(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】環境制御システム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/155 20200101AFI20231027BHJP
H05B 47/115 20200101ALI20231027BHJP
H05B 47/165 20200101ALI20231027BHJP
【FI】
H05B47/155
H05B47/115
H05B47/165
(21)【出願番号】P 2019195111
(22)【出願日】2019-10-28
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥野 達也
(72)【発明者】
【氏名】薮亀 順平
(72)【発明者】
【氏名】原田 和樹
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-056016(JP,A)
【文献】特開2018-056014(JP,A)
【文献】国際公開第2012/157573(WO,A1)
【文献】特開2014-154483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の机が配置されている室内における前記机の作業面を照明するための複数のタスクライトと、
前記室内において前記作業面よりも広範囲な領域を照明するための複数のベースライトと、
前記室内に存在する1以上の人の位置情報、前記室内に存在する1以上の人の在席情報、及び前記室内に存在する1以上の人の個人情報のうちの少なくとも1つを検出するセンサ装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ベースライトの照度より前記タスクライトの照度が大きくなる集中作業用空間制御領域と前記ベースライトの照度より前記タスクライトの照度が小さくなる非集中作業用空間制御領域とが生じるように、前記複数のタスクライト及び前記複数のベースライトを調光・調色制御するゾーニング制御を行い、
前記制御装置が、前記センサ装置からの情報に基づいて前記集中作業用空間制御領域の量が小さいと判断すると前記集中作業用空間制御領域の量が大きくなるように前記複数のタスクライト及び前記複数のベースライト
に対して調光
及び調色
の少なくとも一方の制御
を行うことと、前記制御装置が、前記センサ装置からの情報に基づいて前記集中作業用空間制御領域の量が大きいと判断すると前記集中作業用空間制御領域の量が小さくなるように前記複数のタスクライト及び前記複数のベースライト
に対して調光
及び調色
の少なくとも一方の制御
を行うことと、前記制御装置が、前記センサ装置からの情報に基づいて前記非集中作業用空間制御領域の量が小さいと判断すると前記非集中作業用空間制御領域の量が大きくなるように前記複数のタスクライト及び前記複数のベースライト
に対して調光
及び調色
の少なくとも一方の制御
を行うことと、前記制御装置が、前記センサ装置からの情報に基づいて前記非集中作業用空間制御領域の量が大きいと判断すると前記非集中作業用空間制御領域の量が小さくなるように前記複数のタスクライト及び前記複数のベースライト
に対して調光
及び調色
の少なくとも一方の制御
を行うことのうちの1以上が実行される、環境制御システム。
【請求項2】
前記集中作業用空間制御領域の量を大きくする制御を行うと同時に、前記非集中作業用空間制御領域の量を小さくする制御を行い、
前記集中作業用空間制御領域の量を小さくする制御を行うと同時に、前記非集中作業用空間制御領域の量を大きくする制御を行う、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、作業面が前記集中作業用空間制御領域に含まれる机の数と、前記センサ装置からの情報に基づいて特定した前記集中作業用空間制御領域内に位置する前記作業面を利用していると考えられる人の数とに基づいて算出される第1人占有量を第1人占有閾値と比較することで、前記集中作業用空間制御領域の量が適切か否かを判断することと、作業面が前記非集中作業用空間制御領域に含まれる机の数と、前記センサ装置からの情報に基づいて特定した前記非集中作業用空間制御領域内に位置する前記作業面を利用していると考えられるに人の数とに基づいて算出される第2人占有量を第2人占有閾値と比較することで、前記非集中作業用空間制御領域の量が適切か否かを判断することのうちの少なくとも一方を行う演算部の算出結果情報に基づいて調光・調色制御を実行する、請求項1又は2に記載の環境制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、作業面が前記集中作業用空間制御領域に存在する机の数と、前記センサ装置からの情報に基づいて特定した前記集中作業用空間制御領域内に位置する前記作業面を利用したい人の数とに基づいて算出される第1需要量を、第1需要閾値と比較することで、前記集中作業用空間制御領域の量が適切か否かを判断することと、作業面が前記非集中作業用空間制御領域に存在する机の数と、前記センサ装置からの情報に基づいて特定した前記非集中作業用空間制御領域内に位置する前記作業面を利用したい人の数とに基づいて算出した第2需要量を、第2需要閾値と比較することで、前記非集中作業用空間制御領域の量が適切か否かを判断することのうちの少なくとも一方を行う演算部の算出結果情報に基づいて調光・調色制御を実行する、請求項1から3のいずれか1つに記載の環境制御システム。
【請求項5】
前記室内に音を出力する複数のスピーカを更に備え、
前記ゾーニング制御では、前記複数のスピーカが、前記集中作業用空間制御領域及び前記非集中作業用空間制御領域に音を出力し、
前記集中作業用空間制御領域内で最大の音量で出力されている音における高速フーリエ変換におけるスペクトル幅が、前記非集中作業用空間制御領域内で最大の音量で出力されている音における高速フーリエ変換におけるスペクトル幅よりも広い、請求項1から4のいずれか1つに記載の環境制御システム。
【請求項6】
前記室内に音を出力する1以上のスピーカを更に備え、
前記演算部の算出結果情報に基づいて、前記スピーカの音量及び前記スピーカが出力するコンテンツのうちの少なくとも一方を制御する、請求項3
又は4に記載の環境制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
働き方改革に発端し、ABW(Activity Based Working)オフィスが台頭している。ABWオフィスは、例えば、ワーカーが1人で集中ワークをしたい時、複数人でグループワークをしたい時、休憩・リラックスをしたい時など、時々刻々変化するワークの種類・量、あるいはワーカー自身の情動・動機に基づく意思などに対応し、設計主旨の異なるスペースをワーカー自身が選択することで、ワーカーや組織のパフォーマンスを効率化させる形式のオフィスである。設計主旨の異なるスペースの作り方として、例えば、特許文献1に記されるような、什器や家具を用いて集中ワークの効率を高める主旨のスペースをつくり、ゾーニングを行う手段が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ABWオフィスは、ワーカーや組織の流動的なワークパフォーマンスや各スペースに対するニーズ応じて、継続的にゾーニングの変更が行われることが理想である。例えば、前述のブース型什器・家具は、設置後も利用率の過不足に対応して、配置や個数を変化させることでゾーニングの変更が可能である。ところが、ワーカーや組織のワークパフォーマンスや各スペースに対するニーズは、時間毎、日毎、月毎などのサイクルでも生じうることに対し、什器・家具の運搬や再設置、倉庫への収納などの作業を前述のサイクルで継続的に実施することは、その手間や労力から鑑みれば困難であり、設計変更の柔軟性という側面においては、ABWオフィスの実現手段として課題があった。
【0005】
そこで、本開示の目的は、時間毎、日毎、月毎などのサイクルで生じるワーカーや組織の流動的なワークパフォーマンスや各スペースに対するニーズに対しても容易に対応するアクティブゾーニングを可能とする環境制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係る環境制御システムは、複数の机が配置されている室内における机の作業面を照明するための複数のタスクライトと、室内において作業面よりも広範囲な領域を照明するための複数のベースライトと、室内に存在する1以上の人の位置情報、室内に存在する1以上の人の在席情報、及び室内に存在する1以上の人の個人情報のうちの少なくとも1つを検出するセンサ装置と、制御装置と、を備え、制御装置は、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が大きくなる集中作業用空間制御領域とベースライトの照度よりタスクライトの照度が小さくなる非集中作業用空間制御領域とが生じるように、複数のタスクライト及び複数のベースライトを調光・調色制御するゾーニング制御を行い、制御装置が、センサ装置からの情報に基づいて集中作業用空間制御領域の量が小さいと判断すると集中作業用空間制御領域の量が大きくなるように複数のタスクライト及び複数のベースライトを調光・調色制御することと、制御装置が、センサ装置からの情報に基づいて集中作業用空間制御領域の量が大きいと判断すると集中作業用空間制御領域の量が小さくなるように複数のタスクライト及び複数のベースライトを調光・調色制御することと、制御装置が、センサ装置からの情報に基づいて非集中作業用空間制御領域の量が小さいと判断すると非集中作業用空間制御領域の量が大きくなるように複数のタスクライト及び複数のベースライトを調光・調色制御することと、制御装置が、センサ装置からの情報に基づいて非集中作業用空間制御領域の量が大きいと判断すると非集中作業用空間制御領域の量が小さくなるように複数のタスクライト及び複数のベースライトを調光・調色制御することのうちの1以上が実行される。
【0007】
なお、本明細書では、集中作業用空間制御領域を、環境制御システムが設置されている室内に設置されている複数の机における複数の作業面においてベースライトの照度よりタスクライトの照度が大きくなっている1以上の作業面の和として定義する。また、非集中作業用空間制御領域を、環境制御システムが設置されている室内に設置されている複数の机における複数の作業面においてベースライトの照度よりタスクライトの照度が小さくなっている1以上の作業面の和として定義する。なお、作業面の和は、設計図面や定規などの尺度を用いて、面積の和として求めることができるし、作業面の個数の和としても求めることができる。これらを、集中作業用空間制御領域あるいは非集中作業用空間制御領域の量とする。また、本明細書で「量」とは、大小関係を規定できる物理量として定義してもよく、この物理量には、個数等の無次元の量も含まれるものと定義してもよい。したがって、「量」には、例えば、「広さ(面積)」や「個数」が含まれる。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る環境制御システムによれば、時間毎、日毎、月毎などのサイクルで生じるワーカーや組織の流動的なワークパフォーマンスや各スペースに対するニーズに対しても容易に対応するアクティブゾーニングを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施例1に係る環境制御システムが設置された室の一例としてのABWオフィスにおいて可能な複数の作業机の配置のレイアウトの実施例を示す図面であり、上方から複数の作業机を見たときの配置とABWオフィスの天井部に取り付けられたベースライト、通電用のダクトレール、タスクライトの配置図を作業机の配置に重畳させる形で記載したレイアウト配置図である。
【
図2】各照明グループの夫々に対して設定された4つのシーンにおける各照明機器の調光調色データを示す図である。
【
図3】環境制御システムを形成可能である主要構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】実施例1の変形例の環境制御システムの主要構成を示すブロック図である。
【
図5】実施例1に関して、人のニーズに基づいて、集中作業用空間制御領域を拡大又は減少させると同時に、非集中作業用空間制御領域を減少又は拡大させる制御の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図6】実施例2の環境制御システムにおける
図1に対応するレイアウト配置図である。
【
図7】実施例2の環境制御システムにおける
図3に対応するブロック図である。
【
図8】実施例2に関して、各照明グループの夫々に対して設定された4つのシーンにおける各照明機器の調光調色データ及びサウンドコンテンツを示す図である。
【
図9】実施例2で音を出力すると共に
図8に示すシーン1を再現しているときに各照明機器が照射している照射光の情報と、各スピーカが出力している音の情報とを説明する模式図である。
【
図10】実施例2のABWオフィスにおいて、
図8に示すシーン1を再生しているときに、作業机D12からD03を横断するように配置した照度計および騒音計で空間の照度および音量を測定したときの一試験例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。また、本明細書で、「略」という文言を用いた場合、「大雑把に言って」という文言と同じ意味合いで用いており、「略~」という要件は、人がだいたい~のように見えれば満たされる。例を挙げれば、略円形という要件は、人がだいたい円形に見えれば満たされる。
【0011】
[実施例1]
(本開示の環境制御システムにおける制御が目指す制御の目的、概要)
実施例1では、先ず、本開示の環境制御システムにおける制御が目指す制御の目的、概要について大まかに説明する。その後、環境制御システムの各構成の詳細な説明、及びその目的を実現できる具体的な制御の例等について説明する。
【0012】
図1は、本開示の実施例1に係る環境制御システム10が設置された室の一例としてのABWオフィス20において可能な複数の作業机D01~D14の配置のレイアウトの実施例を示す図面であり、上方から複数の作業机D01~D14を見たときの配置とABWオフィス20の天井部に取り付けられたベースライト3、通電用のダクトレール4、タスクライト5の配置図を作業机D01~D14の配置に重畳させる形で記載したレイアウト配置図である。
【0013】
図1に示すABWオフィス20の1形態においては、一般的な事務用机である計14台の作業机D01~D14をデスクグループ1およびデスクグループ2に分類し、その上方に、ABWオフィス20を照明するためのアンビエント照明としての28台のLED調光調色式ベースライト(例えば、NNLK41515+NNL4600EXDK9:パナソニック)を等間隔に設置し、その近傍に通電用のダクトレール4を3列分設置した。詳しくは、計14台の作業机D01~D14を4例に配置し、3つの通電用のダクトレール4を、4例の作業机D01~D14うちの3列の作業机D01~D14の近傍に列の延在方向に略平行な方向に延在するように配置した。
【0014】
更には、各ダクトレール4には、タスクライト5を計14台設置した。タスクライト5としては、LED調光式スポットライト(例えば、NTS05121W:パナソニック)5を使用した。また、各タスクライト5の開口部には波長変換フィルタを貼り付け、タスクライト5からの出力光の色温度を6000Kに調整した。そして、計14台の作業机D01~D14と、計14台のタスクライト5を、一対一に対応させ、各タスクライト5が対応する作業机D01~D14の中央部を照射するように、各タスクライト5の設置位置、及び設置方向を調整した。
【0015】
また、28台のベースライト3および14台のタスクライト5は、制御装置の一例としてのマルチマネージャー(例えば、NQ51101:パナソニック) 、LS/PD信号変換インターフェース(例えば、NK51111:パナソニック)、PD/調光信号変換インターフェース(例えば、NK51012:パナソニック)、PiPit+セパレートセルコンAタイプ(例えば、NQ23171Z:パナソニック)に調光信号線を介して順次接続した。なお、タスクライト5は2台用意したPiPit+セパレートセルコンAタイプに対して7台ずつペアリングした。
【0016】
更には、各作業机D01~D14の作業面上にサイコロセンサS1~S14を配置した。サイコロセンサS1~S14は、サイコロと同様に略立方体の形状を有するサイコロ型IoTデバイスであり、加速度センサと無線通信機能を持つサイコロ型の機器「電子サイコロ」である。このサイコロセンサS1~S14を、作業面上に配置し、人(ワーカ)が所望のモードを選択できるようになっている。詳しくは、各サイコロセンサS1~S14の6つの面は、集中作業用空間制御領域を投票(所望)していることを意味する面と、非集中作業用空間制御領域を投票(所望)していることを意味する面と、それら2つの空間のいずれも選択していないことを意味するニュートラルを意味する面とを含む。
【0017】
各サイコロセンサS1~S14は、内蔵の加速度センサで、どの向きにどれくらい回転したのかを検知し、どの面が上を向いているのかを判断する。そして、各サイコロセンサS1~S14は、その結果を、ABWオフィス20内に構築した無線通信網を通して、演算部を含むような端末など、例えば、上記マルチマネージャー、又は、ダブレット、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等で構成される操作端末に送信する。ここで、ABWオフィス20を使用するにあたって、作業が終了して席を離れる際には、人は、サイコロセンサS1~S14をニュートラルを意味する面を上に向けて席を離れることが義務になっている。このことから、マルチマネージャー又は操作端末は、作業机D01~D14を何人の人が用いて作業しているか、作業している人の内でどれくらいの人が集中作業用空間制御領域を所望しているか、作業している人の内でどれくらいの人が非集中作業用空間制御領域を所望しているかを判断できるようになっている。複数のサイコロセンサ(本実施例1の場合、14のサイコロセンサ)S1~S14は、センサ装置を構成する。なお、サイコロセンサS1~S14の無線通信の方式としては、IEEE802.15.4規格に準拠したものを好適に採用できる。
【0018】
次に、マルチマネージャーの操作アプリケーションを用いて、28台のベースライト3のマッピング作業により各ベースライト3の位置情報を記憶し、
図1に示すように、12台のベースライト3と8台のタスクライト5を照明グループ1に所属する照明機器として設定し、4台のベースライト3を照明グループ2に所属する照明機器として設定し、12台のベースライト3と6台のタスクライト5を照明グループ3に所属する照明機器として設定した。さらに、
図2に示すように、各照明グループ1~3の夫々に対して、4つのシーンを設定し、各シーンにおいて、各グループで色温度および調光率の値を設定した。
【0019】
ここで、各シーンの設定は、既存のシーン設定のアプリケーションがインストールされた操作端末、例えば、スマートフォン、タブレット又はリモコン等を用いて容易に実行できる。そして、実際に各シーンを再現した。詳しくは、ABWオフィス20の窓のブラインドカーテンを閉め切ったうえで、操作部64(
図3参照)を用いて、シーン1を再生したところ、外観上、デスクグループ1とデスクグループ2が分割された。続いて、操作部64(
図3参照)を用いて、シーン3、シーン4など他のシーンを順次再生したところ、各シーンは数秒程度で切り替わった。
【0020】
シーン1のデスクグループ1は、作業机D07~D014の中央部のみ照度が高く、中央部から離れるほど照度が低くなる、不均一な照度分布であった。また、作業机周辺の床や壁などの照度も低く、明るさ感が低い空間であった。また、シーン1のデスクグループ1では、各作業机D07~D014の作業面においてベースライトの照度よりタスクライトの照度が大きくなった。本開示では、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が大きくなっている作業机の作業面を集中作業用空間制御領域として定義する。各作業机D07~D014の作業面を用いて作業している人が、自身が用いている作業机D07~D014の作業面を集中作業用空間制御領域にして欲しいときにサイコロセンサS1~S14を用いて投票(所望)するのが集中作業用空間である。
【0021】
一方、シーン1のデスクグループ2は、作業机D01~D06の照度はデスクグループ1と比較し均一性の高い照度分布であり、作業机周辺の床や壁などの照度も高く、明るさ感が高い空間であった。シーン1のデスクグループ2では、各作業机D07~D014の作業面においてベースライトの照度よりタスクライトの照度が小さくなった。本開示では、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が小さくなっている作業机の作業面を非集中作業用空間制御領域として定義する。各作業机D07~D014の作業面を用いて作業している人が、自身が用いている作業机D07~D014の作業面を非集中作業用空間制御領域にして欲しいときにサイコロセンサS1~S14を用いて投票(所望)するのが非集中作業用空間である。
【0022】
このとき、デスクグループ1にワーカーが着席した場合、ワーカーがより注視すべき作業机D07~D014の中央部のみ照度が高いため、周辺視野の認知的なノイズ要因が低減されることから、ワーカーが作業に没頭しやすく、集中ワークの効率を高めやすい。更に、本手法では、ベースライト3の調光率を低く設定していることにより、壁や床などの周辺視野の視認性を低下させているため、より作業机D07~D014および作業への没頭効果を高めやすい。また、ベースライト3の調光率を低く設定していることにより、デスクグループ1で作業しているワーカーは、外部から他のワーカーが見たとき、顔の表情がよく見えなかったり、顔に陰がかかることで不機嫌な様子に見えたりするため、話しかけにくい。つまり、このデスクグループ1で作業しているワーカーは、他ワーカーから話しかけられ、作業が中断する確率が低下しやすいため、結果として、集中ワークの効率を高めやすい。以上より、シーン1が再現された場合、デスクグループ1は、集中スペースとして機能しやすい空間である。一方、シーン1では、デスクグループ2は、色温度が低く、リラックスや複数人でのコミュニケーション量を高めやすいため、非集中スペース(リラックススペース、共創スペース)として機能しやすい空間である。
【0023】
デスクグループ1とデスクグループ2は、空間の照度分布が大きく異なる。とくに、デスクグループ1において、作業机周辺の床や壁などの照度がより低い点が特徴であり、それが要因となり2つのデスクグループの、外観上の空間の分割感が高い。さらに、デスクグループ1とデスクグループ2は、照明の色温度が大きく異なることから、外観上の空間の分割感が高い。以上より、什器や家具などを用いずとも、認知上、スペースを区切るゾーニング効果を有する。ゾーニング効果は、各グループの照度分布や、色温度の差が大きいほどその効果を高めやすい。
【0024】
また、デスクグループ1とデスクグループ2は、それぞれワーカーに促す作業内容が異なり、例えば、本実施例のデスクグループ1では集中ワークを促し、デスクグループ2ではリラックスやコミュニケーションを促すことから、外観上のみならず、各空間の機能的な使われ方にも差がつくため、この効果もゾーニング効果に寄与するものである。
【0025】
そして、この手法によりゾーニングを行う場合、各シーンの切り替えは数秒で完了するため、結果としてABWオフィス20のレイアウトを数秒で変更することが可能である。例えば、オフィスの繁忙日など集中スペースのニーズが高い日などの事情から、各サイコロセンサS1~S14を用いて集中作業用空間制御領域を所望する数が比較的多くなった場合は、各サイコロセンサS1~S14からの信号を受けた演算部が、集中作業用空間のニーズが高いと判断して、マルチマネージャーを介して、シーンをシーン1からシーン3に切り替え、ABWオフィス20の集中作業用空間制御領域を8の作業面から14の作業面に増大させる。又は、各サイコロセンサS1~S14を用いて集中作業用空間制御領域を所望する数が比較的多くなった場合は、各サイコロセンサS1~S14からの信号を受けた操作端末が、集中作業用空間のニーズが高いと判断して、マルチマネージャーを制御することで、シーンをシーン1からシーン3に切り替え、ABWオフィス20の集中作業用空間制御領域を8の作業面から14の作業面に増大させる。このようにして、ワーカーの集中スペースのニーズを満たすことで、結果としてワーカーや組織のワークパフォーマンスを高めやすくなる。
【0026】
又は、休閑日などの事情から、各サイコロセンサS1~S14を用いて非集中作業用空間を所望する数が比較的多くなった場合は、各サイコロセンサS1~S14からの信号を受けた演算部が、非集中作業用空間制御領域のニーズが高いと判断して、マルチマネージャーを介して、シーンをシーン4に切り替え、ABWオフィス20の集中作業用空間制御領域を減少させる一方、非集中作業用空間制御領域を8の作業面から14の作業面に増大させる。又は、各サイコロセンサS1~S14を用いて非集中作業用空間を所望する数が比較的多くなった場合は、各サイコロセンサS1~S14からの信号を受けた操作端末が非集中作業用空間制御領域のニーズが高いと判断して、マルチマネージャーを介して、シーンをシーン4に切り替え、ABWオフィス20の集中作業用空間制御領域を減少させる一方、非集中作業用空間制御領域を8の作業面から14の作業面に増大させる。このようにして、集中作業用空間制御領域を減少させる一方、非集中作業用空間制御領域を14の作業面にすることで、共創スペースを増大させることができ、組織のストレス低減や、コミュニケーション量を高めやすい効果がある。また、このとき、マルチマネージャーによる制御又は操作端末を介したマルチマネージャーによる制御によって直ちにシーンの切り替えが実行される必要はない。例えば、このようなワーカーの要望を示唆する信号を受けた後、ABWオフィスの昼休み後や、翌日の営業開始時間にシーンの切り替えを実行するようにすれば、既に作業をしているワーカーに突如の環境変化による違和感や不快感を与えにくくできるため、好ましい。なお、これまで言及した構成において、各サイコロセンサS1~S14からの信号を受ける受信部や演算部はマルチマネージャー筐体の内部になくてもよい。この場合、各サイコロセンサS1~S14からの信号を受ける受信部と演算部とマルチマネージャーを含めて制御装置としてよい。
【0027】
更には、制御装置が、サイコロセンサS1~S14からの情報に基づいて一週間の各時間における集中作業用空間制御領域のニーズの傾向と非集中作業用空間制御領域のニーズの傾向を学習(分析)してもよい。そして、制御装置が、例えば、所定の曜日(例えば、木曜部)の午後(又は午前)の集中及び非集中作業用空間制御領域のニーズを特定して、その特定したニーズに基づいて実現させるシーンを選択してもよい。
【0028】
本手法によれば、上記のような、什器・家具を用いる手法では困難な、時間毎、日毎、月毎などのサイクルでレイアウトを変化させるアクティブゾーニングが可能である。従来のオフィスシーンにとって、作業机や通路などの領域は、色温度や照度分布の均一性の高い照明を行うことが一般的であった。これに対し、本願はかような色温度や照度分布を非均一にする照明手法と制御方法を用いているので、特にABWオフィスシーンにおいて、集中及び非集中作業用空間制御領域のニーズに対応するように集中及び非集中作業用空間制御領域の割り振りをフレキシブルかつ迅速に実行でき、従来の照明の知見では予見しえなかった顕著な効果を実現できるのである。
【0029】
(環境制御システム10が備える各構成の詳細な説明)
以上、本開示の環境制御システム10における制御が目指す制御の目的、概要について説明した。次に、環境制御システム10が備える各構成について詳細に説明する。
図3は、環境制御システム10を形成可能である主要構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、環境制御システム10は、サイコロセンサS1~S14、ベースライト3、タスクライト5、及びマルチマネージャーで構成される制御装置61の他、操作部64を有し、制御装置61は、制御部61aと、調光調色信号送信部61bと、演算部61cと、記憶部61dを含む。制御装置61は、コンピュータ、例えば、マイクロコンピュータによって好適に構成され、制御部61a、すなわち、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。また、記憶部61dは、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリや、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリで構成される。CPUは、記憶部61dに予め記憶されたプログラム等を読み出して実行する。また、不揮発性メモリは、制御プログラムや所定の閾値等を予め記憶する。また、揮発性メモリは、読み出したプログラムや処理データを一時的に記憶する。記憶部61dには、事前に設定された1以上のタスクライト5及び複数のベースライト3の夫々に関する位置情報及び機器識別情報が記憶されている。また、記憶部61dには、上述のシーン1からシーン4を再現する調光調色のデータが記憶されている。なお、実施例1では、8つの作業机D07~D014がデスクグループ1に所属し、6つの作業机D01~D06がデスクグループ2に所属したが、デスクグループ1やデスクグループ2に所属する作業机の数は、実施例1の場合に限らない。また、照明グループの数も実施例1のように3つに限らず、2以上の如何なる数の照明グループが存在してもよい。次に、位置情報及び機器識別情報と、環境制御システム10が備える各構成について詳細に説明する。
【0030】
(情報について)
<位置情報>
位置情報とは、空間における実際の位置など座標の絶対値に類するような情報であっても良いし、あるタスクライトやベースライト、あるいは空間に既設の柱などを基準にした相対的な位置関係の情報でも良い。また、記憶部61dに格納される位置情報は、実際に設置されたタスクライトやベースライトの位置や位置関係を完全に再現できる必要はなく、一部のみ再現(定義)できる情報でもよい。また、位置情報は、ユーザの入力によって記憶部に記録されても良いし、AIやコンピュータのアルゴリズムによって記録されても良い。また、位置情報は、別途記憶部などに保存された図面データを参照にしたり、関連付けられながら設定・記録されてもよい。また、位置情報は、環境制御システムに含まれる全ての機器に付与もしくは関連付けられている必要はなく、ユーザの事情に応じて適宜選択可能でもよい。
【0031】
<機器識別情報>
機器識別情報とは、スポットライトやベースライトの機器が識別できる情報であり、例えば、製造ナンバー、MACアドレス、IPアドレス、品番等で構成される。機器識別情報は、前述の位置情報や、グループ、シーンを設定・記録する際、あるいは機器の出力パラメータ(調色率・調光率など)を個別に設定・記録する際など、各機器が環境制御システムの中で、異なる機器が意図せずに同一のものと判断されないように用いられる。機器識別情報は、環境制御システムに含まれる全ての機器に付与もしくは関連付けられている必要はなく、付与もしくは関連付けられる機器はユーザの事情に応じて適宜選択可能である。
【0032】
(各構成の具体的な態様)
<タスクライト>
タスクライトの機器形態は特に限定されるものではなく、タスクライトとしては、上述のスポットライトの他、デスクライト、ダウンライト等を採用可能であるが、タスクライトとして、スポットライトのように特定領域に光を集めるような配光制御がなされたものであると、作業机の照明範囲を制御しやすいため好ましい。より詳しくは、スポットライトは、人が外力を付与することでスポットライトの照射方向を調整する構造を有してもよく、リモコンで二つの回転軸をモータ等で自在に回転させることで、スポットライトの照射方向を下方のいずれの方向にも自動で調整できる構造のものでもよい。少なくとも1つのスポットライトが、設置位置において照明光の出射方向をいずれの方向にも変更可能であると、集中スペースにおける長手方向の作業机間の隙間の自由度を高くできると共に、集中スペースにおける幅方向の作業机間の隙間の自由度も高くでき、集中スペースのレイアウトの自由度を高くできる。また、少なくとも1つのスポットライトが、スポットライトの照射方向をリモコンで自在に調整できる形式である場合、脚立等を用いずに地上から安全にスポットライトの照射方向を調整できる。更に述べると、上述のように、タスクライトとして、調光調色式のスポットライトを採用すると好ましい。
【0033】
タスクライトは、作業者の作業、例えばパソコン操作作業、筆記作業、読書作業などの作業効率を高めるための照明であり、作業机の視対象領域に選択的に照射される照明である。視対象領域とは、作業机で作業をする際、一般的に視野に入り得る領域であり、例えば作業机の中心の奥側にパーソナルコンピュータ(以下、単にパソコンという)を置いて操作をする場合は、作業机の中央部が視対象領域の中心である。このとき、生理的要因であったり偶発的に生じる体勢や目線変化による視対象の変化は勘案しない、つまり、一時的な考え事や背伸びのために天井を見上げたり、壁際に目線を移したり、くしゃみや咳で床に目線を移したり、誰かに話しかけられたため目線を移したり、といった事象は、作業机D01~D14における視対象領域の有意な変化として考慮しない。
【0034】
タスクライトの照明範囲は、視対象領域の一部に限定されていることが好ましく、例えば、作業机の面積に対して30%~90%が照明範囲であることが好ましい。タスクライトの照明範囲は、特に限定されるものではないが、略円形もしくは略多角形であることが好ましい。このようにすることで、視対象領域の明るさが、視対象領域ではない領域の明るさに対して明るくなり、周辺視野の認知的なノイズが低減する。よって、ワーカーの意識が、作業机側に向き、作業効率を高め易い。
【0035】
ここで、照明範囲とは、作業机に到達する単位面積あたりの光量の最大値が半減する位置として算出可能であり、一般的には半値幅とよばれる範囲である。照明範囲は、公知の照度計を用いることで測定及び算出が可能である。タスクライトの色温度は、特に限定されるものではないが、4000K~6500Kであれば、認知上集中力を高め易くて好ましい。
【0036】
<ベースライト>
ベースライトは室内の明るさを高めるための照明であり、室内を均一的に照射される照明である。ベースライトの配光分布は、室内を均一に照射するためにスポットライトと比べて広範囲であることが好ましい。ベースライトの色温度はとくに限定されるものではない。ベースライトは調光調色式であることが好ましい。ベースライトの機器形態は特に限定されるものではなく、シーリングライト、ラインライト、ペンダントライト、スポットライト、ライトバーなど任意のものを使用可能である。
【0037】
<センサ装置>
センサ装置は、室内に存在する1以上の人の位置情報、室内に存在する1以上の人の在席情報、及び室内に存在する1以上の人の個人情報のうちの少なくとも1つを検出できる如何なる装置でもよい。例えば、実施例1では、センサ装置が、複数のサイコロセンサで構成される場合について説明するが、センサ装置は、作業机D01~D14の数と同じ数だけ存在する椅子の夫々に1つずつ取り付けられた着座センサ(重量センサ)でもよく、又は各椅子に関して、人が着座しているか否かを検出できる人感センサ(光学センサ)でもよい。
【0038】
又は、センサ装置は、室内の人の分布を特定できる装置でもよく、人の位置情報を検出できるLPS(Local Positioning system)(商標登録)やカメラ、LIDER等でもよい。LPSは、人が付帯(人が直接所持したり、人が所持している物に取り付ける)して位置情報を発信するビーコン、スキャナ、及び制御装置を備える。天井に設置したスキャナが、ビーコンからの信号を受信して位置情報を測定する。制御装置は、その位置情報を受信することで、室内における人の分布を特定する。カメラは、撮映像をもとに人の人数や表情を分析する映像分析部を備えるカメラシステムであっても良い。LPSは、位置情報をもとに人の人数や空間の利用率を分析する位置情報分析部を備えるLPSシステムであっても良い。又は、センサ装置は、室内の音声を測定する装置でもよく、マイク等でもよい。マイクは、録音声をもとに人の人数や状態を分析する音声分析部を、マイク本体の内外いずれかに備えるマイクシステムであっても良い。かような装置をセンサ装置とすることで、ワーカーが特に何らかの端末に対し操作行動を行わずとも自動的に制御装置の制御方法を決めやすくなるため、好ましい。
【0039】
又は、センサ装置は、ID情報(識別情報)を検知するカードリーダ等のID情報取得装置でもよい。この場合、制御装置は、例えば、ID情報取得装置からの情報に基づいて、各ワーカーの個人情報として、集中作業用空間もしくは非集中作業用空間のいずれを使うことが多い部署の人であるかとか、いずれの空間が好みであるとか等を判断できる。
又は、ID情報が検出された後に所望したモードが無線又は有線でクラウドサーバ等に保存させるようになっていて、その情報を学習できるようになっていてもよい。すなわち、ID情報と、他のセンサの複合的な検知によって学習を行い、制御装置が、その学習に基づいてID情報を検知した人が所望している空間を自動的に判断してもよい。
ID情報には、そのIDに関連付けられるワーカーの、例えば、識別番号、識別記号、名前、性別、所属組織、スケジュール情報、業務で使用する端末に関する情報、行動履歴、バイタルに関する情報、施設の予約情報、人事的な情報等、オフィスにおける属性情報が含まれていても良く、これらの情報が制御装置の制御方法に寄与しても良い。
【0040】
さらに、個人情報には、集中作業用空間制御領域所望とか、非集中作業用空間制御領域所望といった、各ワーカーのオフィス空間の制御態様に対する要望を宣言(所望)する情報が含まれる。個人情報だけで制御する例としては、スマートフォン等の操作端末のアプリケーションに、その人が所望するモードを事前に設定しておいて、その操作端末を、そのモードを検出する検出装置(この場合、この検出装置が、センサ装置となる)に近づけることで、検出装置に所望のモードを読み取らせ、そのモードが制御装置に送信される構成でもよい。又は、センサ装置は、入室した際に所望のモードを入力する操作部(操作インターフェース等で構成)でもよい。そして、人が、室内に入室する際に、集中作業用空間又は非集中作業用空間を選択できるようになっていてもよい。また、本願で意図する個人情報には、例えば電子サイコロ、電子投票システムなどを通して得られた、宣言(所望)のルーツとなる人が特定されない無記名的なものも含む。換言すると、必ずしも宣言(所望)とワーカーの属性情報が紐づけられている必要はない。
【0041】
<制御装置>
制御装置61は、タスクライトや、ベースライトを制御するための装置である。ここで、制御には、ON・OFF制御や調光調色制御が含まれる。制御装置61の機器形態は特に限定されるものではないが、制御装置61の機器形態としては、例えば、実施例1記載の照明制御デバイスおよび照明制御デバイスの制御アプリケーションを好適に採用できる。デバイスの制御アプリケーションは、
図3に例示するマルチマネージャーの他、タブレット、パソコン、スマートフォン等の別端末にインストールされていてもよく、この場合、ユーザにとって照明制御デバイスの設定・管理・運用がしやすいため好ましい。
【0042】
詳しくは、
図3に示す例では、例えば、マルチマネージャーで構成される制御装置61が、直接、サイコロセンサS1~S14から信号を受信するようになっている。しかし、
図4に示すように、例えば、マルチマネージャーで構成される制御装置71は、操作端末(例えば、タブレット、スマートフォン)79から信号を受信することで制御される構成でもよい。そして、この場合、操作端末79が、サイコロセンサS1~S14から信号を受信し、受信した信号に基づいて制御装置71に制御信号を送信してもよい。また、操作端末79が、演算部73と、操作部75を有してもよい。すなわち、環境制御システム70の制御装置71は、タブレット72等の操作端末とは別の端末やデバイスであってもよく、マルチマネージャー等で構成されてもよい。ここで、制御装置71は、その筐体が天井や壁面に埋め込まれる態様であってもよいし、地面や収納棚などに据置きされていてもよい。また、制御装置71は、タブレット72等の操作端末と有線で信号通信をして制御されても良いし、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)など無線で信号通信をして制御されても良い。この場合、
図4には特に図示することはないが制御装置71に通信用の信号線を結線するためのポートや無線LANのアクセスポイントを有する通信装置が含まれていても良い。さらに、このとき、タブレット72などがタスクライト5やベースライト3と直接通信を行なわなくても良い。このとき、タブレット72の操作部75を使って設定したマッピング、シーン、グループ、制御スケジュール等、環境制御システム70を構成する器具の位置や制御条件の情報を、制御装置71へ送信し、制御装置71の記憶部76へ記録してもよい。この場合、タブレット72の電源をオフにした状態であったり、タブレット72をタスクライト5やベースライト3との通信範囲外の場所へ保管した場合でも、意図した環境制御を行うことができる。また、制御装置71は、液晶ディスプレイのような操作用のユーザーインタフェースを有していなくても良い。この場合、制御装置71は、小型化しやすくなり、設置容易性や意匠性が高まるので好ましい。なお、
図4には、特に図示することはないが、タブレット72等の操作端末は、記憶部を有していても良い。また、
図4に示す環境制御システム70は、
図3に示す環境制御システム10の変形例であるが、
図4に示す環境制御システム70以外で実現可能で着想容易な態様の変形例の環境制御システムが多数存在することは明らかである。
【0043】
<演算部>
演算部は、センサ装置から得られた情報に基づき、オフィス空間の量に関するニーズ、例えば、本願では集中作業用空間もしくは非集中作業用空間の量の割合を判定する演算処理を含む。
図3に示すように、演算部61cは、例えば、マルチマネージャー等で構成され、調光・調色制御を直接行う制御装置61の内部に組み込まれていても、いなくてもよい。そして、
図4に示すように、調光・調色制御を直接行う制御装置71の内部に組み込まれていない場合、調光・調色制御を直接行う制御装置71とは別の情報機器、例えば、スマートフォン、タブレット、又はパソコン等の操作端末、若しくは、クラウド上のサーバーやワークステーション、若しくは、外付け記憶媒体等で構成されてもよい。演算部は、あらかじめプログラムされた演算処理を実行するが、プログラムは使用中に書き換えが行われるようにしてもよい。プログラムの書き換えは人がエディターソフトやパソコンを介して行っても良いし、AIなどが過去の蓄積データの学習結果などに基づき無人かつ自動的に行っても良い。演算部に含まれる演算処理としては、センサ装置から得られた情報を処理する範囲においてとくに限定されるものではないが、例えば、複数のワーカーが投票した所望情報を四則演算により集計したり、LPSシステムやカメラシステムなどから得られた人数情報を四則演算により集計したり、上記のような集計情報や過去の蓄積データに基づき、回帰分析など統計学的な演算手段によって、オフィス空間の量に関するニーズを予測しても良い。演算部での処理で得られる算出結果は、例えば、マルチマネージャー等で構成され、調光・調色制御を直接行う制御装置へフィードバックされ、制御装置の制御方法の少なくとも一部に寄与する。こうすることで、オフィスの時々刻々変化する状況に応じてフレキシブルに対応が可能となるため好ましい。また、演算部の算出結果は、必ずしも調光・調色制御を直接行う制御装置へフィードバックされる必要はなく、たとえば各空間の経時的な使用状況の変化のグラフや、ワーカーや組織のパフォーマンスに係る情報などを出力としても良い。こうすることで、とくにオフィスの責任者や総務担当者にとって、オフィスの使われ方や、普段継続的に認知することが難しいワーカーや組織のパフォーマンスを把握しやすくなるため、好ましい。
【0044】
<調光調色信号送信部>
調光調色信号送信部61bとは、タスクライト、及びベースライトに調光調色信号を送信し、調光及び調色の少なくとも一方を実行させる部分であり、制御装置61に含まれるものである。信号形式は特に限定されるものではなく、公知の調光信号、Wi-Fi、BlueTooth(登録商標)など任意のものが使用可能である。なお、上述の調光調色制御では、デジタル制御方式の調光調色制御について説明し、ライトコントロールからデジタル信号(PDCL)を送信する制御方式について説明した。ここで、この制御方式では、電源線に加え、デジタル制御用の信号線の配線が必要となる。このデジタル制御では、詳細情報の通信が可能である為多くの情報を用いた制御を行うことが可能になり、無線信号による制御もこの方式に含まれる。
【0045】
しかし、調光調色制御を行うに際し、位相制御方式を採用してもよく、照明機器への電力を直接調節することで調光制御を実行してもよい。この方式では、照明機器への電源電流を直接制御するため、電圧変動の影響を受けやすいものの、専用信号線を別途引く必要が無いため、施工性に優れる。又は、調光調色制御を行うに際し、信号線式方式を採用してもよく、ライトコントロールから調光信号(デューティ信号)を送り、機器側の電源ユニットでLED等の発光部の明るさを制御してもよい。この方式では、電源線に加え、調光信号線の配線が必要になるが、電線電圧の影響を受けにくい為、チラツキのないスムーズな調光制御が可能になる。なお、タスクライトやベースライトのON・OFFのみの制御も、調光制御に含まれる。
【0046】
<記憶部>
記憶部を構成するデバイスは、公知の如何なるものが採用されてもよい。また、記憶部は、
図3に示す構成と異なり制御装置の内部に組み込まれていなくてもよく、例えば、調光・調色制御を直接行う制御装置とは別の情報機器、例えば、スマートフォン、タブレット、又はパソコン等、若しくは、クラウド上のサーバーやワークステーション、若しくは、外付け記憶媒体等で構成されてもよい。記憶部は、ユーザが基本設定するが、クラウドやAIで機械が書き換えて設定してもいい。
【0047】
<複数機器のグループ情報>
複数の照明機器のグループ情報は、例えばアプリで管理される。グループ化は、例えば、タブレット端末を操作することで、設定・保存されてもよい。グループ化された複数機器には、同じ命令が一斉に飛び、例えば、同様の調光調色制御が施される。なお、グループ化された複数機器の調光調色制御、すなわち群制御に関し、信号遅延は許容され、機器の動作のばらつきも許容される。たとえば、許容される機器の動作のばらつきは30分以内であり、より好ましくは10分以内であり、さらに好ましくは1分以内であり、最も好ましくは10秒以内であり、この範囲に収まる信号あるいは命令の遅延は、グループ化されている複数機器の挙動に含まれる。機器の動作ばらつきが上記時間以内である場合、一般的な什器や家具の運搬や再設置を伴うレイアウト変更に比較して十分早く、かつ省労力でレイアウト変更が達成し易いため好ましい。グループの設定は、制御装置を操作するアプリケーションの機能として含まれている場合もあるが、必ずしも「グループ」という名称で定義されるとは限らない。制御装置を操作するアプリケーションあるいは制御装置に含まれる記憶部に、グループの設定をしておくと、ユーザにとって照明やその制御パラメータの管理・変更がし易くなるため好ましい。
【0048】
<制御シーン情報>
複数の照明機器に対して、各機各様の調光率・調色率などの制御パラメータを設定し、再生することは、ユーザにとって大変煩雑な作業である。なぜなら、一般的なABWオフィスでは、照明機器を10台以上、ないしは30台以上、多い場合であれば100台以上使用するためである。そこで、複数の照明機器の制御パラメータを一括で記憶部に格納し、管理する手法が知られており、これを本願ではシーンと呼称する。このようにすることで、ユーザにとって、複数の照明機器に対する制御パラメータの条件の管理がしやすいだけでなく、所望のタイミングで、瞬時にそれらの条件を複数の照明機器へ反映させること(以下、再生と呼称する)も容易となるため、好ましい。さらに、ユーザは、複数種類のシーンをあらかじめ記憶部に格納しておくことによって、意図した2つ以上の設定条件を瞬時に切り替えることが可能である。各シーンの設定は、仕様ニーズによって、如何なるように設定されてもよく、例えば、
図2に示す例とは異なり、例えば、シーン1に10台のベースライトの調光率を100%に設定し記憶部に保存し、さらにシーン2に前述の10台のベースライトの調光率を30%に設定し記憶部に保存してもよい。そして、シーン1を再生すれば、瞬時に10台のベースライトの調光率が100%に設定された状態に遷移するし、この状態からシーン2を再生すれば、瞬時に10台のベースライトの調光率が30%に設定された状態に遷移するようにしてもよい。このようにすると、毎回10台の照明機器の調光率を設定しなおす作業より、はるかに短時間かつ省労力で多数の照明機器の調光制御を実現できて好ましい。なお、シーンの設定は、制御装置を操作するアプリケーションの機能として含まれている場合もあるが、必ずしも「シーン」という名称で定義されるとは限らない。また、各シーンの設定は、次のようにグループ1、2のシーンを設定してもよい。ここで、グループ1は、例えば、10台のベースライトで構成され、グループ2は、他の10台のベースライトで構成されてもよい。そして、例えば、シーン1では、グループ1:調光率0%、グループ2:調光率50%に設定されてもよく、シーン2では、グループ1:調光率50%、グループ2:調光率0%に設定されてもよい。このようにシーンを設定すれば、ワーカーが集中し易いゾーンと、ワーカーがリラックスし易くて他のワーカーとコミュニケーションをとり易いゾーンとを瞬時に交換させることができ、二つのゾーンの規模が異なる場合に、ニーズによって、各ゾーンの規模を瞬時に変更させることができる。なお、シーン化された複数機器の調光調色制御、すなわち群制御に関し、信号遅延は許容され、機器の動作のばらつきも許容される。たとえば、許容される機器の動作のばらつきは30分以内であり、より好ましくは10分以内であり、さらに好ましくは1分以内であり、最も好ましくは10秒以内であり、この範囲に収まる信号あるいは命令の遅延は、シーン化されている複数機器の挙動に含まれる。
【0049】
<集中スペース>
集中スペースは、次のように定義してもよい。詳しくは、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が大きくなる作業面を有する2以上の机が連続して隣り合うように配置されている場合、鉛直方向を含む平面で、上記2以上の机のうちで少なくとも1つの机に交差する任意の平面を考えたとき、その平面が上記2以上の机の少なくとも一方側で、上記2以上の机とは他の机と交差している場合、上記2以上の机に含まれると共に上記他の机に平面を介して対向している1の机を特定する。そして、その平面が交差している該1の机における上記他の机側の端と、その平面が交差している該他の机における該1の机側の端との中心よりも該1の机側の線分領域(鉛直方向上方から見たとき線分に見える領域)を上記集中スペースとして定義してもよい。
【0050】
また、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が大きくなる作業面を有する2以上の机が連続して隣り合うように配置されている場合、鉛直方向を含む平面で、上記2以上の机のうちで少なくとも1つの机に交差する任意の平面を考えたとき、その平面が上記2以上の机の少なくとも一方側で、上記2以上の机とは他の机と交差していない場合、上記2以上の机に含まれると共に上記平面が交差する箇所で、上記2以上の机における最も他の机と交差しない側の端よりも1m他の机と交差しない側に移動した箇所よりも上記2以上の机側の線分領域(鉛直方向上方から見たとき線分に見える領域)を上記集中スペースとして定義してもよい。
【0051】
また、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が大きくなる作業面を有する机が連続して隣り合うように配置されていなくて、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が大きくなる作業面を有する机が一つで孤立している状態になっている場合、その1つの机に交差する任意の平面を考えたとき、その平面が上記1つの机の少なくとも一方側で、上記1つの机とは他の机と交差している場合、その平面が交差している上記1つの机における上記他の机側の端と、その平面が交差している該他の机における該1つの机側の端との中心よりも上記1つの机側の線分領域(鉛直方向上方から見たとき線分に見える領域)を上記集中スペースとして定義してもよい。
【0052】
また、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が大きくなる作業面を有する机が連続して隣り合うように配置されていなくて、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が大きくなる作業面を有する机が一つで孤立している状態になっている場合、その1つの机に交差する任意の平面を考えたとき、その平面が上記1つの机の少なくとも一方側で、上記1つの机とは他の机と交差していない場合、上記1つの机における最も他の机と交差しない側の端よりも1m他の机と交差しない側に移動した箇所よりも上記1つの机側の線分領域(鉛直方向上方から見たとき線分に見える領域)を上記集中スペースとして定義してもよい。
【0053】
<非集中スペース(リラックススペース、共創スペース)>
非集中スペースは、次のように定義してもよい。詳しくは、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が小さくなる作業面を有する2以上の机が連続して隣り合うように配置されている場合、鉛直方向を含む平面で、上記2以上の机のうちで少なくとも1つの机に交差する任意の平面を考えたとき、その平面が上記2以上の机の少なくとも一方側で、上記2以上の机とは他の机と交差している場合、上記2以上の机に含まれると共に上記他の机に平面を介して対向している1の机を特定する。そして、その平面が交差している該1の机における上記他の机側の端と、その平面が交差している該他の机における該1の机側の端との中心よりも該1の机側の線分領域(鉛直方向上方から見たとき線分に見える領域)を上記非集中スペースとして定義してもよい。
【0054】
また、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が小さくなる作業面を有する2以上の机が連続して隣り合うように配置されている場合、鉛直方向を含む平面で、上記2以上の机のうちで少なくとも1つの机に交差する任意の平面を考えたとき、その平面が上記2以上の机の少なくとも一方側で、上記2以上の机とは他の机と交差していない場合、上記2以上の机に含まれると共に上記平面が交差する箇所で、上記2以上の机における最も他の机と交差しない側の端よりも1m他の机と交差しない側に移動した箇所よりも上記2以上の机側の線分領域(鉛直方向上方から見たとき線分に見える領域)を上記非集中スペースとして定義してもよい。
【0055】
また、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が小さくなる作業面を有する机が連続して隣り合うように配置されていなくて、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が小さくなる作業面を有する机が一つで孤立している状態になっている場合、その1つの机に交差する任意の平面を考えたとき、その平面が上記1つの机の少なくとも一方側で、上記1つの机とは他の机と交差している場合、その平面が交差している上記1つの机における上記他の机側の端と、その平面が交差している該他の机における該1つの机側の端との中心よりも上記1つの机側の線分領域(鉛直方向上方から見たとき線分に見える領域)を上記非集中スペースとして定義してもよい。
【0056】
また、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が小さくなる作業面を有する机が連続して隣り合うように配置されていなくて、ベースライトの照度よりタスクライトの照度が小さくなる作業面を有する机が一つで孤立している状態になっている場合、その1つの机に交差する任意の平面を考えたとき、その平面が上記1つの机の少なくとも一方側で、上記1つの机とは他の机と交差していない場合、上記1つの机における最も他の机と交差しない側の端よりも1m他の机と交差しない側に移動した箇所よりも上記1つの机側の線分領域(鉛直方向上方から見たとき線分に見える領域)を上記非集中スペースとして定義してもよい。
【0057】
(本開示の目的を実現できる具体的な制御)
本項目では、集中及び非集中作業用空間制御領域のニーズに対応するように集中及び非集中作業用空間制御領域の割り振りをフレキシブルかつ迅速に実行できる具体的な制御の一例について説明する。
図5は、人のニーズに基づいて、集中作業用空間制御領域を拡大又は減少させると同時に、非集中作業用空間制御領域を減少又は拡大させる制御の一例について説明するためのフローチャートであり、制御装置61が、人のニーズに基づいて実行するシーン1とシーン2(
図2参照)の切り替え制御について説明するためのフローチャートである。
【0058】
図5を参照して、環境制御システム10が、ABWオフィス20に設置されて、その稼働が開始すると、制御がスタートし、ステップS1で、制御装置61が、シーン1が再現されるように、ベースライト3及びタスクライト5を調光・調色制御する。その後、ステップS2に移行して、制御装置61が、(集中制御モードを所望する面が上側に向けられているサイコロセンサの数)/(集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)が第1所定値以下か否かを判定する。なお、机の数は、あらかじめユーザが制御装置61や演算部に記憶させて設定しておいてもよいし、センシングなどによって自動で個数をカウントして制御装置61もしくは演算部に記憶させてもよい。
【0059】
ここで、制御装置61が特定する(集中制御モードを所望する面が上側に向けられているサイコロセンサの数)/(集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)は、第1人占有量の一例であり、第1所定値は、第1人占有閾値の一例である。また、上記第1所定値は、環境制御システム10が備える全てのサイコロセンサの数が14である実施例1の場合には、例えば、4/14=2/7や、3/14に設定できる。
【0060】
なお、第1人占有量は、作業面が集中作業用空間制御領域に含まれる机の数と、センサ装置からの情報に基づいて特定した集中作業用空間制御領域内に位置する作業面を利用していると考えられる人の数とに基づいて算出される値であれば如何なる値でもよく、例えば、(集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)/(集中制御モードを所望する面が上側に向けられているサイコロセンサの数)等でもよい。
【0061】
ステップS2で否定判定されて、制御装置61が、集中作業用空間のニーズが高いと判断すると、制御がリターンとなって、ステップS1以下が繰り返される。他方、ステップS2で肯定判定されると、ステップS3に移行して、制御装置61が、(非集中制御モードを所望する面が上側に向けられているサイコロセンサの数)/(非集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)が第2所定値以下か否かを判定する。ここで、制御装置61が特定する(非集中制御モードを所望する面が上側に向けられているサイコロセンサの数)/(非集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)は、第2人占有量の一例であり、第2所定値は、第2人占有閾値の一例である。また、上記第2所定値は、実施例1の場合には、例えば、3/14=2/7や、2/14=1/7に設定できる。
【0062】
なお、第2人占有量は、作業面が非集中作業用空間制御領域に含まれる机の数と、センサ装置からの情報に基づいて特定した非集中作業用空間制御領域内に位置する作業面を利用していると考えられる人の数とに基づいて算出される値であれば如何なる値でもよく、例えば、(非集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)/(非集中制御モードを所望する面が上側に向けられているサイコロセンサの数)等でもよい。
【0063】
ステップS3で肯定判定されて、制御装置61が、非集中作業用空間のニーズも低いと判断すると、制御装置61が、シーンを変更する必要がないと判断して、制御がリターンとなって、ステップS1以下が繰り返される。他方、ステップS3で否定判定されると、ステップS4に移行し、制御装置61が、非集中作業用空間制御領域の範囲が非集中制御モードの需要に対して不足していると判断し、シーン1をシーン2に切り替える。
図2に示すように、シーン1では、8個の作業机D07~D14を有するデスクグループ1が集中スペースになっている一方、6個の作業机D01~D06を有するデスクグループ1が非集中スペースになっている。また、それとは逆に、シーン2では、8個の作業机D07~D14を有するデスクグループ1が非集中スペースになっている一方、6個の作業机D01~D06を有するデスクグループ1が集中スペースになっている。このことから、シーン1をシーン2に切り替えることで、非集中作業用空間制御領域を拡大できると同時に集中作業用空間制御領域を縮小することができ、人のニーズにフレキシブルかつ迅速に対応できる。
【0064】
ステップS4の後のステップS5では、制御装置61が、(集中制御モードを所望する面が上側に向けられているサイコロセンサの数)/(集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)が上記第1所定値より上か否かを判定する。ステップS5で否定判定されると、制御装置61が、集中スペースに対する需要がそれ程存在しないと判断して、ステップS4に戻ってシーン2の再生を維持し、ステップS4以下が繰り返される。
【0065】
他方、ステッステップS5で肯定判定されると、ステップS6に移行して、制御装置61が、(非集中制御モードを所望する面が上側に向けられているサイコロセンサの数)/(非集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)が上記第2所定値より上か否かを判定する。ステップS6で肯定判定されると、シーン1に切り替えた場合に、非集中スペースを利用している人の不利益が大きくなると判断し、ステップS4に戻ってシーン2の再生を維持し、ステップS4以下が繰り返される。他方、ステップS6で否定判定されると、制御がリターンとなって、ステップS1以下が繰り返される。
【0066】
(実施例1の構成及び作用効果)
以上、実施例1の環境制御システム10における制御、及び各構成の具体的な態様について説明した。本項目では、環境制御システム10の必須の構成とその作用効果、及び採用すると好ましい構成とその作用効果について説明する。
【0067】
<必須の構成とその構成から導かれる作用効果>
環境制御システム10は、複数の作業机(机)D01~D14が配置されているABWオフィス(室)20内における作業机D01~D14の作業面(上面)を照明するための複数のタスクライト5と、ABWオフィス20内において上記作業面よりも広範囲な領域を照明するための複数のベースライト3と、ABWオフィス20内に存在する1以上の人の位置情報、ABWオフィス20内に存在する1以上の人の位置情報、ABWオフィス20内に存在する1以上の人の在席情報、及びABWオフィス20室内に存在する1以上の人の個人情報のうちの少なくとも1つを検出するサイコロセンサ(センサ装置)S1~S14と、制御装置61と、を備える。また、制御装置61は、ベースライト3の照度よりタスクライト5の照度が大きくなる集中作業用空間制御領域とベースライト3の照度よりタスクライト5の照度が小さくなる非集中作業用空間制御領域とが生じるように、複数のタスクライト5及び前複数のベースライト3を調光・調色制御するゾーニング制御を行う。また、環境制御システム10は、制御装置61が、サイコロセンサS1~S14からの情報に基づいて集中作業用空間制御領域の量が小さい(集中作業用空間制御領域の広さが狭い)と判断すると集中作業用空間制御領域の量が大きく(集中作業用空間制御領域の広さが広く)なるように複数のタスクライト5及び複数のベースライト3を調光・調色制御することと、制御装置61が、サイコロセンサS1~S14からの情報に基づいて集中作業用空間制御領域の量が大きい(集中作業用空間制御領域の広さが広い)と判断すると集中作業用空間制御領域の量が小さく(集中作業用空間制御領域の広さが狭く)なるように複数のタスクライト5及び複数のベースライト3を調光・調色制御することと、制御装置61が、サイコロセンサS1~S14からの情報に基づいて非集中作業用空間制御領域の量が小さい(非集中作業用空間制御領域の広さが狭い)と判断すると、非集中作業用空間制御領域の量が大きく(非集中作業用空間制御領域の広さが広く)なるように複数のタスクライト5及び複数のベースライト3を調光・調色制御することと、制御装置61が、サイコロセンサS1~S14からの情報に基づいて非集中作業用空間制御領域の量が大きい(非集中作業用空間制御領域の広さが広い)と判断すると非集中作業用空間制御領域の量が小さく(非集中作業用空間制御領域の広さが狭く)なるように複数のタスクライト5及び複数のベースライト3を調光・調色制御することのうちの1以上を実行する。なお、ここで、「量」とは、大小関係を規定できる物理量として定義でき、この物理量には、個数等の無次元の量も含まれると定義できる。したがって、「量」には、例えば、「広さ(面積)」や「個数」が含まれる。
【0068】
本開示によれば、集中作業用空間制御領域及び非集中作業用空間制御領域のうちの少なくとも一方の使用のニーズに基づいて集中作業用空間制御領域及び非集中作業用空間制御領域のうちの少なくとも一方を拡大又は縮小できる。したがって、時間毎、日毎、月毎などのサイクルで生じるワーカーや組織の流動的なワークパフォーマンスや各スペースに対するニーズに対しても容易に対応するアクティブゾーニングを実現できる。
【0069】
<選択すると好ましい複数の構成と、その各構成から導かれる作用効果>
環境制御システム10では、集中作業用空間制御領域の広さを広くする制御を行うと同時に、非集中作業用空間制御領域の広さを狭くする制御を行ってもよく、集中作業用空間制御領域の広さを狭くする制御を行うと同時に、非集中作業用空間制御領域の広さを広くする制御を行ってもよい。なお、同時というのは、30分以内であると好ましく、10分以内であるより好ましく、1分以内であるとさらに好ましく、10秒以内であると最も好ましい。30分以内である場合、一般的な什器や家具の運搬や再設置を伴うレイアウト変更に比較して十分早く、かつ省労力でレイアウト変更を達成できるためである。また、本構成は、必須な構成でなくて、実行されなくてもよく、例えば、上で詳細に述べた方法を用いて、集中作業用空間制御領域の量を大きく(集中作業用空間制御領域の広さを広く)する制御だけが行われてもよく、又は、集中作業用空間制御領域の量を小さく(集中作業用空間制御領域の広さを狭く)する制御だけが行われてもよい。又は、上で詳細に述べた方法を用いて、(非集中作業用空間制御領域の量を大きく(非集中作業用空間制御領域の広さを広く)する制御だけが行われてもよく、非集中作業用空間制御領域の量を小さく(非集中作業用空間制御領域の広さを狭く)する制御だけが行われてもよい。すなわち、例えば、集中作業用空間制御領域の量を大きくするか小さくする制御だけが行われ、非集中作業用空間制御領域の量を変化させる制御が行われなくてもよい。また、逆に、非集中作業用空間制御領域の量を大きくするか小さくする制御だけが行われ、集中作業用空間制御領域の量を変化させる制御が行われなくてもよい。
【0070】
本構成によれば、室の広さが狭い場合等で、集中作業用空間制御領域と非集中作業用空間制御領域の分配を効果的に実行できる。
【0071】
また、制御装置61は、作業面が集中作業用空間制御領域に含まれる作業机D01~D14の数と、サイコロセンサS1~S14からの情報に基づいて特定した集中作業用空間制御領域内に位置する作業面を利用していると考えられる人の数とに基づいて算出される第1人占有量を第1人占有閾値と比較することで、集中作業用空間制御領域の量(集中作業用空間制御領域の広さ)が適切か否かを判断することと、作業面が非集中作業用空間制御領域に含まれる作業机D01~D14の数と、サイコロセンサS1~S14からの情報に基づいて特定した非集中作業用空間制御領域内に位置する作業面を利用していると考えられるに人の数とに基づいて算出される第2人占有量を第2人占有閾値と比較することで、非集中作業用空間制御領域の量(非集中作業用空間制御領域の広さ)が適切か否かを判断することのうちの少なくとも一方を行う演算部61cの算出結果情報に基づいて調光・調色制御を実行してもよい。
【0072】
本構成によれば、集中作業用空間制御領域のニーズと非集中作業用空間制御領域のニーズとのうちの少なくとも一方を客観的に判断できる。
【0073】
[実施例2]
実施例1では、サイコロセンサS1~S14を用いて、人のニーズに応答性良くシーンを切り替える場合について説明したが、シーンは、所定期間のみに切り替えられるものでもよい。例えば、オフィス等では、お昼休みの間に、照明を暗くすることがあるが、午前中とお昼休み後から午後4時までのシーンは、お昼休み後のタスクライト5及びベースライト3の点灯時に切り替えられるものでもよい。この場合、例えば、午後からABWオフィス20を用いる各人が、上述のセンサ装置の欄で説明した何らかの方法で、午前中に午後からのモードの希望の情報を調光・調色制御を直接行う制御装置や、それ以外の情報機器、例えば、タブレット、スマートフォン等で構成される操作端末やクラウド上のワークステーションやサーバー等に送信して、センサ装置から直接信号を受けるか、又は情報機器から信号を受けた制御装置が、それらの情報に基づいて最適なシーンを選択するようになっていてもよい。なお、念のため繰り返し述べるが、実施例1では、制御装置がオフィス空間のニーズの演算や判定を実行する態様を示したが、本願の意図する構成において必須ではない。つまり、特に図示することはないが、この演算や判定を実行する部分が、例えば、CPUを有するクラウドサーバや別のパソコンやタブレットにあっても良く、任意の態様を選択できることは自明である。
【0074】
また、実施例1では、ゾーニングを、タスクライト5及びベースライト3の調光・調色制御のみで実行したが、ゾーニングは、タスクライト5及びベースライト3の調光・調色制御に加えて音の出力でも実行してもよい。
【0075】
実施例2では、シーンは、所定期間のみに切り替え、かつ、ゾーニングを音響効果も用いて実行する場合について説明する。
【0076】
図6は、実施例2の環境制御システム110における
図1に対応するレイアウト配置図である。また、
図7は、実施例2の環境制御システム110における
図3に対応するブロック図である。
図6に示すように、環境制御システム110は、実施例1の環境制御システム10との比較において、ダクトレール104に複数のスピーカ109(例えば、LSPX-103E26:ソニー)を取り付けた点が異なる。また、センサ装置として、サイコロセンサS1~S14を用いる代わりに、携帯電話(スマートホン)に事前に登録されている希望のモードを読み取る情報読取装置88を採用している点が異なる。情報読取装置88は、例えば、ABWオフィス120の出入口の周辺に設置される。
【0077】
また、
図7に示すように、実施例2では、環境制御システム110の制御装置161は、制御部161aと、調光調色信号送信部161bと、演算部161cに加えて音信号送信部161dを有し、複数のスピーカ109に出力する音情報を含む信号を出力する。環境制御システム110の音制御部は
図7に示す場合とは異なり、直接調光・調色制御を行う制御装置161の外部の情報機器(例えば、操作端末やクラウド上のワークステーションやサーバー)に内蔵されていてもよく、より具体的には、例えば、パソコン、タブレット、スマートフォン、シングルボードコンピュータ等に内蔵されていてもよい。
【0078】
より詳しく、複数のスピーカ109の音響効果について説明すると、
図6に示すように、環境制御システム110では、ダクトレール104に4つの第1~第4スピーカ109a~109dが取り付けられ、各スピーカ109a~109dを、無線でステレオ接続した。また、第1スピーカ109aと第2スピーカ109bがスピーカ群1を構成し、第3スピーカ109cと第4スピーカ109dがスピーカ群2を構成するようにした。そして、スピーカ群1に所属する第1及び第2スピーカ109a,109bが同一の第1音声コンテンツを出力し、スピーカ群2に所属する第3及び第4スピーカ109c,109dが同一の第2音声コンテンツを出力するようにした。スピーカ群1に所属する第1及び第2スピーカ109a,109bは、デスクグループ1の領域に存在する人に音を出力し、スピーカ群2に所属する第3及び第4スピーカ109c,109dは、デスクグループ2の領域に存在する人に音を出力する。なお、スピーカ群1に所属するスピーカの数は、如何なる数でもよく、スピーカ群2に所属するスピーカの数も、如何なる数でもよい。また、スピーカ109として、指向性スピーカ、例えば、パラメトリック・スピーカー等を採用してもよい。パラメトリック・スピーカーでは、超音波が使われるため、音の出力方向に顕著な指向性を持たせることができる。
【0079】
係る構成で、例えば、デスクグループ1の上部にあるスピーカ群1から、小川のせせらぎの音を録音したサウンドコンテンツをスマートフォン経由で再生した。同時に、デスクグループ2の上部にあるスピーカ群2から、ジャズやボサノバの音楽を録音したサウンドコンテンツを前述とは別のスマートフォン経由で再生した。ここで、デスクグループ1に属するデスクに着席すると、小川のせせらぎ音が聞こえ、ジャズやボサノバ音楽は、わずかに聞こえるばかりであった。一方、デスクグループ2に属するデスクに着席すると、ジャズ・ボサノバ音楽が聞こえ、小川のせせらぎ音は、わずかに聞こえるばかりであった。以上より、例えば、かような構成にすると、異なるデスクグループ単位で、異なるコンテンツをある程度選択的に提供可能であることが確認できた。
【0080】
更には、実施例2では、
図8に示すシーン設定を行い、スピーカ群1及び2からの音の出力に加えて、タスクライト5及びベースライト3の調光・調色制御を行って、各シーンの再生を行った。各シーンにおいて各照明機器が出力する音の情報は、予め記憶部161eに格納しておいた。例えば、スピーカ群1及び2からの音の出力に加えて、照明制御として上述のシーン1を再生した場合、デスクグループ1には、実施例1においてシーン1で説明した照明による集中ワークの効率を高めやすい効果と、小川のせせらぎ音による集中ワークの効率を高めやすい効果が重畳することになる。よって、その重畳の相乗効果によって、デスクグループ1のゾーンを、集中ワークの効率を各段に高め易い領域に変えることができる。
【0081】
小川のせせらぎ音は、全周波数領域に強度をもつ、いわゆるホワイトノイズ、ブラウンノイズと呼称される音の特性に近い。この特性は、周波数対強度のフーリエ変換スペクトルとしてグラフで表現した場合において、全周波数領域に強度をもたないフーリエ変換スペクトルのグラフ、例えば、ピアノの特定の音階音の周波数対強度のフーリエ変換スペクトルのグラフとの比較において、グラフ中の音の周波数特性がブロードであると言及することができる。更に厳密に述べると、ゾーニング制御において、集中作業用空間制御領域内で最大の音量で出力されている音における高速フーリエ変換におけるスペクトル幅が、非集中作業用空間制御領域内で最大の音量で出力されている音における高速フーリエ変換におけるスペクトル幅よりも広くてもよい。ここで、スペクトル幅とは、スペクトル線の波長又は周波数の広がり幅のことを言い、強度が、最大値に比べて、ある所定の幅(例えば、1/2、1/10等)に低下する二つの波長間の波長の差であり、周波数で表してもよい。スペクトル幅を、スペクトル半値幅(光出力のスペクトル分布において、相対放射強度が、ピーク値の50%になる波長の幅)で定義してもよい。この特性をもつ音は、周波数領域に強度をもたない傾向のある音と比較して、様々な周波数を持ってデスクグループ1以外の場所から外来する集中ワークの効率を低めうるノイズ、例えば、物音、話し声等を、キャンセルし易いという顕著な作用効果を有する。したがって、デスクグループ1で作業するワーカーは、外来のノイズを聞こえにくくなる。よって、デスクグループ1のゾーンをよりワーカーが作業に集中し易くて作業に没頭し易い領域にできる。
【0082】
集中ワークの効率を高めうるサウンドのコンテンツとして、前述のホワイトノイズ、ブラウンノイズと呼称される特性に近いものが好適であるが、特にこの限りではない。例えば、小鳥のさえずり音、森の葉擦れ音、海の波音など自然環境音を主体とするものでも良いし、音楽用シンセサイザーなどで波形合成される電子音を主体に構成される音楽であっても良い。サウンドコンテンツは、自然音をそのまま録音したものでも良いし、人間が作曲したものでも良いし、コンピュータアルゴリズムやAIや人工知能が作曲したものでも良い。サウンドコンテンツは、以上の多種のサウンドがミックスされたものでも良い。
【0083】
一方、デスクグループ2の存在領域には、ジャズやボサノバの音楽を録音したサウンドコンテンツの出力に加えて、シーン1が再生されることになるので、実施例1で説明したように、色温度が低い照明光の照射に基づく、リラックス感や複数人による円滑なコミュニケーションを促進させ易い効果と、ジャズやボサノバ音楽によるリラックス感や複数人での円滑なコミュニケーションを促進させ易い効果が重畳することになる。したがって、その重畳による相乗効果でデスクグループ2のゾーンを、ワーカーが各段にリラックスできて複数人での円滑なコミュニケーションも各段に図り易い領域にできる。
【0084】
ジャズ・ボサノバ音楽は、前述のホワイトノイズやブラウンノイズと比べて、周波数対強度のフーリエ変換スペクトルのグラフにおける音の周波数特性がブロードでないという特性をもつ。これは、ジャズやボサノバを主体的に奏でるピアノ、サックス、ベースなどの楽器が、特定の単一音階、すなわちド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドおよびその半音階の音を出力するように厳密的にチューニングされた状態で使用されることに起因する。したがって、前述の外来ノイズに対するノイズキャンセルの機能は、乏しくなり易いが、そもそもリラックスや複数人でのコミュニケーションを行うことを意図とする共創スペースには、ノイズキャンセルの機能に対するニーズは希薄であるため、ノイズキャンセルの機能を乏しくしても大きな弊害が生じることはない。
【0085】
更には、ジャズやボサノバなどは、カフェやリラクゼーション施設において好んで提供されているサウンドコンテンツであり、リラックスや複数人での円滑なコミュニケーションを促進させる場合に頻繁に用いられている。したがって、そのことからも明らかなように、これらのサウンドコンテンツを用いれば、ワーカーがリラックス感や安らぎ感を感じることができ、円滑なコミュニケーションを実現させることができる。
【0086】
なお、リラックス感や複数人による円滑なコミュニケーションを促進できるサウンドのコンテンツとして、ジャズやボサノバと呼称される特性に近いものを採用すると好適であるが、特にこの限りではない。例えば、リラックス感や複数人による円滑なコミュニケーションを促進できるサウンドのコンテンツとして、クラシック音楽、ヒーリング音楽、自然環境音等を採用してもよい。そのようなサウンドコンテンツは、自然音をそのまま録音したものでも良いし、人間が作曲したものでも良いし、コンピュータアルゴリズムやAIや人工知能が作曲したものでも良い。サウンドコンテンツは、以上の多種のサウンドがミックスされたものでも良い。
【0087】
以上の説明から明らかなように、照明制御とサウンド制御は連動することが好ましく、各デスクグループに支配的に提供されうる照明およびサウンドコンテンツの主旨が一致していることがより好ましい。このようにすることで、各デスクグループが意図する主旨の効果が重畳することで相乗効果を生み出し、各デスクグループが意図する主旨の効果を顕著なものにできる。
【0088】
なお、照明制御とサウンド制御が連動する場合、厳密にその動作が同期している必要はなく、例えば照明のシーン切替えの開始時間もしくは終了時間と、サウンドコンテンツの切替えの開始時間もしくは終了時間が、多少ずれていても、前述の作用効果は失われない。また、そのようなずれが生じている場合において、照明のシーン切替えの開始時間もしくは終了時間と、サウンドコンテンツの切替えの開始時間もしくは終了時間においてずれた時間は、如何なる時間でもよいが、30分以内であると好ましく、10分以内であるより好ましく、1分以内であるとさらに好ましく、10秒以内であると最も好ましい。当該ずれた時間が30分以内である場合、一般的な什器や家具の運搬や再設置を伴うレイアウト変更に比較して十分早く、かつ省労力でレイアウト変更を達成できる。
【0089】
<シーン1における空間の照度および音量の評価結果>
次にシーン1における空間の照度および音量の一試験結果について説明する。
図9は、実施例2で音を出力すると共にシーン1を再現しているときに各照明機器3,5が照射している照射光の情報と、各スピーカ109a~109dが出力している音の情報とを説明する模式図である。また、
図10は、実施例2のABWオフィス120において、シーン1を再生しているときに、作業机D12からD03を横断するように配置した照度計(CL-200:コニカミノルタ)および騒音計(SD-2200:FUSO)で空間の照度および音量を測定したときの一試験例の結果を示すグラフである。なお、
図10において、y1は、照度に関する関数であり、y2は、音量に関する関数である。
【0090】
図10に示すように、本試験例では、デスクグループ1とデスクグループ2との間に設けられる通路に関し、照度及び音量が最も小さくなっている。そして、その通路の両側で異なる照明光の照射と異なるサウンドコンテンツの再現が実行される。また、デスクグループ1では、デスク面で照度が局所的に急激に大きくなる照明光を実現できている。更には、デスクグループ1では、人の集中を促進するサウンドコンテンツが大音量で再現されており、デスクグループ2では、人にリラックス感や安らぎ感を与えるサウンドコンテンツがデスクグループ1で出力されている音量の半分程度の音量で出力されている。このことから、本試験例では、デスクグループ1の周辺領域と、デスクグループ2の周辺領域とを明確に分離(分断)でき、優れたゾーニングを実現できている。また、デスクグループ1の周辺領域と、デスクグループ2の周辺領域の夫々で再現されている照明光とサウンドコンテンツにより、デスクグループ1の周辺領域を、人が特に作業に集中し易い優れた集中スペースとでき、他方、デスクグループ2の周辺領域を、人が特にリラックス感を感じ易くて複数人がコミュニケーションを行うことにも長ける優れた共創スペースにできる。
【0091】
なお、本開示の音の出力は、人に好みの音楽を提供して、人のパフォーマンスを改善させるものではなく、イヤホンやヘッドフォンを用いて人に音を提供してはいけない。イヤホンやヘッドフォンを用いて人に音を提供しても、領域を分断させることができないからである。
【0092】
次に、実施例2における、シーンの変更のタイミングについて説明する。実施例2では、ABWオフィス120を特定の日時(例えば、木曜の午後)に使用する各人が、その特定の日時に希望するモードの設定、すなわち、集中作業用空間の設定、非集中作業用空間の設定、又はいずれのモードの設定も行わない3つの選択肢のうちの1つを事前に自身の操作端末(例えば、タブレットや、スマートフォン等の携帯電話)のアプリケーションを用いて、事前に操作端末に設定しておく。そして、特定の日時になる前に該操作端末を情報読取装置88に近づけることで、情報読取装置88が、その人を特定する情報と、選択したモードと、希望のモードを実現して欲しい特定の日時の情報を読み取って、それらの情報を紐づけした状態で制御装置161に送信するようになっている。
【0093】
また、制御装置161は、その情報に基づいて、その特定の日時の直前(例えば、特定の日時が、木曜の午後の場合、特定の日時の直前は、木曜の午前になる)になると、(集中制御モードを所望している人の数)/(集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)と、(非集中制御モードを所望している人の数)/(非集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)とを算出する。
【0094】
そして、(集中制御モードを所望している人の数)/(集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)が、第3所定値以上か否かを判断すると共に、(非集中制御モードを所望している人の数)/(非集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)が、第4所定値以上か否かを判断するようになっている。
【0095】
そして、(集中制御モードを所望している人の数)/(集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)が、第3所定値以上で、(非集中制御モードを所望している人の数)/(非集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)が、第4所定値未満の場合、特定の日時になると、シーン1を再現するようになっている。
【0096】
また、(集中制御モードを所望している人の数)/(集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)が、第3所定値未満で、(非集中制御モードを所望している人の数)/(非集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)が、第4所定値以上の場合、特定の日時になると、シーン2を再現するようになっている。
【0097】
また、(集中制御モードを所望している人の数)/(集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)が、第3所定値未満で、(非集中制御モードを所望している人の数)/(非集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)が、第4所定値未満の場合、シーン1を再現(シーン2の再現でもよい)するようになっている。
【0098】
また、(集中制御モードを所望している人の数)/(集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)が、第3所定値以上で、(非集中制御モードを所望している人の数)/(非集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)が、第4所定値以上の場合、集中制御モードを所望している人の数が、非集中制御モードを所望している人の数よりも多い場合に、シーン1を再現し、逆に、集中制御モードを所望している人の数が、非集中制御モードを所望している人の数よりも少ない場合、シーン2を再現するようになっている。
【0099】
実施例2では、このようにシーンの再現を制御することで、将来の特定の日時における、ワーカーや組織の流動的なワークパフォーマンスや各スペースに対するニーズに適切に対応できるアクティブゾーニングを実現できる。
【0100】
なお、(集中制御モードを所望している人の数)/(集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)は、第1需要量の一例であり、第3所定値は、第1需要閾値の一例である。また、(非集中制御モードを所望している人の数)/(非集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)は、第2需要量の一例であり、第4所定値は、第2需要閾値の一例である。
【0101】
また、第1需要量は、作業面が集中作業用空間制御領域に存在する机の数と、センサ装置からの情報に基づいて特定した集中作業用空間制御領域内に位置する作業面を利用したい人の数とに基づいて算出される値であれば如何なる値でもよく、例えば、(集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)/(集中制御モードを所望している人の数)等でもよい。また、第2需要量も、作業面が非集中作業用空間制御領域に存在する机の数と、センサ装置からの情報に基づいて特定した非集中作業用空間制御領域内に位置する作業面を利用したい人の数とに基づいて算出される値であれば如何なる値でもよく、例えば、(非集中作業用空間制御領域に含まれる作業面を有する机の数)/(非集中制御モードを所望している人の数)等でもよい。
【0102】
(実施例2で採用された好ましい構成及びその作用効果)
以上、実施例2の環境制御システム110では、制御装置161が、作業面が集中作業用空間制御領域に存在する机の数と、情報読取装置(センサ装置)88からの情報に基づいて特定した集中作業用空間制御領域内に位置する作業面を利用したい人の数とに基づいて算出される第1需要量を、第1需要閾値と比較することで、集中作業用空間制御領域の量(集中作業用空間制御領域の広さ)が適切か否かを判断することと、作業面が非集中作業用空間制御領域に存在する机の数と、情報読取装置88からの情報に基づいて特定した非集中作業用空間制御領域内に位置する作業面を利用したい人の数とに基づいて算出した第2需要量を、第2需要閾値と比較することで、非集中作業用空間制御領域の量(非集中作業用空間制御領域の広さ)が適切か否かを判断することのうちの少なくとも一方を行う演算部161cの算出結果情報に基づいて調光・調色制御を実行する。
【0103】
したがって、本構成によれば、集中作業用空間制御領域のニーズと非集中作業用空間制御領域のノーズとのうちの少なくとも一方を客観的に判断できる。
【0104】
また、環境制御システム110は、ABWオフィス(室)120内に音を出力する複数のスピーカ109を更に備えてもよい。また、ゾーニング制御では、複数のスピーカ109が、集中作業用空間制御領域及び非集中作業用空間制御領域に音を出力してもよい。また、集中作業用空間制御領域内で最大の音量で出力されている音における高速フーリエ変換におけるスペクトル幅が、非集中作業用空間制御領域内で最大の音量で出力されている音における高速フーリエ変換におけるスペクトル幅よりも広くてもよい。
【0105】
本構成によれば、照明による集中ワークの効率を高め易い効果と、音による集中ワークの効率を高め易い効果を重畳させることができ、その重畳の相乗効果によって、集中作業用空間制御領域を、集中ワークの効率を各段に高め易い領域に変えることができる。また、非集中作業用空間制御領域では、照明によるリラックス感やコミュニケーションを高め易い効果と、音によるリラックス感やコミュニケーションを高め易い効果を重畳させることができる。よって、その重畳の相乗効果によって、非集中作業用空間制御領域を、リラックス感を各段に感じやすくて、コミュニケーションも格段に取り易い領域に変えることができる。
【0106】
また、室内に音を出力する1以上のスピーカを更に備え、演算部の算出結果情報に基づいて、スピーカの音量及びスピーカが出力するコンテンツのうちの少なくとも一方を制御してもよい。ここで、1以上のスピーカは、集中作業用空間制御領域及び非集中作業用空間制御領域のうちの一方の領域にしか音を出力できない構成でもよく、環境制御システムが、複数のスピーカを備えて、複数のスピーカが、集中作業用空間制御領域と、非集中作業用空間制御領域の両方に音を出力できる構成でもよい。上述の説明から明らかなように、本変形例の構成を採用すれば、スピーカが出力する音により、互いに異なる領域の違いを際立たせることができる。
【0107】
(シーンを事前に設定しない場合)
なお、制御装置の記憶部には、実施例1や2で説明した場合と異なり、シーンが事前に登録されていなくてもよい。そして、制御装置が、センサ装置からの情報に基づいて、1以上のタスクライトと1以上のベースライトを、個別に調光・調色制御するか、又はグループ毎に調光・調色制御制御することで、集中作業用空間制御領域と、非集中作業用空間制御領域を更に自由度高く柔軟に生成するようにしてもよい。
【0108】
(集中作業用空間制御領域と、非集中作業用空間制御領域の数について)
また、実施例1や2では、集中作業用空間制御領域が1つで、非集中作業用空間制御領域も1つである場合について説明した。しかし、集中作業用空間制御領域は、互いに離散的に配置された2以上の部分で構成されてもよく、非集中作業用空間制御領域も、互いに離散的に配置された2以上の部分で構成されてもよい。また、集中作業用空間制御領域と非集中作業用空間制御領域の両方が、離散的に配置された2以上の部分で構成されている場合、集中作業用空間制御領域を相まって構成すると共に離散的に配置されている部分の数と、非集中作業用空間制御領域を相まって構成すると共に離散的に配置されている部分の数とは、同一の数でもよく、互いに異なる数でもよい。ここで、本開示のゾーニングは、そのような各部分(島)の全体を、集中作業用空間制御領域又は非集中作業用空間制御領域に一括して変えるようにすると好ましい。また、この記載に関連して、本開示の技術は、センサ装置の情報、すなわち、室内に存在する1以上の人の位置情報、室内に存在する1以上の人の在席情報、及び室内に存在する1以上の人の個人情報のうちの少なくとも1つの情報に基づいてゾーニングを行う。したがって、本開示の技術に、個人の意思で、席毎にその席に対応する作業面を集中作業用空間制御領域又は非集中作業用空間制御領域に変える技術が含まれないのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0109】
3 ベースライト、 5 タスクライト、 10,70,110 環境制御システム、 20,120 ABWオフィス、 61,71,161 制御装置、 61a 制御部、 61b,161b 調光調色信号送信部、 61c,73,161c 演算部、 61d,75,161e 記憶部、 64,76,164 操作部、 88 情報読取装置、 109,109a,109b,109c,109d スピーカ、 161d 音信号送信部、 D01~D14 作業机、 S1~S14 サイコロセンサ。