(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】オレフィン重合用チーグラー・ナッタ触媒
(51)【国際特許分類】
C08F 4/62 20060101AFI20231026BHJP
C08F 4/658 20060101ALI20231026BHJP
C08F 4/654 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C08F4/62
C08F4/658
C08F4/654
(21)【出願番号】P 2022519693
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 EP2020077473
(87)【国際公開番号】W WO2021064081
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-29
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】スメリン ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】キピアニ ジョージー
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/207493(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/62
C08F 4/658
C08F 4/654
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーグラー・ナッタ触媒における内部ドナーとしての式(I)の化合物の使用であって、
【化1】
前記式(I)中、
R
1は、H、直鎖状又は分岐状のC
1~7-アルキル、CH
2OR
2及び酸素含有複素環からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択され
る
使用。
【請求項2】
式(I)の化合物が、式(I-a)及び式(I-b)の化合物から選択され、
【化2】
前記式(I-a)中、
R
1aは、H、C
1~3-アルキル及びCH
2OR
2からなる群から選択され、
R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択され
、
前記式(I-b)中、
R
1bは、酸素含有複素環からなる群から選択され
る
請求項1に記載の使用。
【請求項3】
オレフィン重合
用のチーグラー・ナッタ触媒成分であって、
(i)式(I)の化合物から選択される内部ドナー
を含み、
【化3】
前記式(I)中、
R
1は、H、直鎖状又は分岐状のC
1~7-アルキル、CH
2OR
2及び酸素含有複素環からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択され
る
チーグラー・ナッタ触媒成分。
【請求項4】
前記式(I)の化合物が、式(I-a)及び式(I-b)の化合物から選択され
【化4】
前記式(I-a)中、
R
1aは、H、C
1~3-アルキル及びCH
2OR
2からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択され、
前記式(I-b)中、
R
1bは、酸素含有複素環からなる群から選択され
る
請求項3に記載のチーグラー・ナッタ触媒成分。
【請求項5】
(ii)周期表(IUPAC、Nomenclature of Inorganic Chemistry、2005)の第4~6族の遷移金属化合物、
及び
(iii)周期表(IUPAC、2005)の第1~3族の金属化合
物
をさらに含む請求項3又は請求項4に記載のチーグラー・ナッタ触媒成分。
【請求項6】
(ii)前記チーグラー・ナッタ触媒成分の総重量に対して、1.0重量%~15.0重量
%の範囲の第4~6族の金
属の含有量(ICP分析により決定)、
(iii)前記チーグラー・ナッタ触媒成分の総重量に対して、5.0重量%~30.0重量
%の範囲の第1~3
族の金
属の含有量(ICP分析により決定)、
(iv)前記チーグラー・ナッタ触媒成分の総重量に対して、0.0重量%~3.0重量
%の範囲の第13族元
素(ICP分析により決定)
を含む請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のチーグラー・ナッタ触媒成分。
【請求項7】
チーグラー・ナッタ触媒成分の製造方法であって、式(I)の化合物から選択される内部ドナーを、チーグラー・ナッタ触媒成分を調製するプロセスに添加する工程を含み、
【化5】
前記式(I)中、
R
1は、H、直鎖状又は分岐状のC
1~7-アルキル、CH
2OR
2及び酸素含有複素環からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択され
る
方法。
【請求項8】
請求項3から請求項6のいずれか1項に記載のチーグラー・ナッタ触媒成分の製造方法であって、
(M-a
)MgCl
2
*mROH付加物の固体担体粒子を提供する工程であって、前記MgCl
2
*mROH付加物中のRは直鎖状又は分岐状のC
1~12-アルキル基であり、mは0~
6である工程と、
(M-b)工程(M-a)の前記固体担体
粒子を、第13族の元素の化合物で前処理する工程と、
(M-c)工程(M-b)の前処理された前記固体担体
粒子を、第4~6族の遷移金属化合物で処理する工程と、
(M-d)このチーグラー・ナッタ触媒成分を回収する工程と
を含み、工程(M-c)で前記固体担体
粒子を処理する前に、前記固体担体
粒子を式(I)の内部有機化合物又はその混合物と接触させる方法。
【請求項9】
前記チーグラー・ナッタ触媒成分が、請求項3から請求項6のいずれか1項に記載のチーグラー・ナッタ触媒成分である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
オレフィン重合用、特にエチレン(共)重合用のチーグラー・ナッタ触媒であって、式(I)の化合物から選択される内部ドナーを含む触媒成分を含み、
【化6】
前記式(I)中、
R
1は、H、C
1~3-アルキル、CH
2OR
2及び酸素含有複素環からなる群から選択され、R
2は、直鎖状、分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択され
、
又は、前記内部ドナーは、式(I-a)若しくは式(I-b)の化合物から選択され、
【化7】
(I-a)中、R
1aは、H、C
1~3-アルキル及びCH
2OR
2からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択され、
(I-b)中、R
1bは、酸素含有複素環からなる群から選択され
る
チーグラー・ナッタ触媒。
【請求項11】
(A)請求項3から請求項6のいずれか1項に記載のチーグラー・ナッタ触媒成分、又は請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の方法に従って製造されたチーグラー・ナッタ触媒と、
(B)周期表(IUPAC、2005)の第13族の元素の化合物から選択される共触媒
と
を含む請求項10に記載のチーグラー・ナッタ触媒。
【請求項12】
オレフィン重
合の方法であって、
重合反応器に、式(I)の内部ドナーであって、
【化8】
前記式(I)中、
R
1は、H、直鎖状又は分岐状のC
1~7-アルキル、CH
2OR
2及び酸素含有複素環からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択され
る内部ドナーを含むチーグラー・ナッタ触媒成分を、前記チーグラー・ナッタ触媒成分を調製するプロセスに導入する工程
を含む方法。
【請求項13】
前記式(I)の内部ドナーが、式(I-a)又は式(I-b)の化合物から選択され、
【化9】
(I-a)中、R
1aは、H、C
1~3-アルキル及びCH
2OR
2からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択され、
(I-b)中、R
1bは、酸素含有複素環からなる群から選択され
る
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記内部ドナーが、
(ii)周期表(IUPAC、Nomenclature of Inorganic Chemistry、2005)の第4~6族の遷移金属の化合物、
及び
(iii)周期表(IUPAC、2005)の第1~3族の金属化合
物
をさらに含むチーグラー・ナッタ触媒成分に含まれている請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記チーグラー・ナッタ触媒成分が、
(ii)前記チーグラー・ナッタ触媒成分の総重量に対して、1.0重量%~15.0重量
%の範囲の第4~6族の金
属の含有量(ICP分析により決定)、
(iii)前記チーグラー・ナッタ触媒成分の総重量に対して、5.0重量%~30.0重量
%の範囲の第1~3
族の金
属の含有量(ICP分析により決定)、
(iv)前記チーグラー・ナッタ触媒成分の総重量に対して、0.0重量%~3.0重量
%の範囲のAlの含有量(ICP分析により決定)
を含む請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
エチレンのホモポリマー又はコポリマーの製造方法であって、
(P-a)請求項3から請求項6のいずれか1項に記載のチーグラー・ナッタ触媒成分、又は請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の方法に従って製造されたチーグラー・ナッタ触媒成分を重合反応器に導入する工程と、
(P-b)前記チーグラー・ナッタ触媒成分を活性化することができる共触媒を前記重合反応器に導入する工程と、
(P-c)エチレ
ンを前記重合反応器に導入する工程と、
(P-d)前記重合反応器を、エチレンのホモポリマー又はコポリマーを生成するような条件で維持する工程と
を含む方法。
【請求項17】
オレフィン重合が、オレフィンポリマーを製造するための少なくとも1つの気相反応器を含む多段重合プロセスで達成される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
オレフィン重合が、少なくとも1つのスラリー反応器
、及び1つの気相反応器を含む多段重合プロセスで達成される請求項16又は請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一置換されていてもよい2,2-ジ(テトラヒドロフリル)メタンに関し、より詳細には、特に分子量分布(MWD)及び化学組成分布(CCD)に関して望ましい特性を有するポリマーを得るためのチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒における内部ドナーとしての一置換されていてもよい2,2-ジ(テトラヒドロフリル)メタンの使用に関する。本開示はさらに、上記一置換されていてもよい2,2-ジ(テトラヒドロフリル)メタンを含むチーグラー・ナッタ触媒成分、並びに上記チーグラー・ナッタ触媒成分を含むオレフィン重合用のチーグラー・ナッタ触媒、並びにそれらの調製方法、並びにポリオレフィンを提供する際のそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
チーグラー・ナッタ(ZN)型ポリオレフィン触媒は、エチレン(コ)ポリマー等のポリオレフィンを製造する分野で周知である。一般に、この触媒は、周期表(IUPAC、Nomenclature of Inorganic Chemistry、2005)の第4~6族の遷移金属化合物、周期表(IUPAC)の第1~3族の金属化合物、任意に周期表(IUPAC)の第13族元素の化合物、及び任意に内部電子供与体から形成される触媒成分を少なくとも含む。ZN触媒は、共触媒及び任意に外部電子供与体等のさらなる触媒成分(複数種可)も含んでよい。
【0003】
内部電子供与体と内部ドナーとは同じ意味を持ち、本願では交換可能である。外部電子供与体と外部ドナーとについてもそれぞれ同様である。
【0004】
エチレン(コ)ポリマー等のポリオレフィンの製造に使用される触媒組成物は、とりわけポリマーの特性を決定する。従って、触媒組成物によって、製造されるポリマーの特性を「調節する(仕立てる)」ことが可能である。
【0005】
欧州特許出願公開第373999A1号明細書は、モノエーテルから選択された外部電子供与体(例えば、テトラヒドロフラン)を含むチーグラー・ナッタ触媒を用いて、ポリエチレンのホモポリマー及びコポリマーの分子量分布(MWD)を制御する方法を開示する。モノエーテルを共触媒の存在下で触媒成分に添加することが示唆されており、一方では、このモノエーテルと触媒成分を共触媒の不存在下で接触させないことが強く推奨されている。
【0006】
国際公開第2007051607A1号パンフレットは、マルチモーダルエチレンポリマーの特性を調節する別の可能性を開示する。チーグラー・ナッタ触媒成分を修飾し、高分子量(HMW)成分の分子量分布(MWD)に影響を与えるために、アルキルエーテル型の内部電子供与体、好ましくはテトラヒドロフランが用いられる。
【0007】
国際公開第2004055065A1号パンフレットは、エチレンとα-オレフィンとのコポリマーを調製するための、Ti、Mg、ハロゲン及び電子供与体を特定のモル比で含む固体触媒成分を開示しており、この固体触媒成分によれば、上記α-オレフィンはポリマー鎖に沿って均一に分布している。電子供与体(ED)は、好ましくはテトラヒドロフラン等のエーテルである。この触媒成分は、アルキルアルミニウム化合物と、任意に外部電子供与体と一緒に重合プロセスで使用される。この任意の外部電子供与体は、触媒成分に使用されるEDと同じであるか、又は異なるとされる。
【0008】
国際公開第2007147715A1号パンフレットは、特定のプロセスで得られるオレフィン重合用触媒成分であって、Mg、Ti、ハロゲン及び内部電子供与体としての1,3-ジエーテルを含む触媒成分を開示する。9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンを内部電子供与体とする触媒は、プロピレンの重合に用いられる。
【0009】
欧州特許出願公開第0376936A2号明細書は、噴霧乾燥したMgCl2/アルコール担体材料が、IA族~IIIA族(IUPAC、Nomenclature of Inorganic Chemistry、2005による周期表の第1、2、及び13族)の化合物で処理され、次いで、任意に内部電子供与体の存在下で、チタン化合物でチタン化される、MgCl2担持チーグラー・ナッタ触媒を開示する。任意の内部ドナー化合物(内部電子を使用した例ではTHF又はジイソブチルフタレートが挙げられている)は、TiCl4と一緒に、又はTiCl4の添加後に添加される。しかしながら、欧州特許出願公開第0376936A2号明細書のドナー修飾触媒の活性は、ドナーを含まない元の触媒よりもはるかに低かった。さらに、ドナー処理工程では、トリエチルアルミニウムの10重量%溶液及び多数の触媒炭化水素洗浄を使用したため、大量の有機溶媒の廃棄物が発生した。
【0010】
国際公開第2014004396A1号パンフレットは、二複素環式化合物が内部電子供与体として使用される触媒成分を開示する。この触媒成分は、プロピレンの重合に使用される。
【0011】
国際公開第2014096296A1号パンフレットは、二(酸素含有環)化合物から選択された内部ドナーを含む担持型チーグラー・ナッタ触媒成分、及び高分子量ポリエチレンを製造するためのエチレンの重合で使用される触媒系を調製するためのそのような触媒成分の使用を開示する。
【0012】
国際公開第2013098139A1号パンフレットは、特定のプロセスで得られる、内部ドナーとして1,3-ジエーテル化合物を含む粒子状の第2族金属/遷移金属オレフィン重合触媒成分、及びオレフィンの重合、特にプロピレンの重合に使用される触媒を調製するためのそのような触媒成分の使用を開示する。
【0013】
国際公開第2016097193A1号パンフレットは、ポリオレフィンを製造するために、MgCl2
*mROH付加物を第13族元素の化合物及び二環式エーテルである内部有機化合物で前処理し、さらに第4~6族遷移金属の化合物で処理することによって調製された固体のMgCl2ベースのチーグラー・ナッタ触媒成分を開示する。さらに、この触媒成分の調製、並びにこの固体触媒成分、共触媒としての第13族元素の化合物、及び任意に外部添加剤を含むチーグラー・ナッタ触媒が開示されている。
【0014】
チーグラー・ナッタ触媒の調製については、多くの開発成果が得られているものの、さらなる改良の余地がある。さらに今日では、健康、安全及び環境に関する政策が、触媒及びさらにはポリマーの製造において重要な要素となっている。言い換えれば、ポリマーは、特定の国内外の機関の厳しい健康及び環境の要件を満たさなければならない。潜在的に有害な化合物と考えられる物質の一群として、フタル酸エステル類があり、これらはチーグラー・ナッタ型触媒の内部電子供与体として一般に使用されてきた。加えて、テトラヒドロフランは有害物質として分類されている。
【0015】
これらの理由から、フタル酸エステル類及び/又はテトラヒドロフランを含まず、所望のポリマー特性、例えば、高分子量及び/又は狭いMWD及び/又は改善されたCCDを提供する、チーグラー・ナッタ型触媒で使用するためのさらなる内部ドナーを見つけることが依然として望ましい。さらに、商業的な観点から、そのような触媒は、再現性のある形態、組成及び性能を示すべきである。
【0016】
低い融解温度を合わせ持つ狭いMWD(分子量分布)及び高いコモノマー含有量を有する高分子量コポリマーを製造する可能性があるように、より広いメルトフローレート(MFR)域及び密度域を有するコポリマーを製造することができる触媒を見つける必要もある。
【0017】
最後に、この触媒は、幅広い範囲の分子量のポリマーを生産しながら、商業的な重合プロセスで実行可能となるレベルの生産性を示すべきである。
【0018】
先行技術の教示によれば、ドナーの改変によっていくつかの特性が改善されるように思われる。しかしながら、これらの改善は、触媒活性及びコモノマー応答性を犠牲にしてなされることが非常に多い。特に、沈殿法で調製されたMgCl2ベースの触媒は、典型的には調製条件の変化に対して敏感である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】欧州特許出願公開第373999A1号明細書
【文献】国際公開第2007051607A1号パンフレット
【文献】国際公開第2004055065A1号パンフレット
【文献】国際公開第2007147715A1号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第0376936A2号明細書
【文献】国際公開第2014004396A1号パンフレット
【文献】国際公開第2014096296A1号パンフレット
【文献】国際公開第2013098139A1号パンフレット
【文献】国際公開第2016097193A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、上記の短所を克服し、環境的に持続可能であり、望ましい分子量分布(MWD)及び化学組成分布(CCD)を有するエチレン(コ)ポリマーの調製を支援する、内部ドナー、及び、特にその内部ドナーを含むチーグラー・ナッタ触媒成分を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的は、独立請求項に記載されていることを特徴とする、内部ドナーとしての式(I)の化合物の使用、この内部ドナーを含むチーグラー・ナッタ触媒成分、それを含むチーグラー・ナッタ触媒、及びオレフィン重合におけるその使用によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に採り上げられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、発明例(IE1~IE4)及び比較例CE1~CE9の多分散性指数(PDI)対分子量を示す。
【
図2】
図2は、発明例(IE1~IE4)及び比較例CE1~CE9の融解温度対コモノマー含有量を示す。
【
図3】
図3は、発明例(IE1~IE4)及び比較例CE1~CE9の活性レベル対分子量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
驚くべきことに、今回、本明細書中でこれまでに、及び以降に論じられる式(I)の化合物をチーグラー・ナッタ触媒系に使用すると、エチレンの(共)重合に利用した場合に、優れた活性-水素応答バランスが得られることが判明した。加えて、それらの使用は、所望の分子量、分子量分布(MWD)及び化学組成分布(CCD)を有するエチレン(コ)ポリマーを提供する。
【0024】
内部ドナー(i)
従って、本明細書で提供されるのは、とりわけエチレン(共)重合用の、特に多段プロセスでエチレン(コ)ポリマーを製造するためのチーグラー・ナッタ触媒における内部ドナーとしての式(I)の化合物の使用である。
【化1】
上記式(I)中、
R
1は、H、直鎖状又は分岐状のC
1~7-アルキル、CH
2OR
2、及び酸素含有複素環からなる群から選択され、
R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択される。
【0025】
好ましくは、R1は、H、直鎖状又は分岐状のC1~5-アルキル、及びテトラヒドロフリルからなる群から選択される。より好ましくは、R1は、H、C1~3-アルキル及び2-テトラヒドロフリルからなる群から選択され、最も好ましくは、R1は、H、メチル及び2-テトラヒドロフリルからなる群から選択される。
【0026】
本発明の内部ドナーの使用の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されており、また以下の説明にも記載されている。
【0027】
本発明の第1の好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-a)の化合物から選択される。
【化2】
上記式(I-a)中、
R
1aは、H、直鎖状又は分岐状のC
1~7-アルキル及びCH
2OR
2からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択される。
【0028】
好ましくは、R1aは、H及びメチルからなる群から選択される。
【0029】
本発明の第2の好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-b)の化合物から選択される。
【化3】
上記式(I-b)中、
R
1bは、酸素含有複素環からなる群から選択される。
【0030】
好ましくは、R1bは、テトラヒドロフリルからなる群から選択される。より好ましくは、R1bは2-テトラヒドロフリルである。
【0031】
第3の好ましい実施形態では、本発明に係る使用は、チーグラー・ナッタ触媒における内部ドナーとしての式(I)の化合物の使用に相当する。
【化4】
上記式中、R
1は、H、メチル、CH
2OR
2及び酸素含有複素環からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択される。
【0032】
第4の好ましい実施形態では、本発明に係る使用は、チーグラー・ナッタ触媒における内部ドナーとしての式(I)の化合物の使用に相当する。
【化5】
上記式中、R
1は、H、CH
2OR
2及び酸素含有複素環からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択される。
【0033】
用語「酸素含有複素環」は、4~7個の環原子を有する環の一部として酸素を含む環状構造を指し、他の環原子は好ましくは炭素である。酸素含有複素環は、好ましくは、1つの酸素原子を環の構成原子として含む5~6員環である。この酸素含有複素環は、飽和、部分不飽和、不飽和又は芳香族であってもよく、好ましくは、酸素含有複素環は飽和である。好ましくは、酸素含有複素環は無置換である。特に、酸素含有複素環は、テトラヒドロフリルからなる群から選択され、より好ましくは、酸素含有複素環は2-テトラヒドロフリルである。
【0034】
本発明の特定の例では、式(I)の化合物は、ジ(2-テトラヒドロフリル)メタン(DTHFM)、1,1-ジ(2-テトラヒドロフリル)エタン(DTHFE)、及びトリス(テトラヒドロフラン-2-イル)メタン(FFHFM)からなる群から選択される。上述の化合物の中では、DTHFM及びFFHFMが特に好ましい。
【0035】
本発明の内部ドナーを、とりわけエチレン(共)重合のために、特に多段プロセスでエチレン(コ)ポリマーを製造するために、チーグラー・ナッタ触媒で使用することにより、望ましい分子量、分子量分布(MWD)及び化学組成分布(CCD)を有するマルチモーダルポリエチレンを製造できるということが、驚くべきことに判明した。
【0036】
分子量の増加及び/又はMWDの狭小化等の改良は、触媒の生産性を犠牲にして行われるものではない。むしろ、生産性は許容できるレベルに維持される。
【0037】
(A)チーグラー・ナッタ触媒成分
本明細書で提供されるのは、オレフィン重合用の、とりわけエチレン(共)重合用の、特に多段プロセスでエチレン(コ)ポリマーを製造するためのチーグラー・ナッタ触媒成分であって、式(I)の化合物から選択される内部ドナーを含むチーグラー・ナッタ触媒成分である。
【化6】
上記式(I)中、
R
1は、H、直鎖状又は分岐状のC
1~7-アルキル、CH
2OR
2及び酸素含有複素環からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択される。
【0038】
好ましくは、R1は、H、直鎖状又は分岐状のC1~5-アルキル、及びテトラヒドロフリルからなる群から選択される。より好ましくは、R1は、H、C1~3-アルキル、及び2-テトラヒドロフリルからなる群から選択され、さらにより好ましくは、R1は、H、メチル、及び2-テトラヒドロフリルからなる群から選択される。
【0039】
本発明のチーグラー・ナッタ触媒成分の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されており、また以下の説明にも記載されている。
【0040】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分の第1の例では、式(I)の化合物は式(I-a)の化合物から選択される。
【化7】
上記式(I-a)中、
R
1aは、H、C
1~3-アルキル及びCH
2OR
2からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択される。
【0041】
好ましくは、R1aは、H及びメチルからなる群から選択される。
【0042】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分の第2の例では、式(I)の化合物は、式(I-b)の化合物から選択される。
【化8】
上記式(I-b)中、
R
1bは、酸素含有複素環からなる群から選択される。
【0043】
好ましくは、R1bは、テトラヒドロフリルからなる群から選択される。より好ましくは、R1bは2-テトラヒドロフリルである。
【0044】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分の第3の例では、式(I)の化合物は、下記の化合物である。
【化9】
上記式(I)中、
R
1は、H、メチル、CH
2OR
2及び酸素含有複素環からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択される。
【0045】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分の第4の例では、式(I)の化合物は、下記の化合物である。
【化10】
上記式(I)中、
R
1は、H、CH
2OR
2及び酸素含有複素環からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択される。
【0046】
特定の例では、式(I)の化合物は、ジ(2-テトラヒドロフリル)メタン(DTHFM)、1,1-ジ(2-テトラヒドロフリル)エタン(DTHFE)、及びトリス(テトラヒドロフラン-2-イル)メタン(FFHFM)からなる群から選択される。上述の化合物の中では、DTHFM及びFFHFMが特に好ましい。
【0047】
本明細書では、本明細書に記載されるチーグラー・ナッタ触媒成分も提供される。
【0048】
本明細書中でこれまでに、及び以降に使用する場合の用語「チーグラー・ナッタ触媒成分」は、チーグラー・ナッタ触媒の、触媒前駆体とも呼ばれる、触媒成分を指す。本発明のチーグラー・ナッタ触媒成分は、少なくとも遷移金属化合物と内部ドナーとを含む。
【0049】
特に、本発明のチーグラー・ナッタ触媒成分は、(ii)周期表(IUPAC、Nomenclature of Inorganic Chemistry、2005)の第4~6族の遷移金属の化合物、(iii)周期表(IUPAC、2005)の第1~3族の金属の化合物、(iv)任意に、周期表(IUPAC、2005)の第13族又は第14族の元素の化合物、及び(i)本明細書で規定される内部ドナーから形成される触媒成分を指す。
【0050】
内部ドナー(i)
本明細書中でこれまでに、及び以降に使用する場合の用語「内部ドナー」は、「内部電子供与体」としても知られ、当該チーグラー・ナッタ触媒成分の一部である化合物、すなわち当該チーグラー・ナッタ触媒成分の合成中に添加され、典型的にはチーグラー・ナッタ触媒系において電子供与体として作用する化合物を指す。
【0051】
内部ドナーは、上記チーグラー・ナッタ触媒成分の一部であり、チーグラー・ナッタ触媒成分の合成中にそのチーグラー・ナッタ触媒成分に添加される。
【0052】
第1~3族の金属(iii)、特にMgの化合物に対する内部ドナー(ID)の担持(添加)(合成時)モル比(ID/Mg)は、好ましくは0.010~0.300mol(モル)/molであり、より好ましくは0.030~0.250mol/molであり、さらにより好ましくは0.040~0.120mol/molである。
【0053】
チーグラー・ナッタ触媒成分の他の化合物
当該チーグラー・ナッタ触媒成分は、内部ドナー(i)に加えて、さらに
(ii)周期表(IUPAC、Nomenclature of Inorganic Chemistry、2005)の第4~6族の遷移金属の化合物、
(iii)周期表(IUPAC、2005)の第1~3族の金属の化合物、及び
(iv)任意に、周期表(IUPAC、2005)の第13族元素の化合物
を含む。
【0054】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分は、典型的には固体である。固体のチーグラー・ナッタ触媒成分は、外部担体材料を使用せずに形成されてもよいし、外部担体材料に担持された固体のチーグラー・ナッタ触媒成分であってもよい。
【0055】
本発明の固体担持型チーグラー・ナッタ触媒成分は、
(i)本明細書で論じられる式(I)の化合物から選択される内部ドナー、
(ii)周期表(IUPAC、Nomenclature of Inorganic Chemistry、2005)の第4~6族の遷移金属の化合物、特にチタン化合物、
(iii)周期表(IUPAC、2005)の第1~3族の金属の化合物、特にマグネシウム化合物、及び
(iv)任意に、周期表(IUPAC、2005)の第13族元素の化合物、特にアルミニウム化合物
を含み、成分(i)~(iv)は、存在する場合、固体担体上に担持されている。
【0056】
固体担体は、シリカ、アルミナ、チタニア、シリカ-アルミナ及びシリカ-チタニア等の無機酸化物固体担体、並びにMgCl2ベースの固体担体等のMgベースの固体担体からなる群から選択することができる。好ましくは、固体担体は、シリカ又はMgCl2ベースの固体担体等のMgベースの固体担体であり、より好ましくは、固体担体は、MgCl2
*mROH付加物の固体担体粒子であり、付加物MgCl2
*mROH中のRは、直鎖状又は分岐状のC1~12-アルキル基であり、mは0~6であり、好ましくは1~6であり、より好ましくはmは1~4である。
【0057】
シリカ担体の体積基準のメジアン粒子サイズ(Dv0.5)は、典型的には2~500μm、好ましくは5~200μm、より好ましくは10~100μmである。しかしながら、担体が5~30μm、好ましくは7~20μm、より好ましくは8~15μmのDv0.5粒子サイズを有する場合に、特別な利点が得られることが判明した。あるいは、シリカ担体は、20~80μm、好ましくは20~30μmのDv0.5粒子サイズを有してもよい。適切な担体材料の例としては、例えば、Ineos Silicas(イネオス・シリカス)(旧Crossfield(クロスフィールド))が製造販売しているES747JR、及びGrace(グレース)が製造販売しているSP9-491が挙げられる。
【0058】
上記触媒成分は、例えば欧州特許出願公開第0688794A1号明細書及び国際公開第99/51646A1号パンフレットに記載されているように、担体を上述の化合物と順次接触させることによって調製することができる。あるいは、上記触媒成分は、国際公開第01/55230A1号パンフレットに記載されているように、まず上記成分から溶液を調製し、次にその溶液を担体と接触させることによって調製することができる。
【0059】
あるいは、本発明に用いられる触媒成分は、Mgベースの固体担体、特にMgCl2に担持されていてもよい。このように、上記触媒は、二塩化マグネシウム等の二ハロゲン化マグネシウム上に、チタン化合物及び任意に第13族元素の化合物、例えばアルミニウム化合物を含む。このようなチーグラー・ナッタ触媒成分のグループは、チタン化合物と、担体として機能するハロゲン化マグネシウム化合物とを一緒に含む。このような触媒は、例えば、国際公開第2005/118655A1号パンフレット、欧州特許出願公開第0810235A2号明細書、国際公開第2014/096296A1号パンフレット及び国際公開第2016/097193A1号パンフレットに開示されている。
【0060】
触媒は、例えば、触媒合成の初期に、すなわちチタン化合物(例えばTiCl4)による処理の前に、又はさらには球状又は粒状のMgCl2
*mROH、例えばMgCl2
*mEtOH担体材料を第13族元素の化合物で処理する前に、MgCl2
*mEtOHを式(I)の化合物から選択される内部電子供与体と接触させ、最終的に固体触媒成分を回収することによって調製されてもよい。
【0061】
Mgベースの固体担体のメジアン粒子サイズDv0.5は、典型的には2~500μm、好ましくは5~200μm、より好ましくは10~100μmである。しかしながら、担体が5~30μm、好ましくは7~25μm、より好ましくは8~20μm、さらには8~15μmのDv0.5粒子サイズを有する場合に、特別な利点が得られることが判明した。あるいは、担体は、20~80μm、好ましくは20~30μmのDv0.5粒子サイズを有してもよい。MgCl2
*mROHは、先行技術に記載されている方法により調製することができる。MgCl2
*mROH担体の調製方法は、いくつかの特許、例えば、欧州特許第0376936B1号明細書、欧州特許第0424049B1号明細書、欧州特許第0655073B1号明細書、米国特許第4071674号明細書及び欧州特許第0614467B1号明細書に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
固体のチーグラー・ナッタ触媒成分は、代替的に、活性触媒成分が担持された、シリカ、アルミナ、又は別途調製されたMgベースの固体担体等の外部担体材料を使用せずに形成されてもよい。その代わりに、すべての活性触媒化合物を液状で互いに接触及び/又は反応させ、その後、固体触媒を形成する方法によって、固体触媒が形成される。
【0063】
本発明の一実施形態では、上記チーグラー・ナッタ触媒成分は、
(i)本明細書で論じられる式(I)の化合物から選択される内部ドナー、
(ii)当該チーグラー・ナッタ触媒成分の総重量に対して、1.0重量%~15.0重量%、好ましくは2.5重量%~12.0重量%、より好ましくは3.5重量%~9.5重量%の範囲の第4~6族の金属、好ましくは第4族の金属、より好ましくはTiの含有量(ICP分析により決定)、
(iii)当該チーグラー・ナッタ触媒成分の総重量に対して、5.0重量%~30.0重量%、好ましくは9.0重量%~22.0重量%、より好ましくは12.5重量%~18.5重量%の範囲の第1~3族、好ましくは第2族の金属、より好ましくはMgの含有量(ICP分析により決定)、
(iv)当該チーグラー・ナッタ触媒成分の総重量に対して、0.0重量%~3.0重量%、好ましくは0.0重量%~2.6重量%、より好ましくは0.0重量%~1.8重量%の範囲のAl含有量(ICP分析により決定)
を含む。
【0064】
さらに、本発明の実施形態に係るチーグラー・ナッタ触媒成分は、2~100μm、好ましくは5~30μm、より好ましくは8~20μm、さらにより好ましくは8~15μmの範囲のメジアン粒子サイズDv0.5を有する。
【0065】
第4~6族の遷移金属の化合物(ii)
周期表(IUPAC、Nomenclature of Inorganic Chemistry、2005)の第4~6族の遷移金属の化合物は、好ましくは周期表(IUPAC、2005)の第4族の遷移金属の化合物、又はバナジウム化合物、より好ましくはチタン化合物又はバナジウム化合物、さらにより好ましくはチタン化合物、さらにより好ましくはハロゲン含有チタン化合物、最も好ましくは塩素含有チタン化合物である。
【0066】
特に好ましい実施形態では、上記チタン化合物は、式HalyTi(OAlk)4-yのハロゲン含有チタン化合物であり、上記式中、Alkは、C1~20-アルキル基、好ましくはC2~10-アルキル基、より好ましくはC2~8-アルキル基であり、Halは、ハロゲン、好ましくは塩素であり、yは、1、2、3又は4、好ましくは3又は4、より好ましくは4である。
【0067】
適切なチタン化合物としては、トリアルコキシチタンモノクロリド、ジアルコキシチタンジクロリド、アルコキシチタントリクロリド、及び四塩化チタンが挙げられる。好ましくは、四塩化チタンが用いられる。
【0068】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分における第4~6族の化合物の量は、第4~6族の金属、好ましくは第4族の金属、より好ましくはTiの含有量(ICP分析により決定)が、当該チーグラー・ナッタ触媒成分の総重量に対して、1.0重量%~15.0重量%、好ましくは2.5重量%~12.0重量%、より好ましくは3.5重量%~9.5重量%の範囲となるようにすることが好ましい。第4~6族の金属の化合物の量は、実験部で記載したようにICP分析によって決定される。
【0069】
第1~3族の金属の金属化合物(iii)
上記第1~3族の金属化合物は、好ましくは周期表(IUPAC、Nomenclature of Inorganic Chemistry、2005)の第2族の金属化合物であり、より好ましくはマグネシウム化合物である。
【0070】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分における第1~3族の金属の化合物の量は、第1~3族の金属、好ましくは第2族の金属、より好ましくはMgの含有量が、当該チーグラー・ナッタ触媒成分の総重量に対して、5.0重量%~30.0重量%、好ましくは9.0重量%~22.0重量%、より好ましくは12.5重量%~18.5重量%の範囲になるようにすることが好ましい。第1~3族の金属化合物の量は、実験部で記載したようにICP分析によって決定される。
【0071】
特定の例では、第1~3族の金属化合物は、MgCl2ベースの固体担体、好ましくはMgCl2
*mROH付加物の固体担体粒子の形態で提供され、付加物MgCl2
*mROH中のRは、直鎖状又は分岐状のC1~12-アルキル基であり、mは0~6であり、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。
【0072】
好ましくは、最終の固体チーグラー・ナッタ触媒成分粒子は、2~100μm、好ましくは5~30μm、より好ましくは8~20μm、さらにより好ましくは8~15μmの範囲のメジアン粒子サイズDv0.5を有する。
【0073】
第13族元素の化合物(iv)
周期表(IUPAC、Nomenclature of Inorganic Chemistry、2005)の第13族元素の任意の化合物は、好ましくはアルミニウム化合物である。
【0074】
特に好ましくは、このアルミニウム化合物は、式Al(アルキル)xHal3-x(II)のアルミニウム化合物であり、この式中、各アルキルは、独立に、C1~12-アルキル基、好ましくはC1~8-アルキル基、より好ましくはC1~6-アルキル基であり、Halは、ハロゲン、好ましくは塩素であり、1<x≦3である。このアルキル基は直鎖状、分岐状若しくは環状であることができ、又はこのような基の混合形態であることができる。
【0075】
好ましいアルミニウム化合物は、アルキルアルミニウムジクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、又はトリアルキルアルミニウム化合物、例えばジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、及びトリエチルアルミニウム又はそれらの混合物である。最も好ましくは、アルミニウム化合物は、トリアルキルアルミニウム化合物、とりわけトリエチルアルミニウムである。
【0076】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分における第13族元素の化合物の量は、第13族元素、好ましくはAlの含有量が、当該チーグラー・ナッタ触媒成分の総重量に対して、0.0重量%~3.0重量%、好ましくは0.0重量%~2.6重量%、より好ましくは0.0重量%~1.8重量%の範囲になるようにすることが好ましい。第13族元素の化合物の量は、実験部で記載したようにICP分析によって決定される。
【0077】
内部ドナーは、チーグラー・ナッタ触媒成分の一部であり、チーグラー・ナッタ触媒成分の合成中にそのチーグラー・ナッタ触媒成分に添加される。
【0078】
第1~3族の金属(iii)、特にMgに対する内部ドナー(ID)のモル担持(添加)比(合成時)は、好ましくは0.010~0.300mol/mol、より好ましくは0.030~0.250mol/mol、さらにより好ましくは0.040~0.120mol/molである。
【0079】
最終的なチーグラー・ナッタ触媒成分は、典型的には、
2.0~15.0、好ましくは2.5~12.0、より好ましくは2.8~7.0のMg/Tiのmol/mol比、
0~1.0、好ましくは0~0.8、より好ましくは0~0.5のAl/Tiのmol/mol比、及び
5.0~30.0、好ましくは6.0~27.0、より好ましくは9.0~16.0のCl/Tiのmol/mol比
を有する。
【0080】
本発明のチーグラー・ナッタ触媒成分の製造方法
一般に、本明細書で規定される本チーグラー・ナッタ触媒成分は、本発明の内部ドナー、すなわち式(I)の化合物を、チーグラー・ナッタ触媒成分を調製するプロセスに加えることによって製造される。これは、チーグラー・ナッタ触媒を製造する技術分野の当業者にとっては周知である方法及び条件で達成されてもよい。
【0081】
従って、本明細書で提供されるのは、チーグラー・ナッタ触媒成分、特に本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒成分の製造方法であって、チーグラー・ナッタ触媒成分を調製するプロセスに、本明細書で規定される式(I)の内部ドナーを添加する工程を含む方法である。
【0082】
固体のチーグラー・ナッタ触媒成分は、例えば、欧州特許出願公開第0376936A1号明細書、欧州特許出願公開第0688794A1号明細書又は国際公開第99/51646A1号パンフレットに記載されているように、シリカ、アルミナ、又は別途調製されたMgベースの固体担体、例えばMgCl2ベースの固体担体等の固体担体を、上記の化合物と順次接触させることによって調製することができる。あるいは、固体のチーグラー・ナッタ触媒成分は、国際公開第01/55230A1号パンフレットに記載されているように、まず上記成分から溶液を調製し、次にその溶液を固体担体と接触させることによって調製することができる。
【0083】
当該方法の特定の例では、当該チーグラー・ナッタ触媒成分の製造方法は、
(M-a)固体担体、好ましくはMgCl2ベースの固体担体、より好ましくはMgCl2
*mROH付加物の固体担体粒子を提供する工程であって、MgCl2
*mROH付加物中のRは直鎖状又は分岐状のC1~12-アルキル基であり、mは0~6、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である工程と、
(M-b)工程(M-a)の固体担体粒子を、第13族元素の化合物で前処理する工程と、
(M-c)工程(M-b)の前処理された固体担体粒子を、第4~6族の遷移金属化合物で処理する工程と、
(M-d)このチーグラー・ナッタ触媒成分を回収する工程と
を含み、工程(M-c)で上記固体担体を処理する前に、固体担体を式(I)の内部有機化合物又はその混合物と接触させる。
【0084】
好ましくは、本明細書で規定される式(I)の化合物は、第13族元素の化合物で固体担体を前処理する前、その間、又はその後に、ただし、第4~6族の遷移金属の化合物でそれを処理する前に、上記触媒混合物に添加される。
【0085】
固体のチーグラー・ナッタ触媒成分は、活性触媒成分が担持された、シリカ、アルミナ、又は別途調製されたMgベースの固体担体のような外部担体材料を使用せずに形成されてもよい。この場合、すべての活性触媒化合物を液状で互いに接触及び/又は反応させ、その後、固体触媒を形成する方法によって、固体触媒が形成される。この固体のチーグラー・ナッタ触媒成分は、エマルション-固化法で形成されてもよいし、沈殿法で形成されてもよい。チーグラー・ナッタ触媒成分がエマルション-固化法で形成されるか、又は沈殿法で形成されるかは、条件、とりわけ化合物を接触させる際に使用される温度に依存する。エマルション-固化法では、当該チーグラー・ナッタ触媒成分の化合物は、少なくとも2つの液相のエマルション中で分散した、すなわち不連続な相を形成する。液滴の形態の分散相は、エマルションから固化され、固体粒子の形態のチーグラー・ナッタ触媒成分が形成される。これらのタイプの触媒の調製原理は、例えば、国際公開第2003/106510A1号パンフレット、国際公開第2013/098139A1号パンフレット及び国際公開第2014/096297A1号パンフレットに与えられている。
【0086】
チーグラー・ナッタ触媒
従って、本明細書でさらに提供されるのは、オレフィン重合用、特にエチレン(共)重合用のチーグラー・ナッタ触媒であって、本明細書で規定される触媒成分を含み、この触媒成分が式(I)の化合物から選択される内部ドナーを含むチーグラー・ナッタ触媒である。従って、本明細書でさらに提供されるのは、オレフィン重合用、特にエチレン(共)重合用のチーグラー・ナッタ触媒の使用であって、このチーグラー・ナッタ触媒が式(I)の化合物から選択される内部ドナーを含むチーグラー・ナッタ触媒成分を含む使用である。
【化11】
上記式(I)中、
R
1は、H、直鎖状又は分岐状のC
1~7-アルキル、CH
2OR
2及び酸素含有複素環からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択される。
【0087】
好ましくは、R1は、H、直鎖状又は分岐状のC1~5-アルキル、及びテトラヒドロフリルからなる群から選択される。より好ましくは、R1は、H、C1~3-アルキル、及び2-テトラヒドロフリルからなる群から選択され、さらにより好ましくは、R1は、H、メチル、及び2-テトラヒドロフリルからなる群から選択される。
【0088】
好ましくは、R1は、H、メチル、及びテトラヒドロフリルからなる群から選択される。より好ましくは、R1は、H、メチル、及び2-テトラヒドロフリルからなる群から選択される。
【0089】
本発明のチーグラー・ナッタ触媒の使用の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されており、また以下の説明にも記載されている。
【0090】
当該チーグラー・ナッタ触媒及びその使用の第1の例では、式(I)の化合物は、式(I-a)の化合物から選択される。
【化12】
上記式(I-a)中、
R
1aは、H、C
1~3-アルキル及びCH
2OR
2からなる群から選択され、
R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択される。
【0091】
好ましくは、R1aは、H及びメチルからなる群から選択される。
【0092】
当該チーグラー・ナッタ触媒の第2の例では、式(I)の化合物は、式(I-b)の化合物から選択される。
【化13】
上記式(I-b)中、
R
1bは、酸素含有複素環からなる群から選択される。
【0093】
好ましくは、R1bは、テトラヒドロフリルからなる群から選択される。より好ましくは、R1bは2-テトラヒドロフリルである。
【0094】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分の第3の例では、式(I)の化合物は、下記の化合物である。
【化14】
上記式(I)中、
R
1は、H、メチル、CH
2OR
2及び酸素含有複素環からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択される。
【0095】
当該チーグラー・ナッタ触媒成分の第4の例では、式(I)の化合物は、下記の化合物である。
【化15】
上記式(I)中、
R
1は、H、CH
2OR
2及び酸素含有複素環からなる群から選択され、R
2は、直鎖状若しくは分岐状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択される。
【0096】
特定の例では、式(I)の化合物は、ジ(2-テトラヒドロフリル)メタン(DTHFM)、1,1-ジ(2-テトラヒドロフリル)エタン(DTHFE)、及びトリス(テトラヒドロフラン-2-イル)メタン(FFHFM)からなる群から選択される。上述の化合物の中では、DTHFM及びFFHFMが特に好ましい。
【0097】
本明細書に開示されるチーグラー・ナッタ触媒も提供される。
【0098】
特に、本発明のチーグラー・ナッタ触媒は、
(A)本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒成分と、
(B)周期表(IUPAC、2005)の第13族元素の化合物から選択される共触媒と、
(C)任意に、外部ドナーと
を含む。
【0099】
(B)共触媒(II)
チーグラー・ナッタ触媒は、典型的には、活性化剤としても知られる共触媒と一緒に使用される。適切な共触媒は、周期表の第13族元素(IUPAC、2005)の化合物、典型的には、第13族元素C1~16-アルキル化合物、とりわけアルミニウムC1~16-アルキル化合物である。これらの化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム及びトリ-n-オクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム化合物、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド等のアルキルアルミニウムハライドなどが挙げられる。とりわけ好ましい活性化剤はトリアルキルアルミニウムであり、その中でもトリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムが特に用いられる。
【0100】
共触媒の使用量は、特定の触媒及び共触媒に依存する。典型的には、例えばトリエチルアルミニウムは、Al/Tiのような遷移金属に対するアルミニウムのモル比が、1~1000、好ましくは3~100、特に約5~約30mol/molとなるような量で使用される。
【0101】
(C)外部ドナー
本発明の触媒は、外部ドナーも含んでよい。使用可能な外部ドナーとしては、従来技術から公知であるように、エーテル化合物、典型的にはテトラヒドロフラン、シロキサン又はシランタイプの外部ドナー及び/又はハロゲン化アルキルが挙げられる。外部ドナーは、外部電子供与体とも呼ばれる。外部電子供与体は、固体触媒成分の一部ではなく、別個の成分として重合プロセスに供給される。
【0102】
オレフィンの重合
本明細書で規定される本発明のチーグラー・ナッタ触媒成分、特に本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒は、オレフィン、好ましくはエチレンを、任意にC2~20コモノマーと共に重合することを意図している。
【0103】
従って、本明細書で提供されるのは、任意にC2~20コモノマーとの、オレフィン重合、好ましくはエチレン(共)重合における、本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒成分又は本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒の使用である。
【0104】
さらに、本明細書に提供されるのは、オレフィン重合、特にエチレン(共)重合の方法であって、重合反応器にチーグラー・ナッタ触媒を導入する工程を含み、このチーグラー・ナッタ触媒は、本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒成分を含む方法である。
【0105】
好ましくは、本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒成分又は本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒は、任意に1種以上のコモノマーとの、エチレン(共)重合で使用される。エチレン重合において一般に使用されるコモノマーは、α-オレフィンコモノマーである。このα-オレフィンコモノマーは、好ましくはC3~20-α-オレフィンから、より好ましくはC4~10-α-オレフィンから選択され、例えば1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン及び1-デセン、並びにブタジエン、1,7-オクタジエン及び1,4-ヘキサジエン等のジエン、又はノルボルネン等の環状オレフィン、並びにこれらの任意の混合物から選択される。最も好ましくは、コモノマーは1-ブテン及び/又は1-ヘキセンである。
【0106】
本発明の触媒は、広範囲のポリエチレン(コ)ポリマーの製造を可能にする。従って、高密度、中密度、及び低密度のエチレン(コ)ポリマーの製造が可能である。
【0107】
コポリマーが所望の最終生成物である場合、エチレンコポリマーのコモノマー含有量は、所望のポリマー特性に応じて広い範囲で変化することができる。従って、コモノマー含有量は、0.1重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~15重量%、より好ましくは1.0重量%~10重量%の範囲で変化することができる。
【0108】
さらに本明細書で提供されるのは、エチレンのホモポリマー又はコポリマーの製造プロセスであって、
(P-a)本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒成分を重合反応器に導入する工程と、
(P-b)上記触媒前駆体を活性化することができる共触媒を重合反応器に導入する工程と、
(P-c)エチレン、任意にC3~C20のα-オレフィンコモノマー、及び任意に水素を上記重合反応器に導入する工程と、
(P-d)上記重合反応器を、エチレンのホモポリマー又はコポリマーを生成するような条件で維持する工程と
を含むプロセスである。
【0109】
上記触媒は、当該技術分野で公知の任意の手段で重合ゾーンに移送されてもよい。従って、上記触媒を希釈剤に懸濁させ、それを均質なスラリーとして維持することが可能である。国際公開第2006/063771A1号パンフレットに開示されているように、希釈剤として20~1500mPa・sの粘度を有する油を使用することがとりわけ好ましい。上記触媒をグリース及び油の粘性組成物と混合し、得られたペーストを重合ゾーンに供給することも可能である。なおさらに、例えば欧州特許出願公開第0428054A1号明細書に開示されているようにして、上記触媒を沈降させ、このようにして得られた触媒泥の一部を重合ゾーンに導入することが可能である。
【0110】
本発明に従って使用される重合プロセスは、少なくとも1つの気相反応器、又は少なくとも1つのスラリー反応器、又は少なくとも1つのスラリー反応器及び少なくとも1つの気相反応器の組み合わせを含む。
【0111】
スラリーでの重合は、通常、不活性希釈剤、典型的にはメタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等、又はそれらの混合物などの炭化水素希釈剤の中で行われる。好ましくは、希釈剤は、炭素原子数1~4の低沸点炭化水素、又はそのような炭化水素の混合物である。とりわけ好ましい希釈剤はプロパンであり、場合によっては少量のメタン、エタン及び/又はブタンを含む。
【0112】
スラリー重合の温度は、通常40~115℃、好ましくは60~110℃、特に70~100℃である。圧力は、1~150bar(バール)、好ましくは10~100barである。
【0113】
スラリー重合は、スラリー重合に使用される任意の公知の反応器で実施されてもよい。このような反応器としては、連続撹拌槽反応器及びループ反応器が挙げられる。ループ反応器で重合を行うことがとりわけ好ましい。当該技術分野で公知であるように、ポリマーの分子量を制御するために、任意に水素が反応器に供給される。
【0114】
さらには、ポリマー生成物の密度及びモルホロジーを制御するために、1種以上のα-オレフィンコモノマーが反応器に添加されてもよい。このような水素及びコモノマーの実際の供給量は、得られるポリマーの所望のメルトインデックス(又は分子量)及び密度(又はコモノマー含有量)に依存する。
【0115】
気相での重合は、流動床反応器、高速流動床反応器、固定床反応器、又はこれらの任意の組み合わせで行われてもよい。
【0116】
典型的には、流動床重合反応器又は固定床重合反応器は、50~100℃、好ましくは65~90℃の範囲内の温度で運転される。圧力は、好適には10~40bar、好ましくは15~30barである。
【0117】
加えて、必要に応じて、スラリー反応器及び/又は気相反応器に帯電防止剤(複数種可)が導入されてもよい。
【0118】
当該プロセスは、前反応器及び後反応器をさらに含んでいてもよい。
【0119】
重合工程の前には、予備重合工程があってもよい。予備重合工程は、スラリー中又は気相中で行われてもよい。好ましくは、予備重合はスラリー中で、とりわけループ反応器中で行われる。予備重合工程の温度は、通常0~90℃、好ましくは20~80℃、より好ましくは30~70℃である。
【0120】
圧力は臨界的意義を有さず、通常は1~150bar、好ましくは10~100barである。
【0121】
重合は連続的に行われてもよいし、バッチ式(回分式)で行われてもよいが、好ましくは、重合は連続的に行われる。
【0122】
本発明に係るエチレン(コ)ポリマーを製造するための好ましい多段プロセスは、スラリー相重合段階及び気相重合段階を含む。各段階は、1つ以上の重合反応器を含むことができる。1つの好適な反応器構成は、1つ~2つのスラリー反応器、好ましくはループ反応器及び1つの気相反応器を含む。このような重合構成は、例えばBorealis(ボレアリス)の国際公開第92/12182A1号パンフレット及び国際公開第96/18662A1号パンフレット等の特許文献に記載されており、Borstar技術として公知である。
【0123】
本発明のプロセスの第1の例では、オレフィンの重合は、エチレン(コ)ポリマーを製造するための少なくとも1つの気相反応器を含む多段重合プロセスで達成される。
【0124】
本発明のプロセスの第2の例では、オレフィンの重合は、少なくとも1つのスラリー反応器、好ましくは2つのスラリー反応器、及び1つの気相反応器を含む多段重合プロセスで達成される。
【0125】
ポリマーの特性
本発明に係る重合プロセスのチーグラー・ナッタ触媒成分に本発明の内部ドナーを利用することにより、以下の例に示すように、生産性を良好なレベルに保ちながら、望ましい分子量、分子量分布(MWD)及び化学組成分布(CCD)を有するエチレン(コ)ポリマーを製造することが可能である。
【0126】
本発明の内部ドナーをチーグラー・ナッタ触媒に利用することにより、製造されるポリマーの分子量、分子量分布(MWD)及び化学組成分布(CCD)を最適化することができる。
【0127】
さらに、分子量の増加、化学組成分布の改善及びMWDの狭小化等の改良は、触媒の生産性を犠牲にしてなされるものではなく、生産性は許容できるレベルに維持される。このように、本発明の内部ドナーを含むチーグラー・ナッタ触媒の性能は、分子量の増加、化学組成分布の改善及びMWDの狭小化等の改良を可能にし、これは、触媒の生産性を犠牲にして得られるのではなく、生産性が許容できるレベルに維持される。
【0128】
とりわけ、水素応答、MWD、コモノマー応答、化学組成分布(CCD)、触媒活性、及び生産性の最適な組み合わせにより、ポリエチレン(コ)ポリマーを製造するために、チーグラー・ナッタ触媒における本発明の内部ドナーの利用は非常に魅力的になる。
【0129】
本発明の利点は、実験部及び図に示されている。
【0130】
実験部
分析方法
ICP-OESによる触媒成分中のAl、Mg、Ti含有量
触媒成分の乾燥粉末からなる試料を、代表的な試験部分を採取できるように混合する。不活性雰囲気中で約20~50mgの材料を20mL容量のバイアル瓶に採取し、粉末の正確な重量を記録する。
【0131】
既知の体積(V)の試験溶液を以下のようにメスフラスコで調製する。冷却したバイアル瓶の中で、少量の脱イオンし蒸留した(DI)水(Vの5%)を加え、続いて濃硝酸(65%HNO3、Vの5%)を加えて試料の消化を行う。この混合物をメスフラスコに移す。この溶液をDI水で最終体積Vまで希釈し、2時間放置して安定させる。
【0132】
得られた水性試料の元素分析は、Thermo Elemental iCAP 6300誘導結合プラズマ-発光分光分析装置(ICP-OES)を用いて、室温で行う。装置は、ブランク(5%HNO3溶液)、及び5%HNO3 DI水溶液中のAl、Ti並びにMgの0.5ppm、1ppm、10ppm、50ppm、100ppm及び300ppmの6種の標準試料を用いて、Al、Ti及びMgについて検量線を作成した。検量線には、曲線フィッティング及び1/濃度の重み付けを使用する。
【0133】
分析の直前に、ブランク及び300ppmのAl、100ppmのTi、Mgの標準試料を用いて、検量線の検証及び調整を行う(装置の機能名「re-slope(傾き再調整)」)。品質管理試料(QC;DI水に5%の硝酸を溶かした溶液に20ppmのAl及びTi、50ppmのMgを溶かしたもの)を実行し、re-slopeを確認する。このQC試料は、5回ごとの試料の後と、予定された分析セットの最後にも実行する。
【0134】
マグネシウムの含有量は285.213nmの線で、チタンの含有量は336.121nmの線でモニターする。アルミニウムの含有量は、試験部分のAl濃度が0~10重量%の場合は167.079nmの線、10重量%を超えるAl濃度については396.152nmの線でモニターする。
【0135】
報告された値は、同一試料から連続して採取した3つの分液の結果の平均であり、試験部分の元の重量と希釈量をソフトウェアに入力することで、元の触媒試料に関連づけられている。
【0136】
電位差滴定による触媒成分中のCl含有量
触媒成分の塩化物含有量は、硝酸銀を用いた滴定により決定する。触媒成分の50~200mgの試験部分をセプタムシールしたバイアル瓶に入れ、窒素下で秤量する。濃HNO3(68%、分析グレード)1部及び脱イオンし蒸留した(DI)水4部の溶液を、シリンジを用いて2.5mLの分量で試料に加える。反応が完了し、触媒成分物質が溶解した後、過剰のDI水を用いて溶液を滴定カップに移す。その後、この溶液を、Mettler Toledo(メトラー・トレド)T70自動滴定装置を用いて、市販の認証済みの0.1M AgNO3溶液で直ちに滴定する。滴定終点は、Ag電極を用いて決定する。滴定から全塩化物量を算出し、元の試料重量と関連付ける。
【0137】
GC-MSによる触媒成分中の揮発物
触媒成分の粉末40~60mgの試験部分を用いた試験溶液を、試料及び内部標準を水及びジクロロメタンで液液抽出することで調製する。まず、試験部分に10mLのジクロロメタンを加え、続いて精密マイクロシリンジを用いて1mLの内部標準溶液(脱イオン水中の0.71体積%のピメリン酸ジメチル)を加える。この懸濁液を30分間超音波処理し、相分離のために、乱さないように放置する。試験溶液の部分を有機相から取り出し、0.45μmのシリンジフィルターを用いて濾過する。
【0138】
検量線作成のために、分析対象物の濃度が異なる5種の標準ストック溶液を、分析対象物の標準物質の量を5段階で増やして正確にメスフラスコに入れ、目盛りまでメタノールを満たすことにより調製する。検量線作成試料の準備のために、上記ストック溶液から200μLの分量を、試料と同じ体積比でISTD水溶液及びジクロロメタンで抽出する。最終的な検量線作成試料中の分析対象物の量は0.1mg~15mgである。
【0139】
測定は、Agilent(アジレント) 5977A質量分析計検出器を備えたAgilent 7890Bガスクロマトグラフを用いて行う。分離は、ZB-XLB-HT Inferno 60m×250μm×0.25μmカラム(Phenomenex(フェノメネックス))を用い、3チャンネルの補助EPC及び3m×250μm×0μmのプレカラム制限キャピラリを介してミッドポイントバックフラッシュを行って達成する。オーブンの初期温度は50℃で、ホールドタイムは2分である。オーブンランプは、5℃/分で150℃までの第1ステージと、30℃/分で300℃までの第2ステージで構成され、その後、300℃で1分間のポストランバックフラッシュを行う。
【0140】
注入口はスプリットモードで動作する。注入量は1μLであり、注入口の温度は280℃であり、セプタムパージは3mL/分であり、総流量は67.875mL/分であり、スプリット比は50:1である。キャリアガスは99.9996%Heであり、プレカラムの流量は1.2721mL/分であり、バックフラッシュEPCから分析カラムへの追加流量は2mL/分である。MS検出器のトランスファーラインは300℃に保たれている。MSDは、70eVの電子衝撃モード及び15~300m/zのスキャンモードで動作する。
【0141】
シグナルの識別は、リテンションタイム(ヘプタン4.8、トルエン6.3、ピメリン酸ジメチル23.2)及びターゲットイオンのm/z(ヘプタン71.1、トルエン91.1、ピメリン酸ジメチル157.1)によって決定する。加えて、同定の確認のためにクォリファイアイオンを使用する(ヘプタン、トルエン)。各分析対象物及び内部標準のターゲットイオンのシグナルを積分し、5つの検量線作成試料を用いて各ランの最初に設定した検量線と比較する。応答比の検量線は、試料濃度の重み付けをしなくても直線的になる。標準化を確認するために、各ランで品質管理試料を使用する。すべての試験溶液は2回の反復ランで実行する。試験部分の質量は、両方の反復物における試料中の分析対象物濃度の計算に使用し、結果は平均値として報告する。
【0142】
DSCによるポリマーの融解結晶化特性
ポリマーの示差走査熱量分析(DSC)は、Mettler Toledo DSC2を用いて、5~10mgの試料を用いて実施する。ポリマー粉末又はペレットカット又はMFRストリングカット試料を40μLのアルミパンに入れ、0.01mg単位で秤量し、パンを蓋で密閉する。DSCは、ISO 11357-3又はASTM D3418に基づいて、スキャンレート10℃/分の加熱/冷却/加熱のランサイクルで実行する。窒素パージガスの流量は50~80mL/分に設定する。1回目の加熱ランの温度範囲は30℃~180℃である。冷却ラン及び2回目の加熱ランの温度範囲は、180℃~0℃(又はそれ以下)である。1回目の加熱ラン及び冷却ランの等温時間は5分である。最初の融解ランは、試料の熱履歴を取り除くために使用する。結晶化温度(Tc)は冷却ランから決定し、主融解温度(Tm)、結晶化度(結晶%)及び融解熱(Hm)は2回目の加熱ランから決定する。
【0143】
ポリマーのメルトフローレート
メルトフローレートは、ISO 1133に準拠して190℃で所定の荷重をかけて測定し、グラム/10分の単位で表示する。メルトフローレートは、ポリマーの分子量の指標である。メルトフローレートが高いほど、ポリマーの分子量は低い。
MFR21:190℃、21.6kg荷重
【0144】
分子量平均値、分子量分布(M
n、M
w、M
z、MWD、PDI)
分子量平均値(M
z、M
w及びM
n)、分子量分布(MWD)、並びに多分散性指数PDI=M
w/M
n(M
nは数平均分子量であり、M
wは重量平均分子量である)で表されるその広さは、ISO 16014-1:2003、ISO 16014-2:2003、ISO 16014-4:2003及びASTM D 6474-12に準拠したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、以下の式を用いて決定する。
【数1】
【0145】
一定の溶出量間隔ΔViに対して、Ai及びMiは、それぞれ溶出量Viに関連するクロマトグラフィーピークのスライス面積及びポリオレフィンの分子量(MW)であり、Nは積分限界間のクロマトグラムから得られるデータポイントの数に等しい。
【0146】
赤外(IR)検出器(PolymerChar(ポリマー・チャー)(バレンシア、スペイン)製IR4若しくはIR5)又はAgilent Technologies(アジレント・テクノロジーズ)製示差屈折率検出器(RI)のいずれかを備え、3本のAgilent-PLgel Olexis及び1本のAgilent-PLgel Olexis Guardカラムを備えた高温GPC装置を使用する。溶媒及び移動相として、250mg/Lの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチル-フェノールで安定化した1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)を使用する。クロマトグラフィーシステムは160℃で、1mL/分の一定流量で操作する。1回の分析につき200μLの試料溶液を注入する。データ収集は、Agilent Cirrusソフトウェアバージョン3.3又はPolymerChar GPC-IRコントロールソフトウェアを用いて行う。
【0147】
カラムセットは、0.5kg/mol~11500kg/molの範囲の19種の狭いMWDのポリスチレン(PS)標準物質を用いて、ユニバーサルキャリブレーション(ISO 16014-2:2003に準拠)で較正する。PS標準物質は、室温で数時間かけて溶解させる。ポリスチレンピーク分子量のポリオレフィン分子量への変換は、Mark Houwinkの式及び以下のMark Houwink定数を使用して行う。
KPS=19×10-3mL/g、 ηPS=0.655
KPE=39×10-3mL/g、 ηPE=0.725
KPP=19×10-3mL/g、 ηPP=0.725
【0148】
検量線作成データのフィッティングには、3次の多項式フィットを用いる。
【0149】
すべての試料は、0.5~1mg/mLの濃度範囲で調製し、160℃で連続的に穏やかに振盪しながら、PPは2.5時間、PEは3時間かけて溶解する。
【0150】
FTIRによるポリマーのコモノマー含有量(1-ブテン)
コモノマー含有量は、Bruker Tensor 37分光器とOPUSソフトウェアとを用いたフーリエ変換赤外分光法(FTIR)に基づいて決定する。
【0151】
約0.3gの試料を250μmの厚さのフィルムに圧縮成形する。フィルムの両面にはシリコンペーパーを使用する。汚染を避けるため、このフィルムには素手で触れない。フィルムは、Fontijne Press(フォンティニュー・プレス)モデルLabEcon 300を用いてプレスする。成形は160℃で、2分間の予備加熱+2分間の軽いプレス+1分間のフルプレスで行う。冷却はフルプレスパワーで4分間行う。
【0152】
ブテンコモノマーの含有量は、波数が約1378cm-1の吸光度から求め、基準ピークは2019cm-1である。分析は、分解能2cm-1、波数スパン4000~400cm-1、及び掃引回数128回で行う。各フィルムから少なくとも2つのスペクトルを得る。
【0153】
コモノマー含有量は、1400cm-1~1330cm-1の波数範囲のスペクトルから決定する。ベースラインは、以下の方法を用いて決定する。設定された波数範囲内で、最も高いピークを見つけ、次にこの最も高いピークの左と右にある最小値を見つける。ベースラインはこれらの最小値を結ぶ。最高ピークの吸光度値を基準ピークの面積で割る。
【0154】
この方法の較正プロットは、各コモノマータイプについて個別に作成する。未知試料のコモノマー含有量は、検量線作成試料のコモノマー含有量の範囲内である必要がある。検量線作成試料材料のコモノマー含有量は、NMRスペクトル測定によってあらかじめ決定されている。
【0155】
コモノマー含有量は、検量線及び下記式を用いて自動的に算出される。
WE=C1×A0+C0
上記式中、
WE=結果(単位:重量%)
A0=基準ピーク(AR)の面積に対する測定ピーク(AQ)の吸光度
C1=検量線の傾き
C0=検量線の切片(偏り)
【0156】
得られた両方のスペクトルからコモノマー含有量を求め、これらの結果の平均値として値を算出する。
【実施例】
【0157】
比較内部ドナー
CD1:ジ(フラン-2-イル)メタン(DFM)
【化16】
ジ(フラン-2-イル)メタン(CAS 1197-40-6)、別名ビス(2-フリル)メタンは、[a)Chem.Eur.J.、2000、6、22、4091;b)J.Appl.Polym.Sci.、2014、DOI:10.1002/app.40179]に記載されているように調製した。生成物は、真空蒸留(b.p.70℃/15mbar)により、収率62%で単離した。
1H NMR(CDCl
3,400MHz): δ 7.33(m,2H),6.31(m,2H),6.08(d,J=3.0Hz,2H),4.00(s,2H).
13C{
1H} NMR(CDCl
3,100MHz): δ 151.5,141.6,110.4,106.4,27.4.
【0158】
CD2:1,1-ジ(フラン-2-イル)エタン(DFE)
【化17】
1,1-ジ(フラン-2-イル)エタン(CAS 51300-81-3)、別名1,1-ビス(2-フリル)エタン又は2,2’-(エタン-1,1-ジイル)ジフランは、記載の方法[J.Heterocyclic.Chem.、1991、28、991]を若干変更して調製した。
【0159】
85mLのエタノール及び50mLの12M HClの氷冷した混合物にフラン175g(2.57mol)を加え、続いて60g(1.36mol)のアセトアルデヒドを加えた。得られた混合物を室温で20時間撹拌した後、500mLの水に注ぎ、3×250mLのエーテルで抽出した。有機抽出液を合わせ、炭酸水素カリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、揮発物を真空中で蒸発させた。残渣を真空中で蒸留し、60.5g(29%)の1,1-ジ(フラン-2-イル)エタン(b.p.88~92℃/17mmHg)及び57.2g(26%)の2,5-ビス[1-(2-フリル)エチル]フラン(b.p.144~152℃/3mmHg)を得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz): δ 7.32(m,2H),6.29(dd,J=3.1Hz,J=1.9Hz,2H),6.04(d,J=3.1Hz,2H),4.21(q,J=7.2Hz,1H),1.59(d,J=7.2Hz,3H).
13C{1H} NMR(CDCl3,100MHz): δ 156.5,141.3,110.1,104.9,33.0,17.9.
【0160】
CD3:2,2-ジ(フラン-2-イル)プロパン(DFP)
【化18】
2,2-ジ(フラン-2-イル)プロパン(CAS 17920-88-6)、別名2,2-ビス(2-フリル)プロパン又は2,2’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフランは、TCI EUROPE N.V.(ティーシーアイ・ヨーロッパ)から入手した。
【0161】
CD4:トリ(フラン-2-イル)メタン(TFM)
【化19】
8.6mL(103.8mmol)のフルフラール及び200mLのフランの氷冷した混合物に、5mLのトリフルオロ酢酸を滴下し、得られた混合物を室温で24時間撹拌した。反応混合物を炭酸水素カリウムの水溶液に注ぎ、250mLのエーテルで抽出し、抽出液をNa
2SO
4上で乾燥させた。すべての揮発物を真空中で除去し、残渣を真空中で蒸留して、3.2g(14%)のトリ(フラン-2-イル)メタン(CAS 77616-90-1)、別名:2,2’,2”-メタントリイルトリフラン)(b.p.115℃/10mmHg)を得た。
1H NMR(CDCl
3,400MHz): δ 7.40(br.d,3H),6.36(dd,J=3.1Hz,J=1.9Hz,3H),6.16(d,J=3.1Hz,3H),5.59(s,1H).
13C{
1H} NMR(CDCl
3,100MHz): δ 151.9,142.0,110.4,107.3,38.9.
【0162】
CD5:2,5-ビス[2-(テトラヒドロフラン-2-イル)プロパン-2-イル]テトラヒドロフラン(BTHFPT)
【化20】
2,5-ビス[2-(テトラヒドロフラン-2-イル)プロパン-2-イル]テトラヒドロフラン(CAS 89686-70-4)、別名2,5-ビス[2-(オキソラン-2-イル)プロパン-2-イル]オキソランは、Fluorochem Ltd.(フルオロケム)から入手した。
【0163】
CD6:2,5-ビス[1-(フラン-2-イル)エタン-1-イル]フラン(BFEF)
【化21】
2,5-ビス[1-(フラン-2-イル)エタン-1-イル]フラン(CAS 61093-50-3)は、記載の方法[J.Heterocyclic.Chem.、1991、28、991]を若干変更して調製した。
【0164】
85mLのエタノール及び50mLの12M HClの氷冷した混合物に175g(2.57mol)のフランを加え、続いて60g(1.36mol)のアセトアルデヒドを加えた。得られた混合物を室温で20時間撹拌し、500mLの水に注ぎ、3×250mLのエーテルで抽出した。有機抽出液を合わせ、炭酸水素カリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、揮発物を真空中で蒸発させた。残渣を真空中で蒸留し、60.5g(29%)の2,2’-エタン-1,1-ジイルジフラン(b.p.88~92℃/17mmHg)及び57.2g(26%)の2,5-ビス[1-(フラン-2-イル)エタン-1-イル]フラン(b.p.144~152℃/3mmHg)を得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz): δ 7.31(m,2H),6.27(dd,J=3.1Hz,J=1.9Hz,2H),6.00(d,J=3.1Hz,2H),5.93(s,2H),4.16(q,J=7.2Hz,2H),1.56(d,J=7.2Hz,6H).
13C{1H} NMR(CDCl3,100MHz): δ 156.7,155.2,141.1,110.0,105.4,104.9,33.1,18.01,17.96.
【0165】
CD7:2,2,7,7,12,12,17,17-オクタメチル-21,22,23,24-テトラオキサパーヒドロクアテレン(2,2,7,7,12,12,17,17-octamethyl-21,22,23,24-tetraoxaperhydroquaterene、OMTOPQ)
【化22】
2,2,7,7,12,12,17,17-オクタメチル-21,22,23,24-テトラオキサクアテレン(2,2,7,7,12,12,17,17-octamethyl-21,22,23,24-tetraoxaquaterene)
200mLの無水エタノール中の95.2g(0.4mol)のCoCl
2(H
2O)
6の溶液に、93.2g(1.6mol)のアセトン、32mLの12M HCl、そして最後に54.4g(0.8mol)のフランを順次加えた。約20分後、反応混合物は高温(60~70℃)になり、深紅色になった。この反応フラスコを水浴に浸し、60℃で3時間維持した。その後、反応混合物を室温で一晩撹拌し、500mLの水に注いだ。得られた懸濁液を3×150mLのトルエンで抽出した。合わせた抽出液の揮発分を真空中で蒸発させ、残渣を200mLの無水エタノールで粉末にし、11.1g(13%、純度95%以上)の目的の生成物を白色粉末として得た。粗生成物を高温のトルエンから再結晶すると、分析的に純粋な2,2,7,7,12,12,17,17-オクタメチル-21,22,23,24-テトラオキサクアテレンが白色固体として得られた。
1H NMR(CDCl
3,400MHz): δ 5.88(s,1H),1.47(s,3H).
【0166】
2,2,7,7,12,12,17,17-オクタメチル-21,22,23,24-テトラオキサパーヒドロクアテレン
2,2,7,7,12,17,17-オクタメチル-21,22,23,24-テトラオキサクアテレン(5.0g、11.6mmol)、5%Pd/C(710g)及びエタノール(170mL)の混合物を、1000mLオートクレーブに入れ、次いでこのオートクレーブを水素(100bar)で加圧した。この混合物を125℃で15時間撹拌した。室温まで冷却した後、形成された混合物をセライト503のパッドで濾過し、さらに100mLのエタノールで洗浄した。濾液の揮発物を真空中で乾固するまで蒸発させ、11種類のジアステレオマーの混合物(GC-MS)である目的物の最初の部分(2.25g)を得た。フィルターケーキを400mLのジクロロメタンで洗浄し、濾液の揮発物を真空中で乾固するまで蒸発させ、2種の主要なジアステレオマーと少量の2種のマイナーなジアステレオマーの混合物(GC-MS)である生成物の第2の部分(2.90g)を得た。この2つの部分の生成物を合わせた。全体収量5.15g(99%)で、2,2,7,7,12,17,17-オクタメチル-21,22,23,24-テトラオキサパーヒドロクアテレン(CAS 50451-63-3)、別名オクタメチルパーヒドロシクロテトラフルフリレンを白色固体として得た。
合わせた部分の1H NMR(CDCl3,400MHz): δ 4.20-3.20(m,8H),2.55-1.28(m,16H),1.26-0.60(m,24H).
【0167】
CD8:9,9-ジ(メトキシメチル)フルオレン(DMMF)
【化23】
9,9-ジ(メトキシメチル)フルオレン(CAS 182121-12-6)、別名9,9-ビス(メトキシメチル)-9H-フルオレンは、Hangzhou Sage Chemical Co.(杭州尚杰化工有限公司)から入手した。
【0168】
本発明の内部ドナー
本発明の内部ドナーID1~ID4は、以下の手順に従って調製した。
【0169】
ID1:ジ(テトラヒドロフラン-2-イル)メタン(DTHFM)
【化24】
2,2’-メチレンジフラン(19.2g、130mmol;CD1の調製を参照)及び5%Pd/C(0.95g)を450mLオートクレーブに入れ、これをアルゴンでパージし、水素で加圧(70bar)し、この混合物を100℃で1時間撹拌した。室温まで冷却して減圧した後、混合物をジクロロメタンで希釈し、セライト503のパッドで濾過した。濾液の揮発物を真空中で蒸発させた。さらに、残渣に酢酸(20mL)及び水(80mL)を加え、形成された混合物をアルゴン雰囲気下で2時間還流した。室温まで冷却した後、この混合物を少過剰量のNaOHを加えて塩基性にし、このようにして得られた混合物をヘキサンで抽出した。抽出液をNa
2SO
4上で乾燥し、溶媒を真空中で蒸発させた。残渣をアルゴン雰囲気下で2.4gのNaHに撹拌下で滴下して加えた。水素の生成が止まったところで、生成物を真空中で蒸留した(b.p.54~70℃/1mbar)。収量:11.4g(56%)の無色透明な液体。
1H NMRによると、この生成物はジ(テトラヒドロフラン-2-イル)メタン(CAS 1793-97-1)、別名2,2’-メチリデンビス(テトラヒドロフラン)のジアステレオマーA及びBの約1:1の混合物であった。このうち、Aは(L)及び(D)の異性体のラセミ混合物であり、Bはメソ異性体である。
1H NMR(CDCl
3,400MHz): δ 3.95-3.79(m,Aの4H及びBの4H),3.72-3.65(m,Aの2H及びBの2H),2.05-1.93(m,Aの2H及びBの2H),1.92-1.76(m,Aの4H及びBの5H),1.69(t,J=6.4Hz,Aの2H),1.59(dt,J=13.6Hz,J=5.8Hz,Bの1H),1.52-1.39(m,Aの2H及びBの2H).
13C{
1H} NMR(CDCl
3,100MHz): δ 77.1,76.9,67.7,67.5,41.7,41.1,31.9,31.6,25.6,25,5.
【0170】
ID2:1,1-ジ(テトラヒドロフラン-2-イル)エタン(DTHFE)
【化25】
2,2’-(エタン-1,1-ジイル)ジフラン(20g、123mmol;CD2参照)及び5%Pd/C(1.00g)の混合物を450mLオートクレーブに入れ、次いでこれをアルゴンでパージし、水素で加圧(70bar)した。この混合物を120℃で1時間撹拌した。室温まで冷却して減圧した後、混合物をジクロロメタンで希釈し、セライト503のパッドで濾過した。濾液の揮発物を真空中で蒸発させた。さらに、残渣に酢酸(20mL)及び水(80mL)を加え、この混合物をアルゴン雰囲気下で5時間還流した。室温まで冷却した後、小過剰量のNaOHで塩基性にし、次いでヘキサンで抽出した。抽出液をNa
2SO
4上で乾燥し、溶媒を真空中で蒸発させた。残渣をアルゴン雰囲気下で3gのNaHに撹拌下で滴下して加えた。水素の生成が止まったところで、生成物を真空中で蒸留した(b.p.75~90℃/4mbar)。収量:無色の液体としての8.4g(40%)の1,1-ジ(テトラヒドロフラン-2-イル)エタン(CAS 84548-20-9)、別名2,2’-エチリデンビス(テトラヒドロフラン)。
1H NMRによると、この生成物は、ジアステレオマーA、B及びCの約2.2:1.1:1混合物であった。
1H NMR(CDCl
3,400MHz): δ 3.96-3.90(m,Bの2H),3.86-3.76(m,Aの6H,Bの4H,Cの6H),1.98-1.44(m,A、B及びCの9H),0.97(d,J=6.9Hz,Bの3H),0.87(d,J=6.8Hz,Aの3H),0.80(d,J=6.9Hz,Cの3H).
13C{
1H} NMR(CDCl
3,100MHz): δ 81.4,81.1,81.0,80.1,68.0,67.9,67.8,67.7,42.4,42.0,41.3,29.4,29.3(2つの共鳴),27.9,26.1,25.9,25.7(2つの共鳴),10.6,10.3,10.2.
【0171】
ID3及びID4:それぞれMeso-トリ(テトラヒドロフラン-2-イル)メタン(TTHFM-A)とRac-トリ(テトラヒドロフラン-2-イル)メタン(TTHFM-B)
【化26】
トリ(フラン-2-イル)メタノール
THF(1000mL)中のフラン(87.3g、1.28mol)の溶液に、-10℃でn-BuLi(500mL、1.25mol、ヘキサン中2.5M)を滴下して加えた。反応混合物を10℃に加温し、この温度で4時間撹拌した。さらに、形成された2-フリルリチウムの懸濁液を-80℃に冷却し、炭酸ジメチル(28.8g、320mmol)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌し、1Lの水に注ぎ、3×300mLのジエチルエーテルで抽出した。合わせた抽出液を200mLの水で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥し、シリカゲル60(40~63μm)のパッドに通し、揮発物を真空中で乾固するまで蒸発させた。この手順により、62.0g(収率76%)の純度90%のトリ(フラン-2-イル)メタノールが暗褐色の油状物として得られ、これをさらに精製することなく次の段階で使用した。
1H NMR(CDCl
3,400MHz): δ 7.43(d,3H,J=1.8Hz),6.38-6.36(dd,3H,J=3.2Hz,J=1.7Hz),6.23(d,3H,J=3.2Hz),3.38(s,1H).
【0172】
2,2’-(フラン-2(5H)-イリデンメチレン)ジフラン
無水ジエチルエーテル(1000mL)中の三塩化アルミニウム(23.2g、174mmol)の溶液に、0℃で水素化アルミニウムリチウム(16.0g、416mmol)を少しずつ加えた。得られた溶液にトリ(フラン-2-イル)メタノール(40.0g、174mmol)を滴下して加えた。この混合物を0℃で2時間撹拌し、100mLの水で注意深くクエンチした。得られた懸濁液をセライト503のパッドで濾過し、濾液をNa2SO4上で乾燥し、揮発物を真空中で乾固するまで蒸発させた。残渣を分留して、26.1g(70%)の2,2’-(フラン-2(5H)-イリデンメチレン)ジフランを薄茶色の油状物(b.p.145℃/5mbar)として得た。これは、1H NMRによると、約5mol%の2,2’,2”-メタントリイルトリフランを含んでいた。
1H NMR(CDCl3,400MHz): 7.43(m,1H),7.38(m,1H),6.70(dt,1H,J=6.1Hz,J=2.3Hz),6.63(d,1H,J=3.3Hz),6.49(dt,1H,J=6.1Hz,J=2.3Hz),6.44(m,2H),6.36(d,1H,J=3.1Hz),5.20(m,2H).
【0173】
Meso-トリ(テトラヒドロフラン-2-イル)メタン(TTHFM-A)及びRac-トリ(テトラヒドロフラン-2-イル)メタン(TTHFM-B)
2,2’-(フラン-2(5H)-イリデンメチレン)ジフラン(3.6g、16.8mmol)、5%Pd/C(180mg)、及び4mL iPrOHの混合物を100mLオートクレーブに入れ、これをアルゴンでパージし、水素で加圧(70bar)し、この混合物を100℃で75分間撹拌した。室温まで冷却して減圧した後、生成した混合物をジクロロメタンで希釈し、セライト503のパッドで濾過した。濾液の揮発物を真空中で蒸発させ、残渣をシリカゲル60のカラムクロマトグラフィー(40~63μm、溶離液:ヘキサン/酢酸エチル、3:1、体積)により精製した。この手順により、トリ(テトラヒドロフラン-2-イル)メタンを、0.77gのmeso-ジアステレオマーTTHFM-A、及び0.28gのrac-ジアステレオマーTTHFM-Bという別々の立体異性体の形で得た。この2つのジアステレオマーの全体収量は1.05g(28%)であった。このほか、0.78g(22%)の3-[ジ(テトラヒドロフラン-2-イル)メチル]フランを単離した。
ジアステレオマーTTHFM-A。1H NMR(CDCl3,400MHz): δ 4.06-3.96(m,2H),3.92-3.86(m,1H),3.86-3.77(m,3H),3.70-3.63(m,3H),2.10-2.05(m,1H),2.01-1.66(m,12H).
13C{1H} NMR(CDCl3,100MHz): δ 78.1,78.0,77.9,67.6,67.4(2つの共鳴),49.2,30.4,29.9,29.0,26.0,25.8(2つの共鳴).
ジアステレオマーTTHFM-B。1H NMR(CDCl3,400MHz): δ 3.98-3.94(m,3H),3.86-3.79(m,3H),3.69-3.62(m,3H),2.00-1.62(13H).
13C{1H} NMR(CDCl3,100MHz): δ 78.6,62.7,50.5,30.6,25.8.
【0174】
本発明の触媒成分及び比較触媒成分
本発明の触媒成分(IC1~IC4)及び比較触媒成分(CC1~CC8)を、本発明のドナー(ID1~ID4)及び比較ドナー(CD1~CD8)を使用したこと以外は、国際公開第2016/124676A1号パンフレットの参考例2の手順に従って調製した。CC8-a及びCC8-bでは、同じ内部ドナーCD8を使用した。触媒成分の例で使用したドナーの概要を表1に開示する。
【0175】
比較触媒成分CC9は、GraceからLynx 200の商品名で市販されている触媒である。
【0176】
原料
ヘプタン中の10重量%TEA(トリエチルアルミニウム)ストック溶液は、Chemtura(ケムチュラ)の100重量%TEA-Sを希釈して調製した。
【0177】
MgCl2
*3EtOH担体はGraceから入手した。
【0178】
TiCl4はAldrich(アルドリッチ)から入手した(金属不純物<1000ppm、金属分析>99.9%)。
【0179】
触媒成分調製の一般的手順
不活性雰囲気のグローブボックス内で、2つのゴム製セプタ、温度計、及びメカニカルスターラーを備えた乾燥した100mLの4口丸底フラスコに、40mLのヘプタンに溶解した3.1mmolの目的の内部ドナー(内部ドナー及び内部ドナー/Mg担持比は表1及び表2に示す)と、7.01g(30mmolのMg)の粒状17μm(Dv0.5)のMgCl2
*2.93EtOH担体を投入した。グローブボックスからこのフラスコを取り出し、窒素の入口及び出口を接続した。このフラスコを冷却槽に入れ、0℃で約10分間、250rpmで調質(テンパリング)を行った。ヘプタン中のトリエチルアルミニウム10重量%溶液(107.55g、94.2mmolのAl、Al/EtOH=1.07mol/mol)を、反応混合物の温度を0℃未満に保ちながら、1時間以内に撹拌した懸濁液に滴下して加えた。得られた懸濁液を20分以内に80℃に加熱し、この温度でさらに30分間、250rpmで維持した。この懸濁液を80℃で5分間放置して沈降させ、上澄み液をカニューレで除去した。得られた前処理済みの担体材料を、室温で70mLのトルエンで2回洗浄した(トルエンを加え、250rpmで15~120分撹拌し、5分間沈降させ、液相を吸い取った)。
【0180】
室温で、70mLのトルエンを前処理した担体材料に加えた。250rpmで撹拌したこの懸濁液に、ニート(無希釈)のTiCl4(3.31mL、30mmol;Ti/Mg=1.0mol/mol)を滴下して加え、反応混合物の温度を25~35℃に維持した。得られた懸濁液を20分以内に90℃に加熱し、この温度でさらに60分間、250rpmで撹拌した。この懸濁液を90℃で5分間放置して沈降させ、上澄み液をカニューレで除去した。得られた触媒を、90℃で70mLのトルエンで2回、室温で70mLのヘプタンで1回洗浄した(各洗浄では、トルエン又はヘプタンを加え、250rpmで15分間撹拌し、5分間沈降させ、液相を吸い取った)。この触媒を70℃で30分間、真空中で乾燥させた。
【0181】
【0182】
比較例
CC1の調製
内部ドナーとして0.45g(3.1mmol)のCD1(DFM)を用いた(ID/Mg=0.102)ことを除いて、上記の一般的手順を用いてCC1を調製した。
【0183】
3.8g(収率94.8%、Mg基準)のCC1を単離した。
【0184】
CC2の調製
内部ドナーとして0.50g(3.1mmol)のCD2(DFE)を用いた(ID/Mg=0.102)ことを除いて、上記の一般的手順を用いてCC2を調製した。
【0185】
3.6g(収率82.4%、Mg基準)のCC1を単離した。
【0186】
CC3の調製
内部ドナーとして0.54g(3.1mmol)のCD3(DFP)を用いた(ID/Mg=0.102)ことを除いて、上記の一般的手順を用いてCC3を調製した。
【0187】
3.0g(収率68.3%、Mg基準)のCC3を単離した。
【0188】
CC4の調製
内部ドナーとして0.66g(3.1mmol)のCD4(TFM)を用いた(ID/Mg=0.102)ことを除いて、上記の一般的手順を用いてCC4を調製した。
【0189】
3.8g(収率78.2%、Mg基準)のCC4を単離した。
【0190】
CC5の調製
内部ドナーとして0.34g(1.2mmol)のCD5(BTHFPT)を用いた(ID/Mg=0.039)ことを除いて、上記の一般的手順を用いてCC5を調製した。
【0191】
3.3g(収率85.5%、Mg基準)のCC5を単離した。
【0192】
CC6の調製
内部ドナーとして0.78g(3.1mmol)のCD6(BFEF)を用いた(ID/Mg=0.102)ことを除いて、上記の一般的手順を用いてCC6を調製した。
【0193】
4.0g(収率89.9%、Mg基準)のCC6を単離した。
【0194】
CC7の調製
内部ドナーとして1.37g(3.1mmol)のCD7(OMTOPQ)を用いた(ID/Mg=0.102)ことを除いて、上記の一般的手順を用いてCC7を調製した。
【0195】
5.9g(収率95.5%、Mg基準)のCC7を単離した。
【0196】
CC8-aの調製
内部ドナーとして0.778g(3.1mmol)のCD8(DMMF)を用いた(ID/Mg=0.102)ことを除いて、上記の一般的手順を用いてCC8-aを調製した。
【0197】
2.3g(収率57.4%、Mg基準)のCC8-aを単離した。
【0198】
CC8-bの調製
内部ドナーとして1.038g(4.1mmol)のCD8(DMMF)を用いた(ID/Mg=0.136)ことを除いて、上記の一般的手順を用いてCC8-bを調製した。
【0199】
2.8g(収率64.5%、Mg基準)のCC8-bを単離した。
【0200】
発明例
IC1の調製
内部ドナーとして0.48g(3.1mmol)のID1(DTHFM)を用いた(ID/Mg=0.102)ことを除いて、上記の一般的手順を用いてIC1を調製した。
【0201】
3.9g(収率84.0%、Mg基準)のIC1を単離した。
【0202】
IC2の調製
内部ドナーとして0.52g(3.1mmol)のID2(DTHFE)を用いた(ID/Mg=0.102)ことを除いて、上記の一般的手順を用いてIC2を調製した。
【0203】
4.7g(収率93.4%、Mg基準)のIC2を単離した。
【0204】
IC3の調製
内部ドナーとして0.69g(3.1mmol)のID3(TTHFM-A)を用いた(ID/Mg=0.102)ことを除いて、上記の一般的手順を用いてIC3を調製した。
【0205】
5.2g(収率96.9%、Mg基準)のIC3を単離した。
【0206】
IC4の調製
内部ドナーとして0.46g(2.0mmol)のID4(TTHFM-B)を用いた(ID/Mg=0.068)ことを除いて、上記の一般的手順を用いてIC4を調製した。
【0207】
4.7g(収率96.7%、Mg基準)のIC4を単離した。
【0208】
【0209】
ベンチスケールでの1-ブテンとの共重合
本発明の触媒成分(IC1~IC4)及び比較触媒成分(CC1~CC7、CC8-a~CC8-b及びCC9)を、1-ブテンとの共重合(IE1~IE4、CE1~CE7、CE8-a、CE8-b及びCE9-a~CE9-c)で試験した。共触媒としてトリエチルアルミニウム(TEA)をAl/Tiモル比15で使用した。重合反応は、3Lのベンチスケール反応器において、以下の手順に従って行った。
【0210】
空の3Lベンチスケール反応器に、20℃で70mLの1-ブテンを投入し、200rpmで撹拌した。次に、重合媒体として1250mLのプロパンを反応器に添加し、続いて水素ガス(0.40bar)を添加した。この反応器を85℃に加熱し、エチレン(3.7bar)をバッチ式に添加した。反応器の圧力を0.2barの過圧に保ち、撹拌速度を550rpmに上げた。触媒成分及び共触媒を一緒に(触媒成分とTEAとの間に数秒の事前接触)、追加の100mLのプロパンとともに反応器に加えた。エチレンの連続供給により、反応器の全圧力を37.8barに維持した。重合は60分後にモノマー及びH2を排出することにより停止した。得られたポリマーを換気フード内で一晩放置して乾燥させた後、計量した。
【0211】
加えて、比較触媒成分CC9を、55mLの1-ブテンと0.40barの水素ガス(CE9-b)、及び40mLの1-ブテンと0.75barの水素ガス(CE9-c)を用いた共重合でも試験した。
【0212】
重合結果
重合反応の結果を表3に示す。触媒の活性は、触媒成分の担持量及び1時間に生成したポリマー量に基づいて算出した。
【0213】
【0214】
表3の結果から分かるように、そして
図1~
図3に示すように、すべての発明例IE1~IE4は、比較例CE1~CE9(a~c)よりも狭いMWD及び高いM
Wを示す。
【0215】
さらに、すべての発明例IE1~IE4は、所定のコモノマー含有量で比較例CE1~CE9(a~c)よりも低い融解温度を示す。
【0216】
すべての発明例IE1~IE4は、比較例CE1~CE8と同様の活性レベルを有しているが、MW能力が格段に高いものとなっている。
【0217】
さらに、すべての発明例IE1~IE4では、比較例の内部ドナーCD8に採用しなければならないものと同等又はそれ以下のID/Mg担持比で、望ましい特性のバランスが達成される。
【0218】
今回の知見を要約すると、すべての発明例IE1~IE4は、(試験した触媒成分/内部ドナーのグループの中で)MWが最も高く、合わせてMWDが非常に狭く、所定のコモノマー含有量での融解温度が最も低い。このように、本発明の内部ドナーは、触媒の生産性を許容できる高いレベルに維持しながら、製造されるポリマーの特性を調節することを可能にする。