IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立国際電気の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】列車監視システム及び列車監視方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023501693
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2021006722
(87)【国際公開番号】W WO2022180657
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】秀島 竜哉
(72)【発明者】
【氏名】住吉 正紀
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/026159(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/180310(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/155546(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の車両の外側に、前記列車の進行方向又はその逆方向に向けて取り付けられたカメラと、
前記カメラにより撮影された映像を表示するモニタと、
前記カメラによる撮影動作を制御する制御装置とを備え
前記カメラは、当該カメラが取り付けられた車両および当該車両より奥側の車両を含む複数の車両のドア周辺を撮影するように設定されており、
前記制御装置は、前記カメラの標準の撮影範囲から前記奥側の車両のドア周辺が外れてしまう所定の駅において、前記カメラの画角を標準の画角よりも大きくする制御を行って、前記奥側の車両のドア周辺を撮影できるようにすることを特徴とする列車監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の列車監視システムにおいて、
前記制御装置は、前記所定の駅において、前記カメラの撮影方向を標準の撮影方向よりも前記列車の側面から離れた方向に向ける制御を更に行うことを特徴とする列車監視システム。
【請求項3】
請求項1に記載の列車監視システムにおいて、
前記制御装置は、前記所定の駅において、前記カメラにより撮影された映像からの切り出し枠を標準の切り出し枠よりも前記列車の側面から離れた方向にシフトさせる制御を更に行うことを特徴とする列車監視システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の列車監視システムにおいて、
前記制御装置は、予め前記所定の駅に対応付けて撮影制御情報を記憶しており、前記列車が所在する駅に対応付けられた前記撮影制御情報に基づいて、前記カメラによる撮影動作を制御することを特徴とする列車監視システム。
【請求項5】
列車の車両の外側に、前記列車の進行方向又はその逆方向に向けて取り付けられたカメラと、前記カメラによる撮影された映像を表示するモニタとを用いた列車監視方法において、
前記カメラは、当該カメラが取り付けられた車両および当該車両より奥側の車両を含む複数の車両のドア周辺を撮影するように設定されており、
前記カメラによる撮影動作を制御する制御装置が、前記カメラの標準の撮影範囲から前記奥側の車両のドア周辺が外れてしまう所定の駅において、前記カメラの画角を標準の画角よりも大きくする制御を行って、前記奥側の車両のドア周辺を撮影できるようにすることを特徴とする列車監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車に対する乗客の乗り降りをカメラ映像で監視する列車監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駅のプラットホームで乗客が列車に乗降する際の安全確保は、列車運行にとって重要な課題である。このような安全対策の一環として、車両の側面に取り付けられたカメラでドア付近を撮影し、そのカメラ映像を運転台のモニタに表示させる列車監視システムが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、各車両のカメラ映像から所定領域を切り出した映像をモニタに表示させる発明が開示されている。特許文献2には、各車両のカメラ映像から切り出す領域をドアの開閉状態に応じて変化させる発明が開示されている。特許文献3には、一部のカメラから映像出力が得られない場合に、代替のカメラを選択してその映像を出力させる発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/135736号
【文献】国際公開第2019/026157号
【文献】国際公開第2020/137113号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
幾つかの車両分の乗客の監視を1台のカメラで実施する場合がある。このとき、駅のプラットホームが直線的な形状であればよいが、プラットホームが凸状にカーブした形状の場合(例えば、図3A参照)には、カメラから離れた車両に対する乗客の様子を適切に撮影できないことがある。
【0006】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、プラットホームが凸状にカーブした形状の場合でも、カメラから離れた車両の乗客の様子を適切に撮影することが可能な列車監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記目的を達成するために、列車監視システムを以下のように構成した。
すなわち、本発明に係る列車監視システムは、列車の車両の外側に、列車の進行方向又はその逆方向に向けて取り付けられたカメラと、カメラにより撮影された映像を表示するモニタと、所定の駅において、モニタに表示される映像における、列車の側面から離れる方向の撮影範囲が、標準の撮影範囲より増加するよう制御する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、制御装置は、所定の駅において、カメラの画角を標準の画角よりも大きくする制御を行うことで、モニタに表示される映像における列車の側面から離れる方向の撮影範囲を増加させるようにしてもよい。
【0009】
また、制御装置は、所定の駅において、カメラの撮影方向を標準の撮影方向よりも列車の側面から離れた方向に向ける制御を行うことで、モニタに表示される映像における列車の側面から離れる方向の撮影範囲を増加させるようにしてもよい。
【0010】
また、制御装置は、所定の駅において、カメラにより撮影された映像からの切り出し枠を標準の切り出し枠よりも列車の側面から離れた方向にシフトさせる制御を行うことで、モニタに表示される映像における列車の側面から離れる方向の撮影範囲を増加させるようにしてもよい。
【0011】
また、制御装置は、予め所定の駅に対応付けて撮影制御情報を記憶しており、列車が所在する駅に対応付けられた撮影制御情報に基づいて、モニタに表示される映像における列車の側面から離れる方向の撮影範囲が増加するように制御してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プラットホームが凸状にカーブした形状の場合でも、カメラから離れた車両の乗客の様子を適切に撮影することが可能な列車監視システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る列車監視システムの概略的な構成例を示す図である。
図2】一般的な駅における撮影例を示す図である。
図3】所定の駅における第1撮影方式の概要を示す図である。
図4】所定の駅における第2撮影方式の概要を示す図である。
図5】所定の駅における第3撮影方式の概要を示す図である。
図6】所定の駅における撮影制御の処理フロー例を示す図である。
図7】撮影制御設定テーブルの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る列車監視システムについて、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る列車監視システムの概略的な構成例を示してある。図1は、1号車10-1、2号車10-2、3号車10-3、4号車10-4の4台を連結した4両編成の列車を示している。
【0015】
各車両10-1~10-4にはスイッチングハブ11が1台ずつ配置されており、これらをカスケード接続することでIPネットワークを構築している。列車の各車両10-1~10-4の外側の側面には、乗客が列車に乗降する様子を撮像するためのカメラ13を設置してある。列車の進行方向に対して前方側にある1号車10-1及び2号車10-2のカメラ13は、列車の後方側(すなわち、列車の進行方向の逆側)に向けて設置してある。また、列車の進行方向に対して後方側にある3号車10-1及び4号車10-4のカメラ13は、列車の前方側(すなわち、列車の進行方向側)に向けて設置してある。
【0016】
これらカメラ13は、自車両のドア12の周辺だけでなく、その奥の数車両のドア12の周辺も撮影できるように設定してある。例えば、1号車10-1のカメラ13は、自車両のドア12の周辺だけでなく、後続する2号車10-2及び3号車10-3のドア12の周辺も撮影できるように設定してある。
【0017】
1号車10-1及び4号車10-4には、各車両のカメラ13で撮影されたカメラ映像を表示するモニタ14が設置されている。また、1号車10-1には、本システムを制御する制御装置16と、カメラ映像を録画する録画装置15も設置されている。
【0018】
制御装置16は、メモリやプロセッサなどのハードウェア資源を備えており、ハードディスクやフラッシュメモリ等のデータ記憶装置に記憶されているプログラムをメインメモリ上に読み出してプロセッサにより実行することで、後述する各処理を実現するように構成されている。なお、制御装置16の機能は、このようなソフトウェアにより実現する構成に限定されず、専用ハードウェアにより実現してもよい。
【0019】
図2には、一般的な駅における撮影例を示してある。一般的な駅とは、プラットホームが直線的な形状の駅などの、事前設定された標準の画角、撮影方向、切り出し枠が適用される駅である。図2Aは、一般的な駅で乗客が列車に乗降する様子を1号車10-1のカメラ13で撮影する例を示してあり、図2Bは、そのとき撮影された映像を示してある。一般的な駅では、1号車10-1のカメラ13の標準の画角31の範囲内に、カメラ13の近くにいる人物21からカメラ13の遠くにいる人物23まで全員収まっており、監視業務には特段の支障が無い。
【0020】
しかしながら、プラットホームがカーブした形状の駅などでは、適切な撮影を行えない場合がある。そこで、本例の列車監視システムでは、制御装置16により所定の駅での撮影を制御する仕組みを導入することで、上記の問題の解決を図る。
【0021】
(第1撮影方式)
図3には、所定の駅における第1撮影方式の概要を示してある。図3Aは、所定の駅で乗客が列車に乗降する様子を1号車10-1のカメラ13で撮影する例を示してあり、図3Bは、そのとき撮影された映像を示してある。図3Aのようにプラットホームが凸状にカーブした形状の場合、1号車10-1のカメラ13の標準の画角31の範囲内には、カメラ13に最も近い人物31のみが収まっている。一方、カメラ13から遠い人物32は一部が画角31の範囲から外れており、更に遠くの人物33は画角31に全く収まっていない。これは、凸状にカーブしたプラットホームでは、カメラ31から遠くにいる人物32や33が、撮影中心に対して列車の側面方向に離れた場所に位置することになるためである。
【0022】
そこで、第1撮影方式では、制御装置16が、所定の駅において、1号車10-1のカメラ13の画角32を標準の画角31よりも大きくする制御を行う。これにより、モニタ14に表示される映像における、列車の側面から離れる方向の撮影範囲が、増加することになる。したがって、カメラ13の近くにいる人物21からカメラ13の遠くにいる人物23まで全員を、カメラ13の画角32に収めて撮影することができる。その結果、モニタ14に表示される映像に、人物21~23の全員が映ることになる。
【0023】
(第2撮影方式)
図4には、所定の駅における第2撮影方式の概要を示してある。図4Aは、所定の駅で乗客が列車に乗降する様子を1号車10-1のカメラ13で撮影する例を示してあり、図4Bは、そのとき撮影された映像を示してある。なお、車両に取り付けられたカメラ13は、パン・チルト(回転・首振り)を制御する駆動装置を備えており、制御装置16の指示によりパン・チルト動作を行うものとする。
【0024】
第2撮影方式では、制御装置16が、所定の駅において、1号車10-1のカメラ13の画角33を標準の画角31よりも列車の側面から離れた方向に向ける制御を行う。これにより、モニタ14に表示される映像における、列車の側面から離れる方向の撮影範囲が、増加することになる。その結果、モニタ14に表示される映像に、人物21~23の全員が映ることになる。
【0025】
(第3撮影方式)
図5には、所定の駅における第3撮影方式の概要を示してある。図5Aは、所定の駅で乗客が列車に乗降する様子を1号車10-1のカメラ13で撮影する例を示してあり、図5Bは、そのとき撮影された映像を示してある。なお、1号車10-1のカメラ13の画角が初期設定として広めに設定されており、撮影映像の一部を切り出してモニタ14に表示させるものとする。図3Aのようにプラットホームが凸状にカーブした形状の場合、1号車10-1のカメラ13の画角が広めであっても、標準の切り出し枠40を適用すると、カメラ13から遠い人物32の一部や人物33の全体が欠けた映像が切り出され、モニタ14に表示されることになる。
【0026】
そこで、第3撮影方式では、制御装置16が、所定の駅において、1号車10-1のカメラ13により撮影された映像からの切り出し枠41を標準の切り出し枠40よりも列車の側面から離れた方向にシフトさせる制御を行う。これにより、モニタ14に表示される映像における、列車の側面から離れる方向の撮影範囲が、増加することになる。その結果、モニタ14に表示される映像に、人物21~23の全員が映ることになる。
【0027】
なお、上記では、第1撮影方式、第2撮影方式、第3撮影方式を個別に説明したが、これらを組み合わせてもよい。これにより、制御装置16は、所定の駅での撮影制御をより柔軟に行えるようになる。
【0028】
図6には、所定の駅での撮影制御の処理フロー例を示してある。なお、図7に示すような撮影制御設定テーブルが予め用意されているものとする。本例では、制御装置16が撮影制御設定テーブルを有しているが、制御装置16が通信可能な他の装置が撮影制御設定テーブルを有してもよい。図7に示す撮影制御設定テーブルは、撮影制御の対象駅に対応付けて車両情報及び撮影制御情報を記憶している。撮影制御情報には、画角、撮影方向、切り出し枠などの情報が設定される。
【0029】
列車が駅のプラットホームに入線すると、制御装置16はまず、現在の駅を特定する(ステップS11)。現在の駅は、例えば、GPS(Global Positioning System)により取得される位置情報(緯度・経度情報)や、上位システムから取得される運行情報により特定することが可能である。次に、制御装置16は、特定した駅に対応する車両情報及び撮影制御情報を撮影制御設定テーブルから取得する(ステップS12)。次に、制御装置16は、取得した車両情報に対応する車両のカメラ13での撮影を、取得した撮影制御情報に従って制御する(ステップS13)。
【0030】
以上のように、本例の列車監視システムは、列車の各車両10の外側に、列車の進行方向又はその逆方向に向けて取り付けられたカメラ13と、カメラ13により撮影された映像を表示するモニタ14と、所定の駅において、モニタ14に表示される映像における列車の側面から離れる方向の撮影範囲が標準の撮影範囲より増加するよう制御する制御装置16とを備えている。このような撮影制御を行うことで、プラットホームがカーブした形状のような駅でも、カメラから離れた車両の乗降客を適切に撮影することが可能となる。
【0031】
なお、上記の説明では、撮影制御の対象となる駅のみに撮影制御情報を設定しているが、全ての駅に対して個別に撮影制御情報を設定しておき、各駅の撮影制御情報に応じた撮影制御を行うようにしてもよい。この場合は、一般的な駅については、標準の画角、撮影方向、切り出し枠などを含む撮影制御情報を設定しておけばよい。
【0032】
また、上記の説明では、1台の制御装置16が、各車両10-1~10-4のカメラ13の全てを制御するが、複数台の制御装置16を設けてカメラ制御を分担するようにしてもよい。また、例えば、カメラ13の各々が制御装置16を内蔵した構成とすることも可能である。また、上記の説明では、1台の車両10につき1台のカメラ13を設置してあるが、1台の車両10に多数のカメラ13が設置されてもよい。また、上記の説明では、4両編成の列車を例にして説明したが、車両の編成数は任意である。
【0033】
以上、本発明について一実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された構成に限定されるものではなく、他の構成のシステムに広く適用することができることは言うまでもない。例えば、本発明は、鉄道上を走行する列車のほか、モノレールや路面電車など、他の形式の列車にも適用することができる。
また、本発明は、例えば、上記の処理に関する技術的手順を含む方法や、上記の処理をプロセッサにより実行させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0034】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、列車に対する乗客の乗り降りをカメラ映像で監視する列車監視システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10-1,10-2,10-3,10-4:車両、 11:スイッチングハブ、 12:ドア、 13:カメラ、 14:モニタ、 15:録画装置、 16:制御装置
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7