(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】空気清浄機
(51)【国際特許分類】
B01D 47/02 20060101AFI20231026BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20231026BHJP
F24F 8/133 20210101ALI20231026BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20231026BHJP
【FI】
B01D47/02 A
A61L9/16 Z
F24F8/133
F24F8/80 110
F24F8/80 260
(21)【出願番号】P 2022541469
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2021027858
(87)【国際公開番号】W WO2022030323
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2020131277
(32)【優先日】2020-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506413694
【氏名又は名称】株式会社クロンティップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 和実
(72)【発明者】
【氏名】白石 洋子
(72)【発明者】
【氏名】服部 岳史
【審査官】本間 友孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-225017(JP,A)
【文献】特開2000-334241(JP,A)
【文献】特開2007-283202(JP,A)
【文献】特開2006-051465(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0032985(KR,A)
【文献】特開平11-244768(JP,A)
【文献】実開平05-002722(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 47/00ー47/18
A61L 9/00ー 9/22
F24F 8/133
F24F 8/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する貯留槽と、
送風手段と、を備え、
前記貯留槽は、風受領域と
該風受領域と直結する塵埃滞留領域が
設けられたものであり、
前記風受領域から前記塵埃滞留領域までは、前記液体の液面が繋がっており、
前記塵埃滞留領域は、前記風受領域側にのみ開口が形成された壁によって仕切られた領域であり、
前記送風手段
による空気
の流れが前記風受領域から前記開口を経由して前記塵埃滞留領域の最奥部に至ることにより、前記風受領域から前記塵埃滞留領域
の最奥部へ前記液面に流れを生じさせるものであり
、
前記開口が、前記貯留槽の下方に行くほど狭くなっている、
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項2】
液体を貯留する貯留槽と、
送風手段と、を備え、
前記貯留槽は、風受領域と
該風受領域と直結する塵埃滞留領域が
設けられたものであり、
前記風受領域から前記塵埃滞留領域までは、前記液体の液面が繋がっており、
前記塵埃滞留領域は、前記風受領域側にのみ開口が形成された壁によって仕切られた領域であり、
前記送風手段
による空気
の流れが前記風受領域から前記開口を経由して前記塵埃滞留領域の最奥部に至ることにより、前記風受領域から前記塵埃滞留領域
の最奥部へ前記液面に流れを生じさせるものであり
、
前記開口を形成する
縁の少なくとも一方が、前記液体の流れの上流側に向かって鋭角になっている、
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項3】
液体を貯留する貯留槽と、
送風手段と、を備え、
前記貯留槽は、風受領域と
該風受領域と直結する塵埃滞留領域が
設けられたものであり、
前記風受領域から前記塵埃滞留領域までは、前記液体の液面が繋がっており、
前記塵埃滞留領域は、前記風受領域側にのみ開口が形成された壁によって仕切られた領域であり、
前記送風手段
による空気
の流れが前記風受領域から前記開口を経由して前記塵埃滞留領域の最奥部に至ることにより、前記風受領域から前記塵埃滞留領域
の最奥部へ前記液面に流れを生じさせるものであり
、
前記塵埃滞留領域として、第一の塵埃滞留領域
と第二の塵埃滞留領域があ
り、
前記液面において、前記第一の塵埃滞留領域の開口は、前記第二の塵埃滞留領域の開口よりも広い、
ことを特徴とする空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵埃や細菌を除去する空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、塵埃や細菌を除去する空気清浄機が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の空気清浄機では、空気を液体と混合攪拌することで空気中の塵埃等を除去している。しかし、この装置では空気清浄に用いる液体が徐々に汚染されるため、十分な効果が得られなくなる場合がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、効果が低下しにくい空気清浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明の空気清浄機は、
液体を貯留する貯留槽と、
送風手段と、を備え、
前記貯留槽は、風受領域と塵埃滞留領域が形成されたものであり、
前記送風手段は、前記風受領域に空気を送るものであり、
前記塵埃滞留領域は、前記液体の流れの上流側に向かって開口が形成された壁によって仕切られた領域である、
ことを特徴とする。
【0007】
この空気清浄機によれば、風受領域において空気中の塵埃等を液体に含ませて空気を清浄化することができる。この際、液体中の塵埃等が滞留しやすい塵埃滞留領域が設けられていることで、風受領域に戻る液体が汚れにくくなり、清浄化の効果を低下しにくくすることができる。
【0008】
また、上記記載の空気清浄機であって、
前記塵埃滞留領域が、前記開口から液体が進入するにつれて幅が広くなる箇所があるように構成された領域であってもよい。
【0009】
この空気清浄機によれば、塵埃滞留領域に進入した液体が広がることで液体の流れが緩やかになるため、塵埃等を塵埃滞留領域に滞留させやすくすることができる
また、上記記載の空気清浄機であって、
前記開口が、前記貯留槽の下方に行くほど狭くなっていてもよい。
【0010】
この空気清浄機によれば、貯留槽の液量が少なくなっても塵埃滞留領域による塵埃等の回収効果が期待できる。
【0011】
また、上記記載の空気清浄機であって、
前記開口を形成する部分が、前記液体の流れの上流側に向かって鋭角になっていてもよい。
【0012】
この空気清浄機によれば、塵埃滞留領域への液体の進入が円滑になるため、塵埃滞留領域による塵埃等の回収効果を高めることができる。
【0013】
また、上記記載の空気清浄機であって、
前記塵埃滞留領域として、第一の塵埃滞留領域と、該第一の塵埃滞留領域の開口よりも広い開口を有する第二の塵埃滞留領域があってもよい。
【0014】
この空気清浄機によれば、塵埃滞留領域による塵埃等の回収効果を高めることができる場合がある。
【0015】
また、上記記載の空気清浄機であって、
前記送風手段から送られた空気が、前記塵埃滞留領域を経由して排出されるように構成されていてもよい。
【0016】
この空気清浄機によれば、塵埃滞留領域に対して液体をより確実に送り込むことができる。
【0017】
また、上記記載の空気清浄機であって、
液体を貯留するサブ貯留槽をさらに備え、
前記サブ貯留槽に貯留された液体に、前記送風手段から送られた空気が接触する経路が設けられたものであってもよい。
【0018】
この空気清浄機によれば、サブ貯留槽の液体を用いて空気をより清浄化したり殺菌したりすることができる。
【0019】
また、上記記載の空気清浄機であって、
前記貯留槽に貯留されている液体の液面を振動させる振動付与手段を備えたものであってもよい。
【0020】
この空気清浄機によれば、液面を振動させて液体と空気の接触面積を拡げることができ、清浄化の効果をより高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、効果が低下しにくい空気清浄機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の空気清浄機の第一実施形態を示す図である。
【
図2】第一実施形態の空気清浄機1の貯留槽2を示す図である。
【
図3】(A)は送風機3からの空気の流れを示す図であり、(B)は貯留槽2の液面に生じる流れを示す図である。
【
図4】貯留槽2の内部における液体の流れを示す図である。
【
図5】貯留槽2に適用可能な構成の一例を示す断面斜視図である。
【
図6】第一実施形態に適用可能な構成の一例を示す図である。
【
図7】第一実施形態に適用可能な構成の一例を示す図である。
【
図9】本発明の空気清浄機の第二実施形態を示す図である。
【
図10】第二実施形態の空気清浄機4の貯留槽5を示す図である。
【
図11】(A)は送風機3からの空気の流れを示す図であり、(B)は貯留槽5の液面に生じる流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて、本発明の空気清浄機について説明する。
【0024】
[第一実施形態]
以下、
図1を用いて、本発明の空気清浄機の実施形態の一例について説明する。
図1(A)は、本発明の空気清浄機の第一実施形態を示す正面図であり、
図1(B)は、第一実施形態を示す平面図である。
【0025】
図1に示すように第一実施形態の空気清浄機1は、液体を貯留する貯留槽2と、この貯留槽2の上部に設けられた送風機3とを有するものである。この送風機3は、4枚の羽根からなる羽根部材30が、外枠31の内部空間に支持された状態で不図示のモータによって回転駆動され、貯留槽2に向けて空気を送るものである。
図2は、貯留槽2を示す平面図(
図1(B)から送風機3を除いた図)である。この
図2に示すように貯留槽2には、液体を貯留する領域として、中央の領域20(以下、風受領域20と称する)と、その風受領域20と連結した2つの領域21(以下、塵埃滞留領域21と称する)が、外枠22によって形成されている。このうち風受領域20は、送風機3からの送風範囲(外枠31の内部空間の経)と同じ大きさの領域であり、
図1(B)に示すように送風機3によって風受領域20の全範囲が覆われた状態となっている。一方、塵埃滞留領域21は、風受領域20の外であって送風機3の送風範囲(外枠31の内部空間の経)の外に位置しており、
図1(B)に示すように送風機3の外枠31によって塵埃滞留領域21の一部が覆われた状態となっている。
【0026】
第一実施形態の空気清浄機1は、送風機3から送られた空気を貯留槽2の液体に接触させることで塵埃等を除去し、清浄化した後で排気するものである。以下、この動作について
図3、
図4を用いて説明する。
図3(A)は、
図1(B)のA-A線の断面において、送風機3から送られる空気の流れを示す図であり、
図3(B)は、送風機3から送られる空気によって貯留槽2の液面に生じる流れを示す図である。なお、
図3(A)の断面図においては、羽根部材30の図示を省略している。また、同図では、送風機3の外枠31および貯留槽2の外枠22がそれぞれ左下がりのハッチングで示されている。また、貯留槽2に貯留されている液体の液面Sが波線で示されている。
図4は、貯留槽2の内部における液体の流れを示す図である。
【0027】
上記説明したように、貯留槽2のうち風受領域20は、送風機3からの送風範囲(外枠31の内部空間の経)に合わせた大きさとなっており、送風機3から送られた空気は風受領域20の液面Sに対して反時計回りに回転しつつ進む。そして風受領域20の液面Sに当てられた空気は、送風機3の外枠31と貯留槽2に貯留された液体の液面Sとの間を通り、塵埃滞留領域21に到達した後排出される。
図3(A)には、この一連の空気の流れが矢印で示されている。
【0028】
上記説明した流れにより、空気中の塵埃を貯留槽2の液体に接触させて取り込ませることができる。また、例えばシックハウス症候群の原因物質として知られるホルムアルデヒドのような汚染物質についても、これを液体中に取り込ませることができる。さらに、ウイルスや細菌についても液体中に取り込ませたり、あるいは液体に衝突させて破壊することができる。以上のようにして、送風機3から送られた空気を清浄化することができる。なお、貯留槽2の液体としては、水、液体シリコン、微酸性電解水、といった液体の他、ホタテの貝殻の焼成パウダーを溶かした除菌水、石鹸・洗剤の界面活性剤等を水に溶かした液体のように、添加物を付加した液体であってもよい。
【0029】
次に、上記説明した空気の流れによって生じる、貯留槽2の液体の流れについて説明する。送風機3からの空気は、風受領域20から反時計回りに回転しつつ塵埃滞留領域21に向かって流れるが、この流れに伴い貯留槽2の液面においても風受領域20から反時計回りに回転しつつ塵埃滞留領域21に向かう液体の流れが生じる。
図3(B)には、液面における液体の流れが矢印で示されている。なお、塵埃滞留領域21は、この液面の流れに沿って液体が進入するように構成された領域であり、液体の流れの上流側に向かって開口が形成された壁(貯留槽2では外枠22)によって仕切られた領域である。
【0030】
さらに、上記説明した流れで貯留槽2の液面における液体の流れが生じることにより、貯留槽2の内部では
図4に示すような経路で液体が循環する。まず、液面において風受領域20から塵埃滞留領域21に追いやられた液体は、最奥部で外枠22にぶつかって下降する。そして、貯留槽2の底部側では、下降した液体によって塵埃滞留領域21から風受領域20に向けた流れが形成される。さらに、風受領域20に戻った液体は液面に上昇し、再び空気の流れによって風受領域20から塵埃滞留領域21へ押し流されることで循環することになる。
【0031】
上記の循環においては、風受領域20から塵埃滞留領域21への液体の流れが液面付近(
図4に示すD1の範囲)で生じるのに対し、塵埃滞留領域21から風受領域20に戻る流れは液面付近を除いた範囲(
図4に示すD2の範囲)で発生し得るが、水深が深くなるほど戻る流れが生じる範囲(
図4に示すD2の範囲)が大きくなり、塵埃滞留領域21から風受領域20に戻る流れの速度が緩やかになる。すなわち、風受領域20から塵埃滞留領域21へは速い流れで液体を追いやり、塵埃滞留領域21から風受領域20へは遅い流れで液体を戻すことができる。
図4には、この流れの速度の違いが矢印の太さの違いで示されている。
【0032】
上記説明したように第一実施形態の空気清浄機1では、空気中の塵埃等を貯留槽2の液体中に取り込ませて空気を清浄化することができる。そして、液体中に取り込まれた塵埃等については風受領域20から塵埃滞留領域21に向けて追いやるとともに、液体の下降に伴って下降、沈殿した塵埃等が塵埃滞留領域21に滞留し、風受領域20に戻りにくくすることで、空気の清浄化に用いる液体(空気と触れる液面付近の液体)が汚染されにくくすることができる。なお、塵埃滞留領域21の設置位置については風受領域20と直接繋がった構成に限られるものではなく、間に設けられた別の領域を経由して間接的に繋がったものであってもよい。いずれにしても風受領域20からの液体が塵埃滞留領域21まで到達する構成であればよい。すなわち、塵埃滞留領域21は液体の流れの上流側に向かって開口が形成された壁によって仕切られた領域であればよい。また、塵埃滞留領域21の数については特に限定されるものではなく、例えば、塵埃滞留領域21を一つだけ設けた構成であってもよい。
【0033】
なお、風受領域20から塵埃滞留領域21に液体が追いやられる際には、空気の流れによって液面に波が生じるが、この波が塵埃滞留領域21内で干渉することでさらに細かい波が生じる。ここで、塵埃等が液体と完全になじまず、空気を内包して液体に付着した状態では、塵埃等が液体中に下降しなかったり、一旦下降しても浮上してしまうことが考えられるが、塵埃滞留領域21において生じる細かい波によって塵埃等が振動して液体になじむため、より確実に塵埃等を塵埃滞留領域21に滞留させておくことができる。さらに、塵埃滞留領域21では、
図4に示す以外の水流の影響を受けにくいため、塵埃滞留領域21に滞留している塵埃等が散らばってしまわないようにすることができる。
【0034】
また、
図3(B)に示すように、塵埃滞留領域21は液体が進入するにつれて幅が広くなる箇所があるように構成されている。この構成では、塵埃滞留領域21に進入した液体が広がることで液体の流れが緩やかになるため、塵埃等を塵埃滞留領域21に滞留させやすくすることができる。
【0035】
また、
図3(B)に示すように、塵埃滞留領域21の開口を形成する部分(符号P1、P2参照)が液体の流れの上流側に向かって鋭角になっている。この構成では、塵埃滞留領域21への液体の進入が円滑になるため、塵埃滞留領域21による塵埃等の回収効果を高めることができる。
【0036】
また、
図2に示すように、貯留槽2には二つの塵埃滞留領域21A、21Bが設けられている(以下、それぞれ第一の塵埃滞留領域21A、第二の塵埃滞留領域21Bと称する)。これらの第一の塵埃滞留領域21Aと第二の塵埃滞留領域21Bを比較すると、第一の塵埃滞留領域21Aの開口よりも、第二の塵埃滞留領域21Bの開口の方が幅が広くなっている。発明者らの実験では、貯留槽2の液量や流速によって塵埃滞留領域21に滞留する塵埃の量が変化することから、塵埃滞留領域21の形状、寸法には、液体の量や流速に応じて適切なものがあると考えられる。しかしながら、貯留槽2の液量は蒸発によって減少するなど状況が常に変化してしまう。第一実施形態の空気清浄機1ではこうした変化に対応できるように、開口の幅が異なる複数の塵埃滞留領域21を設けた構成を採用している。この構成では、一つの塵埃滞留領域21を設けた場合や、開口の幅が同じ複数の塵埃滞留領域21を設けた場合と比較して、塵埃滞留領域21による塵埃等の回収効果を高めることができる場合がある。
【0037】
また、第一実施形態の空気清浄機1については、
図5(貯留槽2の断面斜視図)に示すように塵埃滞留領域21の開口を貯留槽2の下方に行くほど狭くなるように構成してもよい。発明者らの実験では、貯留槽2の液量が少ない場合に開口を狭くしたところ、狭くしなかった場合よりも塵埃等がより集まったことから、この構成を採用することで、貯留槽2の液量が少なくなっても塵埃滞留領域21による塵埃等の回収効果が期待できる。
【0038】
上記説明した第一実施形態の空気清浄機1では、塵埃滞留領域21が貯留槽2の外枠22によって形成されているが、この構成に限らず例えば
図6(A)に示すように外枠22とは別の仕切壁23を用いて形成されていてもよい。この塵埃滞留領域21については、貯留槽2の液面に生じる流れに沿って液体が進入するように、液体の流れの上流側に向かって開口が形成された壁によって仕切られた領域であればよく、この領域に進入した液面の流れとこの壁がぶつかるものであればよい。特に、第一実施形態の空気清浄機1では、風受領域20に当てられた後の空気の流れに沿うように塵埃滞留領域21が形成されており、このようにすることで、液面において液体が進入しやすくすることができる。
【0039】
上記説明した第一実施形態の空気清浄機1では、送風機3が貯留槽2の真上に配置された構成となっているが、この構成に限らず例えばダクトを介して送風する構成であってもよい。また、第一実施形態の送風機3は送り出された空気が渦巻状に回転するものであるが、シロッコファンのような構成のものを用いてもよい。また、羽根の枚数についても限定されるものではない。すなわち、貯留槽2の液面に空気を当てるための送風手段であればよく、その構成が限定されるものではない。なお、第一実施形態の空気清浄機1では、送風機3からの空気が渦巻状に回転するものとして説明しているが、仮に送風機3からの空気が回転せずに直進するような場合には、上記説明した貯留槽2の構成では塵埃滞留領域21への液面の流れがうまく生じないことになる。このような場合には、実際の液体の流れを考慮して、風受領域20および塵埃滞留領域21の形状を
図6(B)に示すような形状としてもよい。
【0040】
なお、塵埃滞留領域21に進入する液面の流れの速度や方向、塵埃滞留領域21を形成する壁と液面の流れがぶつかる角度等によって液面に渦が生じ、液体およびこれに含まれる塵埃等の下降がより促される場合がある。以下、こうした構成の例について
図7を用いて説明する。
図7は、塵埃滞留領域21を形成する仕切壁24およびその変形例を用いた液面の流れを示す図である。なお、この
図7では変形可能な構成をわかりやすく説明するために、
図2の外枠22や
図6(A)の仕切壁23とは異なる形状の仕切壁24を用いて説明する。
【0041】
図7(A)では、塵埃滞留領域21に進入する液面の流れを一部遮蔽するように設けられた壁25によって、塵埃滞留領域21に進入する液面の流れが仕切壁24の一方側に偏り、この仕切壁24に沿って液面の流れが旋回して渦が発生している例が示されている。なお、液面の流れを遮蔽する壁25は液面の流れに直接作用するものであるが、こうした壁を送風機3からの空気の排出経路に設けてもよい。すなわち、送風機3からの空気の流れを塵埃滞留領域21の仕切壁24の一方側に偏らせることで、塵埃滞留領域21に進入する液面の流れを仕切壁24の一方側に偏らせることができる。
【0042】
図7(B)では、仕切壁24の形状を湾曲させた構成とすることで、仕切壁24に沿って液面の流れが旋回して渦が発生している例が示されている。
【0043】
図7(C)では、
図6(A)よりも仕切壁24の向きを液面の流れに対して傾けた例が示されている。この例では液面の流れが塵埃滞留領域21の奥に至る前に仕切壁24に斜めにぶつかり、仕切壁24に沿って液面の流れが旋回して渦が発生していることが示されている。
【0044】
図7(D)では、仕切壁24の開口部に返し26を設けた例が示されている。
図7(A)の例では、液面の流れが開口側に戻ってしまう可能性があるが、この構成では開口側に戻った液面の流れに対しても渦が発生しやすくなり、この塵埃滞留領域21においてより確実に液体を下降させることができる。なお、
図7(D)では、仕切壁24の開口部の片側に返し26を設けているが、
図7(E)に示すように仕切壁24の開口部の両側に返し26を設けた構成としてもよい。
【0045】
また、塵埃滞留領域21に沈殿した塵埃等が散らばらないようにするために、奥側の水深が手前側(開口側)の水深よりも深くなるように構成してもよい。
【0046】
第一実施形態の空気清浄機1では、空気を送風機3から吸気して、貯留槽2の塵埃滞留領域21の液面と送風機3の外枠31との間から排気される構成となっているが、この構成での排気の領域は、吸気の領域と比較して狭くなるように構成されている。このような構成を採用した場合、排気の勢いが維持され、塵埃滞留領域21に進入する液面の流れをより確実なものとすることができる。
【0047】
第一実施形態の空気清浄機1では、液面に対して真上から送風する構成となっているが、送風の向きについては後述する第二実施形態で説明するように、液面に対して真上から送風する構成に限られるものではない。
【0048】
また、上記の構成に加えて、貯留槽2とは別に殺菌効果のある液体(例えば、次亜塩素酸水)を貯留したサブ貯留槽を設け、貯留槽2によって浄化された後の空気をこのサブ貯留槽の液体にさらした後に排気する構成としてもよい。
【0049】
また、上記の構成に加えて、貯留槽2の液面を振動させる構成を加えてもよい。この構成では、液面が振動することによって波や気泡が生じて空気と接触する面積が増えるため、浄化能力を高めることができる。なお、第一実施形態の空気清浄機1では、送風機3の振動が貯留槽2に伝わるため、この送風機3が貯留槽2の液面を振動させる構成となっている。また、送風機3から生じる音も貯留槽2の液面を振動させる構成の一形態である。より詳細には、送風機3と貯留槽2の液面との間の空間において送風機3から生じた音が反響し、この反響音が液面を振動させる。このように第一実施形態では送風手段が液面を振動させる構成と一体化しているが、それぞれの構成が個別に設けられていてもよい。また、貯留槽2の液面を振動させるにあたっては、振動する部材を液面あるいは液体中に設けて直接これを振動させるようにしてもよい。このような構成の他、例えば送風機3からの空気の通り道に乱流を発生させる乱流発生部を設け、この乱流によって生じる振動を用いて液面を振動させる構成としてもよい。すなわち、貯留槽2の液面を振動させる構成であればよく、第一実施形態の構成に限定されるものではない。
【0050】
また、第一実施形態の空気清浄機1では、送風機3から送られた空気を貯留槽2の液体に接触させること空気を清浄化している。ここで、空気と液体の接触面積が増えるようにさらに空気の流路を形成しつつ、この流路を形成する面において貯留槽2から供給される液体を流し、この液体を貯留槽2に戻す構成としてもよい。また、流路を形成する面に液体を流す構成に限らず、この流路内に貯留槽2から供給される液体を散布する構成としてもよい。
図8では、
図3(A)の送風機3と貯留槽2の間に筒部材32を設け、さらに貯留槽2の外枠22の上方に延びた枠部材27を設けたことで、こうした空気の流路を形成した一例が示されている。このような構成では、この流路において液体を流す(あるいは散布する)ことで、この流路を通る空気を清浄化でき、空気清浄機1の性能を高めることができる。
【0051】
[第二実施形態]
以下、
図9を用いて、本発明の空気清浄機の実施形態の一例について説明する。
図9(A)は、本発明の空気清浄機の第二実施形態を示す側面図であり、
図9(B)は、第二実施形態を示す平面図である。
【0052】
図9に示すように第二実施形態の空気清浄機4は、液体を貯留する貯留槽5と、この貯留槽5の上部に設けられた送風ボックス6とを有するものである。送風ボックス6は、第一実施形態の送風機3が斜めに配置され、その底部が開放された構成となっており、外部の空気を内部(貯留槽5の液面)に向けて送るものである。
図10は、貯留槽5を示す平面図(
図9(B)から送風ボックス6を除いた図)である。この
図10に示すように貯留槽5には、液体を貯留する領域として、最も広い領域50(以下、第一領域50と称する)と、その第一領域50と、領域52(以下、第二領域52と称する)が、穴の空いた壁55および外枠53によって形成されている。さらに、第二領域52には、仕切壁54によって領域51(以下、第三領域51と称する)が形成されている。このうち第一領域50は、
図9(B)に示すように送風ボックス6によって第一領域50の全範囲が覆われた状態となっている。一方、第三領域51は、第一領域50の外であって送風ボックス6の送風範囲の外に位置している。
【0053】
第二実施形態の空気清浄機4は、送風ボックス6の送風機3から送られた空気を貯留槽5の液体に接触させることで塵埃等を除去し、清浄化後に排気するものである。以下、この動作について
図11を用いて説明する。
図11(A)は、
図9(B)のB-B線の断面において、送風機3から送られる空気の流れを示す図であり、
図11(B)は、送風機3から送られる空気によって貯留槽5の液面に生じる流れを示す図である。なお、
図11(A)の断面図においては、羽根部材30の図示を省略している。また、同図では、送風ボックス6、送風機3の外枠31、貯留槽5の外枠53、仕切壁54がそれぞれ左下がりのハッチングで示されている。また、貯留槽5に貯留されている液体の液面Sが波線で示されている。
【0054】
上記説明したように、貯留槽5のうち第一領域50は、送風ボックス6で覆われた状態となっており、送風ボックス6の送風機3から送られた空気はこの第一領域50の液面Sに当てられることになる。第二実施形態では送風機3が斜めに配置されており、ここから送られた空気が第一領域の端に当てられる構成となっている。第一領域50の液面Sに当てられた空気は、送風ボックス6の底部と貯留槽5に貯留された液体の液面Sとの間を通り、第三領域51に到達した後排出される。
図11(A)には、この一連の空気の流れが矢印で示されている。上記説明した流れにより、第一実施形態の空気清浄機1と同様の作用で送風機3から送られた空気を清浄化することができる。
【0055】
次に、上記説明した空気の流れによって生じる、貯留槽5の液体の流れについて説明する。送風機3からの空気は、第一領域50から第三領域51に向かって流れるが、この流れに伴い貯留槽5の液面においても第一領域50から第三領域51への流れが生じる。
図11(B)には、この液面の流れが矢印で示されている。なお、送風機3からの空気が直接当たる領域については、気流が複雑であるためにその経路が一つに定まるものではないが、最終的には第一領域50から第三領域51への流れが生じることになる。
【0056】
上記説明した流れで貯留槽5の液面に流れが生じることにより、貯留槽5の内部では
図4で説明した経路と同様の流れで液体が循環する。まず、液面において第一領域50から第三領域51に追いやられた液体は、仕切壁54にぶつかって下降する。そして、下降した液体によって貯留槽5の底部側で第三領域51から第一領域50の端に向けた流れが形成され、第一領域50の端まで戻った液体は液面に上昇し、再び空気の流れによって第一領域50から第三領域51へ押し流されることになる。
【0057】
上記説明したように第二実施形態の空気清浄機4でも、第一実施形態の空気清浄機1と同様の効果を奏する。すなわち、空気中の塵埃等を貯留槽5の液体中に取り込ませて空気を清浄化するとともに、空気と触れる液面付近の液体が汚染されにくくすることができ、さらに、第三領域51の奥に沈殿した塵埃等が散らばってしまわないようにすることができる。その他の第一実施形態で適用可能な構成については、第二実施形態でも適用することができる。この場合、第一実施形態の塵埃滞留領域21についての構成を第二実施形態の第三領域51に対して適用することができ、第一実施形態の風受領域20についての構成を第二実施形態の第一領域50に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,4 空気清浄機
2,5 貯留槽
3 送風機
6 送風ボックス