(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】過負荷検出回路
(51)【国際特許分類】
H02H 9/04 20060101AFI20231027BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231027BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20231027BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
H02H9/04 A
H02J7/00 S
H02H9/04 C
H02J1/00 309H
B60R16/02 650S
(21)【出願番号】P 2019205042
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯田 峰明
(72)【発明者】
【氏名】溝江 元
【審査官】岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-131017(JP,A)
【文献】特開昭54-111645(JP,A)
【文献】特開平02-206326(JP,A)
【文献】特開2007-053876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00-17/02
H02H 9/00-9/08
H02J 1/00-1/16
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路の高電位側入力端子と低電位側入力端子との間に接続される過負荷検出回路であって、
前記高電位側入力端子にカソードが接続されたツェナーダイオードと、
前記ツェナーダイオードのアノードと前記低電位側入力端子とに接続されたキャパシタと、
前記ツェナーダイオードのアノードと前記低電位側入力端子との間に前記キャパシタとそれぞれ並列に接続された複数の抵抗と、を少なくとも備え、
前記複数の抵抗のそれぞれは、抵抗値及び定格電力の少なくとも一方が互いに
異なり、
前記高電位側入力端子と前記低電位側入力端子とに電気的に接続されたダイオードをさらに備え、
前記ダイオードのカソードが前記高電位側入力端子に、前記ダイオードのアノードが前記低電位側入力端子にそれぞれ電気的に接続され、
前記ダイオードは前記キャパシタと並列に接続されており、
前記ダイオードのカソードが前記ツェナーダイオードのアノードに、前記ダイオードのアノードが前記低電位側入力端子にそれぞれ接続されていることを特徴とする過負荷検出回路。
【請求項2】
請求項1に記載の過負荷検出回路において、
前記電気回路に過負荷が加わったときに、前記高電位側入力端子と
前記低電位側入力端子との間の電位差と前記ツェナーダイオードの降伏電圧との差が所定値以下となるように、前記複数の抵抗の合成抵抗値が設定されることを特徴とする過負荷検出回路。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の過負荷検出回路において、
前記複数の抵抗のいずれが焼損あるいは一部溶融したかを確認することで、前記電気回路に過負荷が加わったか否か、また、過負荷のレベルを検出可能に構成されたことを特徴とする過負荷検出回路。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の過負荷検出回路において、
前記電気回路及び前記過負荷検出回路はそれぞれ車両に搭載されていることを特徴とする過負荷検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は過負荷検出回路、特に車両に搭載された電気回路の過負荷検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器の入力端子に加わる過負荷、例えば、過電圧や過電流から電気回路を保護するための保護回路が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電気回路の入力端子間に、パワーツェナーダイオードとダイオードと履歴記録回路とを並列接続した過負荷保護回路が開示されている。
【0004】
入力端子間に通常とは逆の極性の電圧が印加された場合、いわゆる逆接状態において、パワーツェナーダイオードとダイオードは、入力端子間をショートし、電気回路を保護する。また、入力端子間に過電圧が印加された場合に、ツェナーダイオードの電圧クランプ効果により、降伏電圧以上の電圧が電気回路に印加されないようにして電気回路を保護している。
【0005】
履歴記録回路は、例えば、ツェナーダイオードとヒューズまたはボンディングワイヤとの直列接続体を複数準備し、これらを並列接続したものが用いられている。それぞれのツェナーダイオードの降伏電圧は、互いに異なるように設定されており、パワーツェナーダイオードの降伏電圧前後で履歴を残したい電圧に段階的に設定される。入力端子間にパワーツェナーダイオードの降伏電圧以上の過電圧が加わった場合、過電圧の大きさに応じてヒューズまたはボンディングワイヤが溶断する。故障時に電気回路を回収した場合、どのヒューズが溶断しているかを調査することにより、どのレベルの過電圧が発生していたかを容易に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示される従来の構成では、電気回路の保護回路として機能するパワーツェナーダイオード及びダイオードと履歴記録回路とが並列に接続される。このため、過電圧が加わった場合に履歴記録回路自体が保護されてしまい、過電圧のレベルを確実に検出できない場合があった。
【0008】
また、過電圧が加わった場合にそのレベルを検出することはできるが、逆接状態で印加された電圧のレベルを検知することができなかった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡便な構成で過電圧の有無及びそのレベルを検出可能な過負荷検出回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る過負荷検出回路は、電気回路の高電位側入力端子と低電位側入力端子との間に接続される過負荷検出回路であって、前記高電位側入力端子にカソードが接続されたツェナーダイオードと、前記ツェナーダイオードのアノードと前記低電位側入力端子とに接続されたキャパシタと、前記ツェナーダイオードのアノ
ードと前記低電位側入力端子との間に前記キャパシタとそれぞれ並列に接続された複数の抵抗と、を少なくとも備え、前記複数の抵抗のそれぞれは、抵抗値及び定格電力の少なくとも一方が互いに前記複数の抵抗のそれぞれは、抵抗値及び定格電力の少なくとも一方が互いに異なり、前記高電位側入力端子と前記低電位側入力端子とに電気的に接続されたダイオードをさらに備え、前記ダイオードのカソードが前記高電位側入力端子に、前記ダイオードのアノードが前記低電位側入力端子にそれぞれ電気的に接続され、前記ダイオードは前記キャパシタと並列に接続されており、前記ダイオードのカソードが前記ツェナーダイオードのアノードに、前記ダイオードのアノードが前記低電位側入力端子にそれぞれ接続されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、簡便に過負荷検出回路を構成することができる。また、電気回路に不具合が生じた場合に、複数の抵抗のいずれが焼損あるいは一部溶融したかを確認することで、電気回路に過負荷が加わったか否か、また、過負荷のレベルを確実に検出することができる。
【0012】
また、電気回路の高電位側入力端子と低電位側入力端子との間に負電圧が印加された逆接状態の検出が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の過負荷検出回路によれば、簡便な構成で過電圧の有無やそのレベルを確実に検出することができる。また、逆接状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1に係る過負荷検出回路の概略構成図である。
【
図2】ツェナーダイオードと第1~第3の抵抗に加わる電圧の時間変化の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係る過負荷検出回路の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0016】
(実施形態1)
[過負荷検出回路の構成]
図1は、本実施形態に係る過負荷検出回路の概略構成図を示し、過負荷検出回路10は、インバータ回路20の電源電圧端子(高電位側入力端子)21とGND端子(低電位側入力端子)22に接続されている。
【0017】
インバータ回路20は、車両に搭載されており、電源電圧端子21にバッテリー(図示せず)の直流電圧、この場合は+12Vが印加され、GND端子22がGND電位にそれぞれ接続されている。インバータ回路20は、バッテリーの直流電圧を受けて、これを所望の周波数及び電圧値を有する交流電圧に変換する。
【0018】
過負荷検出回路10は、ツェナーダイオードZDとキャパシタCと第1~第3の抵抗R1,R2,R3とを有しており、インバータ回路20と同様に車両に搭載されている。また、後で述べるように、過負荷検出回路10は、過電圧保護回路としての機能も有している。
【0019】
ツェナーダイオードZDは、カソードが電源電圧端子21に、アノードがGND端子22にそれぞれ接続されている。
【0020】
キャパシタCは、ツェナーダイオードZDと直列に接続されており、一端がツェナーダイオードZDのアノードに、他端がGND端子22にそれぞれ接続されている。
【0021】
第1~第3の抵抗R1,R2,R3は、ツェナーダイオードZDと直列に接続されるとともに、キャパシタCとそれぞれ並列に接続されている。つまり、第1~第3の抵抗R1,R2,R3のそれぞれの一端はツェナーダイオードZDのアノードに、それぞれの他端はGND端子22に接続されている。
【0022】
また、ツェナーダイオードZDは降伏電圧が27V、つまり、バッテリーの直流電圧の倍電圧に対し若干のマージンを加えた値となるように設定されている。キャパシタCの容量は10μFに設定されている。また、第1~第3の抵抗R1,R2,R3の抵抗値は同じ値に設定されており、本実施形態では1Ωに設定されている。一方、また、第1~第3の抵抗R1,R2,R3の定格電力は、それぞれ異なるように設定されている。第1の抵抗R1の定格電力は0.1Wに、第2の抵抗R2の定格電力は0.125Wに、第3の抵抗R3の定格電力は0.5Wにそれぞれ設定されている。ただし、これらの値に特に限定されるものではなく、インバータ回路20に印加される電圧範囲の仕様に応じて適宜変更される。例えば、バッテリー等の電源が24V系の場合、電源電圧端子21には+24Vの直流電圧が印加される。この場合、ツェナーダイオードZDの降伏電圧が53V、つまり、バッテリーの直流電圧の倍電圧に対し若干のマージンを加えた値となるように設定される。キャパシタCの容量は20μFに設定される。また、第1~第3の抵抗R1,R2,R3の抵抗値はそれぞれ1Ωに設定される。一方、第1の抵抗R1の定格電力は0.1Wに、第2の抵抗R2の定格電力は0.125Wに、第3の抵抗R3の定格電力は0.5Wにそれぞれ設定される。
【0023】
なお、第1~第3の抵抗R1,R2,R3は互いに並列に接続されるため、これらの合成抵抗値はそれぞれの抵抗値よりも低くなる。本実施形態では、当該合成抵抗値は約0.3Ωである。後で述べるように、電源電圧端子21にツェナーダイオードZDの降伏電圧以上の正の過電圧が加わると、第1~第3の抵抗R1,R2,R3にそれぞれ電流が流れ、電圧降下が起こる。つまり、GND電位を基準として、電源電圧端子21の電位が持ち上がってしまう。このため、電源電圧端子21の電位がインバータ回路20の許容最大入力電圧を超えないように、合成抵抗値を設定する必要がある。言い換えると、電源電圧端子21とGND端子22との間の電位差とツェナーダイオードZDの降伏電圧との差が所定値以下となるように、第1~第3の抵抗R1,R2,R3の合成抵抗値が設定される。
【0024】
次に、過負荷検出回路10の動作について説明する。
【0025】
例えば、電源電圧端子21にツェナーダイオードZDの降伏電圧以上の正の過電圧が加わると、ツェナーダイオードZDが導通し電流が流れる。また、ツェナーダイオードZDのアノード-カソード間の電圧は降伏電圧にクランプされる。
【0026】
印加された過電圧の時間変化が大きい場合、例えば、過渡的に過電圧が印加される場合は、ツェナーダイオードZDを流れる電流はキャパシタCを介してGND端子22に流れ込む。このため、インバータ回路20の内部に過電圧は印加されず、インバータ回路20は保護される。また、第1~第3の抵抗R1,R2,R3には実質的に電流は流れない。
【0027】
一方、印加された過電圧の時間変化が小さい場合、ツェナーダイオードZDを流れる電流は第1~第3の抵抗R1,R2,R3にそれぞれ流れる。このため、第1~第3の抵抗R1,R2,R3のそれぞれで電力量が消費される。これについて
図2を用いて説明する。
【0028】
図2は、ツェナーダイオードZDと第1~第3の抵抗R1,R2,R3に加わる電圧の時間変化の一例を示し、この例では、ツェナーダイオードZDと第1~第3の抵抗R1,R2,R3との直列接続体に加わる印加電圧Vが、時刻t1まで一定の値Vaであり、時刻t1でVcまで立ち上がった後に、連続的に低下し、時刻t2でもとの値Vaに戻る場合を考える。また、Vaをバッテリーの直流電圧(=+12V)とし、VbをツェナーダイオードZDの降伏電圧とする。
【0029】
前述したように、ツェナーダイオードZDの両端の電圧は降伏電圧Vbにクランプされており、これを越える分の電圧が第1~第3の抵抗R1,R2,R3のそれぞれに等しく加わり、電流が流れる。このとき、抵抗Riで消費される電力量Piは式(1)に示す形で表わされる。また、Piは、
図2に示す斜線部の面積に相当する。
【0030】
Pi=∫{(V-Vb)2/Ri}dt ・・・(1)
【0031】
ここで、
Pi:第i(iは1~3の整数)の抵抗での消費電力量
Ri:第iの抵抗の抵抗値
である。
【0032】
図2及び式(1)から明らかなように、第1~第3の抵抗R1,R2,R3のそれぞれにおいて、消費電力量が前述の定格電力を越え、さらにそれぞれの抵抗が備える許容値を越えると、その抵抗は焼損するか、あるいは一部溶融する。ここで、抵抗が備える許容値とは、抵抗の材料等に起因する実力値である。この実力値は、抵抗の仕様が保証された定格電力を越えた領域のため、個々の抵抗に依存する。本実施形態では、第1の抵抗R1の定格電力が最も小さいため、まず、第1の抵抗R1が焼損するか、あるいは一部溶融する。また、第2の抵抗R2及び第3の抵抗R3での消費電力量がそれぞれ前述の定格電力を越えた場合も、これらの抵抗が焼損するか、あるいは一部溶融する。なお、第1~第3の抵抗R1,R2,R3のいずれかに電流が流れている間は、ツェナーダイオードZDでの電圧クランプ効果が発揮され、インバータ回路20の内部に所定値以上、この場合は+24V以上の電圧は印加されない。つまり、過負荷検出回路10は、所定値以上の過電圧からインバータ回路20を保護する。
【0033】
なお、すべての抵抗が焼損すると、過電圧はツェナーダイオードZDとキャパシタCとの直列接続体に印加されるが、キャパシタCが絶縁破壊を起こして電流が流れない限り、過電圧はインバータ回路20の内部に直接印加される。
【0034】
インバータ回路20に所定値以上の過電圧が印加された場合、インバータ回路20が故障することがある。インバータ回路20に不具合が生じたことが判明した場合、過負荷検出回路10の状態、特に第1~第3の抵抗R1,R2,R3のいずれかが焼損あるいは一部溶融しているか否かを確認することで、インバータ回路20の入力端子である電源電圧端子21とGND端子22との間に所定値以上の過電圧が印加されたか否かを知ることができる。また、どの抵抗が焼損あるいは一部溶融しているかを確認することにより、過電圧のレベルを見積もることができる。
【0035】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係る過負荷検出回路10は、インバータ回路20(電気回路)の電源電圧端子(高電位側入力端子)21とGND端子(低電位側入力端子)22との間に接続されている。
【0036】
過負荷検出回路10は、電源電圧端子21にカソードが接続されたツェナーダイオードZDと、ツェナーダイオードZDのアノードとGND端子22とに接続されたキャパシタCと、ツェナーダイオードZDのアノードとGND端子22との間にキャパシタCとそれぞれ並列に接続された第1~第3の抵抗R1,R2,R3と、を少なくとも備えている。第1~第3の抵抗R1,R2,R3は定格電力が互いに異なる。
【0037】
過負荷検出回路10をこのように構成することで、簡便に過負荷検出回路10を構成することができる。また、インバータ回路20に不具合が生じた場合に、第1~第3の抵抗R1,R2,R3のいずれが焼損あるいは一部溶融したかを確認することで、インバータ回路20に過負荷が加わったか否か、また、過負荷のレベルを確実に検出することができる。
【0038】
また、インバータ回路20に所定値以上の過電圧、この場合は、+24V以上の電圧が印加された場合においても、第1~第3の抵抗R1,R2,R3のいずれかが導通状態にある場合は、電源電圧端子21とGND端子22との間の電位差は、ツェナーダイオードZDの降伏電圧程度にクランプされる。このことにより、インバータ回路20の内部に+24V以上の電圧が印加されるのを防止でき、インバータ回路20の破壊等を抑制できる。
【0039】
さらに、本実施形態によれば、電源電圧端子21とGND端子22との間に負電圧が印加された逆接状態の検出が可能となる。また、インバータ回路20を保護できる。これらについてさらに説明する。
【0040】
図1から明らかなように、電源電圧端子21とGND端子22との間に負電圧が印加されると、GND端子22が電源電圧端子21よりも高電位となる。このため、ツェナーダイオードZDに順方向のバイアス電圧が印加され、GND端子22から第1~第3の抵抗R1,R2,R3及びツェナーダイオードZDを通って電源電圧端子21に電流が流れ、インバータ回路20の内部に負電圧が印加されることがない。よって、インバータ回路20が保護される。
【0041】
また、GND端子22から電源電圧端子21に流れる電流値は、ツェナーダイオードZDの順方向抵抗値と第1~第3の抵抗R1,R2,R3の合成抵抗値とで決まる。この電流値が所定値以上になると、第1~第3の抵抗R1,R2,R3の中で最も定格電力が小さい第1の抵抗R1が焼損または一部溶融し始めるのは前述したとおりである。
【0042】
したがって、GND端子22と電源電圧端子21との間に負電圧が印加された場合にも、第1~第3の抵抗R1,R2,R3のいずれかが焼損あるいは一部溶融しているか否かを確認することで、印加された負電圧が所定値以上であるか否かを知ることができる。また、どの抵抗が焼損あるいは一部溶融しているかを確認することにより、印加された負電圧のレベルを見積もることができる。
【0043】
さらに、本実施形態によれば、インバータ回路20を過電圧から保護するツェナーダイオードZDと直列に第1~第3の抵抗R1,R2,R3が接続される。このことにより、ツェナーダイオードZDにより、第1~第3の抵抗R1,R2,R3自体が保護されて過電圧の有無や過電圧のレベルを検出できないという従来の課題は生じない。
【0044】
インバータ回路20に過負荷が加わったときに、電源電圧端子21とGND端子22との間の電位差とツェナーダイオードZDの降伏電圧との差が所定値以下となるように、第1~第3の抵抗R1,R2,R3の合成抵抗値が設定されるのが好ましい。
【0045】
このようにすることで、電源電圧端子21の電位がインバータ回路20の許容最大入力電圧を超えず、過電圧が加わった場合にも、インバータ回路20を保護することができる。
【0046】
また、前述したように、インバータ回路20と過負荷検出回路10とはそれぞれ車両に搭載されている。
【0047】
車両内の電気機器に電力を供給する電源として、一般に、バッテリーが用いられる。バッテリーはその性能により定められた直流電圧を出力する。
【0048】
しかし、近年の車両の電動化の進展に伴い、車両に搭載される電気機器が増加するとともに、それぞれの機器で使用される電圧や電流の範囲も拡がっている。このため、複数のバッテリーを直列接続して、より高い電圧を発生させることも多く行われている。
【0049】
しかし、このような高電圧が複数の電気機器に印加されるとともに、これらに搭載される電気回路間の接続数が増加すると、電気回路間の接続に関する設計が難しくなる。このため、各々の機器の仕様の確認不足や電気機器間の接続の設計ミス等により、許容される入力電圧よりも高い過電圧が電気回路に印加されることがある。
【0050】
本実施形態によれば、このような過電圧からインバータ回路20を保護できるとともに、インバータ回路20に何らかの不具合が生じた場合にも、インバータ回路20に過負荷が加わったか否か、また、過負荷のレベルを簡便に検出することができる。
【0051】
(実施形態2)
図3は、本実施形態に係る過負荷検出回路の概略構成図を、
図4は、別の過負荷検出回路の概略構成図をそれぞれ示す。なお、
図3,4において、実施形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
図3に示す本実施形態に係る構成は、電源電圧端子21とGND端子22とに接続されたダイオードDiを備える点で実施形態1に示す構成と異なる。ダイオードDiのカソードは電源電圧端子21に、アノードはGND端子22にそれぞれ接続されている。
【0053】
図3に示すように過負荷検出回路10を構成することで、GND端子22と電源電圧端子21との間に負電圧が印加された逆接状態において、ダイオードDiが順方向バイアスとなり、ダイオードDiにも電流が流れる。ダイオードDiの順方向抵抗値とツェナーダイオードZDと第1~第3の抵抗R1,R2,R3との合成抵抗値を適切に調整することで、第1~第3の抵抗R1,R2,R3を焼損または一部溶融させることなく、GND端子22から電源電圧端子21に電流を流すことができる。
【0054】
このことにより、実施形態1に示したのと同様に、GND端子22と電源電圧端子21との間に負電圧が印加されても、インバータ回路20の内部には負電圧が加わらず、インバータ回路20を保護できる。
【0055】
また、負電圧が印加されても、第1~第3の抵抗R1,R2,R3を焼損または一部溶融させることがないため、継続して過負荷検出回路10を動作させることができる。このことにより、GND端子22と電源電圧端子21との間に加わる正の過電圧を確実に検出することができる。
【0056】
なお、負電圧の絶対値が大きく、ダイオードDiが断線した場合、第1~第3の抵抗R1,R2,R3に流れる電流によっては、第1~第3の抵抗R1,R2,R3での消費電力量が、それぞれの定格電力を越えることがある。この場合は、第1~第3の抵抗R1,R2,R3が焼損または一部溶融することがあるが、インバータ回路20は確実に保護される。また、第1~第3の抵抗R1,R2,R3のいずれかが焼損あるいは一部溶融しているか否かを確認することで、印加された負電圧が所定値以上であるか否かを知ることができる。また、どの抵抗が焼損あるいは一部溶融しているかを確認することにより、印加された負電圧のレベルを見積もることができる。
【0057】
なお、その他、
図4に示すように、過負荷検出回路10内でのダイオードDiの配置を変更してもよい。この場合、ダイオードDiはキャパシタC及び第1~第3の抵抗R1,R2,R3と並列に接続される。また、ダイオードDiのカソードがツェナーダイオードZDのアノードに、ダイオードDiのアノードがGND端子22にそれぞれ接続される。
【0058】
このようにしても、GND端子22と電源電圧端子21との間に負電圧が印加されても、インバータ回路20の内部には負電圧が加わらず、インバータ回路20を保護できる。また、ダイオードDiの順方向抵抗値と第1~第3の抵抗R1,R2,R3の合成抵抗値とを適切に調整することで、第1~第3の抵抗R1,R2,R3を焼損または一部溶融させることなく、GND端子22から電源電圧端子21に電流を流すことができる。また、GND端子22と電源電圧端子21との間に加わる正の過電圧を確実に検出することができる。
【0059】
(その他の実施形態)
実施形態1において、第1~第3の抵抗R1,R2,R3は抵抗値が同じである一方、それぞれの定格電力が互いに異なるように設定されている。しかし、特にこれに限らず、例えば、それぞれの定格電力が同じで抵抗値が互いに異なるようにしてもよい。また、抵抗値と定格電力の両方ともそれぞれ異なっていてもよい。定格電力と過電圧が加わった場合の消費電力量の差が、それぞれの抵抗において互いに異なっていればよい。このようにすることで、インバータ回路20に過負荷が加わったか否か、また、過負荷のレベルを確実に検出することができる。
【0060】
また、過負荷検出回路10に設けられる抵抗の本数は、3本に限られず、これ以上であってもよいし、また、2本でもよい。抵抗の本数を増やすことで、回路規模は若干増加するが、過電圧のレベルをより細分化して評価することが可能となる。
【0061】
また、実施形態1,2において、過負荷検出回路10がインバータ回路20に接続される例を示したが、特にこれに限定されず、インバータ回路20以外の電気回路に過負荷検出回路10が接続されていてもよい。
【0062】
また、インバータ回路20の電源電圧端子21に印加される電圧は、+12Vや+24Vに限られず、電源を構成するバッテリー等の仕様や接続状態等によって適宜変更されうる。例えば、+48Vの電圧が電源電圧端子21に印加されてもよい。その場合、ツェナーダイオードZDの降伏電圧がこの2倍以上の電圧、約100V以上に設定されるのが好ましい。単体のツェナーダイオードZDで設定するのが難しい場合は、複数のツェナーダイオードZDを直列接続するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の過負荷検出回路は、簡便な構成で過電圧の有無やそのレベルを確実に検出することができ、車載機器に搭載される電気回路に適用する上で有用である。
【符号の説明】
【0064】
C キャパシタ
Di ダイオード
R1 第1の抵抗
R2 第2の抵抗
R3 第3の抵抗
ZD ツェナーダイオード
10 過負荷検出回路
20 インバータ回路
21 電源電圧端子(高電位側入力端子)
22 GND端子(低電位側入力端子)