(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/10 20060101AFI20231027BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20231027BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20231027BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
C08L101/10
C08K5/29
C08L33/04
C08L71/02
(21)【出願番号】P 2020115184
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2019145799
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亨
(72)【発明者】
【氏名】北村 賢次
(72)【発明者】
【氏名】紺田 哲史
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-092239(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111577(WO,A1)
【文献】特許第5636141(JP,B1)
【文献】特開2017-133342(JP,A)
【文献】特開2012-001657(JP,A)
【文献】特許第6376301(JP,B1)
【文献】特開2004-156023(JP,A)
【文献】特開2020-029473(JP,A)
【文献】特開2011-021107(JP,A)
【文献】特開2005-272774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 59/00-59/72
C09J 1/00-201/10
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性シリル基を有する重合体(A)と、
エポキシ化合物(B)と、
ケチミン化合物(C)とを含み、
前記エポキシ化合物(B)は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びエポキシシランからなる群から選択される少なくとも一種の化合物であり、
前記ケチミン化合物(C)は、加水分解性シリル基を有するケチミン化合物(C1)を含有し、
前記重合体(A)100質量部に対する前記エポキシ化合物(B)の割合は、2質量部以上4質量部以下であり、
前記エポキシ化合物(B)の有するエポキシ基に対する、前記ケチミン化合物(C)の有するケチミン構造のモル比が、0.45以上0.6以下である、
硬化性組成物。
【請求項2】
前記重合体(A)は、ポリオキシアルキレン骨格とポリ(メタ)アクリレート骨格とのうち少なくとも一方を有する成分を含有する、
請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
可塑剤(D)を更に含有する、
請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記可塑剤(D)は、架橋性シリル基を有さず、重量平均分子量が1000以上5000以下であるポリプロピレングリコール及び(メタ)アクリル重合体のうち少なくとも一方を含有する、
請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
シーリング材として用いられる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
接着剤として用いられる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関し、詳しくはシーリング材、接着剤などとして使用可能な硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、接着剤として使用可能な組成物として、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド、エポキシ樹脂、エポキシシランカップリング剤、ケチミン化合物、及び脂肪酸処理酸化カルシウムを含有し、エポキシ樹脂のエポキシ基の総モル数とケチミン化合物の加水分解物であるアミン化合物が有しているアミノ基の総モル数との比(エポキシ樹脂のエポキシ基の総モル数/ケチミン化合物の加水分解物であるアミン化合物が有しているアミノ基の総モル数)が0.7~1.2である接着剤組成物が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者が研究開発を進めた結果得られた知見によると、特許文献1に開示されている組成物を接着剤などとして利用した場合、組成物の硬化物が経時的に硬く脆くなり、機械的な負荷や熱による膨張、収縮などによってひび割れなどの破損が生じやすくなることがある。
【0005】
本発明の課題は、硬化させて得られる硬化物に、経時的な硬さの増大が生じにくい硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る硬化性組成物は、架橋性シリル基を有する重合体(A)と、エポキシ化合物(B)と、ケチミン化合物(C)とを含有し、前記エポキシ化合物(B)の有するエポキシ基に対する、前記ケチミン化合物(C)の有するケチミン構造のモル比が、0.4以上0.8以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、硬化させて得られる硬化物に、経時的な硬さの増大が生じにくい硬化性組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0009】
本実施形態では、硬化性組成物(以下、組成物(X)ともいう)は、架橋性シリル基を有する重合体(A)と、エポキシ化合物(B)と、ケチミン化合物(C)とを含有する。エポキシ化合物(B)の有するエポキシ基に対する、ケチミン化合物(C)の有するケチミン構造のモル比は、0.4以上0.8以下である。なお、ケチミン構造とは、ケトンに由来するアミノ基であり、例えば-N=C(R)R’という構造を有する。R及びR’の各々は水素ではない有機基であって、例えばアルキル基である。ケチミン構造は加水分解によって、一級アミノ基(-NH2)とケトン(R-CO-R’)とを生成する。
【0010】
本実施形態によると、組成物(X)を硬化させて得られる硬化物は良好な柔軟性を有しやすい。このため組成物(X)をシーリング材、接着剤などとして使用できる。また、硬化物には経時的な硬さの増大が生じにくい。その理由は、次のとおりであると推察される。
【0011】
組成物(X)が硬化する際には、重合体(A)が架橋性シリル基を介して重合することで高分子化する。また、ケチミン化合物(C)は、まず空気中の水分などと反応することで加水分解し、一級アミンとケトンとを生成する。一級アミンはエポキシ化合物(B)と反応して高分子化する。一級アミンにおける一つの一級アミノ基とエポキシ化合物(B)における一つのエポキシ基とが反応すると、二級アミノ基が生成する。この二級アミノ基が更にエポキシ化合物(B)における別のエポキシ基と反応すると三級アミノ基が生成する。これにより、エポキシ化合物(B)の二つの分子が三級アミノ基を介して結合する架橋構造が生じ、高分子マトリックスが形成される。これにより、硬化物が作製される。本実施形態では、エポキシ基に対するケチミン構造のモル比が0.4以上であることで、ケチミン化合物(C)を利用したエポキシ化合物(B)の架橋を十分に進行させることができ、このためシーリング材、接着剤などとして好適な硬化物を得ることができる。また、エポキシ基に対するケチミン構造のモル比が0.8以下であることで、ケチミン化合物(C)がエポキシ化合物(B)との反応で消費されやすい。そのため、硬化物中に未反応のケチミン化合物(C)が残存しにくい。未反応のケチミン化合物(C)は経時的にエポキシ残基に作用して架橋点を増やすことで、硬化物の弾性率を増大させることがあるが、ケチミン化合物(C)が残存しにくいと、このような弾性率の増大は生じにくい。また、未反応のケチミン化合物(C)は例えば温水などで加熱されると加水分解によって一級アミンを生成し、更に一級アミンの分子同士が反応したり、一級アミンが二酸化炭素と反応したりして、硬くて脆い生成物を生じやすい。しかし、ケチミン化合物(C)が残存しにくいと、このような生成物は生じにくい。また、モル比が0.8以下であると、二級アミノ基とエポキシ基との反応が進行しやすく、そのため硬化物中に二級アミノ基が残存しにくい。硬化物中の二級アミノ基も例えば温水などで加熱されると二酸化炭素と反応して硬くて脆い生成物を生じやすいが、二級アミノ基が残存しにくいとこのような生成物は生じにくい。このため、硬化物の経時的な弾性率の増大が生じにくいと考えられる。
【0012】
組成物(X)の成分について更に詳しく説明する。
【0013】
上述のとおり、重合体(A)は、架橋性シリル基を有する。架橋性シリル基とは、ケイ素原子と、ケイ素原子に結合している加水分解性基とを有する基である。一つの架橋性シリル基において、一つのケイ素原子に、例えば1~3個の加水分解性基が結合されている。加水分解性基は、例えば水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基及びアルケニルオキシ基等からなる群から選択される少なくとも一種の基を含む。加水分解性基はアルコキシ基を含むことが好ましい。すなわち、架橋性シリル基はアルコキシシリル基を含むことが好ましい。
【0014】
アルコキシシリル基は、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、及びジエトキシメチルシリル基などのジメトキシシリル基;並びに、メトキシジメトキシシリル基、及びエトキシジメチルシリル基などのモノアルコキシシリル基からなる群から選択される少なくとも一種の基を含む。アルコキシシリル基がジメトキシシリル基とトリメトキシシリル基とのうち少なくとも一方を含むことが特に好ましい。
【0015】
重合体(A)の一分子当たりの架橋性シリル基の平均個数は1個以上3個以下であることが好ましい。
【0016】
重合体(A)は、架橋性シリル基を有するのであれば、種々の骨格を有してよい。例えば重合体(A)は、ポリオキシアルキレン骨格、ビニル変性ポリオキシアルキレン骨格、ポリ(メタ)アクリレート骨格、ビニル系重合体を含む骨格、及びポリエステル骨格等からなる群から選択される少なくとも一種の骨格を有してもよい。重合体(A)の骨格はオルガノシロキサンを含んでもよい。
【0017】
重合体(A)は、ポリオキシアルキレン骨格とポリ(メタ)アクリレート骨格とのうち少なくとも一方を有することが好ましい。この場合、組成物(X)はシーリング材、接着剤等として好適な物性を有しやすい。特に重合体(A)がポリ(メタ)アクリレート骨格を有する場合には、組成物(X)及びその硬化物は良好な耐候性及び耐UV性を有しやすい。
【0018】
重合体(A)は、例えばポリオキシアルキレン骨格を有する重合体(A1)と、ポリ(メタ)アクリレート骨格を有する重合体(A2)とのうち、少なくとも一方を含有する。
【0019】
重合体(A1)は、例えばポリオキシアルキレン骨格と、ポリオキシアルキレン骨格に結合している架橋性シリル基とを有する。重合体(A1)は、一分子あたり少なくとも一個の架橋性シリル基を有する。架橋性シリル基は、ポリオキシアルキレン骨格の途中に側鎖として結合してもよく、ポリオキシアルキレン骨格の末端に結合していてもよい。架橋性シリル基は、ポリオキシアルキレン骨格の末端にウレタン結合を介して結合していてもよい。
【0020】
ポリオキシアルキレン骨格は、例えば-(R-O)n-という式で表される。Rはアルキレン基であり、アルキレン基の炭素数は例えば1以上14以下である。nは二以上の自然数である。一つのポリアルキレン骨格中の複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
ポリオキシアルキレン骨格は、例えばエチレンオキサイド単位、プロピレンオキサイド単位、ブチレンオキサイド単位、及びテトラメチレンオキサイド単位等からなる群から選択される少なくとも一種の構成単位を有する。
【0022】
ポリオキシアルキレン骨格は、エチレングリコールを出発原料として用いた2官能のものと、2-ヒドロキシメチルプロパン1,3-ジオールを出発原料とした3官能のものの少なくとも一方を含むものであることが好ましい。
【0023】
重合体(A1)の重量平均分子量は、8000以上25000以下であることが好ましい。重量平均分子量が8000以上であることで組成物(X)の硬化物は良好な柔軟性を有しやすい。また、重量平均分子量が25000以下であることで、組成物(X)の粘度が大きくなりにくく、そのため組成物(X)の塗布性が良好になりやすい。重量平均分子量は15000以上20000以下であればより好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による測定結果からスチレン換算で得られる値である。
【0024】
一方、重合体(A2)は、ポリ(メタ)アクリレート骨格と、ポリ(メタ)アクリレート骨格に結合している架橋性シリル基とを有する。重合体(A2)は、一分子あたり少なくとも一個の架橋性シリル基を有する。架橋性シリル基は、ポリ(メタ)アクリレート骨格の途中に側鎖として結合してもよく、ポリ(メタ)アクリレート骨格の末端に結合していてもよい。ポリ(メタ)アクリレート骨格の一方の末端に一個の架橋性シリル基が結合し、かつ側鎖に1個以上の架橋性シリル基が結合していることが好ましい。ポリ(メタ)アクリレート骨格の両末端のみに架橋性シリル基が結合している場合は後架橋の影響を受けて硬化物が硬くなりやすく、ポリ(メタ)アクリレート骨格の側鎖のみに架橋性シリル基が結合している場合はアクリル側鎖の加水分解により硬化物の強度低下を引き起こす可能性がある。
【0025】
ポリ(メタ)アクリレート骨格は、(メタ)アクリル化合物を含む不飽和単量体が重合した構造を有する。(メタ)アクリル化合物は、アクリル化合物とメタクリル化合物とのうち少なくとも一方からなる。(メタ)アクリル化合物は、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル及び(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル及び(メタ)アクリル酸トリシクロデシニル等のアクリル酸脂環式アルキル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル及び(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルのε-カプロラクトン付加反応物等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸クロロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、及び(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等のヘテロ原子含有アクリル酸エステル類等からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することができる。なお、(メタ)アクリル化合物が含みうる成分は前記のみには制限されない。
【0026】
ポリ(メタ)アクリレート骨格を構成する不飽和単量体は、(メタ)アクリル化合物のみを含有してもよく、(メタ)アクリル化合物とそれ以外の単量体とを含有してもよい。(メタ)アクリル化合物以外の単量体は、例えばスチレン、インデン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニルなどのビニルエステル基を持つ化合物、無水マレイン酸、N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルフォリン、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4-ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン-1,4-ジオール-ジビニルエーテル、ヘキサン-1,6-ジオール-ジビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール-ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、グル
タル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4-ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、3-アミノプロピルビニルエーテル、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、及びポリエステルビニルエーテルなどのビニロキシ基を持つ化合物などからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。
【0027】
重合体(A2)の重量平均分子量は、10000以上70000以下であることが好ましい。重量平均分子量が10000以上であることで組成物(X)の硬化物は良好な柔軟性を有しやすい。また、重量平均分子量が70000以下であることで、組成物(X)の粘度が大きくなりにくく、そのため組成物(X)の塗布性が良好になりやすい。重量平均分子量は20000以上60000以下であればより好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による測定結果からスチレン換算で得られる値である。
【0028】
エポキシ化合物(B)は、一分子中に少なくとも一つのエポキシ基を有する。エポキシ化合物(B)によって、硬化物が良好な接着性を有しやすい。エポキシ化合物(B)は、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、メタキシレンジやヒダントインなどをエポキシ化した含窒素エポキシ樹脂、ポリブタジエン又はNBR(アクリロニトリル-ブタジエン共重合体)を含有するゴム変性エポキシ樹脂、及びエポキシシランからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。エポキシシランは、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、及び2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。なお、エポキシ化合物(B)に含まれる成分は前記のみには制限されない。
【0029】
重合体(A)100質量部に対するエポキシ化合物(B)の割合は、例えば0.1質量部以上10質量部以下であり、1質量部以上5質量部以下であれば好ましく、2質量部以上4質量部以下であれば更に好ましい。
【0030】
ケチミン化合物(C)は、上記のとおり、ケチミン構造を有する化合物である。ケチミン化合物は、例えば一級アミノ基を有するアミン化合物とケトン化合物との脱水縮合反応により合成される。
【0031】
ケチミン化合物(C)はそのままではエポキシ化合物(B)と反応しにくいが、上述のとおり、ケチミン化合物(C)は加水分解して一級アミンを生成し、この一級アミンがエポキシ化合物(B)と反応することで、組成物(X)が硬化する。このため、組成物(X)の保管時には組成物(X)の硬化反応は進行しにくく、そのため、組成物(X)の一液化が可能である。
【0032】
ケチミン化合物(C)は、加水分解性シリル基を有するケチミン化合物(C1)と、加水分解性シリル基を有さないケチミン化合物(C2)とのうち、少なくとも一方を含有できる。ケチミン化合物(C)が特に加水分解性シリル基を有するケチミン化合物(C1)を含有すると、重合体(A)の架橋性シリル基とケチミン化合物(C1)の架橋性シリル基とが反応して架橋構造を形成できる。そのため、組成物(X)の硬化性が高くなる。ただし、重合体(A)とケチミン化合物(C)との間に架橋構造が形成されなくても組成物
(X)が十分な硬化性を有すれば、ケチミン化合物(C)は、加水分解性シリル基を有するケチミン化合物(C1)を必ずしも有しなくてもよい。
【0033】
ケチミン化合物(C1)は、例えば少なくとも一つの架橋性シリル基及び少なくとも一つの一級アミノ基を有するアミン化合物(c1)と、ケトン化合物(c2)との、脱水縮合反応により合成される。アミン化合物(c1)は、例えばX-R”NH2という構造を
有する。Xは架橋性シリル基である。R”は2価の炭化水素基である。R”の炭素数は例えば1~10である。ケトン化合物(c2)は、例えば例えばシクロペンタノン、トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、及びトリメチルシクロヘキサノン等の環状ケトン類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-tert-ブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジブチルケトン、及びジイソブチルケトン等の脂肪族ケトン;並びにアセトフェノン、ベンゾフェノン、及びプロピオフェノン等の芳香族ケトン等からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0034】
ケチミン化合物(C2)は、例えば2,5,8-トリアザ-1,8-ノナジエン、2,10-ジメチル-3,6,9-トリアザ-2,9-ウンデカジエン、2,10-ジフェニル-3,6,9-トリアザ-2,9-ウンデカジエン、3,11-ジメチル-4,7,10-トリアザ-3,10-トリデカジエン、3,11-ジエチル-4,7,10-トリアザ-3,10-トリデカジエン、2,4,12,14-テトラメチル-5,8,11-トリアザ-4,11-ペンタデカジエン、2,4,20,22-テトラメチル-5,12,19-トリアザ-4,19-トリエイコサジエン、2,4,15,17-テトラメチル-5,8,11,14-テトラアザ-4,14-オクタデカジエン等からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。なお、ケチミン化合物(C2)に含まれる成分は前記のみには制限されない。
【0035】
上述のとおり、エポキシ化合物(B)のエポキシ基に対するケチミン化合物(C)のケチミン構造のモル比は、0.4以上0.8以下である。なお、エポキシ化合物(B)のエポキシ基に対するケチミン化合物(C)のケチミン構造のモル比とは、エポキシ化合物(B)のエポキシ基に対する、ケチミン化合物(C)がすべて加水分解した場合に生じる第一アミンが有する一級アミノ基のモル比であるともいえる。このモル比は0.45以上0.75以下であればより好ましく、0.45以上0.6以下であれば更に好ましい。なお、エポキシ樹脂(B)が異なる複数種のエポキシ樹脂を含む場合、上述した、エポキシ化合物(B)のエポキシ基とは、当該複数種のエポキシ樹脂のエポキシ基の総数である。また、ケチミン化合物(C)が、異なる複数種のケチミン化合物を含む場合、上述したケチミン化合物(C)のケチミン構造とは、当該複数種のケチミン化合物のケチミン構造の総数である。これらのことから、異なる複数種のエポキシ樹脂及びケチミン化合物を含む場合であっても、エポキシ化合物(B)のエポキシ基に対するケチミン化合物(C)のケチミン構造のモル比を算出することが可能である。
【0036】
組成物(X)は、更に架橋性シリル基の反応を促進させる触媒を含有してもよい。触媒は、例えば、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレートビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル酸オキサイド、アルコキシシリル基を有する錫化合物、スタナスオクトエート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、及びナフテン酸錫等の有機錫化合物;ジブチル錫オキサイド
とフタル酸エステルとの反応物;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラ-n-ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;オクチル酸鉛;並びにジブチルアミン-2-エチルヘキソエート等からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。触媒の割合は、例えば重合体(A)100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下である。
【0037】
組成物(X)は可塑剤(D)を更に含有してもよい。可塑剤(D)によって、組成物(X)の粘度が下がりやすく、そのため、組成物(X)の塗布性が良好になりやすい。さらに、可塑剤(D)は組成物(X)の硬化物の柔軟性を高めやすい。
【0038】
可塑剤(D)は、例えばリン酸エステル、フタル酸エステル、脂肪酸一塩基酸エステル、脂肪酸二塩基酸エステル、ポリアルキレングリコール、脂肪族エステル、エポキシ可塑剤、ポリエステル系可塑剤、ポリエーテル、ポリスチレン、及び(メタ)アクリル重合体からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0039】
フタル酸エステルは、例えばフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソウンデシル、及びフタル酸ビスブチルベンジル等からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0040】
ポリアルキレングリコールは、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、及びテトラプロピレングリコール等からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0041】
(メタ)アクリル重合体は、アクリル化合物及びメタクリル化合物のうち少なくとも一種を含む不飽和単量体の重合体である。(メタ)アクリル重合体は、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、及び(メタ)アクリルアミド等からなる群から選択された少なくとも一種を含む不飽和単量体の重合体である。不飽和単量体は、アクリル化合物及びメタクリル化合物のうち少なくとも一種のみを含んでもよく、これら以外のビニル系単量体等を含有してもよい。
【0042】
可塑剤(D)は、架橋性シリル基を有してもよく、有していなくてもよい。
【0043】
可塑剤(D)は、特に架橋性シリル基を有さず、重量平均分子量が1000以上5000以下であるポリプロピレングリコール及び(メタ)アクリル重合体のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)の低粘度化及び硬化物の柔軟性向上が、より実現しやすい。さらに、可塑剤(D)は水に溶出しにくくなり、そのため硬化物が水に曝されても硬化物が脆くなりにくい。重量平均分子量が1000以上であることで可塑剤(D)が水に特に溶出しにくくなる。また、重量平均分子量が5000以下であることで、組成物(X)の低粘度化及び硬化物の柔軟性向上が、更に実現しやすい。この重量平均分子量は1500以上4000以下であることがより好ましく、2000以上3000以下であれば更に好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による測定結果からスチレン換算で得られる値である。
【0044】
重合体(A)100質量部に対する可塑剤(D)の割合は、例えば10質量部以上10
0質量部以下である。この割合が10質量部以上であることで組成物(X)の低粘度化及び硬化物の柔軟性向上が、特に実現しやすい。また、この割合が100質量部以下であることで、組成物(X)の良好な硬化性が確保されやすい。
【0045】
組成物(X)は充填材を含有してもよい。例えば充填材の量を調整することで、組成物(X)の流動性を制御でき、そのため例えば組成物(X)に用途に応じた流動性を付与できる。また充填材が顔料を含有してもよい。その場合、顔料によって組成物(X)及び硬化物を着色できる。充填材は、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、シリカ、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーン等からなる群から選択される少なくとも一種の材料を含有する。充填材には分散性改善のため脂肪酸処理や疎水化などの表面処理を行うことが好ましい。
【0046】
例えば組成物(X)中の充填材の割合は、重合体(A)100質量部に対して50質量部以上500質量部以下であることが好ましく、100質量部以上300質量部以下であれば更に好ましい。
【0047】
組成物(X)は、上記以外の成分を更に含有してもよい。例えば組成物(X)は、脱水剤、酸化防止剤、タレ防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、溶剤、及び香料等からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有してよい。
【0048】
特に組成物(X)が紫外線吸収剤と光安定剤とのうち少なくとも一方を含有すると、組成物(X)及びその硬化物の耐光性及び耐UV性が高まりやすい。紫外線吸収剤は、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。光安定剤は、例えばビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート等のヒンダートアミン系光安定剤を含有する。
【0049】
組成物(X)は、上述のとおり、例えばシーリング材として使用される。この場合、例えば建物の外壁、内壁などにおける目地などに組成物(X)を充填して放置する。そうすると、上述のとおり、空気中の水分などによって組成物(X)が硬化する。
【0050】
組成物(X)は、上述のとおり、例えば接着剤としても使用される。この場合、組成物(X)は、例えば建材を下地に接着するために使用される。具体的には、例えば下地に組成物(X)を塗布してから建材を下地に組成物(X)を介して重ね、この状態で放置する。そうすると、上述のとおり空気中の水分などによって組成物(X)が硬化する。これにより、建材を下地に接着できる。建材は、例えば外装建築材であり、具体的には例えばタイル、レンガ材、石材、モルタル材又は陶材などである。
【0051】
本実施形態によると、上述のとおり組成物(X)の硬化物は良好な柔軟性を有しやすく、かつ水に曝されるなどしても経時的な硬さ及び弾性率の増大が生じにくいため、ひび割れなどの破損が生じにくい。そのため、建物の外装におけるシーリング材や、外装建築材を接着するための接着剤などとして使用しても、良好な耐久性を有することができる。なお、本実施形態に係る組成物(X)は、外装用途には限られず、建物の内装におけるシーリング材や、内装建築材を接着するための接着剤などとして使用してもよい。組成物(X)を自動車用途に適用してもよい。また、組成物(X)の用途は、シーリング材及び接着剤には限られず、例えば緩衝材、被覆材、電子部品などに適用してもよい。
【実施例】
【0052】
以下、本実施形態の、より具体的な実施例を提示する。なお、本実施形態は、以下の実
施例のみに制限されるものではない。
【0053】
1.組成物の調製
表1の「組成」の欄に示す原料を混合して、組成物を調製した。原料の詳細は下記のとおりである。なお、表1に示す原料の配合量は質量部で示され、ケチミン化合物1及びケチミン化合物2については分子内のケチミン構造の総量をmmol部数で換算した値も併記され、エポキシ化合物1、エポキシ化合物2及びエポキシ化合物3については分子内のエポキシ基の総量をmmol部数で換算した値も併記されている。「ケチミン構造/エポキシ基 モル比」は、組成物中のエポキシ化合物の有するエポキシ基に対するケチミン構造のモル比を示す。
-重合体1:ポリオキシアルキレン骨格と架橋性シリル基とを有する重合体、AGC社製、品名エクセスター ES-S3430。
-重合体2:ポリ(メタ)アクリル骨格と架橋性シリル基とを有する重合体(一末端一側鎖ジメトキシシリル基置換ポリ(メタ)アクリル樹脂)、綜研化学社製、開発品番NE4003DD6、重量平均分子量31000。
-エポキシ化合物1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、DIC社製、品名エピクロン850、エポキシ当量188。
-エポキシ化合物2:エポキシシラン、信越化学工業社製、品番KBM403、エポキシ当量236.3。
-エポキシ化合物3:水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製、品番X8000、エポキシ当量205。
-ケチミン化合物1:架橋性シリル基を有するケチミン化合物、信越化学工業社製、品番KBE9103、加水分解後の1級アミン当量303g/mol。
-ケチミン化合物2:架橋性シリル基を有さない二価のケチミン化合物、日東化成社製、品番エボニットK-100、加水分解後の1級アミン当量209g/mol。
-可塑剤1:ポリプロピレングリコール、AGC社製、品名エクセノール3020、重量平均分子量3000。
-可塑剤2:(メタ)アクリル重合体、東亜合成社製、品番UP1000、重量平均分子量3000。
-充填材1:脂肪酸表面処理軽質炭酸カルシウム、白石工業社製、品名CCR。
-充填材2:脂肪酸表面処理重質炭酸カルシウム、白石工業社製、品名ホワイトン305。
-充填材3:表面処理されていない重質炭酸カルシウム、清水工業社製、品名LW-350。
-触媒:錫触媒、日東化成社製、品番U220H。
【0054】
2.評価試験
2.1.接着強さ
組成物を外装タイルのための接着剤として用いた場合の接着強さを、JIS A5557:2006に従って測定した。その結果、破断強度0.4N/m2以上かつ凝集破壊率
50%以上の場合を「合格」、破断強度0.4N/m2未満もしくは凝集破壊率50%未
満の場合を「不合格」と評価した。
【0055】
表1に示される結果のとおり、実施例1~11では「合格」の評価が得られたが、ケチミン化合物のケチミン構造のエポキシ基に対するモル比が0.3である比較例1における評価は不合格となった。
【0056】
2.2.破断伸び率
組成物から、2mm厚みのシートを作製し、このシートを23℃、50%RHで28日間養生した後に引張5号ダンベル形状のトムソン刃で打ち抜くことで、サンプルを作製した。このサンプルに対して、引張試験機(島津製作所社製、型番AGS-X)を用いて、100mm/minの条件で引張試験を行い、その結果から破断伸び率を求めた。また、サンプルを70℃の温水に168日間浸漬してから、サンプルに対して引張試験を行い、その結果から破断伸び率を求めた。
【0057】
表1に示される結果のとおり、実施例1~11では初期の破断伸び率は80%以上であり、100%以上の評価も実現できた。さらに、初期の破断伸び率と温水浸漬後の破断伸び率との差は20%pt以下であり、10%pt以下も実現でき、0%ptも実現できた。
【0058】
これに対し、ケチミン化合物のケチミン構造のエポキシ基に対するモル比が0.85である比較例2~3及び0.9である比較例4では、初期の破断伸び率が85%以上であったものの、温水浸漬後には破断伸び率が著しく低下した。
【0059】
2.3.50%モジュラス
組成物から、2mm厚みのシートを作製し、このシートを23℃、50%RHで28日間養生した後に引張5号ダンベル形状のトムソン刃で打ち抜くことで、サンプルを作製した。このサンプルに対して、引張試験機(島津製作所社製、型番 AGS-X)を用いて、100mm/minの条件で引張試験を行い、その結果から伸び率50%の場合の応力(50%モジュラス)を求めた。また、サンプルを70℃の温水に168日間浸漬してから、サンプルに対して引張試験を行い、その結果から50%モジュラスを求めた。
【0060】
表1に示される結果のとおり、実施例1~11では初期の50%モジュラスは0.6MPa以下であり、0.5MPa以下及び0.4MPa以下も実現できた。さらに、初期の50%モジュラスと温水浸漬後の50%モジュラスとの差は0.1MPa以下であり、0MPaも実現できた。
【0061】
これに対し、ケチミン化合物のケチミン構造のエポキシ基に対するモル比が0.85である比較例2~3及び0.9である比較例4では、初期の50%モジュラスは0.6MPa以下であったものの、温水浸漬後には50%モジュラスは著しく増大した。
【0062】