(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】患者経過コード生成システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20231027BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
G16H10/60
A61B5/00 G
(21)【出願番号】P 2019088268
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】510189662
【氏名又は名称】ヴイアールアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110652
【氏名又は名称】塩野谷 英城
(72)【発明者】
【氏名】藤田 岳史
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-063506(JP,A)
【文献】特開2018-041305(JP,A)
【文献】特開2010-49505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の状態や治療等の医療の経過を示すStateコードを生成するシステムであって、
医療の各ステップと状態識別子とを紐付けた医療ガイドラインと、医師の診断情報等の医療情報に対応する前記
医療ガイドラインのステップを
自然言語処理により判定するための
辞書を含む解析用資料と、前記Stateコード
を生成する際の前記状態識別子を記述する位置等の文法を規定したStateコード生成規則と、生成されたStateコードと
、を記憶する記憶部と、
前記辞書を用いた自然言語処理により前記患者の医療情報に対応する
前記医療ガイドラインのステップ
を判定する解析部と、
当該判定されたステップに紐付けられた状態識別子を前記医療ガイドラインから取得するStateコード処理部とを備え、
当該Stateコード処理部は、
前記医療情報に対応する複数の前記状態識別子を取得した後、前記
Stateコード生成規則に
規定された文法に基づき、
当該取得した
複数の状態識別子を羅列した前記患者のStateコード
を生成
し、前記記憶部に登録
し、
単一の前記Stateコードが、治療前の状態を示す状態識別子と、治療内容を示す状態識別子と、治療後の状態を示す状態識別子とを含む、
患者経過コード生成システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記記憶部は、検査データ基準と状態識別子とを紐付けたデータ対応表を備え、
前記Stateコード処理部は、前記患者の医療情報から取得した検査データが前記検査データ基準を満たす場合、当該検査データ基準に紐付けられた状態識別子を前記患者のStateコードに含める、患者経過コード生成システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記記憶部は、画像データ基準と状態識別子とを紐付けたデータ対応表を備え、
前記Stateコード処理部は、前記患者の医療情報から取得した画像データが前記画像データ基準を満たす場合、当該画像データ基準に紐付けられた状態識別子を当該患者のStateコードに含める、患者経過コード生成システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記Stateコード処理部は、前記患者の医療情報から取得した値を当該患者のStateコードに含める、患者経過コード生成システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記記憶部は、
前記医療ガイドラインの遷移関係にある各ステップを紐付けたデータ構造を有するマップを記憶し、
Stateコード処理部は、
指定されたStateコードについてデコードの要求を受けると、当該Stateコードに含まれる各状態識別子に対応する各ステップを前記医療ガイドラインに基づいて判定し、当該判定した各ステップを前記マップに突き合わせ、当該マップの一致した部分のデータ構造を抽出し、当該データ構造を所定様式の表示用情報に変換し、出力部から出力させる、患者経過コード生成システム。
【請求項6】
前記Stateコードは、患者個人が特定される情報を含まない、請求項1に記載の患者経過コード生成システム。
【請求項7】
請求項1に記載の患者経過コード生成システムにおいて、
前記Stateコードを出力装置に出力する出力部を備え、
前記Stateコード処理部は、前記状態識別子の羅列のパターンが指定された出力の要求を受けると、当該指定と同一又は類似するパターンを含むStateコードを前記記憶部から読み出し、前記出力部に渡す、患者経過コード生成システム。
【請求項8】
患者の状態や治療等の医療の経過を示すStateコードを生成するプログラムであって、
医療の各ステップと状態識別子とを紐付けた医療ガイドラインと、医師の診断情報等の医療情報に対応する前記
医療ガイドラインのステップを
自然言語処理により判定するための
辞書を含む解析用資料と、前記Stateコード
を生成する際の前記状態識別子を記述する位置等の文法を規定したStateコード生成規則と、生成されたStateコードと
、を記憶する記憶部を備えるシステムが実行し、
前記辞書を用いた自然言語処理により前記患者の医療情報に対応する前記
医療ガイドラインのステップ
を判定する第1の処理と、
当該判定されたステップに紐付けられた状態識別子を前記医療ガイドラインから取得する第2の処理と、
前記医療情報に対応する複数の前記状態識別子を取得した後、前記
Stateコード生成規則に
規定された文法に基づき、
当該取得した
複数の状態識別子を羅列した前記患者のStateコード
を生成
し、前記記憶部に登録する第3の処理
とをシステムに実行させ
、
単一の前記Stateコードが、治療前の状態を示す状態識別子と、治療内容を示す状態識別子と、治療後の状態を示す状態識別子とを含む、
患者経過コード生成プログラム。
【請求項9】
患者の状態や治療等の医療の経過を示すStateコードを生成するシステムであって、
医療の各ステップと状態識別子とを紐付けた医療ガイドラインと、前記Stateコードを生成する際の前記状態識別子を記述する位置等の文法を規定したStateコード生成規則と、生成されたStateコードと、を記憶する記憶部と、
前記患者の医療情報を入力すると当該入力に対応する前記医療ガイドラインのステップを出力する学習済みの人工知能を実行する解析部と、
当該出力されたステップに紐付けられた状態識別子を前記医療ガイドラインから取得するStateコード処理部とを備え、
当該Stateコード処理部は、前記医療情報に対応する複数の前記状態識別子を取得した後、前記Stateコード生成規則に規定された文法に基づき、当該取得した複数の状態識別子を羅列した前記患者のStateコードを生成し、前記記憶部に登録し、
単一の前記Stateコードが、治療前の状態を示す状態識別子と、治療内容を示す状態識別子と、治療後の状態を示す状態識別子とを含む、
患者経過コード生成システム。
【請求項10】
患者の状態や治療等の医療の経過を示すStateコードを生成するプログラムであって、
医療の各ステップと状態識別子とを紐付けた医療ガイドラインと、前記Stateコードを生成する際の前記状態識別子を記述する位置等の文法を規定したStateコード生成規則と、生成されたStateコードと、を記憶する記憶部を備えるシステムが実行し、
前記患者の医療情報を入力すると当該入力に対応する前記医療ガイドラインのステップを出力する学習済みの人工知能を実行する第1の処理と、
当該出力されたステップに紐付けられた状態識別子を前記医療ガイドラインから取得する第2の処理と、
前記医療情報に対応する複数の前記状態識別子を取得した後、前記Stateコード生成規則に規定された文法に基づき、当該取得した複数の状態識別子を羅列した前記患者のStateコードを生成し、前記記憶部に登録する第3の処理とをシステムに実行させ、
単一の前記Stateコードが、治療前の状態を示す状態識別子と、治療内容を示す状態識別子と、治療後の状態を示す状態識別子とを含む、
患者経過コード生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者経過コード生成システムに係り、特に、患者の状態及び医療の経過を示すコードを生成する患者経過情報生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、患者の状態及び医療の経過はカルテに記録される(例えば、特許文献1)。しかし、カルテに記録される情報は冗長であるため、当該情報から医療と病状の経過との因果関係を速やかに把握することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、医療と病状の経過との因果関係を従来よりも速やかに把握できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を備える。本発明は、患者の状態や治療等の医療の経過を示すStateコードを生成するシステムである。記憶部は、医療の各ステップと状態識別子とを紐付けた医療ガイドラインと、医師の診断情報等の医療情報に対応するステップを判定するための解析用資料と、Stateコードの生成規則と、生成されたStateコードとを記憶する。解析部は、医療情報に対応するステップを解析用資料に基づいて判定する。Stateコード処理部は、当該判定されたステップに紐付けられた状態識別子を医療ガイドラインから取得する。そして、Stateコード処理部は、生成規則に基づき、取得した状態識別子を羅列したStateコードを新規に生成し又は更新し記憶部に登録する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、医療情報の経過に応じて状態識別子を羅列したStateコードを生成するので、医療と病状の経過との因果関係を従来よりも速やかに把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】
図3は、Stateコードのデコードに関する第1の説明図。
【
図4】
図4は、Stateコードのデコードに関する第2の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1の患者経過コード生成システムにおいて、Stateコード処理部1には、入力部2と、記憶部3と、出力部4とが接続されている。
【0009】
Stateコード処理部1は、プロセッサを備え、プログラムを実行することにより、各種の処理を実行する。入力部2は、医療情報を取得する入力インターフェースであり、外部装置との通信インターフェースでもよい。医療情報には、医師の診断情報、医用画像情報や血液検査情報等が含まれる。記憶部3は、記憶装置であり、医療ガイドライン31、Stateコード記憶部32、データ対応表33、解析用資料34、Stateコード生成規則35及びデコード規則36を記憶する。出力部4は、Stateコード又はStateコードをデコードした情報を出力する出力インターフェースであり、外部装置との通信インターフェースでもよい。Stateコード処理部1は、プログラムの実行により解析部11を機能させる。解析部11は、入力部2から入力された情報を、辞書機能を用いた文書解析、画像解析や統計的なデータ解析の実行により、医療ガイドライン31やデータ対応表33とマッチングするための情報に変換する。
【0010】
記憶部3に記憶される医療ガイドライン31は、或る病気について、病状の各ステップ(段階)と、治療の各ステップと、投薬の各ステップとを含む。各ステップには、それぞれ異なる状態識別子が紐付けられている。各ステップは、テキストで表現されている。
【0011】
状態識別子は、例えば、国際疾病分類コード(ICD-11)、腫瘍の場所、腫瘍の大きさ、再発転移の有無、転移巣の切除有無、外科手術、化学療法、放射線療法、免疫療法の治療歴、使用した薬剤のレジメンや放射線量などを示す識別子を含む。
【0012】
医療ガイドライン31の具体的仕様は種々考えられ、各ステップに紐付ける状態識別子も様々であるが、以下に状態識別子の一例を示す。
【0013】
cN (-/+) : リンパ節への転移(N1:1-3個の所属リンパ節転移、N2:4個以上など)。プラスマイナス(+/-)はリンパ節転移がある(プラス)か、ない(マイナス)かを示す。プラスの場合N1はリンパ節転移が1から3個あることを示していて、特に2-3個の場合はN1bとなる。
cTis(M) : 上皮内癌又は粘膜固有層に浸潤する癌。
cT1(SM) : 粘膜下層にとどまる腫瘍。
cT2(MP) : 固有筋層にとどまる腫瘍。
cT3(SS) : 漿膜下組織に浸潤する腫瘍。
cT4a/b : 隣接臓器浸潤。
M1: 遠隔転移
「c」は、省略される場合があり、「c」を省略しないものは臨床所見を表し、「c」を省略したものは総合所見を表す。
【0014】
また、上記において、(M),(SM),(MP),(SS)は粘膜層の頭文字から深達度を表す。
M:粘膜層mucosa まで浸潤 (Tis)
SM: 粘膜下層 submucosa まで浸潤 (T1)
MP: 固有筋層 muscular propria まで浸潤(T2)
SS: 漿膜下層 subserosa まで浸潤(T3)
SE: 漿膜を超え浸潤 serosa まで浸潤(T4a)
SI: 隣接臓器に浸潤 serosal involvement まで浸潤(T4b)
【0015】
cT4a/bの場合、漿膜を超えた浸潤(a)と、漿膜を超えて隣接臓器まで浸潤している(b)の場合がある。それぞれの深達度、浸潤度に対して適応される治療、推奨される手術方法がある。
【0016】
Stateコード記憶部32は、
図2に示す構造をとる。即ち、患者ごとに固有の患者識別子と、その患者のStateコードとを紐付けて記憶する。Stateコードは、状態識別子を患者の状態及び医療の経過が分かるように羅列した情報である。上記の状態識別子の一例を用いて表したStateコードの一例を以下に示す。
【0017】
例えば、患者PのStateコードは、次のように記述される。
2B90.3-cT1-N1b-D2-R-A.CapeOX.3
【0018】
「2B90」は ICD-11の疾患分類で結腸・直腸癌(Malignant neoplasms of colon)を示すコードである(ICD-10のC18-20に該当する)。「3」は、癌の0からIVまでの進行度を表すステージングでステージ3を示す。
【0019】
「.」はプログラムで任意のコードを作成する際にカテゴリを分ける(つなげる)ために使用する記号である。ICDコード、ステージングコード、病態の具体的な場所を示すコード、治療方法又は治療に使用された薬剤のコードなどの区切りを明確にする目的がある。また、各カテゴリ内で、複数のコードを分ける(つなげる)ために「-」などを使用する。
【0020】
「cT1」は、粘膜下層にとどまる腫瘍を示す。
【0021】
「N1b」は、「cN(+/-)」に対応する表現であり、上記のとおり2~3個の所属リンパ節転移を示す。
【0022】
「D」は、術式を表す記号であり外科手術の際にリンパ節郭清(切除)をする範囲を示し、D0はリンパ節郭清なし、D2はリンパ節郭清あり、D3は拡大郭清(そのリンパ節に転移があるかないかに関わらず、広範囲に周辺のリンパ節を切除しておくこと)を示す。
【0023】
「R」は、外科手術(resectionのR)を示す。
【0024】
「A」はadjuvant 、即ち、切除の術後抗がん剤治療を表す。抗がん剤治療は術前、術後、単独治療の場合がある。
【0025】
「CapeOX.3」は、抗がん剤名と投与回数を表し、抗がん剤のカペシタビンとオキサリプラチンとを併用し、投与回数が3回(3コース)治療したことを示す。
【0026】
よって、患者PのStateコードからは、次のことが解る。即ち、内視鏡検査病理診断によりcT1と診断され、粘膜下層にとどまる腫瘍であるが、リンパ節転移が2個以上あるため、外科手術でD2の範囲でリンパ節と原発腫瘍の切除を行った。術後の転移を予防するために抗がん剤(カペシタビンとオキサリプラチン)での治療を3コース治療済みで治療中(全回数は通常6から8コース予定)、という経過がStateコードから把握される。なお、Tis、T1-T4の状態識別子は、内視鏡検査病理診断の結果に基づき付与される。
【0027】
また例えば、患者QのStateコードは、次のように記述される。
【0028】
2B90.3-cTis.cT1-N0.N1b-D0.D2-EMR.R-Adj.0
【0029】
「2B90.3」は患者Pの場合と同様に大腸癌ステージ3を示す。ピリオドは、治療履歴を示す目的にも使用する。「cTis.cT1」は cTis(上皮内癌又は粘膜固有層に浸潤する癌)を治療後、cT1(粘膜下層にとどまる腫瘍)に再発していることを示す。同様に、「N0.N1b」、「D0.D2」、「EMR.R」も原発治療時と再発治療時とをピリオドで分けて示している。
【0030】
患者QのStateコードの例では、「上皮内癌又は粘膜固有層に浸潤する癌」はcTisだけで示すが、その腫瘍を内視鏡的切除(EMR)で治療したあと、cT1の腫瘍が再発したことを表している。また、原発は内視鏡的切除(EMR)を行い、再発については外科手術(R)で切除したことを示している。「Adj.0」は術後抗がん剤を原発でも再発でも投与していないこと示す。患者Qの場合は、患者Pと同様に大腸癌(2B90)のステージ3であるが、再発した腫瘍の治療をしているところが異なっている。
【0031】
以上のStateコードの例では、治療履歴を把握できるが、実際に治療を開始した時期、治療にかかった時間、費用などの情報は含まれていない。しかし、これらの情報をStateコードに含めるようにしてもよい。また、上記のStateコードの例では、主治医、病院名など、個人が特定されるような情報は意図的に含めていないが、これらを含めるように構成することも可能である。 また、内視鏡的に切除した検体病理検査の結果で癌化細胞の分化度や遺伝子検査情報などが判明した場合、これらの情報をStateコードに含めるように構成してもよい。
【0032】
以上は状態識別子から構成されるStateコードの一例にすぎない。状態識別子が表す情報や複数の状態識別子を繋げてStateコードに構成する文法は医療ガイドライン31の仕様に応じて種々考えられる。
【0033】
データ対応表33は、画像データ基準ごとに異なる状態識別子を紐付けた対応表と、検査データ基準ごとに異なる状態識別子を紐付けた対応表とを含む。各画像データ基準は、CTや内視鏡等による記録画像に示された病状又は治療痕が特定の病状又は治療痕であることを判定するための画像データの特徴量を定めている。また、各検査データ基準は、検査結果のデータから特定の病状であることを判定するための数値の基準を定めている。例えば、検査データ基準には、(1)血液検査における血中成分の個々の項目の数値について正常範囲を示す基準、(2)腫瘍マーカー検査の結果を判定するための基準、(3)肝機能を示す数値の基準、(4)生体情報の基準、等が含まれる。各基準に紐付ける状態識別子の例としては、病状や治療に応じて医療ガイドライン31に採用した状態識別子と同一の状態識別子を紐付けることが考えられる。
【0034】
解析用資料34は、解析部11が、入力部2から取得した情報を解析する際に用いる。解析用資料34は、自然言語処理により医師の診断情報から患者の病状や治療に関する情報を抽出するための辞書等の資料を含む。また、解析用資料34は、医用画像情報から画像データ基準とマッチングを行う特徴量を抽出するためのアルゴリズム等の資料を含む。また、解析用資料34は、検査情報から検査データ基準とマッチングを行う検査項目の値を抽出するためのアルゴリズム等の資料を含む。
【0035】
Stateコード生成規則35は、Stateコードを記述する際の文法を規定する。Stateコード生成規則35は、Stateコードを構成する状態識別子等の羅列において、病状、治療、投薬等の様々な状態識別子及びデータを記載すべき位置の規定を含む。また、状態識別子の連結に用いる記号(上記の例におけるハイフンやピリオド等)の用い方の規定を含む。
【0036】
デコード規則36は、Stateコードが表す病状及び治療等の経過をより分かりやすい表現に変換するための表示規則を定める。例えば、状態識別子の羅列から成るStateコードを
図4に示すツリー構造等の視覚的表現に変換するための表示規則を定める。
【0037】
ここで、
図1では種々のデータの紐付けを表形式で示しているが、データを紐付けるデータベースの構造は問わず、関係型、階層型、ネットワーク型等を採用し得る。
【0038】
次に、本実施形態の動作を説明する。
【0039】
解析部11は、入力部2から入力された医師の診断情報を取得し、この診断情報に対応する医療ガイドライン31のステップを解析用資料34に基づいて判定する。診断情報から病状、治療、投薬等の複数のステップが判定される場合がある。Stateコード処理部1は、解析部11が判定した医療ガイドライン31のステップに紐付けられた1乃至複数の状態識別子を医療ガイドライン31から取得する。医師の診断情報には予め患者識別子が紐付けられており、Stateコード処理部1は、患者識別子が一致するStateコードを、記憶部3から検索する。一致する患者識別子が無い場合、新規のStateコードの登録としてStateコードを生成する。Stateコード処理部1は、Stateコード生成規則35を参照し、解析部11が判定した1乃至複数の状態識別子をStateコードの規定された文法に従って羅列し、Stateコードを生成する。Stateコード処理部1は、生成したStateコードを患者識別子に紐付けてStateコード記憶部32に登録する。
【0040】
上記の検索の結果、患者識別子が一致するStateコードが存在する場合、そのStateコードを記憶部3から読み出す。Stateコード処理部1は、読み出したStateコードに対し、Stateコード生成規則35を参照し、解析部11が判定した1乃至複数の状態識別子をStateコードの規定された文法に従って挿入し、Stateコードに追記する。Stateコード処理部1は、追記したStateコードを対応する患者識別子に紐付けてStateコード記憶部32に更新する。
【0041】
例えば、医師の診断情報に次の記述があるとする。
「1か月前から食思不振と体重減少、腹痛と下痢症状が続き、エコー検査にて腫瘍疑いがありと診断され入院となった。
入院し絶食補液・PPI静注での治療を開始した。
CT及び内視鏡所見では大腸(結腸)癌の粘膜層への浸潤とリンパ節腫大を認め、諸検査の結果、高分化Stage III cTis癌と診断した。
結腸癌Stage III cTis癌→疼痛・倦怠感なし、経口摂取可能、体重-1kg。
治療方針:外科手術切除・化学療法予定。」
【0042】
これを解析部11が解析用資料34に基づいて解析(自然言語処理等)をし、例えば、以下のように整理する。
「症状の出現時期:1か月前
身体症状:食思不振、体重減少(-1kg)、腹痛、下痢症状、疼痛なし、倦怠感なし、経口摂取可能
検査項目:エコー検査、CT、内視鏡検査
検査の目的:腫瘍疑いあり
画像所見:粘膜層への浸潤、リンパ節腫大
整理検査所見:高分化がん
治療計画:入院、外科手術切除、化学療法
診断:結腸癌、Stage III、cTis、リンパ節転移あり」
【0043】
また、解析部11は、これらの各項目の記述に対応する記述を医療ガイドライン31のステップから探し出すことによって、診断情報に対応する医療ガイドライン31の複数のステップを判定する。
【0044】
解析部11は、入力部2から入力された医用画像情報を取得し、この医用画像情報から解析用資料34に基づいて画像データ基準に対応する特徴量を抽出する。1つの医用画像情報から各画像データ基準に対応する複数の特徴量を抽出する場合がある。Stateコード処理部1は、解析部11が抽出した1乃至複数の特徴量をそれぞれ対応する画像データ基準と比較し、画像データ基準を満たす1乃至複数の状態識別子をデータ対応表33から取得する。医用画像情報には予め患者識別子が紐付けられており、Stateコード処理部1は、患者識別子が一致するStateコードを、記憶部3から検索する。一致する患者識別子が無い場合、新規にStateコードを生成する。Stateコード処理部1は、Stateコード生成規則35を参照し、解析部11が取得した1乃至複数の状態識別子をStateコードの規定された文法に従って羅列し、Stateコードを生成する。Stateコード処理部1は、生成したStateコードを患者識別子に紐付けてStateコード記憶部32に登録する。
【0045】
また、上記の検索の結果、患者識別子が一致するStateコードが存在する場合、そのStateコードを記憶部3から読み出す。Stateコード処理部1は、読み出したStateコードに対し、Stateコード生成規則35を参照し、解析部11が取得した1乃至複数の状態識別子をStateコードの規定された文法に従って挿入し、Stateコードに追記する。Stateコード処理部1は、追記したStateコードを対応する患者識別子に紐付けてStateコード記憶部32に更新する。
【0046】
また、解析部11は、入力部2から入力された検査情報(検査結果情報)を取得し、この検査情報から解析用資料34に基づいて検査データ基準に対応する検査結果データを抽出する。1つの検査情報から各検査データ基準に対応する複数の検査結果データを抽出する場合がある。Stateコード処理部1は、解析部11が抽出した1乃至複数の検査結果データをそれぞれ対応する検査データ基準と比較し、検査データ基準に該当する1乃至複数の状態識別子をデータ対応表33から取得する。検査情報には予め患者識別子が紐付けられており、Stateコード処理部1は、患者識別子が一致するStateコードを、記憶部3から検索する。一致する患者識別子が無い場合、新規にStateコードを生成する。Stateコード処理部1は、Stateコード生成規則35を参照し、解析部11が取得した1乃至複数の状態識別子をStateコードの規定された文法に従って羅列し、Stateコードを生成する。Stateコード処理部1は、生成したStateコードを患者識別子に紐付けてStateコード記憶部32に登録する。
【0047】
また、上記の検索の結果、患者識別子が一致するStateコードが存在する場合、そのStateコードを記憶部3から読み出す。Stateコード処理部1は、読み出したStateコードに対し、Stateコード生成規則35を参照し、解析部11が取得した1乃至複数の状態識別子をStateコードの規定された文法に従って挿入し、Stateコードに追記する。Stateコード処理部1は、追記したStateコードを対応する患者識別子に紐付けてStateコード記憶部32に更新する。
【0048】
また、解析部11は、医用画像情報から取得したデータそのもの又は検査情報から取得したデータそのものをStateコードの構成要素として扱ってもよい。
【0049】
例えば、医用画像情報から解析資料に基づいて撮影日、臓器、画像中の患部のグリッド位置(x,y,z)、患部の大きさ(幅、高さ)及び患部の容積等を取得し、次のStateコードを生成することが考えられる。患部とは、例えば、腫瘍や肥大している箇所等である。
【0050】
日付.臓器(下行結腸).グリッド位置x.y.z.大きさwidth-height(単位mm).容積(単位cm^3)=2019-2-1.DC.200.100.150.25-20.50
【0051】
また、例えば、検査情報から解析資料に基づいて日付、肝数値、白血球数及び腫瘍マーカー等を取得し、次のStateコードを生成することが考えられる。
【0052】
日付.肝数値(alp).白血球数.腫瘍マーカー.・・・(以下省略)=2019-2-1.alp-126.wbc-72.cea-12.・・・(以下省略)
【0053】
また、生成するStateコードには、固有識別IDを含めてもよい。固有識別IDは、例えば、Stateコード作成時に発行済みの固有識別IDと重複しない値をランダムに付与する。
【0054】
Stateコードの出力が要求されると、出力部4は、出力すべきStateコードをStateコード記憶部32から読み出し、出力装置に出力する。出力の要求に際し患者識別子が指定された場合、Stateコード処理部1は、一致する患者識別子に紐付けられたStateコードをStateコード記憶部32から読み出し、出力部4に渡す。また、出力の要求に際し状態識別子が指定された場合、Stateコード処理部1は、一致する状態識別子を含むStateコードをStateコード記憶部32から読み出し、出力部4に渡す。また、出力の要求に際し状態識別子の羅列のパターンが指定された場合、Stateコード処理部1は、同一又は類似するパターンを含むStateコードをStateコード記憶部32から読み出し、出力部4に渡す。状態識別子のパターンが類似するか否かの判定は、解析部11が、解析用資料34として予め用意された状態識別子のパターンの類似判定基準に基づき判定する。
【0055】
また、デコード出力が要求されると、Stateコード処理部1は、出力すべきStateコードをStateコード記憶部32から読み出し、デコード規則36に基づいて、視覚的な表示情報に変換し、出力部4を介して出力装置に出力する。
【0056】
生成したStateコードはそのまま読み取ることもできるが、Stateコードの使用方法に合せて変換(デコード)するとよい。例えば、治療履歴をレポートの形に書き出すなど、人が認識し易い、読み易い形に変換してもよい。また、ツリー構造やネットワーク構造で表現してもよい。
【0057】
デコードの一例を
図3及び
図4に基づいて説明する。記憶部3は、医療ガイドライン31全体の各ステップの繋がりを示す全体マップ37を予め記憶する。当該全体マップの一部を抜粋した例を
図3に示す。この
図3において、Fx(xは自然数)は、それぞれ、医療ガイドライン31に含まれるステップを示す。各ステップを繋ぐ直線(実線及び点線)は、医療ガイドライン31に従って、あるステップから次のステップに遷移し得る又は遷移可能である(遷移関係にある)ことを示すリンクである。即ち、全体マップ37は、医療ガイドライン31の遷移関係にある各ステップを紐付けたデータ構造になっている。 全体マップ37中の各ステップは、医療ガイドライン31によって、それぞれ固有の状態識別子に紐付けられている。
【0058】
そして、Stateコード処理部1は、指定されたStateコードについてデコードの要求を受けると、デコード規則36に従って、以下の処理を実行する。まず、Stateコード処理部1は、当該Stateコードに含まれる状態識別子から各状態識別子に対応するステップ(ステップの指標値)を医療ガイドライン31に基づいて求める。続いて、Stateコード処理部1は、求めた各ステップを全体マップ37と突き合せ、全体マップ37中でのStateコードの位置を判定する。ここでは、
図3の実線部分が、Stateコードに対応するものとする。
【0059】
Stateコード処理部1は、全体マップ37中のStateコードに対応する部分のステップのツリー構造(又はネットワーク構造)、即ち、
図3のステップF2からF18までの実線部の構造を、構造表示用の画像データ又は描画命令に変換し、出力部4に渡す。この際、各ステップに対応するテキストを医療ガイドライン31から引用し、表示するとよい。これにより、出力部4から画像データ又は描画命令を受けた処理装置は、例えば、
図4に示すような、ステップの遷移を示すツリー構造を表示することが可能となる。更に、現状から遷移し得る将来のステップを上記画像データ又は描画命令に含めてもよい。例えば、
図3のF5の遷移先となり得るF9、F13の遷移先となり得るF17、並びにF18の遷移先となり得るF21及びF22を含めて、構造表示用の画像データ又は描画命令を生成してもよい。
【0060】
以上説明した本実施形態によれば、
Stateコードの表記から医師は、その患者についてどのような病気で診療が行われたかを速やかに把握することができる。また、医療ガイドライン31のステップの進み方を追うことによって何故治療ができなかったかの理由も把握することができる。
【0061】
Stateコードの表記から治療内容と状態変化を追うことができるので、現状が医療ガイドライン31上のどのステップにあり、その先のステップとしての治療の選択肢を示すことが可能となる。これにより、医師は治療計画が立てやすい。
【0062】
また、Stateコード処理部1が、Stateコードの類似する患者を検索することにより、病歴、治療の類似する患者を検索することが可能となり、検索された患者の比較や、他の患者の治療の奏功、病状の進行度等を知ることもできる。
【0063】
更に、Stateコードのデコードを実行することにより、Stateコードに対応するステップの遷移を視覚的に把握しやすくなる。また、将来遷移し得るステップの選択肢を含めることにより、将来の治療や投薬等の医療の計画がより立てやすくなる。
【0064】
本発明の範囲は、上記実施形態の範囲に限られず、請求項に記載した発明の範囲を有する。
【0065】
解析部11は、学習済みの人工知能であってもよい。この場合例えば、解析部11は、医師の診断情報に対応する医療ガイドライン31のステップ又は状態識別子を判定する。又は、医用画像情報に対応する医療ガイドライン31のステップ又は状態識別子を判定する。又は、検査情報に対応する医療ガイドライン31のステップ又は状態識別子を判定する。
【0066】
Stateコード処理部1又は解析部11は、以下の処理を実行してもよい。Stateコードをデコードする一形態として、二次元バーコード等のバーコードに変換し出力してもよい。医療ガイドライン31の更新機能を備えてもよい。データ対応表33のデータ基準にセンサーが検知したデータをマッチングし、当該検知データに対応する状態識別子をStateコードに含めてもよい。また、会話をテキスト変換した情報を自然言語解析し医療ガイドライン31とマッチングしてもよい。Stateコードを受信する受信側の装置又は受信側のプロセスの仕様に適合するように、Stateコードをデコードして出力してもよい。
【0067】
また、Stateコード生成規則35は、異なる複数の生成規則を含んでもよい。この場合、生成規則ごとに固有の規則IDを付与すると共に、各Stateコードに、生成に使用した規則の規則IDを含めるとよい。このようにすると、生成したStateコードが、どの生成規則に基づいて生成されたのかを判定することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 Stateコード処理部
2 入力部
3 記憶部
11 解析部
31 医療ガイドライン
32 Stateコード記憶部
33 データ対応表
34 解析用資料
35 Stateコード生成規則
36 デコード規則
37 全体マップ