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
G06T17/05
E02B3/00
(21)【出願番号】P 2022138244
(22)【出願日】2022-08-31
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】望月 貫一郎
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-185702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 17/00-17/30
E02B 3/00- 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川横断図上の河川の両岸における計画堤防の二つの堤防法線上にそれぞれ位置する二つの実測点、河床、及び、前記河川の断面上の複数の位置の特定座標系における第1座標情報を取得するとともに、前記二つの実測点及び前記河床の、前記特定座標系と異なる地理座標系における第2座標情報を取得する取得手段と、
前記第1座標情報に基づいて、前記二つの堤防法線上でそれぞれ前記河床の高さに対応する二つの設定点の前記特定座標系における座標を算出するとともに、前記第2座標情報に基づいて、前記二つの設定点の前記地理座標系における座標を算出する座標算出手段と、
前記二つの実測点及び前記二つの設定点の前記特定座標系における座標を、前記地理座標系における座標に変換するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、
前記算出されたパラメータを用いて、前記複数の位置の前記特定座標系における座標を、前記地理座標系における座標に変換する変換手段と、
前記変換された座標に関する情報を出力する出力部と、
を有することを特徴とする変換装置。
【請求項2】
前記取得手段は、複数の前記河川横断図のそれぞれについて、前記第1座標情報及び前記第2座標情報を取得し、
前記特定座標系は、前記複数の河川横断図のそれぞれに固有の座標系であり、
前記地理座標系は、前記複数の河川横断図に共通する座標系であり、
前記パラメータ算出手段は、前記複数の河川横断図のそれぞれについて、前記パラメータを算出する、請求項1に記載の変換装置。
【請求項3】
前記複数の河川横断図のそれぞれにおいて、前記特定座標系における前記河川横断図と直交する方向の軸の座標値は同一の値に設定される、請求項2に記載の変換装置。
【請求項4】
前記座標算出手段は、最深河床高を前記河床の高さとして特定する、請求項1または2に記載の変換装置。
【請求項5】
前記変換手段は、複数の前記河川横断図について、各河川横断図上の位置の前記特定座標系における座標を、前記地理座標系における座標に変換し、
前記複数の河川横断図のうち、相互に隣接する河川横断図について変換された座標を補間して3次元モデルを生成する生成手段をさらに有する、請求項1または2に記載の変換装置。
【請求項6】
コンピュータが、
河川横断図上の河川の両岸における計画堤防の二つの堤防法線上にそれぞれ位置する二つの実測点、河床、及び、前記河川の断面上の複数の位置の特定座標系における第1座標情報を取得するとともに、前記二つの実測点及び前記河床の、前記特定座標系と異なる地理座標系における第2座標情報を取得し、
前記第1座標情報に基づいて、前記二つの堤防法線上でそれぞれ前記河床の高さに対応する二つの設定点の前記特定座標系における座標を算出するとともに、前記第2座標情報に基づいて、前記二つの設定点の前記地理座標系における座標を算出し、
前記二つの実測点及び前記二つの設定点の前記特定座標系における座標を、前記地理座標系における座標に変換するパラメータを算出し、
前記算出されたパラメータを用いて、前記複数の位置の前記特定座標系における座標を、前記地理座標系における座標に変換し、
前記変換された座標に関する情報を出力する、
ことを特徴とする変換方法。
【請求項7】
コンピュータの制御プログラムであって、
河川横断図上の河川の両岸における計画堤防の二つの堤防法線上にそれぞれ位置する二つの実測点、河床、及び、前記河川の断面上の複数の位置の特定座標系における第1座標情報を取得するとともに、前記二つの実測点及び前記河床の、前記特定座標系と異なる地理座標系における第2座標情報を取得し、
前記第1座標情報に基づいて、前記二つの堤防法線上でそれぞれ前記河床の高さに対応する二つの設定点の前記特定座標系における座標を算出するとともに、前記第2座標情報に基づいて、前記二つの設定点の前記地理座標系における座標を算出し、
前記二つの実測点及び前記二つの設定点の前記特定座標系における座標を、前記地理座標系における座標に変換するパラメータを算出し、
前記算出されたパラメータを用いて、前記複数の位置の前記特定座標系における座標を、前記地理座標系における座標に変換し、
前記変換された座標に関する情報を出力する、
ことを前記コンピュータに実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換装置、変換方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一級河川の直轄管理区間等の重要な河川区間において、最新の河道形状及び長期的な河道変化の把握を目的として、河川の縦横断測量が実施され、その測量の結果、距離標毎に河川横断図が作成されている。しかしながら、作成される河川横断図は2次元の図であり、管理者が河道形状又は河道変化をより的確に把握できるように、河川横断図に示される河川を3次元で表示することが要求されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、道路または河川からなる対象物の平面図、縦断図、横断図の2次元CADデータに基づいて、CADデータを生成するCADデータ変換システムが開示されている。このCADデータ変換システムは、平面図、縦断図及び横断図の縮尺を揃えるとともに、隣り合う基準点の各組に対し、隣り合う2つの基準点の平面位置及び高さと、その2つの基準点のそれぞれの断面形状とに基づいてその基準点間の3次元情報を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
管理者が河道形状又は河道変化を的確に把握するためには、3次元表示の要求に加え、河川横断図上の各位置の座標をより精度良く変換することが要求されている。
しかしながら、2次元データを3次元データに変換する場合、どの点を基準にして変換するかにより、変換される3次元データの精度が大きく異なってしまい、例えば特許文献1のCADデータ変換システムのように隣り合う基準点を設定すると精度が低下する場合があった(離れた点を基準点に設定するのが望ましい)。
【0006】
本発明は、河川横断図上の各位置の座標をより精度良く変換することが可能な変換装置、変換方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る変換装置は、河川横断図上の河川の両岸における計画堤防の二つの堤防法線上にそれぞれ位置する二つの実測点、河床、及び、河川の断面上の複数の位置の特定座標系における第1座標情報を取得するとともに、二つの実測点及び河床の、特定座標系と異なる地理座標系における第2座標情報を取得する取得手段と、第1座標情報に基づいて、二つの堤防法線上でそれぞれ河床の高さに対応する二つの設定点の特定座標系における座標を算出するとともに、第2座標情報に基づいて、二つの設定点の地理座標系における座標を算出する座標算出手段と、二つの実測点及び二つの設定点の特定座標系における座標を、地理座標系における座標に変換するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、算出されたパラメータを用いて、複数の位置の特定座標系における座標を、地理座標系における座標に変換する変換手段と、変換された座標に関する情報を出力する出力部と、を有する。
【0008】
また、本発明に係る変換装置において、取得手段は、複数の河川横断図のそれぞれについて、第1座標情報及び第2座標情報を取得し、特定座標系は、複数の河川横断図のそれぞれに固有の座標系であり、地理座標系は、複数の河川横断図に共通する座標系であり、パラメータ算出手段は、複数の河川横断図のそれぞれについて、パラメータを算出することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る変換装置において、複数の河川横断図のそれぞれにおいて、特定座標系における河川横断図と直交する方向の軸の座標値は同一の値に設定されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る変換装置において、座標算出手段は、最深河床高を河床の高さとして特定することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る変換装置において、変換手段は、複数の河川横断図について、各河川横断図上の位置の特定座標系における座標を、地理座標系における座標に変換し、複数の河川横断図のうち、相互に隣接する河川横断図について変換された座標を補間して3次元モデルを生成する生成手段をさらに有することが好ましい。
【0012】
本発明に係る変換方法は、コンピュータが、河川横断図上の河川の両岸における計画堤防の二つの堤防法線上にそれぞれ位置する二つの実測点、河床、及び、河川の断面上の複数の位置の特定座標系における第1座標情報を取得するとともに、二つの実測点及び河床の、特定座標系と異なる地理座標系における第2座標情報を取得し、第1座標情報に基づいて、二つの堤防法線上でそれぞれ河床の高さに対応する二つの設定点の特定座標系における座標を算出するとともに、第2座標情報に基づいて、二つの設定点の地理座標系における座標を算出し、二つの実測点及び二つの設定点の特定座標系における座標を、地理座標系における座標に変換するパラメータを算出し、算出されたパラメータを用いて、複数の位置の特定座標系における座標を、地理座標系における座標に変換し、変換された座標に関する情報を出力する。
【0013】
本発明に係る制御プログラムは、コンピュータの制御プログラムであって、河川横断図上の河川の両岸における計画堤防の二つの堤防法線上にそれぞれ位置する二つの実測点、河床、及び、河川の断面上の複数の位置の特定座標系における第1座標情報を取得するとともに、二つの実測点及び河床の、特定座標系と異なる地理座標系における第2座標情報を取得し、第1座標情報に基づいて、二つの堤防法線上でそれぞれ河床の高さに対応する二つの設定点の特定座標系における座標を算出するとともに、第2座標情報に基づいて、二つの設定点の地理座標系における座標を算出し、二つの実測点及び二つの設定点の特定座標系における座標を、地理座標系における座標に変換するパラメータを算出し、算出されたパラメータを用いて、複数の位置の特定座標系における座標を、地理座標系における座標に変換し、変換された座標に関する情報を出力することをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る変換装置、変換方法及び制御プログラムは、河川横断図上の各位置の座標を3次元の座標系における座標により精度良く変換することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】変換装置100の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】(A)、(B)は、河川横断図の一例を示す模式図である。
【
図3】(A)は、横断図テーブル111のデータ構造の一例を示す図であり、(B)は、縦断図テーブル112のデータ構造の一例を示す図であり、(C)は、距離標テーブル113のデータ構造の一例を示す図である。
【
図4】(A)は、第1座標テーブル114のデータ構造の一例を示す図であり、(B)は、第2座標テーブル115のデータ構造の一例を示す図である。
【
図5】変換処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】地理座標系に変換された3次元モデルの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶことに留意されたい。
【0017】
図1は、本発明に係る変換装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0018】
変換装置100は、例えばサーバである。変換装置100は、パーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン等でもよい。
図1に示すように、変換装置100は、操作装置101、表示装置102、通信装置103、記憶装置110及び処理回路120等を有する。操作装置101、表示装置102、通信装置103、記憶装置110及び処理回路120は、バスを介して相互に接続される。
【0019】
操作装置101は、キーボード、マウス等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による操作を受け付け、利用者の入力に応じた信号を処理回路120に出力する。
【0020】
表示装置102は、出力部の一例である。表示装置102は、液晶、有機EL等から構成されるディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、処理回路120からの指示に従って、画像データをディスプレイに表示する。
【0021】
通信装置103は、出力部の一例である。通信装置103は、有線又は無線の通信インタフェース回路を備え、変換装置100を通信ネットワークに接続する。通信装置103は、例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の通信プロトコルに従った有線通信を行う。なお、通信装置103は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11規格の無線通信方式による無線通信を行ってもよい。通信装置103は、処理回路120から供給された情報を外部の装置に送信する。また、第1通信装置117は、外部の装置から受信した情報を処理回路120に供給する。
【0022】
記憶装置110は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の半導体メモリ、ハードディスク等の固定ディスク装置、又は、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を備える。記憶装置110は、処理回路120による処理に用いられるコンピュータプログラム、データ等を記憶する。コンピュータプログラムは、不図示のサーバから通信装置103を介して記憶装置110にインストールされる。なお、コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置110にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM、DVD-ROM等である。また、記憶装置110は、データとして、横断図テーブル111、縦断図テーブル112、距離標テーブル113、第1座標テーブル114及び第2座標テーブル115等を記憶する。各テーブルの詳細については後述する。
【0023】
処理回路120は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。処理回路120は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等でもよい。処理回路120は、操作装置101、表示装置102、通信装置103及び記憶装置110等と接続され、これらの各部を制御する。処理回路120は、記憶装置110に記憶されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従って動作することにより、取得手段121、座標算出手段122、パラメータ算出手段123、変換手段124、生成手段125及び出力制御手段126として機能する。処理回路120は、特定のCADデータ(Computer-Aided Design)に用いられるCAD座標系で示される河川横断図上の各位置の座標を、GIS(Geographic Information System)データ(地理空間データ)に用いられる地理座標系で示される3次元空間上の座標に変換する。
【0024】
図2(A)及び
図2(B)は、河川横断図の一例を示す模式図である。
【0025】
河川横断図は、河川の縦横断測量における測量結果に基づいて作成される河川の横断図である。
【0026】
一級河川の直轄管理区間等の重要な河川区間において、河川の変動を調査するために定期的に(原則として5年以内のサイクルで)河川定期縦横断測量が実施される。河川定期縦横断測量は、原則として、非出水期(概ね10月~翌年3月)に実施されるが、河川の実情を考慮して適宜実施される。また、冬期に積雪する地域では、積雪の影響がない時期に実施される。河川横断図の一例である定期河川横断図は、河川定期縦横断測量にて作成される。
【0027】
また、河川の縦横断測量は、河道計画の立案もしくは変更があった河川区間、又は、大規模出水等により河道に大きい変化が生じた河川区間等においても実施される。さらには、河川の縦横断測量は、大規模な改修工事もしくは砂利採取が実施された河川等における形状変化が著しい場合、又は、河床が著しく変動するような大規模出水後等にも適宜実施される。河川横断図は、これらの適宜に実施される縦横断測量においても作成される。
【0028】
縦断測量では、河川の両岸に設置された距離標(キロポスト)の標高、距離標を基準とした堤防高等の変化点の地盤高、並びに、主要な構造物の位置及び標高が測定され、河川縦断図(不図示)が作成される。河川の両岸は、河川の左岸及び右岸を含む。山を背にしたときの、即ち河川の上流側から見たときの、左側の岸が左岸であり、右側の岸が右岸である。一方、横断測量では、河川の両岸に設置された距離標毎に、両岸の距離標を結ぶ線上に設定された測量断面上の断面形状について、距離標からの距離及び標高が測定され、河川横断図が作成される。距離標は、河川の左右両岸に設けられ、河心線(河道の中心的な線:流心線)に直交する方向の堤外側の堤防法肩又は法面等に設置される。距離標の位置は、幹川については河口からの継続距離で示され、支川については幹川との合流点からの継続距離で示される。距離標は、測量断面が流心線と直交するように配置される。距離標は、下流側から上流に向かって、流心線に沿って所定の設置間隔(例えば200m)毎に順次設けられる。縦断測量及び横断測量は、一般には相互に異なるタイミングで実施される。縦断測量及び横断測量は、同時に実施されてもよい。
【0029】
なお、横断測量では、測量断面は、水際杭(低水路杭)を境にして陸部と水部に分けられる。一般に、陸部では横断測量が行われ、水部では深浅測量が行われる。水部の測量を行うために水際杭の位置及び高さが必要であるため、横断線上に左右両岸の水際杭が設置される。河川横断図の横の縮尺の標準は1/100~1/1,000であり、縦の縮尺の標準は1/100~1/200である。このように河川横断図においては縦と横の縮尺が異なり得る(1:1ではない縦横比で作成され得る)。また縮尺は河川横断図ごとに異なり得る。例えば河川の深さが大きい(高さが大きい)地点での河川横断図は河川の深さが小さい(高さが小さい)地点での河川横断図よりも縦の比率を低くして作成される。河川横断図には、距離標、水際杭及び諸構造物の位置が図示され、高さが記入される。横断測量業務の成果品は、通常、CADデータとして管理され、河川管理に活用される。河川横断図には、計画堤防高、計画高水位など、河川管理として計画した数値及び形状が掲載されており、利用者は、河川横断図を参照することにより、計画段階とその後の地形変化状況(現況)とを比較することができる。
【0030】
図2(A)及び
図2(B)は、山を背にしたときの、即ち河川の上流側から見たときの、それぞれ異なる距離標の河川横断
図200、220を示す。各河川横断
図200、220には、地面(河床面)201、221、計画高水位202、222、第1計画堤防203、223、第2計画堤防204、224、第1堤防法線205、225、第2堤防法線206、226、第1実測点207、227、第2実測点208、228、最深河床高209、229及び平均河床高210、230等が示される。
図2(A)において、x0軸は、河川横断
図200に含まれる距離標を基準として河川の左岸から右岸に向かう幅方向の軸であり、y0軸は、河川横断
図200に含まれる距離標を基準として鉛直方向の下方から上方へ向かう高さ方向の軸である。x0軸とy0軸は元々のCADデータに存在する軸である。変換装置100は、河川横断
図200を3次元データに変換する準備として河川横断
図200のCADデータを拡張し、z0軸を加える。z0軸は、河川横断
図200に含まれる距離標を基準として河川の上流から下流に向かう延伸方向の軸である。
図2(B)において、x1軸は、河川横断
図220に含まれる距離標を基準として河川の左岸から右岸に向かう幅方向の軸であり、y1軸は、河川横断
図220に含まれる距離標を基準として鉛直方向の下方から上方へ向かう高さ方向の軸である。河川横断
図200の場合と同様に、変換装置100は、河川横断
図220を3次元データに変換する準備として河川横断
図220のCADデータを拡張し、z1軸を加える。z1軸は、河川横断
図220に含まれる距離標を基準として河川の上流から下流に向かう延伸方向の軸である。即ち、x0軸、x1軸は、各河川横断図の水平方向、即ちCADデータに基づいて各河川横断図が表示されるCAD画面における水平方向に設定される。y0軸、y1軸は、各河川横断図の垂直方向、即ちCADデータに基づいて各河川横断図が表示されるCAD画面における垂直方向に設定される。z0軸、z1軸は、各河川横断図と直交する方向、即ちCADデータに基づいて各河川横断図が表示されるCAD画面と直交する方向に設定される。なお、
図2(A)、(B)では、視認性を高めるために、座標軸が上方に記載されているが、各河川横断図の原点は、例えば左岸側の距離標の位置に設定される。なお、原点の位置は他の任意の位置でもよい。各河川横断
図200、220に示される各情報の種類は、共通であるため、以下では、代表して河川横断
図200について説明する。
【0031】
地面(河床面)201は、河川の両岸の地表面及び河床に沿ったラインを示す。計画高水位202は、河川において許容される水位の、y0軸方向における最高位置を示す。第1計画堤防203は、河川の左岸への設置が計画される堤防の表面に沿ったラインを示す。第2計画堤防204は、河川の右岸への設置が計画される堤防の表面に沿ったラインを示す。第1堤防法線205は、第1計画堤防203の天端(平坦な頂部)の堤外側(湛水領域側)の端部(法肩)を通過し且つ鉛直方向に延伸するラインである。第2堤防法線206は、第2計画堤防204の天端の堤外側の端部を通過し且つ鉛直方向に延伸するラインである。
【0032】
第1実測点207(距離標)は、河川横断
図200の地面(河床面)201と第1堤防法線205の交点、即ち第1計画堤防203の天端の堤外側の端部(法肩)を通る法線上に位置する。第2実測点208は、河川横断
図200の地面(河床面)201と第2堤防法線206の交点、即ち第2計画堤防204の天端の堤外側の端部(法肩)を通る法線上に位置する。即ち、第1実測点207及び第2実測点208は、河川横断
図200上の河川の両岸における地面(河床面)201の第1堤防法線205及び第2堤防法線206上にそれぞれ位置する。第1実測点207及び第2実測点208は、二つの実測点の一例であり、第1堤防法線205及び第2堤防法線206は、二つの堤防法線の一例である。第1計画堤防203及び第2計画堤防204は、計画者により設定され、第1実測点207及び第2実測点208は、計測者により実測される。最深河床高209は、河川の河床のy0軸方向における最低位置を示す。なお、最深河床高209として、河川の河床のy0軸方向における最低位置を通過する河床の接線が設定されてもよい。平均河床高210は、河川の河床のy0軸方向における平均位置を示す。
【0033】
なお、河川横断
図200において、第1計画堤防203及び第2計画堤防204の表示は省略されてもよい。
【0034】
図3(A)は、横断図テーブル111のデータ構造の一例を示す図である。
【0035】
図3(A)に示すように、横断図テーブル111には、複数の河川横断図のそれぞれについて、各河川横断図の識別情報(横断
図ID)と、距離標の識別情報(距離標ID)と、第1堤防法線、第1実測点、第2堤防法線、第2実測点、最深河床高、平均河床高及び実測点群の各第1座標情報とが、相互に関連付けて記憶される。なお、距離標の位置情報は実測点群に含まれる。横断図テーブル111に記憶される各情報は、横断測量における測量結果に基づいて設定される。横断
図IDは、各河川横断図を識別するために、各河川横断図に一意に割り当てられる。各第1座標情報は、河川横断図が管理されるCADデータに用いられるCAD座標系における座標情報であり、CAD座標系で示される河川横断図上の各位置の座標に関する情報である。
【0036】
CAD座標系は、特定座標系の一例であり、複数の河川横断図のそれぞれに固有の座標系、即ち複数の河川横断図毎に個別に定められる座標系である。以下では、説明を容易にするために、各河川横断図のx0軸、x1軸等をx軸と称し、y0軸、y1軸等をy軸と称し、z0軸、z1軸等をz軸と称する場合がある。CAD座標系では、上記した各河川横断図のx軸、y軸が規定され、さらにz軸を加える拡張が行われて、x軸、y軸及びz軸が規定される。CAD座標系では、例えば各河川横断図の左岸側の距離標の位置が原点として設定される。なお、原点の位置は他の任意の位置でもよい。各河川横断図は、CAD画面に沿った2次元の画像であるため、複数の河川横断図のそれぞれにおいて、各z軸の座標値は、同一の値に設定される。これにより、変換装置100は、2次元の河川横断図を3次元のCAD座標系で規定することができる。
【0037】
距離標の位置情報は、各河川横断図に対応する距離標のz軸方向の位置を示す。第1堤防法線及び第2堤防法線の第1座標情報は、それぞれ第1堤防法線及び第2堤防法線のx軸方向の位置に対応する、CAD座標系におけるx座標の座標値である。第1実測点及び第2実測点の第1座標情報は、それぞれ第1実測点及び第2実測点のx軸方向及びy軸方向の位置に対応する、CAD座標系におけるx座標及びy座標の座標値である。最深河床高及び平均河床高の第1座標情報は、それぞれ最深河床高及び平均河床高のy軸方向の位置に対応する、CAD座標系におけるy座標の座標値である。なお、最深河床高が河床の接線で規定される場合、最深河床高の第1座標情報は、CAD座標系で最深河床高を示す直線の式でもよい。最深河床高の第1座標情報又は平均河床高の第1座標情報は、河床の第1座標情報の一例である。実測点群は、河川の縦横断測量で測定(実測)された、河川横断図の距離標、堤防、地面(河床面)、計画高水位、構造物、水際杭等の表面上の各点である。実測点群の第1座標情報は、実測点群に含まれる各点のx軸方向及びy軸方向の位置にそれぞれ対応する、CAD座標系におけるx座標及びy座標の座標値である。実測点群は、河川の断面上の複数の位置の一例である。
【0038】
図3(B)は、縦断図テーブル112のデータ構造の一例を示す図である。
【0039】
図3(B)に示すように、縦断図テーブル112には、複数の距離標のそれぞれについて、各距離標の識別情報(距離標ID)と、最深河床高及び平均河床高の各第1座標情報とが、相互に関連付けて記憶される。縦断図テーブル112に記憶される各情報は、縦断測量における測量結果に基づいて設定される。距離標ID、並びに、最深河床高及び平均河床高の各第1座標情報は、横断図テーブル111に記憶される距離標ID、並びに、最深河床高及び平均河床高の各第1座標情報と同じ情報である。但し、横断図テーブル111に記憶される各第1座標情報は、横断測量における測量結果に基づいて設定され、縦断図テーブル112に記憶される各第1座標情報は、縦断測量における測量結果に基づいて設定される。
【0040】
図3(C)は、距離標テーブル113のデータ構造の一例を示す図である。
【0041】
図3(C)に示すように、距離標テーブル113には、複数の距離標のそれぞれについて、距離標ID、第1実測点、第2実測点、最深河床高及び平均河床高の各第2座標情報が、相互に関連付けて記憶される。距離標テーブル113に記憶される各情報は、横断測量及び/又は縦断測量における測量結果に基づいて設定される。距離標テーブル113に記憶される各情報は、地理空間を管理する所定の管理システムに登録済みの距離標データから設定されてもよい。各第2座標情報は、CAD座標系と異なる地理座標系における座標情報であり、地理座標系で示される3次元空間上の各位置の座標に関する情報である。地理座標系は、複数の河川横断図に共通する座標系である。地理座標系では、例えば、1つの河川横断図における1点が原点に設定され、それぞれその河川横断図におけるx軸、y軸、z軸と方向が同じであり且つ距離単位が相互に同一であるu軸、w軸、v軸が設定される。例えば、
図3に示す横断
図IDがC00である河川横断
図200の左岸側の距離標の位置が原点に設定され、x0軸と同方向のu軸、y0軸と同方向のw軸、z0軸と同方向のv軸が実寸大(仮想空間内の距離が実距離となる)で設定される。また、例えば地理座標系は、平面直交座標系でもよい。その場合、所定の緯度・経度・高度の地点を原点とし、真北を正方向とする南北方向のu軸、真東を正方向とする東西方向のv軸、真上を正方向とする鉛直方向のw軸が実寸大で設定される。以下では、河川横断
図200の左岸側の距離標の位置が原点に設定され、x0軸と同方向のu軸、y0軸と同方向のw軸、z0軸と同方向のv軸が実寸大で設定された地理座標系が設定されている場合を例に説明する。
【0042】
距離標の第2座標情報は、各距離標の地理座標系におけるu座標、v座標及びw座標の座標値である。第1実測点及び第2実測点の第2座標情報は、それぞれ第1実測点及び第2実測点の地理座標系におけるu座標、v座標及びw座標の座標値であり、本実施形態においてはそれぞれ左岸及び右岸の距離標の第2座標情報に対応する。最深河床高及び平均河床高の第2座標情報は、それぞれ最深河床高及び平均河床高の地理座標系におけるw座標の座標値である。
【0043】
図4(A)は、第1座標テーブル114のデータ構造の一例を示す図である。
【0044】
図4(A)に示すように、第1座標テーブル114には、複数の下線横断図のそれぞれについて、各横断図の横断
図IDと、第1実測点、第2実測点、第1設定点、第2設定点及び実測点群のCAD座標系における各第1座標情報が、相互に関連付けて記憶される。第1座標テーブル114に記憶される各情報は、横断図テーブル111及び/又は縦断図テーブル112に設定された各情報に基づいて設定される。第1座標テーブル114に設定される第1実測点、第2実測点、第1設定点、第2設定点及び実測点群の第1座標情報は、各点のx軸方向、y軸方向及びz軸方向の位置にそれぞれ対応する、CAD座標系におけるx座標、y座標及びz座標の座標値である。
図4(A)に示す例では、第1実測点、第2実測点、第1設定点、第2設定点及び実測点群のCAD座標系におけるz軸の座標値は、全て0に設定されている。
【0045】
第1実測点として第1堤防法線上で地面に対応する点(一般に左岸距離標が設置される位置)が設定され、第2実測点として第2堤防法線上で地面に対応する点(一般に右岸距離標が設置される位置)が設定される。
図2(A)に示した例では、第1堤防法線205と地面201の交点が第1実測点207として設定され、第2堤防法線206と地面201の交点が第2実測点208として設定されている。第1実測点207及び第2実測点208は、CAD座標系において、第1堤防法線及び第2堤防法線上で地面に対応する点が作業者により直接指定されるか、第1堤防法線及び第2堤防法線がなすベクトルと実測点群により構成されるベクトルとの交点が演算されることにより求められる。同様に、
図2(B)に示した例では、第1堤防法線225と地面221の交点が第1実測点227として設定され、第2堤防法線226と地面221の交点が第2実測点228として設定されている。
【0046】
第1設定点として、第1堤防法線上で河床の高さに対応する点が設定され、第2設定点として、第2堤防法線上で河床の高さに対応する点が設定される。
図2(A)に示した例では、第1堤防法線205と最深河床高209の交点が第1設定点211として設定され、第2堤防法線206と最深河床高209の交点が第2設定点212として設定されている。第1設定点211及び第2設定点212は、CAD座標系において、第1堤防法線及び第2堤防法線上で河床の高さに対応する点が作業者により直接指定されるか、第1堤防法線及び第2堤防法線がなすベクトルと最深河床高209を表す直線との交点が演算されることにより求められる。同様に、
図2(B)に示した例では、第1堤防法線225と最深河床高229の交点が第1設定点231として設定され、第2堤防法線226と最深河床高229の交点が第2設定点232として設定されている。
【0047】
図4(B)は、第2座標テーブル115のデータ構造の一例を示す図である。
【0048】
図4(B)に示すように、第2座標テーブル115には、複数の下線横断図のそれぞれについて、各横断図の横断
図IDと、第1実測点、第2実測点、第1設定点、第2設定点及び実測点群の地理座標系における各第2座標情報が、相互に関連付けて記憶される。第2座標テーブル115に記憶される各情報は、距離標テーブル113及び第1座標テーブル114に設定された各情報に基づいて設定される。第2座標テーブル115に設定される第1実測点、第2実測点、第1設定点、第2設定点及び実測点群の第2座標情報は、各点のx0軸方向、z0軸方向及びy0軸方向の位置にそれぞれ対応する、地理座標系におけるu座標、v座標及びw座標の座標値である。上述したように、一般に距離標は地面(河床面)と堤防法線の交点に設置される。地盤変動等により、距離標が当初設置された位置からずれていたり、無くなっていたりする場合がある。横断測量においては、仮に距離標の設置位置が動いていた場合であっても、現地で確認される設置位置で座標計測が行われる。また、距離標が見当たらない場合には、当初設置されていたと思われる位置に新たに距離標が設置され、座標計測が行われる。これらの座標計測値が、距離標の地理座標となる。
【0049】
図5は、変換装置100によって実行される変換処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0050】
以下、
図5に示したフローチャートを参照しつつ、変換装置100の変換処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置110に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路120により変換装置100の各要素と協働して実行される。
【0051】
図5に示す変換処理は、管理者により操作装置101を用いて又は不図示の情報処理装置を用いて変換処理の実行指示が入力されて、変換処理の実行を指示する信号を操作装置101から又は通信装置103を介して情報処理装置から受信した場合に実行される。変換処理が実行される前に、記憶装置110には、横断図テーブル111、縦断図テーブル112及び距離標テーブル113が登録されている。取得手段121は、測量者により横断測量の測量結果が入力された不図示の情報処理装置から通信装置103を介して横断図テーブル111における第1、第2実測点以外の各要素、及び、縦断図テーブル112及び距離標テーブル113の各要素を示すCADデータを受信する。取得手段121は、受信したCADデータに基づいて、横断図テーブル111、縦断図テーブル112及び距離標テーブル113を生成する。
【0052】
最初に、取得手段121は、複数の河川横断図のそれぞれについて、各河川横断図における距離標、第1堤防法線、第1実測点、第2堤防法線、第2実測点、最深河床高、平均河床高及び実測点群のCAD座標系における第1座標情報を取得する(ステップS101)。取得手段121は、第1堤防法線、第2堤防法線、最深河床高、平均河床高及び実測点群の第1座標情報を横断図テーブル111から読み出すことにより取得する。取得手段121は、作業者に第1堤防法線と実測点群の交点を入力させることにより、又は第1堤防法線と実測点群の交点を算出することにより第1実測点の第1座標情報を取得する。第1実測点は左岸距離標に相当する。取得手段121は、作業者に第2堤防法線と実測点群の交点を入力させることにより、又は第2堤防法線と実測点群の交点を算出することにより第2実測点の第1座標情報を取得する。第2実測点は右岸距離標に相当する。取得手段121は、第1堤防法線、第1実測点、第2堤防法線、第2実測点、最深河床高、平均河床高及び実測点群の第1座標情報を、第1実測点を原点とする第1座標情報に変換する。取得手段121は、各河川横断図において、第1実測点、第2実測点及び実測点群のCAD座標系におけるz座標の座標値に、同一の値を設定する。z座標の座標値に設定される同一の値は、例えば0である。変換装置100は、z座標の座標値を0に設定することにより、後述する3次元アフィン変換するパラメータの算出処理において計算量を低減させることができ、変換処理の処理負荷を低減させることができる。なお、z座標の座標値に設定される同一の値は、距離標のz軸方向における位置を示す値等の他の任意の値でもよい。取得手段121は、設定した第1実測点、第2実測点及び実測点群のCAD座標系における第1座標情報を、対応する横断
図IDに対応付けて第1座標テーブル114に登録する。なお、取得手段121は、縦断図テーブル112から、各河川横断図に対応する距離標に対応付けられた最深河床高及び/又は平均河床高を読み出すことにより、最深河床高及び/又は平均河床高を取得してもよい。
【0053】
次に、取得手段121は、複数の河川横断図に対応する距離標毎に、各距離標における第1実測点、第2実測点、最深河床高及び平均河床高の地理座標系における第2座標情報を取得する(ステップS102)。取得手段121は、各第2座標情報を距離標テーブル113から読み出すことにより取得する。取得手段121は、取得した第1実測点及び第2実測点の地理座標系における第2座標情報を、対応する距離標に対応付けられた横断
図IDに対応付けて第2座標テーブル115に登録する。
【0054】
次に、座標算出手段122は、複数の河川横断図毎に、取得手段121が取得した第1座標情報に基づいて、第1設定点及び第2設定点のCAD座標系における座標を算出する(ステップS103)。ステップS101において取得手段121は、各河川横断図の距離標に対応する最深河床高を示す情報を取得しており、座標算出手段122は、各河川横断図の距離標に対応する最深河床高を河床の高さとして特定する。座標算出手段122は、第1設定点のCAD座標系におけるx座標の座標値として第1堤防法線上の第1実測点のCAD座標系におけるx座標の座標値を設定し、第1設定点のCAD座標系におけるy座標の座標値として最深河床高のCAD座標系におけるy座標の座標値を設定する。同様に、座標算出手段122は、第2設定点のCAD座標系におけるx座標の座標値として第2堤防法線上の第2実測点のCAD座標系におけるx座標の座標値を設定し、第2設定点のCAD座標系におけるy座標の座標値として最深河床高のCAD座標系におけるy座標の座標値を設定する。また、座標算出手段122は、第1設定点及び第2設定点のCAD座標系におけるz座標の座標値として、ステップS101において各河川横断図について設定されたz座標の座標値と同一の値を設定する。座標算出手段122は、算出した第1設定点及び第2設定点のCAD座標系における座標を、対応する横断
図IDに対応付けて第1座標テーブル114に登録する。
【0055】
なお、最深河床高の第1座標情報が最深河床高を示す直線の式である場合、座標算出手段122は、公知の最接近解析法により、最深河床高を示す直線上で第1実測点に最も近い点の座標を算出してもよい。その場合、座標算出手段122は、第1設定点のx座標の座標値として第1堤防法線上の第1実測点のx座標の座標値を設定し、第1設定点のy座標の座標値として、算出した最深河床高を示す直線上で第1実測点に最も近い点のy座標の座標値を設定する。同様に、座標算出手段122は、第2設定点のx座標の座標値として第2堤防法線上の第2実測点のx座標の座標値を設定し、第2設定点のy座標の座標値として、最深河床高を示す直線上で第2実測点に最も近い点のy座標の座標値を設定する。
【0056】
次に、座標算出手段122は、複数の河川横断図に対応する距離標毎に、取得手段121が取得した第2座標情報に基づいて、第1設定点及び第2設定点の地理座標系における座標を算出する(ステップS104)。座標算出手段122は、第1設定点の地理座標系におけるu座標及びv座標の座標値としてそれぞれ第1堤防法線上の第1実測点の地理座標系におけるu座標及びv座標の座標値を設定し、第1設定点の地理座標系におけるw座標の座標値として最深河床高の地理座標系におけるw座標の座標値を設定する。同様に、座標算出手段122は、第2設定点の地理座標系におけるu座標及びv座標の座標値としてそれぞれ第2堤防法線上の第2実測点の地理座標系におけるu座標及びv座標の座標値を設定し、第2設定点の地理座標系におけるw座標の座標値として最深河床高の地理座標系におけるw座標の座標値を設定する。座標算出手段122は、算出した第1設定点及び第2設定点の地理座標系における座標を、第1実測点及び第2実測点の地理座標系における座標とともに、対応する横断
図IDに対応付けて第2座標テーブル115に登録する。
【0057】
次に、パラメータ算出手段123は、複数の河川横断図のそれぞれについて、第1実測点及び第2実測点、並びに、第1設定点及び第2設定点のCAD座標系における座標を、地理座標系における座標に3次元アフィン変換するパラメータを算出する(ステップS105)。
【0058】
地理座標系における座標(u,v,w)は、CAD座標系における座標(x,y,z)から、パラメータ(a
xx,a
xy,a
xz,a
yx,a
yy,a
yz,a
zx,a
zy,a
zz,b
x,b
y,b
z)を用いて、以下の式(1)に従って算出(3次元変換)される。
【数1】
式(1)を同次座標(斉時座標)で表すと、以下の式(2)となる。
【数2】
式(2)の四組ずつのパラメータセット(a
xx,a
yx,a
zx,b
x)、(a
xy,a
yy,a
zy,b
y)、(a
xz,a
yz,a
zz,b
z)は、それぞれCAD座標系における座標及び地理座標系における座標の四組のセットを用いて算出される。パラメータ算出手段123は、第1実測点、第2実測点、第1設定点及び第2設定点のCAD座標系における座標及び地理座標系における座標のセットを式(2)に代入することにより、パラメータ(a
xx,a
xy,a
xz,a
yx,a
yy,a
yz,a
zx,a
zy,a
zz,b
x,b
y,b
z)を算出(導出)する。
【0059】
次に、変換手段124は、複数の河川横断図毎に、パラメータ算出手段123により算出されたパラメータを用いて、実測点群のCAD座標系における座標を、地理座標系における座標に3次元アフィン変換する(ステップS106)。変換手段124は、算出されたパラメータ(axx,axy,axz,ayx,ayy,ayz,azx,azy,azz,bx,by,bz)が代入された式(2)に、実測点群に含まれる各点のCAD座標系における座標(x,y,z)を代入することにより、実測点群に含まれる各点の地理座標系における座標(u,v,w)を算出する。変換手段124は、複数の河川横断図について、各河川横断図上の位置のCAD座標系における座標を地理座標系における座標に3次元アフィン変換する。変換手段124は、3次元アフィン変換した実測点群の地理座標系における座標を第2座標テーブル115に記憶する。
【0060】
図6は、CAD座標系で規定された複数の河川横断図に含まれる河川の、地理座標系に変換された3次元モデルの一例を示す模式図である。
【0061】
図6に示す3次元モデルのうち、モデル600は、
図2(A)に示す河川横断
図200から生成され、モデル620は、
図2(B)に示す河川横断
図220から生成されている。なお、
図6では、視認性を高めるために、座標軸が右上部に記載されているが、地理座標系の原点は、例えばモデル600の左岸側の距離標の位置に設定される。
図6において、モデル600、620の地面(河床面)601、621、計画高水位602、622、第1実測点607、627、第2実測点608、628及び最深河床高609、629は、それぞれ
図2(A)、(B)における河川横断
図200、220の地面(河床面)201、221、計画高水位202、222、第1実測点207、227、第2実測点208、228及び最深河床高209、229に対応している。
図6に示すように、地理座標系は、複数の河川横断図に共通する座標系であり、各河川横断図に固有の座標系であるCAD座標系で規定される複数の河川横断図から生成された3次元モデルが、同一(単一)の地理座標系で規定される。利用者は、3次元モデルを閲覧することにより、河川の状態を平面的(2次元)でなく空間的(3次元)に把握することができ、変換装置100は、利用者の利便性を向上させることができる。
【0062】
次に、生成手段125は、複数の河川横断図のうち、相互に隣接する河川横断図について、CAD座標系から地理座標系に変換された座標を補間する(ステップS107)。生成手段125は、例えば、地理座標系において、実測点群に含まれる各点のうち、z軸方向に相互に隣接する河川横断図から変換された、z軸方向に相互に隣接する二つの点を結ぶ線分を算出する。生成手段125は、算出した線分が通過する座標、又は、算出した線分の周辺に位置する座標の座標値として、その二つの点の座標値の平均値を設定することにより、二つの点の間の空間を補間する。これにより、生成手段125は、距離標の間で実測されていなかった位置についても地理座標系で表すことができ、より連続的且つ空間的な河川の3次元モデル、即ちより精緻な河川の3次元モデルを生成することができる。
【0063】
次に、生成手段125は、河川の3次元モデルを生成する(ステップS108)。生成手段125は、地理座標系において、第1実測点、第2実測点、実測点群及び実測点群から補間された各点をつなぎ合わせて、河川の3次元モデルを生成する。
【0064】
次に、出力制御手段126は、生成手段125により生成された河川の3次元モデルを表示装置102に表示することにより、又は、通信装置103を介して外部の情報処理装置に送信することにより出力し(ステップS109)、一連のステップを終了する。出力制御手段126は、3次元モデルでなく、変換手段124により3次元アフィン変換された、実測点群の地理座標系における座標、及び/又は、生成手段125により補間された座標を示す情報を出力してもよい。河川の3次元モデル、実測点群の地理座標系における座標を示す情報、及び/又は、補間された座標を示す情報は、3次元アフィン変換された座標に関する情報の一例である。
【0065】
なお、上記実施形態においては、平行移動、回転及び拡大・縮小を1つの行列式で行う3次元アフィン変換を実施する例を示したが、平行移動、回転及び拡大・縮小の3処理を2段階に分けて、または3段階に分けて行う3次元アフィン変換が実施されてもよい。
【0066】
以上説明したように、変換装置100は、河川横断図上の河川の両岸における計画堤防の二つの堤防法線上にそれぞれ位置する二つの実測点と、二つの堤防法線上でそれぞれ河床の高さに対応する二つの設定点とを用いて、CAD座標系における座標を地理座標系における座標に3次元アフィン変換するパラメータを算出する。3次元アフィン変換のパラメータを算出するために用いられる点(実測点及び設定点)が相互に近接している場合、3次元アフィン変換のパラメータは各点の位置の誤差の影響を大きく受ける。そのため、そのようなパラメータを用いて3次元アフィン変換された点は、実際の位置から大きくずれる可能性がある。変換装置100は、x軸方向及びy軸方向において相互に十分に離間した点を用いることにより、3次元アフィン変換のパラメータを精度良く算出することができ、河川横断図上の各位置の座標をより精度良く変換することが可能となる。
【0067】
また、変換装置100は、河川の計画堤防の天端上の位置を実測点として使用し、最深河床高に対応する位置を設定点として使用する。これにより、変換装置100は、y軸方向において相互に十分に離間した点を用いて、3次元アフィン変換のパラメータを精度良く算出することができ、河川横断図上の各位置の座標をより精度良く変換することが可能となる。なお、変換装置100は、最深河床高に対応する位置でなく、平均河床高に対応する位置等の、CAD座標系における位置と、地理座標系における位置とが取得可能な他の位置を設定点として使用してもよい。
【0068】
また、変換装置100は、計画堤防の堤防法線上の位置を実測点として使用する。計画堤防の堤防法線上の位置は、河川の縦横断測量で確実に実測されるため、変換装置100は、実測者に所定の位置を新たに実測させることなく、3次元モデルを生成することができる。なお、変換装置100は、計画堤防の堤防法線上の位置でなく、左右両岸の任意の位置を実測点として使用してもよい。
【0069】
また、変換装置100は、縦横比が任意に設定されたCAD座標系の座標を、任意の縦横比を有する地理座標系の座標に変換することができる。そのため、変換装置100は、縦横比が1:1でないCAD座標系の座標を、縦横比が1:1である地理座標系の座標に変換することができ、実際の状態に近い河川の3次元モデルを生成することができる。
【0070】
また、変換装置100は、生成した河川の3次元モデルを他の任意の地理空間データ(GISデータ)と統合して重畳表示等を実行してもよい。これにより、利用者は3次元空間内で河川をより適切に管理することができ、変換装置100は利用者の利便性を向上させることができる。
【0071】
なお、変換装置100は、3次元アフィン変換するパラメータとして、CAD座標系における座標を地理座標系における座標に変換するパラメータでなく、任意の座標系における座標を他の任意の座標系における座標に変換するパラメータを算出してもよい。
【0072】
また、変換装置100は、一つの河川横断図を地理座標系に変換する構成としてもよい。例えば、変換装置100は、DTM(Digital Terrain Model:数値地形モデル)を基にして別途作成済みである3次元地形モデルの地理座標系に、
図3に示す横断
図IDがC00である河川横断
図200だけを変換する。変換装置100は、変換した河川横断図を3次元地形モデルに重畳させることでDTMによる地形と河川横断
図200との関係を確認することができる。
【0073】
また、変換装置100は、四つの点から3次元アフィン変換するパラメータを算出するのでなく、第1実測点、第2実測点、第1設定点及び第2設定点以外の、地理座標がわかっている任意の点を含む五つ以上の点から3次元アフィン変換するパラメータを算出してもよい。例えば、変換装置100は、第1実測点、第2実測点、第1設定点及び第2設定点に加えて、堤防法線上の点又は最深河床高上の点等を用いて、3次元アフィン変換するパラメータを算出する。変換装置100は、多数の点を用いて3次元アフィン変換のパラメータを算出することにより、より精度良くパラメータを算出することができ、河川横断図上の各位置の座標をより精度良く変換することが可能となる。
【0074】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
100 変換装置
102 表示装置
103 通信装置
121 取得手段
122 座標算出手段
123 パラメータ算出手段
124 変換手段
125 生成手段
126 出力制御手段
【要約】
【課題】河川横断図上の各位置の座標をより精度良く変換することが可能な変換装置、変換方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】変換装置は、河川横断図上の河川の両岸における計画堤防の二つの堤防法線上にそれぞれ位置する二つの実測点、河床、及び、河川の断面上の複数の位置の特定座標系における第1座標情報を取得するとともに、二つの実測点及び河床の、特定座標系と異なる地理座標系における第2座標情報を取得する取得手段と、第1座標情報に基づいて、二つの堤防法線上でそれぞれ河床の高さに対応する二つの設定点の特定座標系における座標を算出するとともに、第2座標情報に基づいて、二つの設定点の地理座標系における座標を算出する座標算出手段と、二つの実測点及び二つの設定点の特定座標系における座標を、地理座標系における座標に変換するパラメータを算出するパラメータ算出手段と、を有する。
【選択図】
図1