(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】水素生成装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/48 20060101AFI20231027BHJP
C01B 3/38 20060101ALI20231027BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20231027BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20231027BHJP
【FI】
C01B3/48
C01B3/38
H01M8/04 J
H01M8/0612
(21)【出願番号】P 2021022257
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】西崎 柾峻
(72)【発明者】
【氏名】武田 憲有
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】豊島 吉宏
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-121769(JP,A)
【文献】特開2007-331985(JP,A)
【文献】特開2017-048079(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118430(WO,A2)
【文献】特開2008-088049(JP,A)
【文献】特開2016-058351(JP,A)
【文献】特開2012-148917(JP,A)
【文献】特開昭63-201001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 6/34
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃ガスを燃焼して、燃焼排ガスを排出する加熱部と、
前記加熱部の外周を囲む燃焼筒と、
前記燃焼筒の外周を囲む加熱部隔壁と、
前記加熱部隔壁の外周を囲む第1隔壁と、
前記第1隔壁の外周を囲む第2隔壁と、
前記第2隔壁の内周側の上部で前記第1隔壁の外周を囲み、上下端部が前記第1隔壁に固定される伝熱緩衝筒と、
前記燃焼筒と前記加熱部隔壁との間に形成され、上方に前記燃焼排ガスを流す燃焼ガス流路と、
前記加熱部隔壁と前記第1隔壁との間の上部に形成され、前記加熱部隔壁を介して伝わる熱で原料ガスと水とを加熱して、前記水を蒸発させる蒸発部と、
前記加熱部隔壁と前記第1隔壁との間の下部に改質触媒を充填して形成され、前記加熱部隔壁を介して伝わる熱で、前記原料ガスと水蒸気との混合ガスから改質反応で一酸化炭素を含む一次水素含有ガスを生成する改質器と、
前記第1隔壁と前記第2隔壁との間に形成され、前記改質器から流出した前記一次水素含有ガスを上方に流すリターン流路と、
前記第2隔壁と前記伝熱緩衝筒との間で一酸化炭素低減触媒を充填して形成され、前記改質器から流出した前記一次水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を変成反応で低減して、二次水素含有ガスとして排出するCO低減器と、
前記第2隔壁と前記伝熱緩衝筒との間で、前記CO低減器の上方で、一酸化炭素除去触媒を充填して形成され、前記CO低減器から排出される前記二次水素含有ガスの一酸化炭素の濃度を選択酸化反応で更に低減して、三次水素含有ガスとして排出するCO除去器と、
内周側端部が前記伝熱緩衝筒に固定され、外周側端部が前記第2隔壁に固定され、前記CO低減器と前記CO除去器と前記第2隔壁と前記伝熱緩衝筒とで囲まれた空間を、上部空間であるヘッダー流路と、下部空間である第1流路とに区画するドーナツ盤形状の区画部材と、
前記第1流路に空気を供給する空気供給管と、
前記第1隔壁と前記伝熱緩衝筒との間に、前記CO低減器と前記蒸発部との前記第1隔壁と前記伝熱緩衝筒とを介した熱交換と、前記CO除去器と前記蒸発部との前記第1隔壁と前記伝熱緩衝筒とを介した熱交換とが抑制されるように設けられた伝熱緩衝空間と、
前記燃焼筒を挟んで前記空気供給管の先端と対向する位置で前記第1流路の前記空気と混合された前記二次水素含有ガスを前記伝熱緩衝空間に流入させるように前記伝熱緩衝筒に設けられた伝熱緩衝空間入口と、
円周方向に複数設けられ前記伝熱緩衝空間の前記空気と混合された前記二次水素含有ガスを前記ヘッダー流路に流出させるよう前記伝熱緩衝筒に設けられた吹き出し穴と、
を有する水素生成装置であって、
前記伝熱緩衝筒は、前記伝熱緩衝筒の上下方向のうち前記第1流路と前記ヘッダー流路との少なくとも一つと隣接する一部において、筒径が前記第1隔壁の筒径よりも大きく前記伝熱緩衝筒の筒径よりも小さくなるよう構成され、前記第1隔壁と前記伝熱緩衝筒とにおける熱膨張量差の少なくとも一部を吸収する吸収部を有することを特徴とする、水素生成装置。
【請求項2】
前記吸収部は、蛇腹状のベローズ構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の水素生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、第1のガス流路(以下、蒸発部)と変成部(以下、CO低減器)との間に、隔壁と隔壁とが互いに間隔を有して対向して形成される伝熱緩衝空間を備える水素生成装置を開示する。
【0003】
この水素生成装置は、CO低減器と、蒸発部と、混合部と、CO除去部(以下、CO除去器)と、CO低減器と蒸発部とを隔てる空間と、を備える。
【0004】
特許文献2は、空気と変成部(以下、CO低減器)から流出する水素含有ガスとの混合を促進させる空気混合筒の内部において、空気と水素含有ガスとの混合ガスを周方向に旋回させ、混合の促進と蒸発部との熱交換をさせた後に空気混合筒からヘッダー流路へ流出させる水素生成装置を開示する。
【0005】
この水素生成装置は、蒸発部と、上下を蒸発部外筒に接して構成され空気と水素含有ガスの混合ガスが流れる空気混合筒と、上部に向かうにしたがって空気混合筒の径が小さくなるように傾斜する傾斜部と、傾斜部に円周方向に複数設けられヘッダー流路に斜め上方に流出させる吹き出し孔と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2014-530159号公報
【文献】特開2018-118863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、蒸発部の外周を囲む伝熱緩衝空間を構成する水素生成装置において、熱応力による破壊を抑制しつつ、部品点数と溶接工数とを削減した、低コストの水素生成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示における水素生成装置は、加熱部と、燃焼筒と、加熱部隔壁と、第1隔壁と、第2隔壁と、伝熱緩衝筒と、燃焼ガス流路と、蒸発部と、改質器と、リターン流路と、CO低減器と、CO除去器と、区画部材と、空気供給管と、伝熱緩衝空間と、伝熱緩衝空間入口と、吹き出し穴と、を有している。
【0009】
加熱部は、可燃ガスを燃焼して、燃焼排ガスを排出するように構成されている。燃焼筒は、加熱部の外周を囲むように構成されている。加熱部隔壁は、燃焼筒の外周を囲むように構成されている。第1隔壁は、加熱部隔壁の外周を囲むように構成されている。第2隔壁は、第1隔壁の外周を囲むように構成されている。伝熱緩衝筒は、第2隔壁の内周側の上部で第1隔壁の外周を囲み、上下端部が第1隔壁に固定されるよう構成されている。
【0010】
燃焼ガス流路は、燃焼筒と加熱部隔壁との間に形成され、上方に燃焼排ガスを流すように構成されている。蒸発部は、加熱部隔壁と第1隔壁との間の上部に形成され、加熱部隔壁を介して伝わる熱で原料ガスと水とを加熱して水を蒸発させるように構成されている。
【0011】
改質器は、加熱部隔壁と第1隔壁との間の下部に改質触媒を充填して形成され、加熱部隔壁を介して伝わる熱で原料ガスと水蒸気との混合ガスから改質反応で一酸化炭素を含む一次水素含有ガスを生成するように構成されている。
【0012】
リターン流路は、第1隔壁と第2隔壁との間に形成され、改質器から流出した一次水素含有ガスを上方に流すように構成されている。
【0013】
CO低減器は、第2隔壁と伝熱緩衝筒との間で一酸化炭素低減触媒を充填して形成され、改質器から流出した一次水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を変性反応で低減して二次水素含有ガスとして排出するように構成されている。
【0014】
CO除去器は、第2隔壁と伝熱緩衝筒との間で、CO低減器の上方で、一酸化炭素除去触媒を充填して形成され、CO低減器から排出される二次水素含有ガスの一酸化炭素の濃度を選択酸化反応で更に低減して三次水素含有ガスとして排出するように構成されている。
【0015】
区画部材は、ドーナツ盤形状で、内周側端部が伝熱緩衝筒に固定され、外周側端部が第2隔壁に固定され、CO低減器とCO除去器と第2隔壁と伝熱緩衝筒とで囲まれた空間を上部空間であるヘッダー流路と下部空間である第1流路とに区画するように構成されている。空気供給管は、第1流路に空気を供給するように構成されている。
【0016】
伝熱緩衝空間は、第1隔壁と伝熱緩衝筒との間に、CO低減器と蒸発部との第1隔壁と伝熱緩衝筒とを介した熱交換と、CO除去器と蒸発部との第1隔壁と伝熱緩衝筒とを介した熱交換とが抑制されるように設けられた空間である。
【0017】
伝熱緩衝空間入口は、燃焼筒を挟んで空気供給管の先端と対向する位置で第1流路の空気と混合された二次水素含有ガスを伝熱緩衝空間に流入させるように伝熱緩衝筒に設けられている。吹き出し穴は、伝熱緩衝空間の空気と混合された二次水素含有ガスをヘッダー流路に流出させるよう伝熱緩衝筒の円周方向に複数設けられている。
【0018】
伝熱緩衝筒は、伝熱緩衝筒の上下方向のうち第1流路とヘッダー流路との少なくとも一つと隣接する一部において、筒径が第1隔壁よりも大きく伝熱緩衝筒の筒径よりも小さくなるよう構成され、第1隔壁と伝熱緩衝筒とにおける熱膨張量差の少なくとも一部を吸収する吸収部を有する。
【発明の効果】
【0019】
本開示における水素生成装置は、伝熱緩衝筒に吸収部を備えることにより、上下端部が第1隔壁に固定された伝熱緩衝筒と第1隔壁とに温度差が生じた場合でも、吸収部の上下方向の幅が伸縮するように変形することで、伝熱緩衝筒と第1隔壁とにおける熱膨張量差を吸収することができる。これにより、第1隔壁に伝熱緩衝筒の上下端部が固定された箇所に熱応力が集中することを抑制できる。
【0020】
また、吸収部を伝熱緩衝部の上下方向のうち第1流路またはヘッダー流路と隣接する一部に備えることで、伝熱緩衝空間入口から流入した水素含有ガスの上下方向の通流が抑制されるため、ガスの周方向への旋回が促進され、空気と水素含有ガスとの混合機能を維持することができる。これにより、熱応力による破壊を抑制しつつ、部品点数と溶接工数を削減することができ、水素生成装置の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態1における水素生成装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0022】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、都市ガスなどの炭化水素系の燃料から、水蒸気改質反応によって水素を生成し、さらに副生した一酸化炭素(CO)などの不純物を除去することで、燃料電池発電装置の燃料ガス等に適用可能な水素リッチな水素含有ガスを生成する技術があった。
【0023】
この一酸化炭素などの不純物が除去された水素リッチな水素含有ガスを生成する技術は、全体形状が円筒形状で、その中心部にバーナを備えた加熱部が配設され、加熱部の周囲に改質触媒を充填した改質器と、一酸化炭素低減触媒を充填したCO低減器と、一酸化炭素除去触媒を充填したCO除去器とを軸心方向に配列した水素生成装置により得るものであった。
【0024】
CO低減器で発生した熱を回収する目的で、原料ガスと水との混合物を加熱する蒸発部の外周側にCO低減器を配設した場合、熱交換によってCO低減器の内周側は温度が低く外周側は温度が高くなり、径方向に温度分布が大きく生じる。これにより、一酸化炭素低減触媒が機能する適切な温度範囲から外れた触媒が存在することになり、CO低減器による一酸化炭素低減能力が不十分になるという課題があった。
【0025】
そのため、当該業界では、この課題に対して、CO低減器と蒸発部とが互いに間隔を有して対向してなる伝熱緩衝空間を設けるよう隔壁で区画する製品設計をするのが一般的であり、CO除去器についても同様であった。
【0026】
そうした状況下において、発明者らは、空気混合筒や隔壁などの複数の部品を蒸発部外筒に固定しなければならず、固定箇所から水素含有ガスが漏れないよう上記の複数の部品を蒸発部外筒の全周に渡って溶接しなければならないことから、部品点数と溶接工数とが増加している点に着目した。
【0027】
さらに、蒸発部外筒へ溶接を行う場合、溶接時の熱ひずみによって内部の螺旋棒と蒸発器外筒の密着状態へ悪影響を与えないようにするため、全周に渡って入熱が均一となるよう溶接速度を落として溶接する必要があり、溶接工数の増加につながることをヒントにして、空気混合筒と、CO低減器と伝熱緩衝空間とを仕切る隔壁と、CO除去器と伝熱緩衝空間とを仕切る隔壁とを一体の伝熱緩衝筒とし、伝熱緩衝筒の上下端部のみを蒸発部外筒へ溶接することで、部品点数と溶接工数を削減するという着想を得た。
【0028】
そして、発明者らは、その着想を実現するには、蒸発部外筒に上下端部が固定された伝熱緩衝筒との間で温度差による熱膨張量差が生じると、蒸発部外筒と伝熱緩衝筒との固定箇所に熱応力が生じ、部材の破壊に至る課題があることを発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0029】
そこで、本開示は、空気混合筒と、CO低減器と伝熱緩衝空間とを仕切る隔壁と、CO除去器と伝熱緩衝空間とを仕切る隔壁とを一体化し上下端部が蒸発部外筒に固定された伝熱緩衝筒において、上下方向のうち第1流路とヘッダー流路との少なくとも一つと隣接する一部において筒径が第1隔壁の筒径よりも大きく伝熱緩衝筒の筒径よりも小さくなるよう構成され、第1隔壁と伝熱緩衝筒とにおける熱膨張量差の少なくとも一部を吸収する吸収部を形成することで、熱応力による破壊を抑制しつつ、部品点数と溶接工数とを削減した、低コストの水素生成装置を提供する。
【0030】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0031】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0032】
(実施の形態1)
以下、
図1を用いて、実施の形態1を説明する。
【0033】
[1-1.構成]
図1に示すように、水素生成装置100は、加熱部120と、蒸発部121と、改質器122と、CO低減器123と、CO除去器124と、伝熱緩衝空間125と、加熱部120の外周を囲む燃焼筒130と、燃焼筒130の外周を囲む加熱部隔壁131と、加熱部隔壁131の外周を囲む第1隔壁132と、第1隔壁132の外周を囲む第2隔壁133と、伝熱緩衝筒134と、区画部材135と、空気供給管136と、伝熱緩衝空間入口150と、吹き出し穴151と、を有する。
【0034】
蒸発部121は、加熱部隔壁131と第1隔壁132との間の上部に形成される。
【0035】
改質器122は、加熱部隔壁131と第1隔壁132との間の下部に改質触媒を充填して形成される。
【0036】
伝熱緩衝筒134は、第2隔壁133の内周側の上部で第1隔壁132の外周を囲み、上下端部が第1隔壁132に固定されるよう構成されている。
【0037】
CO低減器123は、第2隔壁133と伝熱緩衝筒134との間で一酸化炭素低減触媒を充填して形成される。
【0038】
CO除去器124は、第2隔壁133と伝熱緩衝筒134との間で、CO低減器123の上方で、一酸化炭素除去触媒を充填して形成される。
【0039】
伝熱緩衝空間125は、第1隔壁132と伝熱緩衝筒134との間に設けられている。
【0040】
燃焼ガス流路140は、燃焼筒130と加熱部隔壁131との間に形成される。リターン流路141は、第1隔壁132と第2隔壁133との間に形成される。
【0041】
区画部材135は、内周側端部が伝熱緩衝筒134に固定され、外周側端部が第2隔壁133に固定され、CO低減器123とCO除去器124と第2隔壁133と伝熱緩衝筒134とで囲まれた空間を、上部空間であるヘッダー流路143と、下部空間である第1流路142とに区画するドーナツ盤形状の部材である。
【0042】
伝熱緩衝空間入口150は、燃焼筒130を挟んで空気供給管136の先端と対向する位置で伝熱緩衝筒134に設けられる。
【0043】
吹き出し穴151は、伝熱緩衝筒134の円周方向に複数設けられている。
【0044】
伝熱緩衝筒134は、伝熱緩衝筒134の上下方向のうち第1流路142とヘッダー流路143との少なくとも一つと隣接する一部において、筒径が第1隔壁132の筒径より
も大きく伝熱緩衝筒134の筒径よりも小さくなるよう構成された吸収部152を有する。
【0045】
吸収部152は、伝熱緩衝筒134を加工して複数の曲折部からなり上下方向に伸縮できるよう形成された蛇腹状のベローズ構造を1段有する。
【0046】
燃焼筒130と加熱部隔壁131と第1隔壁132と第2隔壁133と伝熱緩衝筒134は、オーステナイト系ステンレス鋼で構成されている。
【0047】
[1-2.動作]
以上のように構成された水素生成装置100において、以下、その動作、作用を説明する。
【0048】
加熱部120は、可燃ガスを燃焼して燃焼排ガスを排出する。加熱部120が可燃ガスを燃焼することで、その熱が改質器122に伝搬する。これにより、改質器122を所望の温度に引き上げることができる。燃焼排ガスは、燃焼ガス流路140を通って上方に流され外部に排出される。
【0049】
蒸発部121には都市ガスなどの原料ガスと液体の水とが供給され、加熱部隔壁131を介して伝わる熱で水が気化し、原料ガスと水蒸気との混合ガスとなる。
【0050】
水素生成装置100は、筒状の筐体を有しているため、蒸発部121内の混合ガスは、
図1において、軸方向に流れるだけでなく加熱部120を同心軸として回転方向にも流れる。そのため、改質器122もおよそドーナツ状の形状をしており、その全周から混合ガスが改質器122に流入する。
【0051】
改質器122に流入した原料ガスと水蒸気との混合ガスは、加熱部120の熱によって600℃に温められ、かつ改質触媒によって一酸化炭素を含む一次水素含有ガスに改質される。このとき、(化1)に示すようにメタンと水から水素と二酸化炭素を生成する反応と、(化2)に示すようにメタンと水から水素と一酸化炭素を生成する反応が起こっている。
【0052】
【0053】
【0054】
ただし、600℃は典型的な温度であって、反応による改質器122内の温度は、改質器122の構造や材質、大きさにも依存して変わる。例えば、400℃~650℃の範囲で変動し得る。
【0055】
一次水素含有ガスは、改質器122からリターン流路141に流入する。リターン流路141はドーナツ状の形状をしており、リターン流路141の全周を伝って、一次水素含有ガスが軸心方向の上方に流れ、CO低減器123に供給される。
【0056】
CO低減器123は、改質器122から流出した一次水素含有ガスに含まれる一酸化炭素を低減して二次水素含有ガスとして排出する。詳細には、一酸化炭素低減触媒で起こる
(化3)に示す変成反応によって、一次水素含有ガスに含まれる一酸化炭素と水蒸気を反応させて二酸化炭素と水素を生成し、一酸化炭素を低減している。このときCO低減器123は250℃まで温度が上昇する。
【0057】
ただし、250℃は典型的な温度であって、反応によるCO低減器123内の温度は、CO低減器123の構造や材質、大きさにも依存して変わる。例えば200℃~300℃の範囲で変動し得る。
【0058】
【0059】
二次水素含有ガスは、CO低減器123から排出されて、第1流路142に流入する。第1流路142はドーナツ状の形状をしているため、空気供給管136を介して注入された空気とCO低減器123から排出された二次水素含有ガスとが、第1流路142の周方向に流れ混合される。
【0060】
空気と混合された二次水素含有ガスは、伝熱緩衝空間入口150を介して伝熱緩衝空間125に流入する。蒸発部121とCO低減器123と、蒸発部121とCO除去器124とがそれぞれ伝熱緩衝空間125で仕切られていることにより、蒸発部121とCO低減器123との第1隔壁132と伝熱緩衝筒134とを介した熱交換と、蒸発部121とCO除去器124との第1隔壁132と伝熱緩衝筒134とを介した熱交換とが抑制されている。
【0061】
伝熱緩衝空間125もドーナツ状の形状をしており、さらに吸収部があることで伝熱緩衝空間125において内部の二次水素含有ガスの上下方向の通流が抑制されるため、伝熱緩衝空間125に流入した空気と混合された二次水素含有ガスの大部分は、伝熱緩衝空間125の周方向に流れる。その後、伝熱緩衝空間125から吹き出し穴151を介してヘッダー流路143に排出され、CO除去器124に供給される。
【0062】
CO除去器124は、CO低減器123から流出した二次水素含有ガスに含まれる一酸化炭素をさらに低減して三次水素含有ガスとして排出する。詳細には、一酸化炭素除去触媒で起こる(化4)に示す選択酸化反応によって一酸化炭素と酸素から二酸化炭素が、(化5)に示すように水素と酸素から水が生成される。このときCO除去器124は150℃程度まで温度が上昇する。
【0063】
ただし、150℃は典型的な温度であって、反応によるCO除去器124内の温度は、CO除去器124の構造や材質、大きさにも依存して変わる。例えば、100℃~180℃の範囲で変動し得る。
【0064】
【0065】
【0066】
CO低減器123からCO除去器124にかけて隣接している伝熱緩衝筒134はCO低減器123およびCO除去器124の触媒の反応熱により高温化している。蒸発部12
1の原料ガスと液体の水とを冷熱源として、第1隔壁132と伝熱緩衝空間125とを介して熱交換されることによって伝熱緩衝筒134が冷やされ、その結果、CO低減器123およびCO除去器124の壁面を冷却し、内部での温度上昇をある程度抑えることができる。
【0067】
このとき、蒸発部121に隣接する第1隔壁132は伝熱緩衝筒134と比較して低温化しやすく、CO低減器123およびCO除去器124の触媒と隣接する伝熱緩衝筒134は第1隔壁132と比較して高温化しやすく、温度差が発生しやすい。
【0068】
この温度差により伝熱緩衝筒134の上下方向の熱膨張量が第1隔壁132の上下方向の熱膨張量よりも大きい場合においても、吸収部152が上下方向に屈曲することで、第1隔壁132と伝熱緩衝筒134とにおける熱膨張量差の一部を吸収することができる。
【0069】
CO除去器124によって一酸化炭素をさらに低減された二次水素含有ガスは、三次水素含有ガスとして排出される。
【0070】
[1-3.効果]
以上のように、本実施の形態における水素生成装置100は、加熱部120と、蒸発部121と、改質器122と、CO低減器123と、CO除去器124と、伝熱緩衝空間125と、燃焼筒130と、加熱部隔壁131と、第1隔壁132と、第2隔壁133と、伝熱緩衝筒134と、区画部材135と、空気供給管136と、燃焼ガス流路140と、リターン流路141と、第1流路142と、ヘッダー流路143と、伝熱緩衝空間入口150と、吹き出し穴151と、を備える。
【0071】
加熱部120は、可燃ガスを燃焼して、燃焼排ガスを排出するように構成されている。燃焼筒130は、加熱部120の外周を囲むように構成(配置)されている。加熱部隔壁131は、燃焼筒130の外周を囲むように構成(配置)されている。
【0072】
第1隔壁132は、加熱部隔壁131の外周を囲むように構成(配置)されている。第2隔壁133は、第1隔壁132の外周を囲むように構成(配置)されている。
【0073】
伝熱緩衝筒134は、第2隔壁133の内周側の上部で第1隔壁132を囲み、上下端部が第1隔壁132に固定されるように構成(配置)されている。
【0074】
燃焼ガス流路140は、上方に燃焼排ガスを流す流路であって、燃焼筒130と加熱部隔壁131との間に形成されている。
【0075】
蒸発部121は、加熱部隔壁131を介して伝わる熱で原料ガスと水とを加熱して、水を蒸発させる部位であって、加熱部隔壁131と第1隔壁132との間の上部に形成されている。
【0076】
改質器122は、加熱部隔壁131を介して伝わる熱で、原料ガスと水蒸気との混合ガスから改質反応で一酸化炭素を含む一次水素含有ガスを生成する部位であって、加熱部隔壁131と第1隔壁132との間の下部に改質触媒を充填して形成されている。
【0077】
リターン流路141は、改質器122から流出した一次水素含有ガスを上方に流す流路であって、第1隔壁132と第2隔壁133との間に形成されている。
【0078】
CO低減器123は、改質器122から流出した一次水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を変成反応で低減して、二次水素含有ガスとして排出する部位であって、第2隔
壁133と伝熱緩衝筒134との間に一酸化炭素低減触媒を充填して形成されている。
【0079】
CO除去器124は、CO低減器123から排出される二次水素含有ガスの一酸化炭素の濃度を選択酸化反応で更に低減して、三次水素含有ガスとして排出する部位であって、第2隔壁133と伝熱緩衝筒134との間で、CO低減器123の上方で、一酸化炭素除去触媒を充填して形成されている。
【0080】
区画部材135は、CO低減器123とCO除去器124と第2隔壁133と伝熱緩衝筒134とで囲まれた空間を上部空間であるヘッダー流路143と下部空間である第1流路142とに区画するドーナツ盤形状の部材であって、内周側端部が伝熱緩衝筒134に固定され、外周側端部が第2隔壁133に固定されている。空気供給管136は、第1流路142に空気を供給するように構成された部材である。
【0081】
伝熱緩衝空間125は、蒸発部121とCO低減器123との第1隔壁132と伝熱緩衝筒134とを介した熱交換と、蒸発部121とCO除去器124との第1隔壁132と伝熱緩衝筒134とを介した熱交換とが抑制されるように、第1隔壁132と伝熱緩衝筒134との間に設けられた空間である。
【0082】
伝熱緩衝空間入口150は、燃焼筒130を挟んで空気供給管136の先端と対向する位置で、第1流路142の空気と混合された二次水素含有ガスを、伝熱緩衝空間125に流入させるように、伝熱緩衝筒134に設けられた部位である。
【0083】
吹き出し穴151は、伝熱緩衝空間125の空気と混合された二次水素含有ガスをヘッダー流路143に流出させるように、伝熱緩衝筒134に円周方向に複数設けられた部位である。
【0084】
伝熱緩衝筒134は、吸収部152を有している。吸収部152は、伝熱緩衝筒134の上下方向のうち第1流路142とヘッダー流路143との少なくとも一つと隣接する一部において、筒径が第1隔壁132の筒径よりも大きく伝熱緩衝筒134の筒径よりも小さくなるよう構成され、第1隔壁132と伝熱緩衝筒134とにおける熱膨張量差の少なくとも一部を吸収する部位である。
【0085】
上記構成において、上下端部が第1隔壁132に固定された伝熱緩衝筒134と第1隔壁132とに温度差が生じた場合でも、吸収部152の上下方向の幅が伸縮するように変形することで、伝熱緩衝筒134と第1隔壁132とにおける熱膨張量差を吸収することができる。これにより、第1隔壁132と伝熱緩衝筒134が固定された箇所に熱応力が集中するのを抑制できる。
【0086】
また、伝熱緩衝空間入口150から流入した二次水素含有ガスの上下方向の通流が吸収部152によって抑制されるため、二次水素含有ガスの周方向の旋回が促進され、空気と二次水素含有ガスとの混合機能を維持することができる。
【0087】
そのため、熱応力による破壊を抑制しつつ、部品点数と溶接工数とを削減することができ、水素生成装置100の製造コストを低減できる。
【0088】
本実施の形態のように、水素生成装置100は、伝熱緩衝筒134を加工して複数の曲折部からなり上下方向に伸縮できるよう形成された蛇腹状のベローズ構造を有する吸収部152を備えるようにしてもよい。
【0089】
これにより、上下方向の熱膨張量差をより効果的に吸収できる。そのため、簡易な加工
で効率的に熱膨張量差を吸収できる構造を形成することができる。
【0090】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0091】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0092】
実施の形態1では、吸収部の一例として、伝熱緩衝筒134を加工し蛇腹状のベローズ構造を1段形成した吸収部152を説明した。吸収部は蛇腹状のベローズ構造を有するものであればよい。したがって、吸収部152は蛇腹状のベローズ構造を1段形成したものに限定されない。
【0093】
ただし、吸収部として、伝熱緩衝筒134を加工し蛇腹状のベローズ構造を1段形成した吸収部152を用いれば、加工コストを低減できる。また、吸収部として、伝熱緩衝筒を加工し蛇腹状のベローズ構造を複数段形成した吸収部を用いてもよい。吸収部として、伝熱緩衝筒を加工し蛇腹状のベローズ構造を複数段形成した吸収部を用いれば、第1隔壁132と伝熱緩衝筒134とにおける熱膨張量差をより効果的に吸収できるので、より大きな熱応力がかかるときでも、熱応力による破壊を抑制できる。
【0094】
実施の形態1では、水素生成装置の一例として円筒状の加熱部120を説明した。加熱部は、改質器を加熱できるものであればよい。したがって、加熱部は、円筒状に限定されない。ただし、円筒状の加熱部120を用いれば、その周の外に設けられた円筒状の改質器に均等に熱を分配することができる。
【0095】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本開示は、溶接固定される部品間に大きな熱膨張量差が発生する容器に適用可能である。具体的には、一酸化炭素濃度が低い水素含有ガスを生成する水素生成装置や、不純物を除いてから水素ガスを供給する燃料電池発電装置や水素精製システムなどに適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
100 水素生成装置
120 加熱部
121 蒸発部
122 改質器
123 CO低減器
124 CO除去器
125 伝熱緩衝空間
130 燃焼筒
131 加熱部隔壁
132 第1隔壁
133 第2隔壁
134 伝熱緩衝筒
135 区画部材
136 空気供給管
140 燃焼ガス流路
141 リターン流路
142 第1流路
143 ヘッダー流路
150 伝熱緩衝空間入口
151 吹き出し穴
152 吸収部