(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】型枠設置装置及びこれを用いた型枠設置方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20231027BHJP
【FI】
E21D11/10 A
(21)【出願番号】P 2020218314
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2022-08-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開の事実北海道新幹線渡嶋トンネル工事(工事日 2020年12月24日~2021年1月8日)
(73)【特許権者】
【識別番号】521000725
【氏名又は名称】有限会社札幌建設サポート
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】山口 歩
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073920(JP,A)
【文献】特開2020-193533(JP,A)
【文献】特開平08-199992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内において
天井型枠をトンネル内面との間に所定の径方向隙間を設けて設置するための装置であって、
トンネルの幅方向両端部
近傍に立設された一対のガイド支柱
と、
前記一対のガイド支柱の前面に架装され当該ガイド支柱の最下位と最上位の間を昇降動する横長矩形枠状の昇降リフトと、
前記昇降リフト
に連繋させて当該昇降リフトを昇降動させる
一対の駆動手段と、
前記一対のガイド支柱の上端部から前記トンネルの長手方向に沿って互いに平行に配設された一対の
ガイドレールであって、前記一対のガイド支柱の上端に接続されてトンネル前方へ向け延設した一対の張出し走行桁と、該張出し走行桁にトンネル前方へ向け接続された一対の走行梁とから成る一対のガイドレールと、
を備えた型枠設置装置において、
前記ガイドレール
の前後方向に沿った長さを有すると共に上部に上向きに伸縮可能な2本の油圧ジャッキを備えた一対の搬入台車
を、前記一対のガイド支柱に対面する位置で前記昇降リフトの上に配置して備え、
前記昇降リフトが最下位にあるとき前記油圧ジャッキの上げたロッドに前記天井型枠を支持させて前記搬入台車に載せ、前記昇降リフトが最上位に達したら前記搬入台車を前記昇降リフトから前記ガイドレール上の所定位置に移動させ、前記ロッドを下げて前記天井型枠を前記搬入台車から前記ガイドレールに支持させるようにしたことを特徴とする型枠設置装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、電動チェーンブロックであることを特徴とする請求項1に記載の型枠設置装置。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の型枠設置装置を用いて前記天井型枠を前記トンネル内の所定位置に設置する方法であって、
前記
天井型枠を最下位にある前記昇降リフト上の前記
油圧ジャッキの上げたロッドに支持させて搬入台車に載置する第1工程と、
前記
天井型枠が載置された前記昇降リフトを前記駆動手段によって
最上位まで上昇させる第2工程と、
前記
天井型枠が載置された前記搬入台車を前記昇降リフトから前記ガイドレールの張り出し走行桁へ移して当該搬入台車を前記
張出し走行桁からガイドレール
の走行梁に沿って前記トンネルの長手方向所定位置まで走行させる第3工程と、
前記
天井型枠を前記
油圧ジャッキのロッドを下げて搬入台車から前記ガイドレールの
走行梁へと移載する第4工程と、
空になった前記搬入台車を前記ガイドレール
の張出し走行桁に向け走行させて前記昇降リフトへと戻す第5工程と、
前記駆動手段によって前記昇降リフトを前記搬入台車と共に最下位まで下降させる第6工程と、
を複数回繰り返すことによって前記トンネル内の所定位置に複数の前記
天井型枠を前記トンネルの長手方向に沿って順次設置することを特徴とする型枠設置方法。
【請求項4】
前記第4工程における前記
天井型枠の前記搬入台車から前記ガイドレールへの移載は、搬入台車上に設置されて前記
天井型枠を支持している前記油圧ジャッキを下
げることによって行われることを特徴とする
請求項3に記載の型枠設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事において使用される型枠設置装置とこれを用いた型枠設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、NATM工法(New Austrian Tunneling Method)によって掘削されて内面にコンクリートが吹き付けられることによって一次覆工されたトンネルは、二次覆工のために一次覆工面に型枠を用いてコンクリートが打設される。ここで、トンネル用の型枠は、トンネルの一次覆工面に対して所定の径方向隙間を設けて設置される鋼鉄製の部材であって、天井型枠とこの天井型枠の両側に連結される側面型枠とに3分割されている。
【0003】
ところで、トンネル用の型枠の設置技術としては、例えば特許文献1~4などに提案されており、先ず、トンネルの天井壁に設置された支持骨材に掛けられたワイヤーによって天井型枠を吊り下げ、この吊り下げられた天井型枠をウインチや電動チェーンブロックなどによって所定の高さ位置まで吊り上げ、この天井型枠を架台に載置してこれを支持した状態で、この天井型枠の両側に側面型枠をそれぞれ連結するものがある。
【0004】
また、他の設置技術としては、支持脚が油圧シリンダによって上下する架台上に天井型枠を載置し、この天井型枠を架台と共に持ち上げ、持ち上げられた架台に付加脚を加えて天井型枠を所定の高さに位置決めし、この天井枠の両側に側面型枠をそれぞれ連結するものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4023615号公報
【文献】特許第4023616号公報
【文献】特許第4023617号公報
【文献】特許第4290053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トンネル工事における型枠の従来の設置技術によれば、高重量(約3t)の天井型枠をワイヤーで吊り下げてこれを所定高さ位置まで吊り上げたり、天井型枠を架台と共に所定の高さ位置まで持ち上げる必要があるため、そのための装置が大掛かりとなるばかりか、位置決め動作を含むトンネル用型枠の設置作業に多くの労力と時間を要するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、簡素な構成でトンネル用型枠を効率良く短時間で、且つ、正確に所定の高さ位置に位置決めして設置することができる型枠設置装置及びこれを用いた型枠設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る型枠設置装置は、型枠をトンネル内面との間に所定の径方向隙間を設けて設置するための装置であって、トンネルの幅方向両端部に立設された一対のガイド支柱に沿って昇降動する昇降リフトと、前記昇降リフトを昇降動させる駆動手段と、前記トンネルの幅方向両端部に長手方向に沿って互いに平行に配設された一対のガイドレールと、前記型枠を支持して前記ガイドレールに沿って前記トンネルの長手方向に沿って走行可能な一対の搬入台車と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る型枠設置方法は、上記型枠設置装置を用いて前記型枠を前記トンネル内の所定位置に設置する方法であって、前記型枠を最下位にある前記昇降リフト上の前記搬入台車に載置する第1工程と、前記型枠が載置された前記昇降リフトを前記駆動手段によって所定の高さ位置まで上昇させる第2工程と、前記型枠が載置された前記搬入台車を前記昇降リフトから前記ガイドレールへと移して該搬入台車を前記ガイドレールに沿って前記トンネルの長手方向所定位置まで走行させる第3工程と、前記トンネル用型枠を前記搬入台車から前記ガイドレールへと移載する第4工程と、空になった前記搬入台車を前記ガイドレールに沿って走行させて前記昇降リフトへと戻す第5工程と、前記駆動手段によって前記昇降リフトを前記搬入台車と共に最下位まで下降させる第6工程と、を複数回繰り返すことによって前記トンネル内の所定位置に複数の前記型枠を前記トンネルの長手方向に沿って順次設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る型枠設置装置を用いた型枠設置方法によれば、昇降リフトが最下位にある状態で、該昇降リフトを搬入台車とこれに支持された型枠と共に上昇させ、搬入台車をガイドレールへと移し替えて該搬入台車を型枠と共にトンネルの長手方向所定位置まで移動させ、その位置で型枠をガイドレールへと移載すれば、型枠が所定位置に位置決めされた状態で設置される。なお、このとき、ガイドレールと搬入台車の位置関係は、ガイドレールに支持された型枠が所定の高さ位置に設置されるように予め設定されている。
【0011】
そして、空になった搬入台車をガイドレールに沿って昇降リフトへと移動させて戻した後、昇降リフトを最下位へと下降させ、以後、以上の作業を複数回繰り返すことによって、トンネル内の所定位置に複数の型枠をトンネルの長手方向に沿って順次設置することができる。
【0012】
したがって、トンネル用型枠をそれぞれ個別に吊り上げて所定の高さ位置に個々に位置決めする必要がないため、簡素な構成で型枠を効率良く短時間で、且つ、正確に所定の高さ位置に位置決めして設置することができる。
本発明装置は、トンネルに設置されて二次覆工が完了した型枠の解体においても、天井用型枠を設置位置から地上へ搬出するときに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】型枠が設置されたトンネルの横断面図である。
【
図2】本発明に係る型枠設置装置及びこれを用いた型枠設置方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
[型枠設置装置]
図1は型枠が設置されたトンネルの横断面図、
図2は本発明に係る型枠設置装置及びこれを用いた型枠設置方法を示す側面図、
図3は本発明に係る型枠設置装置の平面図、
図4は
図2の矢視A方向の図、
図5は
図2の要部拡大詳細図である。なお、以下の説明においては、
図3及び
図4に矢印にて示すようにトンネル内の幅方向を「左右」方向、
図2、
図3及び
図5に矢印にて示すようにトンネル軸方向を「前後」方向とする。
【0016】
図1に示すように、NATM工法などによって掘削されて内面にコンクリートが吹き付けられることによって一次覆工されたトンネル100は、二次覆工のために一次覆工面100aに型枠2を用いてコンクリートが打設される。ここで、型枠2は、トンネル100の一次覆工面100aに対して所定の径方向隙間δを設けて設置される切欠円状の鋼鉄製部材であって、中央上部に位置する円弧状の天井型枠2Aとこの天井型枠2Aの両側に連結される円弧状の側面型枠2Bとに3分割されている。
【0017】
本発明に係る型枠設置装置1は、型枠2のうちの天井型枠2Aをトンネル100内の所定位置に設置するための装置であって、トンネル100の幅方向両端部に立設された一対のガイド支柱3に沿って昇降動する昇降リフト10と、該昇降リフト10を昇降動させる駆動手段としての電動チェーンブロック20と、トンネル100の幅方向両端部に長手方向(トンネル軸方向)に沿って互いに平行に配設された一対のガイドレール30と、昇降リフト10とガイドレール30に沿ってトンネル100の長手方向に走行可能な一対の搬入台車40と、該搬入台車40上にそれぞれ設置された伸縮可能な一対の支持手段である油圧ジャッキ50を備えている。
【0018】
上記一対のガイド支柱3は、
図4に示すように、トンネル100内の左右両端部に設置されたブロック状の基礎架台4上に垂直且つ互いに平行に立設されており、これらのガイド支柱3の上端部間には、水平なクロス部材5が横架されている。なお、ガイド支柱3は、H型鋼によって構成されている。
【0019】
また、
図2及び
図3に示すように、トンネル100内の上部には、左右一対のガイドレール30がガイド支柱3の上端から前方に向かって互いに平行且つ水平に設置されている。ここで、左右の各ガイドレール30は、上下幅が広くて長さの長い既設の走行梁30Aと、該走行梁30Aの後端に一直線状に接続された上下幅が狭くて長さの短い張出し走行桁30Bとで構成されている。なお、走行梁30Aと張出し走行桁30Bは、共にH型鋼によって構成されている。
【0020】
そして、左右一対のガイド支柱3には、昇降リフト10が昇降可能に支持されている。この昇降リフト10は、矩形枠として構成されており、その下部からは左右一対の支持部材11が前方に向かって互いに平行且つ水平に延びている。また、この昇降リフト10は、その左右が左右一対のガイド支柱3に昇降動可能に支持されている。ここで、昇降リフト10のガイド支柱3への支持構造を
図6及び
図7に基づいて説明する。
【0021】
すなわち、
図6は
図5のB拡大詳細図、
図7は
図6のC-C線断面図であり、これらの図には昇降リフト10の上部材12のガイド支柱3への支持構造のみを示すが、昇降リフト10の下部材13(
図4及び
図5参照)の支持構造も同様であるため、これについての図示及び説明は省略する。
【0022】
チャンネル鋼材で構成された上部材12の前端部左右には、ガイドローラ14が回転可能に支持されており、このガイドローラ14がガイド支柱3に当接することによって、昇降リフト10が前後方向を規制された状態でガイド支柱3に沿って昇降動することができる。
【0023】
また、昇降リフト10の上部材12と下部材13の左右端部間に架設された縦部材1515には、ブラケット16が取り付けられており、このブラケット16には、ガイドローラ17が回転可能に支持されている。そして、このガイドローラ17がガイド支柱3に当接することによって、昇降リフト10が左右方向を規制された状態でガイド支柱3によって昇降動することができる。
【0024】
そして、以上の支持構造によってガイド支柱3に昇降動可能に支持された昇降リフト10は、
図1~
図5に示す駆動手段である左右一対の電動チェーンブロック20によって吊下げられて左右一対のガイド支柱3に沿って昇降動せしめられる。
【0025】
上記電動チェーンブロック20は、左右一対のガイド支柱3の上端間に架設されたクロス部材5と左右一対の張出し走行桁30Bの上に設置された矩形枠6に吊り下げられている。具体的には、左右一対の電動チェーンブロック20は、矩形枠6の前後方向に沿って水平に設置された左右一対の部材6Aに吊り下げられている。ここで、各電動チェーンブロック20の構成を
図8に示す。
【0026】
すなわち、
図8は電動チェーンブロックの側面図であり、図示の電動チェーンブロック20は、駆動部21と制御部22を備えており、これらの駆動部21と制御部22は、矩形枠6の部材6Aに固着されたブラケット23,24の軸23a,24aにフック25,26によってそれぞれ吊り下げられている。なお、図示しないが、駆動部21には、駆動源である電動モータ、減速機、滑車(ブロック)などが内蔵されており、滑車にはチェーン27が巻き掛けられている。そして、チェーン27の下端にはフック28が取り付けられており、このフック28は、昇降リフト10の下部から前方に向かって水平に延びる支持部材11の先端に掛けられている。また、制御部22は、駆動部21から垂れ下がった操作スイッチ29の操作によって駆動部21の不図示の電動モータを駆動制御する機能を果たす。
【0027】
なお、本実施の形態では、昇降リフト10をガイド支柱3に沿って昇降動させる駆動手段として電動チェーンブロック20を用いたが、ウインチなどの他の駆動手段を用いても良い。
【0028】
ところで、
図2~
図5に示すように、昇降リフト10の前後方向に水平且つ平行に延びる左右一対の上部材12上には、左右一対の搬入台車40がそれぞれ走行可能に配置されている。ここで、各搬入台車40の構成の詳細を
図9及び
図10に基づいて以下に説明する。
【0029】
すなわち、
図9は搬入台車の側面図、
図10は
図9のD-D線断面図であり、各走行台車40は、その前後が回転可能なローラ41によって走行可能に支持されている。なお、この搬入台車40は、作業者が手で押して走行する手押し式のものであって、後述のように昇降リフト10の上部材12と張出し走行桁30B及び走行梁30Aに沿って前後方向(トンネル軸方向)に走行する。
【0030】
また、搬入台車40の前後方向において前後のローラ41の内側の左右には、当該搬入台車40の走行梁30Aなどからの脱落を防ぐための垂直な計4枚のガイドプレート42が複数のボルト43とナット44によってそれぞれ取り付けられている。
【0031】
そして、各搬入台車40の前後方向において前後のガイドプレート42の内側2箇所には、支持手段である油圧ジャッキ50がそれぞれ取り付けられている。各油圧ジャッキ50は、シリンダ51と、該シリンダ51内に上下動可能に嵌挿されたロッド52を備えており、油圧によってロッド52が上下動せしめられる。なお、左右の搬入台車40に各2つずつ設けられた計4つの油圧ジャッキ50は、後述のように、天井型枠2Aを受けてこれを支持する。
【0032】
以上のように、本発明に係る型枠設置装置1は、左右一対のガイド支柱3に沿って昇降動する昇降リフト10と、該昇降リフト10を昇降動させる左右一対の電動チェーンブロック20と、トンネル100の幅方向両端部に長手方向に沿って互いに平行に配設された左右一対のガイドレール30(走行梁30Aと張出し走行桁30B)と、天井型枠2Aを支持してガイドレール30に沿って前後方向に走行可能な一対の搬入台車40と、各搬入台車40上にそれぞれ設置された伸縮可能な一対の油圧ジャッキ50を含んで構成されるため、その構成が大掛かりとなることがなく、大幅なコストアップを招くこともない。
【0033】
[型枠設置方法]
次に、以上のように構成された型枠設置装置1を用いて実施される本発明に係る型枠設置方法を
図2に基づいて以下に説明する。
【0034】
本発明に係る型枠設置方法は、以下の6つの工程(第1~第6工程)を複数回(本実施の形態では、8回)繰り返すことによって天井型枠2Aをトンネル100内の所定位置に設置する方法である。
【0035】
<工程1>:
工程1においては、
図2に実線にて示すように最下位にある昇降リフト10上の左右一対の搬入台車40に不図示のクレーンなどを用いて天井枠2Aを載置する。具体的には、天井型枠2Aは、左右一対の搬入台車40に各2つずつ設置された計4つの油圧ジャッキ50の各ロッド52上に載置される。なお、このとき、各油圧ジャッキ50のロッド52は、所定高さまで上方へと伸びた状態にある。
【0036】
<工程2>:
工程2においては、前記工程1において天井型枠2Aが載置された左右一対の搬入台車40を備える昇降リフト10を電動チェーンブロック20によって
図2に鎖線にて示す所定の高さ位置(搬入台車40が載置された昇降リブト10の上部材12の上面(走行面)が張出し走行桁30Bの上面(走行面)に一致する高さ位置)まで上昇させる。具体的には、作業者が電動チェーンブロック20の操作スイッチ29を操作し、その操作信号が電動チェーンブロック20の制御部22へと送信されると、駆動部21の不図示の電動モータが起動されてチェーン27が巻き取られ、昇降リフト10が搬入台車40とこれに支持された天井型枠2Aと共に
図2の鎖線位置まで引き上げられる。
【0037】
<第3工程>:
第3工程においては、前記第2工程において
図2の鎖線位置まで引き上げられた昇降リフト10上に載置された左右一対の搬入台車40を作業者が手で前方へと押し、これらの搬入台車40を天井枠体2Aと共に左右一対の張出し走行桁30Bへと移す。そして、左右の搬入台車40を作業者が手で押してこれらをガイドレール30(張出し走行桁30Bと走行梁30A)に沿ってトンネル100の長手方向所定位置(
図2に示すa位置)まで移動させる。
【0038】
<第4工程>:
第4工程においては、前記第3工程において
図2のa位置へと移送された搬入台車40から天井枠体2Aを左右一対の走行梁30A上に移載する。この天井枠体2Aの走行梁30Aへの移載は、該天井枠体2Aを支持する計4つの油圧ジャッキ50のロッド52を下げることによってなされる。
【0039】
ここで、走行梁30Aと搬入台車40との位置関係は、走行梁30Bに支持された天井型枠2Aが所定の高さ位置(
図1に示すように、天井型枠2Aとトンネル100の一次覆工面100aとの間に所定の径方向隙間δが形成される高さ位置)に設置されるように予め設定されている。
【0040】
<工程5>:
工程5においては、前記工程4において天井型枠2Aが左右一対の走行梁30Bへと移載された結果、空となった搬入台車40を左右一対の走行梁30Aと張出し走行桁30Bに沿って後方に移動させて昇降リフト10へと戻す。
【0041】
<工程6>:
工程6においては、前記工程5において
図2に鎖線にて示す位置まで戻された搬入台車40が載置された昇降リフト10を左右一対のガイド支柱3に沿って
図2に実線にて示す最下位へと下降させる。具体的には、作業者が電動チェーンブロック20の操作スイッチ29を操作し、その操作信号が電動チェーンブロック20の制御部22へと送信されると、駆動部21の不図示の電動モータが起動されてチェーン27が巻き取られ、昇降リフト10が搬入台車40と共に
図2の実線位置まで下降せしめられる
以後、以上の工程1~工程6を複数回(本実施の形態では、8回)繰り返すことによって、トンネル100内の所定位置(
図2に示すa~h位置)に複数(8つ)の天井型枠2Aを前方から後方に向かって順次設置することができる。
【0042】
以上のように、本発明に係る型枠設置装置1を用いて実施される本発明に係る型枠設置方法によれば、天井型枠2Aをそれぞれ個別に吊り上げて所定の高さ位置に個々に位置決めする必要がないため、簡素な構成で天井型枠2Aを効率良く短時間で、且つ、正確に所定の高さ位置に位置決めして設置することができるという効果が得られる。
【0043】
なお、以上のようにして複数の天井枠2Aがトンネル100内の所定位置に順次設置されると、
図1に示すように、各天井型枠2Aの左右両側に側面型枠2Bがそれぞれ連結されて切欠円状のトンネル用型枠2が組み立てられ、このトンネル用型枠2とトンネル100の一次覆工面100aとの間には所定の径方向隙間δが形成される。そして、この径方向隙間δにコンクリートが打設されることによって、トンネル100の一次覆工面100aが所定厚さδのコンクリートによって二次覆工される。
本発明装置は、トンネルに設置されて二次覆工が完了した型枠の解体においても、天井用型枠を設置位置から地上へ搬出するための装置として使用することができる。
【0044】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
1 型枠設置装置
2 型枠
2A 天井型枠
2B 側面型枠
3 ガイド支柱
10 昇降リフト
20 電動チェーンブロック(駆動手段)
30 ガイドレール
30A 走行梁
30B 張出し走行桁
40 搬入台車
50 油圧ジャッキ(支持手段)
51 油圧ジャッキのシリンダ
52 油圧ジャッキのロッド
100 トンネル
δ トンネル内面と型枠との径方向隙間