IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製紙株式会社の特許一覧

特許7373699顕色剤層にデキストリンを含有する感圧複写紙
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】顕色剤層にデキストリンを含有する感圧複写紙
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/132 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
B41M5/132
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023547239
(86)(22)【出願日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2023012158
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2022058950
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】平井 健二
(72)【発明者】
【氏名】田渕 和幸
(72)【発明者】
【氏名】登坂 昌也
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-175691(JP,A)
【文献】特開2013-176983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に顕色剤層を設けた感圧複写紙であって、該顕色剤層がデキストリンを含有し、該デキストリンの分子量が150k~200kであり、デキストロース当量(DE)が4.0~10.0である、感圧複写紙。
【請求項2】
前記デキストリンのRVA粘度(固形分濃度35重量%の水性スラリーを、ラピッドビスコアナライザーを用いて、0~5分の5分間で98℃まで昇温、5~9分の4分間は98℃に保持、9~12分の3分間で50℃まで冷却、12~16分の4分間は50℃に保持という蒸煮条件で蒸煮したときの、蒸煮16分後における蒸煮液の粘度)が850~1200mPa・sである、請求項1に記載の感圧複写紙。
【請求項3】
前記顕色剤層中の前記デキストリンの含有量(固形分重量)が、顕色剤層の全固形分100重量部に対して3~30重量部の量である、1又は2に記載の感圧複写紙。
【請求項4】
前記顕色剤層中の前記デキストリンの含有量(固形分重量)が、顕色剤層が含有する全バインダー100重量部に対して5~100重量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の感圧複写紙。
【請求項5】
前記デキストリンが、白色焙焼デキストリンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の感圧複写紙。
【請求項6】
前記顕色剤層が、更に、ポリビニルアルコールを含有する、請求項1~5のいずれかに記載の感圧複写紙。
【請求項7】
前記ポリビニルアルコールが完全ケン化ポリビニルアルコールである請求項6に記載の感圧複写紙。
【請求項8】
前記顕色剤層中の前記ポリビニルアルコールの含有量(固形分重量)が、顕色剤層が含有する全バインダー100重量部に対して5~25重量部である、請求項6又は7に記載の感圧複写紙。
【請求項9】
前記顕色剤層中の前記デキストリンの含有量(固形分重量)が、顕色剤層が含有する全バインダー100重量部に対して20~90重量部である、請求項4に記載の感圧複写紙。
【請求項10】
前記顕色剤層中の前記デキストリンの冷水可溶量が12%以下である、請求項1~9のいずれかに記載の感圧複写紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高速印刷時に印刷強度の強い感圧複写紙に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧複写紙は、支持体上の片面に、無色または淡色の電子供与性ロイコ染料(以下、「ロイコ染料」ともいう。)を溶解または分散状態で含有する疎水性液体(以下、「カプセルオイル」ともいう。)を内包したマイクロカプセルを含む層を設けた「上用紙」、ロイコ染料と接触して発色するフェノール性化合物等の電子受容性顕色剤(以下、「顕色剤」ともいう。)を含む層を設けた「下用紙」、支持体の片面に前記マイクロカプセルを含む層、他方の面に前記顕色剤を含む層を設けた「中用紙」を適宜組み合わせたものや、支持体の片面に前記マイクロカプセルを含む層、他方の面に前記顕色剤を含む層を設けた「中用紙」を適宜組み合わせたものがある。
これらの感圧複写紙は、上用紙もしくは中用紙の前記マイクロカプセルを含む層(以下、「マイクロカプセル層」ということがある。)と、下用紙もしくは中用紙の前記顕色剤を含む層(以下、「顕色剤層」ということがある。)とが接するように組合わされて、上用紙の非塗工面(マイクロカプセル層を設けていない面)もしくは中用紙の顕色剤層面から筆圧、プリンターなどで加圧されると、マイクロカプセル層中のマイクロカプセルが破壊され、ロイコ染料を含有するカプセルオイルが下用紙もしくは中用紙の顕色剤層面に移行する。その結果、ロイコ染料と顕色剤が反応して、発色する。
また、支持体の同一面にマイクロカプセル層と顕色剤層を積層、又は同一層に前記マイクロカプセルと前記顕色剤を混在させた「セルフコンティンド紙」などがある。セルフコンティンド紙においては、前記マイクロカプセルが破壊されると、支持体の同一面に前記マイクロカプセル層と前記顕色剤層を積層した場合は前記顕色剤層で、同一層に前記マイクロカプセルと前記顕色剤を混在させた場合は同一層で、それぞれロイコ染料と顕色剤が反応して、発色する。
そのため、発色能力、耐湿性、印刷強度のバランスなどを改善するために、顕色剤層にバインダー(または接着剤)としてデキストリンを含有する感圧複写紙が開示されている(特許文献1~3等)。
【0003】
また、感圧複写紙は、多数枚複写が可能であるという機能を有することから各種帳票に適用され、通常オフセット印刷、インクジェット記録による印刷方式等によってフォーム印刷し用いられているが、下用紙あるいは中用紙の顕色剤層を設けた面に印刷が行われる場合、インキロール、ブランケット、あるいは印刷版に顕色剤層の一部が欠落、堆積し、色抜けや印刷汚れなどの問題が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭55-19519
【文献】特開昭58-175691
【文献】特開2013-176983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術の感圧複写紙は、発色能力等が良好ではあっても、高速印刷時の印刷強度が充分ではなかった(例えば、後述の比較例1~4を参照されたい。)。従って、本願発明は、発色性に優れ、高速印刷時に印刷強度の強い感圧複写紙を提供することを目的とする。
ここで、高速印字とは、感圧紙の印刷機の印刷速度が300m/分以上であることをいう。また、印刷強度とは、ベタ印刷部の剥け(インキのタック(粘着性)により顕色剤層が引き剥がされること)に対する耐性をいう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討の結果、支持体上に顕色剤層を設けた感圧複写紙において、この顕色剤層に特定の分子量と特定のデキストロース当量(DE)を有するデキストリンを用いることにより、発色性に優れ、高速印刷時に印刷強度の強い感圧複写紙が得られることを見出し、本願発明を完成させるに至った。
即ち、本願発明は、支持体上に顕色剤層を設けた感圧複写紙であって、該顕色剤層がデキストリンを含有し、該デキストリンの分子量が150k~200kであり、デキストロース当量(DE)が4.0~10.0である、感圧複写紙である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発色性に優れ、高速印刷時に印刷強度の強い感圧複写紙を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
一般に、印刷時における顕色剤層の欠落の発生は、顕色剤層の強度が弱いことが大きな原因であると考えられるが、顕色剤層の強度が強すぎると、ロイコ染料及びカプセルオイルの顕色剤層への浸透が阻害され、発色能力が低下する。
これに対し、本願発明は、顕色剤層に特定の分子量と特定のデキストロース当量(DE)を有するデキストリンを含有させることにより、発色能力と印刷強度とのバランスが良好となることを見出しなされたものである。
本発明において顕色剤層とは、顕色剤を含有する層であり、マイクロカプセル層とはマイクロカプセルを含有する層をいう。例えば、本発明に係る感圧複写紙がセルフコンティンド紙であって、マイクロカプセルと顕色剤を同一層に混在させている場合、マイクロカプセルと顕色剤の両方が含まれる層は、顕色剤層でありマイクロカプセル層ということになる。
【0009】
デキストリンは、澱粉を加水分解して得られる澱粉系高分子であり、α-グルコースがグリコシド結合によって重合しており、糊精(こせい)とも呼ばれる。デキストリンは、低分子化の度合いによってグレード分けされており、その指標にデキストロース当量(DE)が用いられる。DEはデキストロース(ブドウ糖)の還元力を100とした場合の相対的な尺度である。DEが0に近いほど澱粉に近い特性であり、100に近いほど澱粉の加水分解が進み、平均分子量が小さくなり、ブドウ糖に似た特性となる。一般的にデキストリンまたはマルトデキストリンと呼ばれる範囲はDEが20以下であり、20以上を粉あめと呼ぶ。DEが大きいと、水への分散時に蒸煮が必要無く、容易に水に分散する冷水可溶性のデキストリンとなる。本発明で用いるデキストリンのDEは4.0~15.0であり、好ましくは10以下であり、また、好ましくは5.0以上、より好ましくは6.0以上である。DE値がこの範囲であることで、高速印刷時に印刷強度の強い感圧複写紙を得ることができる。本発明において、デキストリンのDEは、フェーリング・レーマン・ショール法(例えば、澱粉糖関連工業分析法(食品化学新聞社)を参照されたい。)によって算出することができる。
【0010】
デキストリンは澱粉を酸の存在下又は非存在下で加熱処理を行い、加水分解と再結合により得られる。酸触媒の非存在下は加水分解が起こり難く、焙焼デキストリンを得るのは難しいので、本発明で用いる焙焼デキストリンを得るためには、酸触媒を用いたほうが好ましい。酸触媒を使用する際は鉱酸であれば何でもよく制限されない。酸触媒の添加量が少なすぎるとデキストリン化反応が進み難いので、塩酸であれば、澱粉絶乾重量1kgに対して0.008mol以上添加するのが望ましい。また、加熱温度は低すぎるとデキストリン化反応が進み難いので110℃以上で加熱するのが望ましいが、温度が高すぎると褐色に着色してしまうので着色しない温度、特に150℃以下で加熱するのが好ましい。加熱時間は酸触媒量と加熱温度に左右されるが、塩酸の添加量が澱粉絶乾重量1kgに対して0.005mol以上、110℃以上であれば90分以内に加熱を停止するのが好ましい。
【0011】
通常の澱粉は分子量が大きいが、デキストリンは澱粉の加水分解の工程で生ずる中間生成物であり、澱粉と比較して分子量が小さく、従来はオリゴマー(グルコースが数個~数十個程度が結合したもの)程度の分子量が一般的であった。本発明に用いるデキストリンの分子量は、150k~200kであることが好ましい。分子量が数千になると、蒸煮処理の必要がない冷水可溶性のデキストリンとなる。分子量が低く10k以下のデキストリンが多く存在していると、塗工層は密になるが、強度への寄与が低く、印刷時のパイリング等の問題が生じやすい。一方で、分子量が250kより高くなると、デキストリンを水に分散した際の粘度が上がり、塗料のハンドリングが困難となる。
【0012】
本発明に用いるデキストリンの冷水可溶量は12%以下であることが好ましく、9.5%以下であることがより好ましい。この冷水可溶量は、以下のように測定する。デキストリンを有姿で10g採取し、蒸留水で100gとする。このスラリーを10分間攪拌し、その後10分間整置する。この上澄みをBrix計で測定し、固形分換算を行い算出する。分子量が非常に低いと、冷水可溶量が12%より大きくなる。冷水可溶性のデキストリンは、蒸煮が不要であるが、塗工層の強度が不足することから、本発明には好ましくない。
【0013】
本発明のデキストリンとしては、焙焼デキストリンを好適に用いることができる。焙焼デキストリンは酸を加えて乾熱で焼いて生成したデキストリンであり、白色デキストリン、黄色デキストリン、ブリティッシュガムなどの種類がある。焙焼デキストリンは、水中で加熱・酸処理したデキストリンより網目構造が多いため、印刷強度に優れる。また、本発明では、紙の白色度の観点から白色デキストリンの使用が特に好ましい。
【0014】
本発明において、RVA粘度が特定の範囲のデキストリンを用いることが好ましい。このRVA粘度とは、固形分濃度35重量%の水性スラリーを、ラピッドビスコアナライザーを用いて、0~5分の5分間で98℃まで昇温、5~9分の4分間は98℃に保持、9~12分の3分間で50℃まで冷却、12~16分の4分間は50℃に保持という蒸煮条件で蒸煮したときの、蒸煮16分後における蒸煮液の粘度のことをいう。
具体的には、本発明においては、RVA粘度が850~1200mPa・sであるデキストリンを使用することが好ましい。RVA粘度が850mPa・sより低いと塗工層の表面強度が不足し、印刷時のパイリング等の問題が生じやすい。RVA粘度が1200Pa・sより高いと、デキストリンを水に分散した際の粘度が上がり、ハンドリングが困難となる。
【0015】
また、本発明において、デキストリンのpHは、4.0~6.0であることが好ましく、4.5~5.5であることがより好ましい。pHがこの範囲であるデキストリンを感圧記録紙に用いると、良好な発色性と保存性を持つ感圧記録体が得られる。
【0016】
次に、本発明の顕色剤層で使用される各種材料を例示する。
本発明の顕色剤層に含まれる顕色剤としては、従来の感圧あるいは感熱記録紙の分野で公知のものはすべて使用可能であり、単一種類の顕色剤を用いることもできるし、2種以上の顕色剤を混合して使用することもできる。これに制限されるものではないが、顕色剤としては、例えば、活性白土、アタパルジャイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム等の無機酸性物質、4,4'-イソプロピリデンジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-n-プロポキシジフェニルスルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4-ヒドロキシ-4'-メチルジフェニルスルホン、4-ヒドロキシフェニル-4'-ベンジルオキシフェニルスルホン、3,4-ジヒドロキシフェニル-4'-メチルフェニルスルホン、特開平8-59603号公報記載のアミノベンゼンスルホンアミド誘導体、ビス(4-ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、1,5-ジ(4-ヒドロキシフェニルチオ)-3-オキサペンタン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,4-ビス[α-メチル-α-(4'-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1,3-ビス[α-メチル-α-(4'-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、ジ(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、2,2'-チオビス(3-tert-オクチルフェノール)、2,2'-チオビス(4-tert-オクチルフェノール)、国際公開WO97/16420号に記載のジフェニルスルホン架橋型化合物等のフェノール性化合物、国際公開WO02/081229号あるいは特開2002-301873号記載のフェノール性化合物、国際公開WO02/098674号あるいはWO03/029017号に記載のフェノールノボラック型縮合組成物、国際公開WO00/14058号あるいは特開2000-143611号に記載のウレアウレタン化合物、N,N'-ジ-m-クロロフェニルチオウレア等のチオ尿素化合物、p-クロロ安息香酸、没食子酸ステアリル、ビス[4-(n-オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸亜鉛]2水和物、3、5-ジ(α-メチルベンジル)サリチル酸、4-[2-(p-メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸、4-[3-(p-トリルスルホニル)プロピルオキシ]サリチル酸、5-[p-(2-p-メトキシフェノキシエトキシ)クミル]サリチル酸の芳香族カルボン酸、およびこれらの芳香族カルボン酸の亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属塩との塩、さらにはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テレフタルアルデヒド酸と他の芳香族カルボン酸との複合亜鉛塩等が挙げられる。このほか、特開平10-258577号公報記載の高級脂肪酸金属複塩や多価ヒドロキシ芳香族化合物などの金属キレート型発色成分を含有することもできる。
【0017】
本発明において、デキストリンと各種バインダーとを併用してもよい。併用できるバインダーとしては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体並びにエチルセルロース、アセチルセルロースのようなセルロース誘導体、カゼイン、アラビヤゴム、酸化澱粉、エーテル化澱粉、ジアルデヒド澱粉、エステル化澱粉、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリスチロースおよびそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂などを例示することができる。これらの高分子物質は水、アルコール、ケトン類、エステル類、炭化水素などの溶剤に溶かして使用するほか、水又は他の媒体中に乳化又はペースト状に分散した状態で使用し、要求品質に応じて併用することもできる。本発明においてデキストリンと併用するバインダーとして、ポリビニルアルコールが好ましく、完全ケン化ポリビニルアルコールがより好ましい。
【0018】
顕色剤層中のバインダー(デキストリンを含む)の含有量(固形分重量)は、通常8~25重量%、好ましくは10~20重量%である。
本発明において、顕色剤層中のデキストリンの含有量(固形分重量)は、顕色剤層の全固形分100重量部に対して3~30重量部であることが好ましく、5~25重量部であることがより好ましく、10~20重量部であることがさらに好ましく、9~20重量部であることが最も好ましい。デキストリンの配合量が30重量部以上の場合、発色性が不足し、3部以下の場合、十分な表面強度が得られない。
顕色剤層中に、デキストリンと他のバインダーを併用してもよい。顕色剤層中のデキストリンの含有量(固形分重量)は、顕色剤層中の全バインダー(デキストリンと他の各種バインダーの合計)100重量部に対して、5~100重量部が好ましく、20~95重量部がより好ましく、20~90重量部がさらに好ましく、25~90重量部がよりさらに好ましく、30~90重量部が最も好ましく、40~75重量部としてもよい。
またデキストリンとポリビニルアルコールを併用する場合、本発明中のポリビニルアルコールの含有量(固形分重量)は、顕色剤層中の全バインダー100重量部に対して、5~25重量部が好ましく、10~20重量部がより好ましい。
【0019】
本発明の感圧複写紙が、支持体の同一面に前記マイクロカプセル層と前記顕色剤層を積層、又は同一層に前記マイクロカプセルと前記顕色剤を混在させたセルフコンティンド紙の場合、本発明のマイクロカプセルで使用される各種材料として、マイクロカプセルの壁膜材料、ロイコ染料、カプセルオイルなどを例示することができる。
【0020】
本発明においては、マイクロカプセルの壁膜材料として、従来の感圧あるいは感熱記録紙の分野で公知のものはすべて使用可能であり、特に制限されるものではないが、メラミン-ホルムアルデヒド縮重合物、またはウレタン・ウレア-イソシアネート縮重合物を壁膜材料とすることが好ましい。
【0021】
また、ロイコ染料は、従来の感圧あるいは感熱記録紙の分野で公知のものを使用可能であり、特に制限されるものではない。
青染料として使用できるものとして、例えば、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチル-3-インドリル)フタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチル-3-インドリル)フタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチル-3-インドリル)-4-アザフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチル-3-インドリル)-4-アザフタリド、N-n-ブチル-3-[4,4'-ビス(N-メチルアニリノ)ベンズヒドリル]カルバゾール等が挙げられる。
黒染料として使用できるものとして、例えば、2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-ジ-n-アミルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-メチル-N-n-プロピルアミノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-[N-エチル-N-(3-エトキシプロピル)アミノ]フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-4-メチルアニリノ)フルオラン、2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、3,7-ビスジメチルアミノベンゾイルフェノチアジン、3-N-エチル-N―イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン等が挙げられる。
【0022】
ロイコ染料を溶解または分散状態で含有するカプセルオイルとしては、例えば、フェニルキシリルエタン、ジアリールエタン、ジイソプロピルナフタレン、モノイソプロピルビフェニル、イソブチルビフェニル、部分水素添加ターフェニル、塩素化パラフィン、飽和炭化水素、フタル酸エステルなどが使用できる。
【0023】
さらに、マイクロカプセルが破壊されないように保護するために、ステー剤をマイクロカプセル層に含有させることが好ましい。本発明に使用されるステー剤としては、例えば、澱粉粒、セルロース繊維、天然高分子の微粒子などが挙げられる。ステー剤の粒子径はマイクロカプセルの粒子径の1.5~4倍のものが好ましい。1.5倍より小さいとステー剤による保護が十分でないことがある。また、4倍より大きいと、ステー剤による保護が過剰となり、発色能力が低下することがある。
【0024】
本発明のマイクロカプセルは、例えば、コアセルベーション法、界面重合法、in-situ法など、公知の方法で作製することができる。本発明で用いられるロイコ染料は、カプセルオイルに溶解または分散した状態で芯物質としてマイクロカプセルに内包される。
【0025】
本発明において、必要に応じて、顕色剤層に顔料を含有させることができる。顔料としてはカオリン、(焼成)カオリン、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明において、必要に応じて顕色剤層に架橋剤を添加することが可能である。架橋剤としては、グリオキザール、メチロールメラミン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、ホウ砂、ホウ酸、ミョウバン、塩化アンモニウムなどを例示することができる。
【0027】
本発明において、必要に応じて顕色剤層に滑材を添加することが可能である。滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ワックス類、シリコーン樹脂類などが挙げられる。
【0028】
また、本発明においては、上記課題に対する所望の効果を阻害しない範囲で、記録画像の耐油性効果などを示す画像安定剤として、4,4'-ブチリデン(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2'-ジ-t-ブチル-5,5'-ジメチル-4,4'-スルホニルジフェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4-ベンジルオキシ-4'-(2,3-エポキシ-2-メチルプロポキシ)ジフェニルスルホン等を添加することもできる。
【0029】
このほかにも、ベンゾフェノン系やトリアゾール系の紫外線吸収剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、蛍光染料等、感圧複写紙に添加することが知られている各種添加剤を本発明において使用することができる。
【0030】
本発明において、顕色剤並びに必要に応じて添加する材料は、ボールミル、アトライター、サンドグライダーなどの粉砕機あるいは適当な乳化装置によって数ミクロン以下の粒径になるまで微粒化し、バインダーおよび目的に応じて各種の添加材料を加えて塗液とすることができる。粒径(平均粒子径)は、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましい。この塗液に用いる溶媒としては、水あるいはアルコール、それらの混合溶媒等を用いることができる。
【0031】
本発明の感圧複写紙は、常法に従って製造することができる。例えば、顕色剤を顔料とともにバインダー中に分散するなどの方法で調製された塗液を、上質紙、再生紙、合成紙などからなる支持体上に塗工・乾燥することによって、支持体上に顕色剤層を有する感圧複写紙が得られる。支持体上に顕色剤層を設ける方法は特に限定されるものではなく、例えば、エアナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、カーテンコーターなど適当な塗工装置を用いることができる。また、顕色剤層の塗工量(固形分)は2g/m~7g/m程度が一般的である。
【実施例
【0032】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。なお、デキストリンのDEはフェーリング・レーマン・ショール法によって算出した。また、特にことわらない限り、部および%は重量部および重量%を示す。
【0033】
[製造例1]
白色焙焼デキストリンスラリーA~Fを、次に示す方法で作製した。
とうもろこし澱粉に、硝酸を0.5%の割合で添加混合した。得られた水分22%の澱粉を、50℃で予備乾燥し、水分5%とした。次にこの澱粉を130℃で90分間加熱し、デキストリンスラリーAを得た。
同様の作業工程で、澱粉の加熱を、それぞれ(B)130℃で85分間、(C)130℃で80分間、(D)130℃で95分間、(E)130℃で100分間、(F)130℃で50分間、として、デキストリンスラリーB~Fを得た。
【0034】
[実施例1]
サンドグラインダーにより、平均粒径2μmにした3、5-ジ(α-メチルベンジル)サリチル酸亜鉛塩の水分散液(固形分45%)22部、炭酸カルシウム90部、カオリン10部、白色焙焼デキストリンスラリーA(RVA粘度(固形分35%:蒸煮16分後の160r.p.m)910mPa・s、冷水可溶量12%、分子量182k、pH5.1、DE:8.9)57部を混合し、水で濃度調整を行い固形分25%の顕色剤層用塗工液を得た。
この塗工液を坪量40g/mの上質紙上に固形塗工量で5g/mとなるようにブレードコーターで塗工、乾燥し、感圧複写紙を得た。
[実施例2]
白色焙焼デキストリンスラリーAの代わりに、白色焙焼デキストリンスラリーB(RVA粘度930mPa・s、冷水可溶量12%、分子量185k、pH5.0、DE:8.8)を配合した以外は実施例1と同様にして感圧複写紙を得た。
【0035】
[実施例3]
白色焙焼デキストリンスラリーAの代わりに、白色焙焼デキストリンスラリーC(RVA粘度965mPa・s、冷水可溶量12%、分子量188k、pH6.0、DE:8.2)を配合した以外は実施例1と同様にして感圧複写紙を得た。
[実施例4]
白色焙焼デキストリンスラリーA57部の代わりに、白色焙焼デキストリンスラリーB43部および完全ケン化ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA117)水溶液(固形分10%)50部を配合した以外は実施例2と同様にして感圧複写紙を得た。
[実施例5]
白色焙焼デキストリンスラリーB57部の代わりに、白色焙焼デキストリンスラリーB28部および酸化澱粉(王子コーンスターチ社製、商品名:王子エースB)水溶液(固形分20%)50部を配合した以外は実施例2と同様にして感圧複写紙を得た。
[実施例6]
白色焙焼デキストリンスラリーB57部の代わりに、白色焙焼デキストリンスラリーB28部およびスチレン-ブタジエン共重合体エマルジョン(旭化成ケミカルズ社製、商品名:F-1766F、固形分50%)50部を配合した以外は実施例2と同様にして感圧複写紙を得た。
【0036】
[実施例7]
白色焙焼デキストリンスラリーAの代わりに、白色焙焼デキストリンスラリーD(RVA粘度880mPa・s、冷水可溶量11.5%、分子量168k、pH5.0、DE:6.0)を配合した以外は実施例1と同様にして感圧複写紙を得た。
[実施例8]
白色焙焼デキストリンスラリーAの代わりに、白色焙焼デキストリンスラリーE(RVA粘度854mPa・s、冷水可溶量11.6%、分子量155k、pH5.0、DE:9.3)を配合した以外は実施例1と同様にして感圧複写紙を得た。
【0037】
[比較例1]
白色焙焼デキストリンスラリーAの代わりに、白色焙焼デキストリンスラリーF(RVA粘度2370mPa・s、冷水可溶量12%、分子量264k、pH5.0、DE:0.6)を配合した以外は実施例1と同様にして感圧複写紙を得た。
このデキストリンスラリーは、粘度が高すぎる為、ポンプで送液できず、サンプル作製が困難であった。
[比較例2]
白色焙焼デキストリンスラリーA57部の代わりに、冷水可溶性デキストリン57部を配合した以外は、実施例1と同様にして感圧複写紙を得た。
この冷水可溶性デキストリンは、次に示す方法で作製した:とうもろこし澱粉に、硝酸を0.5%の割合で添加混合した。得られた水分22%の澱粉を、50℃で予備乾燥し、水分5%とした。次にこの澱粉を180℃で8時間加熱し、冷水可溶性デキストリン(分子量8千)を得た。
[比較例3]
白色焙焼デキストリンスラリーA57部の代わりに、完全ケン化ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA105)水溶液(固形分10%)175部および完全ケン化ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA117)水溶液(固形分10%)25部を配合した以外は実施例1と同様にして感圧複写紙を得た。
【0038】
[比較例4]
白色焙焼デキストリンスラリーA57部の代わりに、酵素変性澱粉57部を配合した以外は、実施例1と同様にして感圧複写紙を得た。
この酵素変性澱粉は、次に示す方法で作製した:とうもろこし澱粉製造工程における澱粉乳液をボーメ20度の濃度に調整した。次いで、消石灰を加えてpHを6~7に調整した。これにα―アミラーゼを対澱粉に約0.3重量%添加し、約90℃で30分間加熱糊化し、酵素液化反応を行った。反応の終了後、125℃まで加圧・加熱し酵素を不活性化した。得られた酵素変性澱粉含有の駅を噴霧乾燥し、20メッシュの篩で凝塊物を除去して、DEが5の酵素変性澱粉を得た。
[比較例5]
白色焙焼デキストリンスラリーAの代わりに、白色焙焼デキストリンスラリーG(RVA粘度220mPa・s、冷水可溶量14%、分子量90k、pH5.0)を配合した以外は実施例1と同様にして感圧複写紙を得た。
【0039】
作成した感圧複写紙を以下のように評価した。
(1)発色能力
作製した感圧複写紙の顕色剤層面の上に市販の上用紙NW40T(日本製紙製)のマイクロカプセル層面を重ね合わせ、ドットインパクトプリンター(エプソン社製)で全面に印字して、1時間後の発色濃度をハンター白色度計(アンバーフィルター使用)で測定した。値が小さい程発色能力が高く、一般に数値が20以下であれば実用上大きな問題は無い。
【0040】
(2)印刷強度
作製した感圧複写紙について、プリューフバウ印刷機を用いて顕色剤層面上に下表の条件にてベタ印刷を行い、印刷強度を評価した。
【表1】
【0041】
印刷強度は、ベタ印刷部の剥け(インキのタック(粘着性)により顕色剤層が引き剥がされること)を目視で観察し、下記の基準により4段階で評価した。
良 :剥けが見られない。
可 :剥けが僅かに見られる。
不可 :剥けが見られる。
評価不能:ベタ印刷部の全面が剥ける。
【0042】
評価結果を表2に示す。
【表2】
この表から明らかなように、本発明の感圧複写紙は発色性に優れ、高速での印刷強度が良好である。
【要約】
発色性に優れ、高速印刷時に印刷強度の強い感圧複写紙を提供する。支持体上に顕色剤層を設けた感圧複写紙であって、該顕色剤層がデキストリンを含有し、該デキストリンの分子量が150k~200kであり、デキストロース当量(DE)が4.0~15.0である感圧複写紙である。また、このデキストリンのRVA粘度は850~1200mPa・sであることが好ましい。
【選択図】 なし