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特許7373760音声信号処理装置、音声信号処理方法、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】音声信号処理装置、音声信号処理方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20231027BHJP
   H04R 3/04 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
H04R3/00 340
H04R3/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022541170
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2021025732
(87)【国際公開番号】W WO2022030172
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2020133324
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】北川 博規
(72)【発明者】
【氏名】友田 政明
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4306113(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 3/04
H04R 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レコードプレーヤにおいて再生された音声信号に対する音声信号処理を行う音声信号処理装置であって、
前記レコードプレーヤから前記音声信号を受け付ける第1入力端子と、
音声信号に対する音声信号処理のための補正パラメータと、測定用の音声信号の特性を示す特性情報とを記憶しているメモリと、
前記メモリに記憶されている前記補正パラメータに基づいて、前記第1入力端子から受け付けた前記音声信号に対して音声信号処理を行う信号処理回路と、
マイコンと、
前記レコードプレーヤから前記音声信号の入力を受け付ける第2入力端子と、
前記音声信号を受け付ける1つの入力端子を、前記第1入力端子及び前記第2入力端子から選択するセレクタと、を備え、
前記マイコンは、
測定用のレコード盤に記録されている測定用の音声信号が前記レコードプレーヤによって再生されている際に、前記レコードプレーヤから前記第1入力端子が受け付けた音声信号の音響特性を測定し、
測定結果と前記メモリに記憶されている前記特性情報との比較結果に基づいて、前記信号処理回路での前記音声信号処理のための前記補正パラメータを生成し、
前記測定を実行した際の前記音声信号処理装置における前記音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した前記補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶し、
前記メモリに記憶された前記補正パラメータ、及び、当該補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶された前記設定情報を読み出し、読み出した前記設定情報で示される前記設定で前記音声信号処理装置を制御し、読み出した前記補正パラメータを用いた前記音声信号処理を前記信号処理回路に実行させ、
前記設定情報は、前記測定を実行した際の前記セレクタにより選択された前記1つの入力端子を示すセレクタ情報を含み、
前記マイコンは、読み出した前記設定情報に含まれる前記セレクタ情報で示される前記1つの入力端子を前記セレクタに選択させ、
前記信号処理回路は、前記セレクタで選択された前記1つの入力端子で受け付けられた音声信号に対して、前記設定情報と共に読み出した前記補正パラメータを用いた前記音声信号処理を行う
音声信号処理装置。
【請求項2】
レコードプレーヤにおいて再生された音声信号に対する音声信号処理を行う音声信号処理装置であって、
前記レコードプレーヤから前記音声信号を受け付ける第1入力端子と、
音声信号に対する音声信号処理のための補正パラメータと、測定用の音声信号の特性を示す特性情報とを記憶しているメモリと、
前記メモリに記憶されている前記補正パラメータに基づいて、前記第1入力端子から受け付けた前記音声信号に対して音声信号処理を行う信号処理回路と、
マイコンと、
前記レコードプレーヤから前記音声信号の入力を受け付ける第2入力端子と、
前記音声信号を受け付ける1つの入力端子を、前記第1入力端子及び前記第2入力端子から選択するセレクタと、
メッセージを提示する提示部と、を備え、
前記マイコンは、
測定用のレコード盤に記録されている測定用の音声信号が前記レコードプレーヤによって再生されている際に、前記レコードプレーヤから前記第1入力端子が受け付けた音声信号の音響特性を測定し、
測定結果と前記メモリに記憶されている前記特性情報との比較結果に基づいて、前記信号処理回路での前記音声信号処理のための前記補正パラメータを生成し、
前記測定を実行した際の前記音声信号処理装置における前記音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した前記補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶し、
前記メモリに記憶された前記補正パラメータ、及び、当該補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶された前記設定情報を読み出し、読み出した前記設定情報で示される前記設定で前記音声信号処理装置を制御し、読み出した前記補正パラメータを用いた前記音声信号処理を前記信号処理回路に実行させ、
前記設定情報は、前記測定を実行した際の前記セレクタにより選択された前記1つの入力端子を示すセレクタ情報を含み、
前記マイコンは、読み出した前記設定情報に含まれる前記セレクタ情報が示す前記1つの入力端子と、前記セレクタが選択している入力端子とが異なる場合、前記1つの入力端子とは異なる入力端子が前記セレクタで選択されていることを示すメッセージを前記提示部に提示させる
声信号処理装置。
【請求項3】
前記メッセージは、前記1つの入力端子に前記セレクタを切り替える入力を行うことをユーザに促すメッセージを含む
請求項に記載の音声信号処理装置。
【請求項4】
前記音声信号処理は、アナログ-デジタル変換後の音声信号に対する第1増幅処理を含み、
前記設定情報は、前記第1増幅処理において設定されている第1ゲインを含み、
前記信号処理回路は、読み出した前記設定情報に含まれる前記第1ゲインで前記第1増幅処理を実行する
請求項からのいずれか1項に記載の音声信号処理装置。
【請求項5】
さらに、
前記第1入力端子が受け付けた前記音声信号に対する第2増幅処理を実行する増幅処理回路と、
ユーザからの入力を受け付ける受付部と、を備え、
前記設定情報は、前記受付部により受け付けられた前記入力で示される、前記レコードプレーヤが備えるカートリッジの種別を示すカートリッジ情報を含み、
前記マイコンは、読み出した前記設定情報に含まれる前記カートリッジ情報で示されるカートリッジの種別に応じた第2ゲインで前記増幅処理回路に前記第2増幅処理を実行させる
請求項からのいずれか1項に記載の音声信号処理装置。
【請求項6】
レコードプレーヤにおいて再生された音声信号に対する音声信号処理を行う音声信号処理装置における音声信号処理方法であって、
測定用のレコード盤に記録されている測定用の音声信号が前記レコードプレーヤによって再生されている際に、前記レコードプレーヤから受け付けた音声信号の音響特性を測定し、
測定結果と、前記音声信号処理装置が備えるメモリに記憶されている、前記測定用の音声信号の特性を示す特性情報と比較結果に基づいて、前記音声信号処理のための補正パラメータを生成し、
前記測定を実行した際の前記音声信号処理装置における前記音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した前記補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶し、
前記メモリに記憶された前記補正パラメータ、及び、当該補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶された前記設定情報を読み出し、読み出した前記設定情報で示される前記設定で前記音声信号処理装置を制御し、読み出した前記補正パラメータを用いた前記音声信号処理を、前記音声信号処理装置が備える信号処理回路に実行させ、
前記設定情報は、前記測定を実行した際の、前記音声信号処理装置が備えるセレクタにより選択された1つの入力端子を示すセレクタ情報を含み、
前記1つの入力端子は、前記音声信号処理装置が備える第1入力端子及び第2入力端子のうちで、前記音声信号の入力を受け付ける入力端子であり、
前記音声信号処理方法では、さらに、
読み出した前記設定情報に含まれる前記セレクタ情報で示される前記1つの入力端子を前記セレクタに選択させ、
前記信号処理回路は、前記セレクタで選択された前記1つの入力端子で受け付けられた音声信号に対して、前記設定情報と共に読み出した前記補正パラメータを用いた前記音声信号処理を行う
音声信号処理方法。
【請求項7】
レコードプレーヤにおいて再生された音声信号に対する音声信号処理を行う音声信号処理装置における音声信号処理方法であって、
測定用のレコード盤に記録されている測定用の音声信号が前記レコードプレーヤによって再生されている際に、前記レコードプレーヤから受け付けた音声信号の音響特性を測定し、
測定結果と、前記音声信号処理装置が備えるメモリに記憶されている、前記測定用の音声信号の特性を示す特性情報との比較結果に基づいて、前記音声信号処理のための補正パラメータを生成し、
前記測定を実行した際の前記音声信号処理装置における前記音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した前記補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶し、
前記メモリに記憶された前記補正パラメータ、及び、当該補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶された前記設定情報を読み出し、読み出した前記設定情報で示される前記設定で前記音声信号処理装置を制御し、読み出した前記補正パラメータを用いた前記音声信号処理を、前記音声信号処理装置が備える信号処理回路に実行させ、
前記設定情報は、前記測定を実行した際の、前記音声信号処理装置が備えるセレクタにより選択された1つの入力端子を示すセレクタ情報を含み、
前記1つの入力端子は、前記音声信号処理装置が備える第1入力端子及び第2入力端子のうちで、前記音声信号の入力を受け付ける入力端子であり、
前記音声信号処理方法では、さらに、
読み出した前記設定情報に含まれる前記セレクタ情報が示す前記1つの入力端子と、前記セレクタが選択している入力端子とが異なる場合、前記1つの入力端子とは異なる入力端子が前記セレクタで選択されていることを示すメッセージを前記音声信号処理装置が備える提示部に提示させる
音声信号処理方法。
【請求項8】
レコードプレーヤにおいて再生された音声信号に対する音声信号処理を行う音声信号処理装置における音声信号処理方法をマイコンに実行させるためのプログラムであって、
前記音声信号処理方法では、
測定用のレコード盤に記録されている測定用の音声信号が前記レコードプレーヤによって再生されている際に、前記レコードプレーヤから受け付けた音声信号の音響特性を測定し、
測定結果と、前記音声信号処理装置が備えるメモリに記憶されている、前記測定用の音声信号の特性を示す特性情報との比較結果に基づいて、前記音声信号処理のための補正パラメータを生成し、
前記測定を実行した際の前記音声信号処理装置における前記音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した前記補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶し
前記メモリに記憶された前記補正パラメータ、及び、当該補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶された前記設定情報を読み出し、読み出した前記設定情報で示される前記設定で前記音声信号処理装置を制御し、読み出した前記補正パラメータを用いた前記音声信号処理を、前記音声信号処理装置が備える信号処理回路に実行させ、
前記設定情報は、前記測定を実行した際の、前記音声信号処理装置が備えるセレクタにより選択された1つの入力端子を示すセレクタ情報を含み、
前記1つの入力端子は、前記音声信号処理装置が備える第1入力端子及び第2入力端子のうちで、前記音声信号の入力を受け付ける入力端子であり、
前記音声信号処理方法では、さらに、
読み出した前記設定情報に含まれる前記セレクタ情報で示される前記1つの入力端子を前記セレクタに選択させ、
前記信号処理回路は、前記セレクタで選択された前記1つの入力端子で受け付けられた音声信号に対して、前記設定情報と共に読み出した前記補正パラメータを用いた前記音声信号処理を行う
プログラム。
【請求項9】
レコードプレーヤにおいて再生された音声信号に対する音声信号処理を行う音声信号処理装置における音声信号処理方法をマイコンに実行させるためのプログラムであって、
前記音声信号処理方法では、
測定用のレコード盤に記録されている測定用の音声信号が前記レコードプレーヤによって再生されている際に、前記レコードプレーヤから受け付けた音声信号の音響特性を測定し、
測定結果と、前記音声信号処理装置が備えるメモリに記憶されている、前記測定用の音声信号の特性を示す特性情報と比較結果に基づいて、前記音声信号処理のための補正パラメータを生成し、
前記測定を実行した際の前記音声信号処理装置における前記音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した前記補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶し、
前記メモリに記憶された前記補正パラメータ、及び、当該補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶された前記設定情報を読み出し、読み出した前記設定情報で示される前記設定で前記音声信号処理装置を制御し、読み出した前記補正パラメータを用いた前記音声信号処理を、前記音声信号処理装置が備える信号処理回路に実行させ、
前記設定情報は、前記測定を実行した際の、前記音声信号処理装置が備えるセレクタにより選択された1つの入力端子を示すセレクタ情報を含み、
前記1つの入力端子は、前記音声信号処理装置が備える第1入力端子及び第2入力端子のうちで、前記音声信号の入力を受け付ける入力端子であり、
前記音声信号処理方法では、さらに、
読み出した前記設定情報に含まれる前記セレクタ情報が示す前記1つの入力端子と、前記セレクタが選択している入力端子とが異なる場合、前記1つの入力端子とは異なる入力端子が前記セレクタで選択されていることを示すメッセージを前記音声信号処理装置が備える提示部に提示させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音声信号処理装置、音声信号処理方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、接続されたイヤホンに応じた音声出力補正が可能な携帯端末装置を開示する。この携帯端末装置は、テスト用音声信号を用いて、イヤホン接続端子に接続されたイヤホンのインピーダンスを測定し、得られた特性に応じて低域ブースト補正を行うことにより、個々のイヤホンの特性に対応してその出力音声の特性を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-226329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、携帯端末装置にイヤホンが接続された際、その補正パラメータを測定、記録し、自動的に切り替える。この技術を、音声信号処理に関する設定をユーザが好みの設定に変更できる機能を備えるシステムに適用する場合、補正パラメータの測定後にその設定が変更されると、ユーザの好みの設定における音質を実現するためには、この設定を補正パラメータの測定時と同様に再設定する必要がある。よって、ユーザ利便性が著しく低下するという課題がある。
【0005】
本開示は、ユーザの利便性を損なうことなく、ユーザの所望の設定において測定することにより得られた補正パラメータによる音声信号処理を実行することができる音声信号処理装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における音声信号処理装置は、レコードプレーヤにおいて再生された音声信号に対する音声信号処理を行う音声信号処理装置であって、前記レコードプレーヤから前記音声信号を受け付ける第1入力端子と、音声信号に対する音声信号処理のための補正パラメータと、測定用の音声信号の特性を示す特性情報とを記憶しているメモリと、前記メモリに記憶されている前記補正パラメータに基づいて、前記第1入力端子から受け付けた前記音声信号に対して音声信号処理を行う信号処理回路と、マイコンと、を備え、前記マイコンは、測定用のレコード盤に記録されている測定用の音声信号が前記レコードプレーヤによって再生されている際に、前記レコードプレーヤから前記第1入力端子が受け付けた音声信号の音響特性を測定し、測定結果と前記メモリに記憶されている前記特性情報との比較結果に基づいて、前記信号処理回路での前記音声信号処理のための前記補正パラメータを生成し、前記測定を実行した際の前記音声信号処理装置における前記音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した前記補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶する。
【0007】
また、本開示における音声信号処理方法は、レコードプレーヤにおいて再生された音声信号に対する音声信号処理を行う音声信号処理装置における音声信号処理方法であって、測定用のレコード盤に記録されている測定用の音声信号が前記レコードプレーヤによって再生されている際に、前記レコードプレーヤから受け付けた音声信号の音響特性を測定し、測定結果と、前記音声信号処理装置が備えるメモリに記憶されている、前記測定用の音声信号の特性を示す特性情報と比較結果に基づいて、前記音声信号処理のための補正パラメータを生成し、前記測定を実行した際の前記音声信号処理装置における前記音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した前記補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶する。
【0008】
なお、これらの全般的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示における音声信号処理装置は、ユーザの利便性を損なうことなく、ユーザの所望の設定において測定することにより得られた補正パラメータによる音声信号処理を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態におけるレコード再生システムの構成を示す概略図である。
図2図2は、実施の形態におけるレコード再生システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態における音声信号処理装置の測定処理の動作を示すフローチャートである。
図4図4は、実施の形態におけるメモリに記憶される複数の音響設定の一例を示す図である。
図5図5は、実施の形態における音声信号処理装置の音響設定適用処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一態様に係る音声信号処理装置は、レコードプレーヤにおいて再生された音声信号に対する音声信号処理を行う音声信号処理装置であって、前記レコードプレーヤから前記音声信号を受け付ける第1入力端子と、音声信号に対する音声信号処理のための補正パラメータと、測定用の音声信号の特性を示す特性情報とを記憶しているメモリと、前記メモリに記憶されている前記補正パラメータに基づいて、前記第1入力端子から受け付けた前記音声信号に対して音声信号処理を行う信号処理回路と、マイコンと、を備え、前記マイコンは、測定用のレコード盤に記録されている測定用の音声信号が前記レコードプレーヤによって再生されている際に、前記レコードプレーヤから前記第1入力端子が受け付けた音声信号の音響特性を測定し、測定結果と前記メモリに記憶されている前記特性情報との比較結果に基づいて、前記信号処理回路での前記音声信号処理のための前記補正パラメータを生成し、前記測定を実行した際の前記音声信号処理装置における前記音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した前記補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶する。
【0012】
これによれば、本実施の形態に係る音声信号処理装置は、測定時における音声信号処理装置における音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した補正パラメータと関連付けてメモリに記憶する。このため、例えば、ユーザは、音声信号処理装置を操作することで、メモリに関連付けて記憶された補正パラメータ及び設定情報を選択して設定した際に、補正パラメータの設定と連動して設定情報に基づく音声信号処理装置の設定も自動的に行うことができる。よって、ユーザの利便性を損なうことなく、ユーザの所望の設定において測定することにより得られた補正パラメータによる音声信号処理を実行することができ、容易に所望の音質を実現することができる。
【0013】
また、前記マイコンは、前記メモリに記憶された前記補正パラメータ、及び、当該補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶された前記設定情報を読み出し、読み出した前記設定情報で示される前記設定で前記音声信号処理装置を制御し、読み出した前記補正パラメータを用いた前記音声信号処理を前記信号処理回路に実行させてもよい。
【0014】
これによれば、本実施の形態に係る音声信号処理装置は、測定時における音声信号処理装置における音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した補正パラメータと関連付けてメモリに記憶する。そして、音声信号処理装置は、メモリに関連付けて記憶された補正パラメータ及び設定情報を選択して設定した際に、補正パラメータの設定と連動して設定情報に基づく音声信号処理装置の設定も自動的に行う。よって、ユーザの利便性を損なうことなく、ユーザの所望の設定において測定することにより得られた補正パラメータによる音声信号処理を実行することができ、容易に所望の音質を実現することができる。
【0015】
また、さらに、前記レコードプレーヤから前記音声信号の入力を受け付ける第2入力端子と、前記音声信号を受け付ける1つの入力端子を、前記第1入力端子及び前記第2入力端子から選択するセレクタと、を備え、前記設定情報は、前記測定を実行した際の前記セレクタにより選択された前記1つの入力端子を示すセレクタ情報を含み、前記マイコンは、読み出した前記設定情報に含まれる前記セレクタ情報で示される前記1つの入力端子を前記セレクタに選択させ、前記信号処理回路は、前記セレクタで選択された前記1つの入力端子で受け付けられた音声信号に対して、前記設定情報と共に読み出した前記補正パラメータを用いた前記音声信号処理を行ってもよい。
【0016】
このため、セレクタで選択されている入力端子と、読み出された設定情報に含まれるセレクタ情報で示される入力端子とが異なる場合、セレクタ情報で示される入力端子をセレクタに選択させる。このように、読み出された設定情報で示される設定が現状の音声信号処理装置における設定と異なる場合、設定情報で示される設定に変更するため、補正パラメータの設定と連動して設定情報に基づく音声信号処理装置の設定も自動的に行うことができる。よって、ユーザの利便性が向上する。
【0017】
また、さらに、前記レコードプレーヤから前記音声信号の入力を受け付ける第2入力端子と、前記音声信号を受け付ける1つの入力端子を、前記第1入力端子及び前記第2入力端子から選択するセレクタと、メッセージを提示する提示部と、を備え、前記設定情報は、前記測定を実行した際の前記セレクタにより選択された前記1つの入力端子を示すセレクタ情報を含み、前記マイコンは、読み出した前記設定情報に含まれる前記セレクタ情報が示す前記1つの入力端子と、前記セレクタが選択している入力端子とが異なる場合、前記1つの入力端子とは異なる入力端子が前記セレクタで選択されていることを示すメッセージを前記提示部に提示させてもよい。
【0018】
このため、1つの入力端子とは異なる入力端子がセレクタで選択されていることをユーザに通知することができる。
【0019】
また、前記メッセージは、前記1つの入力端子に前記セレクタを切り替える入力を行うことをユーザに促すメッセージを含んでもよい。
【0020】
このため、1つの入力端子にセレクタを切り替える入力を行うことをユーザに促すことができる。
【0021】
また、前記音声信号処理は、アナログ-デジタル変換後の音声信号に対する第1増幅処理を含み、前記設定情報は、前記第1増幅処理において設定されている第1ゲインを含み、前記信号処理回路は、読み出した前記設定情報に含まれる前記第1ゲインで前記第1増幅処理を実行してもよい。
【0022】
このため、信号処理回路の第1増幅処理に設定されている第1ゲインと、読み出された設定情報に含まれる第1ゲインとが異なる場合、第1増幅処理のゲインを読み出された設定情報に含まれる第1ゲインに更新する。このように、読み出された設定情報で示される設定が現状の音声信号処理装置における設定と異なる場合、設定情報で示される設定に変更するため、補正パラメータの設定と連動して設定情報に基づく音声信号処理装置の設定も自動的に行うことができる。よって、ユーザの利便性が向上する。
【0023】
また、さらに、前記第1入力端子が受け付けた前記音声信号に対する第2増幅処理を実行する増幅処理回路と、ユーザからの入力を受け付ける受付部と、を備え、前記設定情報は、前記受付部により受け付けられた前記入力で示される、前記レコードプレーヤが備えるカートリッジの種別を示すカートリッジ情報を含み、前記マイコンは、読み出した前記設定情報に含まれる前記カートリッジ情報で示されるカートリッジの種別に応じた第2ゲインで前記増幅処理回路に前記第2増幅処理を実行させてもよい。
【0024】
このため、音声信号処理装置に設定されているカートリッジの種別と、読み出された設定情報に含まれるカートリッジ情報で示されるカートリッジの種別とが異なる場合、カートリッジ情報で示されるカートリッジの種別に音声信号処理装置の設定を更新する。これにより、マイコンは、更新された設定に応じて増幅処理回路の第2増幅処理における第2ゲインを更新する。このように、読み出された設定情報で示される設定が現状の音声信号処理装置における設定と異なる場合、設定情報で示される設定に変更するため、補正パラメータの設定と連動して設定情報に基づく音声信号処理装置100の設定も自動的に行うことができる。よって、ユーザの利便性が向上する。
【0025】
また、本開示における音声信号処理方法は、レコードプレーヤにおいて再生された音声信号に対する音声信号処理を行う音声信号処理装置における音声信号処理方法であって、測定用のレコード盤に記録されている測定用の音声信号が前記レコードプレーヤによって再生されている際に、前記レコードプレーヤから受け付けた音声信号の音響特性を測定し、測定結果と、前記音声信号処理装置が備えるメモリに記憶されている、前記測定用の音声信号の特性を示す特性情報と比較結果に基づいて、前記音声信号処理のための補正パラメータを生成し、前記測定を実行した際の前記音声信号処理装置における前記音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した前記補正パラメータと関連付けて前記メモリに記憶する。
【0026】
これによれば、本実施の形態に係る音声信号処理方法は、測定時における音声信号処理装置における音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した補正パラメータと関連付けてメモリに記憶する。このため、例えば、ユーザは、音声信号処理装置を操作することで、メモリに関連付けて記憶された補正パラメータ及び設定情報を選択して設定した際に、補正パラメータの設定と連動して設定情報に基づく音声信号処理装置の設定も自動的に行うことができる。よって、ユーザの利便性を損なうことなく、ユーザの所望の設定において測定することにより得られた補正パラメータによる音声信号処理を実行することができ、容易に所望の音質を実現することができる。
【0027】
なお、これらの全般的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0028】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0029】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0030】
(実施の形態)
[1-1.構成]
図1は、実施の形態におけるレコード再生システムの構成を示す概略図である。図2は、実施の形態におけるレコード再生システムの構成を示すブロック図である。
【0031】
これらの図に示されるように、レコード再生システム1は、アナログレコード(以下、レコード盤15と記載する)を再生するためのシステムであり、レコードプレーヤ10、音声信号処理装置100、及び、スピーカ107を備える。また、図1には、音声信号処理装置100における制御を指示するための制御信号を音声信号処理装置100に送信するリモコン(リモートコントローラ)120が示されている。
【0032】
レコードプレーヤ10は、レコード盤15に記録された信号(例えば音声信号等)を再生する音響装置であり、ターンテーブル11、カートリッジ12及びトーンアーム13を備える。
【0033】
ターンテーブル11は、レコード盤15が載せられる回転台であり、レコード盤15の再生時に所定の回転方向に一定の速度で回転(自転)する。
【0034】
カートリッジ12は、レコード針を備えるピックアップカートリッジである。カートリッジ12は、トーンアーム13の先端に、交換可能に設けられる。カートリッジ12のレコード針は、レコード盤15の再生時に、回転するターンテーブル11に載せられたレコード盤15の音溝をトレースする。カートリッジ12には、その構造の違いにより、ムービングマグネット型(MM型)、ムービングコイル型(MC型)等の様々な種別がある。カートリッジ12は、レコード針を介してレコード盤15の音溝に記録された信号を振動として取得する。カートリッジ12は、レコード針を介して取得した振動を、カートリッジ12が備えるマグネットまたはコイルを用いてアナログの電気信号に変換し、変換により得られた電気信号を音声信号として出力する。カートリッジ12は、その種別に応じて得られる音声信号の音響特性や信号レベルが異なる。なお、本開示での音響特性は、周波数特性及び位相特性を含む。
【0035】
トーンアーム13は、カートリッジ12を先端に保持し、カートリッジ12のレコード針と、ターンテーブル11上で回転するレコード盤15との間にかかる圧力を適切に制御し、回転するレコード盤15の音溝をレコード針がスムーズにトレースするように制御する。
【0036】
レコードプレーヤ10は、カートリッジ12が出力する音声信号を、複数の伝送路によって音声信号処理装置100へ伝送することができる。本実施の形態では、レコードプレーヤ10は、第1伝送ケーブル21が接続され、音声信号を出力する第1出力端子(図示せず)と、第2伝送ケーブル22が接続され、音声信号を出力する第2出力端子(図示せず)とを有する。このため、レコードプレーヤ10は、第1伝送ケーブル21及び第2伝送ケーブル22の各々で構成される伝送路によって音声信号を伝送可能である。第1伝送ケーブル21は、例えば、RCAケーブルである。第2伝送ケーブル22は、例えば、XLRケーブルである。なお、これらの伝送ケーブル21、22は、音声信号を音声信号処理装置100に伝送することができるケーブルであれば、上記で例示したRCAケーブル及びXLRケーブルに限らない。例えば、第1伝送ケーブル21及び第2伝送ケーブル22の一方は、AUXケーブル等、他のケーブルであってもよい。第1伝送ケーブル21及び第2伝送ケーブル22は、互いに異なる種類のケーブルであり、これらの伝送ケーブル21、22による伝送路は、互いに音響特性が異なる。そのため、これらの伝送路を通過した音声信号は、互いに音響特性が異なったものとなる。
【0037】
音声信号処理装置100は、レコードプレーヤ10において再生された音声信号に対する音声信号処理を行う装置である。音声信号処理装置100は、具体的には、音声信号処理として、レコードプレーヤ10からの音声信号の音響特性の調整処理、及び、音声信号の増幅処理を行う装置である。音声信号処理装置100は、音声信号処理後の音声信号をスピーカ107に出力する。音声信号処理装置100は、例えば、アンプ装置であってもよい。音声信号処理装置100は、図2に示されるように、信号処理回路101と、メモリ102と、フォノイコライザ103と、A/D変換器104と、D/A変換器105と、アンプ106と、マイコン108と、表示デバイス109と、入力IF(Interface)110と、セレクタ111と、入力端子112と、通信IF113とを有する。
【0038】
入力端子112は、レコードプレーヤ10から音声信号を受け付ける端子である。入力端子112は、第1入力端子112a及び第2入力端子112bを有する。第1入力端子112aは、例えば、PHONO(RCA)の端子であり、第1伝送ケーブル21が接続される。第2入力端子112bは、例えば、PHONO(XLR)の端子であり、第2伝送ケーブル22が接続される。なお、第1入力端子112a及び第2入力端子112bは、互いに異なる種類の端子である。第1入力端子112aは、第1伝送ケーブル21に対応した端子であればよく、PHONO(RCA)の端子に限らない。同様に、第2入力端子112bは、第2伝送ケーブル22に対応した端子であればよく、PHONO(XLR)の端子に限らない。例えば、第1入力端子112a及び第2入力端子112bの一方は、AUX端子であってもよい。
【0039】
セレクタ111は、音声信号を受け付ける1つの入力端子を、第1入力端子112a及び第2入力端子112bから選択する。セレクタ111は、マイコン108の制御により、第1入力端子112a及び第2入力端子112bのいずれか一方、すなわちPHONO(RCA)の端子及びPHONO(XLR)の端子のいずれか一方の端子を選択し、選択した端子により受け付けられたアナログの音声信号をフォノイコライザ103へ出力する。
【0040】
フォノイコライザ103は、セレクタ111から受け付けたアナログの音声信号の増幅処理、及び、当該音声信号の周波数振幅特性の補正処理を行うイコライザである。具体的には、フォノイコライザ103は、入力されたアナログの音声信号を設定されたゲインで増幅する。このゲインは、レコードプレーヤ10から得られたアナログの音声信号を増幅させるためのゲインであり、マイコン108により設定される。また、フォノイコライザ103は、レコード盤15に記録された原音を再現するために、原音をレコード盤に記録するときに行われた補正とは逆の特性で補正をかける(逆補正する)。フォノイコライザ103は、増幅処理及び補正処理後の音声信号をA/D変換器104へ出力する。なお、フォノイコライザ103は、増幅処理回路の一例である。フォノイコライザ103による増幅処理は、第2増幅処理の一例である。フォノイコライザ103による増幅処理で用いられるゲインは、第2ゲインの一例である。
【0041】
A/D変換器104は、フォノイコライザ103から受け付けたアナログの音声信号をデジタルの音声信号に変換する変換器である。A/D変換器104は、変換後のデジタルの音声信号を信号処理回路101へ出力する。
【0042】
信号処理回路101は、マイコン108の制御により、A/D変換器104から受け付けたデジタルの音声信号に対して各種の音声信号処理を行う。音声信号処理は、デジタルの音声信号の音響特性の調整処理、及び、当該音声信号の増幅処理を含む。信号処理回路101は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)である。信号処理回路101は、デジタルの音声信号の音響特性を解析することが可能である。信号処理回路101は、各種の音声信号処理のための補正パラメータを、マイコン108からの制御によりメモリ102から読み出し、読み出した補正パラメータに基づいて、デジタルの音声信号に対して音声信号処理を行う。例えば、信号処理回路101は、デジタルの音声信号の音響特性の調整処理のための補正パラメータをメモリ102から読み出し、この補正パラメータに基づいて当該調整処理を行ってもよい。また、信号処理回路101は、入力されるデジタルの音声信号に対し、設定されたゲインで増幅処理を行ってもよい。このゲインは、デジタルの音声信号を増幅させるためのゲインであり、マイコン108により設定される。なお、信号処理回路101による増幅処理は、第1増幅処理の一例である。信号処理回路101による増幅処理で用いられるゲインは、第1ゲインの一例である。また、信号処理回路101の増幅処理で用いられるゲインは、フォノイコライザ103の増幅処理で用いられるゲインとは異なる。信号処理回路101は、音声信号処理後のデジタルの音声信号をD/A変換器105へ出力する。
【0043】
D/A変換器105は、信号処理回路101により音響特性が調整されたデジタルの音声信号をアナログの音声信号に変換する変換器である。D/A変換器105は、変換後のアナログの音声信号をアンプ106へ出力する。
【0044】
アンプ106は、D/A変換器105から受け付けたアナログの音声信号を増幅する増幅器である。アンプ106は、例えば、D級アンプであってもよいし、その他のクラスのアンプであってもよい。アンプ106で増幅されたアナログの音声信号は、音声信号処理装置100に接続されたスピーカケーブル31、32を介してスピーカ107へ出力される。
【0045】
メモリ102は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュROM(Read Only Memory)等で構成され、各種の情報を記憶している。具体的には、メモリ102は、マイコン108が実行するプログラムを記憶している。また、メモリ102は、音声信号に対する音声信号処理のための補正パラメータを記憶している。また、メモリ102は、測定用の音声信号の特性を示す特性情報を記憶している。また、メモリ102は、音声信号処理装置100における音声信号処理に関する設定を示す設定情報を記憶する。
【0046】
マイコン108は、信号処理回路101、メモリ102、フォノイコライザ103、表示デバイス109、入力IF110、セレクタ111及び通信IF113との間で制御信号のやり取りを行うコントローラである。マイコン108は、メモリ102に記憶されたプログラムを実行することで各種処理を行い、信号処理回路101、メモリ102、フォノイコライザ103、表示デバイス109、セレクタ111及び通信IF113の動作を制御する。マイコン108は、入力IF110により受け付けられた入力信号(操作信号)、または、通信IF113が受信したリモコン120からの入力信号(操作信号)に応じて、上記の各種処理を実行してもよい。
【0047】
マイコン108は、音声信号処理装置100における音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、メモリ102に記憶する。メモリ102に記憶される設定情報は、例えば、信号処理回路101が実行するデジタルの音声信号に対する増幅処理において設定されているゲイン、セレクタ111が選択している入力端子を示すセレクタ情報、及び、接続されるレコードプレーヤ10のカートリッジ12の種別を示すカートリッジ情報を含む。カートリッジ情報は、例えば、後述する入力IF110または通信IF113により受け付けられた入力で示される識別子であってもよい。この入力は、具体的には、ユーザが入力IF110に対して行う操作を入力IF110が受け付けた結果得られた入力であってもよいし、ユーザがリモコン120に対して行う操作によりリモコン120から送信された操作信号(入力信号)を通信IF113が受け付けた結果得られた入力であってもよい。識別子は、例えば、MM型、MC型などを示す識別子である。マイコン108は、入力IF110または通信IF113により受け付けられた入力で指定された識別子に応じてカートリッジの種別を特定し、特定されたカートリッジの種別を示す識別子をカートリッジ情報としてメモリ102に記憶する。あるいは、マイコン108は、入力IF110または通信IF113により受け付けられた入力で指定された識別子をカートリッジ情報としてメモリ102に記憶してもよい。マイコン108は、メモリ102に記憶されているカートリッジ情報の識別子で示されるカートリッジの種別に応じて、フォノイコライザ103におけるアナログの音声信号への増幅処理のゲインを設定する。つまり、マイコン108が設定するフォノイコライザ103の増幅処理のゲインは、カートリッジ情報の識別子で示されるカートリッジの種別に応じて異なる。フォノイコライザ103は、設定されたゲインを使用して増幅処理を行うことにより、カートリッジ12の種別に応じて適切に増幅処理を行うことができる。
【0048】
また、マイコン108及び信号処理回路101は、1つのLSI(Large Scale Integration)または1つのSoC(System on a Chip)のように1つの処理回路として構成されてもよい。なお、マイコン108及び信号処理回路101が1つのSoCで実現される場合、この1つのSoCは、音声信号処理装置100の他の構成要素を含んでいてもよい。
【0049】
表示デバイス109は、音声信号処理装置100の設定項目や再生しているコンテンツ等、ユーザが必要とする情報を表示する装置である。表示デバイス109は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FL管(蛍光表示管)等で構成される。なお、表示デバイス109は、提示部の一例である。
【0050】
入力IF110は、ユーザが音声信号処理装置100を操作するためのインターフェースであり、ユーザからの操作を受け付ける。入力IF110は、例えば、ユーザからの操作を受け付ける各種のスイッチであってもよい。入力IF110は、表示デバイス109と一体的に構成され、ユーザからのタッチ操作を受け付けるタッチパネルであってもよい。
【0051】
通信IF113は、外部機器と通信を行うためのインターフェースである。通信IF113は、例えば、ユーザによる操作によってリモコン120から送信される操作信号(入力信号)を受信する受信器であってもよい。また、通信IF113は、スマートフォン、タブレット端末などの携帯端末との間で通信を行う無線通信器であってもよい。また、通信IF113は、無線通信に限らずに、有線通信を行うためのインターフェースであってもよい。
【0052】
なお、入力IF110及び通信IF113は、ユーザからの入力を受け付ける受付部の一例である。
【0053】
スピーカ107は、音声信号処理装置100から出力されるアナログの音声信号に基づく音声を出力する。
【0054】
[1-2.動作]
次に、音声信号処理装置100の動作を説明する。
【0055】
[1-2-1.補正パラメータの生成と音響設定の記憶]
図3は、実施の形態における音声信号処理装置の測定処理の動作を示すフローチャートである。
【0056】
ユーザは、まずレコードプレーヤ10のターンテーブル11に、補正パラメータの算出用のテストレコード(特性解析用レコード)をセットする。テストレコードには、レコードプレーヤ10のカートリッジ12の種別、伝送ケーブル21、22の種別、信号処理回路101による増幅処理のゲインなどによる影響を受けた後の音声信号の音響特性を測定するためのテスト信号が記録されている。テストレコードは、言い換えると、測定用の音声信号に生じた音響特性の変化を測定するための測定用のレコード盤である。測定対象となる音響特性の変化は、測定用の音声信号がレコードプレーヤ10のカートリッジ12で読み取られてから、音声信号処理装置100の信号処理回路101に至るまでの間に生じた変化である。測定用の音声信号は、メモリ102に予め記憶されている特性情報で示される特性を有する。
【0057】
そして、ユーザは、レコードプレーヤ10を操作して、レコードプレーヤ10にテストレコードの再生を実行させる。
【0058】
次に、ユーザは、入力IF110またはリモコン120を操作することにより、テストレコードがレコードプレーヤ10で再生されている際の音響特性の測定を音声信号処理装置100に指示する。これにより、音声信号処理装置100は、入力IF110または通信IF113を介して、ユーザからの操作を示す操作信号を受け付ける(S11)。
【0059】
マイコン108は、受け付けた操作信号に応じて信号処理回路101を制御し、レコードプレーヤ10から入力端子112が受け付けているテストレコードの音声信号の音響特性を測定する(S12)。なお、ステップS12の実行開始タイミングは、レコードプレーヤ10がテストレコードの再生を開始するタイミングの前であってもよく、レコードプレーヤ10がテストレコードを再生している間に、音響特性の測定が実行されればよい。
【0060】
次に、マイコン108は、測定した音響特性(測定結果)と、メモリ102に記憶されている特性情報との比較結果に基づいて、レコードプレーヤ10のカートリッジ12からDSP101に至るまでの経路全体から影響を受けることで生じた音響特性の変化を解析する。つまり、マイコン108は、測定した音響特性と特性情報との差異を算出する。そして、マイコン108は、算出した差異に基づいて、入力された音声信号の特性が特性情報で示される特性に近づくように補正するための補正パラメータを、音声信号処理に用いる補正パラメータとして生成する(S13)。補正パラメータを用いた音声信号処理が信号処理回路101に入力された音声信号に対して行われることで、レコードプレーヤ10のカートリッジ12からDSP101に至るまでの経路全体から音声信号が受ける影響を小さくすることができ、レコード盤15に記録された音を忠実に再現することができる。補正パラメータを用いた音声信号処理は、音声信号処理装置100がレコード盤に記録された音を忠実に再現するためのキャリブレーション処理を含んでいるとも言える。
【0061】
マイコン108は、ステップS12における測定を実行した際の音声信号処理装置100における音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、ステップS13で生成された補正パラメータと関連付けてメモリ102に記憶する(S14)。ここで補正パラメータと関連付けられてメモリ102に記憶される設定情報は、測定時において、信号処理回路101が実行するデジタルの音声信号に対する増幅処理において設定されていたゲインと、セレクタ111が選択していた入力端子を示すセレクタ情報と、接続されるレコードプレーヤ10のカートリッジ12の種別を示すカートリッジ情報とのうちの少なくとも1つを含む。本実施の形態では、メモリ102に記憶する補正パラメータ及び設定情報の組を、音響設定と呼ぶ。音声信号処理装置100は、図4に示すように、複数の音響設定、つまり補正パラメータ及び設定情報を1組とした場合の複数の組をメモリ102に記憶してもよい。複数の音響設定がメモリ102に記憶される場合、複数の音響設定を識別するための設定識別子が付与される。設定識別子は、ユーザにより入力された音響設定の名前であってもよいし、インデックス番号であってもよい。なお、メモリ102に記憶される音響設定は1つであってもよい。
【0062】
[1-2-2.音響設定の呼び出し]
図5は、実施の形態における音声信号処理装置の音響設定適用処理の動作を示すフローチャートである。
【0063】
ユーザは、入力IF110またはリモコン120を操作することにより、メモリ102に記憶されている音声信号処理装置100の音響設定を選択して呼び出す操作を行う。これにより、音声信号処理装置100は、入力IF110または通信IF113を介して、ユーザによる音響設定の選択及び呼び出しの操作を示す操作信号を受け付ける(S21)。
【0064】
マイコン108は、受け付けた音響設定の選択及び呼び出しを示す操作信号に応じて、メモリ102に記憶されている1以上の音響設定の中から1つの音響設定を選択し、選択した音響設定に含まれる補正パラメータを音声信号処理装置100に設定し、かつ、設定情報にしたがって音声信号処理装置100の各部に設定する(S22)。つまり、マイコン108は、メモリ102に記憶された補正パラメータ、及び、当該補正パラメータと関連付けてメモリ102に記憶された設定情報を読み出し、読み出した設定情報にしたがって音声信号処理装置100の各部を設定し、かつ、読み出した補正パラメータを信号処理回路101に設定する。これにより、マイコン108は、その後にレコードプレーヤ10から音声信号処理装置100が音声信号を受け付けた場合、読み出した設定情報で示される設定で音声信号処理装置100を制御し、読み出した補正パラメータを用いた音声信号処理を信号処理回路101に実行させることになる。
【0065】
具体的には、マイコン108は、メモリ102に記憶されている1以上の音響設定の中から、操作信号で指定された1つの音響設定を読み出す。マイコン108は、読み出した音響設定に含まれる補正パラメータを、信号処理回路101に設定する。これにより、信号処理回路101は、その後にレコードプレーヤ10から音声信号処理装置100が音声信号を受け付けた場合、設定された補正パラメータを使用して、入力されるデジタルの音声信号に対して音響特性の調整処理を行うことになる。また、マイコン108は、読み出した音響設定に含まれる設定情報を、音声信号処理装置100の信号処理回路101、フォノイコライザ103及びセレクタ111に反映する。
【0066】
具体的にはマイコン108は、読み出した設定情報に含まれるゲインを信号処理回路101に設定する。これにより、信号処理回路101は、その後にレコードプレーヤ10から音声信号処理装置100が音声信号を受け付けた場合、設定情報に含まれるゲインでデジタルの音声信号の増幅処理を行うことになる。
【0067】
また、マイコン108は、読み出した設定情報に含まれるカートリッジ情報で示される種別に応じてフォノイコライザ103のアナログの音声信号への増幅処理のゲインを設定する。これにより、フォノイコライザ103は、その後にレコードプレーヤ10から音声信号処理装置100が音声信号を受け付けた場合、設定情報に含まれるカートリッジ情報で示される種別に応じたゲインでフォノイコライザ103に増幅処理を実行させることになる。
【0068】
また、マイコン108は、読み出した設定情報に含まれるセレクタ情報で示される1つの入力端子をセレクタ111に選択させる。具体的には、読み出した設定情報に含まれるセレクタ情報で示される1つの入力端子が第1入力端子112aである場合、マイコン108は、セレクタ111に第1入力端子112aを選択させる。また、読み出した設定情報に含まれるセレクタ情報で示される1つの入力端子が第2入力端子112bである場合、マイコン108は、セレクタ111に第2入力端子112bを選択させる。このため、信号処理回路101は、その後にレコードプレーヤ10から音声信号処理装置100が音声信号を受け付けた場合、セレクタ111で選択された1つの入力端子で受け付けられた音声信号に対して、設定情報と共に読み出した補正パラメータを用いた音声信号処理を行うことになる。
【0069】
これにより、ユーザは、音声信号処理装置100の測定処理ときにメモリ102に記憶された音響設定を呼び出す操作を行うことで、信号処理回路101におけるデジタルの音声信号への補正パラメータを適用すると共に、音声信号処理装置100における音声信号処理に関する設定を音声信号処理装置100に容易に再現させることができる。
【0070】
なお、メモリ102に記憶されている音響設定を音声信号処理装置100に適用する際、マイコン108は、その時点で設定されている信号処理回路101の増幅処理のゲイン、及び、カートリッジ12のカートリッジ情報と、これから適用しようとしている音響設定に含まれる、信号処理回路101の増幅処理のゲイン、及び、カートリッジ12のカートリッジ情報とを比較してもよい。そして、マイコン108は、比較の結果、これらの設定情報が異なる場合、メモリ102から読み出した設定情報を設定し、これらの設定情報が同じ場合、その時点で設定されている設定情報を変更しなくてもよい。
【0071】
なお、マイコン108は、ステップS22で設定した設定情報の全項目について、表示デバイス109に、各項目の設定を行った旨のメッセージを表示するように制御してもよい。なお、設定情報の全項目とは、信号処理回路101が実行するデジタルの音声信号を増幅する処理において設定されているゲインと、セレクタ111が選択している入力端子を示すセレクタ情報と、接続されるレコードプレーヤ10のカートリッジ12の種別を示すカートリッジ情報との3つの項目に対応する情報である。なお、マイコン108は、ステップS22で設定が変更された項目のみについて、表示デバイス109に、設定を行った旨のメッセージを表示するように制御してもよい。また、マイコン108は、読み出した設定情報に含まれるセレクタ情報が示す1つの入力端子と、現在のセレクタ111が選択している入力端子とが異なる場合、セレクタ情報が示す1つの入力端子とは異なる入力端子がセレクタ111で選択されていることを示すメッセージを表示デバイス109に表示した上で、入力端子の切り替えをセレクタ111に実行させてもよい。
【0072】
本実施の形態の音声信号処理装置100は、音響設定を複数記憶することが可能である。したがって、例えば、ユーザがレコードプレーヤ10のカートリッジ12を他の種別のカートリッジに取り替えた際、又はレコードプレーヤ10を取り替えた際、取り替えの前後でレコード再生システムの構成は異なることになる。例えば、N(Nは自然数)種類のカートリッジと、M(Mは自然数)種類のレコードプレーヤとの組み合わせは、N×M通りとなるため、N×M通りのレコード再生システムの構成が生じる。よって、N×M通りのレコード再生システムの構成のそれぞれに適切なN×M個の音響設定が必要となり、本実施の形態の音声信号処理装置100は、N×M個の音響設定をメモリ102に記憶することができる。よって、ユーザは、カートリッジ12の種別及びレコードプレーヤ10の種別に応じた音響設定を選択して呼び出すことができる。
【0073】
なお、音声信号処理装置100は、記憶した音響設定による設定をOFFにできるような機能を有していてもよい。マイコン108は、音響設定による設定がOFFに設定されると、記憶した音響設定を適用しないようにしてもよい。このとき、マイコン108は、メモリ102に記憶されている音響設定のうち補正パラメータ及び設定情報のうちいずれか一方を適用しないようにしてもよいし、両方を適用しないようにしてもよい。
【0074】
音声信号処理装置100は、メモリ102に記憶されている音響設定が音声信号処理装置100に適用されている場合であっても、設定情報の変更を受け付けてもよい。設定情報の変更が受け付けられた場合、使用中の補正パラメータは、変更後の設定情報に対して適切なものではなくなる。したがって、設定情報に含まれる各項目のうちのいずれかの設定の変更が受け付けられた場合、マイコン108は、信号処理回路101における音声信号処理の補正パラメータの適用をOFFにするように制御してもよい。このとき、マイコン108は、補正パラメータをOFFにすることをユーザに通知するメッセージを表示デバイス109に表示するように制御してもよいし、通信IF113を制御することで、当該メッセージを予め登録されているユーザの携帯端末に通知するようにしてもよい。
【0075】
なお、ユーザが入力IF110またはリモコン120を操作してセレクタ111の設定(入力端子)を切り替えた際、ユーザが選択したセレクタ111の設定(入力端子)に応じて、音響設定を切り替えるようにしてもよい。具体的には、マイコン108は、入力IF110または通信IF113から、セレクタ111の設定を示す入力を取得した場合、メモリ102に記憶された複数の音響設定のうち、入力されたセレクタ111の設定と同じ設定を含むものを検索する。つまり、マイコン108は、セレクタ111の設定(入力端子)の変更を受け付けた場合、変更された入力端子と同じ入力端子が示されるセレクタ情報を含む音響設定をメモリ102から検索する。マイコン108は、ステップS22において、該当する音響設定が1つ見つかった場合は、その音響設定を音声信号処理装置100に設定する。なお、マイコン108は、該当する音響設定が複数見つかった場合、見つかった複数の音響設定のうちのいずれの音響設定を選択するかをユーザに問い合わせ、ユーザに入力IF110又はリモコン120を用いて選択させるようにしてもよい。
【0076】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、音声信号処理装置100は、レコードプレーヤ10において再生された音声信号に対する音声信号処理を行う音声信号処理装置100であり、第1入力端子112aと、メモリ102と、信号処理回路101と、マイコン108とを備える。第1入力端子112aは、レコードプレーヤ10から音声信号を受け付ける。メモリ102は、音声信号に対する音声信号処理のための補正パラメータと、測定用の音声信号の特性を示す特性情報とを記憶している。信号処理回路101は、メモリ102に記憶されている補正パラメータに基づいて、第1入力端子112aから受け付けた音声信号に対して音声信号処理を行う。マイコン108は、測定用のレコード盤に記録されている測定用の音声信号がレコードプレーヤ10によって再生されている際に、レコードプレーヤ10から第1入力端子112aが受け付けた音声信号の音響特性を測定する。マイコン108は、測定結果とメモリ102に記憶されている特性情報との比較結果に基づいて、信号処理回路101での音声信号処理のための補正パラメータを生成する。マイコン108は、測定を実行した際の音声信号処理装置100における音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した補正パラメータと関連付けてメモリ102に記憶する。
【0077】
また、本実施の形態に係る音声信号処理装置100において、マイコン108は、メモリ102に記憶された補正パラメータ、及び、当該補正パラメータと関連付けてメモリ102に記憶された設定情報を読み出し、読み出した設定情報で示される設定で音声信号処理装置100を制御し、読み出した補正パラメータを用いた音声信号処理を信号処理回路101に実行させる。
【0078】
これによれば、本実施の形態に係る音声信号処理装置100は、測定時における音声信号処理装置100における音声信号処理に関する設定を示す設定情報を、生成した補正パラメータと関連付けてメモリ102に記憶する。このため、例えば、ユーザは、音声信号処理装置100を操作することで、メモリ102に関連付けて記憶された補正パラメータ及び設定情報を選択して設定した際に、補正パラメータの設定と連動して設定情報に基づく音声信号処理装置100の設定も自動的に行うことができる。よって、ユーザの利便性を損なうことなく、ユーザの所望の設定において測定することにより得られた補正パラメータによる音声信号処理を実行することができ、容易に所望の音質を実現することができる。
【0079】
また、本実施の形態に係る音声信号処理装置100は、さらに、第2入力端子112bと、セレクタ111とを備える。第2入力端子112bは、レコードプレーヤ10から音声信号の入力を受け付ける。セレクタ111は、音声信号を受け付ける1つの入力端子を、第1入力端子112a及び第2入力端子112bから選択する。設定情報は、測定を実行した際のセレクタ111により選択された1つの入力端子を示すセレクタ情報を含む。マイコン108は、読み出した設定情報に含まれるセレクタ情報で示される1つの入力端子をセレクタ111に選択させる。信号処理回路101は、セレクタ111で選択された1つの入力端子で受け付けられた音声信号に対して、設定情報と共に読み出した補正パラメータを用いた音声信号処理を行う。
【0080】
このため、セレクタ111で選択されている入力端子と、読み出された設定情報に含まれるセレクタ情報で示される入力端子とが異なる場合、セレクタ情報で示される入力端子をセレクタ111に選択させる。このように、読み出された設定情報で示される設定が現状の音声信号処理装置100における設定と異なる場合、設定情報で示される設定に変更するため、補正パラメータの設定と連動して設定情報に基づく音声信号処理装置100の設定も自動的に行うことができる。よって、ユーザの利便性が向上する。
【0081】
また、本実施の形態に係る音声信号処理装置100において、音声信号処理は、アナログ-デジタル変換後のデジタルの音声信号に対する第1増幅処理を含む。設定情報は、第1増幅処理において設定されている第1ゲインを含む。信号処理回路101は、読み出した設定情報に含まれる第1ゲインで第1増幅処理を実行する。
【0082】
このため、信号処理回路101の第1増幅処理に設定されている第1ゲインと、読み出された設定情報に含まれる第1ゲインとが異なる場合、第1増幅処理のゲインを読み出された設定情報に含まれる第1ゲインに更新する。このように、読み出された設定情報で示される設定が現状の音声信号処理装置100における設定と異なる場合、設定情報で示される設定に変更するため、補正パラメータの設定と連動して設定情報に基づく音声信号処理装置100の設定も自動的に行うことができる。よって、ユーザの利便性が向上する。
【0083】
また、本実施の形態に係る音声信号処理装置100は、さらに、フォノイコライザ103と、入力IF110または通信IF113とを備える。フォノイコライザ103は、第1入力端子112aまたは第2入力端子112bが受け付けたアナログの音声信号に対する第2増幅処理を実行する。入力IF110または通信IF113は、ユーザからの入力を受け付ける。設定情報は、入力IF110または通信IF113により受け付けられた入力で示される、レコードプレーヤ10が備えるカートリッジ12の種別を示すカートリッジ情報を含む。マイコン108は、読み出した設定情報に含まれるカートリッジ情報で示されるカートリッジ12の種別に応じた第2ゲインでフォノイコライザ103に第2増幅処理を実行させる。
【0084】
このため、音声信号処理装置100に設定されているカートリッジの種別と、読み出された設定情報に含まれるカートリッジ情報で示されるカートリッジの種別とが異なる場合、カートリッジ情報で示されるカートリッジの種別に音声信号処理装置100の設定を更新する。これにより、マイコン108は、更新された設定に応じてフォノイコライザ103の第2増幅処理における第2ゲインを更新する。このように、読み出された設定情報で示される設定が現状の音声信号処理装置100における設定と異なる場合、設定情報で示される設定に変更するため、補正パラメータの設定と連動して設定情報に基づく音声信号処理装置100の設定も自動的に行うことができる。よって、ユーザの利便性が向上する。
【0085】
また、本実施の形態に係る音声信号処理装置100は、さらに、メッセージを表示する表示デバイス109を備える。マイコン108は、読み出した設定情報に含まれるセレクタ情報が示す1つの入力端子と、セレクタ111が選択している入力端子とが異なる場合、1つの入力端子とは異なる入力端子がセレクタ111で選択されていることを示すメッセージを表示デバイス109に表示させる。このため、1つの入力端子とは異なる入力端子がセレクタ111で選択されていることをユーザに通知することができる。
【0086】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0087】
例えば、上記実施の形態では、信号処理回路101とマイコン108とが役割分担をするとしたが、信号処理回路101が行うとした処理の一部または全部をマイコン108が行ってもよいし、マイコン108が行うとした処理の一部または全部を信号処理回路101が行ってもよい。
【0088】
例えば、上記実施の形態では、音響特性の解析としてテストレコードを使用した例を説明したが、これに限らない。例えば、レコードプレーヤ10とは異なる携帯端末装置からテスト信号を入力させてもよい。つまり、携帯端末装置は、音声信号処理装置100の入力端子112にテスト信号を入力する。
【0089】
例えば、上記実施の形態では、補正パラメータの適用時に自動設定される設定の項目として、信号処理回路101におけるゲイン、カートリッジ12の種別、セレクタ111で選択されている入力端子を例に挙げて説明したが、音響特性に関わる設定であれば、上記以外の設定であってもよい。
【0090】
例えば、上記実施の形態では、信号処理回路101がデジタルの音声信号を設定されたゲインで増幅する例を説明したが、これに限らない。例えば、この増幅処理はフォノイコライザ103等、他の構成要素にて行われてもよい。その場合、マイコン108は、その他の構成要素に対してゲインを設定し、他の構成要素は、設定されたゲインで増幅処理を行う。
【0091】
例えば、上記実施の形態では、マイコン108が設定されるカートリッジ12の種別の情報に基づいて、フォノイコライザ103での増幅処理のゲインを補正する例を説明したが、これに限らない。マイコン108は、カートリッジ12の種別の情報に基づいて、音声信号処理装置100の他の構成要素のパラメータを補正、または、設定を行うようにしてもよい。例えばマイコン108は、カートリッジ12の種別の情報に基づいて、信号処理回路101におけるデジタルの音声信号の増幅処理のゲインや、信号処理回路101における音声信号処理におけるパラメータを補正してもよい。そのようにマイコン108が各部のパラメータを補正、または設定することにより、音声信号処理装置100は、カートリッジ12の種別に応じて音声信号に対して適切に処理を行うことができる。
【0092】
例えば、上記実施の形態では、マイコン108は、読み出した設定情報に含まれるセレクタ情報が示す1つの入力端子と、現在のセレクタ111が選択している入力端子とが異なる場合、セレクタ情報が示す1つの入力端子とは異なる入力端子がセレクタ111で選択されていることを示すメッセージを表示デバイス109に表示した上で、入力端子の切り替えをセレクタ111に実行させるとしたが、これに限らない。この場合、入力端子の切り替えをセレクタ111に実行させなくてもよい。また、このメッセージは、さらに、セレクタ情報が示す1つの入力端子にセレクタ111の設定を切り替える入力を入力IF110またはリモコン120から行うことをユーザに促すメッセージを含んでいてもよい。このため、1つの入力端子とは異なる入力端子がセレクタで選択されていることをユーザに通知することができる。また、このようにすることで、セレクタ111が自動的に入力端子112を切り替えた結果、意図しない入力端子112を選択してしまい、意図しない音声が出力されること、または、何も接続されていない入力端子112を選択することで音声が全く出力されない、といった状況を回避することができる。
【0093】
例えば、上記実施の形態では、音声信号処理装置100は、複数の補正パラメータを記憶でき、また、補正パラメータをOFFにすることができるとしたが、記憶できる補正パラメータが1つでもよい。また、音声信号処理装置100は、補正パラメータをOFFにする機能を備えていなくてもよい。
【0094】
例えば、上記実施の形態では、補正パラメータ適用中に、ユーザの操作により音声信号処理装置100における設定情報が変更された場合、表示デバイス109に補正パラメータが変更後の設定に適したものではないことを知らせるメッセージを表示し、補正パラメータの適用をOFFにするとしたが、表示デバイス109に設定を変更できないことを知らせるメッセージを表示し、補正パラメータの適用を継続してもよい。
【0095】
例えば、上記実施の形態では、ユーザに通知を行う場合に、マイコン108は、表示デバイス109にメッセージを表示するとしたが、これに限らない。マイコン108は、通信IF113を制御することで、当該メッセージを予め登録されているユーザの携帯端末に通知するようにしてもよい。つまり、表示デバイス109及び通信IF113は、メッセージを提示する提示部の一例である。
【0096】
例えば、上記実施の形態では、セレクタ111が選択可能な入力端子ごとに補正パラメータの適用状態を記憶し、セレクタ111を切り替えた際に、記憶している補正パラメータに自動的に切り替えるが、切り替えなくてもよい。
【0097】
例えば、上記実施の形態では、図1において、レコードプレーヤ10から、アンバランス信号(RCA)とバランス信号(XLR)が出力されていて、そのどちらかを、音声信号処理装置100のセレクタ111で選択する構成を示している。セレクタ111で2つのPHONO入力を選択する構成を示すものであって、1つのレコードプレーヤ10からRCAとXLRの両方が接続されていたり、2つのレコードプレーヤからそれぞれRCAとXLRが接続されていたり、さまざまなバリエーションに適用できるものであって、その接続方法を限定するものではない。
【0098】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略等を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本開示は、レコード再生システムの特性に応じた音声信号処理を実行することができる音声信号処理装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0100】
1 レコード再生システム
10 レコードプレーヤ
11 ターンテーブル
12 カートリッジ
13 トーンアーム
15 レコード盤
21 第1伝送ケーブル
22 第2伝送ケーブル
31、32 スピーカケーブル
100 音声信号処理装置
101 信号処理回路
102 メモリ
103 フォノイコライザ
104 A/D変換器
105 D/A変換器
106 アンプ
107 スピーカ
108 マイコン
109 表示デバイス
110 入力IF
111 セレクタ
112 入力端子
113 通信IF
112a 第1入力端子
112b 第2入力端子
120 リモコン
図1
図2
図3
図4
図5