(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】レーザ加工システム用光学ユニット及びレーザ加工システム
(51)【国際特許分類】
G02B 7/00 20210101AFI20231027BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20231027BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
G02B7/00 F
G02B7/02 B
G02B7/02 D
G02B5/00 B
(21)【出願番号】P 2020011712
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 隆行
(72)【発明者】
【氏名】市橋 宏基
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/037663(WO,A1)
【文献】特開2007-219337(JP,A)
【文献】特開2017-146407(JP,A)
【文献】特開2019-207426(JP,A)
【文献】特開2009-010232(JP,A)
【文献】特開2019-095705(JP,A)
【文献】特開2001-033677(JP,A)
【文献】特開2007-262273(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0044345(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00 - 7/24
G02B 5/00 - 5/136
B23K 26/00 - 26/70
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する複数のレーザエミッタを有するレーザダイオードと、
複数のレンズを有するレンズユニットと、
光透過性を有する保持ブロックと、
遮光膜と、を備え、
前記保持ブロックと前記レーザダイオードとは、第1接着剤で接着され、
前記レンズユニットと前記保持ブロックとは、第2接着剤で接着され、
前記遮光膜は、前記レンズユニットと前記保持ブロックとの間に位置する、
レーザ加工システム用光学ユニット。
【請求項2】
前記第1接着剤は、光硬化性樹脂であり、
前記第2接着剤は、光硬化性樹脂である、
請求項1に記載のレーザ加工システム用光学ユニット。
【請求項3】
前記複数のレンズは、FAC(Fact Axis Collimation)レンズ及びビームツイスターレンズを含んでおり、
前記遮光膜は、前記レンズユニット内で多重反射したレーザ光を反射又は吸収する、
請求項1に記載のレーザ加工システム用光学ユニット。
【請求項4】
前記遮光膜は、前記第2接着剤によって構成されている、
請求項1に記載のレーザ加工システム用光学ユニット。
【請求項5】
前記遮光膜は、アルミニウムを含有する、
請求項1に記載のレーザ加工システム用光学ユニット。
【請求項6】
前記第2接着剤は、白色接着剤である、
請求項
4に記載のレーザ加工システム用光学ユニット。
【請求項7】
前記遮光膜は、光反射性を有する、
請求項1~
6のいずれか1項に記載のレーザ加工システム用光学ユニット。
【請求項8】
前記遮光膜は、酸化クロムを含有する、
請求項1に記載のレーザ加工システム用光学ユニット。
【請求項9】
前記第2接着剤は、黒色接着剤である、
請求項
4に記載のレーザ加工システム用光学ユニット。
【請求項10】
前記遮光膜は、光吸収性を有する、
請求項1-
4、
8、
9のいずれか1項に記載のレーザ加工システム用光学ユニット。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載のレーザ加工システム用光学ユニットと、
前記レーザ光を集光させる集光手段と、を備える
レーザ加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工システム用光学ユニット及びレーザ加工システムに関し、詳細には、レーザダイオードを有するレーザ加工システム用光学ユニット及びレーザ加工システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高出力レーザシステムは、溶接、切断、穿孔、及び材料処理等の用途に利用される。特に、銅、アルミ等の長波長のレーザ光に対して比較的高い反射率を有する金属のレーザ加工では、500nm以下の波長のレーザ光が用いられることがある。また、炭素繊維強化プラスチック等の樹脂のレーザ加工では、樹脂材料と化学反応をする500nm以下の波長のレーザ光が用いられることがある。
【0003】
このようなレーザシステムは、典型的には、レーザ光を出射するレーザエミッタと、被加工物上にレーザ光を集光させる光学システムと、を有する。例えば、レーザエミッタから出射されたレーザ光が光ファイバの中に結合され、光ファイバからのレーザ光を光学システムによって処理することでワークピース上に収束させて加工を行うことができる。
【0004】
特許文献1のように波長合成(Wavelength Beam Combine、以下WBCともいう)技術は、高いビーム品質を得るための1つの手段である。WBCシステムは、一般的に、異なる波長のレーザ光を出力するレーザエミッタと、波長ごとに異なる角度でレーザ光を曲げる回折格子と、レーザ光を外部共振させる半透明ミラーと、を含む。
【0005】
高出力レーザシステムでは、高出力を実現するために、1つの半導体チップに数百μmのピッチで複数のレーザエミッタを配置させたレーザダイオード(LD)が用いられる。このようなレーザダイオードを用いる場合、狭いピッチで配置されたレーザエミッタのそれぞれに対して、Fast方向の拡がり角を調整し、ビームの形状を変えるFAC(Fact Axis Collimation)レンズ及びビームの拡がり角を調整するためのビームツイスター(BT)レンズが必要である。FACレンズ及びビームツイスターレンズも、レーザエミッタと同じピッチで配置される。狭いピッチでこれらのレンズが配置されたレンズユニットを用いる場合、レーザエミッタから出射されたレーザ光が、レンズユニット中の対応するビームツイスターレンズに入る。
【0006】
特許文献2には、レンズが保持部材と接着剤によって接着された光学ユニットが開示されている。このように、レンズユニット表面には部材同士を接着させる接着剤が設けられることがある。例えば、レーザ加工システムでは、レンズユニットとレーザダイオードとを接着剤で接着させた光学ユニットが用いられる。レーザエミッタから出射された光が、レーザ光が集光に寄与しない箇所に照射されることで、レンズユニット表面上の接着剤にレーザ光が到達する場合がある。特に、短波長のレーザ光はレイリー散乱によりガラス内で様々な方向に散乱されやすい。短波長のレーザ光が接着剤に照射されると、接着剤の密着性及び変形量が大きくなり、劣化してしまうという問題がある。接着剤が劣化すると、光軸がずれ、レーザシステムにおいては、高品質のビームを形成することが困難になるおそれがある。
【0007】
また、特許文献3によると、レンズユニット内のレンズとレンズとの間に遮光部を設けているが、レンズユニット内ガラスのレイリー散乱を抑制することができず、同様にレーザ光が接着剤に当たり、接着剤を劣化させるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2018/0198257号明細書
【文献】特開2010-197412号公報
【文献】特開2005-352062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
レーザ加工システムに用いられる光学ユニットにおいて、接着剤へのレーザ光の到達を防ぎ、接着剤の劣化を防止することは容易ではない。
【0010】
本発明は、接着剤が劣化しにくいレーザ加工システム用光学ユニット及びレーザ加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示のレーザ加工システム用光学ユニットは、レーザ光を出射する複数のレーザエミッタを有するレーザダイオードと、複数のレンズを有するレンズユニットと、光透過性を有する保持ブロックと、遮光膜と、を備える。前記保持ブロックと前記レーザダイオードとは、第1接着剤で接着される。前記レンズユニットと前記保持ブロックとは、第2接着剤で接着される。前記遮光膜は、前記レンズユニットと前記保持ブロックとの間に位置する。
【0012】
本開示のレーザ加工システムは、レーザ加工システム用光学ユニットと、前記レーザ光を集光させる集光手段と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示のレーザ加工システム用光学ユニット及びレーザ加工システムによれば、接着剤の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光学ユニットの断面図
【
図2】本発明の一実施形態に係る光学ユニットの断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示のレーザ加工システム用光学ユニット(以下、光学ユニットともいう)は、レーザ光を出射する複数のレーザエミッタを有するレーザダイオードと、複数のレンズを有するレンズユニットと、光透過性を有する保持ブロックと、光反射性又は光吸収性を有する遮光膜と、を有する。保持ブロックとレーザダイオードとは、第1接着剤で接着される。レンズユニットと保持ブロックとは、第2接着剤で接着される。遮光膜は、レンズユニットと保持ブロックとの間に位置する。
【0016】
本開示のレーザ加工システム用光学ユニットでは、レンズユニットと保持ブロックとの間に遮光膜が設けられていることで、レーザダイオードからのレーザ光がレンズユニット内で多重反射し、多重反射したレーザ光が保持ブロック内へ入ることを防ぐことができる。特に、青色等の短波長のレーザ光はレイリー散乱が大きいために、レンズユニット内で散乱しやすく、レーザ光が多重反射しやすい。しかし、レンズユニットと保持ブロックとの間に遮光膜が設けられているため、保持ブロックへレーザ光が侵入しにくくなり、保持ブロック上に設けられた第1接着剤へレーザ光が照射されて接着剤が劣化することを防ぐことができる。
【0017】
<光学ユニット>
以下、本開示のレーザ加工システム用光学ユニットを実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本開示の一実施形態に係るレーザ加工システム用光学ユニット10(以下、光学ユニット10ともいう)の断面図を示す。光学ユニット10は、レーザダイオード1とレンズユニット3と保持ブロック4とを有する。レーザダイオード1は、レーザ光を出射する複数のレーザエミッタ2を有する。レーザダイオード1は、複数のレーザエミッタ2を有するLDチップであってよい。レーザエミッタ2の個数は特に限定されず、2つ以上であればよい。例えば、1つの半導体チップに数百μmのピッチで2つ以上の複数のレーザエミッタ2を配置させたレーザダイオード1を用いてもよい。
【0019】
レンズユニット3は、複数のレンズを有する。レンズユニット3は、レーザエミッタ2から出射される光の拡がり角を調整する。レンズユニット3は、FAC(Fact Axis Collimation)レンズ31とビームツイスター(BT)レンズ32とを有することが好ましい。複数のレーザエミッタ2が配置されたレーザダイオード1では、各レーザエミッタ2から出射された光は垂直方向及び水平方向に拡がり角を持つ。垂直方向とは、レーザダイオード1の出射面に垂直な方向であり、出射されるレーザ光の速軸方向(以下、Fast方向ともいう)である。水平方向とは、レーザダイオード1の出射面と平行な方向である、出射されるレーザ光の遅軸方向(以下、Slow方向ともいう)である。まず、拡がり角の大きいFast方向の光をFACレンズ31によって平行光にする。その後、Fast方向に対して所定の角度傾いたコリメーションレンズが表面及び裏面に設けられたビームツイスターレンズ32によってレーザエミッタ2から出射されたレーザ光を回転させる。なお、光を回転させる、とは、光(ビーム)の伝播方向に垂直な面における断面形状を回転させることを意味する。
【0020】
FACレンズ31及びビームツイスターレンズ32は、レーザエミッタ2と同じピッチで配置される。これにより、各レーザエミッタ2から出射されたレーザ光は、対応するFACレンズ31及びビームツイスターレンズ32を通過することで、拡がり角が調整される。なお、レーザエミッタ2のピッチは特に限定されず、複数のレーザエミッタ2のパワーの総エネルギーがFACレンズ31及びビームツイスターレンズ32を通じて最大になるように設定すればよい。レンズユニット3の強度及びレーザ加工システムの加工精度の観点から、レーザエミッタ2のピッチは、100um以上300um以下であることが好ましい。
【0021】
保持ブロック4は、レーザダイオード1及びレンズユニット3を保持する。レーザダイオード1及びレンズユニット3は、実際にレーザ光を出射させながら、パワーが最大になるように光軸を合わせる必要があり、相対的な位置調整が必要である。このため、レーザダイオード1とレンズユニット3とを直接接着することができない。そこで、
図1に示すように、レーザダイオード1と保持ブロック4とを第1接着剤5によって接着し、レンズユニット3と保持ブロック4とを第2接着剤6によって接着することで、レーザダイオード1とレンズユニット3とが一体に保持された光学ユニット10を得ることができる。
【0022】
なお、第1接着剤5及び第2接着剤6として光硬化性樹脂を用いた場合に、第1接着剤5及び第2接着剤6を硬化させるための光を透過させる必要があるため、保持ブロック4は、光透過性を有する。保持ブロック4は、必要に応じて第1接着剤5及び第2接着剤6を硬化可能な程度に光透過性を有していればよい。すなわち、第1接着剤5及び第2接着剤6へと光が到達可能であれば、保持ブロック4の一部のみが光透過性を有していてもよい。保持ブロック4として、石英を用いてもよい。この場合、例えば、保持ブロック4の一部を、光透過性を有する石英から形成し、保持ブロック4の残部を、光透過性の低い不透明石英(白色石英ともいう)から形成してもよい。不透明石英とは、石英内部に微泡を分散させたものである。
【0023】
第1接着剤5は、
図1に示すように、レーザダイオード1と保持ブロック4とを接着する。第1接着剤5はレーザダイオード1及びレンズユニット3の熱膨張による歪みを低減し、調整精度をあげる観点から、光硬化性樹脂を用いることが好ましい。光硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。調整精度を向上させ、硬化前後の位置ズレを少なくする観点から、硬化時の収縮性の低い樹脂を用いることが好ましい。このような樹脂として、例えば、カチオン系の硬化剤を用いたエポキシ樹脂を特に好ましく用いることができる。第1接着剤5は、保持ブロック4とレーザダイオード1とを接着できる形状に設けられていればよい。第1接着剤5は、保持ブロック4のレーザダイオード1と対向する面の全面に設けられていてもよく、一部に設けられていてもよい。
【0024】
第2接着剤6は、
図1に示すように、レンズユニット3と保持ブロック4とを接着する。第2接着剤6として、上述の第1接着剤5で例示したのと同様の接着剤を用いることができる。第1接着剤5及び第2接着剤6の種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。第2接着剤6は、レンズユニット3と保持ブロック4とを接着できる形状に設けられていればよい。第2接着剤6は、保持ブロック4のレンズユニット3と対向する面の全面に設けられていてもよく、一部に設けられていてもよい。第2接着剤6は、レンズユニット3の保持ブロック4と対向する面の全面に設けられていてもよく、一部に設けられていてもよい。
【0025】
光学ユニット10は、光反射性又は光吸収性を有する遮光膜7を有する。すなわち、光学ユニット10は、光反射膜及び光吸収膜のうちの少なくとも一方を有する。
【0026】
遮光膜7は、
図1に示すように、レンズユニット3と保持ブロック4との間に位置する。レンズユニット3と保持ブロック4との間に光反射性又は光吸収性を有する遮光膜7が設けられていることで、レンズユニット内で多重反射したレーザ光のうち、遮光膜へ到達したレーザ光は、遮光膜7によって反射又は吸収される。そのため保持ブロック4内にレーザ光が入りにくくなり、保持ブロック4内でレーザ光が反射して第1接着剤5へレーザ光が到達することを防ぐことができる。そのため、第1接着剤5の劣化を抑制することができる。
【0027】
遮光膜7は、保持ブロック4と接するように設けられていてもよく、レンズユニット3と接するように設けられていてもよく、レンズユニット3と保持ブロック4との両方に接するように設けられていてもよい。レンズユニット3と保持ブロック4とを接着する接着剤が、遮光膜7として機能してもよい。遮光膜7は、レンズユニット3の、保持ブロック4との接着面の全体を被覆することが好ましい。この場合、レーザ光が保持ブロック4内へ入り込むことをより抑制することができる。
【0028】
遮光膜7は、レンズユニット3に接して、レンズユニット3の保持ブロック4と対向する面の全面を被覆することが好ましい。この場合、第2接着剤6は、遮光膜7を介してレンズユニット3と保持ブロック4とを接着する。そのため、レンズユニット3内で多重反射したレーザ光が遮光膜7へ到達すると、レーザ光は遮光膜7によって反射又は吸収される。そのため、第2接着剤6にレーザ光が到達しにくくなる。したがって、この場合、第2接着剤6の劣化を抑制することができる。
【0029】
本実施形態では、遮光膜7は光反射性を有する。すなわち、本実施形態では、遮光膜7は光反射膜であり、遮光膜7に到達したレーザ光は、遮光膜7によって反射される。光反射膜の種類は特に限定されず、光を反射可能であり、レンズユニット3と保持ブロック4との接着性を阻害しにくいものであればよい。
【0030】
本実施形態では、光反射膜はアルミニウムを含有する。光反射膜としてアルミ膜を用いてもよい。アルミ膜の厚みは特に限定されないが、例えば、50nm以上であることが好ましい。この場合、アルミ膜は、レーザ光を反射するのに十分な光反射性を有する。アルミ膜の成膜方法は、特に限定されないが、例えば、スパッタ又は蒸着によって形成することができる。
【0031】
(実施の形態2)
本実施形態では、遮光膜7が光吸収性を有する場合を説明する。すなわち、本実施形態では、遮光膜7は光吸収膜であり、遮光膜7に到達したレーザ光は、遮光膜7によって吸収される。光吸収膜の種類は特に限定されず、光を吸収可能であり、レンズユニット3と保持ブロック4との接着性を阻害しにくいものであればよい。なお、遮光膜7として光吸収膜を用いる場合、光を吸収することによって熱エネルギーが発生するが、レンズユニット3の熱容量が大きいため、発生する熱エネルギーの影響は小さい。
【0032】
本実施形態では、光吸収膜は酸化クロムを含有する。光吸収膜として酸化クロム膜を用いてもよい。酸化クロム膜の厚みは特に限定されないが、例えば、50nm以上であることが好ましい。この場合、酸化クロム膜は、レーザ光を吸収するのに十分な光吸収性を有する。酸化クロム膜の成膜方法は、特に限定されないが、例えば、スパッタ又は蒸着によって形成することができる。
【0033】
なお、遮光膜7以外の構成要素については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0034】
(実施の形態3)
本実施形態では、
図2を参照して、遮光膜7が第2接着剤6を兼ねている場合を説明する。この場合、第2接着剤6、すなわち遮光膜7は、レンズユニット3の保持ブロック4と対向する面の全面に設けられていてもよく、一部に設けられていてもよい。ただし、保持ブロック4へのレーザ光の到達を防ぐ観点から、第2接着剤6は、レンズユニット3と保持ブロック4と対向する面の全面に設けられていることが好ましい。
【0035】
第2接着剤6は、白色接着剤又は黒色接着剤のいずれかであることが好ましい。第2接着剤6が白色接着剤である場合、第2接着剤6は光反射性を有する遮光膜7として機能する。白色接着剤は、酸化チタン及び硫化カルシウムなどの白色粉体を接着剤に分散したものであってよい。なお、白色接着剤を用いる場合には、紫外線等の光による硬化反応が不十分となる場合があるため、接着剤として熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0036】
第2接着剤6が黒色接着剤である場合、第2接着剤6は光吸収性を有する遮光膜7として機能する。黒色接着剤は、カーボンブラックなどの黒色粉体を接着剤に分散したものであってよい。また、黒色接着剤は紫外線による硬化反応が不十分のため、熱硬化樹脂を用いた接着剤であることが望ましい。
【0037】
なお、遮光膜7以外の構成要素については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0038】
<レーザ加工システム>
本開示の光学ユニット10を用いたレーザ加工システムについて、詳細に説明する。
【0039】
レーザ加工システムは、光学ユニット10と、光学ユニット10中のレーザエミッタ2から出射されるレーザ光を集光させる集光手段と、を有する。
【0040】
レーザ加工装置は、光学ユニット10と集光手段とに加えて、異なる波長のレーザ光を1つのピームにする合成手段を有していてもよい。本実施形態では、レーザ加工装置が合成手段を有する態様について説明する。
【0041】
本実施形態に係るレーザ加工装置では、複数のレーザエミッタ2から出射される複数のレーザ光が、回折格子等の合成手段によって重畳され、一本のレーザビームとして集光される。
【0042】
複数のレーザエミッタ2から出射されるレーザ光のそれぞれは、合成手段によって光の伝播方向が変更される。レーザエミッタ2のそれぞれから出射されたレーザ光は、レンズユニット3中のレンズによって拡がり角が調整される。好ましくは、レーザ光は、レンズユニット3中のFACレンズ31及びビームツイスターレンズ32によって拡がり角を調整される。その後、レーザ光は、凸レンズ等のコリメータによって平行光化されることが好ましい。そして、平行光化されたレーザ光は、回折格子等の合成手段によって、特定の方向に向けて集光される。回折格子は、反射型であってもよく、透過型であってもよい。
【0043】
なお、合成手段は回折格子に限定されず、波長の違いを用いた合成手段、偏光特性を用いた合成手段、及び空間合成手段を用いればよい。波長の違いを用いた合成手段では、例えば、ダイクロックミラーやプリズムを用いて波長の異なるレーザ光を結合することができる。レーザ光の偏光特性を用いた合成手段では、例えば、一つのレーザ光の偏光方向と他のレーザ光の偏光方向とのなす角が90度となるようにし、偏光ビームスプリッターを用いてレーザ光を結合することができる。空間合成手段では、例えば、集光レンズやミラーを用いて空間的にレーザ光を結合することができる。
【0044】
合成手段によって合成されたレーザ光は、ミラー等の集光手段によって被加工物上に集光される。例えば、合成手段によって重畳され集光されたレーザ光を、その一部を除いてミラーに反射させ、レーザエミッタ側に戻す。これにより、レーザ光を外部共振させ、外部共振により出力が高められたレーザ光の一部は、ミラーを透過し、外部に出射される。出射されたレーザ光を光ファイバに導入し、光ファイバからの光を光学システムによって処理することで、被加工物上にレーザ光を収束させて加工を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示のレーザ加工システム用光学ユニット及びレーザ加工システムは、溶接、切断、穿孔、及び材料処理等の用途に有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 レーザダイオード
2 レーザエミッタ
3 レンズユニット
31 FACレンズ
32 ビームツイスターレンズ
4 保持ブロック
5 第1接着剤
6 第2接着剤
7 遮光膜
10 レーザ加工システム用光学ユニット