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特許7373659自動診断分析システムにおいて検体の特性評価中に患者情報を保護するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】自動診断分析システムにおいて検体の特性評価中に患者情報を保護するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20231026BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231026BHJP
   G06T 7/10 20170101ALI20231026BHJP
【FI】
G01N35/00 A
G06T7/00 350C
G06T7/10
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022525245
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 US2020056917
(87)【国際公開番号】W WO2021086719
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】62/929,062
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカテッシュ・ナラシムハムルシー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴィック・シンフ
(72)【発明者】
【氏名】イャオ-ジェン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・エス・ポラック
(72)【発明者】
【氏名】アンカー・カプール
(72)【発明者】
【氏名】ラヤル・ラジュ・プラサド・ナラム・ヴェンカット
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/188023(WO,A1)
【文献】特開2009-093538(JP,A)
【文献】国際公開第2019/002521(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/102043(WO,A1)
【文献】特開2016-048530(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142764(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/225448(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/097327(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G06T 7/00
G06T 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動診断分析システムにおいて検体を特性評価する方法であって:
画像取込みデバイスを用いて検体容器の画像を取り込む工程と;
匿名化ネットワークを用いて、画像内の検体容器に貼付されたラベルを識別する工程と;
匿名化ネットワークを用いて画像を編集する工程であって、ラベルをマスクし、それによりラベルに存在する情報が画像から削除されて、編集された画像を生成するようにする、工程と
を含む、前記方法。
【請求項2】
匿名化ネットワークは、品質チェックモジュールの一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
品質チェックモジュールのHILNネットワークを用いた検体容器内の検体のセグメンテーションまたはHILN決定のために、編集された画像を出力することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
匿名化ネットワークは、敵対的生成ネットワークを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
匿名化ネットワークは、変分オートエンコーダを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
匿名化ネットワークは、ラベル上のすべてのバーコードおよび印刷されたテキストを消去するために、検体および検体容器の画像内のラベルをインペイントして、編集された画像内にインペイントされたラベルを形成するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
インペイントされたラベルは、編集された画像で白いラベルとして現れる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
セグメンテーション畳み込みニューラルネットワーク(SCNN)は、匿名化ネットワークから1つまたはそれ以上の編集された画像を入力として受信する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
任意の特性評価の前に訓練フェーズで匿名化ネットワークを訓練する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
匿名化ネットワークを用いて画像を編集する工程は、編集された画像内の検体の撮像された流体特性を保存する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
患者情報を含むラベルを含む取り込まれた画像は、患者情報を保護するために恒久的には記憶されない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
情報は患者情報である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
匿名化ネットワークを用いて画像を編集する工程は、ラベルに存在するすべての情報を削除する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
他の視点からの検体容器の画像を取り込むことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
匿名化ネットワークは、ラベル上のすべてのバーコードをマスクするためにラベルをインペイントするように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
匿名化ネットワークは、ラベル上の印刷されたすべてのテキストをマスクするためにラベルをインペイントするように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
自動診断分析システムにおいて検体容器を特性評価する方法であって:
検体容器の画像を取り込む工程と;
検体容器に貼付されたラベルを識別する工程と;
匿名化ネットワークを用いて画像を編集する工程であって、ラベルをマスクし、それによりラベルに存在する一部またはすべての情報が画像から削除されて、編集された画像を形成するようにする、工程と;
編集された画像を記憶する工程と
を含む、前記方法。
【請求項18】
自動診断分析システムの品質チェックモジュールであって:
検体容器の複数の視点から複数の画像を取り込むように構成された、撮像位置の周囲に配置された複数の画像取込みデバイスと;
複数の画像取込みデバイスに結合されたコンピュータとを含み、該コンピュータは、プログラミング命令によって:
少なくとも検体容器と検体容器に貼付されたラベルとを示す、複数の画像取込みデバイスの1つによって撮影された取り込まれた画像を、コンピュータ上で実行される匿名化ネットワークに入力し、
匿名化ネットワークを介して、取り込まれた画像内で検体容器に貼付されたラベルを識別し、
匿名化ネットワークを介して編集された画像を生成するために、取り込まれた画像を編集し、識別されたラベルをマスクし、それによりラベルに存在する情報が取り込まれた画像から削除されるようにする
ように構成され動作可能である、前記品質チェックモジュール。
【請求項19】
コンピュータは、プログラミング命令によって:
コンピュータ上で実行されるHILNネットワークを介して検体容器内の検体のセグメンテーションまたは干渉物質決定を行うために、編集された画像を出力する
ようにさらに構成され動作可能である、請求項18に記載の品質チェックモジュール。
【請求項20】
コンピュータは、プログラミング命令によって、ラベルの情報が取り込まれた画像から削除された状態で、編集された画像を表示するようにさらに構成され動作可能である、請求項19に記載の品質チェックモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月31日に出願された「METHODS AND APPARATUS FOR PROTECTING PATIENT INFORMATION DURING CHARACTERIZATION OF A SPECIMEN IN AN AUTOMATED DIAGNOSTIC ANALYSIS SYSTEM」という名称の米国仮特許出願第62/929,062号の優先権および利益を主張し、その開示全体が、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、自動診断分析システムにおいて検体を特性評価するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
自動診断分析システムは、例えば、尿、血清、血漿、間質液、脳脊髄液などの検体を分析して、検体中の分析物または他の成分を同定することができる。そのような検体は通常、自動トラックを通して自動診断分析システム内の様々な前処理、事前スクリーニング(デジタル撮像を含む)、および分析器ステーションに輸送することができる検体容器(例えば検体収集管)に含まれている。
【0004】
分析の一部として、検体は、1つまたはそれ以上の試薬および場合によっては他の物質を添加して処理され、1つまたはそれ以上の分析器ステーションで分析される。反応後、分析測定は、問合せ放射線ビームの使用や蛍光または発光放出の読取りなどによる測光もしくは蛍光読取りによって、処理される検体に対して実施される。分析測定は、よく知られた技法を使用して、検体中の分析物または他の成分の量の決定を可能にする。
【0005】
いくつかの場合には、患者の状態または試料前処理に起因することがある検体中の干渉物質(例えば、溶血、黄疸、および/または脂肪血症)の存在が、1つまたはそれ以上の分析器から得られる分析物または成分測定の検査結果に悪影響を及ぼすことがある。例えば、患者の病状とは無関係であり得る検体中の溶血(H)の存在が、患者の病状の異なる解釈を引き起こす可能性がある。同様に、検体中の黄疸(I)および/または脂肪血症(L)の存在も、患者の病状の異なる解釈を引き起こす可能性がある。
【0006】
したがって、検体を特性評価するための事前スクリーニングプロセスが自動診断分析システムにおいて実施される。検体の事前スクリーニング特性評価は、分析予定の検体中のH、I、および/またはLなどの干渉物質の存在および場合により干渉物質の度合いの決定を含むことがある。検体の特性評価は、検体容器および検体の様々な領域を識別し得るセグメンテーション決定を含むこともある。この事前スクリーニングプロセスは、自動診断分析システムの1つまたはそれ以上の撮像ステーション(または「品質チェックステーション」と呼ぶ)で取り込まれた検体容器内の検体の1つまたはそれ以上の画像(デジタル画像など)に基づくことがある。画像は、コンピュータメモリに記憶される。
【0007】
しかし、検体および検体容器と共に、画像は、検体容器に貼付された1つまたはそれ以上のラベルの画像を含むこともある。1つまたはそれ以上のラベルは、実施すべき検査、検体を取得した日時、医療施設情報、追跡およびルーティング情報などの他の情報と共に機密の患者情報(例えば、名前、生年月日、住所、患者番号、および/または他の個人情報)を含むことがある印刷またはバーコード化された情報を含むことがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、自動診断分析システムにおいて検体を特性評価する方法が提供される。この方法は、画像取込みデバイスを用いて検体容器の画像を取り込む工程と、匿名化ネットワークを用いて、画像内の検体容器に貼付されたラベルを識別する工程と、匿名化ネットワークを用いて画像を編集する工程であって、識別されたラベルをマスクし、それによりラベルに存在する情報が画像から削除されて、編集された画像を生成するようにする、工程とを含む。
【0009】
第2の態様によれば、自動診断分析システムにおいて検体容器を特性評価する方法が提供される。この方法は、検体容器の画像を取り込む工程と;自動診断分析システムの匿名化ネットワークを用いて、画像内の検体容器に貼付されたラベルを識別する工程と;匿名化ネットワークを用いて画像を編集する工程であって、ラベルをマスクし、それによりラベルに存在する一部またはすべての情報が画像から削除されるようにする、工程とを含む。
【0010】
別の態様によれば、自動診断分析システムの品質チェックモジュールが提供される。品質チェックモジュールは、検体容器の複数の視点から複数の画像を取り込むように構成された、撮像位置の周囲に配置された複数の画像取込みデバイスと、複数の画像取込みデバイスに結合されたコンピュータとを含む。コンピュータは、プログラミング命令によって、少なくとも検体容器と検体容器に貼付されたラベルとを示す、複数の画像取込みデバイスの1つによって撮影された取り込まれた画像を、コンピュータ上で実行される匿名化ネットワークに入力するように構成され動作可能である。コンピュータはまた、プログラミング命令によって、匿名化ネットワークを介して、取り込まれた画像内で検体容器に貼付されたラベルを識別し、匿名化ネットワークを介して取り込まれた画像を編集し、識別されたラベルをマスクし、それによりラベルに存在する一部またはすべての情報、および特に機密の患者情報が取り込まれた画像から削除されるようにするように構成され動作可能である。編集された画像は、コンピュータ上で実行されるHILNネットワークによる検体容器内の検体のセグメンテーションまたは干渉物質決定(例えば、HILN-溶血、黄疸、脂肪血症、正常)に関する出力でよい。
【0011】
本開示のさらなる他の態様、構成、および利点は、本発明を実施するために企図される最良の形態を含む、いくつかの例示的実施形態および実装形態の以下の説明および図示から容易に明らかになり得る。本開示はまた、他の異なる実施形態も可能であり得て、そのいくつかの詳細は、すべて本開示の範囲から逸脱することなく様々な点で変更することができる。本開示は、特許請求の範囲に含まれるすべての修正形態、均等形態、および代替形態を網羅することを意図されている。
【0012】
以下で説明する図面は、例示目的のものであり、必ずしも原寸に比例して描かれていない。したがって、図面および説明は、本質的に例示とみなされるべきであり、限定とみなされるべきではない。図面は、本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】1つまたはそれ以上の実施形態による、撮像およびラベル匿名化、ならびにセグメンテーションおよび/またはHILN(溶血、黄疸、脂肪血症、正常)決定方法を実施するように構成された1つまたはそれ以上の品質チェックモジュールを含む自動診断分析システムの上面概略図である。
図2】干渉物質を含むことがある血清または血漿部分を有する分離された検体を含み、患者情報および/またはバーコードを含むラベルをさらに含む検体容器の側面図である。
図3図1の自動診断分析システム内で、トラック上で輸送することができるホルダに直立向きで保持された図2の検体容器の側面図である。
図4A】1つまたはそれ以上の実施形態による、複数の視点(例えば、視点1~3)を含み、ラベル匿名化ならびにセグメンテーションおよび/またはHILN決定を可能にするために複数の画像を取り込み、分析するように構成された品質チェックモジュール(上部が取り除かれている)の概略上面図である。
図4B】1つまたはそれ以上の実施形態による図4Aの断面線4B-4Bに沿って取られた図4Aの品質チェックモジュール(エンクロージャの前壁が取り除かれている)の概略側面図である。
図5】1つまたはそれ以上の実施形態による、検体容器内の検体のセグメンテーションデータならびに干渉物質決定および分類指標を出力するように動作可能なHILNネットワーク、およびラベル上の一部またはすべての情報をマスクするために取り込まれた画像を編集するように動作可能な匿名化ネットワーク(AN)をさらに含む機能ブロック図である。
図6】1つまたはそれ以上の実施形態による、匿名化ネットワークから出力された検体容器内の検体の編集された画像を示し、検体容器に貼付されたラベルに存在する情報(例えば患者情報およびバーコード)はマスクおよび削除されている図である。
図7】1つまたはそれ以上の実施形態による、ラベルの匿名化を含む、自動診断分析システムにおいて検体を特性評価する方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
検体容器の記憶された画像に患者情報が含まれることにより、患者プライバシーが潜在的に危険にさらされる可能性がある。したがって、自動診断分析システムにおいて検体容器に貼付された1つまたはそれ以上のラベルに存在し得る患者情報を保護しながら、検体容器内の検体の特性評価を可能にする方法、システム、および装置を提供するという満たされていないニーズがある。
【0015】
検体容器に含まれる検体の事前スクリーニングは、自動診断分析システムの品質チェックモジュールで自動的に実施される。1つまたはそれ以上の実施形態による事前スクリーニングは、(例えば品質チェックモジュールの)撮像ステーションで、検体容器に含まれる検体の1つまたはそれ以上の画像(例えば1つまたはそれ以上のデジタル画像)を取り込むこと、検体の撮像された流体特性に影響を及ぼすことなく、検体容器に貼付された1つまたはそれ以上のラベルに存在し得る患者情報をマスクするために取り込まれた画像を編集すること、および編集された画像をコンピュータメモリまたはデータベースに記憶すること(最初に取り込まれた、ラベル情報を表す画像は記憶されない)を含むことがある。次いで、編集された画像を使用して、事前スクリーニングは、セグメンテーション決定および/またはHILN決定を自動的に実施することができる。セグメンテーション決定は、例えば、血清または血漿部分、沈降血液部分、ゲル分離器(使用される場合)、空気領域、1つまたはそれ以上のラベル領域、検体容器のタイプ(例えば高さおよび幅/直径を示す)、および/または検体容器キャップのタイプおよび/または色など、検体容器および検体の様々な領域を識別することがある。HILN決定は、血液検体の血清または血漿部分での干渉物質の存在およびいくつかの実施形態では干渉物質の度合い、または検体が正常(N)であるかどうかを決定することがある。正常(N)とは、検体が、許容できる程度の低量の干渉物質を含む、または干渉物質を全く含まないことを示す。
【0016】
干渉物質は、溶血(H)、黄疸(I)、または脂肪血症(L)であり得る。溶血は、前処理中に赤血球が破壊された血清または血漿部分の状態として定義され、赤血球の破壊により、赤血球から血清または血漿部分にヘモグロビンが放出され、血清または血漿部分が赤みがかった色合いを呈する。溶血の度合いは、溶血指数(例えば、いくつかの実施形態ではH0~H6、他の実施形態ではより多数または少数)を割り当てることによって定量化される。黄疸は、血清または血漿部分が濃い黄色に変色される血液の状態として定義され、この変色は、胆汁色素(ビリルビン)の蓄積によって引き起こされる。黄疸の度合いは、黄疸指数(例えば、いくつかの実施形態ではI0~I6、他の実施形態ではより多数またはより少数)を割り当てることによって定量化される。脂肪血症は、血中での異常に高濃度の乳化脂肪の存在として定義され、血清または血漿部分が白っぽいまたは乳白色の見た目を有する。脂肪血症の度合いは、脂肪血症指数(例えば、いくつかの実施形態ではL0~L4、および他の実施形態ではより多数またはより少数)を割り当てることによって定量化される。いくつかの実施形態では、事前スクリーニングプロセスは、遠心分離されていない検体の血清または血漿部分に関する非遠心分離(U)クラスの決定を含むことがある。
【0017】
事前スクリーニング特性評価法を実行するように構成された自動診断分析システムの品質チェックモジュールは、匿名化ネットワークおよびHILNネットワークを含むことがあり、これらのネットワークはそれぞれ、品質チェックモジュールのコンピュータで実行可能なプログラミング命令によって実装される。匿名化ネットワークは、敵対的生成ネットワーク(GAN)または変分オートエンコーダ(VAE)でよい。代替として、匿名化ネットワークは、ラベル上の情報の一部またはすべてをマスクするように画像インペイントを行うことができる任意の適切な機械学習アルゴリズムまたは方法でよい。特に、患者情報がインペイントされることがある。適切であり得る例示的な匿名化ネットワークは、“Image Inpainting For Irregular Holes Using Partial Convolutions,” Guilin Liu et al., NVIDIA Corporation, Version 2, last revised December 15, 2018に記載されており、この文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0018】
1つまたはそれ以上の実施形態による匿名化ネットワークは、検体の撮像された流体特性を保存しながら、1つまたはそれ以上のラベル上のバーコードおよび印刷されたテキストをマスク(削除、置換、または消去)するために検体および検体容器の取り込まれた画像内の1つまたはそれ以上のラベルをインペイントするように構成されることがあり、編集された画像は、その後の検体セグメンテーションおよび/またはHILN決定に影響を与えない。編集された画像の1つまたはそれ以上のインペイントされたラベルは、編集された画像では無地の白いラベルとして表されることがあるが、他の色も可能である。いくつかの実施形態では、匿名化ネットワークは、ラベルなしの検体および検体容器の画像を再構成/生成するように構成される。いくつかの実施形態では、匿名化ネットワークは、取り込まれた画像に検体容器が表示されていない場合、および/またはバーコードおよび/またはラベルが欠落している場合にはエラーを報告するように構成される。いくつかの実施形態では、匿名化ネットワークは、例えば機械/カメラのセットアップおよび/または較正のばらつきによって引き起こされる取り込まれた画像でのノイズの一部を除去するように構成される。
【0019】
自動診断分析システムの品質チェックモジュールは、匿名化ネットワークから1つまたはそれ以上の編集された画像を入力として受信するHILNネットワークを含むこともあり、このネットワークは、例えばセグメンテーション畳み込みニューラルネットワーク(SCNN)であり得る。SCNNは、いくつかの実施形態では、例えば、BatchNorm、ReLU活性化、畳み込み(例えば2D)、ドロップアウト、および逆畳み込み(例えば2D)層を含む100を超える操作層を含み、血清または血漿部分およびラベルを含む領域の単純なエッジ、テクスチャ、および部分などの特徴部分を抽出することができる。完全畳み込み層などの最上層は、部分間の相関を提供するために使用することができる。この層の出力はSoftMax層に送られ、SoftMax層は、各ピクセルまたはパッチがHILNを含むかどうかに関して、ピクセルごとに(またはn×nピクセルを含むパッチごとに)出力を生成する。いくつかの実施形態では、HILNの出力のみがSCNNによって提供される。他の実施形態では、SCNNの出力は、20を超えるクラスのHILNを含むことがあり、したがって、存在する干渉物質ごとに、干渉物質のレベル(指標)の推定値も得る。SCNNは、容器タイプおよび容器境界を決定するためにフロントエンド容器セグメンテーションネットワーク(CSN)を含むこともある。より特定的には、CSNは、血清または血漿部分、沈降血液部分、ゲル分離器(使用される場合)、空気領域、1つまたはそれ以上のラベル領域、検体容器のタイプ(例えば高さおよび幅/直径を示す)、および/または検体容器キャップのタイプおよび/または色など、検体容器および検体の様々な領域を分類することがある。検体容器ホルダまたは背景も分類される。代替として、他のタイプのHILNネットワークを使用することもできる。
【0020】
検体がH、I、およびLのうちの1つまたはそれ以上を含むことが判明した場合、オペレータに適切な通知が提供される、および/または検体容器がオフラインにされて、(1)H、I、またはLのうちの1つまたはそれ以上を修正するための改善手段を実施する、(2)検体を再描画する、または(3)他の処理を実施する。したがって、1つまたはそれ以上の分析器による分析の前にHILNに関して事前スクリーニングする機能は、有利には、いずれも患者情報を保護しながら、(a)分析に適切な品質ではない検体の分析に浪費される時間を最小限に抑え、(b)誤った検査結果を回避しまたは最小限に抑え、(c)患者の検査結果の遅延を最小限に抑え、および/または(d)患者の検体の浪費を回避する。不正確な/低信頼性の試料検体は、ローカルデータベースまたはクラウドベースのシステムに記憶される。
【0021】
本発明による特性評価方法、本発明による特性評価方法を実施するように構成された品質チェックモジュール、および1つまたはそれ以上の品質チェックモジュールを含む自動診断分析システムのさらなる詳細を、本明細書で図1~7を参照してさらに述べる。
【0022】
図1は、検体212を含む複数の検体容器102(図2を参照)を自動的に処理することができる自動診断分析システム100を示す。検体容器102は、装填エリア105で1つまたはそれ以上のラック104に提供された後、自動診断分析システム100の周りに配置された1つまたはそれ以上の分析器(例えば、第1の分析器106、第2の分析器108、および/または第3の分析器110)に輸送され、それらの分析器によって分析される。より多数または少数の分析器がシステムにあってもよい。分析器は、任意の数または組合せの臨床化学分析器および/またはアッセイ機器などでよい。検体容器102は、検体212を収容し、収容された検体212の撮像を可能にする採血管、検査管、試料カップ、キュベット、または他の透明もしくは不透明なガラスもしくはプラスチック容器など、任意の適切な透明または半透明の容器であり得る。検体容器102は、サイズが異なることがある。
【0023】
検体212(図2を参照)は、検体容器102内の自動診断分析システム100に提供され、検体容器102はキャップ214を被されることがある。キャップ214は、異なるタイプおよび/または色(例えば、赤、ロイヤルブルー、水色、緑、灰色、黄褐色、黄色、または色の組合せ)でよい。これらは、検体容器102が何の検査に使用されるか、検体容器102に含まれる添加剤のタイプ、容器がゲル分離器を含むかどうかなどの観点で意味を有することがある。他の色を使用することもできる。一実施形態では、キャップタイプは、本明細書で述べる特性評価方法によって決定される。
【0024】
各検体容器102は、バーコード、英字、数字、またはそれらの組合せなどの識別情報218i(すなわち印)を含むことがある1つまたはそれ以上のラベル218を備える。識別情報218iは、例えば、患者情報(例えば、名前、生年月日、住所、および/または他の個人情報)、実施すべき検査、検体を取得した日時、医療施設情報、追跡およびルーティング情報などを含むことがある。他の情報が含まれることもある。識別情報218iは、自動診断分析システム100の周りの様々な位置で機械可読であり得る。機械可読情報は、容易に撮像することができるように、ラベル素材(例えば白色)よりも暗い色(例えば黒)であることがある。識別情報218iは、患者の識別、および検体212に対して実施すべき検査を示すことがあり、または検査室情報システム(LIS)147によってそれらに相関されることがある。そのような識別情報218iはラベル218に提供され、ラベル218は、管215の外面に貼付される、または他の方法で提供される。図2に示されるように、ラベル218は、検体容器102の全周にわたって、または検体容器102の全長に沿っては延びていないことがあり、示される特定の正面の視点から血清または血漿部分212SPの大部分が見え(点線で示されている部分)、ラベル218によって遮られないようにしてある。
【0025】
検体212は、管215内に含まれる血清または血漿部分212SPおよび沈降血液部分212SBを含むことがある。血清および血漿部分212SPの上に空気216が提供され、それらの境界線は、液体-空気界面(LA)として定義される。血清または血漿部分212SPと沈降血液部分212SBとの境界線は、血清-血液界面(SB)として定義される。空気216とキャップ214との界面は、管-キャップインターフェース(TC)として定義される。管の高さ(HT)は、管215の最下部からキャップ214の底部までの高さとして定義され、管のサイズを決定するために使用することができる。血清または血漿部分212SPの高さはHSPであり、血清または血漿部分212SPの上部から沈降血液部分212SBの上部までの高さとして定義される。沈降血液部分212SBの高さはHSBであり、沈降血液部分212SBの底部からSBでの沈降血液部分212SBの上部までの高さとして定義される。HTOTは、検体212の全高であり、HSPとHSBの和に等しい。
【0026】
より詳細には、自動診断分析システム100は、トラック121が取り付けられるベース120(図1)(例えば、フレーム、床、または他の構造)を含むことがある。トラック121は、レール付きトラック(例えばモノレールまたはマルチレール)、コンベアベルトの集合体、コンベアチェーン、可動プラットフォーム、または任意の他の適切なタイプの運搬機構でよい。トラック121は、円形または任意の他の適切な形状でよく、いくつかの実施形態では、閉じたトラック(例えばエンドレストラック)でよい。トラック121は、動作中、個々の検体容器102を、キャリア122内でトラック121の周りに離間された様々な位置に輸送することができる。
【0027】
キャリア122は、トラック121上で単一の検体容器102を搬送するように構成された受動的な非電動パックでよく、または場合により、トラック121の周りを移動し、事前にプログラムされた位置で停止するようにプログラムされたリニアモータなどの搭載型駆動モータを含む自動キャリアでよい。他の構成のキャリア122を使用することもできる。キャリア122はそれぞれ、所定の直立姿勢および向き(図面に示す)で検体容器102を保持するように構成されたホルダ122H(図3を参照)を含むことがある。ホルダ122Hは、検体容器102をキャリア122に固定する複数のフィンガまたは板ばねを含むことがあるが、検体容器102の異なるサイズに対応するために可動または可撓性のものもある。いくつかの実施形態では、キャリア122は、1つまたはそれ以上のラック104から降ろされた後、装填エリア105から出る。装填エリア105は、事前スクリーニングおよび/または分析が完了した後、キャリア122から装填エリア105への検体容器102の再装填も可能にするという二重の機能を果たすことがある。
【0028】
ロボット124は、装填エリア105に設けられ、1つまたはそれ以上のラック104から検体容器102を把持し、検体容器102をキャリア122に、例えばトラック121の入力レーンに装填するように構成される。ロボット124は、検体容器102をキャリア122から1つまたはそれ以上のラック104に再装填するようにも構成される。ロボット124は、1つまたはそれ以上(例えば少なくとも2つ)のロボットアーム、またはX(横方向)およびZ(垂直方向-ページ外)、YおよびZ、X、Y、およびZ、もしくはr(径方向)およびθ(回転)運動を可能にする構成要素を含むことがある。ロボット124は、ガントリロボット、多関節ロボット、R-θロボット、または他の適切なロボットでよく、ロボット124は、検体容器102を取り上げて配置するように向き設定、サイズ設定、および構成されたロボットグリッパフィンガを備えることがある。
【0029】
トラック121に装填されたとき、キャリア122によって搬送される検体容器102は、第1の前処理ステーション125に進むことができる。例えば、第1の前処理ステーション125は、検体212の分画を実施するように構成された自動遠心分離機でよい。検体容器102を搬送するキャリア122は、流入レーンまたは他の適切なロボットによって第1の前処理ステーション125に偏向される。遠心分離された後、検体容器102は、流出レーンに出る、またはロボットによって取り出されて、トラック121に沿って引き続き進むことができる。図示される実施形態では、次に、キャリア122内の検体容器102は、本明細書でさらに述べるように、事前スクリーニングを実施するための品質チェックモジュール130に輸送される。
【0030】
品質チェックモジュール130は、検体212に含まれるH、I、および/またはLの存在および場合によりその程度もしくは度合い、または検体が正常(N)かどうかを自動的に決定するための、本明細書で述べる特性評価方法を事前スクリーニングして実施するように構成される。実質的に少量のH、I、および/またはLを含むことが判明し、正常(N)とみなされた場合、検体212は、トラック121を引き続き進むことができ、次いで、分析器106、108、および/または110の検査注文およびそれぞれの検査メニューに基づいて1つまたはそれ以上の分析器(例えば、第1、第2、および/または第3の分析器106、108、および/または110)によって分析される。その後に、検体容器102は装填エリア105に戻されて1つまたはそれ以上のラック104に再装填される。
【0031】
いくつかの実施形態では、HILNの検出に加えて、検体容器102および検体212のセグメンテーションを行うことができる。セグメンテーションデータから、検体212の定量化(すなわち、HSP、HSB、HTOTの決定、およびSBまたはSG、およびLAの位置の決定)のために後処理を使用することができる。いくつかの実施形態では、検体容器102の物理的属性(例えばサイズ、すなわち高さおよび幅/直径)の特性評価を品質チェックモジュール130で行うことができる。そのような特性評価は、HTおよびW、ならびに場合によりTC、および/またはWiの決定を含むことがある。この特性評価から、検体容器102のサイズが抽出される。さらに、いくつかの実施形態では、品質チェックモジュール130はキャップタイプを決定することもあり、キャップタイプの決定は、安全チェックとして使用され、注文された検査に誤った管タイプが使用されていないかどうかを確認することができる。キャップ214の色および/または形状は、特定の注文された検査に使用される検体容器102に含まれる化学添加剤(抗凝固剤など)のタイプを示すことがある。
【0032】
いくつかの実施形態では、遠隔ステーション132は、トラック121に直接リンクされていない自動診断分析システム100に提供される。例えば、独立したロボット133(点線で示されている)が、検体212を含む検体容器102を遠隔ステーション132に搬送し、検査/前処理後にそれらを戻すことができる。場合により、検体容器102を手動で取り外して戻すことができる。遠隔ステーション132は、溶血レベルなどの特定の成分を検査するために使用することができ、または1つもしくはそれ以上の添加物および/または追加の処理によって脂肪血症レベルを下げるなどのさらなる処理に使用することができ、または例えば血餅、気泡、もしくは泡を除去するために使用することができる。本明細書で述べるHILN検出方法を使用する他の事前スクリーニングを遠隔ステーション132で達成することもできる。
【0033】
追加のステーションが、トラック121上のまたはトラック121に沿った1つまたはそれ以上の位置に提供される。追加のステーションは、キャップ除去ステーション、アリコートステーション、1つまたはそれ以上の追加の品質チェックモジュール130などを含むことがある。
【0034】
自動診断分析システム100は、トラック121の周りの1つまたはそれ以上の位置に複数のセンサ116を含むことがある。センサ116は、識別情報218i、または各キャリア122で提供される同様の情報(図示せず)を読み取ることによってトラック121での検体容器102の位置を検出するために使用される。近接センサなど、位置を追跡するための任意の適切な手段を使用することができる。センサ116はすべて、コンピュータ143とインターフェースすることができ、したがって各検体容器102の位置を常に把握しておくことができる。
【0035】
前処理ステーションおよび分析器106、108、および110は、トラック121からキャリア122を取り出すように構成されたロボット機構および/または流入レーン、ならびにキャリア122をトラック121に再進入させるように構成されたロボット機構および/または流出レーンを備えることがある。
【0036】
自動診断分析システム100はコンピュータ143によって制御され、コンピュータ143は、マイクロプロセッサベースの中央処理装置CPUでよく、適切なメモリと、様々なシステム構成要素を操作するための適切な調整電子機器およびドライバとを有する。コンピュータ143は、自動診断分析システム100のベース120の一部として、またはそれとは別に収容される。コンピュータ143は、装填エリア105に出入りするキャリア122の動き、トラック121の周りでの運動、第1の前処理ステーション125に出入りする運動および第1の前処理ステーション125の動作(例えば遠心分離)、品質チェックモジュール130に出入りする運動および品質チェックモジュール130の動作、ならびに各分析器106、108、110に出入りする運動を制御するように動作することができる。様々なタイプの試験(例えばアッセイまたは臨床化学)を実施するための各分析器106、108、110の動作は、コンピュータ143と通信することができる分析器のワークステーションおよび/またはコンピュータによってローカルで提供される。
【0037】
品質チェックモジュール130を除くすべてに関して、コンピュータ143は、Siemens Healthcare Diagnostics(米国ニューヨーク州タリータウン)が販売するDimension(商標)臨床化学分析器で使用されるようなソフトウェア、ファームウェア、および/またはハードウェアコマンドまたは回路に従って自動診断分析システム100を制御することができ、そのような制御は、コンピュータベースの電気機械制御プログラミングの当業者には一般的なものであり、本明細書ではさらに述べない。自動診断分析システム100を制御するための他の適切なシステムを使用することもできる。品質チェックモジュール130の制御もコンピュータ143によって提供されるが、本明細書で詳細に述べる本発明による特性評価方法に従う。
【0038】
画像処理、および本明細書で述べる特性評価方法を実施するために使用するコンピュータ143は、CPUまたはGPU、十分な処理能力およびRAM、ならびに適切なストレージを含むことがある。一例では、コンピュータ143は、1つまたはそれ以上のGPU、8GB以上のRam、およびテラバイト以上のストレージを備えたマルチプロセッサ搭載PCでよい。別の例では、コンピュータ143は、GPU搭載PC、または場合により並列化モードで動作されるCPU搭載PCでよい。MKL、8GB以上のRAM、および適切なストレージを使用することもできる。
【0039】
本開示の実施形態は、様々な制御およびステータス表示画面にユーザが非常に簡単にかつ迅速にアクセスすることを可能にするコンピュータインターフェースモジュール(CIM)145を使用して実装される。これらの制御およびステータス表示画面は、検体212の準備、および分析に使用される複数の相互関連する自動デバイスのいくつかまたはすべての側面の制御を表示して可能にすることができる。CIM145は、複数の相互関連する自動デバイスの動作ステータスに関する情報、ならびに任意の検体212の位置、ならびに検体212に対して実施されるまたは実施されている検査のステータスを表す情報を提供するために採用される。したがって、CIM145は、オペレータと自動診断分析システム100との対話を容易にするように適合される。CIM145は、アイコン、スクロールバー、ボックス、およびボタンを含むメニューを表示するように動作可能な表示画面を含むことがあり、この表示画面を介して、オペレータは自動診断分析システム100とインターフェースすることができる。メニューは、自動診断分析システム100の機能的側面を表示および/または操作するようにプログラムされたいくつかの機能的要素を含むことがある。
【0040】
図4Aおよび4Bは、本明細書に図示して述べるような特性評価方法を実施するように構成された品質チェックモジュール130の実施形態を示す。品質チェックモジュール130は、1つまたはそれ以上の分析器106、108、110のうちの1つまたはそれ以上による分析の前に、検体212(例えば、その血清または血漿部分212SP)中の干渉物質(例えば、H、I、および/またはL)の存在および度合いに関して事前スクリーニングするためのプログラミング命令で構成されることがある。このようにして事前スクリーニングを行うと、貴重な分析器リソースを浪費することなく、または場合によっては干渉物質の存在が検査結果の信憑性に影響を及ぼすことなく、検体212の追加の処理、追加の定量化もしくは特性評価、および/または廃棄および/または再描画が可能になる。
【0041】
本明細書で述べる干渉物質検出方法に加えて、他の検出方法が、検体容器102に含まれる検体212に対して品質チェックモジュール130で行われることもある。例えば、セグメンテーションデータを提供するための方法を品質チェックモジュール130で実施することができる。セグメンテーションデータを処理後の工程で使用して、検体212を定量化し、例えばLAおよびSB、ならびに/またはHSP、HSB、および/もしくはHTOTの決定など、検体212の特定の物理的寸法特性を決定することができる。定量化は、例えば、血清または血漿部分(VSP)の体積および/または沈降血液部分(VSB)の体積を推定することを含むこともある。さらに、品質チェックモジュール130を使用して、検体容器102の幾何形状を定量化することができ、すなわち、検体容器102のTC、HT、および/またはWもしくはWiの位置など、検体容器102の特定の物理的寸法特性を定量化することができる。他の定量化可能な幾何学的構成を決定することもできる。
【0042】
品質チェックモジュール130は、外部照光の影響を最小限に抑えるために、トラック121を少なくとも部分的に取り囲むまたは覆うことができるハウジング446を含むことがある。検体容器102は、画像撮影シーケンス中、ハウジング446の内側に位置される。ハウジング446は、キャリア122がハウジング446に出入りすることを可能にするために、1つまたはそれ以上のドア446Dを含むことがある。いくつかの実施形態では、天井が開口部446Oを含むことがあり、可動ロボットフィンガを含むロボットによって検体容器102を上からキャリア122に装填することまたはキャリア122から取り除かれることを可能にする。
【0043】
図4Aおよび4Bに示されるように、品質チェックモジュール130は、複数の視点(例えば、1、2、および3とラベル付けされた視点)から撮像位置432での検体容器102および検体212の横方向画像を取り込むように構成された複数の画像取込みデバイス440A~440Cを含むことがある。3つの画像取込みデバイス440A~440Cが示され、好ましいが、場合により2つ、4つ、または5つ以上を使用することもできる。視点1~3は、図示されるように、互いに約120°など、それらが互いにほぼ等間隔になるように配置される。画像はラウンドロビン方式で撮影され、例えば、視点1からの1つまたはそれ以上の画像を撮影し、続いて視点2および3から連続して撮影される。画像撮影の他のシーケンスを使用することもできる。光源444A~444Cは、検体容器102(図面に示す)を背面照射することができる。視点1~3から撮影された1つまたはそれ以上の画像が、1つまたはそれ以上のラベル218によって部分的または完全に遮られる(すなわち血清または血漿部分212SPがよく見えない)ことがあるので、複数の視点があることは有利である。
【0044】
図示されるように、画像取込みデバイス440A、440B、440Cは、トラック112の周りに配置される。複数の画像取込みデバイス440A、440B、および440Cの他の構成を使用することもできる。このようにして、検体容器102内の検体212の画像は、検体容器102が撮像位置432でキャリア122内にある間に撮影される。画像取込みデバイス440A、440B、および440Cによって取得された複数の画像の視野は、周方向の広がりにおいてわずかに重なることがある。
【0045】
画像取込みデバイス440A~440Cは、ピクセル化された画像を取り込むことができる従来のデジタルカメラ、電荷結合素子(CCD)、光検出器のアレイ、1つまたはそれ以上のCMOSセンサなど、明確に定義されたデジタル画像を取り込むための任意の適切なデバイスでよい。取り込まれた画像のサイズは、例えば約2560×694ピクセルであり得る。別の実施形態では、画像取込みデバイス440A、440B、440Cは、例えば約1280×387ピクセルの画像サイズを取り込むことがある。他の画像サイズおよびピクセル密度を使用することもできる。
【0046】
各画像は、コンピュータ143から通信ライン443A、443B、および443Cで提供されるトリガ信号の受信に応答して、品質チェックモジュール130でトリガおよび取り込まれる。1つまたはそれ以上の実施形態によれば、取り込まれた画像はそれぞれ、コンピュータ143によって処理される。1つの特に効果的な方法では、高ダイナミックレンジ(HDR)処理を使用して、取り込まれた画像から画像データを取り込み、処理することができる。
【0047】
図5は、本明細書で述べる特性評価方法およびラベル匿名化を実施するように構成された機能的HILNネットワークアーキテクチャ500を示す。機能的アーキテクチャ500は、品質チェックモジュール130で実装され、適切なプログラミング命令によってコンピュータ143によって実行される。上で論じたように、機能ブロック502で表されるように、検体容器102は、品質チェックモジュール130の撮像位置432(図4Aおよび4B)に提供される。機能ブロック504で表されるように、検体容器102の(例えば視点1、2、および3からの)多視点画像は、複数の画像取込みデバイス440A~440Cによって取り込まれる。多視点画像のそれぞれに関する画像データは、場合により、機能ブロック506で表されるように、複数の最適に露出されて正規化された画像データセット(以下「画像データセット」)を提供するように最初に処理される。1つまたはそれ以上の実施形態によれば、検体212(および検体容器102)の取り込まれた画像の画像データ(すなわちピクセルデータ)は、匿名化ネットワーク508への入力として提供される。いくつかの実施形態では、複数の視点からの様々なデジタル画像がデジタルで並べて結合されて、1つまたはそれ以上のラベルを含む360度の画像を提供する。
【0048】
品質チェックモジュール130の一部であり得る匿名化ネットワーク508は、検体容器およびその中の検体の取り込まれた画像の画像データセットを受信し、取り込まれた画像において、検体容器に貼付された1つまたはそれ以上のラベルを識別する。検体容器は、ラベルの様々な数、重なりの度合い、および位置決め(垂直方向および円周方向)を含めた様々なラベル構成を有することが知られている。匿名化ネットワーク508は、任意のラベル識別方法によって取り込まれた画像内の1つまたはそれ以上のラベル218を識別するように事前に訓練されていることもある。例えば、匿名化ネットワーク508の訓練フェーズ中に取り込まれた様々な構成のラベル218を有する検体容器102の数百さらには数千の訓練画像でのラベルデータを含むラベル構成データベースが使用される。画像比較技法を使用して、比較を行い、最も近い画像を選択することができる。画像比較は、ピクセルごとの比較でよく、取り込まれた画像でのすべてのピクセル色が、訓練画像での対応するピクセルと比較される。すべてのピクセル色が合致する場合、両方の画像は同一である。画像比較ツールは、ピクセル/色の公差などを調節するためのパラメータを有することができ、公差は、2つの画像間で異なっていることが許されるピクセルの数として設定することができる。したがって、訓練画像と取り込まれた画像とのいくらかの相違が許容され得る。場合により、匿名化ネットワーク508は、ラベル218を識別するために使用される訓練された畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を含むことがある。ラベル218である画像内の領域またはピクセルを定義するための他の適切な方法を使用することもできる。匿名化ネットワーク508の訓練フェーズは、任意の事前スクリーニング(特性評価)の前に、品質チェックモジュール130で実施される。
【0049】
後の特性評価中にラベルが識別されたときには、匿名化ネットワーク508は、取り込まれた画像を編集することができる。編集は、識別されたラベルをインペインティングによってマスクすることができ、ラベルに存在する情報の一部またはすべてが取り込まれた画像から削除される、あるいは取り込まれた画像内で置換される。例えば、識別されたラベル218の背景の色を合致させることによって、ラベルの背景と同じ色(白)でインペインティングを行うことができる。場合により、ラベル218の識別された領域全体をインペイントすることができる。1本または数本の太い線などのパターンで、またはラベル218の背景色以外の別の色で画像内のラベル218を加工するなど、ラベルに存在する情報を削除するためのマスキングの他の技法を使用することもできる。インペインティングを使用して、前の患者情報がマスク(削除)されるように、前に患者情報を含んでいたラベルとして識別されるピクセルの色を変更することができる。さらに、匿名化ネットワーク508は、後の検体セグメンテーションおよび/またはHILN決定がマスキングによって影響を及ぼされないように、編集された画像内の検体の撮像された流体特性を保存する。匿名化ネットワーク508からの編集された画像509は、コンピュータ143のコンピュータメモリまたはデータベースおよび/または他の記憶場所に記憶され、HILNネットワーク535に入力として提供され、HILNネットワーク535がセグメンテーションを実施する、および/またはHILN決定を実施することができる。患者情報を保護するために、患者情報を有するラベルを含む取り込まれた画像(機能ブロック504で表される)および画像データ(場合により存在する機能ブロック506で表される)は、ROMメモリまたはデータベースに恒久的には記憶されず、HILNネットワーク535によってアクセス可能でない。匿名化ネットワーク508は、敵対的生成ネットワーク(General Adversarial Network;GAN)でよく、これは、Generative Adversarial Networkとも呼ばれる。GAN技法は、訓練セットと同じ統計データで学習して、新たなデータを生成する。例えば、ラベルを含む写真で訓練されたGANは、ラベル218のように見える新たな画像を生成することができる。場合により、変分オートエンコーダ(VAE)を使用することができ、または、画像インペインティングまたは画像データの他の適切なマスキングを行うことができる任意の他の適切な機械学習アルゴリズムを使用することができる。
【0050】
図6は、匿名化ネットワーク508から出力された編集された画像609の表示を示す。編集された画像609は、インペイントされた(例えば無地の白の)ラベル618を有する検体容器602を示し、印刷およびバーコード化された一部またはすべての情報が、削除、置換、インペイント、または加工によってマスクされている。図2および3の検体容器102は、例えば、編集された画像609をもたらした匿名化ネットワーク508への入力として提供された取り込まれた画像のソースオブジェクトであり得る。いくつかの実施形態では、編集された画像609は、デジタルでつなぎ合わされた(例えば結合された)複数の視点からの画像を含むことがあり、ラベルの一部を含む複数の視点からラベルが見られたので、強化された画像を提供する。
【0051】
図5に戻ると、セグメンテーション畳み込みニューラルネットワーク(SCNN)であり得るHILNネットワーク535(セグメンテーションおよび/またはHILN決定を提供するために他のタイプのHILNネットワークを採用することもできる)は、例えば検体容器602など、検体容器の編集された画像の詳細な特性評価を提供することができる。この詳細な特性評価は、例えば、背景からの検体容器の分離、ならびに血清または血漿部分の成分の把握を含むことがある。これらのタスクは、ピクセルレベルの分類を実施することができるHILNネットワーク535を用いて完了することができる。編集された入力画像509(すなわちピクセルデータ)が匿名化ネットワーク508から与えられると、HILNネットワーク535は、画像のピクセルデータ値によって示されるようにその局所的な外観に基づいて画像の各ピクセルに分類指標を割り当てるように動作可能である。抽出されたピクセル指標情報をHILNネットワーク535によってさらに処理して、血清または血漿部分212SPに関する最終的なHILN分類指標を決定することができる。いくつかの実施形態では、分類指標は、以下でより詳細に述べるように、非遠心分離クラス、正常クラス、および19のHILクラス/サブクラスを含む21の血清クラスを含むことがある。
【0052】
HILN分類指標を決定する際の問題は、H、I、およびLクラスの各サブクラスの外観の相違が小さいことに起因することがある。すなわち、隣接するサブクラスのピクセルデータ値が非常に類似している。これらの問題を克服するために、HILNネットワーク535は、いくつかの実施形態では100を超える操作層を含むベリーディープセマンティックセグメンテーションネットワーク(DSSN)538を含むことがある。
【0053】
検体容器のタイプ(例えばサイズおよび/または形状)の違いによって引き起こされ得る外観の相違を克服するために、HILNネットワーク535は、DSSN538のフロントエンドに容器セグメンテーションネットワーク(CSN)536を含むこともある。CSN536は、容器タイプおよび境界セグメンテーション情報539を決定して出力するように構成され動作可能であり、容器タイプおよび境界セグメンテーション情報539は、例えば、適宜、血清または血漿部分212SP、沈降血液部分212SB、ゲル分離器(使用される場合)、空気領域216、1つまたはそれ以上のラベル領域218の位置、サイズ、領域、および/または体積、検体容器のタイプ(例えば、高さおよび幅/直径を示す)、および/または検体容器キャップ214のタイプおよび/または色を含むことがある。いくつかの実施形態では、CSN536は、DSSN538と同様のネットワーク構造を有することができるが、より浅い(すなわち層がはるかに少ない)。
【0054】
図5に示されるように、HILNネットワーク535の出力は、いくつかの実施形態では非遠心分離クラス540U、正常クラス540N、溶血クラス540H、黄疸クラス540I、および脂肪血症クラス540Lを含むことがある分類指標540でよい。いくつかの実施形態では、溶血クラス540Hは、サブクラスH0、H1、H2、H3、H4、H5、およびH6を含むことがある。黄疸クラス540Iは、サブクラスI0、I1、I2、I3、I4、I5、およびI6を含むことがある。さらに、脂肪血症クラス540Lは、サブクラスL0、L1、L2、L3、およびL4を含むことがある。溶血クラス540H、黄疸クラス540I、および/または脂肪血症クラス540Lはそれぞれ、他の実施形態では、他の数のより詳細なサブクラスを有することがある。
【0055】
図7は、1つまたはそれ以上の実施形態による特性評価方法700のフローチャートを示す。特性評価方法700は、本明細書で述べるように、品質チェックモジュール130(プログラミング命令を実行するコンピュータ143と共に)によって実施され、プロセスブロック702で、画像取込みデバイスを介して検体容器の画像を取り込むことを含むことがある。例えば、画像は、(図4Aおよび4Bの)画像取込みデバイス440A~440Cのうちの1つまたはそれ以上によって取り込まれ、各画像は、デジタルのピクセル化された画像でよい。取り込まれた画像は、個別に処理することも、1つの取り込まれた画像としてデジタルで結合して処理することもできる。
【0056】
特性評価方法700は、プロセスブロック704で、図5の匿名化ネットワーク508などの品質チェックモジュールの匿名化ネットワークを介して、取り込まれた画像内の検体容器に貼付されたラベルを識別することをさらに含むことがある。
【0057】
プロセスブロック706で、特性評価方法700は、匿名化ネットワーク(例えば、匿名化ネットワーク508)によって取り込まれた画像を編集して、識別されたラベル(例えばラベル218)をマスクすることを含むことがあり、ラベルに存在する一部またはすべての情報が、編集された画像から削除される。例えば、図5および6を参照すると、編集された画像は、編集された画像609であり得て、撮像されたラベル618はマスクされており、検体容器102のラベル218に存在し得る印刷されたおよび任意のバーコード化された情報218i(図2および3を参照)が、編集された画像から削除される。削除は、印刷されたおよび任意のバーコード化された情報218iを含むピクセルのインペインティングまたは他の方法での置換を含むことがある。いくつかの場合には、削除は、加工を含むこともある。
【0058】
プロセスブロック708において、特性評価方法700は、品質チェックモジュールのHILNネットワークを介する検体容器内の検体のセグメンテーションおよび/またはHILN(溶血、黄疸、脂肪血症、正常)決定のために、編集された画像を出力することを含むことがある。例えば、図5に示されるように、匿名化ネットワーク508の出力(例えば、編集された画像509)は、セグメンテーションおよび/またはHILN決定のためにHILN535に提供される。HILN決定は、分類指標540(例えば、540U、540N、540H、540I、または540L、およびいくつかの実施形態では、540H(H0、H1、H2、H3、H4、H5、H6)、540I(I0、I1、I2、I3、I4、I5、I6)、および540L(L0、L1、L2、L3、およびL4)などのサブクラスも含む)でよい。
【0059】
したがって、上記のことに基づいて、自動セグメンテーションおよび/またはHILN決定中に患者情報を保護する改良された特性評価方法700が提供されることが明らかであろう。
【0060】
また明らかなように、上記の特性評価方法は、撮像位置(例えば撮像位置432)の周囲に配置され、1つまたはそれ以上のラベル218を備えて検体212を含む検体容器102の1つまたはそれ以上の視点(例えば図4Aの視点1~3)から1つまたはそれ以上の画像を取り込むように構成された複数の画像取込みデバイス(例えば画像取込みデバイス)440A~440Cを含む品質チェックモジュール(例えば品質チェックモジュール130)を使用して実施される。品質チェックモジュールはまた、複数の画像取込みデバイスに結合され、1つまたはそれ以上の画像のピクセルデータを処理するように構成されたコンピュータ(例えばコンピュータ143)を含む。コンピュータ(例えばコンピュータ143)はまた、検体の1つまたはそれ以上の取り込まれた画像に示される検体容器に貼付されたラベルに存在する情報をマスクし、ラベル情報がマスクされた検体の1つまたはそれ以上の編集された画像に基づいてHILN決定を提供するように構成され動作可能であり得る。いくつかの実施形態では、ラベル218に存在する情報を含む画像は、恒久的には記憶されず、ブロック704および706の識別および編集プロセスの一部としてのみ一時的にのみ記憶される。
【0061】
本開示は様々な修正形態および代替形態を取り得るが、特定の方法および装置の実施形態を例として図面に示し、本明細書で詳細に述べる。しかし、本明細書に開示される特定の方法および装置は、本開示を限定することを意図するものではなく、逆に、特許請求の範囲内にあるすべての修正形態、均等形態、および代替形態を網羅することを意図するものであることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7