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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】無線通信端末装置及びその無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20231027BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20231027BHJP
   H04W 80/12 20090101ALI20231027BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W4/44
H04W80/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019034639
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020141218
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 幸成
(72)【発明者】
【氏名】ウィー ヤオハン ガイアス
(72)【発明者】
【氏名】本塚 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】白方 亨宗
【審査官】倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/039075(WO,A1)
【文献】特開2018-084860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
H04M 11/00
H04L 1/00
H04L 27/00
H04B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信端末装置であって、
通信相手である基地局装置と通信する通信回路と、
前記通信回路と前記基地局装置との間の通信を制御する第1制御プログラムと、前記無線通信端末装置上で実行され、前記基地局装置を介して複数の外部サーバ装置のそれぞれと前記無線通信端末装置との間での通信されたデタを使用する複数のアプリケーションプログラムと、前記第1制御プログラムと前記複数のアプリケーションプログラムとの間の通知を制御する第2制御プログラムと、を制御する制御回路と、
を含み、
前記制御回路は、
前記無線通信端末装置が前記基地局装置からビーコンを受信した後に、前記第1制御プログラムによって、前記無線通信端末装置と前記基地局装置との間の接続を確立させ、
前記複数のアプリケーションプログラムから前記外部サーバ装置への接続通知要求を受けていた場合、前記接続が確立するまで、前記複数のアプリケーションプログラムを通信待ちとして停止し、前記接続が確立した後に、前記第2制御プログラムによって、前記複数のアプリケーションプログラムに、接続確立通知を出力し、
前記複数のアプリケーションプログラムのそれぞれが、前記接続確立通知を受けた後に、前記複数の外部サーバ装置のそれぞれに対する通信リクエストを、前記第1制御プログラムを介して前記通信回路に出力し、
前記通信回路は、前記通信リクエストを前記基地局装置に送信する、
無線通信端末装置。
【請求項2】
無線通信端末装置であって、
通信相手である基地局装置と通信する通信回路と、
前記通信回路と前記基地局装置との間の通信を制御する第1制御プログラムと、アプリケーション端末装置上で実行される複数のアプリケーションプログラムと前記第1制御プログラムとの間の通知を制御する第2制御プログラムと、を制御する制御回路と、
を含み、
前記複数のアプリケーションプログラムのそれぞれは、前記基地局装置を介して複数の外部サーバ装置のそれぞれ前記無線通信端末装置との間での通信されたデタを使用し、
前記制御回路は、
前記無線通信端末装置が前記基地局装置からビーコンを受信した後に、前記第1制御プログラムによって、前記無線通信端末装置と前記基地局装置との間の接続を確立させ、
前記複数のアプリケーションプログラムから前記外部サーバ装置への接続通知要求を受けていた場合、前記接続が確立するまで、前記複数のアプリケーションプログラムを通信待ちとして停止し、前記接続が確立した後に、前記第2制御プログラムによって、前記アプリケーション端末装置に接続確立通知を出力し、
前記アプリケーション端末装置から前記複数の外部サーバ装置のそれぞれに対する通信リクエストが入力された後に、前記通信リクエストを、前記第1制御プログラムを介して前記通信回路に出力し、
前記通信回路は、前記通信リクエストを前記基地局装置に送信する、
無線通信端末装置。
【請求項3】
無線通信端末装置が基地局装置からビーコンを受信した後に、第1制御プログラムによって、前記無線通信端末装置と前記基地局装置との間の接続を確立させ、
複数のアプリケーションプログラムのそれぞれから複数の外部サーバ装置のそれぞれへの接続通知要求を受けていた場合、
記接続が確立するまで、前記複数のアプリケーションプログラムを通信待ちとして停止し
前記接続が確立した後に、第2制御プログラムによって、前記複数のアプリケーションプログラムに接続確立通知を出力し、
前記複数のアプリケーションプログラムのそれぞれが、前記接続確立通知を受けた後に、前記複数の外部サーバ装置のそれぞれに対する通信リクエストを、前記第1制御プログラムを介して通信回路に出力し、
前記通信回路によって、前記通信リクエストを前記基地局装置に送信し、
前記第1制御プログラムは、前記通信回路と前記基地局装置との間の通信を制御する、
前記複数のアプリケーションプログラムのそれぞれは、前記無線通信端末装置上で実行され、前記基地局装置を介して複数の外部サーバ装置のそれぞれと前記無線通信端末装置との間での通信されたデータを使用する、
前記第2制御プログラムは、前記第1制御プログラムと前記複数のアプリケーションプログラムとの間の通知を制御する、
無線通信端末装置の無線通信方法。
【請求項4】
無線通信端末装置が基地局装置からビーコンを受信した後、第1制御プログラムによって、前記無線通信端末装置と前記基地局装置との間の接続を確立させ、
アプリケーション端末装置上で実行される複数のアプリケーションプログラムのそれぞれから複数の外部サーバ装置のそれぞれへの接続通知要求を受けていた場合、前記接続が確立するまで、前記複数のアプリケーションプログラムを通信待ちとして停止し、前記接続が確立した後に、第2制御プログラムによって、前記アプリケーション端末装置に接続確立通知を出力し、
前記アプリケーション端末装置から前記複数の外部サーバ装置のそれぞれに対する通信リクエストが入力された後に、前記通信リクエストを、前記第1制御プログラムを介して通信回路に出力し、
前記通信回路によって、前記通信リクエストを前記基地局装置に送信し、
前記複数のアプリケーションプログラムのそれぞれは、前記基地局装置を介して複数の外部サーバ装置のそれぞれと前記無線通信端末装置との間での通信されたデータを使用する、
前記第1制御プログラムは、前記通信回路と前記基地局装置との間の通信を制御する、
前記第2制御プログラムは、前記第1制御プログラムと前記複数のアプリケーションプログラムとの間の通知を制御する、
無線通信端末装置の無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信端末装置及びその無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、路車間通信における無線通信端末装置の無線ネットワーク接続の方法に関する。ミリ波通信を利用して、路車間での高速データ伝送を実現する方法について検討がなされている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5602768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された無線通信端末装置の無線ネットワーク接続の方法では、複数のアプリケーションプログラムが実行されている場合については考慮されていないため、アプリケーションプログラムが迅速に通信を開始することが困難であった。
【0005】
本開示の一態様は、アプリケーションプログラムが迅速に通信を開始することが可能な無線通信端末装置の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る無線通信端末装置は、通信相手である基地局装置と通信する通信回路と、前記通信回路と前記基地局装置との間の通信を制御する第1制御プログラムと、無線通信端末装置上で実行され、前記基地局装置を介して外部サーバ装置と前記無線通信端末装置との間での通信されたデータを使用する1つ以上のアプリケーションプログラムと、前記第1制御プログラムと前記1つ以上のアプリケーションプログラムとの間の通知を制御する第2制御プログラムと、を制御する制御回路と、を含み、前記制御回路は、前記無線通信端末装置が前記基地局装置からビーコンを受信した後に、前記第1制御プログラムによって、前記無線通信端末装置と前記基地局装置との間の接続を確立させ、前記1つ以上のアプリケーションプログラムから前記外部サーバ装置への接続通知要求を受けていた場合、前記接続が確立した後に、前記第2制御プログラムによって、前記1つ以上のアプリケーションプログラムに、接続確立通知を出力し、前記接続確立通知を受けた後に、前記1つ以上のアプリケーションプログラムによって、前記外部サーバ装置に対する通信リクエストを、前記第1制御プログラムを介して前記通信回路に出力し、前記通信回路は、前記通信リクエストを前記基地局装置に送信する。
【0007】
本開示の一態様に係る無線通信端末装置の無線通信方法は、無線通信端末装置が基地局装置からビーコンを受信した後に、第1制御プログラムによって、前記無線通信端末装置と前記基地局装置との間の接続を確立させ、1つ以上のアプリケーションプログラムから外部サーバ装置への接続通知要求を受けていた場合、前記接続が確立した後に、第2制御プログラムによって、前記1つ以上のアプリケーションプログラムに接続確立通知を出力し、前記接続確立通知を受けた後に、前記1つ以上のアプリケーションプログラムによって、前記外部サーバ装置に対する通信リクエストを、前記第1制御プログラムを介して通信回路に出力し、前記通信回路によって、前記通信リクエストを前記基地局装置に送信し、前記第1制御プログラムは、前記通信回路と前記基地局装置との間の通信を制御する、前記1つ以上のアプリケーションプログラムは、前記無線通信端末装置上で実行され、前記基地局装置を介して外部サーバ装置と前記無線通信端末装置との間での通信されたデータを使用する、前記第2制御プログラムは、前記第1制御プログラムと前記1つ以上のアプリケーションプログラムとの間の通知を制御する。
【0008】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、迅速なアプリケーションプログラムの開始が可能な無線通信端末装置を提供できる。
【0010】
本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態に係る通信システムの構成の一例を示す図
図2】従来の通信システムの動作の一例を示すシーケンス図
図3】従来の通信システムの動作の他の一例を示すフローチャート
図4】本開示の実施の形態に係る通信システムの動作の一例を示すフローチャート
図5】本開示の実施の形態に係る通信システムの動作の一例を示すシーケンス図
図6】本開示の実施の形態の変形例1に係る通信システムの動作の一例を示すフローチャート
図7】本開示の実施の形態の変形例1に係る通信システムの動作の一例を示すシーケンス図
図8】本開示の実施の形態の変形例2に係る通信システムの構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本開示の実施の形態の通信システム1000の構成の一例を示す。通信システム1000には、ユーザ端末(無線通信端末装置)100、基地局装置200、サーバ装置300a、300bが含まれる。ユーザ端末100は、基地局装置200を経由して、サーバ装置300a、300bと通信を行う。なお、ユーザ端末100は、基地局装置200と無線通信路を経由して通信を行うが、基地局装置200は、サーバ装置300a、300bと通信する場合に、無線通信路を用いてもよいし、無線通信路以外を用いてもよい。
【0013】
ユーザ端末100は、CPU(Central Processing Unit)101、通信モジュール102、ストレージ103を備える。ユーザ端末100は、一例として、車載通信装置(DCM:Data Communiation Moduleという)、カーナビゲーション端末、ETC(Electronic Toll Collection)システム車載機、安全運転支援システム装置、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータである。また、ユーザ端末100は、例えば、自動車、列車、船舶、飛行機、UAV(Unmanned Aerial Vehicles)、ドローンに搭載されてよい。ユーザ端末100は、利用者により持ち運ばれてもよい。なお、CPU101は、制御回路とも呼ばれる。通信モジュール102は通信回路とも呼ばれる。
【0014】
基地局装置200は、CPU201、通信モジュール202、203、ストレージ204を備える。基地局装置200は、一例として、路側機装置、無線アクセスポイント、無線基地局である。
【0015】
サーバ装置300aは、CPU301a、通信モジュール302a、ストレージ303aを備える。サーバ装置300bは、CPU301b、通信モジュール302b、ストレージ303bを備える。サーバ装置300a、300bは、一例として、Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースである。サーバ装置300a、300bは、通信回線(一例として、インターネット、専用線、セルラ回線、LAN(ローカルエリアネットワーク))を介して基地局装置と接続される。また、サーバ装置300a、300bは、基地局装置と異なる場所に設置されてもよく、1つの筐体に設置してもよい。
【0016】
ユーザ端末100は、基地局装置200に接近した(基地局装置200の通信エリアに入った)場合、通信モジュール102と通信モジュール202の間に無線通信路を確立し、サーバ装置300a、300bと通信を行うアプリケーションを実行する。
【0017】
ユーザ端末100は、基地局装置200から遠ざかった(基地局装置200の通信エリアから出た)場合、又は、ユーザ端末100が移動したために通信モジュール102と通信モジュールの202のそれぞれのアンテナ指向性が不一致となった場合、通信圏外となる。
【0018】
したがって、ユーザ端末100が移動する場合、通信システム1000は、通信圏外となる前にアプリケーションに用いるサーバ装置300a、300bと通信を完了することが求められている。このため、ユーザ端末100は、通信モジュール102と通信モジュール202の間に無線通信路を確立した後に、迅速にアプリケーションがサーバ装置300a、300bと通信できるようにすることが望ましい。
【0019】
例えば、通信モジュール102、202がIEEE802.11ad通信を用いる場合、無線通信路を確立できる距離は、一例として、100m以上であるが、ユーザ端末100が、100km/hで走行する車両に搭載する場合、約3.6秒で100mの通信可能エリアを通過してしまう。したがって、CPU100は、3.6秒以内にサーバ装置300a、300bとの通信を完了できるよう、迅速にアプリケーションを動作させることが求められる。
【0020】
なお、特許文献1では、無線ネットワーク接続(無線通信路の接続)が生じたことを、ユーザ端末のMAC層が適切なアプリケーションに通知することが記載されている。しかしながら、特許文献1では、複数のアプリケーションが実行されることについては開示されていない。
【0021】
ここで、複数のアプリケーションが実行されている場合の従来の通信システムの動作について説明する。図2は、従来の通信システムの動作を示すシーケンス図である。従来のユーザ端末内のアプリケーションプログラムは、一定期間毎(例えば、1秒毎)にユーザ端末の通信モジュールが無線通信路の接続が確立したかどうか、通信モジュールに問い合わせを行っていた。
【0022】
このため、問い合わせを行う時間間隔は、アプリケーションが待機中(停止状態)となるため、アプリケーションによって接続確立を検出されるまでに遅延が生じ、結果として、アプリケーションが基地局装置と通信する時間が減少する。また、ユーザ端末は、接続確立の問い合わせ時間間隔を短縮させた場合、上記遅延は解消したとしても、ストレージに追加されたアプリケーション数に応じて、問い合わせ頻度が高まり、CPU負荷が増大し、消費電力が増加する。
【0023】
また、図3は、複数のアプリケーションが実行されている場合の従来の通信システムの動作の他の一例を示すフローチャートである。従来のユーザ端末内のアプリケーションプログラムは、一定期間毎(例えば、1秒毎)にサーバ装置のアドレスを指定して通信試行を行い、通信が可能か否かを判定していた。この方法を、ポーリング方式と呼ぶ。
【0024】
従来のユーザ端末は、一例として、pingコマンド、HTTP(Hyper Text Transport Protocol)リクエストを用いて、通信試行を行う(ステップS1104、S1204)。
【0025】
従来のユーザ端末は、アプリケーションプログラムにおいて、サーバ装置からの応答を受信したか否かを判定する。(ステップS1105、S1205)。
【0026】
従来のユーザ端末は、無線通信路の接続を確立しない場合、サーバ装置からの応答を受信しない(ステップS1105、S1205のNo)。従来のユーザ端末は、ステップS1105、S1205においてNoと判定した場合、予め定められた時間待機を行う。(ステップS1105a、S1205a)
【0027】
予め定められた時間とは、一例として、0.5秒、1秒といった固定の時間である。また、ユーザ端末のアプリケーションプログラムは、サーバ装置への通信試行が連続して失敗することに依るCPU負荷を低減するため、ステップS1105、S1205でNoと判定する毎に、ステップS1105a、1205aにおける待機時間を増加させてもよい(exponential backoffと呼ばれる)。
【0028】
従来のユーザ端末は、ステップS1105a、S1205aにおいて待機している場合、アプリケーションプログラムは無線通信路の接続を確立したことを検出することが困難であるため、ステップS1105a、S1205aにおける待機時間に応じた遅延が発生する。
【0029】
また、従来のユーザ端末は、無線通信路の接続が確立しない場合、サーバ装置への接続試行を繰り返し行うため、CPU負荷が増大する。
【0030】
また、従来のユーザ端末が通信試行(pingやHTTPリクエストの送信)を行ってから、サーバ装置の応答を受信するまで、通信回路の遅延やサーバの応答遅延(ラウンドトリップタイム)があるため、無線通信路の接続が確立してからユーザ端末のアプリケーションプログラムがサーバ装置と通信を行うまでの間にさらに遅延が生じる。
【0031】
以上のように、ポーリング方式は、ポーリング間隔に応じた遅延が生じ、複数のアプリケーションの動作によって、従来のユーザ端末内のCPUの負荷が増大する。また、従来のユーザ端末が行う通信試行には、通信路が疎通した場合も、サーバ装置からの応答を待つため、サーバ装置の応答時間、及び通信経路にかかる遅延(ラウンドトリップタイム)の間、アプリケーションの通信開始が遅延する。
【0032】
以上より、複数のアプリケーションが実行された場合に、実行されたアプリケーション毎に、無線通信の接続確立を確認しているため、遅延が増加する傾向にあり、従来のユーザ端末が、所定の時間内に、無線ネットワーク接続が生じたことを通知するアプリケーションを特定し(例えば、アプリケーションのプロセスIDを通知すること)、接続完了することが困難であった。
【0033】
図4は、通信システム1000の動作の一例を示すフローチャートである。ユーザ端末100が基地局装置200と無線通信路を確立し、サーバ装置300a、300bと通信を行う手順の一例を示す。
【0034】
ユーザ端末100のCPU101は、通信モジュール制御プログラム(第1制御プログラム)の実行を開始する(プログラムの実行を開始することを、プログラムを起動するという)。通信モジュール制御プログラムは、一例として、サプリカントプログラム、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)クライアントである。通信モジュール制御プログラムは、CPU101上で動作し、通信モジュール102に対して、起動指示及び停止指示を行い、通信モジュール202との通信に使用する、例えば、無線チャネル、暗号化方式といった通信パラメータの設定を行う。また、通信モジュール制御プログラムは、通信モジュール102と通信モジュール202とが無線通信路の接続を確立しているか否かの情報を保持する。(ステップS1001)
【0035】
CPU101は、接続状態監視プログラム(第2制御プログラム)を起動する。接続状態監視プログラムは、通信モジュール制御プログラムが備えるインターフェース手段であり、一例として、CLI(Command Line Interface)、D-Bus(Desktop Bus)を用いて、通信モジュール制御プログラムの状態変化を検出する。また、CPU101は、通信モジュール制御プログラムにおいてイベント(例えば無線通信路の接続及び切断)が発生した場合に、接続状態監視プログラムを起動する、又は、接続状態監視プログラムへ通知を行うプログラム及びコマンドを起動してもよい。なお、イベントに応じて呼び出されるコマンド及びプログラムは、フックと呼ばれる場合がある。(ステップS1002)
【0036】
なお、ステップS1001は、ステップS1002の後に実行されてもよい。一例として、CPU101は、先に接続状態監視プログラムを起動した場合、接続状態監視プログラムのフック機能により、通信モジュール制御プログラムを起動してもよい。通信モジュール制御プログラムを接続状態監視プログラムのサブプロセスとして起動することにより、通信モジュール制御プログラムは、接続状態監視プログラムのプロセスIDやAPI(Application Interface)が未知であっても、一例として、パイプを用いたプロセス間通信により、通信モジュール制御の状態(無線通信路の接続状態を含む)を、接続状態監視プログラムに通知することができる。
【0037】
CPU101は、1又は複数のアプリケーションプログラム(アプリケーション1、アプリケーション2)を起動する。アプリケーションプログラムは、一例として、ナビゲーションシステム、ドライブレコーダ、安全運転支援システム、自動料金支払いシステム、ソフトウェア・ファームウェア更新システム、センサデータ共有システム、Webブラウザのプログラムであってもよい。(ステップS1003)
【0038】
CPU101は、アプリケーション1、アプリケーション2を通信待ちとして停止する。(ステップS1004)
【0039】
なお、アプリケーション1、アプリケーション2は、通信機能、描画機能、音声案内機能といった複数の機能を含んでもよい。ステップS1004において、CPU101は、アプリケーション1、アプリケーション2の通信機能を通信待ちとして停止し、他の機能を継続して動作させてもよい。
【0040】
通信モジュール102が基地局装置の通信モジュール202と無線通信路を確立するまで、アプリケーション1、アプリケーション2の通信機能を通信待ちとして停止するが、CPU101は、接続状態監視プログラムを動作させることにより、無線通信路の接続有無を判定する。(ステップS1005)
【0041】
CPU101は、通信モジュール102が通信モジュール202と無線通信路を確立した場合(S1005のYes)、アプリケーション1、アプリケーション2の通信機能を再開する。(ステップS1006)なお、通信モジュール102が通信モジュール202と無線通信路を確立するまで、ステップS1005の処理が繰り返される(S1005のNo)。
【0042】
CPU101は、アプリケーション1の通信機能により、サーバ装置300aと通信を行う。(ステップS1007)
【0043】
CPU101は、アプリケーション2の通信機能により、サーバ装置300bと通信を行う。(ステップS1008)
【0044】
一例として、アプリケーション1、アプリケーション2は、サーバ装置300a、300bから、例えば、地図情報、交通情報、ポッドキャストデータといった音声データ、音楽データ、動画データ、ソフトウェア更新データ、ファームウェア更新データをダウンロードする。また、一例として、アプリケーション1、アプリケーション2は、サーバ装置300a、300bへドライブレコーダ情報(運転中に得られた、動画像データ、静止画像データ、位置情報ログを含む)、センサログデータ(ドライブレコーダ、安全運転支援システム、センサデータ共有システムが記録した位置情報及び速度情報履歴、カメラ、レーダといったセンサログ、アクセル開度といった制御データログを含めてよい)をアップロードする。
【0045】
図5は、通信システム1000の動作の一例を示すシーケンス図である。図5では、CPU101上で動作する各プログラムの動作の詳細を示し、ユーザ端末100の動作の詳細を示す図である。なお、CPU101は制御回路とも呼ばれる。
【0046】
基地局装置200は、一例として、IEEE802.11規格に準拠した無線アクセスポイントである。基地局装置200は、一定時間毎(例えば約0.1秒毎)にビーコンフレームを送信する。
【0047】
ユーザ端末100の通信モジュール102は、スキャンを行うことで、基地局装置200からのビーコンフレームを受信する。通信モジュール102は、ビーコンフレームを受信した場合、基地局装置200へプローブ要求フレームを送信した後、基地局装置200からのプローブ応答フレームを受信する。なお、通信モジュール制御プログラムは、通信モジュール102がビーコンフレームを受信した場合、ビーコン情報通知として接続状態監視プログラムに通知してもよい。ビーコンフレームを受信した場合の状態変更通知は、基地局装置200のアドレスといったビーコンフレームに含まれる情報、通信モジュール102がビーコンフレームを用いてビームフォーミングを実施した結果(ビーム方向や信号品質)を含んでもよい。
【0048】
通信モジュール102は、所定の時間(一例として、0.5秒)が経過した場合スキャンを終了する。通信モジュール制御プログラムは、スキャン結果を状態接続監視プログラムに通知する。
【0049】
スキャン中に基地局装置200からプローブ応答を受信した場合、通信モジュール制御プログラムによってユーザ端末100は、基地局装置200が接続対象か否かを判断する。一例として、基地局装置200のSSID(Service Set Identifier)があらかじめ定められたSSIDのリストに含まれるか否かに応じて、接続対象か否かを判断してもよい。
【0050】
通信モジュール制御プログラムによってユーザ端末100が、基地局装置200が接続対象であると判断した場合、通信モジュール102は、基地局装置200へ接続要求(アソシエーション要求フレーム)を送信する。基地局装置200は、ユーザ端末100の接続を許可する場合、接続応答フレームを送信する。
【0051】
通信モジュール102は、IPアドレスの自動設定を用いる場合、IPアドレス付与要求(一例として、DHCP Discover、DHCP Request、Router Solicitation、Solicit Message、Request Message)を基地局装置200に送信する。
【0052】
基地局装置200は、IPアドレス付与要求を受信した場合、IPアドレス付与応答(一例として、DHCP Offer、DHCP Ack、Router Advertisement、Advertise Message、Confirm Message)を送信する。基地局装置200は、IPアドレス付与要求に応答せずにルータ(図示せず)またはDHCPサーバ(図示せず)へ転送し、ルータまたはDHCPサーバからの応答をユーザ端末100へ転送してもよい。
【0053】
なお、ユーザ端末100は、IPアドレス付与要求の送信とIPアドレス付与応答の受信を省略してもよい。一例として、ユーザ端末100は、固定IPアドレスを用いる場合、及び、キャッシュされたIPアドレスが利用可能な場合、IPアドレス付与要求の送信とIPアドレス付与応答の受信を省略してもよい。この場合、図5において、接続状態監視プログラムが接続完了通知を受信した後、接続確立通知を各アプリケーション1,2に出力する。
【0054】
また、ユーザ端末100において、通信モジュール制御プログラムは複数であってもよい。一例として、ユーザ端末は、サプリカントプログラムとDHCPクライアントを実行してもよい。サプリカントプログラムは、通信モジュール102を制御し、DHCPクライアントは、IPアドレス付与要求を含む、IPアドレスの設定を行う。
【0055】
接続状態監視プログラムは、サプリカントプログラムより接続完了通知を受信した場合、DHCPクライアントプログラムを起動してもよい。これにより、通信モジュール102が接続応答を受信してからIPアドレス付与要求を送信するまでの遅延を減らすことができる。
【0056】
また、通信モジュール制御プログラムは、サプリカントプログラムを含み、接続状態監視プログラムは、DHCPクライアントプログラムを含むようにしてもよい。
【0057】
また、接続状態監視プログラムは、Webブラウザの一機能として実現されてもよい。
【0058】
次に、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2の動作について説明する。
【0059】
一例として、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2がナビゲーションプログラムであり、下記の条件の一例のいずれかに合致する場合、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2は、図1の無線通信路を用いてサーバ装置300aと通信を行い、新しい地図情報のダウンロードを行ってもよい。つまり、各アプリケーションプログラム1,2は、基地局装置200の通信エリア内にユーザ端末100が存在するか否かにかかわらず、図5の接続通知要求または図7の通信リクエストを出力することができる。
(条件1)予め設定された地図更新確認周期毎(例えば1日毎)
(条件2)ストレージ103に保存されている詳細地図の範囲外へ移動した、または、詳細地図の範囲外への移動がナビゲーション経路として設定された
(条件3)図1に示す無線通信路とは異なる通信手段(図示せず)として、例えば、FM放送、セルラ通信、DSRC(Dedicated Short Range Communications))により、サーバ300aが配信する地図情報の更新が伝えられた
【0060】
別の例として、サーバ装置300b(基地局装置200と近接し、又は同一の筐体に収められていてもよい)が、カメラ、レーダや他のサーバ装置(図示無し)からの情報に基づき取得した道路状況の情報を、ユーザ端末100へリアルタイム配信する例について説明する。
【0061】
アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2が、一例として、安全運転支援システムである場合、ユーザ端末100は、地図情報や図1に示す無線通信路とは異なる通信手段を通じて、現在のユーザ端末の位置においてサービスを行う配信サーバ(サーバ装置300b)の有無、及び、配信サーバ(サーバ装置300b)のアドレスを取得し、サーバ装置300bとの通信を行い配信される情報を受信する。
【0062】
図1の無線通信路の接続が有効である場合に、また、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2は、基地局装置200又は他のサーバ装置(図示無し)に、現在のユーザ端末100の位置又は基地局装置200を経由して行う通信において提供されるサービスの種類及びサーバのアドレスを問い合わせるようにしてもよい。
【0063】
アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2は、サーバ装置300a、300bと通信する場合、接続状態監視プログラムへ接続通知要求を行う。接続通知要求は、プロセス間通信によって、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2から状態監視プログラムへ通知される。アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2は、接続確立通知を受信するまで、通信待ちとして動作を停止する。(図4のステップS1004に相当する。)
【0064】
プロセス間通信は、一例として、共有メモリ、名前付きパイプ、ソケット、シグナル、共有ファイル、D-Bus(Desktop Bus)、RPC(Remote Procedure Call)、HTTPが用いられる。接続状態監視プログラムは、複数のアプリケーションとプロセス間通信を行う。
【0065】
なお、接続状態監視プログラムは、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2からの接続通知要求を受信しない場合、通信モジュール制御プログラムへ通信モジュール102の停止要求を行い、通信モジュール102を停止してもよい。また、接続状態監視プログラムは、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2からの接続通知要求を受信しない場合、通信モジュール制御プログラムへ通信モジュール102の待機要求を行い、通信モジュール102を低消費電力モードへ移行させてもよい。これにより、通信モジュールの消費電力を低減することができる。
【0066】
接続状態監視プログラムは、通信モジュール制御プログラムからIPアドレス設定完了通知を受信した場合、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2へ接続確立通知を行う。
【0067】
また、ユーザ端末100がIPアドレス付与要求を行わない場合、接続状態監視プログラムが通信モジュール制御プログラムから接続完了通知を受信した後、接続状態監視プログラムは、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2へ接続確立通知を行う。
【0068】
つまり、接続状態監視プログラムは、通信モジュール制御プログラムが発行する複数の通知を識別し、通知受信直後にアプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2とサーバ装置300a、300bとの通信が可能となる通知を検出して、接続確立通知を発行する。(図4のステップS1005、S1006に相当する。)
【0069】
接続状態監視プログラムは、接続通知要求をアプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2からぞれぞれ受信した場合、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2を識別する情報(例えば、アプリケーションプログラムのプロセスIDやランダム値による識別子を接続通知要求に含める)を保存し、識別情報を接続確立通知に含めて送信することにより、接続通知要求を送信したアプリケーション(アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2)に接続確立通知が到達するようにしてもよい。
【0070】
接続状態監視プログラムは、1以上のアプリケーションプログラムが接続確立通知を受信できるように、接続通知要求を、少なくともアプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2を送信先として含むよう、例えば、ブロードキャスト、グループキャストといった報知情報として送信してもよい。一例として、接続通知情報を既知のアドレス又はキーを持つ共有メモリに書き込むことで、1以上のアプリケーションプログラムが接続確立通知を受信できる。また、接続状態監視プログラムは、Publisher-Subscriberモデルを実装したプロセス間通信プログラム(一例として、ZeroMQライブラリがある)を用いることで、1対多のプロセス間通信を行い、多数のアプリケーションプログラムに接続確立通知を送付してもよい。
【0071】
この場合、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2は、接続状態監視プログラムに接続通知要求を行う代わりに、接続確立通知の待ち受け設定を行うようにしてもよい。待ち受け設定は、一例として、ソケットへの接続、ソケットのリッスン、共有メモリの監視の開始、パイプへの接続、を含む。
【0072】
アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2が待ち受け設定したことが接続状態監視プログラムに通知されない場合、または、接続状態監視プログラムから待ち受け設定済みのアプリケーションプログラムが識別困難な場合であっても、接続状態監視プログラムは、宛先を指定しない1対多のプロセス間通信を行いることで、アプリケーションプログラムに接続確立通知を行うことができる。
【0073】
アプリケーションプログラム1は、接続確立通知を受信した場合、サーバ装置300aへの通信リクエストを行う。通信リクエストは、一例として、サーバ装置300aと通信を行うため、基地局装置200、サーバ装置300a及び他のDNS(Domain Name System)サーバ(図示せず)へのサーバ装置300aのIPアドレスの問い合わせ、サーバ装置300aと暗号化通信を行うためのネゴシエーション手順、サーバ装置300aからのデータのダウンロード要求またはアプロード要求、を含む。(図4のステップS1007に相当する。)
【0074】
アプリケーションプログラム2は、接続確立通知を受信した場合、サーバ装置300bへの通信リクエストを行う。(図4のステップS1008に相当する。)
【0075】
アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2は、接続確立通知を受信した後にサーバ装置300a、300bへ通信リクエストを行うため、無線通信路が確立していないことによる通信の失敗の可能性が低い。これにより、従来のポーリングに依る方法に比べ、不要な通信リクエストの発行を抑制でき、CPU101負荷を下げ、消費電力を低減することができる。
【0076】
アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2は、接続状態監視プログラムとプロセス間通信を行う代わりに、ユーザ端末100にインストールされた基本ソフトウェア(OS、Webブラウザ、共通ライブラリ)に対して接続通知要求を行ってもよい。基本ソフトウェアに対する接続通知要求は、コールバック関数の設定、イベントハンドラの設定、プロミス、非同期関数、コルーチン、await文が用いられ、接続確立通知を受信するまで、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム1は停止されるか、サーバ装置300a、サーバ装置300bとの通信とは異なる処理を行う。接続確立通知を受信した後、コールバック関数の呼び出し、イベントハンドラの発火、非同期関数の完了、コルーチンからのメッセージ受信が行われ、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2はサーバ装置300a、サーバ装置300bとの通信が行われるように制御が移される。
【0077】
この場合、OS、Webブラウザは、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2に代わって、接続状態監視プログラムに対してプロセス間通信、シグナル、Javascript API(登録商標)を用いて接続通知要求を行う。また、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2が共通ライブラリを用いる場合、共通ライブラリのプログラムは、接続状態監視プログラムに対してプロセス間通信を用いて接続状態監視プログラムを行う。
【0078】
以上より、ユーザ端末100は、接続状態監視プログラムを用いてアプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2に接続確立通知をプロセス間通信により送信し、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2は、接続確立通知を受信してから通信リクエストを行うようにしたので、ユーザ端末100は、無線通信路の接続を確立してからサーバ装置300a、300bへの通信を開始するまでの遅延を短縮できる。つまり、ユーザ端末100は、アプリケーションプログラムが迅速に通信を開始することが可能となる。さらにポーリングを行う方法に比べ、サーバ装置300a、300bへの不要な通信リクエストを減らし、CPU101の負荷を下げ、消費電力を削減することができる。
【0079】
また、ユーザ端末100は、通信モジュール制御プログラムが発する多数の通知(ビーコン情報通知、スキャン結果通知、接続完了通知、IPアドレス設定完了通知を含む)を接続状態監視プログラムに入力するようにし、接続状態監視プログラムからアプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2へ接続確立通知を行うようにしたので、CPU101上で動作するアプリケーションプログラムの数が増加し、その数が未知であっても、通信モジュール制御プログラムを変更することなく、各アプリケーションプログラムに無線通信路の接続が確立したことを即時的に通知することができる。つまり、ユーザ端末100は、アプリケーションプログラムが迅速に通信を開始することが可能となる。さらに、通信モジュール制御プログラムが発する多数の通知を多数のアプリケーションプログラムに入力することが無いため、多数のアプリケーションプログラムを動作させた場合に、CPU101の負荷を減らし、消費電力を低減することができる。
【0080】
なお、通信モジュール制御プログラムの通知用インターフェースは、制御用インターフェースと共通である場合がある。このため、通信モジュール制御プログラムのインターフェースにアプリケーションプログラムを接続した場合、アプリケーションプログラムからの意図しない制御が発生する場合がある。したがって、従来の通信システムでは、通信モジュール制御プログラムのインターフェースに直接接続されるプログラムに対しては、通信モジュールへの意図しない操作に対する厳正な検査を設定する場合がある。
【0081】
これに対して、本実施の形態では、個々のアプリケーションプログラムを通信モジュール制御プログラムに直接接続しないため、アプリケーションプログラムから通信モジュールへの意図しない操作を排除することができるため、個々のアプリケーションの検査が容易となり、新たなアプリケーションの導入が容易となり、ユーザはユーザ端末100をより有用に活用することが可能となる。
【0082】
(変形例1)
図6は、通信システム1000の動作の一例を示すフローチャートである。図6は、ユーザ端末100が基地局装置200と無線通信路を確立し、ユーザ端末100がサーバ装置300a、300bと通信を行う手順の他の一例を示す図である。なお、図6において、図4と同様の手順には同一の番号を付与し、説明を省略する。
【0083】
アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2は、サーバ装置300a、サーバ装置300bへの通信リクエストを、通信状態監視プログラムへ送信する。なお、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2は、通信状態監視プログラムをプロキシサーバとして設定し、サーバ装置300a、サーバ装置300bへの通信リクエストを送信してもよい。また、図4と異なり、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2は、無線通信路の接続が、有効か否かが未知であっても、通信リクエストを発行してもよい。(ステップS1013)
【0084】
通信状態監視プログラムによってCPU101は、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2からの通信リクエストを保留する。(ステップS1014)
【0085】
通信状態監視プログラムによってCPU101は、通信モジュール102が基地局装置200の通信モジュール202と通信を確立した場合(ステップS1005のYes)、保留していたアプリケーションプログラム1からの通信リクエストを、サーバ装置300aへ送信する。(ステップS1017)
【0086】
通信状態監視プログラムは、サーバ装置300aからの応答を、アプリケーションプログラム1へ転送する。(ステップS1017a)
【0087】
通信状態監視プログラムは、保留していたアプリケーションプログラム2からの通信リクエストを、サーバ装置300bへ送信する。(ステップS1018)
【0088】
通信状態監視プログラムプログラムは、サーバ装置300bからの応答を、アプリケーションプログラム2へ転送する(ステップS1018a)。なお、図6において、アプリケーション2に関する動作は省略してもよいし、3つ以上のアプリケーションが存在する場合は、アプリケーション2の後に、連続して、処理してもよい。
【0089】
図7は、通信システム1000の動作の一例を示すシーケンス図である。図7は、図6の動作をするユーザ端末100のCPU101上で動作する各プログラムの動作の詳細を示し、ユーザ端末100の動作の詳細を示す図である。なお、図7において、図5と同一の処理は説明を省略する。
【0090】
アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2は、サーバ装置300a、サーバ装置300bへの通信リクエストを、通信状態監視プログラムへ送信する(図6のステップS1013に相当する)。
【0091】
通信状態監視プログラムによってユーザ端末100は、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2からの通信リクエストを保留する(図6のステップS1014に相当する)。
【0092】
通信状態監視プログラムによってユーザ端末100は、通信モジュール102がIPアドレス設定完了通知を受信した場合、無線通信路の接続が確立したと判定し(図6のステップS1005に相当する)、保留していたアプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2からの通信リクエストをサーバ装置300a、300bへ送信する(図6のステップS1017、S1018に相当する)。
【0093】
通信状態監視プログラムによってユーザ端末100は、サーバ装置300a、300bからの応答を、アプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2へ転送する(図6のステップS1017a、S1018aに相当する)。
【0094】
以上より、ユーザ端末100は、無線通信路が確立しない場合、接続状態監視プログラムによって、サーバ装置300a、300bへの通信リクエストが保留され、無線通信路が確立した場合、通信状態監視プログラムによって、保留した通信リクエストをサーバ装置300a、300bへ送信される。このため、ユーザ端末100は、無線通信路の接続を確立した後に、他の処理を介さずに、サーバ装置300a、300bへの通信リクエストすることができるため、サーバ装置300a、300bへの通信を開始するまでの遅延を短縮できる。またポーリングを行う方法に比べ、サーバ装置300a、300bへの不要な通信リクエストを減らし、CPU101の負荷を下げ、消費電力を削減することができる。
【0095】
また、ユーザ端末100は、無線通信路が確立されたか否かについてアプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2が確認することなく通信リクエストを発行し、発行された通信リクエストを無線通信路が確立されるまで接続状態監視プログラムが保留するため、アプリケーション毎に実施されていた無線通信路の接続確認処理を省略でき、CPU101の負荷を低減し、消費電力を削減することができる。
【0096】
(変形例2)
図8は、図1とは異なる別の通信システム1000aの構成の一例を示す。なお、図8において、図1と同様の構成要素には同一の番号を付与し、説明を省略する。
【0097】
図8のユーザ端末100aは、基地局装置200と無線通信路を確立する。アプリケーション端末100bは、ユーザ端末100aと接続し、通信回線を介して基地局装置200と接続されたサーバ装置300a、300bと通信を行う。ユーザ端末100a及びアプリケーション端末100bは、例えば、自動車、列車、船舶、飛行機、UAV(Unmanned Aerial Vehicles)、ドローンに搭載されてよい。ユーザ端末100a及びアプリケーション端末100bは、利用者により持ち運ばれてもよい。
【0098】
ユーザ端末100aは、OBU(On Board Unit)101a、通信モジュール102を含む。及びアプリケーション端末100bは、ECU101b、ストレージ103、センサデバイス104を含む。
【0099】
ECU(Electronic Control Unit)101bは、センサデバイス104、ストレージ103、OBU101aと接続し、例えば、ナビゲーション、安全運転支援システム、緊急ブレーキシステム、といった機能を実現する。ECU101bは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、マイコン、DSP(Digital Signal Processor)、AI(人工知能)エンジン、FPGA(Field Programable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、メモリ、周辺機器コントローラを含んでもよい。
【0100】
センサデバイス104は、一例として、カメラ、レーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging)、超音波センサ、である。
【0101】
OBU101aは、通信モジュール102と接続し、通信モジュール102を制御する。OBU101aは、通信モジュール102を外部モジュールとして接続してもよく、通信モジュール102を内部モジュールとして内蔵してもよい。
【0102】
OBU101aとECU101bとは、例えば、イーサネット(登録商標)、USB(Universal Serial Bus)、CAN(Controller Area Network)といった自動車内、装置内ネットワーク(車内ネットワークという)により接続される。
【0103】
アプリケーション端末100bは、一例として、ECU101b上でアプリケーションプログラム1、アプリケーションプログラム2を実行する。ユーザ端末100aは、OBU101a上で、通信モジュール制御プログラム、接続状態監視プログラムを実行する。
【0104】
例えば、アプリケーション端末100bは、センサデバイス104が取得した自動車の車両外の映像、レーダ測位した先行走行車両との距離及び車両形状、といった情報をECU101bへ入力する。ユーザ端末100aは、OBU101aが通信モジュール102を用いてサーバ装置300aとの通信により取得した周辺道路の走行車両、歩行者、構造物や落下物に関する情報を、アプリケーション端末100bのECU101bへ入力する。ECU101bは、OBU101a及びセンサデバイス104それぞれから入力された情報を統合し、自動車のブレーキ制御、アクセル制御、ハンドル制御の支援を行う。
【0105】
アプリケーションプログラム、通信状態監視プログラムのそれぞれが異なる装置(OBU101a、ECU101b)上で実行する場合であっても、図4図5図6図7の手順が適用可能である。
【0106】
例えば、従来のユーザ端末がポーリング(図3を参照)を行う場合、ECU101bは、通信試行を行う毎に、OBU101aへ車内ネットワークを介して要求を行うため、ECU101bの負荷及び消費電力を増大させ、OBU101aの負荷及び消費電力を増大させ、車内ネットワークを占有してECU101bが他の装置との通信(例えば、センサデバイス104)を行うための帯域幅を減少させてしまう。
【0107】
図8のユーザ端末100aは、接続状態監視プログラムをOBU101a上で実行し、図4及び図5の手順を適用してアプリケーション端末100bのECU101b上で実行されるアプリケーションプログラムへ接続確立通知を送信することにより、アプリケーション端末100bは、接続確立通知をユーザ端末100aから受信するまでアプリケーションプログラムを停止させることができるので、アプリケーション端末100bのECU101bの負荷及び消費電力を低減し、車内ネットワークの帯域消費を削減することができる。
【0108】
図8のユーザ端末100aは、接続状態監視プログラムをOBU101a上で実行し、図6及び図7の手順を適用して、アプリケーション端末100bのECU101b上で実行されるアプリケーションプログラムからの通信リクエストを保留するので、、通信モジュール102が無線接続を確立したか否かによらずアプリケーションプログラムはサーバ300a、300bへの通信リクエストを送信することができる。図6図7の手順はポーリングと異なり、アプリケーションプログラムはサーバ300a、300bへの通信リクエスト(通信試行)を繰り返し送信しないため、ECU101bの負荷及び消費電力を低減し、車内ネットワークの帯域消費を削減することができる。
【0109】
以上の説明において、各構成要素の表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0110】
本開示はソフトウェア、ハードウェア、又は、ハードウェアと連携したソフトウェアで実現することが可能である。
【0111】
上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、部分的に又は全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上記実施の形態で説明した各プロセスは、部分的に又は全体的に、一つのLSI又はLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部または全てを含むように一つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力を備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0112】
集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサ又は専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。本開示は、デジタル処理又はアナログ処理として実現されてもよい。
【0113】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0114】
本開示は、通信機能を持つあらゆる種類の装置、デバイス、システム(通信装置と総称)において実施可能である。通信装置の、非限定的な例としては、電話機(携帯電話、スマートフォン等)、タブレット、パーソナルコンピュータ(PC)(ラップトップ、デスクトップ、ノートブック等)、カメラ(デジタル・スチル/ビデオ・カメラ等)、デジタル・プレーヤー(デジタル・オーディオ/ビデオ・プレーヤー等)、着用可能なデバイス(ウェアラブル・カメラ、スマートウオッチ、トラッキングデバイス等)、ゲーム・コンソール、デジタル・ブック・リーダー、テレヘルス・テレメディシン(遠隔ヘルスケア・メディシン処方)デバイス、通信機能付きの乗り物又は移動輸送機関(自動車、飛行機、船等)、及び上述の各種装置の組み合わせがあげられる。
【0115】
通信装置は、持ち運び可能又は移動可能なものに限定されず、持ち運びできない又は固定されている、あらゆる種類の装置、デバイス、システム、例えば、スマート・ホーム・デバイス(家電機器、照明機器、スマートメーター又は計測機器、コントロール・パネル等)、自動販売機、その他IoT(Internet of Things)ネットワーク上に存在し得るあらゆる「モノ(Things)」をも含む。
【0116】
通信には、セルラーシステム、無線基地局バックホール回線、無線LANシステム、通信衛星システム等によるデータ通信に加え、これらの組み合わせによるデータ通信も含まれる。
【0117】
また、通信装置には、本開示に記載される通信機能を実行する通信デバイスに接続又は連結される、コントローラやセンサ等のデバイスも含まれる。例えば、通信装置の通信機能を実行する通信デバイスが使用する制御信号やデータ信号を生成するような、コントローラやセンサが含まれる。
【0118】
また、通信装置には、上記の非限定的な各種装置と通信を行う、あるいはこれら各種装置を制御する、インフラストラクチャ設備、例えば、基地局、アクセスポイント、その他あらゆる装置、デバイス、システムが含まれる。
【0119】
(実施の形態のまとめ)
第1の開示に係る無線通信端末装置は、通信相手である基地局装置と通信する通信回路と、前記通信回路と前記基地局装置との間の通信を制御する第1制御プログラムと、無線通信端末装置上で実行され、前記基地局装置を介して外部サーバ装置と前記無線通信端末装置との間での通信されたデータを使用する1つ以上のアプリケーションプログラムと、前記第1制御プログラムと前記1つ以上のアプリケーションプログラムとの間の通知を制御する第2制御プログラムと、を制御する制御回路と、を含み、前記制御回路は、前記無線通信端末装置が前記基地局装置からビーコンを受信した後に、前記第1制御プログラムによって、前記無線通信端末装置と前記基地局装置との間の接続を確立させ、前記1つ以上のアプリケーションプログラムから前記外部サーバ装置への接続通知要求を受けていた場合、前記接続が確立した後に、前記第2制御プログラムによって、前記1つ以上のアプリケーションプログラムに、接続確立通知を出力し、前記接続確立通知を受けた後に、前記1つ以上のアプリケーションプログラムによって、前記外部サーバ装置に対する通信リクエストを、前記第1制御プログラムを介して前記通信回路に出力し、前記通信回路は、前記通信リクエストを前記基地局装置に送信する。
第2の開示に係る無線通信端末装置の無線通信方法は、無線通信端末装置が基地局装置からビーコンを受信した後に、第1制御プログラムによって、前記無線通信端末装置と前記基地局装置との間の接続を確立させ、1つ以上のアプリケーションプログラムから外部サーバ装置への接続通知要求を受けていた場合、前記接続が確立した後に、第2制御プログラムによって、前記1つ以上のアプリケーションプログラムに接続確立通知を出力し、前記接続確立通知を受けた後に、前記1つ以上のアプリケーションプログラムによって、前記外部サーバ装置に対する通信リクエストを、前記第1制御プログラムを介して通信回路に出力し、前記通信回路によって、前記通信リクエストを前記基地局装置に送信し、前記第1制御プログラムは、前記通信回路と前記基地局装置との間の通信を制御する、前記1つ以上のアプリケーションプログラムは、前記無線通信端末装置上で実行され、前記基地局装置を介して外部サーバ装置と前記無線通信端末装置との間での通信されたデータを使用する、前記第2制御プログラムは、前記第1制御プログラムと前記1つ以上のアプリケーションプログラムとの間の通知を制御する。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本開示は、迅速なアプリケーションプログラムの起動が可能な無線通信端末装置として好適である。
【符号の説明】
【0121】
100、100a ユーザ端末
101、201,301a、301b CPU
101a OBU
101b ECU
102、202、203、302a、302b 通信モジュール
103、204、303a、303b ストレージ
104 センサデバイス
200 基地局装置
300a、300b サーバ装置
1000、1000a 通信システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8