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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】化粧板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20231026BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231026BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/00 E
B32B29/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023047633
(22)【出願日】2023-03-24
【審査請求日】2023-07-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀田 宗輝
(72)【発明者】
【氏名】田幡 浩輝
(72)【発明者】
【氏名】香山 和輝
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-125777(JP,A)
【文献】特開平08-156214(JP,A)
【文献】特開2004-268489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層と、化粧層と、表面保護層と、を含み、
表面保護層は、樹脂含浸表面紙を含み、
樹脂含浸表面紙は、繊維質基材に、熱硬化性樹脂とブロックイソシアネートを含む樹脂液を含浸し乾燥させてなることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
ブロックイソシアネートのブロック剤が、アミン系化合物であることを特徴とする請求項1記載の化粧板。
【請求項3】
ブロックイソシアネートの解離温度が、100℃~140℃であることを特徴とする請求項1記載の化粧板。
【請求項4】
熱硬化性樹脂が、アミノ-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ラジカル重合型熱硬化性樹脂からなる群から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1記載の化粧板。
【請求項5】
床材として用いることを特徴とする請求項1~4のいずれか記載の化粧板。
【請求項6】
基材層に、請求項1~4のいずれか記載の化粧板を積層してなる床材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂化粧板は豊富な色柄と、耐衝撃性、曲げ強度、耐汚染性等の物理・化学的性能、メンテナンス性など優れた特徴を有することから店舗、医療福祉施設など公共施設の家具・什器から住宅家具まで幅広い用途で使用されている。
【0003】
一般に、熱硬化性樹脂化粧板は、化粧層、コア層などを積層し、熱圧成形することにより製造することができる。この内、化粧層は、繊維質基材に、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂を含む樹脂液を含浸し乾燥させた樹脂含浸化粧紙を用い、コア層は、繊維質基材に、バインダー樹脂(例えば、フェノール樹脂)などを含む樹脂液を含浸し乾燥させたプリプレグを1枚以上用いることにより製造することができる。その他、必要に応じて、裏打層や表面保護層が設けられている。
【0004】
過去に、出願人は、クッション性に優れ、柔軟性に富む化粧積層材を発明した。具体的には、塩化ビニル樹脂製のシートを基材層として、不飽和ポリエステル樹脂とメラミン樹脂を必須成分とする混合樹脂液を含浸した樹脂含浸コア紙、メラミン樹脂を主成分とする樹脂液を含浸した樹脂含浸化粧紙並びに樹脂含浸表面紙を順次積層してなることを特徴とする化粧積層材を得た(特許文献1)。この化粧積層材は、歩行時や重量物の落下時の衝撃を吸収することができ、常温での曲げ性が良好で、表層との密着性が高いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平09-300553号公報
【0006】
一般に、化粧板を製造する際には、熱圧成形用の当板により挟み込み、熱圧成形するが、含浸させた樹脂液の種類によっては、これらが外部へ染み出し、当板が汚染される現象が発生することがあり、化粧板の生産性に影響していた。さらに、化粧板は家具・什器などの表面材として用いられることから、日用品に含まれている化学物質に対する耐汚染性も必要とされていた。
【0007】
また、化粧板の用途には、特許文献1に記載されているように、基材層として、例えば、塩化ビニル樹脂製シートを用いて、表面材として化粧板を積層し、床材とする手法が知られている。ここで、特許文献1に記載された化粧積層材は、耐衝撃性には優れている一方で、寸法安定性にやや欠ける傾向があった。特に、床用として化粧板を用いる場合、その厚みをなるべく薄くすることから、寸法変化の影響がより大きいという傾向がみられていた。そのため、施工現場の温度・湿度により、化粧板が伸縮して、施工時の作業性や、施工後の不良につながる可能性があり、改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、当板の汚染が抑制されており、化学物質に対する耐汚染性が良好で、寸法安定性が向上している化粧板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、コア層と、化粧層と、表面保護層と、を含み、表面保護層は、樹脂含浸表面紙を含み、樹脂含浸表面紙は、繊維質基材に、熱硬化性樹脂とブロックイソシアネートを含む樹脂液を含浸し乾燥させてなることを特徴とする化粧板である。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる化粧板は、当板の汚染が抑制されており、化学物質に対する耐汚染性が良好で、寸法安定性が向上しているという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<化粧板>
本発明にかかる化粧板は、コア層と、化粧層と、表面保護層と、を含む。その製造例としては、最下層をコア層とし、化粧層、表面保護層の順に積層させた後、熱圧成形用の当板により挟み込み、温度:120~160℃、圧力:2~10MPa、時間:30分~3時間程度の条件で熱圧成形する方法が挙げられる。
【0012】
(コア層)
本発明にかかる化粧板は、コア層を含む。コア層としては、繊維質基材に、バインダー樹脂などを含む樹脂液を含浸し乾燥させたプリプレグを1枚以上用いる。
【0013】
繊維質基材としては、有機繊維基材や、無機繊維基材などが挙げられる。
【0014】
有機繊維基材としては、木材パルプ繊維を用いることによりバイオマス度が向上することから好ましく、例えば、針葉樹、広葉樹の晒し、未晒しのクラフトパルプ、サルファイトパルプ、その他の木材パルプ等を単独若しくは混合して用い、抄紙されたものが挙げられる。その他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンや、これらの変成物のほか、エチレン-酢酸ビニル共重合体などの各種の共重合体からなる繊維や、これらの混合物からなる複合繊維などが挙げられる。
【0015】
無機繊維基材としては、例えば、ガラス繊維、ロックウール、炭素繊維などを含む不織布、織布等が挙げられる。
【0016】
無機繊維基材の場合は、有機繊維基材よりも、化粧板の不燃性が向上するため好適に用いることができる。特に、ガラス繊維を含む不織布、織布を用いた場合は、耐熱性、耐炎性、樹脂液の含浸性などがより一層向上する傾向がある。
【0017】
繊維質基材の坪量は、化粧板の強度や含浸効率を考えた際に、30~400g/mであることが好ましく、50~350g/mであることが特に好ましい。これらの範囲内であることにより、コア層の平滑性が向上するため化粧板の外観が良好となり、また樹脂液の含浸性が向上する傾向がある。
【0018】
樹脂液は、アクリル樹脂エマルジョン、アミノ-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂などのバインダー樹脂と、充填材や添加剤と、を含有する。
【0019】
アクリル樹脂系エマルジョンとしては、例えば、ガラス転移温度(Tg)が-20℃以上であるアクリル樹脂系エマルジョンを用いると、密着性や成形性が向上するため好ましい。その中でも、例えば、平均粒子径が20~600nm程度の微粒子であれば、平滑性に優れており、また次に述べる化粧層との密着性や、化粧板の曲げ加工性を向上させることができるため、さらに好ましい。なお、平均粒子径は、レーザー光回折・散乱式粒子径測定装置(製品名:ELS-8000、大塚電子社製)を使用し、レーザーの照射時に検出された散乱光に基づく測定値である。
【0020】
アクリル樹脂エマルジョンは、(メタ)アクリル酸エステルを主モノマーとして、水溶液中で、乳化重合または懸濁重合することにより得ることができる。使用するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどが挙げられる。これらのモノマーに加えて、他の共重合可能なモノマーや多官能モノマーを共重合させても構わない。
【0021】
アミノ-ホルムアルデヒド樹脂としては、アミノ系化合物と、アルデヒド系化合物を反応させた初期縮合物や、その変性物が挙げられる。
【0022】
アミノ系化合物としては、メラミン、尿素、エチレン尿素、尿素誘導体、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどが挙げられ、アルデヒド系化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、グリオキザール、ヘキサメチレンテトラミン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。
【0023】
また、メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコールなどの低級アルコ-ルによってエーテル化したり、パラトルエンスルホンアミドなどの可塑化を促す反応性変性剤によって変性したりすることもできる。
【0024】
これらの中でも、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂が、耐熱性、耐摩耗性に優れることから好適に用いることができる。
【0025】
フェノール-ホルムアルデヒド樹脂としては、フェノール系化合物と、アルデヒド系化合物を、酸性又は塩基性触媒下にて反応させた縮合物や、その変性物が挙げられる。
【0026】
フェノール系化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどが、アルデヒド系化合物としては、上述した化合物などが挙げられる。
【0027】
また、尿素、エチレン尿素、尿素誘導体、パラトルエンスルホンアミド、桐油、燐酸エステル類、グリコール類等の可塑化を促す反応性変性剤で変性したりすることもできる。
【0028】
フェノール-アルデヒド樹脂の合成に用いる酸性触媒としては、例えば、アリールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、硝酸、アジピン酸、コハク酸、リン酸、ホウ酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸などが挙げられる。また、塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの水酸化物や、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類の他、アンモニアなどが挙げられる。
【0029】
さらに、樹脂液には、充填材を含むことができる。充填材としては、主に無機系充填材があり、吸熱性金属水酸化物や、その他の充填剤が挙げられる。
【0030】
吸熱性金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられ、特に、水酸化アルミニウムを用いることが好ましい。これらは、結晶水を含んでおり、これらが高温時に分解し水を放出することから、吸熱反応となるため、燃焼時に温度上昇を抑制する効果があり、本発明にかかる化粧板の不燃性を向上させる傾向がある。
【0031】
吸熱性金属水酸化物の平均粒子径としては、例えば、0.1~500μmの範囲を挙げることができる。この範囲内であることにより、樹脂液中での分散性が向上し、また繊維質基材への含浸性が向上する傾向がある。さらに、化粧板の表面が平滑な仕上がりとなる傾向がある。なお、本発明における平均粒子径は、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)により検出された粒度分布(体積分布)から算出された算術平均径である。
【0032】
その他の充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の炭酸塩、シリカ、タルク、フライアッシュなどが挙げられ、特に炭酸カルシウムを用いることが好ましい。炭酸カルシウムを用いることにより、製造工程における作業性や、製造後の切削性が向上する傾向がある。なお、炭酸カルシウムとしては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム(沈降性炭酸カルシウム)等を用いることができる。
【0033】
その他の充填材を用いる場合、その平均粒子径は、例えば、0.05~300μmの範囲を挙げることができる。この範囲内であることにより、繊維質基材への含浸性が向上する傾向がある。
【0034】
繊維質基材に樹脂液を含浸する際は、含浸率が、以下の数式(1)で示される算出方法にて、200~1500%であることが好ましく、300~1200%であることが特に好ましい。この範囲内であることにより、樹脂液の含浸性が向上する傾向がある。さらに、コア層同士や、コア層と化粧層の密着性が向上することから、化粧板の層間剥離を抑制できる傾向がある。なお、数式(1)における、含浸前重量とは、繊維質基材自体の重量であり、含浸後重量とは、これに樹脂液を含浸し、乾燥させた後の重量である。
含浸率(%)=(含浸後重量-含浸前重量)/含浸前重量×100 (1)
【0035】
(化粧層)
本発明にかかる化粧板は、化粧層を含む。化粧層としては、繊維質基材に、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂を含む樹脂液を含浸し乾燥させた樹脂含浸化粧紙を用いる。繊維質基材としては、化粧板用の化粧紙を用いることが好ましい。
【0036】
化粧紙の坪量は、20~500g/mであることが好ましく、30~300g/mであることが特に好ましい。この範囲内であることにより、化粧板の表面物性や、樹脂液の含浸性が向上する傾向がある。化粧紙としては、着色されたものや、印刷により各種の模様を施したものを適宜用いることができる。
【0037】
熱硬化性樹脂としては、上述したアミノ-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂のほか、ラジカル重合型熱硬化性樹脂などを用いることができる。
【0038】
ラジカル重合型熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂や、これらの混合物が挙げられる。特に、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂を用いることにより、化粧板に柔軟性を付与でき、また硬化収縮を抑制することができる傾向がある。
【0039】
不飽和ポリエステル樹脂は、二価アルコールと、二塩基酸と、をエステル化により反応させた不飽和ポリエステルに、重合性モノマーを加えることにより得ることができる。
【0040】
二価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられ、また、二塩基酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、アジピン酸などが挙げられる。
【0041】
重合性モノマーとしては、スチレン、オルトクロルスチレン、ジアリルフタレート、メチルメタクリレートなどが挙げられる。硬化させる際には、硬化剤として、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、アセト酢酸パーオキサイドなどの有機過酸化物や、必要に応じてコバルト錯塩等の硬化促進剤を加えることができる。
【0042】
ビニルエステル樹脂は、エポキシ樹脂と、不飽和一塩基酸と、をエステル化触媒により反応させることによって得ることができる。
【0043】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ビスフェノールAとエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとの付加物のジグリシジルエーテル、ビスフェノールF系エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、クレゾールノボラック系エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0044】
不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノメチルマレート、モノプロピルマレート、ソルビン酸あるいはモノ(2-エチルヘキシル)マレートなどが挙げられ、不飽和一塩基酸と併用される多塩基酸としては、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,12-ドデカン二酸の他ダイマー酸などが挙げられる。二塩基酸無水物として無水マレイン酸、無水フタル酸などが挙げられる。三塩基酸無水物として無水トリメリット酸を使用した変性品も使用可能である。
【0045】
エステル化触媒としては、例えば、ジメチルベンジルアミン、トリブチルアミン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩;塩化リチウム、塩化クロム等の無機塩;2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;テトラメチルホスフォニウムクロライド、ジエチルフェニルプロピルホスフォニウムクロライド、トリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ベンジルトリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ジベンジルエチルメチルホスフォニウムクロライド、ベンジルメチルジフェニルホスフォニウムクロライド、テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスフォニウム塩;第二級アミン類;テトラブチル尿素;トリフェニルホスフィン;トリトリールホスフィン;トリフェニルスチビン等が挙げられる。
【0046】
繊維質基材に樹脂液を含浸する際は、含浸率が、上記の数式(1)で示される算出方法にて、10~500%であることが好ましく、20~300%であることが特に好ましい。この範囲であれば、樹脂含浸後のべた付きが抑制される傾向がある。
【0047】
(表面保護層)
本発明にかかる化粧板は、表面保護層を含む。表面保護層としては、樹脂含浸表面紙を含む。樹脂含浸表面紙は、繊維質基材に、熱硬化性樹脂とブロックイソシアネートを含む樹脂液を含浸し乾燥させた樹脂含浸表面紙を用いる。
【0048】
繊維質基材としては、化粧板用の表面紙を用いることができ、例えば、α-セルロース紙、織布、不織布などが挙げられる。特に、熱硬化性樹脂の硬化後に、透明又は半透明になるα-セルロース紙を用いることが好ましい。
【0049】
また、耐摩耗性粉末が混抄された耐摩耗性を有する表面紙を用いることもでき、その場合は、化粧板の耐摩耗性が向上する傾向がある。耐摩耗性粉末としては、酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化珪素などの無機系粉末が挙げられる。耐摩耗性を有する表面紙としては、α-セルロース紙に対して、耐摩耗性粉末が、重量比で1~40%、より好ましくは5~30%混抄されており、また坪量が10~60g/mであるものが挙げられる。この範囲内であることにより、化粧層の鮮明性の低下を抑制することができる傾向がある。
【0050】
樹脂液としては、熱硬化性樹脂とブロックイソシアネートと、を含む。
【0051】
熱硬化性樹脂としては、上述したアミノ-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂のほか、ラジカル重合型熱硬化性樹脂などを用いることができる。これらの中でも、耐熱性、耐摩耗性を向上させるため、アミノ-ホルムアルデヒド樹脂を用いることが好ましく、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を用いることが特に好ましい。また、樹脂液に、上述した充填剤を適宜含むこともできる。
【0052】
ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネートにおける末端イソシアネート基をブロック剤により閉塞させた化合物であり、反応の進行が抑制されているものである。各種のブロックイソシアネートには、それぞれに解離温度があり、その温度領域に達すると、ブロック剤が解離し、架橋反応が進むという特徴がある。
【0053】
ポリイソシアネートの基本骨格としては、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、TDI(トルエンジイソシアネート)など各種のものが挙げられ、そのブロック剤としては、オキシム系、アミン系、メチレン系などの各種の化合物が挙げられる。
【0054】
本発明においては、ポリイソシアネートの基本骨格として、HDI系のものを用いることが好ましい。骨格がHDI系の場合、脂肪族系化合物であり、安定性が高く、取り扱いし易い傾向がある。
【0055】
本発明にかかる発明者らは、表面保護層における樹脂液に、特に、アミン系ブロックイソシアネートを用いることにより、化粧板の一般的な物性を維持したままで、寸法安定性が向上することを見出し、本発明を完成させた。これは、アミン系ブロックイソシアネートの解離温度が、主に100℃~140℃程度であり、化粧板を製造する際の、一般的な成形温度の範囲内であるため、架橋反応が進みやすいことに起因するものと考えられる。また、オキシム系ブロックイソシアネートの解離温度は、140~180℃程度であり、問題なく化粧板は製造できるものの、寸法安定性の観点からは、特にアミン系ブロックイソシアネートを用いることが好ましい。
【0056】
一般に、化粧板は、基材として繊維質基材を用いるが、繊維質基材には繊維方向があることから、方向により寸法安定性に違いがみられるという特徴がある。具体的には、繊維方向(以下、縦方向とする。)においては、伸縮率が低く寸法安定性に優れている一方で、繊維方向と直交する方向(以下、横方向とする。)においては、基材や樹脂の種類により、伸縮率が大きく異なり、寸法安定性が変化する傾向がある。そのため、本発明においては、特に横方向における寸法安定性の向上を目的としている。
【0057】
さらに、本発明にかかる発明者らは、ブロックイソシアネートを用いた場合、一般的な化粧板よりも、表面保護層における含浸率を低減できることをも見出した。単に含浸率を低減させただけでは、当板汚染となる傾向があるものの、本発明においては、ブロックイソシアネートの添加により、含浸率の低減と、当板汚染の抑制を両立したものである。そのため、本発明にかかる化粧板は、通常よりも少量の樹脂・充填材にて製造できることから、生産性が向上し、生産コストを削減できるという作用効果をも奏するものである。
【0058】
繊維質基材に樹脂液を含浸する際は、含浸率が、上記の数式(1)で示される算出方法にて、20~450%であることが好ましく、30~300%となるよう含浸することが好ましい。この範囲内であれば、樹脂含浸後のべた付きを抑制することができる傾向がある。
【0059】
樹脂液中でのブロックイソシアネートの配合割合としては、上述した熱硬化性樹脂100重量部に対して、0.01~100重量部配合することが好ましく、0.1~50重量部配合することがさらに好ましく、1~30重量部配合することが特に好ましい。この範囲内において配合することにより、効率的に化粧板を製造できることから、その生産性が向上する傾向がある。
【0060】
本発明にかかる化粧板は、コア層、化粧層、表面保護層を積層し、平板プレス、連続プレス等のプレス機で熱圧成形することにより得ることができる。
【0061】
<床材>
以上により得られた化粧板は、寸法安定性が向上していることから、床材の表面材として好適に使用することができる。
【0062】
床材の基材層としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、各種エラストマーなどの熱可塑性樹脂シートが挙げられる。その際には、化粧板と熱可塑性樹脂シートとを接着剤を用いて接着することにより製造する。熱可塑性樹脂シートは無発泡、発泡いずれでも良く、発泡倍率は1.5~40倍が好適で、連続気泡発泡体、独立気泡発泡体のいずれでも良い。
【0063】
上記の熱可塑性樹脂シートのうち、ポリ塩化ビニル樹脂シートや発泡ポリエチレンはクッション性が有り、下地の不陸や凹凸を吸収しやすく、コスト的にも安価で好適に用いることができる。その厚みとしては、1~10mmの範囲を挙げることができる。
【0064】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。なお、本実施例において、重量部は固形分換算した値である。
【実施例
【0065】
<実施例1>
(1)コア層の製造
繊維質基材として、坪量が76g/mであるガラス繊維製不織布を用意した。
また、2-エチルヘキシルアクリレートと、メチルメタクリレートを主モノマーとする、ガラス転移温度(Tg):60℃、平均粒子径:200nmのアクリル樹脂系エマルジョン12重量部と、エチルアクリレートとメチルメタアクリレートを主モノマーとする、ガラス転移温度(Tg):88℃、平均粒子径:180nmのアクリル樹脂系エマルジョン4重量部と、炭酸カルシウム52重量部と、からなる樹脂液を得た。
そして、当該樹脂液に水を加え、ガラス繊維製不織布に、数式(1)で示される算出方法にて含浸率が750%となるように含浸し、乾燥して、コア層に用いるプリプレグを製造した。
(2)化粧層の製造
繊維質基材として、坪量が80g/mである木目柄の化粧紙を用意した。
また、ビスフェノール系ビニルエステル63%、メタクリルモノマー15%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20%(希釈剤)、アクリル酸2%と、を含有するビニルエステル系樹脂液を得た。
そして、化粧紙に、ビニルエステル樹脂を、数式(1)で示される算出方法にて含浸率が40%となるように含浸し、乾燥して、化粧層に用いる樹脂含浸化粧紙を製造した。
(3)表面保護層の製造
繊維質基材として、坪量が23g/mである表面紙(α-セルロ-ス紙)を用意した。
また、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂100重量部と、アミン系ブロックイソシアネート(商品名:BI522、ランクセス社製)5重量部と、硬化触媒(商品名:キャタニットA)0.2重量部と、を含有する樹脂液を得た。
そして、表面紙に、樹脂液を、数式(1)で示される算出方法にて含浸率が170%となるように含浸し、乾燥して、表面保護層に用いる樹脂含浸表面紙を製造した。
(4)化粧板の製造
最下層に、コア層として、プリプレグ1枚を静置した後、化粧層となる樹脂含浸化粧紙、表面保護層となる樹脂含浸表面紙の順に積層し、熱圧成形用の当板を用いて、135℃、6MPa、60分間の条件で熱圧成形することにより、実施例1にかかる化粧板を得た。
【0066】
実施例2では、アミン系ブロックイソシアネート(商品名:BI120、ランクセス社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
実施例3では、アミン系ブロックイソシアネート(商品名:BI220、ランクセス社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
実施例4では、アミン系ブロックイソシアネートを10重量部としたこと以外は、実施例3と同様に行った。
実施例5では、オキシム系ブロックイソシアネートを用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
比較例1では、ブロックイソシアネートを用いなかったこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0067】
実施例及び比較例について、以下の物性評価を行った。評価結果を表1に示す。
当板汚染:熱圧成形後の当板の外観について、目視により観察した。当板に汚染が観察されなかったものを〇、当板の一部に汚染が観察されたものを△、当板の全体に汚染が観察されたものを×と評価した。
寸法安定性:JIS K 6902に基づき、縦方向・横方向の伸び・縮みの割合(%)について測定し、伸び・縮みの割合の合計を変化率(%)とした。
耐汚染性:化粧板に、タバスコ(市販品)、うがい薬(商品名:イソジン)、ヨウ素アルコール(1%水溶液)、毛染め(商品名:ビゲン)を1滴滴下し、温度:23℃・湿度:50%の条件下にて、24時間静置した後、水で洗い流し、目視にて化粧板表面の汚染を確認した。汚染が確認できないものを〇、一部に汚染が確認されたものを×と評価した。
【0068】
【表1】


【要約】
【課題】 本発明が解決しようとする課題は、当板の汚染が抑制されており、化学物質に対する耐汚染性が良好で、寸法安定性が向上している化粧板を提供することである。
【解決手段】 コア層と、化粧層と、表面保護層と、を含み、表面保護層は、樹脂含浸表面紙を含み、樹脂含浸表面紙は、繊維質基材に、熱硬化性樹脂とブロックイソシアネートを含む樹脂液を含浸し乾燥させてなることを特徴とする化粧板であり、ブロックイソシアネートとしては、オキシム系又はアミン系ブロックイソシアネートを用いることが好ましい。
【選択図】なし