(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】電池パック、及び電動工具
(51)【国際特許分類】
H01M 50/242 20210101AFI20231027BHJP
H01M 50/227 20210101ALI20231027BHJP
H01M 50/247 20210101ALI20231027BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20231027BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20231027BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20231027BHJP
H01M 10/6235 20140101ALI20231027BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20231027BHJP
H01M 10/647 20140101ALN20231027BHJP
【FI】
H01M50/242
H01M50/227
H01M50/247
H01M10/0562
B25F5/00 H
H01M10/615
H01M10/6235
H01M10/658
H01M10/647
(21)【出願番号】P 2020012991
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】無類井 格
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/150672(WO,A1)
【文献】特開2014-203660(JP,A)
【文献】特開2007-188717(JP,A)
【文献】特開2012-221780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-298
H01M 10/0562
B25F 5/00
H01M 10/615
H01M 10/6235
H01M 10/658
H01M 10/647
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を取り付けるための工具取付部、前記工具を駆動するための駆動部を有する工具本体に取り付けられる、電動工具用の電池パックであって、
全固体電池を有し、前記駆動部に電力を供給する電力を蓄積する蓄電部と、
前記蓄電部を内部に収容する電池ケースと、
前記蓄電部に作用する加速度の変化を抑制する緩衝構造体と、
を備え
、
前記緩衝構造体は、複数のばね部材を含み、
前記複数のばね部材は、
前記蓄電部と前記電池ケースとの間にそれぞれ配置され、
前記電池ケースに加速度が作用した場合に前記蓄電部に作用する加速度が前記電池ケースに作用する加速度よりも小さくなるように、前記蓄電部を支持する、
電池パック。
【請求項2】
前記複数のばね部材は、前記蓄電部を挟んで対向する位置に配置される2つのばね部材を含む、
請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記緩衝構造体は、前記電池ケースの材料よりも弾性率の低い材料から形成された弾性部材を含み、
前記弾性部材は、前記蓄電部と前記電池ケースとの間に配置され、前記電池ケースに加速度が作用した場合に前記蓄電部に作用する加速度が前記電池ケースに作用する加速度よりも小さくなるように、前記蓄電部を支持する、
請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
工具を取り付けるための工具取付部、前記工具を駆動するための駆動部を有する工具本体に取り付けられる、電動工具用の電池パックであって、
全固体電池を有し、前記駆動部に電力を供給する電力を蓄積する蓄電部と、
前記蓄電部を内部に収容する電池ケースと、
前記蓄電部に作用する加速度の変化を抑制する緩衝構造体と、
を備え、
前記緩衝構造体は、前記電池ケースの材料よりも弾性率の低い材料から形成された弾性部材を含み、
前記弾性部材は、前記蓄電部と前記電池ケースとの間に配置され、前記電池ケースに加速度が作用した場合に前記蓄電部に作用する加速度が前記電池ケースに作用する加速度よりも小さくなるように、前記蓄電部を支持し、
前記弾性部材の材料は、発泡系断熱材を含む、
電池パック。
【請求項5】
前記緩衝構造体は、互いに直交する3軸に沿った方向において、前記蓄電部に作用する前記加速度の変化を抑制する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項6】
前記緩衝構造体は、前記電池ケースの外側にある外側緩衝部材を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項7】
前記緩衝構造体は、前記蓄電部から前記電池ケースへの熱の移動を抑制する断熱部を兼ねている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の電池パックと、
前記工具本体と、
を備える、
電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に電池パック、及び電動工具に関し、より詳細には、電動工具に用いられる電池パック、及び電池パックを備えた電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、バッテリーパックを備えた電動工具を開示する。
【0003】
バッテリーパックは、電動工具本体のグリップ部に装着される。バッテリーパックの充電池には、リチウムイオン電池が用いられる。バッテリーパックでは、複数の充電池が、横向きにされると共に、前後方向に並んだ状態で配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電動工具のバッテリーパックのように、充電池がリチウムイオン電池のような液体電池である場合、バッテリーパックに衝撃が加わることによって液漏れ等の不具合が発生する可能性がある。
【0006】
本開示は、電池パックの不具合を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る電池パックは、電動工具用の電池パックである。前記電池パックは、工具本体に取り付けられる。前記工具本体は、工具を取り付けるための工具取付部及び前記工具を駆動するための駆動部を有する。前記電池パックは、蓄電部と、電池ケースと、緩衝構造体と、を備える。前記蓄電部は、全固体電池を有する。前記蓄電部は、前記駆動部に供給する電力を蓄積する。前記電池ケースは、前記蓄電部を内部に収容する。前記緩衝構造体は、前記蓄電部に作用する加速度の変化を抑制する。前記緩衝構造体は、複数のばね部材を含む。前記複数のばね部材は、前記蓄電部と前記電池ケースとの間にそれぞれ配置される。前記複数のばね部材は、前記電池ケースに加速度が作用した場合に前記蓄電部に作用する加速度が前記電池ケースに作用する加速度よりも小さくなるように、前記蓄電部を支持する。
本開示の一態様に係る電池パックは、電動工具用の電池パックである。前記電池パックは、工具本体に取り付けられる。前記工具本体は、工具を取り付けるための工具取付部及び前記工具を駆動するための駆動部を有する。前記電池パックは、蓄電部と、電池ケースと、緩衝構造体と、を備える。前記蓄電部は、全固体電池を有する。前記蓄電部は、前記駆動部に供給する電力を蓄積する。前記電池ケースは、前記蓄電部を内部に収容する。前記緩衝構造体は、前記蓄電部に作用する加速度の変化を抑制する。前記緩衝構造体は、前記電池ケースの材料よりも弾性率の低い材料から形成された弾性部材を含む。前記弾性部材は、前記蓄電部と前記電池ケースとの間に配置され、前記電池ケースに加速度が作用した場合に前記蓄電部に作用する加速度が前記電池ケースに作用する加速度よりも小さくなるように、前記蓄電部を支持する。前記弾性部材の材料は、発泡系断熱材を含む。
【0008】
本開示の一態様に係る電動工具は、前記電池パックと、前記工具本体と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電池パックの不具合を低減することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電池パックの断面図である。
【
図3】
図3は、同上の電池パックを電動工具の工具本体に取り付ける前の状態の側面図である。
【
図4】
図4は、変形例1に係る電池パックの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る電池パック30及びそれを備えた電動工具1について、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
(1)概要
本実施形態に係る電動工具1は、
図3に示すように、手持ち型の電動工具であり、例えば、電動ドライバ、電動ドリル、電動レンチ及び電動グラインダ等が挙げられる。
【0013】
電動工具1は、工具本体50と、電池パック30と、を備える。
【0014】
工具本体50は、工具40を取り付けるための工具取付部11、及び工具40を駆動するための駆動部12を有する。電池パック30は、工具本体50に取り付けられる。
【0015】
図1に示すように、電池パック30は、蓄電部36と、電池ケース31と、緩衝構造体38と、を備える。蓄電部36は、全固体電池35を有する。蓄電部36は、工具本体50の駆動部12に供給する電力を蓄積する。電池ケース31は、蓄電部36を内部に収容する。緩衝構造体38は、蓄電部36に作用する加速度の変化を抑制する。
【0016】
電池パック30は、蓄電部36に作用する加速度の変化を抑制する緩衝構造体38を備えている。そのため、例えば電池ケース31に衝撃が加えられたり電池ケース31に振動が加えられたりしても、蓄電部36に加えられる衝撃及び振動が抑制される。これにより、蓄電部36の不具合を低減することが可能となり、電池パック30の不具合を低減することが可能となる。
【0017】
(2)詳細
以下、本実施形態の電動工具1及び電池パック30について、図面を参照して更に詳細に説明する。以下の説明では、
図2におけるX軸方向を前後方向、Y軸方向を左右方向、Z軸方向を上下方向と規定する。さらに、X軸方向の正の向きを前側、Y軸方向の正の向きを左側、Z軸方向の正の向きを上側と規定する。ただし、これらの方向は一例であり、電動工具1の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印等は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0018】
(2.1)工具本体
まず、工具本体50について、説明する。
【0019】
図2に示すように、工具本体50のハウジングは、本体部10とグリップ部20とを備えている。本実施形態では、本体部10とグリップ部20とは、一体的に設けられている。
【0020】
本体部10は、例えば、電気的な絶縁性を有する合成樹脂の成形品である。本体部10は、前後方向に延びる筒状に形成されている。
【0021】
本体部10の前側の端部には、先端工具のような工具40を取り付けるための工具取付部11が設けられている。本体部10の内部には、駆動部12及び伝達部13が収容されている。本体部10において、駆動部12の周囲には、駆動部12で発生した熱を本体部10の外部に排出するための排熱部15が形成されている。排熱部15は、複数の孔により構成されている。
【0022】
工具取付部11は、前後方向に沿った回転軸を中心として回転可能な状態で、本体部10に設けられている。電動工具1を用いる複数種類の作業に合わせて複数種類の工具40が用意されており、所望の種類の工具40が工具取付部11に取り付けられて使用される。この種の工具40としては、ねじ締め作業のためのドライバービット、穴開け加工のためのドリルビット、ナットを締め付けるためのソケット等がある。
【0023】
駆動部12は、電池パック30から供給される電力で駆動される電動モータを備える。電動モータは、電力で駆動されることにより、熱を発生する。
【0024】
伝達部13は、駆動部12の駆動力を工具取付部11に伝達する。伝達部13は、駆動部12の電動モータの出力軸と連結されており、電動モータの回転を工具取付部11に伝達することによって工具取付部11を回転させる。伝達部13は、減速機構、クラッチ機構、インパクト機構等を含んでいてもよい。
【0025】
グリップ部20は、例えば、電気的な絶縁性を有する合成樹脂の成形品である。グリップ部20は、本体部10の周面の一部から下向きに延びている。グリップ部20の長手方向は上下方向に沿っており、グリップ部20の上下方向(長手方向)の中間部には、ユーザの手で握られる握り部位21が設けられている。グリップ部20において握り部位21の両側の端部201,202のうち、一方(上側)の端部201は本体部10に接続されており、他方(下側)の端部202には電池パック30を取り付けるための電池取付部22が設けられている。
【0026】
グリップ部20における握り部位21の前側には、本体部10と接続される端部201寄りの部位に、トリガ23が設けられている。トリガ23は、駆動部12の回転を制御するために、ユーザからの操作を受け付ける操作部である。トリガ23は、グリップ部20を持つユーザの手の人差し指等で、操作される。
【0027】
電池取付部22は、グリップ部20の下側の端部202に一体的に設けられている。電池取付部22は、グリップ部20の下側の端部202から上下方向と直交する方向に突出するように形成されている。電池取付部22は、前後方向及び左右方向の寸法に比べて上下方向の寸法が小さい箱形に形成されている。電池取付部22の下部には、電池パック30が着脱可能に取り付けられる。つまり、電池パック30は、工具本体50に対して取り外し可能に取り付けられる。
【0028】
電池取付部22の下面には、電池パック30の上部が挿入される凹部が設けられている。凹部内には、複数の引掛片26が設けられている。また、凹部の底面には、給電用の複数の接続端子と、信号用の第1コネクタと、が設けられている。
【0029】
複数の引掛片26は、電池パック30の後述の挿入溝37に挿入される部分である。引掛片26は直方体形に形成されており、凹部の左右両側の内側面から垂直に突出している。接続端子は、電池パック30の後述の接続端子部33と電気的に接続される部分である。接続端子は、例えば2つ(正極側の接続端子及び負極側の接続端子)備えられている。接続端子は、電池取付部22の底面の後側の部分に、前向きに突出するよう配置されており、左右方向に間隔を空けて並んでいる。第1コネクタは、電池パック30の後述の第2コネクタ34と電気的に接続される部分である。第1コネクタは、電池取付部22の底面における前後方向の中央部分に配置されている。
【0030】
また、本実施形態では、電池取付部22の内部に、駆動部12を制御するための回路等が実装された回路基板を有する制御部14(
図3参照)が収容されている。制御部14は、接続端子及び第1コネクタと電気的に接続されており、接続端子から供給される電力により動作する。制御部14は、トリガ23を引く操作によって、駆動部12のオン/オフを切替可能である。また、制御部14は、トリガ23を引き込む操作の操作量で、駆動部12の回転速度、つまり工具取付部11に取り付けられた工具40の回転速度を制御する。制御部14は、例えば、回路基板に設けられているFET(Field Effect Transistor)等のスイッチング素子をスイッチング制御することで、駆動部12の回転速度を制御する。
【0031】
(2.2)電池パック
電動工具1の電源である電池パック30について説明する。
【0032】
電池パック30は、電動工具1が動作するための電源となる。電池パック30は、全固体電池35を有する蓄電部36と、蓄電部36を収容する電池ケース31と、を備える。電池ケース31は、電気的な絶縁性を有する合成樹脂の成型品であり、箱状に形成されている。
【0033】
電池ケース31の上部には、
図2に示すように、左右方向の中央部に、左右方向の両側部に比べて一段高くなった台状の嵌合部32が設けられている。嵌合部32の後側の部分には、3本のスリット321が左右方向に間隔を開けて設けられている。各スリット321は、嵌合部32の後面と上面とにそれぞれ開口しており、前後方向に沿って延びている。各スリット321の内部には、工具本体50の接続端子と電気的に接続される接続端子部33が配置されている。各接続端子部33は、電池ケース31の内部に収容された蓄電部36と電気的に接続されている。
【0034】
また、嵌合部32の上面には、工具本体50の第1コネクタと電気的に接続される第2コネクタ34が配置されている。第2コネクタ34は、電池ケース31の内部に収容された回路基板等に電気的に接続されている。回路基板は、電池パック30の情報(例えば蓄電部36の電圧値、温度等)を示す電池情報を取得し、第1コネクタ及び第2コネクタ34を介して、電池取付部22内に配置されている制御部14に対して出力する。また、嵌合部32の左右の側面には、電池取付部22の下面の凹部内に設けられた複数の引掛片26がそれぞれ挿入される複数の挿入溝37が設けられている。
【0035】
電池取付部22に電池パック30を取り付けるには、
図3に示すように、電池パック30の上側から工具本体50を下向き(
図3の矢印A1の向き)に移動させることによって、電池取付部22の下面の凹部内に電池パック30の嵌合部32を挿入させる。その後、工具本体50を電池パック30に対して前側(
図3の矢印A2の向き)にスライド移動させると、電池取付部22の引掛片26が挿入溝37に挿入される。複数の挿入溝37のうち最も前側にある挿入溝37の後側にはロック片371が配置されている。ロック片371は、ばね等の弾性部材で上向きに押されており、電池パック30を電池取付部22に取り付ける場合には引掛片26に押されて下向きに沈むので、引掛片26は挿入溝37内に移動することができる。そして、引掛片26が挿入溝37の奥まで入り込むと、ロック片371がばねに押されて上側に移動し、挿入溝37の後側の開口付近に配置される。これにより、工具本体50を電池パック30に対して後側にスライド移動させようとすると、最前部の挿入溝37に挿入されている引掛片26がロック片371に接触することによって、工具本体50の後側へのスライド移動が規制される。したがって、電池パック30が電池取付部22に取り付けられた状態で保持される。
【0036】
電池パック30が電池取付部22に取り付けられた状態では、工具本体50の接続端子と接続端子部33とが電気的に接続され、蓄電部36から制御部14及び駆動部12等に、動作に必要な電力が供給される。また、第1コネクタと第2コネクタ34とが電気的に接続され、電池ケース31に収容された回路基板と制御部14とが電気的に接続され、回路基板から制御部14に電池情報が出力される。
【0037】
一方、電池取付部22から電池パック30を取り外すには、電池ケース31に設けられた操作部を操作することで、ロック片371を下向きに移動させ、引掛片26を挿入溝37の外側に移動可能な状態とする。この状態で、工具本体50を電池パック30に対して後側(
図3の矢印A2と逆向き)にスライド移動させ、引掛片26を挿入溝37の外側に移動させる。そして、工具本体50を電池パック30に対して上側(
図3の矢印A1と逆向き)に移動させることで、工具本体50から電池パック30を取り外すことができる。
【0038】
このように、本実施形態では、電池パック30は、グリップ部20(工具本体50)に対して取り外し可能に装着される。したがって、電池パック30の残量が低下した場合、ユーザは、グリップ部20から電池パック30を取り外し、充電済みの電池パック30をグリップ部20に付け替えることで、電動工具1を用いた作業を継続して行うことができる。
【0039】
蓄電部36は、接続端子部33と電気的に接続されている。蓄電部36は、
図1、
図2に示すように、それぞれシート状に形成された複数の全固体電池35で構成されている。1枚の全固体電池35の厚さは、1~2mm程度である。複数の全固体電池35は、必要な電圧又は容量に応じて、直列又は並列に接続されている。本実施形態では、蓄電部36が、直列に接続された5枚の全固体電池35を含んでいる。ただし、これに限らず、蓄電部36を構成する全固体電池35の数、及び接続状態(直列接続又は並列接続)は必要な電圧又は容量に応じて適宜変更が可能である。
【0040】
全固体電池35は、温度上昇に応じて(温度が高い程)放電容量が増加する特性を有している。放電容量とは、全固体電池35を、満充電された状態から出力電圧が終止電圧に達するまで放電させた場合に、全固体電池35から取り出し可能な電気量を意味する。すなわち、全固体電池35は、全固体電池35の温度が高い程、全固体電池35から取り出し可能な電気量が増加する特性を有する。一例において、全固体電池35は、少なくとも25℃から85℃の温度範囲において、好ましくは0℃から100℃の温度範囲において、より好ましくは-20℃から150℃の温度範囲において、温度上昇に応じて放電容量が増加する特性を有している。また、全固体電池35は、残容量が同じ場合には、温度上昇に応じて(温度が高い程)出力電圧が高くなる特性を有している。
【0041】
シート状にそれぞれ形成された複数の全固体電池35は、各全固体電池35の厚み方向が一致するように、積層されている。ここで、全固体電池35の積層方向と直交する方向に沿った衝撃力が蓄電部36に加わった場合、積層された複数の全固体電池35の間で剥離又は相対的な位置ずれが発生し、複数の全固体電池35の間の電気的な接続状態が不安定になる可能性がある。一方、全固体電池35の積層方向に沿った衝撃力が蓄電部36に加わった場合には、積層された複数の全固体電池35の間で剥離及び相対的な位置ずれが発生しにくく、複数の全固体電池35の間の電気的な接続状態が不安定になりにくい。本実施形態では、複数の全固体電池35の積層方向は、グリップ部20において握り部位21を間にした両側の端部201,202を結ぶ方向(Z軸方向)に沿っている。これにより、Z軸方向に沿った方向で蓄電部36に加わる衝撃に対して、蓄電部36が破損しにくい。例えば、電動工具1が載置面(例えば床面)に勢いよく置かれた場合でも、積層された複数の全固体電池35の間で剥離及び相対的な位置ずれが発生しにくい。よって、電池パック30の電気的な性能が劣化する可能性を低減することができる。
【0042】
加えて、電池パック30は、蓄電部36に作用する加速度の変化を抑制する緩衝構造体38を更に備えている。
【0043】
図1に示すように、緩衝構造体38は、電池ケース31内に収容される内側緩衝部材380を含む。内側緩衝部材380は、蓄電部36と電池ケース31との間に配置される。内側緩衝部材380は、電池ケース31に加速度が作用した場合に、蓄電部36に作用する加速度が電池ケース31に作用する加速度よりも小さくなるように、蓄電部36を支持する。
【0044】
ここでは、内側緩衝部材380は、防振シート381と、複数のばね部材382と、を含む。
【0045】
防振シート381は、電池ケース31の材料よりも弾性率の低い材料から形成された弾性部材である。防振シート381の材料は、例えば、ウレタンフォーム、ポリスチレンフォームのような発泡系断熱材である。この場合、防振シート381は、電池ケース31よりも熱伝導率が小さいため、蓄電部36から電池ケース31への熱の移動が抑制される。すなわち、防振シート381(緩衝構造体38)は、蓄電部36から電池ケース31への熱の移動を抑制する断熱部としても機能する。なお、防振シート381の材料は、発泡系断熱材に限らず、例えばゴム、エラストマーのような弾性材料であってもよい。防振シート381は、蓄電部36(複数の全固体電池35)の全体を覆うように、蓄電部36に貼り付けられる。すなわち、防振シート381は、蓄電部36の上面、下面、左面、右面、前面、及び後面にそれぞれ貼り付けられる。そのため、防振シート381(緩衝構造体38)は、互いに直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)に沿った方向において、蓄電部36に作用する加速度の変化を抑制する。また、電池パック30では、蓄電部36(全固体電池35)に接する部材(防振シート381)が、弾性を有している。蓄電部36(全固体電池35)に接する部材(防振シート381)の弾性率は、電池ケース31の弾性率よりも小さい。
【0046】
複数のばね部材382は、防振シート381で覆われた蓄電部36(複数の全固体電池35)を、弾性的に支持する。複数のばね部材382は、蓄電部36が電池ケース31と直接接触しないように、防振シート381で覆われた蓄電部36を弾性的に支持する。
【0047】
各ばね部材382は、例えばコイルスプリングである。複数のばね部材382は、蓄電部36を、前後上下左右の各方向から弾性的に支持する。すなわち、複数のばね部材382は、蓄電部36と電池ケース31の内底面との間に介在する少なくとも一つ(例えば2つ)のコイルスプリング(下ばね部材)を含む。複数のばね部材382は、蓄電部36と電池ケース31の内天面との間に介在する少なくとも一つ(例えば2つ)のコイルスプリング(上ばね部材)を含む。複数のばね部材382は、蓄電部36と電池ケース31の左側の内側面との間に介在する少なくとも一つ(例えば2つ)のコイルスプリング(左ばね部材)を含む。複数のばね部材382は、蓄電部36と電池ケース31の右側の内側面との間に介在する少なくとも一つ(例えば2つ)のコイルスプリング(右ばね部材)を含む。複数のばね部材382は、蓄電部36と電池ケース31の前側の内側面との間に介在する少なくとも一つ(例えば1つ)のコイルスプリング(前ばね部材)を含む。複数のばね部材382は、蓄電部36と電池ケース31の後側の内側面との間に介在する少なくとも一つ(例えば1つ)のコイルスプリング(後ばね部材)を含む。
【0048】
このように、複数のばね部材382(緩衝構造体38)は、互いに直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)に沿った方向において、蓄電部36に作用する加速度の変化を抑制する。
【0049】
また、複数のばね部材382は、蓄電部36を挟んで対向する位置に配置される2つのばね部材382(例えば、上ばね部材と下ばね部材、右ばね部材と左ばね部材、前ばね部材と後ばね部材)を含んでいる。これにより、2つのばね部材が対向する方向において、蓄電部36に作用する加速度の変化をより抑制することが可能となる。
【0050】
なお、ばね部材382はコイルスプリングに限られず、板ばね等であってもよい。また、ばね部材382の材料は、ばね部材382が構造的に弾性を発揮するように形成されるのであれば、金属であってもよいし非金属であってもよい。
【0051】
要するに、緩衝構造体38の種類の例は、電池ケース31の材料よりも弾性率の低い材料から形成された弾性部材(防振シート381)と、構造的に弾性を有するばね部材382と、を含み得る。
【0052】
電池パック30が緩衝構造体38を備えていることで、例えば、電動工具1が勢いよく床面に置かれることで電池ケース31に上下方向の衝撃が加えられたり、工具40による穴開け作業等の反動によって電池ケース31に振動が加えられたりしても、蓄電部36に加えられる衝撃及び振動は、電池ケース31に加えられる衝撃及び振動よりも小さくなる。これにより、衝撃及び振動による蓄電部36での不具合の発生を低減することが可能となり、電池パック30の不具合を低減することが可能となる。
【0053】
複数の全固体電池35の各々は矩形のシート状であり、
図3に示すように、複数の全固体電池35の長手方向が、工具取付部11に取り付けられる工具40の向き(本実施形態では前後方向)に沿っている。つまり、複数の全固体電池35の各々は、長辺35AがX軸方向に沿い、短辺35BがY軸方向に沿うように配置されている。これにより、複数の全固体電池35の長辺35Aが工具40の向き(前後方向)と直交する方向に沿って配置される場合に比べ、工具40を作業対象に向けた状態で、工具40の向きと直交する方向での電池パック30の幅を小さくできる。
【0054】
また、複数の全固体電池35は、互いに熱的に結合されている。例えば、複数の全固体電池35は、全固体電池35よりも熱伝導率の大きな部材(以下、「伝熱部材」ともいう)を介して、互いに熱的に結合されている。伝熱部材は、例えば、熱伝導率の大きな樹脂性である。そのため、一の全固体電池35で発生した熱は、伝熱部材を介して他の全固体電池35に伝達され、この全固体電池35の温度も上昇させる。好ましくは、複数の全固体電池35は、複数の全固体電池35の温度が略等しくなるように、伝熱部材を介して互いに熱的に結合されている。
【0055】
なお、電池パック30は、電動工具1の駆動に必要とする電圧及び容量に応じて、蓄電部36を構成する全固体電池35の数、面積及び接続状態を適宜変更可能である。蓄電部36の電圧値は、個々の全固体電池35の電圧値、及び、直列に接続される全固体電池35の数等に依存する。蓄電部36の容量は、個々の全固体電池35の面積、及び、並列に接続される全固体電池35の数等に依存する。例えば、全固体電池35の数が異なる複数の電池パック30が用意されており、ユーザが、必要に応じて適切な電池パック30を選択して使用できてもよい。
【0056】
また、本実施形態の電池パック30は、蓄電部36として、熱による温度上昇によって放電容量が増加する特性を有する全固体電池35を備えている。そして、緩衝構造体38は、蓄電部36から電池ケース31への熱の移動を抑制する断熱部を兼ねている。そのため、本実施形態の電池パック30によれば、蓄電部36で発生した熱により蓄電部36の温度を上昇させることで、電池パック30の放電容量を増加させることが可能となる。そのため、電池パック30の一回の充電に対して、電池パック30から取り出し可能な電気量を増加させることが可能となる。
【0057】
また、本実施形態の電動工具1では、電池パック30は、蓄電部36として全固体電池35を備えている。電解質が液体である従来の電池の場合には、温度が過度に上昇すると、膨張して破損する可能性がある。これに対し、全固体電池35であれば、温度上昇に対する膨張の割合が、従来の電池に比べて小さい。そのため、蓄電部36として全固体電池35を用いることで、蓄電部36で発生した熱により蓄電部36の温度を上昇させても、電池パック30の破損等が発生する可能性を低減することが可能となる。
【0058】
(3)変形例
本開示の実施形態は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施形態の変形例を列挙する。
【0059】
(3-1)変形例1
以下、変形例1に係る電池パック30及び電動工具1について、
図4を参照して説明する。本変形例の電池パック30及び電動工具1において、実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
本変形例の電池パック30は、緩衝構造体38として、内側緩衝部材380に加えて、電池ケース31の外側にある外側緩衝部材385を含む。外側緩衝部材385は、ここでは防振シート386を含む。防振シート386は、電池ケース31の材料よりも弾性率の低い材料から形成された弾性部材である。防振シート386の材料は、例えば、ウレタンフォーム、ポリスチレンフォームのような発泡系断熱材、ゴム、エラストマーのような弾性材料等である。防振シート386は、電池ケース31の側面(前面、後面、左面、右面)及び下面のうちの少なくとも一部を覆う。
【0061】
本変形例の電池パック30でも、衝撃及び振動による蓄電部36での不具合の発生を低減することが可能となり、電池パック30の不具合を低減することが可能となる。
【0062】
(3-2)その他の変形例
一変形例において、内側緩衝部材380は、防振シート381とばね部材382とのうちの一方のみを備えていてもよい。例えば、ばね部材382が、蓄電部36に直接接して蓄電部36を弾性的に支持してもよい。或いは、防振シート381が電池ケース31内に支持されて電池ケース31内に収容されてもよい。
【0063】
一変形例において、内側緩衝部材380を構成する弾性部材は、防振シート381のようなシート状の形状に限られない。内側緩衝部材380の形状は、蓄電部36を内部に収容するケース状であってもよいし、蓄電部36の一部のみに接触する凸形状(リブ形状)であってもよい。
【0064】
一変形例において、緩衝構造体38が、互いに直交する3軸に沿った方向において蓄電部36に作用する加速度の変化を抑制することは必須ではない。ただし、緩衝構造体38は、全固体電池35の積層方向(Z軸方向)に沿った方向において、蓄電部36に作用する加速度の変化を抑制することが好ましい。
【0065】
一変形例において、複数のばね部材382は、上ばね部材、下ばね部材、前ばね部材、後ばね部材、右ばね部材、左ばね部材の全てを備えている必要はなく、例えば、上ばね部材と下ばね部材とのみを備えていてもよい。この場合であっても、互いに直交する3軸に沿った方向において、蓄電部36に作用する加速度の変化を抑制することが可能である。
【0066】
(4)態様
以上説明した実施形態及び変形例等から以下の態様が開示されている。
【0067】
第1の態様の電池パック(30)は、電動工具(1)用の電池パック(30)である。電池パック(30)は、工具本体(50)に取り付けられる。工具本体(50)は、工具(40)を取り付けるための工具取付部(11)及び工具(40)を駆動するための駆動部(12)を有する。電池パック(30)は、蓄電部(36)と、電池ケース(31)と、緩衝構造体(38)と、を備える。蓄電部(36)は、全固体電池(35)を有する。蓄電部(36)は、駆動部(12)に供給する電力を蓄積する。電池ケース(31)は、蓄電部(36)を内部に収容する。緩衝構造体(38)は、蓄電部(36)に作用する加速度の変化を抑制する。
【0068】
この態様によれば、電池ケース(31)に衝撃が加えられたり電池ケース(31)に振動が加えられたりしても、蓄電部(36)に加えられる衝撃及び振動が抑制される。そのため、蓄電部(36)の不具合を低減することが可能となり、電池パック(30)の不具合を低減することが可能となる。
【0069】
第2の態様の電池パック(30)では、第1の態様において、緩衝構造体(38)は、電池ケース(31)の材料よりも弾性率の低い材料から形成された弾性部材を含む。弾性部材は、蓄電部(36)と電池ケース(31)との間に配置される。弾性部材は、電池ケース(31)に加速度が作用した場合に、蓄電部(36)に作用する加速度が電池ケース(31)に作用する加速度よりも小さくなるように、蓄電部(36)を支持する。
【0070】
この態様によれば、蓄電部(36)に作用する加速度の変化を抑制することが可能となり、電池パック(30)の不具合を低減することが可能となる。
【0071】
第3の態様の電池パック(30)では、第1の態様において、緩衝構造体(38)は、複数のばね部材(382)を含む。複数のばね部材(382)は、蓄電部(36)と電池ケース(31)との間にそれぞれ配置される。複数のばね部材(382)は、電池ケース(31)に加速度が作用した場合に、蓄電部(36)に作用する加速度が電池ケース(31)に作用する加速度よりも小さくなるように、蓄電部(36)を支持する。
【0072】
この態様によれば、蓄電部(36)に作用する加速度の変化を抑制することが可能となり、電池パック(30)の不具合を低減することが可能となる。
【0073】
第4の態様の電池パック(30)では、第3の態様において、複数のばね部材(382)は、蓄電部(36)を挟んで対向する位置に配置される2つのばね部材を含む。
【0074】
この態様によれば、2つのばね部材が対向する方向において、蓄電部(36)に作用する加速度の変化をより抑制することが可能となる。
【0075】
第5の態様の電池パック(30)では、第1~第4のいずれか1つの態様において、緩衝構造体(38)は、互いに直交する3軸に沿った方向において、蓄電部(36)に作用する加速度の変化を抑制する。
【0076】
この態様によれば、3軸に沿った方向において、蓄電部(36)に作用する加速度の変化を抑制することが可能となり、電池パック(30)の不具合を低減することが可能となる。
【0077】
第6の態様の電池パック(30)では、第1~第5のいずれか1つの態様において、緩衝構造体(38)は、電池ケース(31)の外側にある外側緩衝部材(385)を含む。
【0078】
この態様によれば、蓄電部(36)に作用する加速度の変化を抑制することが可能となり、電池パック(30)の不具合を低減することが可能となる。
【0079】
第7の態様の電池パック(30)では、第1~第6のいずれか1つの態様において、緩衝構造体(38)は、蓄電部(36)から電池ケース(31)への熱の移動を抑制する断熱部を兼ねている。
【0080】
この態様によれば、蓄電部(36)で発生した熱を用いて蓄電部(36)の温度を上昇させることが可能となり、電池パック(30)から取り出し可能な電気量を、増加させることが可能となる。
【0081】
第8の態様の電動工具(1)は、第1~第7のいずれか1つの態様の電池パック(30)と、工具本体(50)と、を備える。
【0082】
この態様によれば、蓄電部(36)の不具合を低減することが可能となり、電池パック(30)の不具合を低減することが可能となる。
【0083】
第2~第7の態様は、電池パック(30)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 電動工具
11 工具取付部
12 駆動部
30 電池パック
31 電池ケース
35 全固体電池
36 蓄電部
38 緩衝構造体
382 ばね部材
385 外側緩衝部材
40 工具
50 工具本体