(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】物理量計測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/024 20060101AFI20231027BHJP
G01N 27/18 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
G01N29/024
G01N27/18
(21)【出願番号】P 2020121786
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】名和 基之
(72)【発明者】
【氏名】三好 麻子
(72)【発明者】
【氏名】松田 正誉
(72)【発明者】
【氏名】中林 裕治
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5965813(US,A)
【文献】特開2014-106225(JP,A)
【文献】特開2014-071109(JP,A)
【文献】特開昭58-219450(JP,A)
【文献】特開2007-322221(JP,A)
【文献】特開2003-337119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0260672(US,A1)
【文献】特開2020-051969(JP,A)
【文献】特開平08-254451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
G01N 1/00-1/44
G01B 17/00-17/08
G01F 1/00-1/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測流体が流れる主流路と、
前記主流路の流路壁に設けた入口開口部および出口開口部と、
前記入口開口部と前記出口開口部とを接続する副流路と、
前記入口開口部に設けた流入方向規制部と、
前記副流路に配置した成分濃度計測部と、を備え、
前記流入方向規制部は、前記主流路の流れ方向に対して所定の傾斜角を持つ案内片を配置して構成し、前記所定の傾斜角は、前記主流路の流れ方向との関係において、90°より大きい値とすると共に、前記案内片間の間隔hと前記主流路の高さHとの関係が、H>hとなるように構成した物理量計測装置。
【請求項2】
前記成分濃度計測部は、
前記副流路に配置した一対の超音波送受波器と、
前記被計測流体の温度を検知する温度センサと、
前記一対の前記超音波送受波器からの信号と前記温度センサからの信号を受けて前記被計測流体の成分濃度を演算する信号処理部と、からなる請求項1記載の物理量計測装置。
【請求項3】
前記成分濃度計測部は、
前記副流路に配置した熱流センサと、
前記熱流センサからの信号を受けて前記被計測流体の成分濃度を演算する信号処理部と、からなる請求項1記載の物理量計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動する使用流体の一部をサンプリングして、流体に含まれる成分の濃度等の物理量を計測する物理量計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の成分を測定する計測装置として、超音波流量計の流量計測部を流れる流体をサンプリングする成分計測部を流量計測部に併設したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、特許文献1に記載された超音波流量計の計測流路の一部分の断面図を示したものである。
【0004】
この流量計では、計測流路100の主流路101は、仕切板102で多層に分割されて多層流路103を形成している。この多層流路103部に流体の成分を計測する副流路104を併設している。この副流路104に主流路101を流れる流体を流入させるため、多層流路103部の入口側に主流路101へ突出部105を配置して流路断面を部分的に絞り、エジェクタ効果により多層流路103aの上流側の流出口106から誘引して流出させ、流入口(図示せず)から流体を流入させる副流路104を形成している。
【0005】
そして、この副流路104において、赤外線によりガス成分を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、流体の成分を計測する副流路104に主流路の流体を誘引する場合において、主流路101を流れる流体に微細な水滴などの液滴が含まれている場合、副流路104にこの液滴が侵入して成分計測に悪影響するという課題がある。また、エジェクタ効果を発揮させるためには主流路の流れに影響を及ぼす圧力損失が発生し、この圧力損失を小さくすると副流路104に流入させる十分な吸引力が得られないという課題がある。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、流体に含まれる成分の濃度等の特性を計測する副流路への水滴などの液滴の侵入を大幅に抑制し、かつ、主流のもつ流れの乱れを小さくした状態で、副流路において、流体に含まれる成分の濃度計測を精度よく行う計測装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の物理量計測装置は、被計測流体が流れる主流路と、前記主流路の流路壁に設けた入口開口部および出口開口部と、前記入口開口部と前記出口開口部とを接続する副流路と、前記入口開口部に設けた流入方向規制部と、前記副流路に配置した成分濃度計測部と、を備え、前記流入方向規制部は、前記主流路の流れ方向に対して所定の傾斜角を持つ案内片を配置して構成し、前記所定の傾斜角は、前記主流路の流れ方向との関係において、90°より大きい値とすると共に、前記案内片間の間隔hと前記主流路の高さHとの関係が、H>hとなるように構成することで、被計測流体
に微細な水滴などの液滴が含まれている場合でも、水滴などの液滴の侵入を大幅に抑制して液滴を含まない流れを副流路に供給することにより、液滴等の影響を受けることなく流体に含まれる成分の濃度計測等の計測精度を向上できる。また、ルーバー状の案内片による流れの分割により、主流のもつ乱れを小さくすることができ、副流路において、乱れの少ない状態での計測を可能にする。また、副流路へ流れを導くに際して、主流の断面積を絞ることのない構成となっているため、格別の圧力損失は、発生しないものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の物理量計測装置は、入口開口部には主流路の流れ方向に対して所定の傾斜角を持つ案内片を配置した流入方向規制部材を設け、この案内片の傾斜角は、主流路の流れ方向との関係において、90°より大きい値となるように構成することで、水滴などの液滴の侵入を大幅に抑制して液滴を含まない流れを副流路に供給し、液滴等の影響を受けることなく流体に含まれる成分の濃度計測等の計測精度を向上できる。また、ルーバー状の案内片による流れの分割により、主流のもつ流れの乱れを小さくすることができ、副流路において、乱れの少ない状態での計測を可能にする。また、副流路へ流れを導くに際して、主流の断面積を絞ることのない構成となっているため、格別の圧力損失は、発生しないものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1における物理量計測装置の構成断面図
【
図2】本発明の実施の形態1における
図1のA-A断面図
【
図3】本発明の実施の形態1における
図1のA-A断面の他の形状を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、被計測流体が流れる主流路と、前記主流路の流路壁に設けた入口開口部および出口開口部と、前記入口開口部と前記出口開口部とを接続する副流路と、前記入口開口部に設けた流入方向規制部と、前記副流路に配置した成分濃度計測部と、を備え、前記流入方向規制部は、前記主流路の流れ方向に対して所定の傾斜角を持つ案内片を配置して構成し、前記所定の傾斜角は、前記主流路の流れ方向との関係において、90°より大きい値とすると共に、前記案内片間の間隔hと前記主流路の高さHとの関係が、H>hとなるように構成した物理量計測装置で、水滴などの液滴の侵入を大幅に抑制して液滴を含まない流れを副流路に供給し、液滴等の影響を受けることなく流体に含まれる成分の濃度計測等の計測精度を向上できる。また、ルーバー状の案内片による流れの分割により、主流のもつ流れの乱れを小さくすることができ、副流路において、乱れの少ない状態での計測を可能にする。また、副流路へ流れを導くに際して、主流の断面積を絞ることのない構成となっているため、格別の圧力損失は、発生しないものである。
【0013】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記成分濃度計測部は、前記副流路に配置した一対の超音波送受波器と、前記被計測流体の温度を検知する温度センサと、前記一対の前記超音波送受波器からの信号と前記温度センサからの信号を受けて前記被計測流体の成分濃度を演算する信号処理部と、からなるものである。
【0014】
第3の発明は、特に第1の発明において、前記成分濃度計測部は、前記副流路に配置した熱流センサと、前記熱流センサからの信号を受けて前記被計測流体の成分濃度を演算する信号処理部と、からなるものである。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0016】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0017】
(実施の形態1)
実施の形態1について、
図1~
図2を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態1における物理量計測装置の構成断面図であり、
図2は本発明の実施の形態1における
図1のA-A断面図である。
【0019】
図1、
図2において、被計測流体が流れる主流路1は、その断面が長辺を幅W、短辺を高さHで示す矩形断面の流路であり、主流路1は、入口2および出口3を備える。
【0020】
主流路1の流路壁4には、上流側に入口開口部5を設け、さらに、この入口開口部5の下流側には出口開口部6を設けている。この入口開口部5と出口開口部6とを接続する副流路7を主流路1に並列に配置している。副流路7には、流れ方向に対向するように配置した一対の超音波送受波器8、9と流体の温度を検知する温度センサ10を配置している。
【0021】
この一対の超音波送受波器8、9と温度センサ10は信号処理部11と電気的に接続され、この信号処理部11は、この一対の超音波送受波器8、9からの信号と温度センサ10からの信号を受けて流体の成分濃度を演算する。
【0022】
そして、本実施の形態において、成分濃度計測部は、一対の超音波送受波器8、9と温度センサ10と信号処理部11とで構成されている。
【0023】
上記の副流路7の入口開口部5には、主流路1の流れ方向に対して所定の傾斜角θを持つ複数の板状あるいはルーバー状の案内片12を複数配置した流入方向規制部13を設け、この案内片12の傾斜角θは、主流路1の流れ方向との関係において、
図1に示すように90°より大きい値となるように構成している。
【0024】
また、案内片12間の間隔hは、主流路1の高さHとの関係がH>hとなるように構成されている。ここでの案内片12間の間隔hや、主流路高さHは、レイノルズ数の代表長さに相当する値である。
【0025】
なお、流入方向規制部13は流路壁4から主流路1に突出しないように配置し、さらに、副流路7では流体の流れが滑らかになるように、曲がり部の内壁面B,C等にはコーナR(丸み付け)を行っている。
【0026】
次に、本発明の物理量計測装置の動作について説明する。
【0027】
主流路1を流れる被計測流体は、入口2から
図1の白抜き矢印Yで示すように流入し、主流路1の流れの大部分は流れFmとなり、最終的には、出口3から
図1の黒抜き矢印Zのように流出する。
【0028】
流入方向規制部13が設けられた入口開口部5では、流入方向規制部13を構成する複数の板状あるいはルーバー状の案内片12が主流路1の流れ方向に対する角度θが90°より大きい値として設定されているので、主流路1の被計測流体に水滴などの微細な液滴を含んでいても、液滴は、案内片12に衝突して滴下したり、付着したりして、容易に副
流路7に流入することはない。また、塵埃等の異物についても案内片12への衝突による落下等、同様の効果が期待される。
【0029】
また、案内片12間の間隔hは、主流路1の高さHとの関係がH>hとなるように構成されているため、主流が有する流れの乱れについては、ルーバー状の案内片12を通過するときに、主流が有する、大きなスケールの渦や乱れが、小さなスケールの渦や乱れとなり、副流路7における流れの乱れは、主流路1の乱れよりも小さくなる。
【0030】
このように、被計測流体中の水滴などの液滴が除去され、流れの乱れが減少した状態は、超音波送受波器8,9間での超音波の送受における信号の乱れを少なくすることになり、一対の超音波送受波器8、9を用いて音速を安定して計測することができる。信号処理部11は、このようにして得られた音速と、温度センサ10で計測された流体の温度を用いて、公知の方法により被計測流体に含まれる成分濃度を演算する。
【0031】
このようにして、副流路7では、水滴などの液滴や異物の侵入を大幅に抑制し、また、乱れの少ない状態が実現されるため、被計測流体に含まれる微細な水滴などの液滴による影響を受けたり、被計測流体の流れの乱れによる影響を受ける計測方法を用いる場合でも、被計測流体に含まれる成分の濃度計測等の計測精度を向上できる。また、このような構成は、主流路1の断面縮小を与えないので主流路での格別の圧力損失を生じることがない。
【0032】
また、一対の超音波送受波器8、9を、副流路7での流れの方向に対向配置することで必要な計測精度に合わせて伝搬距離である副流路7の直線部の長さを延ばすことができ、さらに、伝搬時間逆数差法も用いた流量計測を行うことができる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態において、副流路7の幅(
図1の奥行き方向)は主流路1の幅W方向の全域で説明したが、
図3に示すように、幅W方向の幅を全域では無く長辺の幅の一部である幅W1とした副流路7’であっても良い。
【0034】
また、主流路1の断面形状は矩形断面の流路で説明したが、円形断面など矩形以外の形状であっても良い。円形断面の場合、直径をDとすると、案内片12間の間隔hと直径Dとの関係は、D>hとなる。
【0035】
また、温度センサ10は副流路7に配置した場合で説明したが、主流路1に配置しても良い。
【0036】
また、流体の成分を計測する物理量計測装置として説明したが、主流路1の上流側あるいは下流側に流量計測部を直列に配置した流量計、あるいは副流路7を有する主流路1に流量計測部を並列配置した流量計として展開できるのは云うまでもない。
【0037】
また、本実施の形態では、成分濃度計測部を、一対の超音波送受波器8、9と温度センサ10と信号処理部11とで構成して説明したが、超音波送受波器や温度センサの代わりに熱流センサを用いて構成しても良い。その他、特定のガスの濃度を計測可能な、例えば、水素センサなどを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明の物理量計測装置は、副流路への液滴の侵入を抑制するとともに乱れの少ない安定した流れを供給し、主流路での圧力損失が少ない構成の計測装置を提供できるもので、流体の成分の計測装置だけで無く、流量計測部を併設して計測精度および汎用性の高い流量計をも実現できる。
【符号の説明】
【0039】
1 主流路
4 流路壁
5 入口開口部
6 出口開口部
7 副流路
8、9 超音波送受波器(成分濃度計測部)
10 温度センサ(成分濃度計測部)
11 信号処理部(成分濃度計測部)
12 案内片
13 流入方向規制部