(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】インクジェット印刷のためのパルス波形
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20231027BHJP
【FI】
B41J2/015 101
(21)【出願番号】P 2022102759
(22)【出願日】2022-06-27
(62)【分割の表示】P 2021525196の分割
【原出願日】2019-08-14
【審査請求日】2022-06-27
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514210005
【氏名又は名称】ランダ コーポレイション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002723
【氏名又は名称】高法弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カーリンスキ,ハガイ
(72)【発明者】
【氏名】カステル,イシャイ
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-051214(JP,A)
【文献】特開2011-183550(JP,A)
【文献】特開2013-107235(JP,A)
【文献】特開2000-127458(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130695(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0328882(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル印刷システムであって、
インク液滴を噴射するように構成された、印刷ヘッドと、
プロセッサであって、
パルスを全く伴わない時間セクションと、
直前のセクションが駆動パルスを有するかまたはパルスを全く有しないかどうかにかかわらず、前記印刷ヘッドにそれぞれの液滴を噴射させる振幅を有する駆動パルスを伴う時間セクションと、
前記駆動パルスよりも小さい振幅を有し、かつ、直前のセクション内の駆動パルスに続いて印加されるときには、前記印刷ヘッドに液滴を噴射させる一方で、もしパルスを全く伴わないセクションの直後に印加されれば、前記印刷ヘッドに液滴を噴射させないようになっている、くすぐりパルスを伴う時間セクションと、
で形成された信号を前記印刷ヘッドに印加するように構成される、プロセッサと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記駆動パルスおよび前記くすぐりパルスは同じ時間分を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記印刷ヘッドの噴射チャネル内部のインクにおける圧力波の共振周波数と一致するように、駆動パルスを伴う前記時間セクションのうち少なくとも1つの時間分を設定するように構成される、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記インクの種類に応答して、駆動パルスを伴う前記時間セクションのうち少なくとも1つの時間分を設定するように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサによって印加された信号は複数のシーケンスで形成され、各シーケンスは、前記印刷ヘッドによって基板上の所与の位置に印刷されることになる、必要な色合いに対応する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記複数のシーケンスのうち1つ以上に前記くすぐりパルスを印加するように構成され、前記くすぐりパルスが印加される各シーケンスにおいて、前記くすぐりパルスは前記シーケンスの終わりに印加される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記くすぐりパルスは、駆動パルスの後に印加されるときに、前記駆動パルスに応答して噴射された液滴よりも小さい液滴を前記印刷ヘッドに噴射させる振幅を有する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項8】
デジタル印刷方法であって、
インク液滴を噴射する印刷ヘッドに、
パルスを全く伴わない時間セクションと、
直前のセクションが駆動パルスを有するかまたはパルスを全く有しないかどうかにかかわらず、前記印刷ヘッドにそれぞれの液滴を噴射させる振幅を有する駆動パルスを伴う時間セクションと、
前記駆動パルスよりも小さい振幅を有し、かつ、直前のセクション内の駆動パルスに続いて印加されるときには、前記印刷ヘッドに液滴を噴射させる一方で、もしパルスを全く伴わないセクションの直後に印加されれば、前記印刷ヘッドに液滴を噴射させないようになっている、くすぐりパルスを伴う時間セクションと、
で形成された信号を印加すること
を備える、方法。
【請求項9】
前記駆動パルスおよび前記くすぐりパルスは同じ時間分を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
駆動パルスを伴う前記時間セクションのうち少なくとも1つの時間分は、前記印刷ヘッドの噴射チャネル内部のインクにおける圧力波の共振周波数と一致する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
駆動パルスを伴う前記時間セクションのうち少なくとも1つの時間分は、前記インクの種類に応答して設定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記信号を印加することは、複数のシーケンスで形成された信号を印加することを備え、各シーケンスは、前記印刷ヘッドによって基板上の所与の位置に印刷されることになる、必要な色合いに対応する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項13】
前記くすぐりパルスが印加される各シーケンスにおいて、前記くすぐりパルスは前記シーケンスの終わりに印加される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記くすぐりパルスは、駆動パルスの後に印加されるときに、前記駆動パルスに応答して噴射された液滴よりも小さい液滴を前記印刷ヘッドに噴射させる振幅を有する、請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にデジタル印刷に関し、特に、インクジェット印刷ヘッドを駆動するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野において、印刷用のインクを噴射するための様々な方法が知られている。たとえば、米国特許出願公開第2006/0164450号は、複数のインクジェットを有するインクジェットモジュールを駆動する方法を説明する。この方法は、インクジェットモジュールに、第1のパルスおよび第2のパルスを含む電圧波形を印加することと、第1のパルスの印加と同時にインクジェットの1または複数を作動させ、作動された各インクジェットが第1のパルスに応答して流体液滴を吐出することと、液滴を吐出することなく第2のパルスの印加と同時に全てのインクジェットを作動させることとを含む。
【0003】
他の例として、米国特許出願公開第2007/0057979号は、様々な元素組成を有する流体の展開を容易にするための方法およびシステムを説明する。グラフィカルユーザインタフェースは、複数のノズルを通る流体の流体液滴吐出を制御するために実験室配置システムとのユーザインタラクションを可能にする。流体液滴吐出および液滴生成は、流体ごとに変動し、複数のノズルに印加される駆動パルスの波形パラメータへの調整を必要とし得る。このシステムは、流体液滴が複数のノズルから出ると同時に流体液滴のリアルタイム静止およびビデオ画像を捕捉するための液滴観測カメラシステムを実装する。流体液滴の捕捉液滴形成がユーザに表示される。画像に基づいて、波形パラメータは、個々の流体に特化して調整およびカスタマイズされる。流体液滴吐出をもたらす駆動パルスの調整に加えて、くすぐりパルスもまた、ノズルの閉塞を防止するために調整およびカスタマイズされ得る。
【0004】
米国特許第9,272,511号は、マルチパルス波形を有する液滴吐出デバイスを駆動するための方法、装置、およびシステムを説明する。1つの実施形態において、アクチュエータを有する液滴吐出デバイスを駆動するための方法は、少なくとも1つの駆動パルスを有する液滴発射部分および非液滴発射部分を有するマルチパルス波形を液滴吐出デバイスに印加することを含む。非液滴発射部分は、液滴整流機能を有する噴射整流エッジおよびエネルギキャンセル機能を有する少なくとも1つのキャンセルエッジを含む。駆動パルスは、液滴吐出デバイスに、流体液滴を吐出させる。
【0005】
米国特許第7,988,247号は、インクジェットプリンタのインクチャンバからインクを吐出させるための方法を説明し、この方法は、第1のインク塊をインクチャンバから押し出させることと、選択された間隔の経過後、第2のインク塊をインクチャンバから押し出させることとを含む。間隔は、チャンバの基本共振周波数の往復よりも長く、かつ、第2の塊が押し出される時に第1の塊がインクチャンバ内のインクとの接触を維持しているように選択される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、印刷ヘッドおよびプロセッサを含むデジタル印刷システムを提供する。印刷ヘッドは、インク液滴を噴射するように構成される。プロセッサは更に、印刷ヘッドによって基板上の所与の位置に印刷される必要な色合いをパルスシーケンスに変換するように構成され、シーケンスは、(a)印刷ヘッドにそれぞれの液滴を噴射させる既定の最大数までの駆動パルスと、(b)駆動パルスよりも小さな振幅を有し、印刷ヘッドに、駆動パルスに応答して噴射された前記液滴よりも小さな液滴を噴射させるくすぐりパルスとを含む。プロセッサは更に、パルスシーケンスを印刷ヘッドに印加するように構成される。
【0007】
いくつかの実施形態において、プロセッサは、駆動パルスおよびくすぐりパルスに関して同じ時間を設定するように構成される。
【0008】
いくつかの実施形態において、プロセッサは、シーケンス内のパルスの少なくとも1つに関して、印刷ヘッドの噴射チャネル内のインクにおける圧力波の共振周波数と一致する時間を設定するように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態において、プロセッサは、インクの種類に依存して時間を設定するように構成される。他の実施形態において、プロセッサは、噴射された液滴の最大速度をもたらすように駆動パルスの振幅を設定するように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態において、プロセッサは、シーケンスの終わりにくすぐりパルスを印加するように構成される。
【0011】
本発明の実施形態によると、インク液滴を噴射する印刷ヘッドによって基板上の所与の位置に印刷される必要な色合いを定義することを含むデジタル印刷方法が更に提供される。必要な色合いは、パルスシーケンスに変換され、シーケンスは、(a)印刷ヘッドにそれぞれの液滴を噴射させる、既定の最大数までの駆動パルスと、(b)駆動パルスよりも小さな振幅を有し、印刷ヘッドに、駆動パルスに応答して噴射された液滴よりも小さな液滴を噴射させるくすぐりパルスとを含む。パルスシーケンスは、印刷ヘッドに印加される。
【0012】
本発明の実施形態によると、インク液滴を噴射するための印刷ヘッドにパルスシーケンスを印加するデジタル印刷システムにおいて、印刷ヘッドの噴射チャネル内のインクにおける圧力波の共振周波数と一致するように、パルスに割り当てられる時間を計算することを含む製造方法が更に提供される。デジタル印刷システムは、計算された時間を適用するように構成される。
【0013】
本発明は、図面とともに参照される、以下の本発明の実施形態の詳細な説明から、より深く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るデジタル印刷システムの概略側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る、
図1のデジタル印刷システムの印刷バーの概略絵図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る、噴射サイクル中に印刷ヘッドに印加される波形を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る、4濃淡レベル印刷スキームのルックアップテーブルである。
【
図5】本発明の実施形態に係る、くすぐりパルス振幅の関数としてのレベル3くすぐり液滴体積のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概観
デジタル印刷において、適当な数の同色のインク液滴を噴射する印刷ヘッドによって、基板上の所与の位置(すなわち印刷画素)に必要な色合いが印刷され得る。印刷ヘッドは、駆動パルスに応答して、ノズルから各インク液滴を噴射する。したがって、必要な色合いは、噴射サイクル中、適当な数の同様の駆動パルスを印刷ヘッドに印加することによって実現され得る。本文脈において、「同様の」という用語は、数パーセントまでの偏差、たとえば±10%または±5%を意味する。
【0016】
一般的な印刷セッション中、いくつかのノズルは、ノズルに液滴を吐出させる駆動パルスを受信し、他のノズルは、一時的にアイドルである。液滴を吐出しないノズルおよびそれらの中のインクメニスカスは、高温環境に晒され、乾燥する傾向があり得る。インクが乾燥または粘度を増し始めると、ノズルは、新たなインクがメニスカスに到達するまで第1の液滴を発射しない。その結果、いくつかの画素は失われることがあり、ノズルが最終的に噴射した時、結果として生じる画素は歪められ(すなわち、乏しい直線度を有し)得る。極端な場合、アイドルであったノズルは、閉塞することもある。上述した「第1の液滴問題」またはレイテンシ問題、ならびに閉塞を防ぐために、噴射サイクルの終わりに「くすぐり」パルスが印加されることにより、ノズルが液滴を噴射することなくノズル内でインクを流動させ得る。
【0017】
噴射サイクルの期間は、一般に一定であり、全てのノズルに共有される。この期間は、最も濃い色合いを生成するために必要なインク液滴の数によって決定され、駆動パルスのセクション期間と、くすぐりパルスの同一セクション期間との合計である。本文脈において、「セクション」は、パルスおよびパルスの直前および/または直後のアイドル時間間隔を意味する。したがって、噴射サイクル中の特定の位置でノズルがアイドルであったかにかかわらず、噴射サイクルの期間は一定である。
【0018】
以下で説明する本発明の実施形態は、インク液滴を噴射する噴射サイクルにおいてくすぐりセクション(くすぐりパルスのために用いられる時間)を用いることによって印刷スループットを高め、それによって噴射サイクルの全体期間(すなわち、最も濃い色合いを印刷するために必要な時間)を低減するための方法およびシステムを提供する。よって、開示される技術は、液滴を噴射することおよびノズル内のインク粘度増加を防ぐことの2つの目的を同時に果たすためにくすぐりパルスを用いる。開示されるくすぐりパルスの二重の役割により、噴射サイクルは短縮され、全体印刷スループットが高められ得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、必要な色合いが印刷される所与の位置に関して、プロセッサは、必要な色合いをパルスシーケンスに変換するために、印刷ヘッドを制御する電気回路を制御する。シーケンスは、印刷ヘッドにそれぞれの液滴を噴射させる既定の最大数までの駆動パルスと、いくつかの設定において、後述するように、駆動パルスに応答して噴射された液滴よりもある程度小さな体積の液滴を印刷ヘッドに噴射させるくすぐりパルスとを備える。プロセッサは更に、パルスシーケンスを印刷ヘッドに印加するように構成される。
【0020】
他の実施形態において、印刷システムの組立て中または組立て後、専門家が、2つごとの連続するパルス間に同じ遅延を事前設定すること、および全てのパルスを同じパルス幅に事前設定することによって、全てのセクションに同じ期間を調整および事前設定する。パルス幅および遅延の値は、それらを合わせて駆動セクションの期間が、インクが使用されている印刷ヘッドの噴射チャネル内のインクにおける圧力波の共振周波数と一致する(すなわち、印刷ヘッドの噴射チャネルの流体構造共振と一致する)ように選択される。1または複数の駆動パルスによって噴射チャネル内に生じる圧力の結果、くすぐりパルスは駆動パルスよりも小さな振幅を有しながらも、印刷ヘッドに、必要な色合いを生成するのに十分な体積を有する液滴を噴射させる。
【0021】
実施形態において、印刷システムの組立て前、組立て中、または組立て後、専門家が、噴射される液体の最大速度をもたらすように駆動パルスの振幅を調整および事前設定する。
【0022】
本発明の実施形態例において、印刷システムは、システムが最大4つの色合い(たとえば白色、薄灰色、濃灰色、および黒色)を印加する4濃淡スキームで印刷する。これらの実施形態において、各噴射サイクルは、4つの色合いを生成するために、2つの駆動パルスセクションと、その後のくすぐりパルスセクションとを備える。噴射サイクルの最後のセクションにおいてインク液滴を噴射することが可能なくすぐりパルスを印加することで、そのようなくすぐりパルスを用いて、印刷システムは、可能な色合いの中で最も濃い色合い(たとえば黒色)を生成するように構成され、後述するように、印刷時間を約4分の1短縮し、対応する印刷スループットの増加を実現する。
【0023】
実施形態において、印刷ヘッドを制御する電気回路から、噴射サイクルの終わりにくすぐりパルスを受信すると、印刷ヘッドは、印刷ヘッドのノズル内のインクの動きを生じさせる。実施形態において、印刷ヘッドに、くすぐりパルスに応答してインク液滴を噴射させるために、くすぐりパルスは、少なくとも1つの隣接した駆動パルスの印加後に印加される必要がある。一般に、印加される駆動パルスのシーケンスに依存して、また、くすぐりパルスが印加されるセクションの直前のセクションで任意の駆動パルスが印加されるかに依存して、後述するように、印刷ヘッドは、くすぐりパルスに応答してインク液滴を噴射してよく、または噴射しなくてよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、くすぐりパルスによって噴射されるインク液滴の体積を調整することによって、後述するように、開示される技術は、無支持の長い基板セグメントにわたる改善された印刷品質を実現する。
【0025】
くすぐりセクション中にインク液滴を噴射することを可能にすることによって、開示される技術は、デジタル印刷システムのスループットを高め、印刷ハードウェアのコストを低減することにより、印刷の全体コストを低減する。
システム説明
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係るデジタル印刷システム10の概略側面図である。いくつかの実施形態において、システム10は、画像形成ステーション60、乾燥ステーション64、インプレッションステーション84、およびブランケット処理ステーション52を循環する回転可撓性ブランケット44を備える。本発明の文脈および特許請求の範囲において、「ブランケット」および「中間転写部材(ITM)」という用語は相互置換性を持って用いられ、以下で詳しく説明するように、インク画像を受け取り標的基板にインク画像を転写するように構成された中間部材として用いられる1または複数の層を備える可撓性部材を指す。
【0027】
動作モードにおいて、画像形成ステーション60は、ブランケット44の表面の上側ランに、本明細書において「インク画像」とも称される、デジタル画像42のミラーインク画像(不図示)を形成するように構成される。その後、インク画像は、ブランケット44の下側ランの下に位置する標的基板(たとえば紙、折り畳み箱、またはシートまたは連続ウェブ形状を成す任意の適当な可撓性パッケージ)に転写される。
【0028】
本発明の文脈において、「ラン」という用語は、ブランケット44が上でガイドされる任意の2つの所与のローラ間にある、ブランケット44の長さまたはセクションを指す。
【0029】
いくつかの実施形態において、設置中、ブランケット44は、連続ブランケットループ(不図示)を形成するように端部と端部とが接着され得る。継目を設けるための方法およびシステムの例は、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第62/532,400号において詳しく説明される。
【0030】
いくつかの実施形態において、画像形成ステーション60は一般に、ブランケット44の上側ランの表面より上の一定の高さに位置するフレーム(不図示)に各々が(たとえばスライダを用いて)取り付けられた複数の印刷バー62を備える。いくつかの実施形態において、各印刷バー62は、ブランケット44における印刷面積と同じ幅の印刷ヘッドストリップを備え、個々に制御可能な印刷ノズルを備える。
【0031】
いくつかの実施形態において、画像形成ステーション60は、任意の適当な数のバー62を備えてよく、各バー62は、たとえば様々な色の水性インクなどの印刷流体を含んでよい。インクは一般に、限定はされないがたとえばシアン、マゼンタ、赤色、緑色、青色、黄色、黒色、および白色などの可視色を有する。
図1の例において、画像形成ステーション60は7つの印刷バー62を備えるが、たとえば、シアン、マゼンタ、黄色、および黒色などの任意の選択された色を有する4つの印刷バー62を備えてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、印刷ヘッドは、ブランケット44の表面にインク画像(不図示)を形成するために、ブランケット44の表面に様々な色のインク液滴を噴射するように構成される。
【0033】
いくつかの実施形態において、様々な印刷バー62は、矢印94で示すように、ブランケット44の移動軸に沿って互いに離間する。この構成において、バー62間の正確な離間、および各バー62のインク液滴の方向付けと移動するブランケット44との同期は、画像パターンの正確な配置を可能にするために不可欠である。
【0034】
本開示の文脈および特許請求の範囲において、「色間パターン配置」、「パターン配置精度」、「色対色レジストレーション」、「C2Cレジストレーション」、「バー対バーレジストレーション」、および「色レジストレーション」という用語は相互置換性を持って用いられ、2つ以上の色の互いに対する任意の配置精度を指す。
【0035】
いくつかの実施形態において、システム10は、印刷バー62間に位置し、ブランケット44の表面に堆積したインク画像を部分的に乾燥するように構成された、たとえば高温ガスまたは空気送風器66などの加熱器を備える。印刷バー間のこの高温空気流は、たとえば、印刷ヘッドの表面における凝縮の軽減および/または付随物(たとえば主要なインク液滴の周囲に散った残余物または小液滴)の処理、および/または印刷ヘッドのインクジェットノズルの閉塞の防止、および/またはブランケット44上の様々な色のインク液滴が不所望に混じり合うことの防止に役立ち得る。いくつかの実施形態において、システム10は、ブランケット44の表面に高温空気(または他のガス)を吹き付けるように構成された乾燥ステーション64を備える。いくつかの実施形態において、乾燥ステーションは、送風器68または他の任意の適当な乾燥装置を備える。
【0036】
乾燥ステーション64において、ブランケット44上に形成されたインク画像は、より完全にインクを乾燥し、液体キャリアの大半または全てを蒸発させて、高粘度インクフィルムとなる点まで加熱される樹脂および着色剤の層のみを残すために、放射線および/または高温空気に晒される。
【0037】
いくつかの実施形態において、システム10は、たとえばブランケット44などの回転ITMを備えるブランケットモジュール70を備える。いくつかの実施形態において、ブランケットモジュール70は、1または複数のローラ78を備え、ローラ78の少なくとも1つは、それぞれの印刷バー62に対するブランケット44のセクションの位置を制御するためにブランケット44の位置を記録するように構成されたエンコーダ(不図示)を備える。いくつかの実施形態において、ローラ78のエンコーダは一般に、それぞれのローラの角変位を示すロータリベース位置信号を生成するように構成されたロータリエンコーダを備える。
【0038】
追加または代替として、ブランケット44は、システム10の様々なモジュールの動作を制御するための統合エンコーダ(不図示)を備えてよい。統合エンコーダは、たとえば、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第62/689,852号において詳しく説明される。
【0039】
いくつかの実施形態において、ブランケット44は、ローラ76および78、および本明細書においてダンサ74とも称される動力付き張架ローラの上でガイドされる。ダンサ74は、ブランケット44におけるたるみの長さを制御するように構成され、その動きは、両頭矢印によって図示される。また、経年によるブランケット44のあらゆる延伸は、システム10のインク画像配置性能に影響を及ぼすことはなく、張架ダンサ74によってより多くのたるみを巻き取ることを必要とするのみである。
【0040】
いくつかの実施形態において、ダンサ74は、モータ駆動であってよい。ローラ76および78、およびダンサ74の構成および動作は、たとえば、その開示が全て参照によって本明細書に組み込まれる米国出願公開第2017/0008272号および上述したPCT国際公開WO2013/132424号において更に詳しく説明される。
【0041】
インプレッションステーション84において、ブランケット44は、インプレッションシリンダ82と、圧縮性ブランケットを搬送するように構成された圧力シリンダ90との間を通過する。
【0042】
いくつかの実施形態において、システム10は、たとえばブランケットモジュール70、ブランケットモジュール70の上に位置する画像形成ステーション60、およびブランケットモジュール70の下に位置する基板搬送モジュール80といったシステム10の複数のモジュールを制御するように構成された制御コンソール12を備える。
【0043】
いくつかの実施形態において、コンソール12は、ケーブル57を介してコントローラ54とインタフェース接続し、そこから信号を受信するための適当なフロントエンドおよびインタフェース回路を有する、一般に汎用コンピュータであるプロセッサ20を備える。いくつかの実施形態において、単一のデバイスとして図示されたコントローラ54は、所定の位置においてシステム10に取り付けられた1または複数の電子モジュールを備えてよい。コントローラ54の電子モジュールの少なくとも1つは、システム10の様々なモジュールおよびステーションを制御するように構成された、たとえば制御回路またはプロセッサ(不図示)などの電子デバイスを備えてよい。いくつかの実施形態において、プロセッサ20および制御回路は、印刷システムによって用いられる機能を実行し、メモリ22にソフトウェアのためのデータを格納するために、ソフトウェアにプログラムされ得る。ソフトウェアは、たとえばネットワークを介して、電子形式でプロセッサ20および制御回路にダウンロードされてよく、あるいは、たとえば光学、磁気、または電子メモリ媒体などの非一時的有形媒体に提供され得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、コンソール12は、プロセッサ20から受信したデータおよび画像、または入力デバイス40を用いてユーザ(不図示)によって挿入された入力を表示するように構成されたディスプレイ34を備える。いくつかの実施形態において、コンソール12は、他の任意の適当な構成を有してよく、たとえば、コンソール12およびディスプレイ34の代替構成は、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第9,229,664号において詳しく説明される。
【0045】
いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、画像42の1または複数のセグメント(不図示)およびメモリ22に格納された(以下で詳しく説明する)様々な種類のテストパターンを備えるデジタル画像42をディスプレイ34に表示するように構成される。
【0046】
いくつかの実施形態において、本明細書において冷却ステーションとも称されるブランケット処理ステーション52は、たとえば、ブランケットを冷却することおよび/またはブランケット44の外側表面に処理流体を塗布すること、および/またはブランケット44の外側表面を洗浄することによって、ブランケットを処理するように構成される。ブランケット処理ステーション52において、ブランケット44の温度は、ブランケット44が画像形成ステーション60へ入る前に所望の値まで低減され得る。この処理は、ブランケットの外側表面に冷却および/または洗浄および/または処理流体を塗布するために構成された1または複数のローラまたはブレードの上でブランケット44を移動させることによって実行され得る。いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、ブランケット44の温度を監視し、ブランケット処理ステーション52の動作を制御するために、たとえば温度センサ(不図示)から、ブランケット44の表面温度を示す信号を受信するように構成される。そのような処理ステーションの例は、たとえば、その開示が全て参照によって本明細書に組み込まれるPCT国際公開WO2013/132424号およびWO2017/208152号において説明される。
【0047】
追加または代替として、処理流体は、画像形成ステーションにおけるインク噴射の前に、噴射によって塗布され得る。
【0048】
図1の例において、ステーション52は、ローラ78とローラ76との間に取り付けられるが、ステーション52は、インプレッションステーション84と画像形成ステーション60との間の他の任意の適当な位置においてブランケット44に隣接して取り付けられ得る。
【0049】
図1の例において、インプレッションシリンダ82は、インプレッションシリンダ82を介して入力スタック86から出力スタック88へ基板搬送モジュール80によって運搬される、たとえば個々のシート50などの標的可撓性基板にインク画像を押し付ける。
【0050】
いくつかの実施形態において、ブランケット44の下側ランは、圧力シリンダ90の圧力の働きによってブランケット44とインプレッションシリンダ82との間で圧縮された標的可撓性基板に画像パターンを押し付けるために、インプレッションステーション84とインプレッションシリンダ82とを選択的に相互作用させる。
図1に示す片面(すなわちシート50の片面に印刷する)プリンタの場合、1つのインプレッションステーション84のみが必要である。
【0051】
他の実施形態において、モジュール80は、両面印刷を可能にするために2つのインプレッションシリンダを備えてよい。この構成は、両面印刷の印刷速度の2倍で片面印刷を行うことも可能にする。加えて、片面印刷および両面印刷の混合ロットも印刷され得る。代替実施形態において、連続ウェブ基板に印刷するために異なる構成のモジュール80が用いられ得る。両面印刷システムおよび連続ウェブ基板に印刷するためのシステムの詳しい説明および様々な構成は、たとえば、その開示が全て参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第9,914,316号および第9,186,884号、PCT国際公開WO2013/132424号、米国特許出願公開第2015/0054865号、および米国仮特許出願第62/596,926号において提供される。
【0052】
簡単に上述したように、シート50または連続ウェブ基板(不図示)は、入力スタック86からモジュール80によって搬送され、インプレッションシリンダ82と圧力シリンダ90との間にあるニップ(不図示)を通過する。ニップ内で、インク画像を搬送するブランケット44の表面は、たとえば圧力シリンダ90の圧縮性ブランケット(不図示)によって、シート50にしっかりと押圧され、それによってインク画像がシート50の表面に押し付けられ、ブランケット44の表面から綺麗に分離する。その後、シート50は、出力スタック88へ搬送される。
【0053】
図1の例において、ローラ78は、ブランケット44の上側ランに位置し、画像形成ステーション60の隣を通過する時のブランケット44の緊張を維持するように構成される。また、インク液滴の正確な噴射および堆積を得ることにより、形成ステーション60によるブランケット44の表面へのインク画像の正確な配置を得るために、画像形成ステーション60の下でのブランケット44の速度を制御することが特に重要である。
【0054】
いくつかの実施形態において、インプレッションシリンダ82は、移動するブランケット44から、ブランケット44とインプレッションシリンダ82との間を通過する標的基板へインク画像を転写するために、ブランケット44と周期的に係合および係合解除される。いくつかの実施形態において、システム10は、上側ランの緊張を維持し、ブランケット44の上側ランを、下側ランに生じるあらゆる機械的振動によって影響されないように実質的に隔離するために、上述したローラおよびダンサを用いてブランケット44にトルクを付加するように構成される。
【0055】
いくつかの実施形態において、システム10は、システム10に統合された閉ループ検査システムとしての機能を果たす、本明細書において自動品質管理(AQM)システムとも称される画像品質制御ステーション55を備える。いくつかの実施形態において、ステーション55は、
図1に示すようにインプレッションシリンダ82に隣接した位置にあってよく、またはシステム10内の他の任意の適当な位置にあってよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、ステーション55は、シート50に印刷された上述のインク画像の1または複数のデジタル画像を取得するように構成されたカメラ(不図示)を備える。いくつかの実施形態において、カメラは、たとえば小型画像センサ(CIS)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画像センサなどの任意の適当な画像センサと、約1メートルの幅または他の任意の適当な幅を有するスリットを備えるスキャナとを備えてよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、ステーション55は、シート50に印刷されたインクの品質を監視するように構成された分光光度計(不図示)を備えてよい。
【0058】
いくつかの実施形態において、ステーション55によって取得されたデジタル画像は、それぞれの印刷画像の品質を査定するように構成された、たとえばプロセッサ20またはステーション55の他の任意のプロセッサなどのプロセッサへ送信される。査定およびコントローラ54から受信した信号に基づいて、プロセッサ20は、システム10のモジュールおよびステーションの動作を制御するように構成される。
【0059】
いくつかの実施形態において、ステーション55は、限定されないがたとえばシート50とのフル画像レジストレーション、色対色レジストレーション、印刷ジオメトリ、画像均一性、色のプロファイルおよび直線性、および印刷ノズルの機能性といった様々な属性を監視するために、印刷画像およびテストパターンの品質を検査するように構成される。いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、上述した属性の1または複数における幾何学的歪みまたは他のエラーを自動的に検出するように構成される。たとえばプロセッサ20は、所与のデジタル画像の設計バージョンと、カメラによって取得される所与の画像の印刷バージョンのデジタル画像とを比較するように構成される。
【0060】
他の実施形態において、プロセッサ20は、たとえばテストパターンンに、上述したエラーを示す歪みを検出するために、任意の適当な種類の画像処理ソフトウェアを適用してよい。いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、検出した歪みを補償するために、動作不良のモジュールに補正処置を適用するため、および/またはシステム10の他のモジュールまたはステーションへ命令を供給するために、検出した歪みを分析するように構成される。
【0061】
いくつかの実施形態において、シート50のベベルに印刷されたテストマークの画像を取得することによって、ステーション55は、たとえばC2Cレジストレーション、画像対基板レジストレーション、本明細書において「バー対バー幅デルタ」または「色対色幅差」と称される色間の異なる幅、様々な種類の局所的歪み、および(両面印刷における)表面対裏面レジストレーションエラーといった様々な種類の歪みを測定するように構成される。いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、(i)第1の既定の閾値セットを超過する歪みを有するシート50を廃棄トレイ(不図示)へ分類し、(ii)第2のより低い既定の閾値セットを超過する歪みを有するシート50のための補正処置を開始し、(iii)たとえば第2の閾値セットを下回るわずかな歪みを有するシート50を出力スタック88へ出力するように構成される。
【0062】
いくつかの実施形態において、プロセッサ20は更に、たとえば印刷された検査マークのパターンを分析することによって、ブランケット44の移動軸と平行な軸および直交する軸の少なくとも1つにおいて形成された、たとえば拡大または縮小、斜行、または波形歪みなどの追加の幾何学的歪みを検出するように構成される。
【0063】
いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、画像形成ステーション60のノズルを監視するために、ステーション55によって取得された信号を分析するように構成される。ステーション60の各色のテストパターンを印刷することによって、プロセッサ20は、それぞれのノズルの動作における動作不良を示す様々な種類の欠陥を識別するように構成される。
【0064】
たとえば、テストパターンにおける指定位置でのインクの欠如は、欠損または閉塞したノズルを示す。印刷パターンの(元の設計に対する)ずれは、それぞれの印刷バー62またはそれぞれの印刷バーの1または複数のノズルの不正確な配置を示す。テストパターンの印刷特徴の不均一な厚さは、上でバー対バー幅デルタと称された、それぞれの印刷バー62間の幅差を示す。
【0065】
いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、ステーション55の分光光度計から受信した信号に基づいて、印刷色のプロファイルおよび直線性における偏向を検出するように構成される。
【0066】
いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、ステーション55によって取得された信号に基づいて、様々な種類の欠陥、(i)たとえばスクラッチ、ピンホール、およびエッジ欠けといった基板(たとえばブランケット44および/またはシート50)における欠陥、および(ii)たとえば不規則な色斑点、付随物、および飛び散りといった印刷関連の欠陥を検出するように構成される。
【0067】
いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、印刷画像のセクションと、本明細書においてマスタとも称されるオリジナル設計のそれぞれの参照セクションとを比較することによって、これらの欠陥を検出するように構成される。プロセッサ20は更に、欠陥を分類し、分類および既定の基準に基づいて、特定の既定の基準の範囲内でない欠陥を有するシート50を廃棄するように構成される。
【0068】
いくつかの実施形態において、ステーション55のプロセッサは、たとえば欠陥の密度が特定の閾値を超過する場合、システム10の動作を停止するかを判断するように構成される。ステーション55のプロセッサは更に、上述したように、システム10のモジュールおよびステーションの1または複数において補正処置を開始するように構成される。補正処置は、オンザフライで(システム10が印刷プロセスを継続したまま)、あるいは印刷動作を停止し、システム10のそれぞれのモジュールおよび/またはステーションにおける問題を解決することによってオフラインで実行され得る。他の実施形態において、システム10の他の任意のプロセッサまたはコントローラ(たとえばプロセッサ20またはコントローラ54)が、欠陥の密度が特定の閾値を超過する場合に補正処置を開始し、またはシステム10の動作を停止するように構成される。
【0069】
追加または代替として、プロセッサ20は、たとえばステーション55から、システム10の印刷プロセスにおける追加の種類の欠陥および問題を示す信号を受信するように構成される。これらの信号に基づいて、プロセッサ20は、パターン配置精度のレベルおよび上述されていない追加の種類の欠陥を自動的に推定するように構成される。他の実施形態において、たとえば外部(たとえばオフライン)検査システムまたは任意の種類の測定治具および/またはスキャナを用いて、シート50(または上述した他の任意の基板)に印刷されたパターンを検査するための他の任意の適当な方法が用いられてもよい。これらの実施形態において、プロセッサ20は、外部検査システムから受信した情報に基づいて、任意の適当な補正処置を開始し、および/またはシステム10の動作を停止するように構成される。
【0070】
いくつかの実施形態において、印刷ヘッドは、様々な噴射サイクル中、様々な濃淡の同じ色(たとえばグレーレベル画像)を形成するために、ブランケット44の上の同じ位置に様々な数の同じ色合いのインク液滴を噴射するように構成される。インク液滴は、たとえばプロセッサ20などのプロセッサによって指示されたように、画像形成ステーション60から受信した駆動パルスに応じて噴射される。
【0071】
実施形態において、各印刷ヘッドを制御する電気回路(不図示)から、噴射サイクルの終わりにくすぐりパルスを受信すると、印刷ヘッドは、印刷ヘッドのノズル内のインクの動きを生じさせる。パルス幅の値および駆動パルス間の遅延に依存して、また、くすぐりパルスが印加されるセクションの直前のセクションで駆動パルスが印加されるか否かに依存して、後述するように、印刷ヘッドは、くすぐりパルスに応答してインク液滴を噴射してよく、または噴射しなくてよい。
【0072】
本発明の文脈および特許請求の範囲において、「プロセッサ」という用語は、たとえばメモリに格納された波形を適用するためにルックアップテーブルを読み取り、それに従って直接または間接的に印刷ヘッドにインク噴射を指示するように構成された、画像形成ステーション60と接続または統合された、たとえばプロセッサ20またはシステム10内の他の任意のプロセッサまたはコントローラなどの任意の処理ユニットまたはコントローラを指す。ただし、本明細書で説明される制御関連命令および他の演算動作は、単一のプロセッサによって実行され、あるいは1または複数のそれぞれのコンピュータの複数のプロセッサ間で共有され得る。
【0073】
システム10の構成は、本発明を明確にするために単に例として簡略化され提供される。上述の印刷システム10において説明したモジュールおよびステーションおよび追加の構成要素および構成は、たとえば、その開示が全て参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第9,327,496号および第9,186,884号、PCT国際公開WO2013/132438号、WO2013/132424号、およびWO2017/208152号、米国特許出願公開第2015/0118503号および第2017/0008272号において詳しく説明される。
【0074】
システム10の特定の構成は、本発明の実施形態によって対処される特定の問題を例示し、そのようなシステムの性能の向上におけるこれらの実施形態の適用を論証するために、例として示される。ただし、本発明の実施形態は、この特定の種類のシステム例に一切限定されず、本明細書で説明される原理は、他の任意の種類の印刷システムに同様に適用され得る。
合同噴射くすぐり波形を用いたインクジェット印刷
【0075】
図2は、本発明の実施形態に係る、
図1のデジタル印刷システム10の印刷バー62の概略絵図である。上述したように、印刷バー62は、印刷ヘッド622の、ブランケット44の印刷面積の幅に対応する幅を有するストリップを備え、個別制御可能な印刷ノズル624を更に備える。印刷バー62は、
図1において説明したように、画像形成ステーション60に含まれ得る印刷バーアレイの一部である。
【0076】
図示のように、各印刷ヘッドは、インク621で充填された噴射チャネル626を備える。パルスに応答して、印刷ヘッド(不図示)内の膜は、噴射チャネル626に沿ってインク621に伝搬する圧力波を駆動する。実施形態において、くすぐりパルスがインク液滴を噴射させることを可能にするために、パルスのパルス立上りおよびパルス立下りのタイミングは、噴射チャネル626内の圧力波を共振的に増幅させ、ノズル624の出口において最大圧力を得るように調整される。共振は基本的に、インク621における音速およびチャネル長さ628に主に依存する流体(たとえば音響)共振である。
【0077】
図3は、本発明の実施形態に係る、噴射サイクル中に印刷ヘッド622に適用される波形を示す図である。波形は、プロセッサによって指令されたように、電気回路を制御することによって適用される。いくつかの実施形態において、波形は、駆動パルスに関する複数(N-2個)のセクション625A、625B、・・・、625(N-2)、および追加としてくすぐりパルスセクション630を備え、これらは共に、最大N個の同色濃淡(たとえばN個のグレー濃淡)を生成し得る。
【0078】
たとえば上述した4濃淡スキームを有するいくつかの実施形態において、合計N=4個の濃淡を実現するために、駆動パルスのためのN=2個のセクションと、くすぐりパルス専用のセクションとが存在する。
【0079】
図3に示すように、各駆動パルスセクション625は、振幅710および幅720(すなわち期間720)および連続した駆動パルス間の遅延660を有する駆動パルス700を備える。くすぐりパルスセクション630は、振幅770よりも小さい振幅780、および示された最後の(すなわち、セクション625(N-2)における)駆動パルスと同じ幅720および同じ遅延660を有するくすぐりパルス770を備える。この例において、必ずではないが、パルス幅は、パルス振幅の最大値の半分の全幅と定義される。
【0080】
くすぐりパルス770のより小さな(すなわち、駆動パルス振幅710よりも小さい)振幅780の結果、(くすぐりパルス770が活性化した直前に駆動パルスが印加されたという条件で)
図5において説明されるように、くすぐりパルスによって噴射された液滴は、駆動パルスに応答して噴射された液滴よりもある程度小さい。
【0081】
駆動パルス700は一般に、印刷ヘッド622内の膜に、印刷ヘッドのインクジェットノズル624を介してインク液滴を押し出させる(すなわち噴射させる)。遅延660およびパルス幅720は合わせて、所与のインクに関する印刷の噴射チャネル内のインクにおける圧力波の共振周波数と一致する。印刷ヘッドの共振と一致するように事前設定された駆動パルスの遅延および幅を有する合同印刷およびくすぐり技術を用いた結果、4濃淡印刷サイクルの場合、噴射サイクルにおけるセクションの数が4から3に低下することにより、印刷サイクルの合計期間は約4分の1低減される。
【0082】
図3に示す噴射サイクル波形は、単に明確性のために例として提供される。代替実施形態において他の任意の適当な波形が用いられ得る。たとえば、パルスの形状は、例示された台形とは異なってよい。
【0083】
図4は、本発明の実施形態に係る、4濃淡レベル印刷スキームのルックアップテーブル800である。ルックアップテーブル800において符号化されたスキームは、(図内で「1」および「2」と示された)2つの駆動セクション、および後続する(「3」と示された)くすぐりセクションを備える。テーブル800内のチェックが付いていないセクションは、プロセッサによる画像形成ステーション60へのアイドルコマンドをもたらす。チェック付きのセクションは、
図3において説明されるように、プロセッサに、チェック付きのセクションにおける対応するパルスを所与の印刷ヘッドに印加するように画像形成モジュール60に指示させる。
【0084】
テーブル800の縦軸は、4つの可能な濃淡レベルを提供し、ここで、例として白黒印刷を用いると、レベル0は無色(白色)を意味し、レベル1は薄灰色を意味し、レベル2は濃灰色を意味し、レベル3は黒色を意味する。
【0085】
ブランケット44上の位置が白色と指定された場合、プロセッサは、噴射サイクル中に印刷ヘッド命令に関するレベル0ラインを読み取り、それに応じて印刷ヘッドは、その位置にインク液滴を噴射させないくすぐりパルスのみを印加する。その位置が薄灰色と指定された場合、プロセッサは、単一のインク液滴を噴射するために単一の駆動パルスが印加されるレベル1ラインを読み取る。一般に、薄灰色を印加するためにセクション1が検索される。あるいは、この目的のためにセクション2が用いられ得る。
【0086】
ブランケット44上の位置において濃灰色が指定された場合、プロセッサは、2つの連続した駆動パルスが印加されるレベル2ラインを読み取り、第2のパルスは、セクション1において注入された第1の液滴と重なるインク液滴を噴射する。
【0087】
この位置において黒色が指定された場合、プロセッサは、レベル3ラインを読み取り、2つの連続した駆動パルス700の印加後にくすぐりパルス770を印加し、くすぐりパルスは上述したように、各々が駆動パルスに応答して吐出された第1および第2の液滴と重なるインク液滴を噴射する。
【0088】
白黒印刷に関する
図4のルックアップテーブル800の説明は、例として取り上げられる。他の実施形態において、ルックアップテーブル800は、カラー印刷に関して同じまたは同様の方法で実装され得る。またあるいは、ルックアップテーブルの使用は必須ではない。プロセッサは、様々な色合いに関する波形定義を格納するための他の任意の適当なデータ構造またはフォーマットを用いてよい。
【0089】
くすぐりパルスは、レベル3のみにおいてインク液滴の噴射をもたらし、ここで先行パルス(すなわちセクション2)は活性である。これは、上述したように、先行パルスがノズル内のインクを(印刷ヘッドの噴射チャネル内のインクにおける圧力波の共振周波数と同期することによって)励起するためである。したがって、レベル0において、くすぐりパルスは常に、インク液滴の噴射をもたらさない。(レベル1での場合のように)先行パルスが存在しない場合、レベル1で印加されたくすぐりパルス(この実施形態はテーブル800に反映されない)は、噴射を伴わずメニスカスを振動させるのみである。
【0090】
図5は、本発明の実施形態に係る、レベル3くすぐりパルス振幅の関数としてのくすぐり液滴の体積のグラフ図である。
図5は、くすぐりパルス770の振幅の関数として、くすぐり液滴の体積の近似直線従属性を示す。データ点100は、駆動パルス700と実質的に同一であるくすぐりパルス770を表し、その結果生じる液滴体積は、たとえば
図4のレベル3で第3のパルスとして印加された時、駆動パルスによって噴射された液滴の体積と同様である。
【0091】
ただし、レベル0でのフル振幅において第3のパルスを印加することは、意図されないインク噴射をもたらす。
【0092】
データ点102は、たとえば黒色などのレベル3の色合いを実現するための正確な液滴体積の噴射をもたらす最適化されたくすぐりパルス770を表す。
【0093】
データ点104は、たとえば4濃淡スキームにおいて濃灰色よりも濃く黒色よりも淡い中間濃淡をもたらす、最小体積を有する液滴の噴射をもたらすくすぐりパルス770を表す。ただし、この場合、レベル3の(すなわち、データ点104のパルス振幅の結果生じる液滴体積を含む)インク体積は、必要に応じた最大濃さを生成するほど大きくない。
【0094】
データ点104に印加されたパルス振幅未満の任意のパルス振幅は、噴射を一切伴わず、ノズル内のインクの多少の動きを生じさせるのみである。実施形態において、データ点104は、データ点100によって表される駆動パルスのフル振幅の約3分の1である。
【0095】
上述した実施形態は例として参照されること、および本発明は上記で具体的に示され説明されたものに限定されないことが理解される。むしろ、本発明の範囲は、上述した様々な特徴の組み合わせおよび部分的組み合わせの両者とともに、上記説明を閲読すると当業者が思い至る、従来技術に開示されないそれらの変形例および修正例を含む。参照によって本特許出願に組み込まれた文書は、本願の不可欠な部分と見なされるべきであるが、例外として、これらの組み込まれた文書において、本明細書で明示または暗示された定義と矛盾する方法で任意の用語が定義される場合、本明細書における定義のみが考慮されなくてはならない。