(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】防振装置および防振装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16F 15/08 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
F16F15/08 W
F16F15/08 C
(21)【出願番号】P 2023539124
(86)(22)【出願日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2023004238
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2022033085
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-151991(JP,A)
【文献】特開2018-071768(JP,A)
【文献】特開2015-218754(JP,A)
【文献】実開昭59-127910(JP,U)
【文献】特開2006-144931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00-6/12
16/00
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に貫通する第1締結孔を有する板状の第1取付部材と、
前記第1取付部材に対して前記軸方向に離間して配置される板状の部材であって、前記軸方向に貫通し、前記軸方向の投影において前記第1締結孔と重なり、かつ、前記第1締結孔の孔径よりも大きい孔径を有するストッパー孔を有する第2取付部材と、
前記第1取付部材の両端側と前記第2取付部材の両端側との対向面をそれぞれ連結する一対のゴム弾性体と、
前記軸方向に貫通する第2締結孔を有する筒状の部材であって、前記ストッパー孔に挿入され、かつ、外周面が前記ストッパー孔の内周面と対向して配置されるストッパー部材と、
前記第1締結孔と前記第2締結孔とに挿通され、前記ストッパー部材を前記第1取付部材に締結する軸部材と、
を備え、
前記軸部材の外周面、及び、前記第1締結孔の内周面のいずれか一方には、周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第1突条が形成されており、かつ、前記軸部材が前記第1締結孔に挿通された状態において、前記複数の第1突条が、前記軸部材の外周面、及び、前記第1締結孔の内周面のいずれか他方に当接された状態とされており、
前記軸部材の外周面、及び、前記第2締結孔の内周面のいずれか一方には、周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第2突条が形成されており、かつ、前記軸部材が前記第2締結孔に挿通された状態において、前記複数の第2突条が、前記軸部材の外周面、及び、前記第2締結孔の内周面のいずれか他方に当接された状態とされている、防振装置。
【請求項2】
各複数の前記第1突条と前記第2突条が、共に、前記軸部材の外周面、又は、前記第1締結孔と前記第2締結孔の各内周面に形成されていると共に、
前記複数の第1突条は、前記軸方向に延在するように形成されており、
前記複数の第2突条は、前記複数の第1突条に連続した状態で前記軸方向に延在するように形成されている、請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記軸部材は、前記軸方向の一端に配置される鍔部を有し、
前記複数の第1突条は、前記軸部材の外周面における前記鍔部の付根から形成されている、請求項1又は2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記複数の第2突条は、前記軸部材の外周面に形成されており、
前記軸部材は、前記ストッパー部材の硬度よりも大きい硬度を有し、かつ、前記複数の第2突条を含む外径が、前記第2締結孔の孔径よりも大きくされている、請求項1
又は2に記載の防振装置。
【請求項5】
前記複数の第1突条は、前記軸部材の外周面に形成されており、
前記軸部材は、前記第1取付部材の硬度よりも大きい硬度を有し、かつ、前記複数の第1突条を含む外径が、前記第1締結孔の孔径よりも大きくされている、請求項1
又は2に記載の防振装置。
【請求項6】
軸方向に貫通する第1締結孔を有する板状の第1取付部材と、前記第1取付部材に対して前記軸方向に離間して配置される板状部材であって、前記軸方向に貫通し、前記
軸方向の投影において前記第1締結孔と重なり、かつ、前記第1締結孔よりも孔径が大きいストッパー孔を有する第2取付部材と、前記第1取付部材の両端側と前記第2取付部材の両端側との対向面がそれぞれ一対のゴム弾性体と、を備える本体部を準備する本体部準備工程と、
前記軸方向に貫通する第2締結孔を有する筒状のストッパー部材を、前記ストッパー孔に挿入させた状態で、外周面に所定の間隔をおいて前記軸方向に延在する複数の突条が形成された軸部材を、前記第1締結孔と前記第2締結孔とに圧入して、前記複数の突条を前記第1締結孔の内周面と前記第2締結孔の内周面とに当接させると共に、前記ストッパー部材の外周面を前記ストッパー孔の内周面に対向するように配置させるストッパー部材配置工程と、
を備える防振装置の製造方法。
【請求項7】
中央部分に第1締結孔を有する第1取付部材と中央部分にストッパー孔を有する第2取付部材とが対向配置されて両側部分において一対のゴム弾性体で連結された本体部を準備する工程と、
軸方向に貫通する第2締結孔を有しており、下端面が前記第1取付部材の中央部分の上面への重ね合わせ面とされると共に、上端部分が前記第2取付部材のストッパー孔へ隙間をもって挿通される挿通部とされるストッパー部材を準備する工程と、
周方向に所定の間隔をおいて軸方向に延びる複数の突条が外周面に形成されており、前記第1取付部材の前記第1締結孔と前記ストッパー部材の前記第2締結孔とに挿通される軸部材を準備する工程と、
該軸部材を前記第1取付部材の前記第1締結孔へ圧入して前記複数の突条を該第1締結孔の内周面に当接させて固定する工程と、
該軸部材を前記ストッパー部材の前記第2締結孔へ圧入して前記複数の突
条を該第2締結孔の内周面に当接させて固定する工程と
を、含む防振装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置および防振装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンやトランスミッション(変速機)等のパワーユニットを支持するようにクロスメンバ等の車体フレームに取り付けられ、パワーユニットからの振動を車体に伝えないように減衰させる支持ゴム弾性体(インシュレータ)と、支持ゴム弾性体の過度の変位を抑制するストッパーを備えた防振装置が知られている。
【0003】
例えば特開平9-151991号公報(特許文献1)には、車両用防振支持装置の一種として板状の第1支持金具及び第2支持金具と、それら第1支持金具及び第2支持金具にて上下に挟まれる状態に一体に加硫接着されたブロック状の一対のマウント本体ゴムと、円環状のフランジ部と、連結金具と、円環状フランジ部と連結金具と第2支持金具とをボルトとナットで連結するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の車両用防振支持装置においては、第1支持金具が車両の前後,上下方向の変位により、第1支持金具のゴム層が連結金具に繰り返し衝突することで、第1支持金具と連結金具との間で滑りが発生し、ボルトとナットの螺合に緩みが発生し、部品の脱落や、その部品の緩み(ガタツキ)・脱落による車両の前後、上下方向の変位を一定に規制する機能が働かずに耐久性が低下する恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、より簡単な構成で、滑りの発生および部品の緩みが抑制されることで、ストッパー機能が維持され、ゴムへの過剰な入力を低減又は防止により、ゴム弾性体の耐久性を高められる防振装置とその製造方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第一の態様に係る防振装置は、軸方向に貫通する第1締結孔を有する板状の第1取付部材と、前記第1取付部材に対して前記軸方向に離間して配置される板状の部材であって、前記軸方向に貫通し、前記軸方向の投影において前記第1締結孔と重なり、かつ、前記第1締結孔の孔径よりも大きい孔径を有するストッパー孔を有する第2取付部材と、前記第1取付部材の両端側と前記第2取付部材の両端側との対向面をそれぞれ連結する一対のゴム弾性体と、前記軸方向に貫通する第2締結孔を有する筒状の部材であって、前記ストッパー孔に挿入され、かつ、外周面が前記ストッパー孔の内周面と対向して配置されるストッパー部材と、前記第1締結孔と前記第2締結孔とに挿通され、前記ストッパー部材を前記第1取付部材に締結する軸部材と、を備え、前記軸部材の外周面、及び、前記第1締結孔の内周面のいずれか一方には、周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第1突条が形成されており、かつ、前記軸部材が前記第1締結孔に挿通された状態において、前記複数の第1突条が、前記軸部材の外周面、及び、前記第1締結孔の内周面のいずれか他方に当接された状態とされており、前記軸部材の外周面、及び、前記第2締結孔の内周面のいずれか一方には、周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第2突条が形成されており、かつ、前記軸部材が前記第2締結孔に挿通された状態において、前記複数の第2突条が、前記軸部材の外周面、及び、前記第2締結孔の内周面のいずれか他方に当接された状態とされている。
【0008】
第一の態様によれば、軸部材の外周面、及び、第1締結孔の内周面のいずれか一方には、周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第1突条が形成されており、かつ、軸部材が第1締結孔に挿通された状態において、複数の第1突条が、第1締結孔の内周面、及び軸部材の外周面のいずれか他方に当接された状態とされている。また、軸部材の外周面、及び、第2締結孔の内周面のいずれか一方には、周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第2突条が形成されており、かつ、軸部材が第2締結孔に挿通された状態において、複数の第2突条が、第2締結孔の内周面、及び軸部材の外周面のいずれか他方に当接された状態とされている。それゆえ、滑りの発生を抑制し、部品の緩みを抑制することで、ストッパー機能が維持されることでゴムへの過剰な入力を低減又は防止することでゴム弾性体の耐久性を高められる。
【0009】
第二の態様は、第一の態様に記載の防振装置において、各複数の前記第1突条と前記第2突条が、共に、前記軸部材の外周面、又は、前記第1締結孔と前記第2締結孔の各内周面に形成されていると共に、前記複数の第1突条は、前記軸方向に延在するように形成されており、前記複数の第2突条は、前記複数の第1突条に連続した状態で前記軸方向に延在するように形成されているものである。
【0010】
第二の態様によれば、複数の第1突条が、軸方向に延在するように形成されて、複数の第2突条が、複数の第1突条に連続した状態で軸方向に延在するように形成されていることから、第1突条部により軸部材の外周面と第1締結孔の内周面とが固定され、第1突条部に連続した第2突条により軸部材の外周面と第2締結孔の内周面とが固定される。それゆえ、軸部材の外周面,第1締結孔の内周面および第2締結孔の内周面が、一体化し固定されることで、滑りの発生および部品の緩みが抑制されることで、ストッパー機能が維持され、ゴムへの過剰な入力を低減又は防止することでゴム弾性体の耐久性を高められる。
【0011】
第三の態様は、第一又は二の態様に記載の防振装置において、前記軸部材は、前記軸方向の一端に配置される鍔部を有し、前記複数の第1突条は、前記軸部材の外周面における前記鍔部の付根から形成されている。
【0012】
第三の態様によれば、複数の第1突条が、軸部材の軸方向の一端に配置される鍔部の付根から形成されていることから、鍔部が軸方向に貫通する第1締結孔を有する板状の第1取付部材と当接する。それゆえ、滑りの発生する部分において、軸部材の外周面,第1締結孔の内周面および鍔部が当接状態となり、一体化し固定され、さらに付け根から形成されることで、複数の第1突条と第1締結孔の内周面の当接距離が長くなることにより、滑りの発生が抑制され、ストッパー機能が維持されることでゴムへの過剰な入力を低減又は防止することでゴム弾性体の耐久性を高められる。
【0013】
第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載の防振装置において、前記複数の第2突条は、前記軸部材の外周面に形成されており、前記軸部材は、前記ストッパー部材の硬度よりも大きい硬度を有し、かつ、前記複数の第2突条を含む外径が、前記第2締孔の孔径よりも大きくされている。
【0014】
第四の態様によれば、軸部材の硬度がストッパー部材の硬度よりも大きくされていることから、軸部材の外周面に形成される第2突条が、ストッパー部材に形成される第2締結孔にくい込み(圧入され)、強固に固定される。さらに、軸部材の外周面に形成される複数の第2突条を含む外径が、第2締結孔よりも大きくされていることから、軸部材の外周面に形成される第2突条部が、ストッパー部材に形成される第2締結孔の内周面に食い込み(圧入され)、強固に固定される。それゆえ、滑りの発生が抑制され、部品の緩みが抑制されことで、ストッパー機能が維持されることでゴムへの過剰な入力を低減又は防止することでゴム弾性体の耐久性を高められる。
【0015】
第五の態様は、第一~第四の何れか1つの態様に記載の防振装置において、前記複数の第1突条は、前記軸部材の外周面に形成されており、前記軸部材は、前記第1取付部材の硬度よりも大きい硬度を有し、かつ、前記複数の第1突条を含む外径が、前記第1締結孔の孔径よりも大きくされている。
【0016】
第五の態様によれば、軸部材の硬度が第1取付部材の硬度よりも大きくされていることから、軸部材の外周面に形成される第1突条が、第1取付部材に形成される第1締結孔に食い込み(圧入)、強固に固定される。さらに、軸部材の外周面に形成される複数の第1突条を含む外径が、第1締結孔よりも大きくされていることから、軸部材の外周面に形成される第1突条が、第1取付部材に形成される第1締結孔の内周面に食い込み(圧入)、強固に固定される。それゆえ、滑りの発生が抑制され、部品の緩みが抑制されことで、ストッパー機能が維持されることでゴムへの過剰な入力を低減又は防止することでゴム弾性体の耐久性を高められる。
【0017】
本発明の第六の態様に係る防振装置の製造方法は、軸方向に貫通する第1締結孔を有する板状の第1取付部材と、前記第1取付部材に対して前記軸方向に離間して配置される板状部材であって、前記軸方向に貫通し、前記軸方向の投影において前記第1締結孔と重なり、かつ、前記第1締結孔よりも孔径が大きいストッパー孔を有する第2取付部材と、前記第1取付部材の両端側と前記第2取付部材の両端側との対向面がそれぞれ一対のゴム弾性体と、を備える本体部を準備する本体部準備工程と、前記軸方向に貫通する第2締結孔を有する筒状のストッパー部材を、前記ストッパー孔に挿入させた状態で、外周面に所定の間隔をおいて前記軸方向に延在する複数の突条が形成された軸部材を、前記第1締結孔と前記第2締結孔とに圧入して、前記複数の突条を前記第1締結孔の内周面と前記第2締結孔の内周面とに当接させると共に、前記ストッパー部材の外周面を前記ストッパー孔の内周面に対向するように配置させるストッパー部材配置工程と、を含む。
【0018】
本発明の第六の態様によれば、軸方向に延在する複数の突条が形成された軸部材を、第1取付部材に形成される第1締結孔と筒状のストッパー部材に形成される第2締結孔に圧入し、複数の突条を前記第1締結孔の内周面と前記第2締結孔の内周面とに当接させ、食い込ませることで、第1取付部材とストッパー部材を固定することができる。これにより、第1取付部材とストッパー部材とが一体化され、滑りの発生および部品の緩みが抑制され、ストッパー機能が維持されることでゴムへの過剰な入力を低減又は防止することでゴム弾性体の耐久性を高められる。
【0019】
本発明の第七の態様に係る防振装置の製造方法は、中央部分に第1締結孔を有する第1取付部材と中央部分にストッパー孔を有する第2取付部材とが対向配置されて両側部分において一対のゴム弾性体で連結された本体部を準備する工程と、軸方向に貫通する第2締結孔を有しており、下端面が前記第1取付部材の中央部分の上面への重ね合わせ面とされると共に、上端部分が前記第2取付部材のストッパー孔へ隙間をもって挿通される挿通部とされるストッパー部材を準備する工程と、周方向に所定の間隔をおいて軸方向に延びる複数の突条が外周面に形成されており、前記第1取付部材の前記第1締結孔と前記ストッパー部材の前記第2締結孔とに挿通される軸部材を準備する工程と、該軸部材を前記第1取付部材の前記第1締結孔へ圧入して前記複数の突条を該第1締結孔の内周面に当接させて固定する工程と、該軸部材を前記ストッパー部材の前記第2締結孔へ圧入して前記複数の突条を該第2締結孔の内周面に当接させて固定する工程とを、含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明の防振装置は、複数の第1突条および複数の第2突条を相手部材に当接することにより、滑りの発生が抑制され、部品の緩みが抑制されることで、ストッパー機能が維持され、ゴムへの過剰な入力を低減又は防止することでゴム弾性体の耐久性を高められる。
【0021】
本発明の防振装置の製造方法によれば、外周面に所定の間隔をおいて軸方向に延在する複数の突条が形成された軸部材を、第1締結孔と第2締結孔とに圧入して、複数の突条を第1締結孔の内周面と第2締結孔の内周面とに当接させることにより、滑りの発生が抑制され、ストッパー機能が維持されることでゴムへの過剰な入力を低減又は防止によりゴム弾性体の耐久性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態としての防振装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示された防振装置を示す正面図である。
【
図5】
図1に示された防振装置における軸部材を示す正面図である。
【
図7】
図1に示された防振装置に振動体を積載した状態について説明する断面図である。
【
図8】
図1に示す防振装置の本体部を準備する本体部準備工程について説明する斜視図である。
【
図9】
図1に示す防振装置のストッパー部材配置工程について説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、本発明の対象となる防振装置の構造について説明する。
【0024】
図1,
図2,
図3,
図4および
図7には、本発明の第一の実施形態としての防振装置10が示されている。防振装置10は、第1取付部材30と第2取付部材40が相互に対向配置されて、それら第1取付部材30と第2取付部材40の両端部分が一対の本体ゴム弾性体20,20によって弾性連結された構造を有している。なお、以下の説明において、特に説明がない限り、軸方向とは第1取付部材30と第2取付部材40の対向方向である
図2中の上下方向を、左右方向とは第1取付部材30および第2取付部材40の長手方向である
図2中の左右方向を、前後方向とは第1,第2の取付部材30,40の幅方向である
図3中の上下方向を、それぞれ言う。
【0025】
第1取付部材30は、鉄やアルミニウム合金などの金属板材をプレス加工して形成されており、全体として長手板形状を有している。また、
図4、
図8および
図9第1取付部材30は、左右方向の中央部分が略水平に広がる第1平板部32とされて、第1平板部32に第1締結孔34が貫通形成されている。
【0026】
さらに、第1取付部材30における第1平板部32の左右両側には、第1傾斜板部33,33がそれぞれ一体形成されており、それら左右の第1傾斜板部33,33によって第1取付部材30の左右両端部分が構成されている。第1傾斜板部33,33は、左右外方に行くに従って次第に上傾する板形状とされており、左右対称の一対が第1平板部32の左右に設けられている。
【0027】
また、第1取付部材30には2つの固定孔36,36が第1平板部32に形成されており、固定孔36,36において第1取付部材30が車体80側に固定される。
【0028】
第2取付部材40は、第1取付部材30と同様に、鉄やアルミニウム合金などの金属板材で形成されており、全体として左右に長手板形状を有している。また、第2取付部材40は、長さ方向の中央部分が略水平に広がる第2平板部42とされており、第2平板部42の中央部分には、上下に貫通する矩形のストッパー孔44が形成されている。本実施形態では、ストッパー孔44が矩形とされているが、円形や多角形でも良い。
【0029】
さらに、第2平板部42の長さ方向両側には、一対の第2傾斜板部43,43が一体形成されている。第2傾斜板部43,43は、左右方向外側に行くに従って厚さ方向で上傾する板状とされている。
【0030】
また、一対の第2傾斜板部43,43の左右外端部から上方に突出する一対の縦壁部46,46を一体で備え、さらに、一対の縦壁部46,46の左右方向外方には、一対の取付片47,47が一体形成されている。取付片47は、縦壁部46の上端から左右外方に傾斜して延び出しており、厚さ方向に貫通する二つのボルト孔48,49が前後で相互に離隔した位置に貫通形成されており、左右一対の取付片47,47によって第2取付部材40の左右方向両端部分が構成されている。
【0031】
このような構造とされた第1取付部材30と第2取付部材40は、第2取付部材40が第1取付部材30に対して上方に対向配置されて、第2平板部42と第1平板部32が上下方向に対向せしめられると共に、第1傾斜板部33と第2傾斜板部43が上下方向に対して傾斜した向きで互いに対向せしめられる。そして、左右の第1傾斜板部33,33と、第2傾斜板部43,43の各対向面間にそれぞれ本体ゴム弾性体20,20が配設されており、第1取付部材30と第2取付部材40が、第1締結孔34及びストッパー孔44を挟んで両側位置する両端側において、それら一対の本体ゴム弾性体20,20によって弾性連結されている。
【0032】
図4,
図8及び
図9に示しているように、上下方向に貫通する矩形のストッパー孔44は、第2平板部42の中央部分に形成されている。上下方向,左右方向および前後方向に作用するストッパー22となるゴム層24,25,26が、ストッパー孔44の内周面に設けられており、ストッパー孔44の部分において第2取付部材40に一体加硫成形されている。本実施形態では、ストッパー孔44の部分にゴム弾性体を加硫形成されているが、ストッパー孔44の部分にゴム弾性体を形成しないで、ストッパー孔44の中に配置されるストッパー部材61にゴム弾性体を加硫形成しても良い。
【0033】
軸部材50は、
図4,
図5,
図6および
図7に示すように、上下方向の一端に配置される鍔部51を有し、鍔部51の付根から上下方向に延在し、周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第1突
条52から構成される第1突
条部53と、周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第1突
条52から構成される第1突
条部53に連続した状態で上下方向に延在し、周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第2突
条54から構成される第2突
条部55を備えている。本実施形態では、第1突
条52と第2突
条54とは同一形状とされている。即ち、本実施形態では、第1突
条52と第2突
条54が、外観上では区別できずに一体的に連続して軸方向に延びる連続突
条によって構成されている。なお、本実施形態では、第1突
条52及び第2突
条54の形状が、径方向外側に向かい先端が尖った三角形状とされている。尤も、第1突
条52及び第2突
条54の形状は、径方向外側に向かい先端が円弧形状や歯車形状(台形状)などで形成されていても良い。なお、第1突
条52及び第2突
条54の形状は、突出先端側に向かって周方向の幅寸法が次第に小さくなる形状が好適である。
【0034】
上下方向のストッパープレート70は、
図1,
図3,
図4,および
図9に示すように、矩形の平板形状で、中心部分に軸部材50を挿通する上下方向に貫通する貫通孔72を有している。
【0035】
ストッパー部材61は、直方体により構成され、
図1,
図2,
図4,
図7及び
図9に示すように、上下方向に貫通する第2締結孔62を有している。本実施形態では、ストッパー部材61が直方体とされているが、円筒形状や角柱形状でも良い。
【0036】
図4は、防振装置10の断面図である。ストッパー60は、ストッパー部材61とストッパープレート70とから構成される。ストッパー部材61はストッパー孔44に挿通される。ストッパー部材61は、ストッパー孔44に挿通された状態で上下方向下端部を第1取付部材30の第1平板部32に対して、第1平板部32の中心部分に位置する第1締結孔34とストッパー部材61を上下方向に貫通する第2締結孔62を重ね合わせた状態で立設させる。かかる立設状態下、ストッパー部材61の下端面は、第1平板部32の上面に当接状態で重ね合わされている。また、本実施形態では、第1締結孔34と第2締結孔62とが同一中心軸上に配されている。また、かかる中心軸上方向において、第1締結孔34の全体が第2締結孔62と重なっており、第2締結孔62は、その全周において第1締結孔34よりも外周側に広がった開口形状とされている。ストッパー部材61を第1平板部32に立設した状態で、第1取付部材30を構成する第1平板部32の中央部分に位置する第1締結孔34とストッパー部材61に形成される第2締結孔62に対して、軸部材50が、第1取付部材30の下側から挿通され、圧入される。軸部材50に配置される第1突
条部53及び第2突
条部55の最大対角線(D)は、第1締結孔34の直径(D1)と第2締結孔62の直径(D2)よりも大きく設定されているので、圧入されることで、第1突
条部53及び第2突
条部55が第1締結孔34および第2締結孔62のそれぞれの内周面に食い込むことになる。食い込んだ状態において、軸部材50の外周面に形成される周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第1突
条52から構成される第1突
条部53が、第1平板部32の中央部分に位置する第1締結孔34の内周面に当接される。そして、軸部材50の外周面に形成される周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第2突
条から構成される第2突
条部55が、ストッパー部材61の内周面に形成される第2締結孔62に当接される。軸部材50に形成される鍔部51と第1取付部材30の下面部とが接触した状態で、第1突
条部
53が第1締結孔34と当接し、第2突
条部55が第2締結孔62と当接する。軸部材50と第1取付部材30とストッパー部材61とが一体化され固定される。その結果、滑り(移動)の発生が抑制され、部品の緩みも抑制されことで、ストッパー機能が維持されることでゴムへの過剰な入力を低減又は防止することでゴム弾性体の耐久性を高められる。
【0037】
そして、ストッパープレート70は、ストッパー部材61の上側端面に、軸部材50とナット58との螺合により固定されている。
【0038】
図7は、
図1に示された防振装置に振動体を積載した状態の断面図である。振動体89は、第2取付部材40の左右の両端部に配置される左右一対の取付片47,47の上面に積載される。左右一対の取付片47,47に形成され、厚さ方向に貫通する二つのボルト孔48,49に図示されないボルト等により固定される。
【0039】
図4、
図5及び
図7の説明では、第1突
条部53および第2突
条部55が、軸部材50の外周面に形成されているが、周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第1突
条52から構成される第1突
条部53を第1締結孔34の内周面に形成し、軸部材50の外周面に当接させ、第1突
条部53に連続した状態で上下方向に延在し、周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第2突
条54から構成される第2突
条部55を第2締結孔62の内周面に形成し、軸部材50の外周面に当接させても良い。この場合も、軸部材50の外周面に第1突
条部53と第2突
条部55を形成した場合と同様に、ストッパー部材
61と第1取付部材30との間に滑り(移動)の発生が抑制される。さらに軸部材50と第1取付部材30とストッパー部材61が一体化され、滑り(移動)の発生および部品の緩みも抑制され、ストッパー機能が維持されることでゴムへの過剰な入力を低減又は防止によりゴム弾性体の耐久性を高められる。
【0040】
軸部材50の圧入状態について、
図4及び
図7により説明する。軸部材50の外周面に形成される周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第1突
条52から構成される第1突
条部53は、第1平板部32の中央部分に位置する第1締結孔34の内周面に当接される。おなじく、第1突
条部
53に連続した状態で上下方向に延在し、軸部材50の外周面に形成される周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第2突
条54から構成される第2突
条部55は、ストッパー部材61の内周面に形成される第2締結孔62に当接される。第2突
条部55が当接する内周面は、第1平板部32側に形成される。そして、軸部材50が、第1締結孔34と第2締結孔62に圧入されることで、軸部材50の外周面に形成される第1突
条部53及び第2突
条部55が第1締結孔34および第2締結孔62のそれぞれの内周面に食い込むことになる。食い込んだ状態において、軸部材50と第1取付部材30とストッパー部材61とが一体化される。
【0041】
第2取付部材40は、振動体89の振動により上下方向、左右方向及び前後方向に移動する。特に、左右方向の移動により、第2取付部材40に形成されるストッパー孔44の内周面が、第2取付部材40のストッパー部材61の外周面と接触する。その結果、ストッパー部材61と第1取付部材30との間に滑り(移動)が発生する。軸部材50と第1取付部材30とストッパー部材61が一体化されていることで、滑り(移動)の発生が抑制される。そして、部品の緩みも抑制されることで、ストッパー機能が維持され、ゴムへの過剰な入力を低減又は防止することでゴム弾性体の耐久性を高められる。
【0042】
図2、
図4及び
図7に示すように、軸部材50に形成される鍔部51と第1取付部材30の下面部とが接触した状態で、軸部材50の外周面に形成される第1突
条部53が第1取付部材30に形成される第1締結孔34と当接し、第1突
条部53と連続して上下方向に延在する第2突
条部55がストッパー部材61の内周
面に形成される第2締結孔62と当接する。軸部材50が、第1締結孔34および第2締結孔62に圧入されることで、第1突
条部53および第2突
条部55が第1締結孔34および第2締結孔62のそれぞれの内周面に食い込み、当接される。それにより、軸部材50に形成される鍔部51と軸部材50と第1取付部材30とストッパー部材61とが、一体化され固定される。特に、鍔部51が第1取付部材30の下面と接触した状態で、鍔部51側で圧入され、当接させることで、軸部材50がより安定した状態で固定される。その結果、軸部材50と第1取付部材30とストッパー部材61が一体化されることで、ストッパー荷重が及ぼされた際の第1取付部材30の表面上でのストッパー部材61の滑り(移動やガタつき)の発生と、かかる滑りに起因する部品の緩みも抑制される。その結果、ストッパー機能による第1取付部材30と第2取付部材40の相対的変位量の制限機能が維持されて、第1取付部材30と第2取付部材40の過度な相対的変位量が安定して防止されることとなり、ゴムへの過剰な入力を低減又は防止することもできてゴム弾性体の耐久性も高められる。
【0043】
本実施形態では、軸部材50,ストッパー部材61および第1取付部材30は金属材料で形成されている。軸部材50の硬度が、ストッパー部材61の硬度よりも大きくされることにより、軸部材50の外周面に周方向に所定の間隔をおいて配置される第2突条部55が、ストッパー部材61に配置される上下方向に貫通する第2締結孔62の内周面と当接する(圧入される)と同時に第2突条部55が第2締結孔62の内周面により食い込む構造となり、軸部材50とストッパー部材61とがより強固に一体化される。その結果、滑り(移動)の発生および部品の緩みがさらに抑制され、ストッパー機能が維持されることで、ゴムへの過剰な入力を低減又は防止することによりゴム弾性体の耐久性を高められる。
【0044】
軸部材50の硬度が、第1取付部材30の硬度よりも大きくされることにより、軸部材50の外周面に周方向に所定の間隔をおいて配置される第1突条部53が、第1取付部材30に配置される上下方向に貫通する第1締結孔34の内周面と当接する(圧入される)と同時に第1突条部53が第1締結孔34の内周面により食い込む構造となり、軸部材50とストッパー部材61とがより強固に一体化される。その結果、滑り(移動)の発生および部品の緩みがさらに抑制され、ストッパー機能が維持されることで、ゴムへの過剰な入力を低減又は防止することによりゴム弾性体の耐久性を高められる。
【0045】
また、
図5-6に示されているように、本実施形態の軸部材50には、鍔部51側の軸部の基端部分に第1突
条52が形成されておらず、第1突
条部53の外径寸法よりも小さい外径寸法をもって周方向に延びる凹溝状部56が形成されている。かかる凹溝状部56を設けることで、軸部材50の第1突
条部53を第1取付部材30(第1平板部32)の第1締結孔34へ圧入する際に発生する屑を当該凹溝状部56へ収められるように図ることも可能である。これにより、かかる屑が第1平板部32と鍔部51との重ね合わせ面間へ挟まることを防止し得て、第1平板部32の下面と鍔部51との密接状態での重ね合わせによる第1取付部材30に対する軸部材50ひいてはストッパー部材61の固定力の安定化が図られ得る。
【0046】
次に、防振装置の製造方法について、
図4を参照しつつ、
図8および
図9を参照して説明する。
【0047】
防振装置10の製造方法は、本体部14を準備する本体部準備工程と、ストッパー部材61の外周面を前記ストッパー孔44の内周面に対向するように配置させるストッパー部材配置工程とを備えている。
【0048】
図8に示される本体部14を準備する本体部準備工程について説明する。防振装置10において軸部材50,ストッパー部材61,ストッパープレート70およびナット58を除く本体となる本体部14を形成する工程である。車体80と締結するための固定ボルト86を取り付けた
第1取付部材30および第2取付部材40を所定の成形型(図示されない)に入れる。そして、第1取付部材30と第2取付部材40との間に未加硫状態のゴム材料を注入し、従来から使用されている所定の加硫装置(図示されない)によって、ゴム材料に加硫を行う。こうして、本体部第1取付部材30と第2取付部材40との間に本体ゴム弾性体20,20を成形し、本体部14を形成する。
【0049】
図9に示されるストッパー部材配置工程について説明する。軸部材50を第1締結孔34と第2締結孔62とに圧入し、軸部材50の外周面に配置される複数の突
条を第1締結孔34の内周
面と第2締結孔62の内周面に当接する工程である。ストッパー部材61を、第2取付部材40の中心部分に形成されるストッパー孔44に挿通する。ストッパー部材61に形成される上下方向に貫通する第2締結孔62と、第1取付部材30の中心部分に形成される上下方向に貫通する第1締結孔34とを重ね合わせた状態で、ストッパー部材61を第1取付部材30の第1平板部32に立設する。第1取付部材30の下方から上方へ、軸部材50を第1締結孔34と第2締結孔62に圧入する。圧入されることで、第1突
条部53及び第2突
条部55が第1締結孔34および第2締結孔62のそれぞれの内周面に食い込むことになる。食い込んだ状態において、軸部材50の外周面に周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第1突
条部53および第2突
条部55が、第1取付部材30に形成される第1締結孔34およびストッパー部材61に形成される第2締結孔62にそれぞれ当接し、一体化し固定される。その結果、第1取付部材30とストッパー部材61における滑り(移動)の発生が抑制される。そして、部品の緩みも抑制されことで、ストッパー機能が維持されることでゴムへの過剰な入力を低減又は防止することでゴム弾性体の耐久性を高められる。
【0050】
特に上述のように第1取付部材30の第1締結孔34やストッパー部材61の第2締結孔62に対する軸部材50の圧入固定部が、周方向に複数の突条を備えていることから、平滑な単なる円筒状面で構成する場合のように高度な寸法管理や過度な圧入力およびそれらを実現する設備も不要になり、実現が容易となると共に、複数の突条の先端部分に圧入力乃至は固定力を集中的に作用させることで、目的とする圧入固定力を安定して得ることが可能になる。加えて、前記実施形態のように、複数の突条を設けた部材の硬度を、それと反対側の部材の硬度よりも大きくすることで、かかる突条をより確実に且つ効率的にくい込ませて当接固定状態の向上と安定化を図ることが可能になる。
【0051】
なお、第1取付部材30の第1締結孔34に対する軸部材50の第1突条部53の当接による圧入固定領域は、第1平板部32の厚さ寸法(第1締結孔34の軸方向長さ)に対して50%以上とされることが望ましく、より好適には80%以上とされ、更に好適には前記実施形態のように実質的に全体に亘って設定される。また、ストッパー部材61の第2締結孔62に対する軸部材50の第2突条部55の当接による圧入固定領域は、第1突条部53の当接による軸部材50の第1締結孔34に対する圧入固定領域の軸方向長さ寸法の80%以上とされるのが望ましく、より好適には同じかそれ以上の軸方向長さとされる。
【0052】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0053】
例えば、ストッパー部材61は、全長に亘って一定の横断面形状で延びるストレート筒形状とされる必要はない。具体的には、基端部分(下端部分)と先端部分(上端部分)で断面形状が異なっていても良いし、先端部分に外向きのフランジ状部が一体形成されることで別体のストッパープレートを不要とすることもできる。また、ストッパー部材61の外周面とストッパー孔44の内周面とは相似形状である必要はなく、相互に当接することでストッパー機能を発揮する対向間距離(ストッパー隙間寸法)は、前後方向と左右方向で異なっていても良い。
【0054】
また、第2取付部材40に加硫接着されてストッパー22を構成するゴム層24,25,26は、前述のようにストッパー部材61の外周面に加硫接着して形成しても良いし、その他、例えば別体の筒状のストッパーゴムをストッパー部材61に外挿状態で装着することも可能である。かかるストッパーゴムも、周方向において、ストッパー孔44の内周面からの突出高さが異ならされていても良い。
【0055】
また、第2取付部材40に形成されるストッパー孔44も、例示の単純な打抜状貫通孔に限定されるものでなく、例えば開口内周縁において軸方向に立ち上がる筒状部を一体形成することで、或いは別体の筒状体を溶着等で固定することで、ストッパー部材61が当接するストッパー当接面を軸方向に大きく設定することも可能である。
【0056】
また、軸部材50と第1締結孔34及び第2締結孔62との当接部に形成される第1突条52及び第2突条54も、例示の態様に限定されるものでなく、例えば互いに独立した突条とされていても良いし、軸部材50と第1締結孔34との当接部分と、軸部材50と第2締結孔62との当接部分が、互いに軸方向で離れた位置に設けられていても良い。また、軸部材50と第1締結孔34との当接部分の径寸法と、軸部材50と第2締結孔62との当接部分の径寸法とが、互いに異なっていても良い。特に本実施形態ではストッパー部材61が軸方向に長い筒状とされていることから、軸部材50と第2締結孔62との当接部分を軸方向で異なる複数箇所に設定することも可能である。更にまた、軸部材50と第1締結孔34や第2締結孔62との当接部分を構成する第1及び第2の突条も、軸方向に連続して延びる実施形態に限定されるものでなく、軸方向で複数に分断されていても良いし、独立した複数の突起形状などであっても良い。
【0057】
また、本発明に係る防振装置の製造方法も前記実施形態の具体的記載によって限定的に解釈されない。例えば、ストッパー部材61をストッパー孔44に挿通する前に、本体部14の第1取付部材30の第1締結孔34に対して下方から軸部材50を圧入して固定することで軸部材50を第1取付部材30に対して植設状態としても良い。その後、別途に準備したストッパー部材61を、本体部14の第2取付部材40のストッパー孔44に対して上方から挿入して、当該ストッパー孔44の下方から軸部材50を圧入して固定することで、軸部材50を介して、第1取付部材30に対してストッパー部材61を固着するようにしても良い。
【符号の説明】
【0058】
10 防振装置
14 本体部
20 本体ゴム弾性体
22 ストッパー
24,25,26 ゴム層
30 第1取付部材
32 第1平板部
33 第1傾斜板部
34 第1締結孔
36 固定孔
40 第2取付部材
42 第2平板部
43 第2傾斜板部
44 ストッパー孔
46 縦壁部
47 取付片
48,49 ボルト孔
50 軸部材
51 鍔部
52 第1突条
53 第1突条部
54 第2突条
55 第2突条部
58 ナット
60 ストッパー
61 ストッパー部材
62 第2締結孔
70 ストッパープレート
72 貫通孔
80 車体
86 固定ボルト
89 振動体
【要約】
より簡単な構成で、滑りの発生を抑制し、部品の緩みを抑制できる防振装置を提供する。
第1締結孔34を有する板状の第1取付部材30と、ストッパー孔44を有する板状の第2取付部材40と、第1取付部材30と第2取付部材40を両端側の対向面間で連結する一対のゴム弾性体20,20と、第2締結孔62を有するストッパー部材61と、ストッパー部材61を1取付部材30に締結する軸部材50とを備え、軸部材50と第1締結孔34及び第2締結孔62との圧入固定部分において周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の突状52,54を設け、それら突状52,54を当接状態とすることで軸部材50を第1取付部材30及びストッパー部材61へ固定した。